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特許7717312インクジェット用組成物およびこれから形成された画素を含む表示装置
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  • 特許-インクジェット用組成物およびこれから形成された画素を含む表示装置 図1
  • 特許-インクジェット用組成物およびこれから形成された画素を含む表示装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-25
(45)【発行日】2025-08-04
(54)【発明の名称】インクジェット用組成物およびこれから形成された画素を含む表示装置
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20250728BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20250728BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20250728BHJP
   G02B 5/20 20060101ALN20250728BHJP
【FI】
C09D11/30
G02F1/1335 505
B41M5/00 120
G02B5/20 101
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021139037
(22)【出願日】2021-08-27
(65)【公開番号】P2022064846
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2024-01-18
(31)【優先権主張番号】10-2020-0132943
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503454506
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132, YAKCHON-RO, IKSAN-SI, JEONBUK-DO 54631, REPUBLIC OF KOREA
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム・フン-シク
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジュ-ホ
(72)【発明者】
【氏名】ユン・ヒュン-ジン
(72)【発明者】
【氏名】リ・ジョン-ス
【審査官】河島 拓未
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-076030(JP,A)
【文献】特開2011-213910(JP,A)
【文献】特開2016-201104(JP,A)
【文献】特開2014-159598(JP,A)
【文献】特開2019-178260(JP,A)
【文献】特開2006-233009(JP,A)
【文献】特表2018-503699(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
G02F
B41M
G02B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
散乱粒子、オキセタン化合物、モノマー、開始剤および溶剤を含み、
前記散乱粒子は、Al 、SiO 、ZnO、ZrO 、BaTiO 、TiO 、Ta 、Ti 、ITO、IZO、ATO、ZnO-Al、Nb 、SnO、MgO、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1以上を含み、
前記溶剤は、全インク組成物に対して、0.1~20重量%で含まれ、
前記溶剤を除く成分の粘度が50~1000cpsである、インクジェット用組成物。
【請求項2】
前記モノマーは、下記化学式1および化学式2で表される化合物より選択された1種以上の化合物を含む、請求項1に記載のインクジェット用組成物:
[化学式1]


前記化学式1において、
およびRは、それぞれ独立して、置換または非置換された炭素数1~5のアルコキシレン基であり、
およびRは、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、
nおよびmは、それぞれ独立して、1~3の整数である。
[化学式2]


前記化学式2において、
およびRは、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、
は、置換または非置換された炭素数1~5のアルコキシレン基であり、
lは、1~3の整数である。
【請求項3】
前記モノマーは、下記化学式1-1~1-4および化学式2-1~化学式2-2で表される化合物のうち1種以上を含む、請求項に記載のインクジェット用組成物。
[化学式1-1]


[化学式1-2]


[化学式1-3]


[化学式1-4]


[化学式2-1]


[化学式2-2]

【請求項4】
量子ドット、エポキシ化合物および添加剤より選択された1種以上をさらに含み、
前記添加剤は、界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される1以上を含む、請求項1に記載のインクジェット用組成物。
【請求項5】
請求項1~のいずれか一項に記載のインクジェット用組成物を用いて製造された画素を含む、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット用組成物およびこれから形成された画素を含む表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、工程の効率化および経済性を考慮して好まれる手段は、インクジェット印刷である。インクジェット印刷は、ノズルを基材に接触せずにインク液滴が微細なノズルを通じて基材上に噴射される非衝撃式印刷技術であって、隔壁の画素開口部にインク組成物を噴射して赤色、緑色および青色を含む複数の色を一度に着色することができ、工程の単純化および優れた経済的効果を有する。このようなインク組成物を用いたインクジェット方式は、隔壁の画素開口部に特定の量のインクを噴射して所望の色座標または膜厚さを満足させる。
