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特許7717307レーダ信号処理装置、レーダ信号処理方法、レーダ信号処理プログラム、および記録媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-24
(45)【発行日】2025-08-01
(54)【発明の名称】レーダ信号処理装置、レーダ信号処理方法、レーダ信号処理プログラム、および記録媒体
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/42 20060101AFI20250725BHJP
【FI】
G01S13/42
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2025522483
(86)(22)【出願日】2023-10-19
(86)【国際出願番号】 JP2023037788
【審査請求日】2025-04-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003166
【氏名又は名称】弁理士法人山王内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笹川 大
(72)【発明者】
【氏名】桐田 満
(72)【発明者】
【氏名】影目 聡
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/194036(WO,A1)
【文献】特開2022-182340(JP,A)
【文献】特開2019-138862(JP,A)
【文献】特開2017-207348(JP,A)
【文献】特開2004-361154(JP,A)
【文献】特開2012-137432(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112924950(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0070088(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/64
G01S 13/00 - 17/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身が停止した状態において、静止している物体のカテゴリの判定を行うレーダ信号処理装置であって、
観測時刻ごとに物体からの送信波を反射した受信波による受信情報から前記物体までの距離を示す情報と前記物体の方位を示す情報と前記受信波の受信強度値を示す情報を一次特徴量として抽出する一次特徴量抽出部と、
前記一次特徴量抽出部により抽出された複数の観測時刻における一次特徴量それぞれを、送信波を反射した物体と関連付け、物体の識別記号を一次特徴量に付与するデータ格納処理部と、
前記データ格納処理部において同じ識別番号が付与された一次特徴量から時間に対する受信強度値の変化量を二次特徴量として算出する二次特徴量抽出部と、
前記二次特徴量抽出部により算出された二次特徴量について、静止している複数の異なる物体のカテゴリそれぞれに二次特徴量に対する帰属度スコアが与えられたスコア領域を表した帰属度の分布を用いて帰属度スコアを求め、物体のカテゴリごとに複数の観測時刻において同じ識別番号が付与された二次特徴量に対する帰属度スコアを加算して累積スコアを算出する帰属度算出部と、
前記帰属度算出部により算出された物体のカテゴリごとの累積スコアにより、送信波を反射した静止している物体のカテゴリの識別判定を行い、判定結果を得る物体判定部と、
を備え、
前記二次特徴量抽出部において算出される二次特徴量は、一次特徴量として抽出された受信強度情報が示す受信強度値に対して、一次特徴量として抽出された距離情報が示す距離および方位情報が示す方位により、受信強度値が距離および方位により規格化された受信強度値に対する変化量であるレーダ信号処理装置。
【請求項2】
自身が停止した状態において、静止している物体のカテゴリの判定を行うレーダ信号処理装置であって、
観測時刻ごとに物体からの送信波を反射した受信波による受信情報から前記物体までの距離を示す情報と前記物体の方位を示す情報と前記受信波の受信強度値を示す情報を一次特徴量として抽出する一次特徴量抽出部と、
前記一次特徴量抽出部により抽出された複数の観測時刻における一次特徴量それぞれを、送信波を反射した物体と関連付け、物体の識別記号を一次特徴量に付与するデータ格納処理部と、
前記データ格納処理部において同じ識別番号が付与された一次特徴量から時間に対する受信強度値の変化量を二次特徴量として算出する二次特徴量抽出部と、
前記二次特徴量抽出部により算出された二次特徴量について、静止している複数の異なる物体のカテゴリそれぞれに二次特徴量に対する帰属度スコアが与えられたスコア領域を表した帰属度の分布を用いて帰属度スコアを求め、物体のカテゴリごとに複数の観測時刻において同じ識別番号が付与された二次特徴量に対する帰属度スコアを加算して累積スコアを算出する帰属度算出部と、
前記帰属度算出部により算出された物体のカテゴリごとの累積スコアにより、送信波を反射した静止している物体のカテゴリの識別判定を行い、判定結果を得る物体判定部と、
を備え、
前記二次特徴量抽出部において算出される二次特徴量は、一次特徴量として抽出された受信強度情報が示す受信強度値に対して、一次特徴量として抽出された距離情報が示す伝搬距離に基づく伝搬減衰量を引き、一次特徴量として抽出された方位情報が示す方位に基づく送信波を放射するアンテナの指向性利得の最大値との利得差分を足すことにより算出される受信強度値に対する変化量であるレーダ信号処理装置。
【請求項3】
自身が停止した状態において、静止している物体のカテゴリの判定を行うレーダ信号処理装置であって、
観測時刻ごとに物体からの送信波を反射した受信波による受信情報から前記物体までの距離を示す情報と前記物体の方位を示す情報と前記受信波の受信強度値を示す情報を一次特徴量として抽出する一次特徴量抽出部と、
前記一次特徴量抽出部により抽出された複数の観測時刻における一次特徴量それぞれを、送信波を反射した物体と関連付け、物体の識別記号を一次特徴量に付与するデータ格納処理部と、
前記データ格納処理部において同じ識別番号が付与された一次特徴量から時間に対する受信強度値の変化量を二次特徴量として算出する二次特徴量抽出部と、
前記二次特徴量抽出部により算出された二次特徴量について、静止している複数の異なる物体のカテゴリそれぞれに二次特徴量に対する帰属度スコアが与えられたスコア領域を表した帰属度の分布を用いて帰属度スコアを求め、物体のカテゴリごとに複数の観測時刻において同じ識別番号が付与された二次特徴量に対する帰属度スコアを加算して累積スコアを算出する帰属度算出部と、
前記帰属度算出部により算出された物体のカテゴリごとの累積スコアにより、送信波を反射した静止している物体のカテゴリの識別判定を行い、判定結果を得る物体判定部と、
を備え、
前記帰属度算出部により求められる帰属度スコアは、静止した物体までの距離を複数の区分に分割された複数の距離区分それぞれに対応した複数の帰属度の分布を用いて前記複数の距離区分に対応して前記二次特徴量抽出部により算出された二次特徴量について求められるレーダ信号処理装置。
【請求項4】
前記二次特徴量抽出部において累積スコアを算出する帰属度スコアは、一次特徴量として抽出された距離情報が示す距離が設定距離より遠くを示すと1より小さい重み係数が乗算された帰属度スコアである請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーダ信号処理装置。
【請求項5】
前記二次特徴量抽出部において累積スコアを算出する帰属度スコアは、一次特徴量である距離情報が示す距離を複数に区分し、一次特徴量として抽出された距離情報が示す距離が遠くの区分を示すほど小さい重み係数が乗算された帰属度スコアである請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーダ信号処理装置。
【請求項6】
前記物体判定部は、物体のカテゴリごとの累積スコアの内、累積スコアが最も大きい物体のカテゴリが示す物体を、送信波を反射した静止している物体とする判定結果を得る請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーダ信号処理装置。
【請求項7】
前記物体判定部は、物体のカテゴリごとの累積スコアの内、累積スコアのスコアの伸び率が最も大きい物体のカテゴリが示す物体を、送信波を反射した静止している物体とする判定結果を得る請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーダ信号処理装置。
【請求項8】
前記物体判定部は、物体のカテゴリごとの累積スコアに応じて物体のカテゴリが示す物体に対する比率で表した判定結果を得る請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーダ信号処理装置。
【請求項9】
前記物体判定部は、全ての物体のカテゴリの累積スコアが閾値未満である場合、送信波を反射した物体はカテゴリが不明であるとの判定結果を得る請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーダ信号処理装置。
【請求項10】
前記物体判定部は、設定時間を時系列順に一定期間ごとに複数区切り、複数の一定時間内それぞれの全ての観測時刻それぞれの帰属度スコアを加算した複数の累積スコアの累積傾向により送信波を反射した物体のカテゴリの識別判定を行う請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のレーダ信号処理装置。
