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特許7717991一酸化窒素前駆体及びそれを形成するための多成分組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-25
(45)【発行日】2025-08-04
(54)【発明の名称】一酸化窒素前駆体及びそれを形成するための多成分組成物
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/18 20060101AFI20250728BHJP
   C11D 7/34 20060101ALI20250728BHJP
   C11D 7/14 20060101ALI20250728BHJP
   C11D 7/08 20060101ALI20250728BHJP
   C01B 21/24 20060101ALI20250728BHJP
   C11D 7/32 20060101ALI20250728BHJP
【FI】
A61L2/18
C11D7/34
C11D7/14
C11D7/08
C01B21/24 Z
C11D7/32
【請求項の数】 52
(21)【出願番号】P 2024566489
(86)(22)【出願日】2023-04-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2025-05-30
(86)【国際出願番号】 US2023020331
(87)【国際公開番号】W WO2023219811
(87)【国際公開日】2023-11-16
【審査請求日】2024-12-25
(31)【優先権主張番号】63/341,320
(32)【優先日】2022-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524152300
【氏名又は名称】ステリル ステイト,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フロスト,メーガン セセリア
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第11065223(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2020/0337304(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/118809(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109846113(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 7/32
C11D 7/34
C11D 7/14
C11D 7/08
C01B 21/24
A61L 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化窒素で物品を滅菌又は衛生化する方法であって、
物品を、溶媒、チオール含有化合物、及びニトロソ化化合物を含む反応混合物と接触させるステップ
を含み、
チオール含有化合物及びニトロソ化化合物が、物品の上又は近くでその場で反応してニトロソチオール化合物を形成し、
物品が反応混合物と接触している間、ニトロソチオール化合物が分解して一酸化窒素を形成し、
一酸化窒素が、物品を滅菌又は衛生化する量で形成される、
方法。
【請求項2】
ニトロソチオール化合物が、第一級ニトロソチオールを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ニトロソチオール化合物が、一酸化窒素前駆体の形成後、1時間以内に一酸化窒素に分解する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
チオール含有化合物が、システイン又はその誘導体、チオール誘導体化ポリマー又は充填剤、又はこれらの組合せを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
チオール含有化合物が、システイン又はその誘導体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
システイン又はその誘導体が、システイン、グルタチオン、アセチルシステイン、ペニシラミン、アセチルペニシラミン、S-ニトロソ-n-アセチルペニシラミン、ブシラミン、又はこれらの組合せを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ニトロソ化化合物が亜硝酸化合物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
亜硝酸化合物が、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸テトラブチルアンモニウム、亜硝酸ジシクロヘキシルアンモニウム、亜硝酸ブチル、亜硝酸イソブチル、亜硝酸t-ブチル、亜硝酸アミル、亜硝酸ペンチル、亜硝酸塩、イオン対亜硝酸化合物、亜硝酸銀、亜硝酸亜鉛、亜硝酸鉄、亜硝酸銅、遷移金属-亜硝酸化合物、又はこれらの組合せを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ニトロソチオール化合物が、酸の存在下で形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
酸が、塩酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、酢酸、ヒドロキシ酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸、a-ケトプロピオン酸、酪酸、マンデル酸、吉草酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、シュウ酸、フマル酸、アジピン酸、マレイン酸、ソルビン酸、安息香酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、α-ヒドロキシ酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ホスホン酸、オクチルリン酸、アクリル酸、ポリアクリル酸、アスパラギン酸、ポリアスパラギン酸、p-ヒドロキシ安息香酸、イミノ酢酸、又はこれらの組合せを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
チオール含有化合物がシステインを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
ニトロソチオール化合物が、酸の非存在下で形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
チオール含有化合物がグルタチオンを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
反応混合物が、溶媒が空気の湿気として提供される清浄化組成物又は乾燥剤組成物として配合される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
一酸化窒素を提供するための多成分組成物であって、多成分組成物が、
チオール含有化合物を含む第1の成分と、
ニトロソ化化合物を含む第2の成分と
を含み、
第1の成分及び第2の成分が互いに分離されており、
第1の成分及び第2の成分のうちの少なくとも1種が溶媒を更に含み、
チオール含有化合物及びニトロソ化化合物が、チオール含有化合物及びニトロソ化化合物が溶媒の存在下で反応して、分解して一酸化窒素を形成する一酸化窒素前駆体を形成するような組成を有する、
多成分組成物。
【請求項16】
第1の成分及び第2の成分のうちの少なくとも1種が担体を更に含む、請求項15に記載の多成分組成物。
【請求項17】
担体が、シリカゲル、ポリアクリル酸ナトリウム、又はこれらの組合せを含む、請求項16に記載の多成分組成物。
【請求項18】
第1の成分及び第2の成分のうちの少なくとも1種が清浄化剤を更に含む、請求項15に記載の多成分組成物。
【請求項19】
清浄化剤が、洗浄剤、酵素、又はこれらの組合せを含む、請求項18に記載の多成分組成物。
【請求項20】
一酸化窒素前駆体が第一級ニトロソチオールを含む、請求項15に記載の多成分組成物。
【請求項21】
一酸化窒素前駆体が、一酸化窒素前駆体の形成後、1時間以内に分解して一酸化窒素を形成する、請求項15に記載の多成分組成物。
【請求項22】
チオール含有化合物が、システイン又はその誘導体、チオール誘導体化ポリマー又は充填剤、又はこれらの組合せを含む、請求項15に記載の多成分組成物。
【請求項23】
チオール含有化合物が、システイン又はその誘導体を含む、請求項22に記載の多成分組成物。
【請求項24】
システイン又はその誘導体が、システイン、グルタチオン、アセチルシステイン、ペニシラミン、アセチルペニシラミン、S-ニトロソ-n-アセチルペニシラミン、ブシラミン、又はこれらの組合せを含む、請求項23に記載の多成分組成物。
【請求項25】
ニトロソ化化合物が亜硝酸化合物を含む、請求項15に記載の多成分組成物。
【請求項26】
亜硝酸化合物が、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸テトラブチルアンモニウム、亜硝酸ジシクロヘキシルアンモニウム、亜硝酸ブチル、亜硝酸イソブチル、亜硝酸t-ブチル、亜硝酸アミル、亜硝酸ペンチル、亜硝酸塩、イオン対亜硝酸化合物、亜硝酸銀、亜硝酸亜鉛、亜硝酸鉄、亜硝酸銅、遷移金属-亜硝酸化合物、又はこれらの組合せを含む、請求項25に記載の多成分組成物。
【請求項27】
酸を更に含む、請求項15に記載の多成分組成物。
【請求項28】