【0003】
これに関連して、韓国登録特許第10-1475520号(以下、「特許文献1」)は、量子ドットおよび溶媒を含み、前記溶媒を60~95重量%の含有量で含むインクジェットプリント用量子ドットインク組成物に関する技術を開示している。
【0004】
特許文献1のように、溶媒を50重量%以上の高い含有量で含むインク組成物を用いてインクジェット印刷をする場合、後続の工程で溶媒が揮発してインク組成物の硬化膜厚さが低くなる点を考慮して、基材上に吐出されたインク組成物の塗膜厚さが隔壁の厚さよりも約2倍程度高く形成できるように、インク組成物の量を調節して吐出することが一般的である。
【0005】
しかし、隔壁の高さは、必要に応じて相対的に高く形成することができるが、この場合、高くなった隔壁の高さほどインク組成物の吐出量が多くなり、隔壁の上部に露出されたインク組成物が過度に多くなると、隣接する画素と吐出されたインク組成物が混んずる、混成される問題が生じる。これをオーバーフロー(Overflow)特性と通称することができる。
【0006】
したがって、隔壁の高さが高くなることにかかわらず、隣接画素に吐出されたそれぞれのインク組成物が混んずる問題(混成される問題)を解決することができるインクジェット用組成物の開発が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】韓国登録特許第10-1475520号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、隣接画素に吐出されたそれぞれのインク組成物が混成されず、均一な塗膜を形成することができるインクジェット用組成物を提供することを一つの目的とする。
【0009】
また、本発明は、前記インクジェット用組成物を用いて製造された画素を含む表示装置を提供することを一つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、量子ドット、バインダー樹脂、モノマー、開始剤および溶剤を含み、前記溶剤は、全インク組成物に対して、0.1~20重量%で含まれ、前記溶剤を除く成分の粘度が50~1000cpsであるインクジェット用組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、前記インクジェット用組成物を用いて製造された画素を含む表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るインクジェット用組成物を用いると、隔壁の高さにかかわらず、隣接する隔壁の画素開口部に吐出されたそれぞれのインク組成物が混成される問題を防止することができ、均一な塗膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実験例のうち、均一性の評価に関連する図である。
図2】本発明の実験例のうち、均一性の評価に関連する図である。図2(A)で、矢印は均一性の評価方向を意味し、縦軸は膜厚さ(μm)を示す。図2(B)で、縦軸は膜厚さ(μm)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、量子ドット、バインダー樹脂、モノマー、開始剤および溶剤を含み、前記溶剤は、全インク組成物に対して、0.1~20重量%で含まれ、前記溶剤を除く成分の粘度が50~1000cpsで構成されることにより、隣接する隔壁の画素開口部に吐出されたそれぞれのインク組成物が混成される問題を防止し、均一な塗膜を形成することができるインクジェット用組成物およびこれから形成された画素を含む表示装置に関するものである。
【0015】
特に、本発明のインクジェット用組成物は、溶剤を除く成分の混合物の粘度が前記範囲からなり、前記組成物で散乱粒子および溶剤を除く成分の平均分子量が3,000g/mol以下で形成されることにより、インクジェット工程中で、放置時間が長くなる場合に生じ得るノズルの目詰まりや固化して基板に落ちる屑が発生する問題を防止することができる効果を有することを特徴とする。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
<インクジェット用組成物>
本発明のインクジェット用組成物は、散乱粒子、バインダー樹脂、モノマー、開始剤および溶剤を含み、量子ドット、エポキシ化合物および添加剤のうち1種以上をさらに含んでもよい。
【0017】
散乱粒子
本発明に係るインクジェット用組成物は、散乱粒子を含む。
【0018】
前記散乱粒子は、通常の無機材料を使用してもよいし、好ましくは、平均粒径が50~1000nmである金属酸化物を含んでもよい。
【0019】
前記金属酸化物は、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Mo、Cs、Ba、La、Hf、W、Tl、Pb、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Ti、Sb、Sn、Zr、Nb、Ce、Ta、In、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1種の金属を含む酸化物であってもよいが、これに限定されない。
【0020】
具体的に、Al、SiO、ZnO、ZrO、BaTiO、TiO、Ta、Ti、ITO、IZO、ATO、ZnO-Al、Nb、SnO、MgO、BaSO、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された1種が使用可能である。必要に応じて、アクリレートなどの不飽和結合を有する化合物で表面処理された材料も使用可能である。
【0021】
本発明に係るインクジェット用組成物が散乱粒子を含む場合、前記散乱粒子を介して発光粒子から放出された光の経路を増加させ、インクジェット用組成物で形成された画素の全体としての光効率を上げることができるので、好ましい。