【請求項11】
一次特徴量抽出部が、観測時刻ごとに物体からの送信波を反射した反射波による受信情報から前記物体までの距離を示す情報と前記物体の方位を示す情報と前記反射波の受信強度値を示す情報を一次特徴量として抽出するステップと、
データ格納処理部が、前記抽出された一次特徴量に送信波を反射した物体に対する識別番号を付与するステップと、
二次特徴量抽出部が、同じ識別番号が付与された一次特徴量から時間に対する受信強度値の変化量を二次特徴量として算出するステップと、
帰属度算出部が、前記算出された二次特徴量について、物体のカテゴリごとに二次特徴量に対する帰属度スコアが与えられたスコア領域を表した帰属度の分布を用いて帰属度スコアを得、物体のカテゴリごとに複数の観測時刻において同じ識別番号が付与された二次特徴量に対する帰属度スコアを加算して累積スコアを算出するステップと、
物体判定部が、前記算出された物体のカテゴリごとの累積スコアにより、送信波を反射した静止している物体のカテゴリの識別判定を行い、判定結果を得るステップと、
を備え、
前記二次特徴量を算出するステップは、前記二次特徴量抽出部が、観測時刻ごとに抽出された一次特徴量である受信強度情報が示す受信強度値それぞれを同じ観測時刻に抽出された一次特徴量における距離情報が示す距離および方位情報が示す方位により補正し、距離および方位によらない規格化された受信強度値の変化量により二次特徴量を算出するレーダ信号処理方法。
【請求項12】
観測時刻ごとに物体からの送信波を反射した反射波による受信情報から前記物体までの距離を示す情報と前記物体の方位を示す情報と前記反射波の受信強度値を示す情報を一次特徴量として抽出する手順と、前記抽出された一次特徴量に送信波を反射した物体に対する識別番号を付与する手順と、同じ識別番号が付与された一次特徴量から時間に対する受信強度値の変化量を二次特徴量として算出する手順と、前記算出された二次特徴量について、物体のカテゴリごとに二次特徴量に対する帰属度スコアが与えられたスコア領域を表した帰属度の分布を用いて帰属度スコアを得、物体のカテゴリごとに複数の観測時刻において同じ識別番号が付与された二次特徴量に対する帰属度スコアを加算して累積スコアを算出する手順と、前記算出された物体のカテゴリごとの累積スコアにより、送信波を反射した静止している物体のカテゴリの識別判定を行い、判定結果を得る手順と、
コンピュータに実行させるレーダ信号処理プログラムであって
前記二次特徴量を算出する手順は、観測時刻Tごとに抽出された一次特徴量である受信強度情報が示す受信強度値それぞれを同じ観測時刻に抽出された一次特徴量における距離情報が示す距離および方位情報が示す方位により補正し、距離および方位によらない規格化された受信強度値の変化量により二次特徴量を算出するレーダ信号処理プログラム。
【請求項13】
観測時刻ごとに物体からの送信波を反射した反射波による受信情報から前記物体までの距離を示す情報と前記物体の方位を示す情報と前記反射波の受信強度値を示す情報を一次特徴量として抽出する手順と、前記抽出された一次特徴量に送信波を反射した物体に対する識別番号を付与する手順と、同じ識別番号が付与された一次特徴量から時間に対する受信強度値の変化量を二次特徴量として算出する手順と、前記算出された二次特徴量について、物体のカテゴリごとに二次特徴量に対する帰属度スコアが与えられたスコア領域を表した帰属度の分布を用いて帰属度スコアを得、物体のカテゴリごとに複数の観測時刻において同じ識別番号が付与された二次特徴量に対する帰属度スコアを加算して累積スコアを算出する手順と、前記算出された物体のカテゴリごとの累積スコアにより、送信波を反射した静止している物体のカテゴリの識別判定を行い、判定結果を得る手順と、
コンピュータに実行させるレーダ信号処理プログラムを記憶してある記録媒体であって
前記二次特徴量を算出する手順は、観測時刻Tごとに抽出された一次特徴量である受信強度情報が示す受信強度値それぞれを同じ観測時刻に抽出された一次特徴量における距離情報が示す距離および方位情報が示す方位により補正し、距離および方位によらない規格化された受信強度値の変化量により二次特徴量を算出する記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物体の種別(カテゴリ)判定、例えば、自動車または屋内モビリティなどの移動体に搭載されるレーダ装置に用いられ、物体からの反射波による受信信号を用いて物体のカテゴリの識別を行うレーダ信号処理装置、レーダ信号処理方法、レーダ信号処理プログラム、および記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
搭載される車両が走行中、反射物体を所定カテゴリに識別することにより、車両の制動制御を行うべきか否かの判断を支援するための車載用レーダ装置のレーダ信号処理装置が特許文献1に示されている。
特許文献1に示されたレーダ信号処理装置は、車両が走行中に物体の種別(カテゴリ)を判定するものであり、一次特徴量抽出部とデータ格納処理部と二次特徴量抽出部と帰属度算出部と物体判定部を備える。
一次特徴量抽出部は反射物体との相対距離と相対速度並びに反射物体の方位と反射強度に関わる情報を一次特徴量として抽出する。
【0003】
データ格納処理部は一次特徴量を格納し、複数の一次特徴量を複数の周期にわたって時系列で同一の物体であると関連付ける。
二次特徴量抽出部はデータ格納処理部における一次特徴量から、相対距離ごとの受信強度値、受信強度値の変化量を含む二次特徴量を抽出する。
帰属度算出部はあらかじめ定められた車両、歩行者、低位置物体を含むカテゴリに関する二次特徴量の分布に対する帰属度を算出する。
物体判定部は帰属度算出部から入力された物体に関するカテゴリごとの帰属度に基づき、当該物体がどの物体のカテゴリに属するか、すなわち、当該物体の種別(カテゴリ)を判定し、判定結果を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2016/194036公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されたレーダ信号処理装置は、車載用レーダ装置と反射物体との相対的な距離に関わる特徴、つまり、距離ごとの受信強度値、受信強度値の変化量を含む二次特徴量から物体のカテゴリを判定している。
搭載される車両が走行中、車載用レーダ装置と反射物体との相対的な距離に関わる特徴から物体のカテゴリを判定する他に、近年、さらに、車載用レーダ装置と反射物体が相対的に動かない状態、つまり、相対的な距離が変化しない、特に、車載用レーダ装置が搭載される車両などの移動体が停止した状態において、移動体を発進させる際に静止している物体を識別するレーダ信号処理装置が望まれている。
【0006】
本開示は上記した点に鑑みてなされたものであり、自身と物体との相対的な距離が変化しない、特に、自身が停止した状態において、静止している物体に対して物体からの反射波(受信波)による受信信号を用いて物体のカテゴリの識別を行うことができるレーダ信号処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るレーダ信号処理装置は、観測時刻ごとに物体からの送信波を反射した反射波による受信情報から物体までの距離を示す情報と物体の方位を示す情報と反射波の受信強度値を示す情報を一次特徴量として抽出する一次特徴量抽出部と、一次特徴量抽出部により抽出された複数の観測時刻における一次特徴量それぞれを、送信波を反射した物体と関連付け、物体の識別記号を一次特徴量に付与するデータ格納処理部と、データ格納処理部において同じ識別番号が付与された一次特徴量から時間に対する受信強度値の変化量を二次特徴量として算出する二次特徴量抽出部と、二次特徴量抽出部により算出された二次特徴量について、静止している複数の異なる物体のカテゴリそれぞれに二次特徴量に対する帰属度スコアが与えられたスコア領域を表した帰属度の分布を用いて帰属度スコアを求め、物体のカテゴリごとに複数の観測時刻において同じ識別番号が付与された二次特徴量に対する帰属度スコアを加算して累積スコアを算出する帰属度算出部と、帰属度算出部により算出された物体のカテゴリごとの累積スコアにより、送信波を反射した静止している物体のカテゴリの識別判定を行い、判定結果を得る物体判定部と、備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、自身が停止した状態において、静止している物体のカテゴリの判定ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係るレーダ信号処理装置を備えるレーダ装置を示すブロック図である。
図2】移動体が停止した状態での移動体に搭載されたレーダ装置と静止している物体との関係の一例を示す図である。
図3】レーダ装置と静止物体との距離(相対距離)に対する受信強度値の一例を示す図である。
図4】レーダ装置と静止物体との距離(相対距離)に対して規格化した受信強度値の一例を示す図である。
図5】観測時刻に対する二次特徴量である受信強度値の変化量を模式的に示す説明図である。
図6】受信強度値の変化量に対する、物体が静止物体の場合と静止した人の場合の帰属度の分布を模式的に示す図である。
図7】実施の形態1に係るレーダ信号処理装置の物体判定部における累積スコアの一例を説明するための図である。
図8】実施の形態1に係るレーダ信号処理装置の動作を示すフローチャートである。
図9】実施の形態1に係るレーダ信号処理装置のハード構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
実施の形態1に係るレーダ信号処理装置を図1から図9を用いて説明する。
図1は実施の形態1に係るレーダ信号処理装置を備えるレーダ装置を示すブロック図であり、主としてレーダ信号処理装置を示す。