酸が、塩酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、酢酸、ヒドロキシ酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸、a-ケトプロピオン酸、酪酸、マンデル酸、吉草酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、シュウ酸、フマル酸、アジピン酸、マレイン酸、ソルビン酸、安息香酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、α-ヒドロキシ酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ホスホン酸、オクチルリン酸、アクリル酸、ポリアクリル酸、アスパラギン酸、ポリアスパラギン酸、p-ヒドロキシ安息香酸、イミノ酢酸、又はこれらの組合せを含む、請求項27に記載の多成分組成物。
【請求項29】
チオール含有化合物がシステインを含む、請求項27に記載の多成分組成物。
【請求項30】
組成物が、酸を実質的に含まない、請求項15に記載の多成分組成物。
【請求項31】
チオール含有化合物がグルタチオンを含む、請求項30に記載の多成分組成物。
【請求項32】
一酸化窒素を提供するための多成分組成物であって、多成分組成物が、
約1nmから約10mmの粒子サイズを有するチオール含有化合物を含む第1の成分と、
約1nmから約10mmの粒子サイズを有するニトロソ化化合物を含む第2の成分と
を含み、
チオール含有化合物及びニトロソ化化合物が、チオール含有化合物及びニトロソ化化合物が溶媒の存在下で反応して、分解して一酸化窒素を形成する一酸化窒素前駆体を形成するような組成を有する、
多成分組成物。
【請求項33】
第1の成分及び第2の成分が実質的に均質に分散される、請求項32に記載の多成分組成物。
【請求項34】
第1の成分及び第2の成分のうちの少なくとも1種が担体を更に含む、請求項32に記載の多成分組成物。
【請求項35】
担体が、シリカゲル、ポリアクリル酸ナトリウム、又はこれらの組合せを含む、請求項34に記載の多成分組成物。
【請求項36】
第1の成分及び第2の成分のうちの少なくとも1種が清浄化剤を更に含む、請求項32に記載の多成分組成物。
【請求項37】
清浄化剤が、洗浄剤、酵素、又はこれらの組合せを含む、請求項36に記載の多成分組成物。
【請求項38】
一酸化窒素前駆体が第一級ニトロソチオールを含む、請求項32に記載の多成分組成物。
【請求項39】
一酸化窒素前駆体が、一酸化窒素前駆体の形成後、1時間以内に分解して一酸化窒素を形成する、請求項32に記載の多成分組成物。
【請求項40】
チオール含有化合物が、システイン又はその誘導体、チオール誘導体化ポリマー又は充填剤、又はこれらの組合せを含む、請求項32に記載の多成分組成物。
【請求項41】
チオール含有化合物が、システイン又はその誘導体を含む、請求項40に記載の多成分組成物。
【請求項42】
システイン又はその誘導体が、システイン、グルタチオン、アセチルシステイン、ペニシラミン、アセチルペニシラミン、S-ニトロソ-n-アセチルペニシラミン、ブシラミン、又はこれらの組合せを含む、請求項41に記載の多成分組成物。
【請求項43】
ニトロソ化化合物が亜硝酸化合物を含む、請求項32に記載の多成分組成物。
【請求項44】
亜硝酸化合物が、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸テトラブチルアンモニウム、亜硝酸ジシクロヘキシルアンモニウム、亜硝酸ブチル、亜硝酸イソブチル、亜硝酸t-ブチル、亜硝酸アミル、亜硝酸ペンチル、亜硝酸塩、イオン対亜硝酸化合物、亜硝酸銀、亜硝酸亜鉛、亜硝酸鉄、亜硝酸銅、遷移金属-亜硝酸化合物、又はこれらの組合せを含む、請求項43に記載の多成分組成物。
【請求項45】
酸を更に含む、請求項32に記載の多成分組成物。
【請求項46】
酸が、塩酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、酢酸、ヒドロキシ酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸、a-ケトプロピオン酸、酪酸、マンデル酸、吉草酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、シュウ酸、フマル酸、アジピン酸、マレイン酸、ソルビン酸、安息香酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、α-ヒドロキシ酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ホスホン酸、オクチルリン酸、アクリル酸、ポリアクリル酸、アスパラギン酸、ポリアスパラギン酸、p-ヒドロキシ安息香酸、イミノ酢酸、又はこれらの組合せを含む、請求項45に記載の多成分組成物。
【請求項47】
チオール含有化合物がシステインを含む、請求項45に記載の多成分組成物。
【請求項48】
組成物が、酸を実質的に含まない、請求項32に記載の多成分組成物。
【請求項49】
チオール含有化合物がグルタチオンを含む、請求項48に記載の多成分組成物。
【請求項50】
一酸化窒素を提供するための多成分システムであって、システムが、
チオール含有化合物を含む第1の成分を含む、第1の区画と、
ニトロソ化化合物を含む第2の成分を含む、第2の区画と、
第1の区画及び第2の区画を合わせるための、第1の区画及び第2の区画と流体連通する混合チャンバーと
を含み、
チオール含有化合物及びニトロソ化化合物が、チオール含有化合物及びニトロソ化化合物が溶媒の存在下で反応して、分解して一酸化窒素を形成する一酸化窒素前駆体を形成するような組成を有する、
多成分システム。
【請求項51】
一酸化窒素前駆体が、一酸化窒素前駆体の形成後、1時間以内に分解して一酸化窒素を形成する、請求項50に記載の多成分組成物。
【請求項52】
一酸化窒素前駆体が第一級ニトロソチオールを含む、請求項50に記載の多成分組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2022年5月12日に出願され且つ参照により本明細書に組み込まれる、同時係属の米国仮特許出願第63/341,320号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は一般に、一酸化窒素を放出することができる一酸化窒素前駆体、特に、(好ましくは第一級)チオール含有化合物及びニトロソ化化合物の反応生成物を含む一酸化窒素前駆体のための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば医療用の機器、デバイス、及び装置を含む様々な製品及び物品は、創傷部位、試料、生物、又は同様のものの生物汚染を防止するため、使用前に滅菌されなければならない。同様に、多くの洗浄剤は微生物数をいくらか低減させるが、ほとんどの洗浄剤組成物は殺菌成分を持たない可能性があり、これはいくつかの用途で望ましいと考えられるものである。更に、微生物代謝の悪臭のある副産物をマスクする、ある特定の配合物が当技術分野では公知であるが、そのような配合物は、典型的には殺菌成分が不足している。
【0004】
製品又は物品を滅菌剤に接触させるステップを含む、いくつかの滅菌プロセスが使用される。そのような滅菌剤の例には、四酸化二窒素、一酸化窒素、水蒸気、エチレンオキシド、過酸化水素、乾熱、及び同様のものが含まれる。一酸化窒素を形成する従来の方法は、亜硝酸化合物又はジアゼニウムジオレート等のNO供与化合物からの一酸化窒素の触媒的及び酵素的生成を使用する。一酸化窒素を形成するためのそのような従来の方法は、典型的には高価な反応物を必要とし、ほとんどの場合、安全な操作及び一酸化窒素の生成を可能にするよう制御されたシステム内で利用されなければならない。これら及びその他の欠点が、消費者及び専門家により一酸化窒素を生成することが可能な滅菌又は衛生(sanitation)組成物の、主流となる商用化を妨げてきた。
【0005】
より最近では、WO 2022/164894に記載されるように、第三級ニトロソチオール化合物がポリマー(SNAP-PDMS)に共有結合され、第三級ニトロソチオール化合物の照射が化合物の分解をもたらして一酸化窒素を形成する、一酸化窒素放出組成物及びデバイスが開発されている。照射によって一酸化窒素を放出する様々なニトロソチオールを含有する追加のポリマー化合物は、米国特許第9,884,943号及びWO 2020/018488に記載されている。そのような化合物及び組成物は、ある特定の使用ケースで様々な利点を提供するが、一酸化窒素の放出は比較的遅く、典型的には化合物に向けられたエネルギーを必要とする。したがって現在公知の組成物及び方法は、実質的な量の一酸化窒素をボーラス又はオンデマンドで生成することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、特に一酸化窒素が実質的な量で急速に生成される、様々な医療用及び消費者の目的のための、一酸化窒素を生成することが可能な改善された組成物のための機会が残されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一酸化窒素を提供するための一酸化窒素前駆体が、本明細書で提供される。一酸化窒素前駆体は、チオール含有化合物及びニトロソ化化合物の反応生成物を含み、この反応生成物から本質的になり、この反応生成物からなり、又はこの反応生成物である。特に好ましい態様では、チオールが第一級チオールである。チオール含有化合物及びニトロソ化化合物を溶媒の存在下で反応させて、一酸化窒素前駆体を形成する。一酸化窒素前駆体は、分解して一酸化窒素を形成することが可能である。必要な場合、触媒/還元等価物(reducing equivalent)が添加されて、一酸化窒素前駆体の形成を強化し得る。様々な実施形態では、一酸化窒素前駆体は、急速に分解して一酸化窒素を形成することが可能な、(好ましくは第一級)ニトロソチオールを含む。一酸化窒素前駆体は、必要に応じて、チオール含有化合物及びニトロソ化化合物が溶媒の存在下で反応する時点に基づき、分解して一酸化窒素をオンデマンドで形成することが可能であることが本明細書では企図される。異なる観点から見ると、企図される一酸化窒素前駆体は、一酸化窒素前駆体の形成の直後にそれが一酸化窒素に分解するような、著しい化学不安定性を有することになる。以下に更に詳述されるように、一酸化窒素前駆体のオンデマンド形成は、一酸化窒素を形成するためのそのような制御を必要とする様々な適用例に適している。
【0008】
