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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-25
(45)【発行日】2025-08-04
(54)【発明の名称】消化システム及び加熱制御方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/04 20060101AFI20250728BHJP
【FI】
C02F11/04 A ZAB
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2023540258
(86)(22)【出願日】2022-07-22
(86)【国際出願番号】 JP2022028474
(87)【国際公開番号】W WO2023013445
(87)【国際公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2021129142
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507214083
【氏名又は名称】メタウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 雅人
(72)【発明者】
【氏名】表 孝史
【審査官】程塚 悠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0305774(US,A1)
【文献】米国特許第06117203(US,A)
【文献】特開2019-181362(JP,A)
【文献】特開2014-221443(JP,A)
【文献】特開昭60-232300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
余剰汚泥の有機物を嫌気性細菌により消化する消化槽と、
前記余剰汚泥を消化槽に供給する第1配管と、
前記第1配管の管径よりも大きい管径を有する第2配管と、
前記第1配管及び前記第2配管のそれぞれと連通し、前記第2配管から移送される余剰汚泥を蓄える第1貯留槽と、
前記第1貯留槽に蓄えられた前記余剰汚泥を、所定の期間連続的に、前記第1配管を介して前記消化槽に移送する第1移送手段と、
前記第1配管内の前記余剰汚泥を流体によって加熱する加熱器と、を備えた、消化システム。
【請求項2】
更に、前記第2配管と連通し、前記第1貯留槽に移送する前記余剰汚泥を蓄える第2貯留槽
記第2貯留槽に蓄えられた前記余剰汚泥を、所定の期間間欠的に、前記第2配管を介して前記第1貯留槽に移送する第2移送手段と、を備える、請求項1に記載の消化システム。
【請求項3】
更に、前記第1貯留槽に蓄えられた前記余剰汚泥の量に応じて、前記第1移送手段が前記消化槽に連続的に移送する前記余剰汚泥の量を制御する制御装置を備えた、請求項1に記載の消化システム。
【請求項4】
更に、前記第2貯留槽に蓄えられた前記余剰汚泥の量に応じて、前記第2移送手段が前記第2貯留槽から前記第1貯留槽に間欠的に移送する前記余剰汚泥の量を制御する制御装置を備えた、請求項2に記載の消化システム。
【請求項5】
更に、前記第1貯留槽に蓄えられた前記余剰汚泥の量に応じて、前記第2移送手段が前記第2貯留槽から前記第1貯留槽に間欠的に移送する前記余剰汚泥の量を制御する制御装置を備えた、請求項2に記載の消化システム。
【請求項6】
更に、前記第1移送手段が前記消化槽に移送する前記余剰汚泥の量と、前記加熱器により加熱される前の前記余剰汚泥の温度と、前記加熱器により加熱された後の前記余剰汚泥の温度とのうちの少なくともいずれかに応じて、前記加熱器に供給する前記流体の量を制御する制御装置を備えた、請求項1に記載の消化システム。
【請求項7】
前記流体は、前記消化槽において消化が行われた前記余剰汚泥を焼却する焼却炉から排出された排ガスの保有熱と、前記消化槽における前記余剰汚泥の消化によって発生した消化ガスを用いて発電を行う発電システムから排出された排ガスの保有熱とのうちの少なくともいずれかによって昇温された流体である、請求項1に記載の消化システム。
【請求項8】
前記第1貯留槽は、前記第1貯留槽内の前記余剰汚泥を流体によって加熱する予熱器を有する、請求項1に記載の消化システム。
【請求項9】
前記予熱器は、少なくとも一部が前記第1貯留槽の内側壁面及び内側底面のうちの少なくともいずれかに沿って延び、内部において前記流体を流動させる第3配管を有する、請求項8に記載の消化システム。
【請求項10】
前記予熱器は、
前記流体を貯留する流体貯留槽と、
少なくとも一部が前記流体貯留槽内を通過し、内部において前記余剰汚泥を流動させる第4配管と、を有する、請求項8に記載の消化システム。
【請求項11】
前記第1貯留槽は、前記第1貯留槽内の前記余剰汚泥を撹拌する撹拌装置を有する、請求項1に記載の消化システム。
【請求項12】
更に、前記第1配管を介して前記第1貯留槽から前記消化槽に移送される前記余剰汚泥を破砕する第1汚泥破砕機を有する、請求項1に記載の消化システム。
【請求項13】
更に、前記第2配管を介して前記第2貯留槽から前記第1貯留槽に移送される前記余剰汚泥を破砕する第2汚泥破砕機を有する、請求項2に記載の消化システム。
【請求項14】
余剰汚泥の有機物を嫌気性細菌により消化する消化槽と、前記余剰汚泥を消化槽に供給する第1配管と、前記第1配管の管径よりも大きい管径を有する第2配管と、前記第1配管及び前記第2配管のそれぞれを連通し、前記第2配管から移送される余剰汚泥を蓄える第1貯留槽と、前記第1貯留槽に蓄えられた前記余剰汚泥を、所定の期間連続的に、前記第1配管を介して前記消化槽に移送する移送手段と、前記第1配管内の前記余剰汚泥を流体によって加熱する加熱器と、を備えた、消化システムにおける加熱制御方法であって、
前記第1貯留槽に蓄えられた前記余剰汚泥の量に応じて、前記移送手段が前記消化槽に移送する前記余剰汚泥の量を制御する、加熱制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消化システム及び加熱制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥に含まれる有機物を嫌気性消化する消化システムにおいて、効率的な消化を実現するため、加熱後の汚泥を消化槽に供給する技術が提案されている(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2011―516246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような消化システムにおいて、汚泥の消化に要するエネルギーを抑制することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記のような汚泥の消化に要するエネルギーを抑制するため、実施の形態の一態様における消化システムは、余剰汚泥の有機物を嫌気性細菌により消化する消化槽と、前記余剰汚泥を消化槽に供給する第1配管と、前記第1配管の管径よりも大きい管径を有する第2配管と、前記第1配管及び前記第2配管のそれぞれと連通し、前記第2配管から移送される余剰汚泥を蓄える第1貯留槽と、前記第1貯留槽に蓄えられた前記余剰汚泥を、所定の期間連続的に、前記第1配管を介して前記消化槽に移送する移送手段と、前記第1配管内の前記余剰汚泥を流体によって加熱する加熱器と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