実施の形態1に係るレーダ信号処理装置を備えるレーダ装置は、例えば、自動車または屋内モビリティなどの移動体に搭載される車載用レーダ装置である。
【0011】
実施の形態1に係るレーダ信号処理装置は、移動体が停止した状態において、移動体を発進させる際に静止している物体を識別できる特徴を有する。
なお、実施の形態1に係るレーダ信号処理装置は、移動体または物体の少なくとも一方が動くことによる移動体と物体との相対的な距離が変化する場合は、特許文献1に示されたレーダ信号処理装置として機能する設計がなされている。
【0012】
実施の形態1において、対象とする物体は、人、他車両、障害物などの乗り越えが困難な物体、路面の継ぎ目またはグレーチングなどの乗り越え可能な低位置物体などである。
なお、実施の形態1では説明の煩雑さをなくすため、静止している物体の一例として人(以下、静止した人という)と一つの静止物体を例にとり説明する。
【0013】
図1に示すレーダ装置は、送受信装置1と実施の形態1に係るレーダ信号処理装置2を備える。
なお、図2に移動体が停止した状態での移動体に搭載されたレーダ装置と静止している物体との関係の一例を示し、静止している物体として静止した人および静止物体を示す。
図2において、レーダ装置と静止した人との距離(相対距離)をD1、方位を示す角度をθ1、レーダ装置と静止物体との距離(相対距離)をD2、方位を示す角度をθ2として示している。
方位を示す角度はレーダ装置における送信波の照射面の中心軸CAに対する角度である。
【0014】
送受信装置1は送信波(電波)を放射し、送信波が物体により反射され、物体からの反射波を受信し、受信した反射波(受信波)に応じてデジタル情報からなる受信情報を生成する。送受信装置1により生成される受信情報は、物体との相対距離、物体との相対速度、物体の方位、および反射強度、つまり受信強度に係る情報である。
なお、実施の形態1では、移動体、つまり移動体に搭載される自身が停止した状態において、静止している物体のカテゴリの判定を行う、つまり、相対的に静止している物体の識別を行う点を特徴としている。したがって、静止している物体との相対距離は物体までの距離であり、物体との相対速度は0である。
【0015】
送受信装置1は、送信アンテナ、送信信号源、受信アンテナ、受信情報生成部、全体の制御を行う制御部を備える、一般に知られた車載用レーダ装置に用いられる送受信装置であり、詳細な説明は省略する。
例えば、送信信号源は設定された周期、例えば、100msecの周期により送信信号を送信アンテナに出力し、送信信号を受けた送信アンテナから送信波が放射される。
受信アンテナは送信アンテナが放射した送信波が物体に反射した反射波を受信し、受信した反射波(受信波)により受信情報生成部が受信情報を生成する。
【0016】
受信情報生成部により生成される受信情報である物体までの相対距離を示す情報および物体との相対速度を示す情報の生成は、周波数連続変調(FMCW:Frequency Modulated Continuous Wave)方式、FCM(Fast-Chirp Modulation)方式、またはパルスドップラー方式などを用いて行なわれる。
また、物体の方位を示す情報の生成は、MUSIC(Multiple Signal Classification)またはESPRIT(Estimation of Signal Parameters via Rotational Invariance Techniques)といった超分解能処理技術などを用いて行なわれる。
物体の方位を示す情報の生成は、MUSICまたはESPRITといった超分解能処理技術に限らず、角度FFT(fast Fourier transform)またはDBF(digital beam forming)といった処理技術を用いてもよい。
受信強度を示す情報は受信波の受信電力の大きさによって現わされる。
【0017】
すなわち、受信情報生成部が、観測時刻ごとに物体からの反射波(受信波)により静止している物体までの距離を示す情報(以下、距離情報という)と物体の速度を示す情報(以下、速度情報という)と物体の方位を示す情報(以下、方位情報という)と反射強度(受信強度)を示す情報(以下、受信強度情報という)を受信情報として生成する。
【0018】
レーダ信号処理装置2は一次特徴量抽出部21とデータ格納処理部22と特徴量記憶部23と二次特徴量抽出部24と帰属度データベース25と帰属度算出部26と物体判定部27を備える。
一次特徴量抽出部21は、観測時刻ごとに送受信装置1における受信情報生成部が生成する受信情報から距離情報と方位情報と受信強度情報を一次特徴量の情報として抽出する。
複数の物体からの反射波(受信波)による受信情報が存在する場合、複数の物体に関する一次特徴量の情報を抽出する。
【0019】
一次特徴量の情報の抽出は、送信信号を出力する設定された周期と同期した周期に基づいて行われ、一次特徴量を抽出した時刻、いわゆる送信波のための送信信号を出力した時刻もしくは受信波を受信した時刻が観測時刻である。
距離情報と方位情報と受信強度情報による一次特徴量の情報は観測時刻に紐づけされる。
観測時刻は世界標準時のような絶対的な時刻である必要はなく、レーダ装置内において用いられるクロック信号を参照する等による相対的な時刻でもよい。
【0020】
また、一次特徴量に紐づけされる観測時刻はデータの更新時刻を記した時刻タグもしくはデータの入力順序を記した順序タグでもよい。
要するに、観測時刻は一次特徴量の情報を抽出した時刻を相対的な時間の変化として現わせればよく、クロック信号が示す時刻、時刻タグ、または順序タグなどを含み、いずれの場合においても以下に観測時刻として説明する。
【0021】
データ格納処理部22は、一次特徴量抽出部21により抽出され、観測時刻に紐づけされた一次特徴量の情報(以下、煩雑さを避けるため、単に一次特徴量として説明する。)をメモリにより構成される特徴量記憶部23に順次格納させる格納処理機能部と、観測時刻に紐づけされた特徴量記憶部23に格納される一次特徴量を設定時間内において時系列的に送信波を反射した物体と関連付け、物体に対する識別番号(ID)を紐づけして特徴量記憶部23に識別番号が付与された一次特徴量として格納させる物体識別機能部を有する。
【0022】
設定時間内において同じ物体から反射された反射波(受信波)による一次特徴量は同じ識別番号がデータ格納処理部22における物体識別機能部により紐づけされる。
なお、設定時間による観測は実施の形態1に係るレーダ信号処理装置を備えるレーダ装置が搭載された移動体が発進されるまで設定時間ごとに順次繰り返される。
【0023】
データ格納処理部22における物体識別機能部による一次特徴量と識別番号の関連付けは、例えば、設定時間内における複数の観測時刻における特徴量記憶部23に格納される一次特徴量に対して時系列に送信波を反射した同一の物体からの反射波の対応付けにより行う。
この時のデータ格納処理部22における物体識別機能部による物体の識別は、設定時間内における複数の観測時刻における一次特徴量とともに、例えばカルマンフィルタを用いた追尾処理により同一の物体として識別し、データ格納処理部22における物体識別機能部は同一の物体に関する一次特徴量同士の対応付けを行う。
【0024】
また、図2に示したように、移動体が停止した状態において、静止物体からの送信波が反射された反射波は観測される反射位置が同一となるので、相対位置、つまり、距離情報と方位情報が同一となる。また、静止した人からの送信波が反射された反射波は観測される反射位置が呼吸および体動のように時間的に揺らぎがあるものの、距離情報と方位情報に対して揺らぎを考慮することにより、距離情報と方位情報をみなすことができる。
したがって、距離情報と方位情報を用いることにより静止している物体が同一であるか否かの識別が可能であり、データ格納処理部22は距離情報と方位情報を用いることにより一次特徴量に対して同一の物体によるものであるとの関連付けを行ってもよい。
【0025】
例えば、前の観測時刻における距離情報と方位情報が同一もしくは揺らぎを考慮した範囲内にある一次特徴量は前の観測時刻における一次特徴量と同じ識別番号とする。
前の観測時刻における距離情報と方位情報の少なくとも一方、特に方位情報が異なる一次特徴量は前の観測時刻における一次特徴量と異なる識別番号を一次特徴量に付す。
この時、移動体が停止しているとの情報を用いることにより、物体が同一であるか否かの識別がより精確になる。
【0026】
すなわち、特徴量記憶部23には、同一の物体からの送信波を反射した反射波(受信波)に対してデータ格納処理部22により観測時刻に紐づけされ、同一の識別番号が付与されたた一次特徴量である距離情報と方位情報と受信強度情報が格納される。
特徴量記憶部23には、設定時間内における複数の観測時刻それぞれにおける観測時刻に紐づけされ、識別番号が付与された距離情報と方位情報と受信強度情報を有する一次特徴量が格納される。
【0027】
移動体が停止した状態において、静止物体または静止した人からの送信波が反射された反射波であることは一次特徴量である移動体と物体との相対速度を示す情報(以下、相対速度情報という)が0であることにより認識できる。
したがって、相対的に静止している物体を前提にデータ格納処理部22による物体の同一であるか否かの識別を行うため、相対速度情報を用いて相対速度を持つ物体の同一であるか否かの識別が不要であり、データ格納処理部22における計算量は削減できる。
【0028】
なお、移動体が停止しているとの情報と一次特徴量である距離情報に変動がないとの情報により、移動体が停止した状態において受信波が静止物体または静止した人から送信波が反射された反射波であることを認識するようにしてもよい。
ここで言う距離情報に変動がないとは、静止した人による呼吸および体動のように時間的な距離の揺らぎは変動がないとしている。