一酸化窒素前駆体は、広く様々な医療用及び消費者向けの適用例で使用されてもよい。一酸化窒素前駆体の性質は、特定の適用例に適するようにチオール含有化合物及びニトロソ化化合物を選択することに基づいて調節され得る。適切な調節の非限定的な例には、一酸化窒素生成能力及び一酸化窒素の放出速度が含まれる。以下に更に詳述されるように、一酸化窒素前駆体は多成分組成物からその場で形成されてもよい。この一酸化窒素前駆体のその場での形成は、一酸化窒素を例えば急速に且つ制御された手法で生成できるように一酸化窒素前駆体の形成及び安定性の性質を調整することによって、特定の適用例に適するよう調節されてもよい。この制御された一酸化窒素放出は、医療用及び消費者向けのデバイスを滅菌及び衛生化するのに有用である。
【0009】
特に多成分組成物は、母材/溶液相から制御され且つ予測可能な手法で一酸化窒素を生成する溶液を形成するのに利用されてもよい。これらの組成物は、広く様々な物体及びデバイス並びにいくつかの適用例で、消毒、衛生化、及び滅菌洗浄に関する配合及び適用に使用することができる小分子の一酸化窒素供与体を形成する、チオール含有化合物を含む第1の成分及びニトロソ化化合物を含む第2の成分を含んでいてもよい。
【0010】
一部の実施形態では、多成分組成物は、チオール含有化合物を含む第1の成分及びニトロソ化化合物を含む第2の成分を含み、第1の成分及び第2の成分は互いに分離されている。第1の成分及び第2の成分のうちの少なくとも1種は、溶媒を含んでいてもよい。
【0011】
他の実施形態では、多成分組成物は、約1nmから約10mmの粒子サイズを有するチオール含有化合物を含む第1の成分、及び約1nmから約10mmの粒子サイズを有するニトロソ化化合物を含む第2の成分を含む。
【0012】
様々な実施形態では、チオール含有化合物は、システイン又はその誘導体、チオール誘導体化ポリマー又は充填剤、又はこれらの組合せを含む。例示的な実施形態では、システイン又はその誘導体は、システイン、グルタチオン、アセチルシステイン、ペニシラミン、アセチルペニシラミン、S-ニトロソ-n-アセチルペニシラミン、ブシラミン、又はこれらの組合せを含む。好ましくは、チオール含有化合物は第一級チオール基を含むが、第二級及び第三級チオールも本明細書では企図される。これら及びその他の実施形態では、ニトロソ化化合物は亜硝酸化合物を含む。亜硝酸化合物は、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸テトラブチルアンモニウム、亜硝酸ジシクロヘキシルアンモニウム、亜硝酸ブチル、亜硝酸イソブチル、亜硝酸t-ブチル、亜硝酸アミル、亜硝酸ペンチル、亜硝酸塩、イオン対亜硝酸化合物、亜硝酸銀、亜硝酸亜鉛、亜硝酸鉄、亜硝酸銅、遷移金属-亜硝酸化合物、又はこれらの組合せを含んでいてもよい。更に、必要な場合には、還元等価物を使用してチオール化合物とニトロソ化化合物との間の反応を強化してもよく、特に、企図される還元等価物は遷移金属、その他のチオール、NADH、アスコルビン酸等を含む。
【0013】
本発明者等は、所定の時間内で、例えば1時間以内又はそれ未満で反応生成物を形成した後、一酸化窒素前駆体が一酸化窒素への分解を示し得ることを企図する。様々な実施形態では、一酸化窒素への分解は、所定の時間にわたり、例えば約1秒から1分の、又は約1分から約10分、又は約10分から1時間、又は約1時間から6時間、又は約6時間から24時間、又は1日から約10日、及び更に長い期間にわたり持続され得る。理論に拘泥するものではないが、反応生成物のその場での形成は、所定の時間内で一酸化窒素前駆体(例えば、(第一級)ニトロソチオール)から一酸化窒素への制御された分解をもたらすと考えられる。
【0014】
異なる観点から見ると、企図される多成分組成物は、洗浄剤組成物又は清浄化組成物として配合されてもよい。洗浄剤又は清浄化組成物は、液体、粉末、単相若しくは多相単位用量、パウチ、錠剤、ゲル、ペースト、棒、又は薄片として配合されてもよい。これら及びその他の実施形態では、洗浄剤又は清浄化組成物は、清浄化剤を更に含んでいてもよい。清浄化剤は、洗浄剤、酵素、又はこれらの組合せを含んでいてもよい。適切な清浄化剤の非限定的な例には、Alconox粉末が含まれる。
【0015】
デバイス又は物体を滅菌又は衛生化する方法も本明細書に提供される。方法は、上述の一酸化窒素前駆体をデバイス又は物体に適用するステップを含む。一酸化窒素前駆体が多成分組成物に含まれる場合の実施形態では、方法は、上述の多成分組成物をデバイス又は物体に適用するステップを含む。理解されるように、一酸化窒素前駆体を適用するステップは、一酸化窒素前駆体を形成するようその場で反応することになるチオール含有化合物及びニトロソ化化合物を適用するステップを含んでいてもよい。
【0016】
一酸化窒素を提供するための多成分システムも本明細書で提供される。システムは、第1の成分を含む第1の区画を含む。上述のように、第1の成分はチオール含有化合物を含む。システムは更に、第2の成分を含む第2の区画を含む。やはり上述のように、第2の成分はニトロソ化化合物を含む。システムは更に、第1の区画及び第2の区画を合わせるための、第1の区画及び第2の区画と流体連通する混合チャンバーを含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】例示的な一酸化窒素前駆体の非限定的な実施形態による、NO放出を示すグラフである。
図2】別の例示的な一酸化窒素前駆体の非限定的な実施形態による、NO放出を示すグラフである。
図3】一酸化窒素前駆体を含む例示的な多成分組成物の非限定的な実施形態を示す写真である。
図4図3の例示的な多成分組成物の非限定的な実施形態による、NO放出を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施例中又は他に明示されている場合を除き、材料の量又は反応の条件及び/又は使用を示す、この記述における全ての数量は、本発明の最も広い範囲について記述する際に「約」という単語によって修飾されると理解するものとする。様々な実施形態では、「約(about)」及び「凡そ(approximately)」という用語は、指定された測定可能な値(パラメーター、量、時間的持続、及び同様のもの等)を指す場合、指定された値並びに指定された値の及び指定された値からのばらつきであって、そのようなばらつきが開示される実施形態で行われるのに適切である限りにおいて、例えば指定された値の及び指定された値からの±10%又はそれ未満、或いは±5%又はそれ未満、或いは±1%又はそれ未満、或いは±0.1%又はそれ未満のばらつきを包含することを意味する。したがって「約」又は「凡そ」という修飾詞が指す値は、それ自体も特に開示される。
【0019】
言及される数値限界内での実施が、一般に好ましい。また、反対の内容が明示されない限り、パーセント、「~部」、及び比の値は重量によるものであり、本発明と関連して所与の目的に適切な又は好ましい材料のグループ又はクラスの記述は、グループ又はクラスの要素の任意の2種以上の混合物が、等しく適切であり又は好ましいことを示唆し、化学用語における構成成分の記述は、その記述において指定された任意の組合せへの添加時の構成成分を指し、一旦混合された混合物の構成成分間での化学的相互作用を必ずしも排除するものではなく、頭字語又はその他の略語の第1の定義は、同じ略語の本明細書における全ての後続の使用に適用され、最初に定義された略語の通常の文法上の変形に必要に応じて修正を加えて適用され、反対の内容に明らかに言及されない限り、性質の測定値は、同じ性質に関して既に又は後に参照されるものと同じ技法によって決定される。
【0020】
本明細書及び添付される請求項で使用されるように、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が他のことを明示しない限り、複数の指示対象を含むことにも留意しなければならない。例えば、単数形での構成要素への言及は、複数の構成要素を含むものとする。
【0021】
本明細書で使用される「実施形態」は、特定の特徴、構造、又は特性が、本発明の少なくとも1つ以上の顕現、実施例、又は実現例に含まれることを意味する。更に特定の特徴、構造、又は特性は、当業者に明らかにされ得るように任意の適切な手法で組み合わされてもよい。種々の実施形態の特徴の組合せは、実施例により全ての可能性ある置換えを明らかに記述する必要なしに、全て本発明の範囲内にあることを意味する。したがって請求項に記載された実施形態のいずれかは、任意の組合せで使用することができる。
【0022】
本明細書で使用される「重量パーセント」という用語(したがって関連ある略語「重量%」)は、乾燥物質の重量に関して表される重量パーセントを典型的には指す。したがって重量%は、組成物の全重量に基づいて計算でき、又は混合物(例えば、乾燥物質の全重量)の2種以上の成分/部の間の比から計算できることを理解されたい。
【0023】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、動作、特性、性質、状態、構造、項目、又は結果の完全な又はほぼ完全な範囲又は程度を指す。任意の実施例として、「実質的に」に包封された物体は、物体が完全に包封された、又は物体が完全に包封されたかの如く、同じ全体結果を有するように、ほぼ完全に包封されたことを意味すると考えられる。
【0024】