【0022】
前記散乱粒子は、50~1000nmの平均粒径を有してもよいし、好ましくは100~500nmの範囲のものを使用する。このとき、粒子の大きさが小さすぎると、量子ドットから放出された光の十分な散乱効果が期待できず、逆に、大きすぎる場合には、組成物内に沈んだり、均一な品質の自発光層の表面が得られないため、前記範囲内で適宜調節して使用する。
【0023】
前記散乱粒子は、前記インクジェット用組成物の全体100重量%に対して、5~50重量%、好ましくは10~45重量%、より好ましくは20~40重量%で含まれてもよい。前記散乱粒子が前記範囲内で含まれる場合、発光強さの増加効果を極大化することができるので、好ましい。前記散乱粒子が前記範囲未満で含まれる場合、得ようとする発光強さの確保が多少難しいことがあり、前記範囲を超える場合、青色照射光の透過度が顕著に低下し、輝度が減少する問題が生じ得るので、前記範囲内で適宜使用することが好ましい。
【0024】
バインダー樹脂
本発明のインクジェット用組成物は、バインダー樹脂を含む。前記バインダー樹脂は、オキセタン化合物を含んでもよい。
【0025】
前記オキセタン化合物は、陽イオン性光開始剤が存在するとき、光が照射されることにより、重合または架橋することができる。
【0026】
前記オキセタン化合物は、分子内に少なくとも1つのオキセタニル基を有するものであれば、特に限定されず、当該技術分野でよく知られている様々なオキセタン化合物を使用することができる。また、前記オキセタン化合物は、単独または2種以上を混合して使用してもよい。
【0027】
本発明の前記オキセタン化合物としては、例えば、3-エチル-3-〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕オキセタン、1,4-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕ベンゼン、1,4-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ベンゼン、1,3-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ベンゼン、1,2-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ベンゼン、4,4’-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ビフェニル、2,2’-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ビフェニル、3,3’、5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ビフェニル、2,7-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕ナフタレン、ビス〔4-{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}フェニル〕メタン、ビス〔2-{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}フェニル〕メタン、2,2-ビス〔4-{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}フェニル〕プロパン、ノボラック型フェノール-ホルムアルデヒド樹脂の3-クロロメチル-3-エチルオキセタンによるエーテル化変性物、3(4),8(9)-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、2,3-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕ノルボルナン、1,1,1-トリス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕プロパン、1-ブトキシ-2,2-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシメチル〕ブタン、1,2-ビス〔{2-(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}エチルチオ〕エタン、ビス〔{4-(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルチオ}フェニル〕スルフィド、ビス〔{1-エチル(3-オキセタニル)}メチル〕エーテルおよび1,6-ビス〔(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ〕-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロヘキサンなどが挙げられる。
【0028】
前記バインダー樹脂がオキセタン化合物を含む場合、前記オキセタン化合物は、単独で使用することができ、エポキシ化合物およびビニルエーテル化合物からなる群より選択される1種以上と混用して使用することができる。
【0029】
前記バインダー樹脂は、前記インクジェット用組成物の全体100重量%に対して、5~30重量%、好ましくは10~20重量%で含まれてもよい。前記バインダー樹脂が前記範囲内で含まれる場合、組成物の粘度の増加を抑制することができるので、工程性が向上して好ましい。
【0030】
モノマー
本発明の一実施形態において、インクジェット用組成物は、モノマーを含む。
【0031】
前記モノマーは、下記化学式1および化学式2で表される化合物より選択された1種以上の化合物を含んでもよい。
【0032】
[化学式1]
【0033】
前記化学式1において、
およびRは、それぞれ独立して、置換または非置換された炭素数1~5のアルコキシレン基であり、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、nおよびmは、それぞれ独立して、1~3の整数であってもよい。