【0029】
受信波には一般に雑音またはマルチパスによる急峻な受信強度変化が重畳されることがあり、後段における安定した判定結果を得るために、設定した時間(設定時間)もしくは設定した観測点(観測時刻)による受信強度に対するフィルタ、例えば、移動平均を行って受信強度変化の影響が抑制された受信強度情報を一次特徴量としてデータ格納処理部22が受け、特徴量記憶部23に格納してもよい。
【0030】
また、データ格納処理部22において、同一の識別番号の一次特徴量が更新もしくは同一の識別番号の一次特徴量が追加されない状態が設定した観測数に達したものについては、設定した観測数に達した時点でデータ格納処理部22は特徴量記憶部23に格納された同一の識別番号の一次特徴量を古い順に順次消去させてもよい。
このように消去させることにより特徴量記憶部23のメモリ空間、メモリ容量を節約することができる。
【0031】
二次特徴量抽出部24は、データ格納処理部22により識別番号が付与された一次特徴量を抽出し、抽出した同じ識別番号が付与された一次特徴量から時間に対する受信強度値の変化量を同じ識別番号が付与された二次特徴量として算出する。
すなわち、二次特徴量抽出部24は、同じ識別番号が付与された一次特徴量として抽出された受信強度情報が示す受信強度値を用いて時間に対する受信強度値の変化量を同じ識別番号が付与された二次特徴量として抽出する。
受信強度値の変化量は、同じ識別番号が付与された受信強度値の現在および直前の観測における受信強度値の差もしくは比で定義する特徴量である。
要するに、二次特徴量抽出部24は、同じ物体であると想定した物体から反射された反射波(受信波)に対する受信強度値の変化量を二次特徴量として算出する。
【0032】
ところで、静止物体に対する受信強度値は、静止物体に対する送信波の反射特性が変わらないため、静止物体は送信波を一定の電力で反射するので、時間に対して同じ値を示し、変化しない。
一方、静止した人に対する受信強度値は、静止している場合でも呼吸または無意識にバランスをとることによる体動によって体表面の形状および空間における微妙な位置ずれが発生し、時間に対して変動する。
なお、体動は、無意識にバランスをとる場合だけではなく、例えば、立っている状態での作業、およびスクワットといった移動を伴わない運動など、静止した人までの距離が同じであり、人が移動を伴わずに体を動かしている状態を意味する。
【0033】
例えば、呼吸により腹部は数ミリ変位し、体動はそれ以上の動きとなる。使用する送信波の周波数をミリ波とすると、呼吸または体動による変位は送信波の1波長を超える動きとなり、かつ体表面の変化による単純な反射断面積の変化または体の部分の位置に関係する伝搬路の変化により、時間的に受信強度値の揺らぎが観測される。
受信強度値の平均基準で考えた場合でも数dBの変化が発生するため、受信強度値の変化量は体の動きに合わせて時々刻々と変化する。
【0034】
一方、同じ物体から送信波が反射されて受信された受信波であっても、レーダ装置と物体との距離および送受信装置1における送信アンテナおよび受信アンテナの指向性利得に応じて物体に対する受信強度値は変化する。
すなわち、送受信装置1における送信アンテナから放射され、物体から反射されて受信アンテナに受信される電磁波は伝搬距離およびアンテナの指向性利得により、同じ物体からの受信波であっても物体までの距離および方位によって受信強度値は異なる。
【0035】
図3に、静止物体までの相対距離、つまり、レーダ装置から静止物体までの距離に対する受信強度値の一例を示す。
図3に示すように、受信強度値は距離に応じた空間減衰により遠くなるにつれて低くなる。
なお、物体が静止した人である場合、呼吸および体動のように時間的に揺らぎにより同一の位置にあっても受信強度値が変化量を持つが、静止した人までの相対距離に対する受信強度値は、図3に一例として示す曲線に沿って時間的に揺らぎを持った変化量が重畳された特性を示す。つまり、図3において、相対距離に対して受信強度値が揺らぎを持った変化量に相当する幅を持った線として表すことができる。
【0036】
したがって、二次特徴量抽出部24により二次特徴量として抽出される受信強度値の変化量は次のようにして算出される。
すなわち、最初に、観測時刻ごとに、一次特徴量抽出部21により抽出され、データ格納処理部22に格納された一次特徴量である受信強度情報が示す受信強度値を、一次特徴量として抽出された距離情報が示す距離および方位情報が示す方位を用いて補正することにより静止している物体までの距離および方位によらない値に補正する。
【0037】
二次特徴量抽出部24は、一次特徴量抽出部21から抽出された受信強度値を抽出する第1の機能に次いで第2の機能として一次特徴量抽出部が抽出した受信強度情報が示す受信強度値を、距離情報が示す距離および方位情報が示す方位により、受信強度値が相対距離および方位によらない規格化された値とする。
以下の説明において、一次特徴量は同じ観測時刻の受信強度情報、距離情報、および方位情報である。
【0038】
静止している物体までの距離に基づく補正は、一次特徴量として抽出された距離情報が示す距離に基づく伝搬距離の減衰量を考慮した補正である。
距離に基づく伝搬距離の減衰量は、基本的には次式(1)で示される自由空間損失の減衰量LOSを用いる。
LOS=(4πr/λ)Λ2 ・・・(1)
なお、上式(1)において、rは一次特徴量として抽出された距離情報が示す距離、λは送信波の波長であり、LOSは(4πr/λ)の2乗である。
【0039】
静止している物体に対する方位に基づく補正は、一次特徴量として抽出された方位情報が示す方位に対する送受信装置1における送信アンテナおよび受信アンテナの指向性利得分を考慮した補正である。
図4に、物体が静止物体である場合の静止物体までの距離および方位(角度)に基づく補正後の相対距離に対する受信強度値の一例を示す。
物体が静止した人である場合、図4において、相対距離に対して受信強度値が揺らぎを持った変化量に相当する幅を持った線として表すことができる。
【0040】
従って、補正される受信強度値は、二次特徴量抽出部24により、一次特徴量として抽出された受信強度情報が示す受信強度値に対して、例えば、伝搬距離に基づく伝搬減衰量を引き、アンテナの指向性利得の最大値との利得差分を足すことにより算出される。
その結果、補正された受信強度値は、同じ物体から送信波が反射されて受信された受信波であれば、物体までの距離および物体の方位によらず同じ値となり、距離および方位により規格化された受信強度値を示す。
【0041】
このように、受信強度値として距離および方位により規格化された値を利用するため、後述する帰属度算出部26および帰属度データベース25で同様の計算、つまり距離および方位による規格化がなされていれば、物体のカテゴリの識別において、例えば、受信強度値の平均または距離および方位による減衰量を演算して補正した値などを基準値として用いることを必要としない。
以下、規格化された受信強度値を補正された受信強度値として説明する。
【0042】
二次特徴量抽出部24は、識別番号が付与された観測時刻に紐づけされた補正された受信強度値を示す受信強度情報(以下、単に、補正された受信強度値と略称する)を特徴量記憶部23に格納する。
補正された受信強度値は距離情報が示す距離および方位情報が示す方位により補正された情報であるので、距離情報および方位情報を特徴量記憶部23に格納する必要はなく、受信強度値を格納するための特徴量記憶部23におけるメモリ空間、メモリ容量を削減できる。
【0043】
次に、二次特徴量抽出部24は補正された受信強度値を用いて時間に対する変化量を算出する。
すなわち、二次特徴量抽出部24は、第2の機能に次いで第3の機能として同じ識別情報を有する補正された受信強度値により時間に対する受信強度値の変化量を算出し、二次特徴量として抽出する。
【0044】
二次特徴量抽出部24は、設定時間内における同じ識別番号が付与された複数の観測時刻における補正された受信強度値を紐づけされた観測時刻により時系列的に順次特徴量記憶部23から読み出し、順次観測時刻における補正された受信強度値から同じ識別番号が付与された直前の観測時刻における補正された受信強度値の差もしくは比を算出し、算出された差もしくは比を二次特徴量として抽出し、抽出された二次特徴量に識別番号を付与した二次特徴量を示す情報を特徴量記憶部23に格納する。
【0045】
二次特徴量抽出部24により算出された二次特徴量は距離および方位により規格化された受信強度値の変化量である。
特徴量記憶部23は距離および方位により規格化された受信強度値の変化量を二次特徴量として格納するため、特徴量記憶部23におけるメモリ空間、メモリ容量を削減できる。
【0046】
なお、観測時刻ごとに、一次特徴量抽出部21による一次特徴量の抽出、および二次特徴量抽出部24による二次特徴量の抽出を一連の処理として処理し、特徴量記憶部23に一次特徴量抽出部21により抽出される一次特徴量を格納せず、特徴量記憶部23に補正された受信強度値及び二次特徴量を格納するようにしてもよい。
つまり、特徴量記憶部23に格納される情報は、観測時刻に紐づけされ、識別番号が付与された補正された受信強度値と二次特徴量である。
このように、特徴量記憶部23に一次特徴量抽出部21により抽出される一次特徴量を格納しないことにより、特徴量記憶部23におけるメモリ空間、メモリ容量を削減できる。
【0047】
物体が静止物体であると、時間的に補正された受信強度値が変化しないため、センサ、環境の揺らぎ、および雑音の影響を受けるものの、図5に破線Aとして示すように観測時刻に係らず、受信強度値の変化量はほぼ0となる。
一方、物体が静止した人であると、呼吸による時間的に揺らぎを持ち、図5に実線Bとして示すように観測時刻に従って受信強度値の変化量は脈動する。
【0048】