図面は、半図式的であり、縮尺は合っておらず、特に寸法のいくつかは表示を明らかにするためのものであり、図面では誇張されて示される。同様に、記述を容易にするために図面での表示は一般に類似の向きを示すが、図面における描写は任意である。一般に官能化ポリマー材料は、任意の向きで動作することができる。本明細書で使用されるように、第1の要素又は層が第2の要素又は層の「上に(over)」、「上に重なって(overlying)」、「下に(under)」、又は「下に重なって(underlying)」ある場合、第1の要素又は層は第2の要素若しくは層の直上にあってもよく、又は介在する要素若しくは層が、内部を通して直線を引くことができる場所に又は上に重なる関係にある形体の間に存在していてもよいことが理解されよう。第1の要素又は層が第2の要素又は層「上(on)」にあると言う場合、第1の要素又は層は第2の要素又は層の直上にあり且つ第2の要素又は層に接触している。更に、空間的に関係する用語、例えば「上方(upper)」、「上に(over)」、「下方(lower)」、「下に(under)」、及び同様のものは、図に示される別の要素(複数可)又は形体(複数可)に対する1つの要素又は形体の関係について述べるための記載を簡単にするために、本明細書で使用されてもよい。空間的に関係のある用語は、図に示される向きに加えて使用又は動作中の官能化ポリマー材料の種々の向きを包含するものであることが理解されよう。例えば、図中の官能化ポリマー材料が向きを変えた場合、他の要素又は形体の「下に(under)」あると記載された要素は、他の要素又は形体の「上(above)」を向くと考えられる。したがって、「下に(under)」という例示的な用語は、上(above)又は下(below)の向きのいずれかを包含することができる。官能化ポリマー材料は、他を向いてもよく(90度又はその他の向きに回転)、本明細書で使用される空間的に関係のある記載は同様に、相応に解釈され得る。
【0025】
本明細書における全ての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願のそれぞれが参照により組み込まれるように特に且つ個別に指示される場合と同じ程度まで参照により組み込まれる。組み込まれた参考文献における用語の定義又は使用が、本明細書で提示される用語の定義と矛盾しており又は反している場合、本明細書で提示される用語の定義が適用され、参考文献の用語の定義は適用されない。
【0026】
以下の詳細な説明は、事実上、単なる例示であり、対象の実施形態又はそのような実施形態の適用及び使用を限定しようとするものではない。更に、先行する技術分野、背景、簡単な概要、又は以下の詳細な説明で提示される、説明される又は示唆されるいかなる理論にも拘泥するものではない。
【0027】
一酸化窒素を提供するための一酸化窒素前駆体が、本明細書で提供される。一酸化窒素前駆体は、チオール含有化合物及びニトロソ化化合物の反応生成物を含み、この反応生成物から本質的になり、この反応生成物からなり、又はこの反応生成物である。好ましい実施形態では、チオール含有化合物は第一級チオールを含む。チオール含有化合物及びニトロソ化化合物を溶媒の存在下で反応させて一酸化窒素前駆体を形成する。一部の実施形態では、溶媒にはチオール含有化合物及び/又はニトロソ化化合物が供給され、又は別々に供給され、又は空気の湿気(乾燥剤によって引き付けることができる)によって供給される。理解されるように、反応は、様々な還元等価物、例えば遷移金属、チオール、アスコルビン酸、NADH等により強化することができる。そのように形成された一酸化窒素前駆体は、分解して一酸化窒素を形成することが可能である。例示的な反応図式を以下に示す。
【0028】
【化1】
【0029】
様々な実施形態では、一酸化窒素前駆体は、分解して一酸化窒素を形成することが可能なニトロソチオールを含む。そこでは一酸化窒素及び空気が反応することになり、窒素の様々な酸化物を含有する混合物をもたらすことが企図される。特に空気への一酸化窒素の添加、又は一酸化窒素への空気の添加は、一酸化窒素が空気中の酸素と反応したときに二酸化窒素の形成をもたらす。混合物中に存在する各窒素酸化物種の濃度は、温度、圧力、及び一酸化窒素の初期濃度によって変化し得る。
【0030】
一酸化窒素は、脂溶性であり、微生物の脂質膜を破壊して細胞及び組織応答を調節し、凝集及び生物学的一体化を制御し、抗菌特性を与えるなどの能力を有する。更に一酸化窒素はチオプロテインを不活性化し、それによって微生物の機能性タンパク質を破壊し得る。二酸化窒素は、一酸化窒素よりも水溶性である。最後に、一酸化窒素及び二酸化窒素はDNAの有効な破壊因子であり、鎖の破壊及びその他の損傷を引き起こし、その結果、細胞が機能するのを不可能にする。
【0031】
本明細書で使用される「一酸化窒素」又は「NO」と言う用語は、NO遊離基を意味する。周知のように、NOは化学的に不安定であり、酸素と容易に反応して、NOxとまとめて呼ばれる様々な酸化物を形成する。本明細書で使用されるNOxと言う用語は、窒素が+1から+5のその正の酸化数のそれぞれを示す、窒素によって形成された酸化物である酸化窒素又は窒素の酸化物の略語である。本明細書で使用される「酸化窒素」及び「窒素の酸化物」及び「NOx」という用語は、その全てが窒素及び酸素を様々な量で含有する下記の気体:一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO2)、三酸化窒素(NO3)、三酸化二窒素(N2O3)、四酸化二窒素(N2O4)、五酸化二窒素(N2O5)、及び亜酸化窒素(N2O)の1種以上を有する気体を意味する。本明細書で使用される「一酸化窒素前駆体」という文言は、NOを生成し又は放出することが可能な化合物又は組成物を意味する。
【0032】
一酸化窒素前駆体は、広く様々な医療用及び消費者向けの適用例で使用されてもよい。一酸化窒素前駆体の性質は、特定の適用例に適するようにチオール含有化合物及びニトロソ化化合物を選択することに基づいて調節され得る。適切な調節の非限定的な例には、一酸化窒素生成能力及び一酸化窒素前駆体からの一酸化窒素の放出速度が含まれる。以下に更に詳述されるように、一酸化窒素前駆体は多成分組成物からその場で形成されてもよい。この一酸化窒素前駆体のその場での形成は、一酸化窒素を例えば急速に且つ制御された手法で生成できるように一酸化窒素前駆体の形成及び安定性の性質を調整することによって、特定の適用例に適するよう調節されてもよい。この制御された一酸化窒素放出は、医療用及び消費者向けのデバイスを滅菌及び衛生化するのに有用である。
【0033】
異なる観点から見ると、本発明者等は、一酸化窒素前駆体及び多成分組成物を利用して、様々な医療用及び消費者向け適用例のために一酸化窒素を形成することを企図する。様々な実施形態では、デバイス又は物体は、液体、粉末、フィルム、コーティングなどの形態の多成分組成物で処理されてもよい。多成分組成物(例えば、液体、粉末、フィルム、又はコーティングとして)の適切な使用の非限定的な例には:溶液で処理した物体(例えばスポーツ用品、例えばホッケーのグローブ及びサイクリング用グローブ、清浄化手術機器、内視鏡の内部ルーメン、医療機器の表面、及び同様のもの)を衛生化又は滅菌するための洗浄剤又は清浄化溶液;粉末で処理された物体を衛生化又は滅菌するための洗浄剤又は清浄化粉末;衛生デバイスを衛生化するための衛生容器(例えば、乾燥剤及び同様のもの);医療機器(例えば聴診器、耳鏡、及び同様のもの)を衛生化するための医療用デバイス容器、医療用デバイス(例えば可搬式超音波デバイス、通信デバイス、及び同様のもの);青カビ又は白カビの成長に抗うための水分に曝露されるデバイスの構成要素(例えば洗濯機、ボートコンパートメント、及び同様のもの);スポーツ用品(例えばヨガ用マット、筋力トレーニング機器の接触可能な表面、カーディオ機器の接触可能な表面、及び同様のもの);スポーツ用品(例えばシューズ、ホッケー用具、スキー用具、フェイスマスク、ゴーグル、ヘルメット、及び同様のもの)を衛生化するためのスポーツ用品バッグ用ライナー;食材(例えば肉、フルーツ、野菜、チーズ、それらの成分、及び同様のもの)を保存するための食品パッケージ;車両を衛生化するための車両の構成要素(例えばヘッドライナー、シートクッションライナー、カーペットライナー、及び同様のもの);及びキャビネット、机、ボックスなどの抽斗内であって、カビ臭い匂いを排除するためのものが含まれる。上記例の一部又は全てにおいて、一酸化窒素前駆体は、好ましくは既に形成された化合物として供給されず、一酸化窒素前駆体は、チオール含有化合物をニトロソ化化合物と溶媒(空気の湿気から誘導され、個別に供給されてもよく、又はチオール含有化合物及び/又はニトロソ化化合物の溶媒として使用されてもよい)の存在下で反応させることによってその場で生成することに理解すべきである。
【0034】
したがって、上記にて紹介されたように、一酸化窒素を提供するための多成分組成物も提供される。多成分組成物は、母材/溶液相から制御され且つ予測可能な手法で一酸化窒素を生成する溶液を形成するのに利用されてもよい。これらの組成物は、広く様々な物体及びデバイス並びにいくつかの適用例で、消毒、衛生化、及び滅菌洗浄に関する配合及び適用に使用することができる小分子の一酸化窒素供与体(好ましくは、しかし必ずしもそうでなくてもよいが第一級ニトロソチオール)を形成する、チオール含有化合物を含む第1の成分及びニトロソ化化合物を含む第2の成分を含んでいてもよい。
【0035】
一部の実施形態では、多成分組成物は、チオール含有化合物を含む第1の成分及びニトロソ化化合物を含む第2の成分であって、第1の成分及び第2の成分が互いに分離されているものを含む。第1の成分及び第2の成分のうちの少なくとも1種は、溶媒を含んでいてもよい。或いは、第1及び第2の成分は互いに分離され、溶媒は別々に提供され、又は第1及び第2の成分は溶媒中に置かれる。他の実施形態では、多成分組成物は、約1nmから約10mm、或いは約1nmから約1mm、或いは約1nmから約500μm、或いは約10nmから約500μmの粒子サイズを有するチオール含有化合物を含む第1の成分を含む。同様に多成分組成物は更に、約1nmから約10mm、或いは約1nmから約1mm、或いは約1nmから約500μm、或いは約10nmから約500μmの粒子サイズを有するニトロソ化化合物を含む第2の成分を含む。配置構成とは無関係に、一酸化窒素前駆体はその場で形成され、次いで分解に供されて一酸化窒素を形成することになるのを、もう一度理解すべきである。
【0036】
多成分組成物に関し、本発明者等は、反応生成物の形成後、所定の時間内、例えば1時間以内、或いは30分以内、或いは5分以内、或いは1分以内、或いは10秒以内、或いは1秒以内、或いは0.1秒以内に、一酸化窒素前駆体が一酸化窒素への分解を示し得ることを企図する。異なる観点から見ると、多成分組成物は、一酸化窒素前駆体の形成後、所定の時間内、例えば約0.01秒から約1時間、或いは約0.01秒から約30分、或いは約1秒から約5分、或いは約1秒から約1分以内に、一酸化窒素への分解を示してもよい。様々な実施形態では、一酸化窒素への分解は、所定の時間、例えば約1分から約1年、或いは約1時間から約6カ月、或いは約24時間から約3カ月、或いは約1週間から約8週間にわたって持続され得る。異なる観点から、一酸化窒素への分解は、少なくとも1分、或いは少なくとも1時間、或いは少なくとも24時間、或いは少なくとも1週間の期間にわたり持続され得る。理論に拘泥するものではないが、反応生成物のその場での形成は、所定の時間内に所定の時間にわたり一酸化窒素前駆体(例えば、ニトロソチオール)から一酸化窒素への制御された分解をもたらすと考えられる。