【0034】
[化学式2]
【0035】
前記化学式2において、RおよびRは、それぞれ独立して、水素またはメチル基であり、Rは、置換または非置換された炭素数1~5のアルコキシレン基であり、lは、1~3の整数であってもよい。
【0036】
本明細書で使用されるC-Cのアルコキシレン基は、炭素数1~5個から構成された直鎖状または分枝状の2価アルコキシ基を意味し、例えば、2価のメトキシ、エトキシなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0037】
前記C-Cのアルコキシレン基は、1つまたはそれ以上の水素がC-Cのアルキル基、C-Cのアルケニル基、C-Cのアルキニル基、C-C10のシクロアルキル基、C-C10のヘテロシクロアルキル基、C-C10のヘテロシクロアルキルオキシ基、C-Cのハロアルキル基、C-Cのアルコキシ基、C-Cのチオアルコキシ基、アリール基、アシル基、ヒドロキシ、チオ(thio)、ハロゲン、アミノ、アルコキシカルボニル、カルボキシ、カルバモイル、シアノ、ニトロなどに置換することができる。好ましくは、ヒドロキシ基に置換することができる。
【0038】
前述のように、本発明の一実施形態において、R、R、および/またはRは、C-Cのアルコキシレン基であってもよいし、好ましくは、炭素数2または炭素数3の2価アルコキシレン基であってもよい。このとき、前記アルコクキシレン基の1つまたはそれ以上の水素がヒドロキシ基に置換することができる。R、R、および/またはRがC-Cのアルコキシレン基である場合、本発明のインクジェット用組成物は、インクジェットジェッティング特性が向上できる。
【0039】
前記化学式1で表される化合物の具体例としては、下記化学式1-1~1-4などが挙げられ、これに限定されるものではない。
【0040】
[化学式1-1]
【0041】
[化学式1-2]
【0042】
[化学式1-3]
【0043】
[化学式1-4]
【0044】
また、前記化学式2で表される化合物の具体例としては、下記化学式2-1~化学式2-2などが挙げられ、これに限定されるものではない。
【0045】
[化学式2-1]
【0046】
[化学式2-2]
【0047】
本発明のインクジェット用組成物に含まれるモノマーは、前記化学式1および/または化学式2で表される化合物を含むことにより、溶剤の量が少量に制限された場合および/または溶剤がない場合の組成物の粘度を調節することができる。また、前記特定の化学式構造のモノマーを含み、塗布において均一性を示すことができる。
【0048】
本発明のインクジェット用組成物は、前記化学式1および/または化学式2で表されるモノマーの他にも、本発明の目的から逸脱しない限度内で、当分野で通常使用されるモノマーをさらに含んでもよい。例えば、単官能単量体、2官能単量体、その他の多官能単量体などが挙げられ、これらのうち、2官能単量体が好ましく使用される。
【0049】
前記単官能単量体の種類は、特に限定されず、例えば、ノニルフェニルカルビトールアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-エチルヘキシルカルビトールアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、N-ビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0050】
前記2官能単量体の種類は、特に限定されず、例えば、ビスフェノールAのビス(アクリロイルオキシエチル)エーテルなどが挙げられる。
【0051】
前記多官能単量体の種類は、特に限定されず、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシレーテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシレーテッドジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロポキシレーテッドジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0052】
前記モノマーは、インクジェット用組成物の全体100重量%に対して、10~70重量%、好ましくは20~60重量%で含まれてもよい。前記モノマーが前記範囲内で含まれる場合、画素部の強度や平滑性の面で好ましい利点がある。前記重合性モノマーが前記範囲未満で含まれる場合、インクジェッティングのための流動性の確保が難しくなり、前記範囲を超えて含まれる場合、発光粒子の含有量が不足して光効率が低下する問題を引き起こすことがあるので、前記範囲内で含まれることが好ましい。
【0053】
開始剤
本発明の一実施例に係るインクジェット用組成物は、光重合開始剤を含んでもよい。
【0054】
本発明の一実施例において、前記光重合開始剤は、前記モノマーを重合し得るものであれば、その種類を特に制限することなく使用することができる。例えば、前記光重合開始剤は、重合特性、開始効率、吸収波長、入手性、価格などの観点から、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、非イミダゾール系化合物、オキシム系化合物およびチオキサントン系化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用することが好ましい。
【0055】
前記光重合開始剤は、前記インクジェット用組成物の全体100重量%に対して、1~15重量%、好ましくは2~10重量%で含まれてもよい。前記光重合開始剤が前記範囲内で含まれる場合、光硬化が効果的に生じるので、好ましい。
【0056】
前記光重合開始剤は、本発明に係るインクジェット用組成物の感度を向上させるために、光重合開始助剤をさらに含んでもよい。前記光重合開始助剤が含まれる場合、感度がさらに高くなり、生産性が向上する利点がある。
【0057】
