(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-28
(45)【発行日】2025-08-05
(54)【発明の名称】サイジング装置
(51)【国際特許分類】
B22F 3/24 20060101AFI20250729BHJP
【FI】
B22F3/24 101Z
(21)【出願番号】P 2021194257
(22)【出願日】2021-11-30
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】中込 康浩
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-331955(JP,A)
【文献】特開2011-032547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00- 8/00
B30B 11/00-11/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リブ部及び歯部を有するハブを加工するサイジング装置であって、
前記ハブの外周側面を支持するダイスと、
前記ハブの上面を鉛直下向き方向に押圧する上パンチと、
前記歯部の下面を鉛直上向き方向に押圧する第1の下パンチと、
前記リブ部の下面を支持する第2の下パンチと、を備え、
前記上パンチが前記リブ部に当接した後に、前記上パンチが前記ハブの上面を押圧しつつ、前記第1の下パンチが前記歯部の下面を押圧する、
サイジング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はサイジング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
焼結工法によってリブ部及び歯部を有するハブを製造する場合、粉末成形体から焼結体を製造する焼結工程において、歯部がテーパ状に湾曲する場合がある。
そのため、焼結工法においては、焼結工程を行った後に、ハブの形状の微調整を行うサイジング加工を行う必要があった。
【0003】
通常、サイジング加工を行う場合、焼結体下部を固定型によって支持し、焼結体上部を可動型によって押圧する。しかしながら、焼結体の上面のみを押圧してサイジング加工した場合、加工後のハブの外径が、押圧された上部と、押圧されていない下部とで異なる場合があった。
特許文献1には、加工後のハブの外径の誤差を低減可能なサイジング金型が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に係るサイジング金型は、ハブ側面を支持するダイスをテーパ形状に加工したものである。そのため、金型の加工に必要なコストを増加させるという課題があった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、サイジング加工後のハブ外径の誤差の抑制に必要な設備コストを抑制可能なサイジング装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係るサイジング装置は、
リブ部及び歯部を有するハブを加工するサイジング装置であって、
前記ハブの外周側面を支持するダイスと、
前記ハブの上面を鉛直下向き方向に押圧する上パンチと、
前記歯部の下面を鉛直上向き方向に押圧する第1の下パンチと、
前記リブ部の下面を支持する第2の下パンチと、を備え、
前記上パンチが前記リブ部に当接した後に、前記上パンチが前記ハブの上面を押圧しつつ、前記第1の下パンチが前記歯部の下面を押圧する、
サイジング装置である。
【0008】
このような構成によって、テーパ形状の金型を用いずとも、サイジング加工後のハブの外径の誤差を低減できる。その結果として、サイジング加工に必要な設備コストを抑制できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、サイジング加工後のハブ外径の誤差の低減に必要な設備コストを抑制可能なサイジング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施形態に係るサイジング装置の構成を示す模式断面図である。
【
図2】サイジング加工前のハブの形状を示す模式断面図である。
【
図3】サイジング加工後のハブの形状を示す模式断面図である。
【
図4】第1の実施形態に係るサイジング装置の動作を示す模式断面図である。
【
図5】第1の実施形態に係るサイジング装置の動作を示す模式断面図である。
【