【0037】
容易に理解され得るように、一酸化窒素前駆体の分解速度は、所望の分解プロファイルを実現するよう微調整することができる様々な要因に依存することになる。数ある要因の中で、分解速度は、ニトロソチオールのタイプ、チオール含有化合物及びニトロソ化化合物のモル比、一酸化窒素前駆体のその場での形成に影響を及ぼす還元等価物又はその他の触媒の存在/量、溶液のpH、及び溶媒の利用可能性を選択することによって修正することができる。例えば第一級ニトロソチオールは、第二級又は第三級ニトロソチオールよりも実質的に速い分解速度を有することを理解すべきである。更にニトロソチオールのその場での形成は、例えばチオール、NADH、遷移金属、アスコルビン酸等の様々な還元等価物の存在下で加速されてもよい(そのような還元剤は、微量から等モル比で存在でき、又はチオール含有剤に対して過剰なモル数でも存在できる)。同様に酸性pH(例えば、pH<4.0)は一般に、ニトロソチオールの安定性に有利に働くのに対し、塩基性pH(例えば、pH>7.0)はニトロソチオールの分解に有利に働く。更になお、溶媒が湿った空気からの水である場合、湿度の程度が一酸化窒素前駆体のその場での形成速度を決定することになる。
【0038】
反応条件とは無関係に、一部の実施形態では、一酸化窒素前駆体を分解して一酸化窒素を形成する速度は、その場での形成速度よりも大きくなり、例えば、1.5倍大きく、又は2.5倍大きく、又は5倍大きく、又は10培大きく、又は更にそれよりも大きくなることが一般に企図される。他の実施形態では、一酸化窒素前駆体を分解して一酸化窒素を形成する速度は、その場での形成速度未満であり、例えば、1.5分の1、又は2.5分の1、又は5分の1、又は10分の1、又は更にそれ未満である。更に、特定の配合物及び一酸化窒素前駆体に応じて、一部の実施形態では、1時間以内に放出される一酸化窒素は、配合物中の全ての放出可能な一酸化窒素の少なくとも25%、又は少なくとも50%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%になることが企図される。更なる実施形態では、24時間以内に放出される一酸化窒素は、配合物中の全ての放出可能な一酸化窒素の少なくとも25%、又は少なくとも50%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%になることが企図され、更に他の実施形態では、7日以内に放出される一酸化窒素は、配合物中の全ての放出可能な一酸化窒素の少なくとも25%、又は少なくとも50%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%になることが企図される。追加の実施形態では、1カ月以内に放出される一酸化窒素は、配合物中の全ての放出可能な一酸化窒素の少なくとも25%、又は少なくとも50%、又は少なくとも70%、又は少なくとも80%、又は少なくとも90%、又は少なくとも95%になることが企図される。
【0039】
本発明者等は、一酸化窒素前駆体を母材(ポリマー若しくは粉末に又は固体担体の内部若しくは上に埋め込まれた)にブレンドすることによって幅広いNO供与/生成体を創出するために、又は母材/溶液相から制御され且つ予測可能な手法でNOを生成する溶液を創出するために、小分子の一酸化窒素前駆体を、ポリマーに、溶液相に、又は粉末にブレンドし、一酸化窒素を生成するのに使用できることを企図する。本明細書では本発明者等は、この目的で使用できる新規な小分子NO供与体を合成する方法、並びに幅広い種々の物体の及び様々な状況で消毒、衛生化、及び滅菌洗浄として使用できるこれらのNO生成部分の配合物及び適用例について述べる。
【0040】
一酸化窒素前駆体、例えば、チオール含有化合物(例えば、システイン、N-アセチルシステイン、及びグルタチオン)及びニトロソ化化合物(例えば、有機亜硝酸化合物又は無機亜硝酸塩)からその場で形成された小分子ニトロソチオール(特に第一級ニトロソチオール)は、有機及び水性の両方の相で形成されてもよい。清浄化剤(例えば、酵素、界面活性剤等)を含有する溶液は、特定のチオール含有化合物及び適切なニトロソ化化合物と、ニトロソチオールを形成するよう制御された条件下で組み合わされてもよい。次いでこのニトロソチオールは、急速に分解して一酸化窒素を生成することができる。これらの2部系(チオール含有化合物及びニトロソ化化合物)は、様々な担体及び清浄化剤、例えば粉末又は溶液成分(例えば、シリカゲル、ポリアクリル酸ナトリウム、Alconoxソープ、プロテアーゼ等)と組み合わされて、内視鏡及びプローブを再処理し且つその他の物体を滅菌するのに使用されてもよい。
【0041】
適切な実施形態の非限定的な例には、混合物が湿った空気から水分を吸着するときに一酸化窒素を生成することができる乾燥粉末としてのシステイン及び亜硝酸ナトリウムと組み合わされたシリカゲル乾燥剤が含まれる。別の例は、チオール含有化合物及び亜硝酸ナトリウム溶液を一緒に合わせ、この溶液を物体に、例えばシューズに注いで、細菌からもたらされる臭いを排除することである。
【0042】
反応生成物を形成するのに利用されるチオール含有化合物に戻ると、多成分組成物の所望の適用例の設計上の制約に応じて使用できる広く様々な可能性あるチオール含有化合物がある。数ある選択肢の中で、第一級チオールが典型的には好ましい。チオール含有化合物は、1,2-エタンジチオール、2,3-ジメルカプトプロパノール、ピリチオン、ジチオエリスリトール、3,4-ジメルカプトトルエン、2,3-ブタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、2-ヒドロキシプロパンチオール、1-メルカプト-2-プロパノール、ジチオエリスリトール、及びジチオトレイトールの1種以上を含むことができるがこれらに限定するものではない。その他の例示的なチオール含有化合物には、アルファ-リポ酸、メタンチオール(CH3SH [m-メルカプタン])、エタンチオール(C2H5SH [e-メルカプタン])、1-プロパンチオール(C3H7SH [n-Pメルカプタン])、2-プロパンチオール(CH3CH(SH)CH3 [2C3メルカプタン])、ブタンチオール(C4H9SH ([n-ブチルメルカプタン])、tert-ブチルメルカプタン(C(CH3)3SH [t-ブチルメルカプタン])、ペンタンチオール(C5H11SH [ペンチルメルカプタン])、コエンザイムA、リポアミド、グルタチオン、システイン、シスチン、2-メルカプトエタノール、ジチオトレイトール、ジチオエリスリトール、2-メルカプトインドール、トランスグルタミナーゼ、(11-メルカプトウンデシル)ヘキサ(エチレングリコール)、(11-メルカプト-ウンデシル)テトラ(エチレングリコール)、(11-メルカプトウンデシル)テトラ (エチレングリコール)官能化金ナノ粒子、1,1′,4′,1″-ターフェニル-4-チオール、1,11-ウンデカンジチオール、1,16-ヘキサデカンジチオール、1,2-エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,4-ベンゼンジメタンチオール、1,4-ブタンジチオール、1,4-ブタン-ジチオールジアセテート、1,5-ペンタンジチオール、1,6-ヘキサンジチオール、1,8-オクタンジチオール、1,9-ノナンジチオール、アダマンタンチオール、1-ブタンチオール、1-デカンチオール、1-ドデカンチオール、1-ヘプタンチオール、1-ヘプタンチオール、1-ヘキサデカンチオール、1-ヘキサンチオール、1-メルカプト-(トリエチレングリコール)、1-メルカプト-(トリエチレングリコール)メチルエーテル官能化金ナノ粒子、1-メルカプト-2-プロパノール、1-ノナンチオール、1-オクタデカンチオール、1-オクタンチオール、1-オクタンチオール、1-ペンタデカンチオール、1-ペンタンチオール、1-プロパンチオール、1-テトラデカンチオール、1-ウンデカンチオール、11-(1H-ピロール-1-イル)ウンデカン-1-チオール、11-アミノ-1-ウンデカン-チオール塩酸塩、11-ブロモ-1-ウンデカンチオール、11-メルカプト-1-ウンデカノール、11-メルカプト-1-ウンデカノール、11-メルカプトウンデカン酸、11-メルカプトウンデカン酸、11-メルカプトウンデシルトリフルオロアセテート、11-メルカプトウンデシルリン酸、12-メルカプトドデカン酸、12-メルカプトドデカン酸、15-メルカプトペンタデカン酸、16-メルカプトヘキサデカン酸、16-メルカプトヘキサデカン酸、1H,1H,2H,2H-パーフルオロデカンチオール、2,2′-(エチレンジオキシ)ジ-エタンチオール、2,3-ブタンジチオール、2-ブタンチオール、2-エチルヘキサンチオール、2-メチル-1-プロパンチオール、2-メチル-2-プロパンチオール、2-フェニルエタンチオール、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロ-1-ヘキサンチオールpurum、3-(ジメトキシメチルシリル)-1-プロパンチオール、3-クロロ-1-プロパンチオール、3-メルカプト-1-プロパノール、3-メルカプト-2-ブタノール、3-メルカプト-N-ノニルプロピオンアミンド、3-メルカプトプロピオン酸、3-メルカプトプロピル-官能化シリカゲル、3-メチル-1-ブタンチオール、4,4′-ビス(メルカプト-メチル)ビフェニル、4,4′-ジメルカプトスチルベン、4-(6-メルカプトヘキシルオキシ)ベンジルアルコール、4-シアノ-1-ブタンチオール、4-メルカプト-1-ブタノール、6-(フェロセニル)ヘキサンチオール、6-メルカプト-1-ヘキサノール、6-メルカプトヘキサン酸、8-メルカプト-1-オクタノール、8-メルカプトオクタン酸、9-メルカプト-1-ノナノール、ビフェニル-4,4′-ジチオール、ブチル3-メルカプトプロピオネート、1-ブタンチオール酸銅(I)、シクロヘキサンチオール、シクロペンタンチオール、デカンチオール官能化銀ナノ粒子、ドデカンチオール官能化金ナノ粒子、ドデカンチオール官能化銀ナノ粒子、ヘキサ(エチレングリコール)モノ-11-(アセチルチオ)ウンデシルエーテル、メルカプトコハク酸、メチル3-メルカプトプロピオネート、オクタンチオール官能化金ナノ粒子、PEGジチオール、S-(11-ブロモウンデシル)チオアセテート、S-(4-シアノブチル)チオアセテート、チオフェノール、トリエチレングリコールモノ-11-メルカプトウンデシルエーテル、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、[11-(メチルカルボニルチオ)ウンデシル]テトラ(エチレングリコール)、m-カルボラン-9-チオール、p-ターフェニル-4,4″-ジチオール、tert-ドデシルメルカプタン、又はtert-ノニルメルカプタンが含まれる。