なお、図5において、呼吸に由来する時間的な揺らぎによる周期的な受信強度値の変化量を実線Bにより示しているが、体動に由来する時間的な揺らぎは周期性のない受信強度値の変化量として表れる。
いずれにしても、物体が静止した人である場合、設定時間内において、二次特徴量は変動する。
【0049】
帰属度データベース25は、あらかじめ定めた静止状態の物体のカテゴリについてあらかじめ観測を行って取得した二次特徴量の分布をカテゴリごとにおける二次特徴量に対する帰属度を数値化したスコアとして与えた帰属度スコアによる分布、つまり、帰属度の分布を表した情報を格納する。
帰属度の分布は、カテゴリごとの性質に基づいて導出した二次特徴量の分布をカテゴリごとにおける二次特徴量に対する帰属度を数値化したスコアとして与えた帰属度スコアによる分布としてもよい。
【0050】
実施の形態1において、帰属度の分布を作成するための二次特徴量は、二次特徴量抽出部24は補正された受信強度値を用いて時間に対する変化量を算出し、二次特徴量としていると同様に、距離および方位により補正(規格化)された受信強度値を用いて算出された受信強度値の変化量である。
このように、帰属度データベース25は、距離および方位により補正された受信強度値の変化量を用いて作成した帰属度の分布を格納しているため、帰属度データベース25におけるメモリ空間、メモリ容量を削減できる。
【0051】
帰属度データベース25に関する以下の説明において、煩雑さを避けるため、距離および方位により補正された受信強度値の変化量である二次特徴量を単に二次特徴量として説明する。
帰属度は静止している物体のカテゴリごとに二次特徴量である受信強度値の変化量が起こり得る値を数値である帰属度スコアとして与え、与えられた帰属度スコアにより物体のカテゴリごとの帰属度の分布として表される。
【0052】
帰属度の分布は静止している物体のカテゴリのスコア領域として表される。
複数の異なる静止している物体のカテゴリそれぞれにおいて、カテゴリに属する度合いが大きいと帰属度スコアが大きく、カテゴリに属する度合いが小さいと帰属度スコアが小さく、カテゴリに属する度合いが0であると帰属度スコアの値が0である。
【0053】
例えば、物体が静止物体であると、時間的に補正された受信強度値がほとんど変化しないため、二次特徴量に基づいた帰属度スコアは、図6に破線Cにより示すように、受信強度値の変化量が小さい場合に大きくなる。
すなわち、静止物体に対する二次特徴量に基づいた帰属度の分布は、静止物体からの受信波による受信強度における性質に基づき、時間に対する受信強度値の変化がほとんどないため、二次特徴量である受信強度値の変化量がほとんど0を中心に変化量の幅が小さい分布として作成される。
【0054】
一方、物体が静止した人であると、時間的に補正された受信強度値が呼吸および体動により変化するため、二次特徴量に基づいた帰属度スコアは、図6に実線Dにより示すように、受信強度値の変化量が大きい場合に大きくなる。
すなわち、静止した人に対する二次特徴量に基づいた帰属度の分布は、静止した人からの受信波による受信強度における性質に基づき、時間に対する受信強度値の変化が呼吸による時間的に揺らぎもしくは呼吸および体動による時間的の揺らぎにより、二次特徴量である受信強度値の変化量を観測により取得したデータを基準に静止物体に対する受信強度値の変化量より大きい値を中心に変化量の幅が大きい分布として作成される。
【0055】
帰属度の分布の作成は、カテゴリごとに観測により取得した受信強度値の変化量(サンプル)を教師データとして機械学習による処理を行うことにより作成する。
例えば、カテゴリごとに受信強度値の変化量をサンプルとして取得した教師データから受信強度値の変化量ごとの頻度を求め、帰属度の分布を作成する。または、カテゴリごとに受信強度値の変化量をサンプルとして取得した教師データから代表値、例えば、平均値、中央値、標準偏差値、および分布形状を求めて帰属度の分布を作成する。
静止している物体のカテゴリの識別を行っている際に得られる物体のカテゴリに対する受信強度値の変化量を順次教師データとして使用し、帰属度データベース25における帰属度の分布を示すデータの更新を行ってもよい。
【0056】
または、帰属度の分布はカテゴリごとに受信強度値をサンプルとして取得し、ヒストグラムを作成したのち規格化することにより作成してもよい。
なお、受信強度値の変化量を観測により取得できない場合、経験的、あるいは文献またはデータから得られる数値を基準として受信強度値の変化量に対する帰属度の分布を作成してもよい。
【0057】
図6において、横軸を二次特徴量、つまり、距離および方位により補正された受信強度値の変化量を示し、縦軸を帰属度、つまり、帰属度スコアを示す。
図6において、縦軸で示す帰属度は受信強度値の変化量に対していずれの静止している物体のカテゴリに帰属していると推定されるかの度合いを帰属度スコアとして示したものである。
図6において、破線Cが静止物体に対して割り振った受信強度値の変化量と当該変化量に対する帰属度の大きさ(帰属度スコア)の領域を分布曲線として示し、分布曲線に囲まれた領域が静止物体のカテゴリを示すスコア領域を表している。
【0058】
また、図6において、実線Dが静止した人に対して割り振った受信強度値の変化量と当該変化量に対する帰属度の大きさ(帰属度スコア)の領域を分布曲線として示し、分布曲線に囲まれた領域が静止した人のカテゴリを示すスコア領域を表している。
静止した人のカテゴリを示すスコア領域は、受信強度値の変化量が静止した人に対して起こり得る値を帰属度スコアとして与えて作成しているため、重機の揺らぎのように静止した人では起こりえない大きさの受信強度値の変化量は静止した人のカテゴリを示すスコア領域内には存在しない。
【0059】
帰属度データベース25は、静止物体のカテゴリに対して破線Cで示した受信強度値の変化量に対する帰属度スコアを格納し、静止した人のカテゴリに対して実線Dで示した受信強度値の変化量に対する帰属度スコアを格納する。
なお、静止物体に対して、1つのカテゴリに割り振ったものを示しているが、他車両、乗り越えが困難な物体、および乗り越え可能な低位置物体など複数の静止物体それぞれに対するカテゴリを示すスコア領域を表した帰属度の分布を作成してもよい。
【0060】
図6において、静止物体のカテゴリに対する破線Cにより示すスコア領域と静止した人のカテゴリに対する実線Dで示すスコア領域とが重複する領域があるが、静止物の受信強度値の変化量が小さいという経験的な知見に基づき、重複する領域に閾値を設定し、受信強度値の変化量が閾値より小さい領域を静止物体のカテゴリとし、大きい領域を静止した人のカテゴリとしてもよい。
また、受信強度値の変化量が閾値より小さい領域を、図6において、二点鎖線C´で示すように矩形のスコア領域により表した帰属度の分布を静止物体のカテゴリとし、大きい領域を、図6において、一点鎖線D´で示すように矩形のスコア領域により表した帰属度の分布を静止した人のカテゴリとしてもよい。
【0061】
帰属度算出部26は、二次特徴量抽出部24において識別番号が付与された二次特徴量について帰属度データベース25に格納された帰属度の分布を用いて静止している物体のカテゴリごとに帰属度スコアを求める。
例えば、図6に示した静止物体のカテゴリによる帰属度の分布と静止した人のカテゴリによる帰属度の分布が帰属度データベース25に格納されている場合、帰属度算出部26により求められる二次特徴量対するカテゴリごとの帰属度スコアは次のようになる。
【0062】
帰属度データベース25において静止物体のカテゴリに対する破線Cにより示すスコア領域と静止した人のカテゴリに対する実線Dで示すスコア領域とが重複する領域より受信強度値の変化量が小さい領域において、静止物体のカテゴリに対する帰属度スコアは二次特徴量抽出部24において算出された二次特徴量に対応して与えられた帰属度データベース25における静止物体のカテゴリに対する帰属度スコアが帰属度算出部26により求められ、静止した人のカテゴリに対する帰属度スコアは帰属度算出部26により帰属度データベース25から0として求められる。
【0063】
重複する領域において、静止物体のカテゴリに対する帰属度スコアは二次特徴量抽出部24において算出された二次特徴量に対応して与えられた帰属度データベース25における静止物体のカテゴリに対する帰属度スコアが帰属度算出部26により求められ、静止した人のカテゴリに対する帰属度スコアは二次特徴量抽出部24において算出された二次特徴量に対応して与えられた帰属度データベース25における静止した人のカテゴリに対する帰属度スコアが帰属度算出部26により求められる。
【0064】
重複する領域より受信強度値の変化量が大きい領域において、静止物体のカテゴリに対する帰属度スコアは帰属度算出部26により帰属度データベース25から0として求められ、静止した人のカテゴリに対する帰属度スコアは二次特徴量抽出部24において算出された二次特徴量に対応して与えられた帰属度データベース25における静止した人のカテゴリに対する帰属度スコアが帰属度算出部26により求められる。
【0065】
帰属度算出部26により求められる帰属度スコアは、観測時刻ごとに二次特徴量抽出部24により算出された二次特徴量を用いて行ない、求めた帰属度スコアは静止している物体のカテゴリごとに観測時刻に紐づけされた識別番号が付与されてメモリに記憶される。
観測時刻ごとに帰属度スコアを求める場合、二次特徴量を示す情報を二次特徴量抽出部24より直接受けることにより、二次特徴量を示す情報を特徴量記憶部23に格納しなくてもよく、特徴量記憶部23におけるメモリ空間、メモリ容量を削減できる。
【0066】
また、帰属度算出部26が特徴量記憶部23に格納された二次特徴量を読み出すことにより帰属度スコアを求めてもよい。特徴量記憶部23に格納された設定時間内における複数の観測時刻に対する二次特徴量を帰属度算出部26が一括して読み出し、読みだした複数の二次特徴量それぞれに対して帰属度算出部26がカテゴリごとに帰属度スコアを求めてもよい。