一つの側面によれば、汚泥の消化に要するエネルギーを抑制することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第1の実施の形態における消化システム100が適用される汚泥処理施設1の構成について説明する図である。
図2図2は、余剰汚泥の移送について説明する図である。
図3図3は、余剰汚泥の移送について説明する図である。
図4図4は、第2の実施の形態における消化システム200の構成について説明する図である。
図5図5は、第3の実施の形態における消化システム300の構成について説明する図である。
図6図6は、第4の実施の形態における消化システム400の構成について説明する図である。
図7図7は、焼却システム90の構成について説明する図である。
図8図8は、第5の実施の形態における消化システム500の構成について説明する図である。
図9図9は、貯留槽71及び予熱器73の構成について説明する斜視図である。
図10図10は、貯留槽71及び予熱器73の構成について説明する斜視図である。
図11図11は、貯留槽71及び予熱器73の構成について説明する斜視図である。
図12図12は、貯留槽71及び予熱器73の構成について説明する斜視図である。
図13図13は、貯留槽71及び予熱器73の構成について説明する斜視図である。
図14図14は、第6の実施の形態における消化システム600の構成について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0009】
[第1の実施の形態における消化システム100]
初めに、第1の実施の形態における消化システム100が適用される汚泥処理施設1について説明を行う。図1は、第1の実施の形態における消化システム100が適用される汚泥処理施設1の構成について説明する図である。
【0010】
本実施の形態における汚泥処理施設1は、図1に示すように、例えば、最初沈殿池10と、汚水処理装置20と、最終沈殿池30と、濃縮槽40と、濃縮装置50と、消化槽60と、加熱器70とを有する。以下、消化槽60と加熱器70とを有するシステムを総称して消化システム100とも呼ぶ。消化システム100については、図2で詳細に説明する。
【0011】
最初沈殿池10は、下水等(以下、被処理水とも呼ぶ)に含まれる有機物や浮遊物を沈殿分離する。そして、最初沈殿池10は、分離した有機物や浮遊物質を初沈汚泥として濃縮槽40に排出するとともに、有機物や浮遊物質を分離した被処理水を汚水処理装置20に排出する。
【0012】
汚水処理装置20は、標準活性汚泥法や循環式硝化脱窒法等の生物学的処理によって被処理水を処理する。具体的に、汚水処理装置20は、例えば、嫌気性の脱窒菌によって硝酸性イオンから窒素を生成(脱窒)する脱窒槽(図示せず)と、脱窒槽の後段に設けられ、好気性の硝化菌によりアンモニア性窒素を硝化する硝化槽(図示せず)とを有する。そして、汚水処理装置20は、被処理水を最終沈殿池30に排出する。
【0013】
最終沈殿池30は、汚水処理装置20から排出された被処理水に含まれる汚泥を沈殿分離し、分離した汚泥を活性汚泥として排出する。そして、最終沈殿池30では、活性汚泥の一部を余剰汚泥として濃縮装置50に供給するとともに、余剰汚泥以外の活性汚泥を返送汚泥として汚水処理装置20に返送する。また、最終沈殿池30は、汚泥を分離した被処理水(上澄み液)を後段の滅菌処理装置(図示せず)に排出する。その後、滅菌処理装置(図示せず)は、最終沈殿池30から排出された被処理水を滅菌し、例えば、減菌した処理水を放流する。
【0014】
濃縮槽40は、例えば、最初沈殿池10から排出された初沈汚泥を濃縮して消化槽60に供給する。以下、濃縮槽40において濃縮された初沈汚泥を濃縮初沈汚泥とも呼ぶ。
【0015】
濃縮装置50は、例えば、最終沈殿池30から排出された余剰汚泥を濃縮して消化槽60に供給する。以下、濃縮装置50において濃縮された余剰汚泥を濃縮余剰汚泥とも呼ぶ。
【0016】
消化システム100は、消化槽60と加熱器70と、その他の設備とを有する。消化槽60は、嫌気性細菌及び汚泥などを貯留する槽である。消化槽60内の嫌気性細菌は、濃縮槽40から供給された初沈汚泥と濃縮装置50から供給された余剰汚泥とを含む汚泥(以下、単に汚泥とも呼ぶ)の有機物を、生物反応によって嫌気性消化(分解)して消化汚泥を生成する。消化槽60内の嫌気性細菌は、消化の過程でメタンガス等の消化ガス(以下、単に消化ガスとも呼ぶ)を生成する。なお、消化槽60内の消化汚泥(消化液)の温度は、生物反応を効率的に進めて消化率を向上させるために、例えば、30℃から40℃までの間または50℃から60℃までの間(以下、この範囲の温度を適温とも呼ぶ)に維持することが好ましい。
【0017】
加熱器70は、消化槽60に供給される前の余剰汚泥を加熱する。具体的に、加熱器70は、例えば、消化槽60に供給される前の余剰汚泥を熱媒(水や熱媒油等の流体)の保有熱によって加熱(昇温)する熱交換器である。また、加熱器70は、例えば、消化槽60に供給される前の余剰汚泥に対して蒸気(水蒸気)を供給して加熱する蒸気加熱器である。そして、消化槽60では、加熱器70によって加熱された余剰汚泥(例えば、70℃から95℃まで加熱された余剰汚泥)を熱媒として、消化槽60内における消化汚泥の温度を適温に維持する。
【0018】
次に、余剰汚泥を加熱する理由を説明する。消化槽60における消化率低下の原因の1つは、余剰汚泥内に生存している多量な細菌群にある。そして、生存している細菌群を含む余剰汚泥をそのまま消化槽60に供給した場合、消化槽60内の嫌気性細菌は、細菌群を十分に分解(消化)することができない場合がある。
【0019】
そこで、本実施の形態における消化システム100では、余剰汚泥を消化槽60に供給する前の段階において、余剰汚泥を集中的に加熱することによって、余剰汚泥に含まれる生存中の細菌群を十分に死滅させる。そして、消化システム100では、加熱した余剰汚泥を熱媒とすることによって、消化槽60内における消化汚泥の温度を適温に維持する。
【0020】
これにより、本実施の形態における消化システム100は、消化槽60における消化率の低下を抑制することが可能になる。
【0021】