【0043】
ある特定の実施形態では、チオール含有化合物は、システイン又はその誘導体、チオール誘導体化ポリマー又は充填剤、又はこれらの組合せを含む。システイン又はその誘導体が利用される場合の実施形態では、システイン又はその誘導体は、システイン、グルタチオン、アセチルシステイン、ペニシラミン、アセチルペニシラミン、S-ニトロソ-n-アセチルペニシラミン、ブシラミン、又はこれらの組合せを含んでいてもよい。チオール含有化合物は、チオール含有化合物が多成分組成物の成分に適合性がある限り、ペプチド又はその他の高分子の一部として含まれ得ることを理解されたい。システイン又はその誘導体がペプチドの一部として利用される場合の実施形態では、ペプチドは、ペプチドがシステイン又はその誘導体をペプチドの構成成分の少なくとも1種として含む限り、アミノ酸の任意の組合せを含んでいてもよい。適切なシステイン又はその誘導体の非限定的な例は、参照によりその全体が組み込まれる「S-Nitrosothiol Detection via Amperometric Nitric Oxide Sensor with Surface Modified Hydrogel Layer Containing Immobilized Organoselenium Catalyst(固定化有機セレン触媒を含有する表面修飾ヒドロゲル層による電流測定一酸化窒素センサを介したS-ニトロソチオール検出)」と言う名称の、Langmuir 2006、22、25、10830~10836として引用された学術論文に記載されている。
【0044】
様々な実施形態では、チオール含有化合物は、500,000g/mol以下、或いは100,000g/mol以下、或いは10,000g/mol以下、或いは1,000g/mol以下、或いは500g/mol以下の重量平均分子量を有する。異なる観点から見ると、チオール含有化合物は、約10g/molから約500,000g/mol、或いは約10g/molから約100,000g/mol、或いは約10g/molから約1,000g/mol、或いは約10g/molから約500g/molの重量平均分子量を有していてもよい。例えばシステインは121g/molの重量平均分子量を有し、グルタチオンは307.33g/molの重量平均分子量を有し、ブチルチオールは90.19g/molの重量平均分子量を有し、血清アルブミンは66kDaの重量平均分子量を有する。理論に拘泥するものではないが、反応生成物を形成する反応動態は、より低い重量平均分子量を有するチオール含有化合物を利用することによって改善されると考えられる。この改善された反応動態は、反応生成物のその場での形成から得られる一酸化窒素の急速生成をもたらす。更に第一級ニトロソチオール化合物は、一般に、第二級又は第三級ニトロソチオールよりも急速に分解して一酸化窒素を形成することになる。
【0045】
反応生成物を形成するのに利用されるニトロソ化化合物に戻ると、ニトロソ化化合物は、ニトロソ基の供給源としての働きをする任意の化合物であってもよく、一般に、式NOXの化合物になる(式中、Xは有機若しくは無機陰イオン又はOR2基であり、ここでR2は有機基である)。したがってXは、カルボン酸、例えば2~7個の炭素原子を含有するアルカンカルボン酸から誘導された有機陰イオンであってよく、このタイプのニトロソ化剤は亜硝酸アセチル及び亜硝酸プロピオニルを含む。Xが無機陰イオンである場合、これは例えば鉱酸から誘導されてもよく、例えばハロゲン化物イオン、例えば塩化物若しくは臭化物若しくは硫酸イオンであり、又はルイス酸から誘導されてもよく、例えばホウフッ化物イオンである。その他の無機陰イオンは、水酸化物及びスルホネートを含む。したがってこのタイプのニトロソ化化合物は、塩化ニトロシル、硫酸ニトロシル、ホウフッ化ニトロシル、亜硝酸、及びフレミーの塩(ニトロシルジスルホン酸カリウム)を含む。Xが式OR2の基である場合、有機基R2は例えば、低級アルキル基、例えば1~9個の炭素原子を含有するもの、例えばエチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、t-ブチル、又はイソペンチルであってもよい。
【0046】
ある特定の実施形態では、ニトロソ化化合物は亜硝酸化合物を含む。亜硝酸化合物は、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カルシウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸テトラブチルアンモニウム、亜硝酸ジシクロヘキシルアンモニウム、亜硝酸ブチル、亜硝酸イソブチル、亜硝酸t-ブチル、亜硝酸アミル、亜硝酸ペンチル、亜硝酸塩、イオン対亜硝酸化合物、亜硝酸銀、亜硝酸亜鉛、亜硝酸鉄、亜硝酸銅、遷移金属-亜硝酸化合物、又はこれらの組合せを含んでいてもよい。また、一酸化窒素ガスはニトロソ化剤として使用されてもよい。
【0047】
様々な実施形態では、ニトロソ化化合物は、10,000g/mol以下、或いは1,000g/mol以下、或いは500g/mol以下、或いは250g/mol以下の重量平均分子量を有する。異なる観点から、ニトロソ化化合物は、約10g/molから約10,000g/mol、或いは約10g/molから約1,000g/mol、或いは約10g/molから約500g/mol、或いは約10g/molから約250g/molの重量平均分子量を有していてもよい。例えばNaNO2は69g/molの重量平均分子量を有し、亜硝酸ブチルは103g/molの重量平均分子量を有する。理論に拘泥するものではないが、反応生成物を形成する反応動態は、より低い重量平均分子量を有するニトロソ化化合物を利用することによって、改善することが考えられる。上述のように、この改善された反応動態は、反応生成物のその場での形成から得られる一酸化窒素の急速生成をもたらす。
【0048】
上記にて紹介されたように、チオール含有化合物及びニトロソ化化合物は、溶媒の存在下で反応して反応生成物(例えば、(第一級)ニトロソチオール)を形成してもよい。利用される場合、溶媒は様々な量で含まれてもよい。溶媒は、水性、有機、非有機、又はこれらの組合せであってもよい。ある特定の実施形態では、溶媒は水性溶媒、例えば水、又は水及びメタノールの混合物である。他の実施形態では、溶媒は有機溶媒、例えばテトラヒドロフランを含んでいてもよい。適切な溶媒のその他の非限定的な例には、芳香族、脂肪族、ケトン、例えばメチルエチルケトン、イソブチルケトン、エチルアミルケトン、アセトン、アルコール、例えばメタノール、エタノールn-ブタノールイソプロパノールエステル、例えば酢酸エチル、グリコール、例えばエチレングリコールプロピレングリコールエーテル、例えばテトラヒドロフラン、エチレングリコールモノブチルエーテル、又はこれらの組合せが含まれる。
【0049】
様々な実施形態では、チオール含有化合物及びニトロソ化化合物は、酸の存在下で反応する。酸は、例えばシステインを含むチオール含有化合物を利用する場合、反応生成物の形成及び/又は安定性を改善するのに利用されてもよい。ある特定の実施形態では、酸は塩酸を含んでいてもよい。適切な酸のその他の非限定的な例には、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、酢酸、ヒドロキシ酢酸、プロピオン酸、ヒドロキシプロピオン酸、a-ケトプロピオン酸、酪酸、マンデル酸、吉草酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、シュウ酸、フマル酸、アジピン酸、マレイン酸、ソルビン酸、安息香酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、α-ヒドロキシ酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ホスホン酸、オクチルリン酸、アクリル酸、ポリアクリル酸、アスパラギン酸、ポリアスパラギン酸、p-ヒドロキシ安息香酸、イミノ酢酸、又はこれらの組合せが含まれる。酸は、組成物の任意の成分(例えば、担体、溶媒等)又は反応生成物の反応物の一部として含まれ得ることを理解されたい。
【0050】
他の実施形態では、反応生成物は、例えばグルタチオンを含むチオール含有化合物を利用する場合、酸の存在が実質的にない状態で形成される。本発明者等は、酸を実質的に含まない多成分組成物が、デバイス又は物体に対する改善された適合性を示すことを企図する。本明細書で使用される「実質的に含まない」と言う文言は、酸の完全な非存在又は単に不純物としてその最小量、別の成分の意図しない副生成物、又は組成物に対して無視できる影響を有する量での、いずれかを指す。ある特定の実施形態では、「実質的に含まない」は、酸が組成物中に、組成物の全重量に対して0.5重量%未満、0.25重量%未満、0.1重量%未満、0.05重量%未満、又は0.01重量%未満、又は更に0重量%の量で存在することを意味する。
【0051】
更に他の実施形態では、反応生成物は還元等価物の存在下で形成され、適切な還元等価物は、様々な金属及び遷移金属、ジチオネート、チオスルフェート、ヒドラジン、シュウ酸、アスコルビン酸、ギ酸、NADH、NADPH等を含む。容易に理解されるように、これらの還元等価物は、別々に提供することができ、溶媒中で提供することができ、又はチオール含有化合物及び/又はニトロソ化化合物と混合することができる。