【0067】
帰属度算出部26は、静止している物体のカテゴリごとに二次特徴量抽出部24により算出された二次特徴量に対する帰属度スコアを求める第1の機能に次いで第2の機能として静止している物体のカテゴリごとに複数の観測時刻において同じ識別番号が付与された二次特徴量に対する帰属度スコアを加算して累積スコアを算出する。
【0068】
今、物体として静止した人を想定した場合、観測時刻ごとに同じ識別番号が付与された二次特徴量抽出部24により算出された二次特徴量は大きく、帰属度データベース25に格納された静止した人のカテゴリにおける帰属度の分布により、静止した人のカテゴリにおける帰属度算出部26により求められた観測時刻ごとの帰属度スコアは大きい。その結果、同じ識別番号が付与された二次特徴量に対する帰属度スコアを観測時刻ごとに時系列的に順次加算することにより、例えば図7に破線Fに示すように、観測時刻に対するスコアの伸び率、つまり傾きは大きく、しかも、累積スコアが大きくなる。
【0069】
一方、物体として静止した人を想定した場合、帰属度データベース25に格納された静止物体のカテゴリにおける帰属度の分布により、静止物体のカテゴリにおける帰属度算出部26により求められた観測時刻ごとの帰属度スコアは小さい。その結果、同じ識別番号が付与された二次特徴量に対する帰属度スコアを観測時刻ごとに時系列的に順次加算したとしても、例えば図7に実線Eに示すように、観測時刻に対するスコアの伸び率、つまり傾きは小さく、しかも、累積スコアは小さい。
すなわち、物体として静止した人を想定した場合、静止した人のカテゴリに対する累積スコアは静止物体のカテゴリに対する累積スコアに比較して区別するために十分に大きな値を示す。
【0070】
また、物体として静止物体を想定した場合、観測時刻ごとに同じ識別番号が付与された二次特徴量抽出部24により算出された二次特徴量は小さく、帰属度データベース25に格納された静止物体のカテゴリにおける帰属度の分布により、静止物体のカテゴリにおける帰属度算出部26により求められた観測時刻ごとの帰属度スコアは大きい。その結果、同じ識別番号が付与された二次特徴量に対する帰属度スコアを観測時刻ごとに時系列的に順次加算することにより、観測時刻に対するスコアの伸び率、つまり傾きは大きく、しかも、累積スコアが大きくなる。
【0071】
一方、物体として静止物体を想定した場合、帰属度データベース25に格納された静止した人のカテゴリにおける帰属度の分布により、静止した人のカテゴリにおける帰属度算出部26により求められた観測時刻ごとの帰属度スコアは小さい。その結果、同じ識別番号が付与された二次特徴量に対する帰属度スコアを観測時刻ごとに時系列的に順次加算したとしても、時刻に対するスコアの伸び率、つまり傾きは小さく、しかも、累積スコアは小さい。
すなわち、物体として静止物体を想定した場合、静止物体のカテゴリに対する累積スコアは静止した人のカテゴリに対する累積スコアに比較して区別するために十分に大きな値を示す。
【0072】
物体判定部27は、帰属度算出部26により同じ識別番号が付与されたカテゴリごとの累積スコアに基づき、同じ識別番号が付与された物体のカテゴリ、実施の形態1においては静止物体のカテゴリまたは静止した人のカテゴリに属するか、識別判定困難かの判定を行い、静止物体のカテゴリに属すると判定した場合は送信波を反射した物体を静止物体と判定し、静止した人のカテゴリに属すると判定した場合は送信波を反射した物体を静止した人と判定し、当該判定結果を出力する。
物体判定部27により求められた判定結果は制御部(図示せず)により、例えば移動体の制動制御あるいは危険予測の表示または音声による通知に用いられる。
【0073】
物体判定部27による物体の識別判定は、複数の静止している物体のカテゴリ、実施の形態1では静止物体のカテゴリと静止した人のカテゴリそれぞれに対する累積スコアの内累積スコアが最も大きいとされた静止している物体のカテゴリが示す物体を送信波を反射した物体と識別判定する。
または、複数のカテゴリそれぞれに対する累積スコアの内累積スコアのスコアの伸び率(微分的処理)が最も大きいとされた静止している物体のカテゴリが示す物体を送信波を反射した物体と識別判定する。
【0074】
物体判定部27は、例えば、図7に示した例では、静止した人のカテゴリに対する累積スコアが静止物体のカテゴリに対する累積スコアに比較して十分に大きな値を示すので、送信波を反射した物体は静止した人と識別判定する。
また、図7に示した例では、静止した人のカテゴリに対する累積スコアにおける時刻に対するスコアの伸び率(微分値)は静止物体のカテゴリに対する累積スコアにおける時刻に対するスコアの伸び率(微分値)に比較して十分に大きな値を示すので、送信波を反射した物体は静止した人と識別判定することもできる。
【0075】
なお、判定結果として、一つの物体に特定するのではなく、累積スコアが現れたカテゴリの物体に対する比率で表した判定結果でもよい。
例えば、物体判定部27は、図7に示した例において、静止した人のカテゴリに対する累積スコア対静止物体のカテゴリに対する累積スコアが8対2である場合、送信波を反射した物体は静止した人の確率が80%、静止物体の確率が20%というように、静止している物体のカテゴリごとにどのくらいの帰属度を持つかを数値で示す判定結果とする識別判定を行う。
【0076】
また、物体判定部27は、全ての物体のカテゴリに対する累積スコアが設定した閾値未満である場合、送信波を反射した物体は不明、つまり識別判定困難との判定結果を出力してもよい。
レーダ信号処理装置2が物体のカテゴリの識別判定の開始直後など、一次特徴量抽出部21により抽出される一次特徴量である受信強度情報が示す受信強度値および距離情報が示す距離を誤って推定することがあり、距離および受信強度値に基づいて算出される二次特徴量に誤差が生じて二次特徴量として高い精度が得られず、その結果、帰属度算出部26により求めた帰属度スコアが真の帰属度スコアとの間に誤差が生じることによる帰属度スコアの揺らぎにより、物体判定部27が誤ったカテゴリの判定結果を出力することを、累積スコアが閾値未満である場合に識別判定困難とすることにより防ぐことができる。
【0077】
物体判定部27は、設定時間内の全ての観測時刻それぞれの帰属度スコアを用い、同じ識別番号が付与された二次特徴量に対する帰属度スコアを加算した累積スコアにより判定結果を得てもよく、また、設定時間を一定期間ごとに区切って一定時間内の全ての観測時刻それぞれの帰属度スコアを用い、同じ識別番号が付与された二次特徴量に対する帰属度スコアを加算した累積スコアにより判定結果を更新してもよい。
判定結果を得るための累積スコアを得るために加算される帰属度スコアは多いほど、つまり設定時間もしくは一定時間が長いほど帰属度スコアの揺らぎによる影響が排除されるため、設定時間もしくは一定時間を長くすることにより信頼性を上げることができる。
【0078】
物体判定部27は、設定時間を一定期間ごとに区切って一定時間内の全ての観測時刻それぞれの帰属度スコアを用い、同じ識別番号が付与された二次特徴量に対する帰属度スコアを加算した累積スコアを得、得た複数の累積スコアの累積傾向により送信波を反射した物体の識別判定を行ってもよい。
このように、一定期間ごとに得られた累積スコアの累積傾向により物体の識別判定を行なうことにより、レーダ信号処理装置が物体のカテゴリの識別判定の開始直後など、二次特徴量に誤差があり、帰属度スコアの揺らぎによる誤識別される可能性を抑制できる。
【0079】
物体判定部27は、一次特徴量抽出部21により抽出された一次特徴量である距離情報が示す距離に応じて帰属度スコアに重み係数を乗算した値を帰属度スコアとし、当該帰属度スコアを加算することにより累積スコアを得てもよい。
例えば、一次特徴量である距離情報が示す距離が設定距離を超えた場合、1より小さい重み係数を帰属度スコアに乗算した値を帰属度スコアとして用いる。
【0080】
レーダ信号処理装置を備えるレーダ装置が搭載された移動体から静止している物体までの距離が遠く、物体からの送信波が反射された反射波(受信波)における受信強度値が小さい場合、雑音および環境の影響による一次特徴量である受信強度情報が示す受信強度値の揺らぎによる帰属度スコアの誤差が想定されるため、物体までの距離が遠い場合に帰属度スコアを小さくすることにより物体のカテゴリの誤識別を減らすことができる。
なお、設定距離を基準に設定距離を超えた場合に1より小さい重み係数としたが、距離を複数に区分し、遠くの区分ほど重み係数を小さくするようにしてもよい。
【0081】
次に、実施の形態1に係るレーダ信号処理装置2の動作を図8を用いて説明する。
なお、以下の説明において、設定時間内の観測時刻をt(k=0、1~K)とし、観測初期時刻をtとしてtまで(K+1)回順次観測されると仮定する。
まず、ステップST1において、一次特徴量抽出部21が送受信装置1から観測時刻t(k=0、1~K)ごとに時系列に順次距離情報と方位情報と受信強度情報を一次特徴量として抽出する。抽出された一次特徴量は観測時刻tに紐づけされる。
ステップST1は一次特徴量抽出部21が一次特徴量を抽出する一次特徴量の抽出ステップである。
【0082】
ステップST2において、データ格納処理部22が一次特徴量抽出部21に抽出され、観測時刻tに紐づけされた一次特徴量を記憶部である特徴量記憶部23に時系列に順次格納する。
ステップST3において、データ格納処理部22が特徴量記憶部23に時系列に順次格納される一次特徴量に送信波を反射した物体と関連付けて識別番号を付与する。
ステップST4において、データ格納処理部22が観測時刻tに紐づけされ、識別番号が付与された一次特徴量を記憶部である特徴量記憶部23に時系列に順次格納する。
【0083】