前記光重合開始助剤は、例えば、アミン化合物、カルボン酸化合物、チオール基を有する有機硫黄化合物からなる群より選択される1種以上の化合物が好ましく使用可能であるが、これに限定されない。
【0058】
前記光重合開始助剤は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜追加して使用することができる。
【0059】
量子ドット
本発明のインクジェット用組成物は、量子ドットをさらに含んでもよい。量子ドットは、光源によって自発光し、可視光線および赤外線領域の光を発生させるために使用されるものであってもよい。量子ドットは、数ナノサイズの結晶構造を有する物質であって、数百から数千個程度の原子で構成されるものであってもよい。原子が分子をなし、分子はクラスタ(cluster)という小さな分子の集合体を構成してナノ粒子をなすが、通常、このようなナノ粒子が、特に半導体の特性を帯びているとき、これを量子ドットといい、本発明の量子ドットは、このような概念に合致するものであれば、特に限定されない。物体がナノサイズ以下に小さくなる場合、その物体のエネルギーバンドギャップ(band gap)が大きくなる現象である量子閉じ込め効果(quantum confinement effect)が生じ、量子ドットは、外部からエネルギーを受けて励起状態に達すると、自ずとエネルギーバンドギャップに該当するエネルギーを放出して自発光することができる。
【0060】
量子ドットは、光または電気による刺激で発光し得る量子ドットの粒子であれば、特に限定されない。例えば、II-VI族半導体化合物;III-V族半導体化合物;IV-VI族半導体化合物;IV族元素またはこれを含む化合物;およびこれらの組み合わせからなる群より選択されてもよいし、これらは単独または2種以上混合して使用してもよい。
【0061】
例えば、前記II-VI族半導体化合物は、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、およびこれらの混合物からなる群より選択される二元素化合物;CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、およびこれらの混合物からなる群より選択される三元素化合物;およびCdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe、およびこれらの混合物からなる群より選択される四元素化合物からなる群より選択されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0062】
前記III-V族半導体化合物は、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、およびこれらの混合物からなる群より選択される二元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、およびこれらの混合物からなる群より選択される三元素化合物;およびGaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb、およびこれらの混合物からなる群より選択される四元素化合物からなる群より選択されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0063】
前記IV-VI族半導体化合物は、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、およびこれらの混合物からなる群より選択される二元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、およびこれらの混合物からなる群より選択される三元素化合物;およびSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe、およびこれらの混合物からなる群より選択される四元素化合物からなる群より選択される1つ以上であってもよいが、やはりこれに限定されない。
【0064】
これに限定されないが、前記IV族元素またはこれを含む化合物は、Si、Ge、およびこれらの混合物からなる群より選択される元素;およびSiC、SiGe、およびこれらの混合物からなる群より選択される二元素化合物からなる群より選択されてもよい。
【0065】
量子ドットは、均質な(homogeneous)単一構造;コア-シェル(core-shell)構造およびグレイジエント(gradient)構造などのような二重構造;またはこれらの混合構造であってもよいし、本発明で量子ドットは、光による刺激で発光し得るものであれば、その種類を特に限定しない。
【0066】
一実施例によると、量子ドットは、コア-シェル構造を有し、前記コアは、InP、InZnP、InGaP、CdSe、CdS、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdSeTe、CdZnS、CdSeS、PbSe、PbS、PbTe、AgInZnS、HgS、HgSe、HgTe、GaN、GaP、GaAs、InGaN、InAsおよびZnOからなる群より選択される1種以上を含み、前記シェルは、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、CdS、CdSe、CdTe、CdO、InP、InS、GaP、GaN、GaO、InZnP、InGaP、InGaN、InZnSCdSe、PbS、TiO、SrSeおよびHgSeからなる群より選択される1種以上を含んでもよいし、好ましくは、InP/ZnS、InP/ZnSe、InP/GaP/ZnS、InP/ZnSe/ZnS、InP/ZnSeTe/ZnSおよびInP/MnSe/ZnSからなる群より選択される1種以上を含んでもよい。
【0067】
一般的に、量子ドットは、湿式化学工程(wet chemical process)、有機金属化学蒸着工程(MOCVD、metal organic chemical vapor deposition)または分子線エピタキシー工程(MBE、molecular beam epitaxy)によって製造することができる。