【0052】
これら及びその他の実施形態では、多成分組成物は更に担体を含む。担体は、シリカゲル、ポリアクリル酸ナトリウム、又はこれらの組合せを含んでいてもよい。しかしながら、任意のその他の担体が利用され得ることを理解されたい。そのような担体は、当業者に周知であり、参照によりその全体が組み込まれるRemington's Pharmaceutical Sciences、Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、1985等の教科書に記載される。
【0053】
多成分組成物は、組成物の全重量に対して約1から約80重量%、或いは約1から約70重量%、或いは約50から約80重量%の量で、チオール含有化合物を含んでいてもよい。多成分組成物は、組成物の全重量に対して約1から約75重量%、或いは約1から約10重量%、或いは約10から約75重量%の量で、ニトロソ化化合物を含んでいてもよい。多成分組成物は、組成物の全重量に対して約10から約95重量%、或いは約10から約80重量%、或いは約80から約95重量%の量で、担体を含んでいてもよい。多成分組成物は、組成物の全重量に対して約1から約99重量%の量で、溶媒を含んでいてもよい。
【0054】
例示的な実施形態では、多成分組成物は、洗浄剤組成物又は清浄化組成物として配合されてもよい。本明細書で使用される「洗浄剤組成物」又は「清浄化組成物」と言う文言は、汚れた材料を清浄化するために設計された組成物及び配合物を含む。そのような組成物には、限定するものではないが、物体清浄化組成物、医療用デバイス清浄化組成物、硬質表面清浄化組成物、食器類清浄化組成物、洗濯物清浄化組成物及び洗浄剤、噴霧生成物、ドライクリーニング剤又は組成物、単位用量配合物、遅延送達配合物、多孔質基材又は不織シートの上又は中に含有される洗浄剤、水溶性フィルムの上又は中に含有される洗浄剤、及び本明細書の教示の観点で当業者に明らかであり得るその他の適切な形態が含まれる。多成分組成物は、液体、粉末、単相又は多相単位用量、2層ペーパーキャリア、パウチ、錠剤、ゲル、ペースト、棒、又は薄片から選択される形態を有していてもよい。
【0055】
これら及びその他の実施形態では、洗浄剤又は清浄化組成物は更に、清浄化剤を含む。清浄化剤は、洗浄剤、酵素、又はこれらの組合せを含む。適切な清浄化剤の非限定的な例にはAlconox粉末が含まれる。清浄化剤が洗浄剤を含む場合の実施形態では、洗浄剤は、界面活性剤、例えばアミンオキシド、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルエーテルスルフェート、脂肪アルコールエトキシレート、アルキルグリコシド、アルコキシル化脂肪酸アルキルエステル、アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド、ヒドロキシ混合エーテル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリヒドロキシ脂肪酸アミド、及びアルコキシル化アルコールを含んでいてもよい。
【0056】
清浄化剤が酵素を含む場合の実施形態では、酵素は、プロテアーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、マンナナーゼ、ペクチン切断酵素、タンナーゼ、キシラナーゼ、キサンタナーゼ、β-グルコシダーゼ、カラギナーゼ、ペルヒドラーゼ、オキシダーゼ、オキシドレダクターゼ、及びこれらの混合物等、洗浄剤中で触媒活性を示すことができる1種以上の酵素を含んでいてもよい。ある特定の実施形態では、酵素はプロテアーゼ、アミラーゼ(例えば、α-アミラーゼ)、セルラーゼ、リパーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、マンナナーゼ、β-グルカナーゼ、又はこれらの組合せを含む。酵素の性質は、多成分組成物に適合性があるべきである(即ち、pH-至適、その他の酵素及び非酵素成分との適合性等)。利用される場合、酵素は有効量で存在すべきである。
【0057】
利用される場合、プロテアーゼは、化学的又は遺伝子組み換えされた変異体を含む、動物、植物、又は微生物由来のものであってもよい。微生物由来が好ましい。アルカリプロテアーゼ、例えばセリンプロテアーゼ又はメタロプロテアーゼであってもよい。セリンプロテアーゼは例えば、Si族のもの、例えばトリプシン、又はS8族のもの、例えばサブチリシンであってもよい。メタロプロテアーゼのプロテアーゼは例えばM4、M5、M7、又はM8族からの、例えばテルモリシンであってもよい。
【0058】
利用される場合、適切なリパーゼ及びクチナーゼは、細菌又は真菌由来のものを含む。化学的に修飾された又はタンパク質工学により設計された変異体が含まれる。例には、EP 258 068及びEP 305 216に記載されているサーモマイセス(Thermomyces)から、例えばT.ラヌギノサス(T. lanuginosus)(既にフミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)と称される)からのリパーゼ、WO 96/13580に記載されているフミコラ(Humicola)、例えばH.インソレンス(H. insolens)からのクチナーゼ、シュードモナス・リパーゼ(Pseudomonas lipase)、例えばP.アルカリゲネス(P. alcaligenes)又はP.シュードアルカリゲネス(P. pseudoalcaligenes)(EP 218 272)、P.セパシア(P. cepacia)(EP 331 376)、P.スツツェリ(P. stutzeri)(GB 1,372,034)、P.フルオレセンス(P. fluorescens)、シュードモナス種(Pseudomonas sp.)、SD 705株(WO 95/06720及びWO 96/27002)、P.ウィスコンシネシス(P. wisconsinensis)(WO 96/12012)から、バチルス・リパーゼ(Bacillus lipase)、例えばB.サブチリス(B. subtilis)から(Dartois等、1993、Biochemica et Biophysica Acta、1131: 253-360)、B.ステアロテルモフィルス(B. stearothermophilus)(JP 64/744992)、又はB.プミリス(B. pumilus)(WO 91/16422)からのものが含まれる。
【0059】
その他の例は、リパーゼ変種、例えば参照によりその全体が組み込まれるWO 92/05249、WO 94/01541、EP 407 225、EP 260 105、WO 95/35381、WO 96/00292、WO 95/30744、WO 94/25578、WO 95/14783、WO 95/22615、WO 97/04079、WO 97/07202、WO 00/060063、WO2007/087508、及びWO 2009/109500に記載されるものである。
【0060】
利用される場合、適切なアミラーゼは、細菌又は真菌由来のものを含む。化学的に修飾された又はタンパク質工学により設計された変異体が含まれる。アミラーゼは例えば、GB 1,296,839に更に詳細に記載される、バシルス(Bacillus)、例えばバシルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)の特殊な株から得られるα-アミラーゼを含む。有用なアミラーゼの例は、参照によりその全体が組み込まれるWO 94/02597、WO 94/18314、WO 96/23873、及びWO 97/43424に記載される変種である。
【0061】
利用される場合、適切なセルラーゼは、細菌又は真菌由来のものを含む。化学的に修飾された又はタンパク質工学により設計された変異体が含まれる。適切なセルラーゼには、参照によりその全体が組み込まれる米国特許第4,435,307号、米国特許第5,648,263号、米国特許第5,691,178号、米国特許第5,776,757号、及びWO 89/09259に開示される、バチルス(Bacillus)、シュードモナス(Pseudomonas)、フミコラ(Humicola)、フサリウム(Fusarium)、チエラビア(Thielavia)、アクレモニウム(Acremonium)属からのセルラーゼ、例えばフミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、ミセリオフソラ・サーモフィラ(Myceliophthora thermophila)、及びフサリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)から生成された真菌セルラーゼが含まれる。
【0062】
利用される場合、適切なペルオキシダーゼ/オキシダーゼは、植物、細菌、又は真菌由来のものを含む。化学的に修飾された又はタンパク質工学により設計された変異体が含まれる。有用なペルオキシダーゼの例には、参照によりその全体が組み込まれるWO 93/24618、WO 95/10602、及びWO 98/15257に記載されるような、コプリヌス(Coprinus)からの、例えばC.シネレウス(C.cinereus)からのペルオキシダーゼ、及びそれらの変種が含まれる。
【0063】
洗浄剤又は清浄化組成物は、添加剤、例えばビルダー、漂白剤、電解質、非水性溶媒、pH調節剤、フレグランス、香料担体、蛍光剤、染料、ハイドロトロープ、発泡阻害剤、シリコーン油、再堆積防止剤、灰色化防止剤、収縮防止剤、しわ防止剤、染料移行防止剤、抗菌物質、殺菌剤、殺真菌剤、抗酸化剤、保存剤、腐食防止剤、帯電防止剤、苦味剤、アイロン掛け助剤、疎水化及び含浸剤、膨潤及び滑り止め剤、軟化成分、及びUV吸収剤を更に含んでいてもよい。
【0064】
洗浄剤又は清浄化組成物は、チオール含有化合物を、組成物の全重量に対して約0.01から約40重量%、或いは約0.01から約5重量%、或いは約5から約10重量%、或いは約10から約40重量%の量で含んでいてもよい。洗浄剤又は清浄化組成物は、ニトロソ化化合物を、組成物の全重量に対して約0.1から約40重量%、或いは約0.1から約10重量%の量で含んでいてもよい。洗浄剤組成物又は清浄化組成物は、清浄化剤を、組成物の全重量に対して約1から約99重量%の量で含んでいてもよい。洗浄剤組成物又は清浄化組成物は、溶媒を、組成物の全重量に対して約1から約99重量%の量で含んでいてもよい。