なお、初沈汚泥は、細菌群が占める割合が低く分解し易い性状であるため、消化システム100では、消化効率を高めるとともに省エネルギー化を実現するために、消化槽60への供給前における初沈汚泥の加熱については行わないものであってもよい。一方、初沈汚泥についても熱媒として利用する場合、消化槽60への供給前における初沈汚泥についても加熱を行うものであってよい。以下、消化システム100における余剰汚泥の移送について説明を行う。
【0022】
[余剰汚泥の移送]
図2及び図3は、余剰汚泥の移送について説明する図である。具体的に、図2は、余剰汚泥が間欠的及び連続的に移送される状態を模式的に説明する図である。以下、加熱器70が熱交換器(以下、熱交換器70とも呼ぶ)である場合について説明を行う。
【0023】
本実施の形態における消化システム100は、例えば、貯留槽71(以下、第1貯留槽71またはバッファ槽71とも呼ぶ)と、貯留槽72(以下、第2貯留槽72またはバッファ槽72とも呼ぶ)とを有する。
【0024】
貯留槽72は、濃縮装置50に連通する配管(図示せず)と連通し、濃縮装置50から間欠的に移送される余剰汚泥を一時的に蓄える。
【0025】
貯留槽71は、貯留槽72に連通する配管L2(以下、第2配管L2とも呼ぶ)と連通し、貯留槽72から間欠的に移送される余剰汚泥を一時的に蓄える。また、貯留槽71は、消化槽60に連通する配管L1(以下、第1配管L1とも呼ぶ)と連通する。
【0026】
さらに、消化システム100は、余剰汚泥を移送する移送手段(以下、単に移送手段とも呼ぶ)として、消化槽60と貯留槽71との間に設けられたポンプP1(以下、第1ポンプP1とも呼ぶ)と、貯留槽71と貯留槽72との間に設けられたポンプP2(以下、第2ポンプP2とも呼ぶ)とを有する。なお、消化システム100に設けられる移送手段の数や設置場所は、これ以外のものであってもよい。
【0027】
具体的に、ポンプP2は、図2に示すように、濃縮装置50から貯留槽72に移送された余剰汚泥(貯留槽72に蓄えられた余剰汚泥)を、配管L2を介して貯留槽72から貯留槽71に間欠的に移送する。そして、ポンプP2は、配管L2内を間欠的に移送させた余剰汚泥を貯留槽71に蓄える。その後、ポンプP1は、配管L1内において、貯留槽71に蓄えられた余剰汚泥を、配管L1を介して、貯留槽71から熱交換器70を経由して消化槽60に連続的に移送する。すなわち、ポンプP2は、配管L1内において、余剰汚泥を連続的に移送して熱交換器70に供給する。
【0028】
次に、図3(A)及び図3(B)を参照しながら、余剰汚泥の間欠的な移送(以下、間欠的移送とも呼ぶ)及び余剰汚泥の連続的な移送(以下、連続的移送とも呼ぶ)について説明を行う。なお、図3(A)及び図3(B)では、ハッチングで示した領域が余剰汚泥の量を模式的に示しており、それぞれ同一の量の余剰汚泥が移送される場合の状態を模式的に示している。具体的に、図3(A)は、余剰汚泥の間欠的移送を説明するグラフ図である。縦軸は、移送される余剰汚泥の量を示し、横軸は、時間を示している。また、図3(B)は、余剰汚泥の連続的移送を説明するグラフ図である。縦軸は、移送される余剰汚泥の量を示し、横軸は、時間を示している。
【0029】
配管L1及び配管L2は、図2に示すように、例えば、それぞれ管径が異なる配管である。具体的に、配管L2の管径は、例えば、150(mm)以上であり、配管L1の管径よりも大きい。この管径150(mm)以上という数値は、汚泥処理設備の設計指針により決められた数値である。以下の説明では、配管L2の管径が150(mm)であるものとして説明を行う。
【0030】
ここで、余剰汚泥の生成量が通常の生成量よりも大幅に多くなる場合(いわゆる最大負荷)であっても、余剰汚泥を移送する必要がある。そのため、図2に示すように、余剰汚泥は、例えば、濃縮装置50から貯留槽72までの間と貯留槽72から貯留槽71までの間とのそれぞれにおいて間欠的移送が行われる。
【0031】
また、一般的な汚泥処理施設において、余剰汚泥の生成量は、この管径で移送できる余剰汚泥量に比べて少ない。そして、所定の管径及び流量以上において汚泥を移送しない場合、配管下部に汚泥が沈降し、その結果、配管が汚泥で閉塞される可能性が高くなる。そのため、前記したように間欠的移送が行われる。
【0032】
具体的に、配管L2では、図3(A)に示すように、例えば、一定の間隔ごとに、汚泥量V1の余剰汚泥が期間T1において一度に移送される間欠的移送が行われる。なお、間欠的移送とは、一定の間隔だけでなく、不定の間隔をおいて移送されることも意味する。
【0033】
これに対し、配管L1では、図3(B)に示すように、例えば、汚泥量V2の余剰汚泥が期間T2において連続的に移送される連続的移送が行われる。
【0034】
すなわち、同一時間(例えば、期間T1)において、汚泥量V1よりも少ない汚泥量V2の余剰汚泥を熱交換器70によって所定温度まで加熱(昇温)する場合、汚泥量V2の余剰汚泥を加熱する際に必要な熱エネルギー量は、汚泥量V1の余剰汚泥を加熱する際に必要な熱エネルギー量に比べて少ない。言い換えれば、汚泥量V1の余剰汚泥量を期間T1において一度に所定温度まで加熱するためには、汚泥量V2の余剰汚泥を同じ期間T1において所定温度まで加熱する場合に比べて、より多くの熱エネルギーが必要になる。
【0035】
この点、多くの熱エネルギーを余剰汚泥に供給するには、例えば、加熱器70を大型化する必要がある。具体的に、加熱器70が図2に示す熱交換器70の場合、伝熱面積を大きくするため熱交換器自体を大型化する必要がある。しかしながら、熱交換器70の大型化(伝熱面積の増大)は、設置空間、設置コスト、維持コスト及び使用燃料等の増大に至るため、実現が困難である場合がある。
【0036】
そこで、本実施の形態における消化システム100では、配管の閉塞を抑制し、さらに、移送される余剰汚泥の量を少なくするため、所定の期間において余剰汚泥の連続的移送を行う。そして、消化システム100では、かかる連続的移送を可能にするため、余剰汚泥を一次的に蓄える貯留槽71を設け、貯留槽71と消化槽60とを接続する配管L1の管径を前記した150(mm)よりも小さくする。配管L1の管径は、汚泥による閉塞を防止し、かつ、所定の流速及び流量以上にするため、例えば、60(mm)にする。
【0037】
具体的に、貯留槽71に一時的に蓄えられた余剰汚泥は、ポンプP1によって連続的移送が行われ、配管L1内を移送され、さらに、消化槽60の上方部分から消化槽60内に供給される。この連続的移送が行われる期間(期間T2)においては、図3(A)で説明した間欠的移送と異なり、余剰汚泥が移送されない期間がなくなるため、余剰汚泥の移送量が少なくなる。
【0038】
以上説明したように、本実施の形態における消化システム100では、少ない量の余剰汚泥についての連続的移送を行い、この移送中に余剰汚泥の加熱することによって、単位時間(例えば、期間T1)あたりに余剰汚泥に供給する熱量を削減することが可能になる。その結果、消化システム100では、熱交換器70を小型化することが可能になる。
【0039】
[第2の実施の形態における消化システム200]