【0068】
湿式化学工程は、有機溶剤に前駆体物質を入れて粒子を成長させる方法であって、結晶が成長するとき、有機溶剤が自然に量子ドット結晶の表面に配位され、分散剤の役割をして結晶の成長を調節することになるので、有機金属化学蒸着や分子線エピタクシーのような気相蒸着法よりも容易で安価な工程を通じて量子ドット粒子の大きさの成長を制御することができる。
【0069】
本発明において、前記量子ドットは、前記インクジェット用組成物の全体100重量%に対して、5~50重量%、好ましくは15~40重量%、さらに好ましくは20~35重量%で含まれてもよい。発光粒子が前記範囲内で含まれる場合、光変換効率が向上できる。前記量子ドットが前記範囲内で含まれる場合、光効率に優れ、コーティング層の信頼性に優れた利点がある。前記量子ドットが前記範囲未満で含まれる場合、緑色光および赤色光の光変換効率が僅かなものとなり、前記範囲を超える場合でも、変換された輝度が減少する問題が生じるが、これは、含された量子ドットが光変換された光が放出されることを、超過した量子ドットが妨害する役割をするか、超過した量子ドットが先立って青色光を光変換し、超過した量子ドットは光変換する青色光がなくなり、不要な役割をすることになると考えられる。
【0070】
エポキシ化合物
本発明のインクジェット用組成物は、エポキシ化合物をさらに含んでもよい。
【0071】
前記エポキシ化合物は、前述の光重合開始剤の存在下で陽イオンを重合し得る官能基が1つまたは1つ以上を含むエポキシ化合物であれば、その種類を特に限定しない。前記エポキシ化合物は、単量体であってもよいし、芳香族エポキシ化合物、シクロ脂肪族エポキシ化合物、ヘテロサイクリックまたは脂肪族エポキシ化合物であってもよいし、単独または2種以上を混合して使用してもよい。
【0072】
前記芳香族エポキシ化合物は、分子内に芳香族基を含むエポキシ化合物を意味するものであって、例えば、ビスフェノールA系エポキシ、ビスフェノールF系エポキシ、ビスフェノールS系エポキシおよび臭化ビスフェノール系エポキシのようなビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂およびクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のようなノボラック型エポキシ樹脂;クレゾールエポキシおよびレゾルシノールグリシジルエーテルなどが使用されてもよい。
【0073】
前記脂環式エポキシ化合物は、エポキシ基が脂肪族環を構成する隣接する2つの炭素原子の間に形成されている化合物を意味するものであって、例えば、ジシクロペンタジエンジオキサイド、リモネンジオキサイド、4-ビニルシクロヘキセンジオキサイド、2,4-エポキシシクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートおよびビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートなどが使用されてもよい。
【0074】
前記脂肪族エポキシ化合物は、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル;脂肪族多価アルコールのアルキレンオキシド付加物のポリグリシジルエーテルなどが使用されてもよい。
【0075】
前記脂肪族多価アルコールとしては、例えば、炭素数2~20の脂肪族多価アルコールであってもよいし、より具体的には、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1、3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、3,5-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオールおよび1,10-デカンジオールなどの脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサンジオール、水添ビスフェノールAおよび水添ビスフェノールFなどの脂環式ジオール;トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ヘキシトール類、ペンチトール類、グリセリン、ポリグリセリン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ポリカプロラクトンおよびテトラメチルプロパンなどの3価以上のポリオールが挙げられる。
【0076】
また、前記エポキシ化合物は、好ましくは、芳香族エポキシ化合物、シクロ脂肪族エポキシ化合物からなる群より選択される1種以上であってもよい。
【0077】
前記エポキシ化合物は、前記インクジェット用組成物の全体100重量%に対して、5~30重量%、好ましくは10~25重量%、より好ましくは10~20重量%で含まれてもよい。前記エポキシ化合物が前記範囲内で含まれる場合、塗膜の強度が改善される効果があるので、好ましい。前記エポキシ化合物が前記範囲未満で含まれる場合、強度が低く、塗膜が損傷される問題が生じ得るので、前記範囲内で適宜使用することが好ましい。
【0078】
添加剤
本発明の一実施形態に係るインクジェット用組成物は、前記した成分の以外に、塗膜平坦性まはた密着性を増進させるために、界面活性剤、密着促進剤のような添加剤をさらに含んでもよい。
【0079】
本発明に係るインクジェット用組成物が前記界面活性剤が含む場合、塗膜平坦性が向上できる利点がある。例えば、前記界面活性剤は、BM-1000、BM-1100(BM Chemie社)、プロライドFC-135/FC-170C/FC-430(住友スリーエム株式会社)、SH-28PA/-190/-8400/SZ-6032(東レシリコン株式会社)、F552(DIC社)などのフッ素系界面活性剤を使用可能であるが、これに限定されない。
【0080】