ステップST2からステップST4は分割された処理ステップではなく、データ格納処理部22が、一次特徴量抽出部21に観測時刻tに抽出された一次特徴量を特徴量記憶部23に格納し、一次特徴量抽出部21に観測時刻tk+1に抽出された一次特徴量を特徴量記憶部23に格納するとともに、観測時刻tk+1に抽出された一次特徴量に対して観測時刻tに抽出された一次特徴量とともに例えばカルマンフィルタを用いた追尾処理により送信波を反射した物体同士の対応付けを行い同じ物体に対して同じ識別番号を付与して特徴量記憶部23に格納するステップである。
【0084】
または、移動体が停止した状態において静止している物体を識別することを前提としているので、一次特徴量における距離情報と方位情報を比較することにより、送信波を反射した物体同士の対応付けを行うことができる。そのため、データ格納処理部22が、識別番号が付与されない一次特徴量を特徴量記憶部23に格納することなく、観測時刻tに抽出された一次特徴量に対して観測時刻tにより前に抽出された一次特徴量における距離情報と方位情報を比較することにより識別番号を付与し、観測時刻tに紐づけされ、識別番号が付与された一次特徴量を記憶部である特徴量記憶部23に格納すればよい。
【0085】
例えば、観測初期時刻tに抽出された一次特徴量に対して識別番号1を付与して特徴量記憶部23に格納し、観測時刻tに抽出された一次特徴量が観測初期時刻tに抽出された一次特徴量と送信波を反射した物体が同じと推定されれば識別番号1を付与し、異なると推定されれば識別番号2を付与して特徴量記憶部23に格納する。同様に、順次時系列順に観測時刻tに抽出された一次特徴量に対し、送信波を反射した物体が同じと推定される観測時刻tより前に抽出された一次特徴量と同じ識別番号を付与して特徴量記憶部23に格納する。
【0086】
要するに、ステップST2からステップST4は、データ格納処理部22が、観測時刻tに抽出された一次特徴量に送信波を反射した物体に対する識別番号を付与するステップである。
また、ステップST2からステップST4は、データ格納処理部22が、観測時刻tに紐づけされ、識別番号が付与された一次特徴量を記憶部である特徴量記憶部23に格納するステップである。
【0087】
ステップST5において、二次特徴量抽出部24が、観測時刻tに抽出された一次特徴量における受信強度情報が示す受信強度値を距離情報が示す距離および方位情報が示す方位により補正し、距離および方位によらない規格化された受信強度値とする。
具体的には、ステップST5において、二次特徴量抽出部24が、観測時刻tに抽出された一次特徴量における受信強度情報が示す受信強度値に対して、一次特徴量として抽出された距離情報が示す伝搬距離に基づく伝搬減衰量を引き、一次特徴量として抽出された方位情報が示す方位に基づく送信波を放射するアンテナの指向性利得の最大値との利得差分を足すことにより算出される、距離および方位によらない規格化された受信強度値とする。
【0088】
ステップST5は、ステップST1において一次特徴量抽出部21が観測時刻tに抽出した一次特徴量に対して二次特徴量抽出部24が規格化するステップであり、規格化した一次特徴量を特徴量記憶部23に時系列に順次格納する。この場合、ステップST5とステップST1は分割された処理ステップではない。
【0089】
または、ステップST5は、ステップST3においてデータ格納処理部22が識別番号を付与した一次特徴量に対して二次特徴量抽出部24が規格化するステップであり、規格化した一次特徴量を特徴量記憶部23に時系列に順次格納する。この場合、ステップST5とステップST3は分割された処理ステップではない。
【0090】
要するに、ステップST5は、二次特徴量抽出部24が観測時刻tに抽出された一次特徴量である受信強度情報が示す受信強度値を観測時刻tに抽出された一次特徴量における距離情報が示す距離および方位情報が示す方位により補正し、距離および方位によらない規格化された受信強度値とするステップである。
【0091】
ステップST6において、二次特徴量抽出部24が、観測時刻tに抽出された一次特徴量における受信強度情報が示す受信強度値に対して、同じ識別情報を有する観測時刻tの直前の観測時刻に抽出された一次特徴量における受信強度情報が示す受信強度値により時間に対する受信強度値の変化量を算出し、二次特徴量として抽出する。
ステップST6において用いる受信強度値は、二次特徴量抽出部24が、観測時刻tに抽出された一次特徴量における受信強度情報が示す受信強度値を観測時刻tに抽出された一次特徴量における距離情報が示す距離および方位情報が示す方位により補正し、距離および方位によらない規格化された受信強度値である。
【0092】
ステップST6は、設定時間内の観測時刻t(k=0、1~K)すべてに対してステップST2からステップST5が終了されてから処理する必要はない。
すなわち、一次特徴量抽出部21に観測時刻tに抽出された一次特徴量に対し、観測時刻tを紐づけ(ステップST2)し、識別番号を付与(ステップST3)し、補正(規格化)(ステップST5)し、二次特徴量(受信強度値の変化量)を抽出(ステップST6)する処理を、観測初期時刻t0、観測時刻tから観測時刻tまで時系列順に行ってもよい。
ステップST1からステップST6までは一次特徴量から二次特徴量(受信強度値の変化量)を求めるステップである。
【0093】
ステップST11以降は、二次特徴量(受信強度値の変化量)を用いて静止している物体のカテゴリを識別判定するステップである。
ステップST11において、帰属度算出部26が、設定時間における観測初期時刻tにおける二次特徴量抽出部24において識別番号が付与された二次特徴量を特徴量記憶部23から得て、ステップST12において、識別番号iの物体における受信強度値の変化量(二次特徴量)に対応する帰属度データベース25に格納されている複数の静止している物体の帰属度の分布それぞれから帰属度として帰属度スコアを抽出する。
【0094】
ステップST12は、帰属度算出部26が、二次特徴量抽出部24が算出した二次特徴量について、静止している物体のカテゴリごとに帰属度データベース25に格納されている各物体のカテゴリに対する帰属度の分布を用いて帰属度スコアを得るステップである。
ステップST12において、二次特徴量抽出部24が算出した二次特徴量は、ステップST5及びステップST6により得た、観測時刻tごとに抽出された一次特徴量である受信強度情報が示す受信強度値それぞれを同じ観測時刻tに抽出された一次特徴量における距離情報が示す距離および方位情報が示す方位により補正し、距離および方位によらない規格化された受信強度値の変化量である。
【0095】
なお、帰属度算出部26は、二次特徴量を二次特徴量抽出部24から直接得てもよい。
識別番号iにおけるiは自然数であり、物体からの送信波を反射した受信波に複数の静止している物体からの受信波が含まれている場合、iは複数の静止している物体に対応した複数であり、複数の識別番号iごとに処理される。以下のステップにおいても同様である。
【0096】
ステップST13において、帰属度算出部26が、識別番号iの物体、つまり、識別番号iが付与された二次特徴量に対応する観測時刻tまでにおける各カテゴリの帰属度スコアの累積和を算出して累積スコアを得る。
識別番号iが付与された二次特徴量に対応する観測初期時刻tにおける累積スコアは観測初期時刻tにおける帰属度スコアである。
【0097】
ステップST13は、観測時刻t以降の観測時刻tにおいて、観測時刻tより前の観測時刻tk-1までに同じ識別番号iが付与された二次特徴量に対する帰属度スコアを加算した累積スコアに観測時刻tにおける帰属度スコアを加算して観測時刻tにおける累積スコアを得る。
ステップST13は、帰属度算出部26が、複数の静止している物体のカテゴリごとに複数の観測時刻において同じ識別番号が付与された二次特徴量に対する帰属度スコアを加算して累積スコアを算出するステップである。
【0098】
また、重機のように人より送信波の反射による受信波における受信強度値が大きな物体の揺らぎを二次特徴量抽出部24が二次特徴量として検出した場合、人では起こりえない大きさの受信強度値の変化である。したがって、ステップST12において、帰属度データベース25に格納されている人のカテゴリの帰属度分布は静止した人の動きによる受信強度値の変化が起こり得る分布としているため、重機のような物体の揺らぎを二次特徴量抽出部24が二次特徴量として検出したとしても、人のカデゴリとしての帰属度スコアとすることはなく、ステップST13において、人のカデゴリにおける累積スコアを上昇させることはない。
【0099】
ステップST14は、物体判定部27が、帰属度算出部26により同じ識別番号が付与されたカテゴリごとの累積スコアに基づき識別判定が可能か困難かの判定を行う。
識別判定が困難である場合はステップST15に進み、ステップST15において観測時刻Tが観測時刻Tであるか否かを判定し、観測時刻Tが観測時刻Tでない、つまり、kがK未満であるとステップST16によりkをk+1、つまり観測時刻Tを観測時刻Tk+1にしてステップST12に戻り、ステップST12からステップST14を、ステップST14において識別判定が可能またはステップST15において観測時刻Tが観測時刻Tになるまで繰り返される。
【0100】
ステップST14において識別判定が可能であれば、物体判定部27が同じ識別番号が付与された物体のカテゴリを選定し、ステップST17により該当カテゴリを送信波を反射した物体のカテゴリとする判定結果を出力する。
ステップST14において識別判定が困難であり、ステップST15において観測時刻Tが観測時刻Tであると、物体判定部27がステップST18により送信波を反射した物体のカテゴリは不明とする判定結果を出力する。
【0101】