次に、第2の実施の形態における消化システム200について説明を行う。図4は、第2の実施の形態における消化システム200の構成について説明する図である。
【0040】
本実施の形態における消化システム200は、図4に示すように、例えば、第1の形態における消化システム100が有する各構成に加えて、消化槽60に移送する余剰汚泥の量を制御する制御装置80を有する。
【0041】
制御装置80は、例えば、CPU(Central Computing Unit)及びメモリ等を有するコンピュータである。そして、制御装置80は、記憶装置(図示せず)に記憶されたプログラムとCPUとが協働することによって、余剰汚泥の移送量を制御する処理を行う。
【0042】
具体的に、制御装置80は、例えば、貯留槽71に蓄えられた余剰汚泥の量に応じて、貯留槽71から消化槽60に対して連続的移送を行う汚泥量V2を制御する。
【0043】
さらに具体的に、制御装置80は、例えば、貯留槽71に蓄えられた余剰汚泥の量のレベル(例えば、貯留槽71に蓄えられた余剰汚泥の貯留槽71内における高さ)を計測するレベル計M1を参照し、現在のレベルを取得する。
【0044】
そして、例えば、取得したレベルが示す値が予め定められた上限閾値よりも大きい場合、制御装置80は、貯留槽71から消化槽60に対して移送(連続的移送)を行う汚泥量V2が増加するようにポンプP1の制御を行う。
【0045】
すなわち、貯留槽71の容量に制限がある場合、消化システム200では、貯留槽71に蓄えられている余剰汚泥の量が増え過ぎないように制御を行う必要がある。そのため、制御装置80は、例えば、貯留槽71に蓄積された余剰汚泥の量が上限閾値よりも大きいことをレベル計M1が示している場合、貯留槽71から消化槽60に移送する汚泥量V2を増加させることによって、貯留槽71に蓄積された余剰汚泥の量が減少するように制御を行う。
【0046】
これにより、制御装置80は、例えば、貯留槽71において新たな余剰汚泥を蓄えることができなくなる状況の発生を防止することが可能になる。
【0047】
なお、制御装置80は、例えば、取得したレベルが示す値が予め定められた下限閾値(上限閾値よりも小さい閾値)よりも小さい場合、貯留槽71から消化槽60に対する余剰汚泥の連続的移送を維持することが可能な範囲内において、貯留槽71から消化槽60に移送する汚泥量V2が減少するようにポンプP1の制御を行うものであってもよい。
【0048】
また、例えば、取得したレベルが示す値が下限閾値以上であって上限閾値以下である場合、制御装置80は、貯留槽71から消化槽60に移送する汚泥量V2を変更しないものであってよい。
【0049】
[第3の実施の形態における消化システム300]
次に、第3の実施の形態における消化システム300について説明を行う。図5は、第3の実施の形態における消化システム300の構成について説明する図である。以下、第3の実施の形態における制御装置80が第2の実施の形態において説明した制御装置80と同じものとして説明を行うが、第3の実施の形態における制御装置80は、第2の実施の形態において説明した制御装置80と異なるものであってもよい。
【0050】
本実施の形態における消化システム300は、図5に示すように、例えば、第1の形態における消化システム100が有する各構成に加えて、消化槽60に移送する余剰汚泥の量を制御する制御装置80を有する。
【0051】
具体的に、制御装置80は、例えば、貯留槽72に蓄えられた余剰汚泥の量に応じて、貯留槽72から貯留槽71に対して行われる間接的移送を制御する。
【0052】
さらに具体的に、制御装置80は、例えば、貯留槽72に蓄えられた余剰汚泥の量のレベル(例えば、貯留槽72に蓄えられた余剰汚泥の貯留槽72内における高さ)を計測するレベル計M2を参照し、現在のレベルを取得する。
【0053】
そして、例えば、取得したレベルが示す値が予め定められた閾値よりも大きい場合、制御装置80は、貯留槽72から貯留槽71に対する余剰汚泥の移送(間接的移送)が行われるようにポンプP2の制御を行う。
【0054】
すなわち、貯留槽72の容量に制限がある場合、消化システム300では、貯留槽72に蓄えられている余剰汚泥の量が増え過ぎないように制御を行う必要がある。そのため、制御装置80は、例えば、貯留槽72に蓄積された余剰汚泥の量が閾値よりも大きいことをレベル計M2が示している場合、貯留槽72から貯留槽71に対する余剰汚泥の移送を行うことによって、貯留槽72に蓄積された余剰汚泥の量が減少するように制御を行う。
【0055】
これにより、制御装置80は、例えば、貯留槽72において新たな余剰汚泥を蓄えることができなくなる状況の発生を防止することが可能になる。
【0056】
なお、制御装置80は、例えば、取得したレベルが示す値が予め定められた閾値よりも小さい場合、貯留槽72から貯留槽71に対する余剰汚泥の移送を行わないものであってよい。
【0057】
また、制御装置80は、例えば、貯留槽72に蓄えられた余剰汚泥の量に応じて、貯留槽71から消化槽60に対して連続的移送を行う汚泥量V2を制御するものであってもよい。
【0058】
また、制御装置80は、貯留槽72に蓄えられた余剰汚泥の量に応じて、貯留槽72から貯留槽71に対して行われる間接的移送を制御するとともに、貯留槽71に蓄えられた余剰汚泥の量に応じて、貯留槽71から消化槽60に対して連続的移送を行う汚泥量V2を制御するものであってもよい。
【0059】
また、消化システム300は、貯留槽72に蓄えられた余剰汚泥の量に応じて、貯留槽72から貯留槽71に対して行われる間接的移送を制御する制御装置80に加えて、貯留槽71に蓄えられた余剰汚泥の量に応じて、貯留槽71から消化槽60に対して連続的移送を行う汚泥量V2を制御する他の制御装置80(すなわち、図4で説明した制御装置80)を別途有するものであってもよい。
【0060】
[第4の実施の形態における消化システム400]
次に、第4の実施の形態における消化システム400について説明を行う。図6は、第4の実施の形態における消化システム400の構成について説明する図である。以下、第4の実施の形態における制御装置80が第2の実施の形態や第3の実施の形態において説明した制御装置80と同じものとして説明を行うが、第4の実施の形態における制御装置80は、第2の実施の形態等において説明した制御装置80と異なるものであってもよい。
【0061】
本実施の形態における消化システム400は、図6に示すように、例えば、第1の形態における消化システム100が有する各構成に加えて、消化槽60に移送する余剰汚泥の量を制御する制御装置80と、余剰汚泥の焼却を行う焼却システム90とを有する。以下、焼却システム90の具体例について説明を行う。
【0062】
[焼却システム90の具体例]
図7は、焼却システム90の構成について説明する図である。焼却システム90は、図7に示すように、例えば、焼却炉91と、白煙防止空気予熱器92と、スクラバ93と、排煙処理塔94と、煙突95と、温水発生器96とを有する。