前記密着促進剤は、基板との密着性を高めるために添加し得るものであって、カルボキシル基、メタクリロイル基、イソシアネート基、エポキシ基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される反応性置換基を有するシランカップリング剤を含んでもよいが、これに限定されるものではない。
【0081】
このほかにも、本発明に係るインクジェット用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤のような添加剤をさらに含んでもよいし、前記添加剤も、本発明の効果を阻害しない範囲で当業者が適宜追加して使用可能である。
【0082】
前記添加剤は、前記インクジェット用組成物の全体100重量%に対して、0.01~5重量%、具体的に、0.02~3重量%、より具体的に0.03~0.1重量%で使用可能であるが、これに限定されるものではない。
【0083】
溶剤
本発明の一実施例に係るインクジェット用組成物は、溶剤を含み、例えば、インクジェット用組成物の全体100重量%に対して、0.1~20重量%で含んでもよい。
【0084】
前記溶剤としては、エーテルまたはエステル系溶剤、脂肪族飽和炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤などを使用することができ、例えば、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのエチレングリコールモノアルキルエーテル類、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどのジエチレングリコールジアルキルエーテル類、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテートなどのアルキレングリコールアルキルエーテルアセテート類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレンなどの芳香族炭化水素類、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリンなどのアルコール類、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチルなどのエステル類、γ-ブチロラクトンなどの環状エステル類などを使用することができる。
【0085】
<表示装置>
本発明の一実施形態は、前述のインクジェット用組成物を用いて製造された画素を含む表示装置に関するものである。
【0086】
本発明によれば、前記インクジェット用組成物は、通常の液晶表示装置(LCD)だけでなく、電界発光表示装置(EL)、プラズマ表示装置(PDP)、電界放出表示装置(FED)、有機発光素子(OLED)など、各種の画像表示装置に適用することが可能である。
【0087】
本発明の表示装置は、前述のインクジェット用組成物を用いて製造された画素を含むことを除き、当該技術分野で知られている構成を含む。
【実施例
【0088】
以下、本発明の理解のために具体的な実施例および比較例を含む実験例を提示するが、これは、本発明を例示するものに過ぎず、添付の特許請求の範囲を制限するものではなく、本発明の範疇および技術思想の範囲内で実施例に対する様々な変更や修正が可能であることは、当業者にとって自明であり、このような変形および修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。なお、以下で含有量を示す「%」および「部」は、特に言及しない限り、重量基準である。
【0089】
<合成例>
合成例1:アルカリ可溶性樹脂の合成
撹拌機、温度計、還流冷却管、滴下ロートおよび窒素導入管を備えたフラスコを用意し、一方、N-ベンジルマレイミド15重量部、アクリル酸30重量部、シクロヘキシルメタクリレート50重量部、メチルメタクリレート5重量部、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート4重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAともする)40重量部を投入した後、撹拌混合してモノマーの滴下ロートを用意し、n-ドデカンジオール6重量部、PGMEA24重量部を入れて撹拌混合し、連鎖移動剤の滴下ロートを用意した。
【0090】
以後、フラスコにPGMEA395重量部を導入し、フラスコ内の雰囲気を空気から窒素に置換した後、撹拌しながらフラスコの温度を90℃まに昇温した。続いて、滴下ロートからモノマーおよび連鎖移動剤の滴下を開始した。滴下は、90℃を維持ながら、それぞれ2時間の間行い、1時間後に110℃に昇温して3時間保持した後、ガス導入管を導入し、酸素/窒素=5/95(v/v)混合ガスのバブリングを開始した。
【0091】
続いて、グリシジルメタクリレート20重量部、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)0.4重量部、トリエチルアミン0.8重量部をフラスコ内に投入して110℃で6時間反応を続け、その後、室温まで冷却して、重量平均分子量4,800、固形分基準酸価が83mgKOH/gであるアルカリ可溶性樹脂を得た。
【0092】
製造例1:隔壁形成用感光性樹脂組成物
下記表1の組成でそれぞれの成分を混合して隔壁形成用感光性樹脂組成物を製造した(単位:重量%)。
【0093】
【表1】
【0094】
-色材:White 6(Pigment White 6)、C.I.ピグメントWhite 6(R-102、Dupont社製)
-バインダー:合成例1のアルカリ可溶性樹脂
-モノマー:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA、日本化学株式会社製)
-開始剤:IRGACURE OXE-03(BASF社製)
-添加剤:シランカップリング剤(KBM-9007、信越社製)
-撥液剤:反応性撥液剤(RS-90、DIC社製)
-溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
実施例および比較例