【0065】
様々な実施形態では、本明細書に記載される洗浄剤又は清浄化組成物は、水溶性エンベロープに満たすことができ、したがって水溶性パッケージの一部にすることができる。水溶性エンベロープは、水溶性フィルム材料により形成されてもよい。そのような水溶性パッケージは、縦型充填シール(VFFS)法によって又は熱形成法によって製造することができる。
【0066】
エンベロープは、水溶性フィルム材料の1層で又は2層以上で作製することができる。第1の層の及び存在する場合その他の層の水溶性フィルム材料は、同じに又は異ならせることができる。水溶性エンベロープは、例えば、ポリマー又はポリマー混合物を含む群から選択される水溶性フィルム材料から作製される。水溶性エンベロープは、ポリビニルアルコール又はポリビニルアルコールコポリマーを含有していてもよい。アクリル酸含有ポリマー、ポリアクリルアミド、オキサゾリンポリマー、ポリスチレンスルホネート、ポリウレタン、ポリエステル、ポリエーテルポリ酢酸、及び/又は上記ポリマーの混合物を含む群から選択されるポリマーは、水溶性エンベロープを製造するのに適したフィルム材料に加えることができる。
【0067】
熱形成法は一般に、内部に組成物を受容するため凸状部を創出するように第1の層を水溶性フィルム材料から形成するステップ、凸状部に組成物を満たすステップ、組成物で満たされた凸状部を、水溶性フィルム材料の第2の層で覆うステップ、及び凸状部の少なくとも周りで第1及び第2の層を一緒に封止するステップを含む。液体洗浄剤及び水溶性エンベロープを含む水溶性パッケージは、1つ以上のチャンバーを有することができる。水溶性パッケージは、実質的に寸法上安定な球形及び枕形の形状であって、円形、楕円形、正方形、又は長方形の基本形態を持つものを有することができる。チャンバーは、互いに分離されていてもよい。
【0068】
デバイス又は物体を滅菌又は衛生化する方法も、本明細書で提供される。方法は、上述の一酸化窒素前駆体をデバイス又は物体に適用するステップを含む。一酸化窒素前駆体が多成分組成物に含まれる場合の実施形態では、方法は、上述の多成分組成物をデバイス又は物体に適用するステップを含む。
【0069】
一酸化窒素を提供するための多成分システムも、本明細書で提供される。システムは、第1の成分を含む第1の区画を含む。上述のように、第1の成分は、チオール含有化合物を含む。システムは更に、第2の成分を含む第2の区画を含む。やはり上述のように、第2の成分はニトロソ化化合物を含む。システムは更に、第1の区画及び第2の区画を合わせるための、第1の区画及び第2の区画と流体連通する混合チャンバーを含む。
【0070】
一酸化窒素前駆体を形成する方法が、本明細書に提供される。方法は、チオール含有化合物及びニトロソ化化合物を溶媒の存在下で合わせて一酸化窒素前駆体を形成するステップを含む。
【0071】
1つの例示的な実施形態では、合わせるステップは、(a)チオール含有化合物及び溶媒を合わせて第1の溶液を形成すること、(b)ニトロソ化化合物及び溶媒を合わせて第2の溶液を形成すること、及び(c)第1の溶液及び第2の溶液を合わせて一酸化窒素前駆体を形成することを含む。
【0072】
別の例示的な実施形態では、合わせるステップは、(a)チオール含有化合物、溶媒、及び清浄化剤を合わせて第1の溶液を形成すること、及び(b)ニトロソ化化合物及び第1の溶液を合わせて一酸化窒素前駆体を形成することを含む。これら及びその他の実施形態では、酸が利用される場合、酸も同様に第1の溶液と合わせてもよい。
【0073】
更に別の実施形態では、合わせるステップは、(a)チオール含有化合物、ニトロソ化化合物、及び担体を、それぞれ粒子形態で合わせて(即ち、溶媒を実質的に含まない)、第1の混合物を形成すること、及び(b)溶媒及び第1の混合物を合わせて一酸化窒素前駆体を形成することを含む。
【実施例
【0074】
以下の実施例は、本明細書で企図されるような様々な実施形態を実証するために含める。以下に続く実施例に開示される技法は、本発明の実施において十分機能するよう、本発明者(等)により発見された技法を表し、したがってその実施のための所望の形態を構成すると見なすことができることを、当業者は理解すべきである。しかしながら当業者は、本発明に照らし、開示される特定の実施形態において多くの変更を行うことができ、それでもなお、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく同様の又は類似の結果を得ることができることを、理解すべきである。全てのパーセンテージは重量%を単位とし、全ての測定は、他に指示されない限り23℃で実行される。
【0075】
[実施例1]
例示的なGNSO乾燥剤粉末
100mgの還元グルタチオン、150mgのNaNO2、及び2.5gのポリアクリル酸ナトリウムを乾燥粉末として混合した。水蒸気に曝露したとき、NOが生成した。混合物を乾燥すると(即ち、水蒸気の除去及び親水性ポリマーを乾燥する時間)、NO放出が停止する。水蒸気を再導入すると、NOが再び生成する。一酸化窒素の形成を図1に示す。
【0076】
[実施例2]
例示的なNOCys乾燥剤粉末
100mgのシステイン、300mgのNaNO2、及び2gのポリアクリル酸ナトリウムを乾燥粉末として混合した。この混合物の約125mgをTyvekエンベロープに入れ、熱封止した。パケットを水蒸気に曝露し、NOを放出した。一酸化窒素の形成を図2に示す。
【0077】
[実施例3]
例示的なGSNO及びAlconox洗浄剤
100mgのグルタチオンを、Alconox粉末130mgと共に4mLの水に溶解した。NaNO2 34.5mg及び100μLの1M HClを溶液に添加した。この石鹸はNOを放出した。図3及び4のAを参照されたい。
【0078】
[実施例4]
例示的なNOCys及びAlconox洗浄剤
50mgのシステインを、Alconox粉末130mgと共に4mLの水に溶解した。NaNO2 34.5mg及び100μLの1M HClを溶液に添加した。この石鹸はNOを放出した。図3及び4のBを参照されたい。
【0079】
[実施例5]
例示的なGSNOプロテアーゼ洗浄剤
100mgのグルタチオンを4mLの水に溶解した。NaNO2 34.5mgを溶液に添加した。この洗浄剤は直ぐに深いルビー色に変わり、NOを放出する。図3及び4のCを参照されたい。
【0080】
[実施例6]
例示的なNOCysプロテアーゼ洗浄剤
50mgのシステインを4mLの水に溶解した。NaNO2 34.5mg及び100μLの1M HClを溶液に添加した。この洗浄剤は赤-ピンクに変色しNOを放出する。図3及び4のDを参照されたい。
【0081】
[実施例7]
例示的なGSNO2成分溶液
0.01Mグルタチオン溶液を水中で作製した。0.1M NaNO2溶液を水中で作製した。各溶液5mLを合わせ、明るい赤に変色した。溶液を、悪臭のする運動競技用シューズに注ぎ、12時間後に試験した。12時間後、シューズに臭いは残らなかった。
【0082】
添付される請求項は、詳細な説明に記載される特定の化合物、組成物、又は方法を表すのに限定されず、それらは添付される請求項の範囲内に包含される特定の実施形態の間で様々であってもよいことを理解されたい。様々な実施形態の特定の特徴又は態様について説明するため本明細書において依拠される任意のマーカッシュ群に関し、種々の、特別な、及び/又は予期せぬ結果が、その他全てのマーカッシュ群から独立してそれぞれのマーカッシュ群の各要素から得られてもよい。マーカッシュ群の各要素は個々に及び/又は組み合わせて依拠されてもよく、それらの各要素は、添付される請求項の範囲内で特定の実施形態に関して適正な裏付けを提供する。
【0083】
更に、本発明の様々な実施形態を説明する際に依拠される任意の範囲及び下位範囲は独立して及びまとめて、添付される請求項の範囲内に包含され、そのような値が本明細書で明示的に書かれていない場合であっても、全体的な及び/又はその中の部分的な値を含む全ての範囲について説明し企図することが理解される。当業者なら、列挙された範囲及び下位範囲は本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び下位範囲が関連ある2分の1の倍数、3分の1の倍数、4分の1の倍数、5分の1の倍数等に更に線引きされることを、容易に理解する。ほんの1例として、「0.1から0.9」の範囲は、より下方の3分の1、即ち0.1から0.3、中間の3分の1、即ち0.4から0.6、及びより上方の3分の1、即ち0.7から0.9と更に線引きされてもよく、これらは個々に及びまとめて添付される請求項の範囲内にあり、個々に及び/又はまとめて依拠されてもよく、添付される請求項の範囲内の特定の実施形態に関する適正な裏付けを提供する。更に、範囲を定義する又は修飾する言語、例えば「少なくとも」、「~よりも大きい」、「~未満」、「~以下」及び同様のものに関し、そのような言語は下位範囲及び/又は上限若しくは下限を含むことを理解されたい。別の例として、「少なくとも10」の範囲は本来、少なくとも10から35の下位範囲、少なくとも10から25の下位範囲、25から35の下位範囲などを含み、各下位範囲は個々に及び/又はまとめて依拠されてもよく、添付される請求項の範囲内の特定の実施形態に関する適正な裏付けを提供する。最後に、開示された範囲内の個々の数が、依拠されてもよく、添付される請求項の範囲内の特定の実施形態に関する適正な裏付けを提供する。例えば「1から9」という範囲は、依拠されて、添付される請求項の範囲内の特定の実施形態に関する適正な裏付けを提供し得る、様々な個々の整数、例えば3、並びに小数点(又は分数)を含む個々の数、例えば4.1を含む。
【0084】
本発明は、例示的な手法で本明細書で説明されており、使用されてきた用語は、限定ではなく説明する単語の性質を帯びるものであることを理解されたい。本発明の多くの修正例及び変形例が、上記教示に照らして可能である。本発明は、添付される請求項の範囲内で特に説明される以外で実施されてもよい。独立及び従属クレームの全ての組合せの対象は、単項及び多項従属の両方で、本明細書では明示的に企図される。
図1
図2
図3
図4