【0063】
焼却炉91は、例えば、消化槽60において消化が行われた後の消化汚泥を焼却する流動焼却炉である。なお、以下、焼却炉91において消化汚泥の焼却が行われる場合について説明を行うが、焼却炉91では、消化汚泥以外の廃棄物(例えば、一般廃棄物ゴミや産業廃棄物)の焼却が行われるものであってもよい。
【0064】
白煙防止空気予熱器92は、排ガス用の熱交換器であり、例えば、焼却炉91から排出された高温の排ガスGの保有熱を用いることによって、大気を昇温して白煙防止空気Aを生成する。白煙防止空気Aは、煙突95から放出される排ガスG中の水蒸気が白煙として見えることを防止するために用いられる加熱空気である。
【0065】
スクラバ93は、白煙防止空気予熱器92の後段に設置され、白煙防止空気予熱器92から出力された排ガスGの不純物を除去する。
【0066】
排煙処理塔94は、塔の下部から排ガスGを導入し、上部の散水ノズル(図示せず)から散水される洗煙水と接触させることによって、排ガスG中のSO等の成分を洗煙水に含ませて除去する。
【0067】
排煙処理塔94が有する熱交換器(図示せず)は、排煙処理塔94から排出された洗煙水(以下、洗煙排水とも呼ぶ)から熱回収を行う。そして、排煙処理塔94が有する熱交換器によって回収された熱エネルギーを有する熱媒(例えば、水や熱媒油等の流体)は、例えば、循環ポンプP11によって、配管L11を介して熱交換器70に供給される。
【0068】
また、排煙処理塔94の上部には、煙突95が設置される。排煙処理塔94において洗浄された排ガスGは、煙突95内で白煙防止処理が施された後、煙突95から大気に放出される。
【0069】
温水発生器96は、熱交換器であり、白煙防止空気Aから熱回収を行う。そして、温水発生器96によって熱回収された熱エネルギーを有する熱媒(例えば、水や熱媒油の流体)は、例えば、循環ポンプP12によって、配管L12を介して熱交換器70に供給される。
【0070】
その後、熱交換器70は、配管L11及び配管L12のうちの少なくともいずれかから供給された熱媒が有する熱エネルギーによって、図6に示すように、配管L1を流動する余剰汚泥を加熱する。
【0071】
これにより、消化システム400では、焼却炉91から排出される排ガスGが有する熱エネルギーを、消化槽60に投入される余剰汚泥の加熱に必要な熱エネルギーの少なくとも一部として利用することが可能になる。
【0072】
なお、熱交換器70は、例えば、スクラバ93から排出された排水(以下、スクラバ排水とも呼ぶ)が有する熱エネルギーによって、配管L1を流動する余剰汚泥を加熱するものであってもよい。
【0073】
具体的に、スクラバ93が有する熱交換器(図示せず)は、例えば、スクラバ排水から熱回収を行うものであってもよい。そして、スクラバ93が有する熱交換器によって回収された熱エネルギーを有する熱媒(例えば、水や熱媒油の流体)は、例えば、循環ポンプ(図示せず)によって熱交換器70に供給されるものであってもよい。
【0074】
また、消化システム400は、例えば、消化槽60における余剰汚泥の消化に伴って発生する消化ガスの焼却を行うことによって発電を行う発電システム(図示せず)を有するものであってもよい。そして、熱交換器70は、例えば、発電システムから排出された排ガスが有する熱エネルギーによって、配管L1を流動する余剰汚泥を加熱するものであってもよい。
【0075】
具体的に、発電システムが有する熱交換器(図示せず)は、例えば、発電システムにおける発電に伴って発電システムから排出された排ガスから熱回収を行うものであってもよい。そして、発電システムが有する熱交換器によって回収された熱エネルギーを有する熱媒は、例えば、循環ポンプ(図示せず)によって熱交換器70に供給されるものであってもよい。
【0076】
なお、図7に示す焼却システム90から熱回収された熱エネルギーを有する熱媒は、図6に示す消化システム400だけでなく、他の実施の形態の消化システム(消化システム100、200、300、500及び600)の加熱器70(例えば、熱交換器70)に供給されるものであっても良い。また、図8に示す消化システム500の場合、図7に示す焼却システム90から熱回収された熱エネルギーを有する熱媒は、予熱器73に供給されるものであっても良い。
【0077】
図6に戻り、制御装置80は、例えば、熱交換器70による加熱が行われた後の余剰汚泥の温度に応じて、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量を制御する。
【0078】
さらに具体的に、制御装置80は、例えば、熱交換器70による加熱が行われた後の余剰汚泥(熱交換器70と消化槽60との間を移送する余剰汚泥)の温度を計測する温度計Tを参照し、熱交換器70による加熱が行われた後の余剰汚泥の温度を取得する。
【0079】
そして、例えば、取得した温度が予め定められた上限閾値よりも大きい場合、制御装置80は、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量が減少するように、例えば、ポンプP11やポンプP12を制御する。また、例えば、取得した温度が予め定められた下限閾値(上限閾値よりも小さい閾値)よりも小さい場合、制御装置80は、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量が増加するように、例えば、ポンプP11やポンプP12を制御する。
【0080】
これにより、制御装置80は、例えば、消化槽60内における消化汚泥の温度が適温になるように、消化槽60に投入される余剰汚泥の温度を制御することが可能になる。そのため、制御装置80は、例えば、消化槽60内における消化能力の低下を防止することが可能になる。
【0081】
なお、例えば、取得した温度が下限閾値以上であって上限閾値以下である場合、制御装置80は、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量を変更しないものであってよい。
【0082】
また、上記の例では、熱交換器70による加熱が行われた後の余剰汚泥の温度を用いることによって、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量の制御を行う場合について説明を行ったが、制御装置80は、例えば、熱交換器70による加熱が行われる前の余剰汚泥の温度を用いることによって、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量の制御を行うものであってもよい。具体的に、制御装置80は、例えば、熱交換器70による加熱が行われる前の余剰汚泥(貯留槽71と熱交換器70との間を移送される余剰汚泥)の温度を計測する温度計(図示せず)を参照し、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量の制御を行うものであってもよい。さらに具体的に、例えば、温度計によって計測された余剰汚泥の温度(熱交換器70による加熱が行われる前の余剰汚泥の温度)が予め定められた上限閾値よりも大きい場合、制御装置80は、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量が減少するように制御を行うものであってもよい。また、例えば、温度計によって計測された余剰汚泥の温度(熱交換器70による加熱が行われる前の余剰汚泥の温度)が予め定められた下限閾値よりも小さい場合、制御装置80は、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量が増加するように制御を行うものであってもよい。