下記表2の組成でそれぞれの成分を混合し、ここに、表3に記載の含有量で溶剤を添加してインクジェット用組成物を製造した。下記表2で、平均分子量は、散乱粒子を除く残りの成分の平均分子量である。
【0095】
【表2】
【0096】
(A)TiO2(huntsman社のTR-81、TiOの含有量93%、Aluminaおよびzirconia処理)
(B)InP/ZnSe/ZnS量子ドット(fluorescence λem=532nm、FWHM=37nm、Green QD、ナノシース)
(C)InP/ZnSe/ZnS量子ドット(fluorescence λem=630nm、FWHM=39nm、Red QD、ナノシース)
モノマー:
(M1)化学式2-2の1,6-hexanediol diacrylate(HDDA、Sigma-Aldrich社)
(M2)化学式1-1の2,2-Bis[4-(2-hydroxy-3-methacryloyloxypropoxy)phenyl]propane(Bis-GMA、Polysciences社)
(M3)化学式2-1のTriethylene glycol dimethacrylate(TEGDMA、Sigma-Aldrich社)
(M4)化学式1-4のBisphenol-A ethoxylate(1EO/phenol)diacrylate(1EO-DA、Sigma-Aldrich社)
エポキシ:脂環族エポキシ化合物(Daicel社のCelloxide 2021P)
バインダー:オキセタン基含有化合物(TOAGOSEI社のOXT-221)
開始剤:光開始剤(BASF社のOXE-03)
添加剤(レベリング剤):フッ素系界面活性剤(DIC社のF552)
【0097】
【表3】
【0098】
実験例
1.インクジェットの評価
基材上に製造例1を通じて製造された隔壁形成用感光性樹脂組成物を用いて、10μm厚さの隔壁を形成した。
【0099】
以後、実施例および比較例で製造されたそれぞれのインクジェット用組成物をインクジェット方式で前記隔壁が形成された基材上に塗布した。
【0100】
溶媒を除く有効成分基準に溶媒のないインクを使用し、画素を満たすためのdrop数は24滴であると評価された。したがって、比較例5(製造例2-50%、溶媒50%)をジェッティングする場合、溶媒をすべて除去して画素を満たす塗膜が同一でなければならないため、48滴をジェッティングする場合、溶媒をすべて除去した後、有効成分が画素を満たすことができる。
【0101】
Over特性が生じたイメージは、図1(比較例4、製造例2-33%)の通りである。図2のイメージで3番目の画素と4番目の画素がOver特性により画素が合わさる現象が生じた。このように合わさることになると、それぞれのインク組成物が混成され、不均一な画素を形成することになる。Over特性を評価して表4に記入した。
【0102】
均一性の評価は、図2のように基板に有効成分を基準に同一な塗膜厚さになるようにジェッティングを実施した。図2の(A)を参照すると、比較例1の結果値で、溶媒がなく、24滴をジェッティングして365nmの波長で2000mJ/cm露光した後、アルファステップ(Dektak XT-A)装備を使用して膜厚さを測定した。図2の(B)は、Y軸を拡大した結果値を確認すると、画素部に形成された塗膜の高さが12~12.5μmの間の値を有することが確認できる。このように高さの差を有する結果値を計算して均一性の評価を行った。結果値は、表4に記入した。
【0103】
1)Over特性の評価
溶媒を除去して残った塗膜を形成するために、溶媒の含有量に応じてそれぞれ異なる数のジェッティングを行い、そのとき、隣接する画素とインクジェット用組成物とが合わさることを判断した。
【0104】
<Over特性の評価基準>
◎:100個の画素すべてOver特性なし
○:100個の画素のうち、1個でOver発生
△:100個の画素のうち、2~3個でOver発生
X:100個の画素のうち、4個以上でOver発生
2)均一性の評価
溶媒を除く有効成分基準画素にそれぞれの同じ数をジェッティングして形成された塗膜の膜厚を測定し、偏差に基づいて均一性を評価した。
【0105】
<均一性の評価基準>
◎:5個の画素の頂点高さの最大最小値の差が0.1μm以下
○:5個の画素の頂点高さの最大最小値の差が0.1μm超過~0.2μm以下
△:5個の画素の頂点高さの最大最小値の差が0.2μm超過~0.4μm以下
X:5個の画素の頂点高さの最大最小値の差が0.4μmを超えるか、Over特性の評価で画素が合わさって評価値がない。
【0106】
3)放置特性の評価
インクジェット装備は、ジェッティング時に連続的に滴をジェッティングするが、基材のジェッティング位置を移動させるか、あるいは、基材が変更された場合、ジェッティングを中止して待機状態になるしかない。この場合、溶媒の揮発が生じ、ノズルの最外殻の位置には有効成分のみ残る。有効成分がインクジェット装備の後続のインクジェット用組成物によって再び溶解される特性を有するかどうかを確認した。
【0107】
<放置特性の評価基準>
インクジェット用組成物を、ガラス基材の1ml落とした後、50℃の温度で溶媒を乾燥させる。以後、同一のインクジェット用組成物を乾燥されたインクジェット用組成物に落として再溶解性を確認した。
【0108】
◎:再溶解性OK
X:再溶解性NG
【0109】
【表4】
【0110】
表4を参照すると、本発明の実施形態に係るインクジェット用組成物を用いると、インクジェット工程で組成物の吐出量による偏差を減らすことができ、均一な塗膜を形成することができ、隣接する隔壁の画素開口部に吐出された各組成物が混成される問題が生じないことが分かる。また、実施例の組成物はいずれも、放置特性に優れた結果を示しており、このことから、インクジェット工程中で、放置時間が長くなる場合に生じ得るノズルの目詰まりや固化して基板に落ちる屑が発生する問題を防止できることが分かる。
【0111】
一方、比較例に係るインクジェット用組成物を用いると、図1のように、インクジェット工程で隣接する隔壁の画素開口部に吐出されたインク組成物が混成される問題が生じ、不均一な画素を形成するか、放置特性が顕著に低下することが分かる。
図1
図2