物体判定部27による判定結果は、1)物体のカテゴリごとの累積スコアの内、累積スコアが最も大きい物体のカテゴリが示す物体を、送信波を反射した静止している物体とする、2)物体のカテゴリごとの累積スコアの内、累積スコアのスコアの伸び率が最も大きい物体のカテゴリが示す物体を、送信波を反射した静止している物体とする、3)物体のカテゴリごとの累積スコアに応じて物体のカテゴリが示す物体に対する比率で表す、4)全ての物体のカテゴリの累積スコアが閾値未満である場合、送信波を反射した物体はカテゴリが不明であるとする、または5)設定時間を時系列順に一定期間ごとに複数区切り、複数の一定時間内それぞれの全ての観測時刻それぞれの帰属度スコアを加算した複数の累積スコアの累積傾向により送信波を反射した物体のカテゴリの識別判定に用いて行う、のいずれかの方法により行われる。
【0102】
ステップST14、ステップST15、ステップST17、およびステップST18は、物体判定部27が、帰属度算出部26により算出された物体のカテゴリごとの累積スコアにより、送信波を反射した静止している物体のカテゴリの識別判定を行い、判定結果を得るステップである。
【0103】
レーダ信号処理装置2はコンピュータによるハードウェア構成により実現され、図9に示すように、CPU(Central Processing Unit)100と、大容量の半導体メモリ(RAM:Random Access Memory)200と、ハードディスク装置またはSSD装置などの不揮発性記録装置などの記憶装置(ROM:Read only memory)300と、入力インタフェース部400と、出力インタフェース部500と、信号路(バス)600を備える。
【0104】
CPU100はRAM200とROM300と入力インタフェース部400と出力インタフェース部500を制御、管理する。
CPU100はROM300に記憶されたプログラムをRAM200にロードし、CPU100がRAM200にロードされたプログラムに基づき各種処理を実行する。
【0105】
RAM200の一部の記憶領域が特徴量記憶部23および帰属度データベース25を構成する。
ROM300に記憶されたプログラムおよびCPU100が一次特徴量抽出部21とデータ格納処理部22と二次特徴量抽出部24と帰属度算出部26と物体判定部27として機能する。
図9に示す入力部が送受信装置1における受信情報生成部に相当し、出力部が移動体の制動機構あるいはレーダ信号処理装置2の判定結果を表示または音声出力するディスプレイまたは音声出力機に相当する。
【0106】
ステップST1からステップST6およびステップST11からステップST18によるレーダ信号処理方法はCPU100がROM300に記憶されたプログラムに従って処理を実行することにより行われる。
すなわち、ROM300に記憶されたCPU100に実行させるプログラムは、観測時刻Tごとに物体からの送信波を反射した反射波(受信波)による受信情報から物体までの距離を示す情報と物体の方位を示す情報と受信波の受信強度値を示す情報を一次特徴量として抽出する手順と、抽出された一次特徴量に送信波を反射した物体に対する識別番号を付与する手順と、同じ識別番号が付与された一次特徴量から時間に対する受信強度値の変化量を受信強度値の変化量である二次特徴量として算出する手順と、算出された二次特徴量について、物体のカテゴリごとに二次特徴量に対する帰属度スコアが与えられたスコア領域を表した帰属度の分布を用いて帰属度スコアを得、静止している物体のカテゴリごとに複数の観測時刻において同じ識別番号が付与された二次特徴量に対する帰属度スコアを加算して累積スコアを算出する手順と、算出された物体のカテゴリごとの累積スコアにより、送信波を反射した静止している物体のカテゴリの識別判定を行い、判定結果を得る手順と、を実行させるレーダ信号処理プログラムである。
【0107】
また、前記二次特徴量を算出する手順は、観測時刻Tごとに抽出された一次特徴量である受信強度情報が示す受信強度値それぞれを同じ観測時刻に抽出された一次特徴量における距離情報が示す距離および方位情報が示す方位により補正し、距離および方位によらない規格化された受信強度値の変化量により二次特徴量を算出する。
【0108】
以上のように、実施の形態1に係るレーダ信号処理装置は、同じ識別番号が付与された一次特徴量から時間に対する受信強度値の変化量を二次特徴量として算出する二次特徴量抽出部24と、二次特徴量抽出部24により算出された二次特徴量について、静止ししている複数の異なる物体のカテゴリそれぞれに二次特徴量に対する帰属度スコアが与えられたスコア領域を表した帰属度の分布を用いて帰属度スコアを求め、物体のカテゴリごとに複数の観測時刻において同じ識別番号が付与された二次特徴量に対する帰属度スコアを加算して累積スコアを算出する帰属度算出部26と、帰属度算出部26により算出された物体のカテゴリごとの累積スコアにより、送信波を反射した静止している物体のカテゴリの識別判定を行い、判定結果を得る物体判定部27を備えるので、自身が停止した状態において、静止物体および静止した人に対する一次特徴量である受信強度情報が示す受信強度値の変化量からなる判別に効果的な特徴量となる二次特徴量により静止しているカテゴリの判定ができる。
【0109】
また、実施の形態1に係るレーダ信号処理装置は、二次特徴量抽出部24において算出される二次特徴量が、一次特徴量として抽出された受信強度情報が示す受信強度値に対して、一次特徴量として抽出された距離情報が示す距離および方位情報が示す方位により、受信強度値が距離および方位により規格化された受信強度値に対する変化量としているので、あらかじめ定めた静止している複数の異なる物体のカテゴリにおける二次特徴量に対する帰属度を数値化したスコアとして与えた帰属度スコアによる分布、つまり、帰属度の分布を表した情報を格納する帰属度データベース25におけるメモリ空間、メモリ容量を削減できる。
さらに、二次特徴量抽出部24により算出された、観測時刻Tに紐づけされ、識別番号を付与された二次特徴量を示す情報を特徴量記憶部23に格納する場合、特徴量記憶部23におけるメモリ空間、メモリ容量を削減できる。
【0110】
実施の形態1に係るレーダ信号処理装置2における他の実施例
上記した実施の形態1に係るレーダ信号処理装置2において、二次特徴量抽出部24において算出される二次特徴量を距離および方位により規格化された受信強度値に対する変化量としているが、他の実施例1においては、物体までの距離を複数の区分に分割し、分割された区分の距離ごとの二次特徴量を用いることにより、静止している物体のカテゴリの識別判定を行う。
【0111】
すなわち、他の実施例1において、帰属度データベース25は静止している物体までの距離を複数の区分に分割された複数の距離区分それぞれに対応して、静止している物体のカテゴリごとにおける二次特徴量に対する帰属度を数値化したスコアとして与えた帰属度スコアによる分布、つまり、帰属度の分布を表した情報を格納する。
帰属度算出部26は、二次特徴量抽出部24において識別番号が付与された二次特徴量について、一次特徴量抽出部21により抽出された一次特徴量である距離情報が示す距離に応じて複数の距離区分のいずれに属するかを判断し、判断した距離区分に対応する帰属度データベース25に格納された静止している物体のカテゴリごとの帰属度の分布を用いて静止している物体のカテゴリごとに帰属度スコアを求める。
【0112】
静止している物体による送信波を反射する特性が変わるような環境、例えば、レーダ信号処理装置2を備える車載用レーダ装置が搭載される移動体から静止している物体までの距離が近い場合、二次特徴量に対する帰属度の分布の傾向が変わる場合がある。
上記した他の実施例のように複数の距離区分に応じて帰属度スコアを求めることにより、物体のカテゴリの識別性能の劣化を低減できる。
【0113】
なお、実施の形態において、任意の構成要素の変形、もしくは任意の構成要素の省略が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本開示に係るレーダ信号処理装置は、自動車または屋内モビリティなどの移動体に搭載される車載用レーダ装置のレーダ信号処理装置に好適である。
【符号の説明】
【0115】
1 送受信装置、2 レーダ信号処理装置、21 一次特徴量抽出部、22 データ格納処理部、23 特徴量記憶部、24 二次特徴量抽出部、25 帰属度データベース、26 帰属度算出部、27 物体判定部。
【要約】
レーダ信号処理装置は、観測時刻ごとに物体からの送信波を反射した反射波による受信情報から物体までの距離を示す情報と物体の方位を示す情報と反射波の受信強度値を示す情報を一次特徴量として抽出する一次特徴量抽出部(21)と、一次特徴量抽出部(21)により抽出された複数の観測時刻における一次特徴量それぞれを、送信波を反射した物体と関連付け、物体の識別記号を一次特徴量に付与するデータ格納処理部(22)と、データ格納処理部(22)において同じ識別番号が付与された一次特徴量から時間に対する受信強度値の変化量を二次特徴量として算出する二次特徴量抽出部(24)と、二次特徴量抽出部(24)により算出された二次特徴量について、静止している複数の異なる物体のカテゴリそれぞれに二次特徴量に対する帰属度スコアが与えられたスコア領域を表した帰属度の分布を用いて帰属度スコアを求め、物体のカテゴリごとに複数の観測時刻において同じ識別番号が付与された二次特徴量に対する帰属度スコアを加算して累積スコアを算出する帰属度算出部(26)と、帰属度算出部(26)により算出された物体のカテゴリごとの累積スコアにより、送信波を反射した静止している物体のカテゴリの識別判定を行い、判定結果を得る物体判定部(27)と、備える。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
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図9