【0083】
なお、制御装置80は、この場合、例えば、熱交換器70による加熱が行われる前の余剰汚泥と熱交換器70による加熱が行われた後の余剰汚泥の温度との差を用いることによって、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量の制御を行うものであってもよい。
【0084】
また、制御装置80は、例えば、貯留槽71から熱交換器70に移送される汚泥量V2を用いることによって、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量の制御を行うものであってもよい。具体的に、制御装置80は、例えば、貯留槽71から熱交換器70に移送される汚泥量V2を計測する流量計(図示せず)を参照し、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量の制御を行うものであってもよい。さらに具体的に、例えば、流量計によって計測された汚泥量V2が予め定められた上限閾値よりも大きい場合、制御装置80は、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量が増加するように制御を行うものであってもよい。また、例えば、流量計によって計測された汚泥量V2が予め定められた下限閾値よりも小さい場合、制御装置80は、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量が減少するように制御を行うものであってもよい。
【0085】
また、制御装置80は、例えば、熱交換器70に供給される前の熱媒の温度を用いることによって、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量の制御を行うものであってもよい。具体的に、制御装置80は、例えば、熱交換器70に供給される前の熱媒の温度を計測する温度計(図示せず)を参照し、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量の制御を行うものであってもよい。さらに具体的に、例えば、温度計によって計測された熱媒の温度(熱交換器70に供給される前の熱媒の温度)が予め定められた上限閾値よりも大きい場合、制御装置80は、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量が減少するように制御を行うものであってもよい。また、例えば、温度計によって計測された熱媒の温度(熱交換器70に供給される前の熱媒の温度)が予め定められた下限閾値よりも小さい場合、制御装置80は、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量が増加するように制御を行うものであってもよい。
【0086】
また、制御装置80は、例えば、熱交換器70に排出された後の熱媒の温度を用いることによって、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量の制御を行うものであってもよい。具体的に、制御装置80は、例えば、熱交換器70から排出された後の熱媒の温度を計測する温度計(図示せず)を参照し、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量の制御を行うものであってもよい。さらに具体的に、例えば、温度計によって計測された熱媒の温度(熱交換器70に供給される後の熱媒の温度)が予め定められた上限閾値よりも大きい場合、制御装置80は、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量が減少するように制御を行うものであってもよい。また、例えば、温度計によって計測された熱媒の温度(熱交換器70に供給される後の熱媒の温度)が予め定められた下限閾値よりも小さい場合、制御装置80は、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量が増加するように制御を行うものであってもよい。
【0087】
なお、制御装置80は、熱交換器70による加熱が行われた後の余剰汚泥の温度に応じて、熱交換器70と焼却システム90との間を循環する熱媒の量を制御するとともに、貯留槽72に蓄えられた余剰汚泥の量に応じて、貯留槽72から貯留槽71に対して行われる間接的移送の制御と、貯留槽71に蓄えられた余剰汚泥の量に応じて、貯留槽71から消化槽60に対して連続的移送を行う汚泥量V2の制御とのうちの少なくともいずれかを行うものであってもよい。
【0088】
また、消化システム400は、貯留槽72に蓄えられた余剰汚泥の量に応じて、貯留槽72から貯留槽71に対して行われる間接的移送を制御する制御装置80に加えて、貯留槽72に蓄えられた余剰汚泥の量に応じて、貯留槽72から貯留槽71に対して行われる間接的移送を制御する他の制御装置80と、貯留槽71に蓄えられた余剰汚泥の量に応じて、貯留槽71から消化槽60に対して連続的移送を行う汚泥量V2を制御する他の制御装置80との少なくともいずれかを有するものであってもよい。
【0089】
[第5の実施の形態における消化システム500]
次に、第5の実施の形態における消化システム500について説明を行う。図8は、第5の実施の形態における消化システム500の構成について説明する図である。
【0090】
本実施の形態における消化システム500は、図8に示すように、例えば、第1の形態における消化システム100が有する各構成を有する。さらに、本実施の形態における貯留槽71は、図8に示すように、例えば、貯留槽72から移送された余剰汚泥を加熱する予熱器73を有する。
【0091】
予熱器73は、例えば、熱交換器70に移送される前の余剰汚泥を熱媒(水や熱媒油等の流体)の保有熱によって加熱(昇温)する熱交換器である。具体的に、予熱器73は、例えば、排煙処理塔94から排出された洗煙排水の保有熱や、消化槽60において消化が行われた後の消化汚泥の保有熱を用いることによって、貯留槽72から移送された余剰汚泥を予熱する。さらに具体的に、予熱器73は、例えば、洗煙排水や消化汚泥が有する60℃以下の熱を用いることによって、貯留槽72から移送された余剰汚泥を50℃前後まで予熱する。
【0092】
すなわち、本実施の形態における消化システム500では、予熱器73において余剰汚泥を予熱してから熱交換器70に移送する。
【0093】
これにより、本実施の形態における消化システム500では、予熱器73を有しない場合と比較して、熱交換器70において余剰汚泥の加熱に用いられる高温の熱(例えば、100℃程度の熱)の必要量を抑えることが可能になる。そのため、消化システム500では、例えば、高温の熱の発生に必要な燃料のコストを抑えることが可能になる。
【0094】
また、本実施の形態における消化システム500では、熱交換器70が余剰汚泥に与える必要がある熱エネルギーの量を抑えることが可能になる。そのため、消化システム500では、熱交換器70の大きさ(伝熱面積の大きさ)を抑えることが可能になる。
【0095】
また、本実施の形態における消化システム500では、熱交換器70による加熱によって上昇する余剰汚泥の温度幅を抑えることが可能になる。そのためため、消化システム500では、熱交換器70における余剰汚泥の焦げの発生を防止することが可能になる。
【0096】
また、本実施の形態における消化システム500では、予熱器73における予熱によって余剰汚泥の粘性を低減することが可能になる。そのため、消化システム500では、熱交換器70に移送される余剰汚泥の圧力損失を抑制することが可能になり、ポンプP1の動力を抑制することができる。さらに、消化システム500では、圧力損失を抑制することができるので、コンパクトな熱交換器に余剰汚泥を通すことができるようになり、熱交換器における余剰汚泥の加熱効率を高めることが可能になる。
【0097】
なお、消化システム500では、ヒートポンプ(図示せず)によって昇温した洗煙排水や消化汚泥等を熱媒として熱交換器70に供給するものであってもよい。
【0098】
[予熱器73の具体例(1)]
次に、予熱器73の具体例について説明を行う。図9から図12は、貯留槽71及び予熱器73の構成について説明する斜視図である。
【0099】
予熱器73は、図9に示すように、例えば、少なくとも一部が貯留槽71内に設けられた配管73a(以下、第3配管73aとも呼ぶ)を有する。具体的に、配管73aは、例えば、貯留槽71内において、少なくとも一部が円筒形状の貯留槽71の内側壁面に沿って螺旋状に延びるように設けられる。
【0100】
そして、消化システム500では、例えば、配管73a内に熱媒を流入させることによって、貯留槽71内に蓄えられた余剰汚泥(図示せず)を加熱する。
【0101】
また、予熱器73は、例えば、貯留槽71に蓄えられた余剰汚泥を撹拌する撹拌棒73bと、撹拌棒73bを長軸周りに回転させるモータ73dとを有する。さらに、撹拌棒73bには、例えば、余剰汚泥の撹拌を促進するための撹拌翼73cが取り付けられている。以下、撹拌棒73b、撹拌翼73c及びモータ73dを総称して撹拌装置とも呼ぶ。
【0102】
そして、予熱器73は、例えば、配管73a内を流れる熱媒によって余剰汚泥を加熱する際に、モータ73dによる撹拌棒73bの回転によって余剰汚泥を撹拌する。
【0103】
これにより、消化システム500では、貯留槽71に蓄えられた余剰汚泥の加熱を効率的に行うことが可能になる。
【0104】
また、配管73aは、図10に示すように、例えば、貯留槽71の内側壁面に沿って複数回折り返しながら延びるものであってもよい。さらに、配管73aは、図11に示すように、例えば、貯留槽71の内側底面に沿って複数回折り返しながら延びるものであってもよい。
【0105】
このように、螺旋状の配管を貯留槽71に設けることにより(図9参照)、また、折り返しながら延伸する配管(いわゆる折り返し配管)を貯留槽71に設けることにより(図10図11参照)、消化システム500では、貯留槽71の内側において設けられる配管73aの長さを伸ばすことが可能になり、貯留槽71に蓄えられた余剰汚泥の加熱をより効率的に行うことが可能になる。
【0106】
なお、図10に示す例では、貯留槽71が矩形形状であるが、貯留槽71は、矩形形状以外の形状(例えば、円筒形状)であってもよい。また、図9及び図11に示す例では、貯留槽71が円筒形状であるが、貯留槽71は、円筒形状以外の形状であってもよい。さらに、図10に示す例では、配管73aが貯留槽71の内側側面に沿っており、図11に示す例では、配管73aが貯留槽71の内側底面に沿っているが、配管73aは、例えば、貯留槽71の内側壁面及び内側底面のそれぞれに沿うものであってもよい。
【0107】
図9から図11で説明したように、消化システム500では、余剰汚泥を撹拌することにより、効率的な対流伝熱を実現することできる。また、消化システム500では、余剰汚泥を撹拌することにより、余剰汚泥が配管73aに付着することを抑制することができる。なお、余剰汚泥は、貯留槽71の底側から流入し上側(天井側)から流出しても良い。逆に、余剰汚泥は、貯留槽71の上側から流入し底側から流出しても良い。
【0108】
また、貯留槽71は、図12に示すように、例えば、貯留槽71の内部を2つの槽(以下、第1槽71b及び第2槽71cとも呼ぶ)に区切る仕切板71aを有するものであってもよい。図12に示す例において、第1槽71bと第2槽71cとの間は、例えば、仕切板71aの上方において連通している。
【0109】
そして、配管73aは、例えば、第1槽71bの内側壁面(内側底面)に沿って設けられ、第1槽71bにおいて余剰汚泥の加熱が行われるものであってよい。すなわち、消化システム500では、例えば、図10で説明した場合と比較して、余剰汚泥の加熱を行う槽の大きさを小さくするものであってもよい。
【0110】
余剰汚泥は、第1槽71bの底側または上側から流入する。第1槽71bに流入した余剰汚泥の高さが仕切板71aを超えると、余剰汚泥が仕切板71aを越流し、第2槽71cに流入する。第2槽71cに流入した余剰汚泥は、第2槽71cの底側から流出、または、第2槽71cの上側(仕切板71aの高さよりも低い位置)から流出しても良い。
【0111】
このように、図12に示す例では、貯留槽71の内部を2つの槽に分けて余剰汚泥に熱を供給する第1槽71b(いわゆる熱交換槽)の容積を小さくして、撹拌対象となる余剰汚泥の量を減らすことにより撹拌効率を向上させる。そして、撹拌効率を向上させることにより効果的な対流伝熱を実現する。なお、図12に示す例では、貯留槽71の全体としての容量は変わらないので、余剰汚泥を一時貯留するバッファ槽としての機能も維持できる。
【0112】
[予熱器73の具体例(2)]
次に、予熱器73の他の具体例について説明を行う。図9から図12では、撹拌装置を利用して効果的な対流伝熱を実現していた。これに対し、図13では、攪拌装置を用いることなく効果的な対流伝熱を実現する貯留槽71の一例について説明する。
【0113】
図13は、貯留槽71及び予熱器73の構成について説明する斜視図である。
【0114】
貯留槽71は、図13に示すように、例えば、貯留槽71の内部空間を完全に分離された2つの槽(以下、第3槽71e及び第4槽71fとも呼ぶ)に区切る仕切板71dを有する。
【0115】
また、予熱器73は、例えば、少なくとも一部が第3槽71e(以下、流体貯留槽71eとも呼ぶ)内に設けられた配管73e(以下、第4配管73eとも呼ぶ)を有する。配管73eは、図13に示すように、例えば、第3槽71eの内部を通過するように設けられる。具体的に、配管73eは、例えば、第3槽71eの内部において、第3槽71eの内側側面や内側底面に沿わない位置に設けられる。第4配管73eは、折り曲がり構造を有する。
【0116】
そして、予熱器73は、例えば、第4槽71f内に余剰汚泥が蓄えられた後、熱媒(例えば、温水等の流体)を第3槽71e内に流入させ、さらに、第4槽71f内に蓄えられた余剰汚泥を配管73e内に流入させることによって、配管73e内を流れる余剰汚泥を加熱する。
【0117】
すなわち、図13に示す例では、折り曲がり構造の配管73e内を余剰汚泥が流れることで、余剰汚泥の加熱時間を長くすることができる。また、折り曲がり構造の配管73e内を余剰汚泥が流れることで、撹拌装置がなくても効果的な対流伝熱を実現することができる。また、攪拌装置をなくすことで、攪拌装置の動力エネルギーを削減することができる。さらに、温水等の熱媒(流体)を第3槽71eに供給することで、熱媒における熱分布を均一にして余剰汚泥を均一に昇温することができる。
【0118】
なお、図13に示す例において、熱媒は、第3槽71eの底側から流入し上側から流出しても良い。逆に、熱媒は、第3槽71eの上側から流入し底側から流出しても良い。また、配管73eにおける余剰汚泥の入口端部は、第4槽71fの底側に設けているが、入口端部を第4槽71fの上側に設けても良い。また、配管73eにおける余剰汚泥の出口端部を第3槽71eの底側に設けても良い。さらに、余剰汚泥は、第4槽71fの上側または第4槽71fの底側から流入しても良い。
【0119】
また、熱交換器70や予熱器73に供給する熱媒を昇温する様々な方法を採用することができる。例えば、熱交換器70や予熱器73に供給する熱媒を昇温するヒートポンプを別途設け、このヒートポンプにより熱媒を昇温しても良い。この場合、前記した発電システムによる発電により生じた電力をヒートポンプに供給し、ヒートポンプはこの電力により動作し、前記の熱媒を昇温しても良い。
【0120】
また、消化システム500は、例えば、第2の実施の形態で説明した制御装置80、第3の実施の形態で説明した制御装置80及び第4の実施の形態で説明した制御装置80のうちの少なくともいずれかを有するものであってもよい。
【0121】
[第6の実施の形態における消化システム600]
次に、第6の実施の形態における消化システム600について説明を行う。図14は、第6の実施の形態における消化システム600の構成について説明する図である。
【0122】
本実施の形態における消化システム600は、図14に示すように、例えば、第1の形態における消化システム100が有する各構成に加えて、貯留槽72から貯留槽71に向けて移送されている余剰汚泥(配管L2内を移送されている余剰汚泥)を破砕する汚泥破砕機74を有する。
【0123】
汚泥破砕機74は、例えば、ポンプP2と貯留槽72との間に配置される。汚泥破砕機74は、塊状の余剰汚泥を破砕する機能を有し、例えば複数の刃によって塊状の余剰汚泥を破砕する。そして、ポンプP2は、汚泥破砕機74によって破砕された余剰汚泥を貯留槽71に移送する。
【0124】
これにより、本実施の形態における消化システム600では、塊状の余剰汚泥がそのまま熱交換器70に移送されることを防止することが可能になる。そのため、消化システム600では、熱交換器70における余剰汚泥の流動性を高めることが可能になり、熱交換器70による余剰汚泥の加熱を効率的に行うことが可能になる。
【0125】
なお、図14に示す例では、汚泥破砕機74が貯留槽71と貯留槽72との間(例えば、ポンプP2と貯留槽72との間)に配置される場合について説明を行ったが、汚泥破砕機74は、消化槽60と貯留槽71との間(例えば、ポンプP1と貯留槽71との間)に配置されるものであってもよい。そして、汚泥破砕機74は、貯留槽72から消化槽60に向けて移送されている余剰汚泥(配管L1内を移送されている余剰汚泥)を破砕するものであってもよい。この場合においても、本実施の形態における消化システム600では、塊状の余剰汚泥が熱交換器70に移送されることを防止することが可能になる。そのため、消化システム600では、熱交換器70における余剰汚泥の流動性を高めることが可能になり、熱交換器70による余剰汚泥の加熱を効率的に行うことが可能になる。なお、消化槽60と貯留槽71との間に配置された汚泥破砕機74を第1汚泥破砕機74とも呼び、貯留槽71と貯留槽72との間に配置された汚泥破砕機74を第2汚泥破砕機74とも呼ぶ。
【0126】
さらに、汚泥破砕機74は、例えば、消化槽60と貯留槽71との間と、貯留槽71と貯留槽72との間との両方に配置されるものであってもよい。
【0127】
なお、消化システム600は、例えば、第2の実施の形態で説明した制御装置80、第3の実施の形態で説明した制御装置80及び第4の実施の形態で説明した制御装置80のうちの少なくともいずれかを有するものであってもよい。
【0128】
以上説明した第1の実施の形態から第6の実施の形態における消化システム100、200、300、400、500及び600は、各消化システムの構成が組み合わされる形で用いられるものであってもよい。具体的に、例えば、第5の実施の形態における消化システム500が有する予熱器73は、他の実施の形態における消化システムに用いられるものであってもよい。また、例えば、第6の実施の形態における消化システム600が有する汚泥破砕機74は、他の実施の形態における消化システムに用いられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0129】
1:汚泥処理施設 10:最初沈殿池
20:汚水処理装置 30:最終沈殿池
40:濃縮槽 50:濃縮装置
60:消化槽 70:加熱器
71:貯留槽 71a:仕切板
71b:第1槽 71c:第2槽
71d:仕切板 71e:第3槽
71f:第4槽 72:貯留槽
73:予熱器 73a:配管
73b:撹拌棒 73c:撹拌翼
73d:モータ 73e:配管
74:汚泥破砕機 80:制御装置
90:焼却システム 91:焼却炉
92:白煙防止空気予熱器 93:スクラバ
94:排煙処理塔 95:煙突
96:温水発生器 100:消化システム
200:消化システム 300:消化システム
400:消化システム 500:消化システム
L1:配管 L2:配管
L11:配管 L12:配管
P1:ポンプ P2:ポンプ
P11:ポンプ P12:ポンプ
M1:レベル計 M2:レベル計
T:温度計
図1
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