図6】第1の実施形態に係るサイジング装置の動作を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
<サイジング装置の構成>
以下、図面を参照して第1の実施形態に係るサイジング装置の構成について詳細に説明する。
図1は、第1の実施形態に係るサイジング装置の構成を示す模式断面図である。
本実施形態に係るサイジング装置1は、リブ部及び歯部を有するハブのサイジング加工を行うための装置であり、典型的には、焼結成型されたハブのサイジング加工を行う装置である。
【0012】
図2はサイジング加工前のハブの形状を示す模式断面図であり、
図3はサイジング加工後のハブの形状を示す模式断面図である。
図2及び
図3に示すように、本実施形態に係るサイジング装置が加工するハブMは、リブ部R及び歯部Dを有する。
【0013】
図2に示すように、サイジング加工前のハブMは、歯部Dがテーパ形状に湾曲している。本実施形態に係るサイジング装置1は、テーパ形状に湾曲している歯部Dを、
図3に示すような直線的な歯部Dに加工する。
【0014】
図1の説明に戻る。
第1の実施形態に係るサイジング装置1は、ダイス11、上パンチ12、第1の下パンチ13、第2の下パンチ14、第3の下パンチ15、及びコアロッド16を備える。
ダイス11は、サイジング加工されるハブの外周側面を支持する金型である。
上パンチ12は、中心部に貫通孔を有する円筒形状の金型であり、上パンチ12が有する貫通孔にはコアロッド16が嵌入されている。上パンチ12は、ハブの上面を鉛直下向き方向に押圧する可動型であり、サイジング加工が終了するまで押圧を継続する。なお、上パンチ12は、アッパーパンチと呼称される場合もある。
【0015】
第1の実施形態に係るサイジング装置1の下パンチは、外側から内側に向かって、第1、第2、及び第3の下パンチから構成されている。なお、第1、第2、及び第3の下パンチはそれぞれ、ロアアウターパンチ、ロアミドルパンチ、及びロアインナーパンチと呼称される場合もある。
【0016】
第1の下パンチ13は、ハブの歯部下面を鉛直上向き方向に押圧する可動型であり、中心部に貫通孔を有する円筒形状の金型である。第1の下パンチ13は、上パンチ12がハブのリブ部に当接した後に、歯部下面の押圧を開始し、サイジング加工が終了するまで押圧を継続する。
【0017】
第2の下パンチ14は、ハブのリブ部下面を支持し、中心部に貫通孔を有する円筒形状の金型である。
第3の下パンチ15は、ハブのリブ部より内側の領域の下面を支持し、中心部に貫通孔を有する円筒形状の金型である。第3の下パンチ15が有する貫通孔には、コアロッド16が嵌入されている。
【0018】
コアロッド16は棒状の金型であり、ハブの内側側面を支持する。
ただし、コアロッド16は、ハブが中心部に貫通孔を有する場合にのみ必要となる金型であり、ハブが貫通孔を有さない場合、サイジング装置1はコアロッド16を有さない。
サイジング装置1がコアロッド16を有さない場合、上パンチ12及び第3の下パンチ15は、貫通孔を有さない。
【0019】
<サイジング装置の動作>
以下、図面を参照して第1の実施形態に係るサイジング装置の動作について詳細に説明する。
図4は、サイジング装置1にハブMをセットしたタイミングにおけるサイジング装置1の状態を示す模式断面図である。
図4の段階では、ハブMはいずれのパンチからも押圧を受けていない。
【0020】
ハブMは、内側側面をコアロッド16によって支持され、外周側面をダイス11に支持されている。また、下面は、第1、第2、及び第3の下パンチによって支持されている。
まず始めに、上パンチ12が、上パンチ12の下面がリブ部Rに当接するまで、ハブMを鉛直方向下向きに押圧する。なお、この工程においては、第1の下パンチ13は、ハブMを支持するのみであり、押圧しない。
【0021】
図5は、リブ部Rに上パンチ12の下面が当接したタイミングにおけるサイジング装置1の状態を示す模式断面図である。歯部Dはテーパ状に湾曲しているため、
図5に示す段階では、歯部D近傍に空隙が存在している。一方で、リブ部Rは、下面を第2の下パンチ14によって支持され、上面を上パンチ12によって押圧されているため、近傍に空隙は存在せず、固定保持された状態となっている。
【0022】
リブ部Rに上パンチ12の下面が当接すると、次に、第1の下パンチ13が歯部Dの下面の押圧を開始する。ただし、上パンチ12は継続してハブMの上面を押圧している。
ここで、上パンチ12及び第1の下パンチ13が押圧する圧力は、同程度であることが好ましい。上パンチ12及び第1の下パンチ13が押圧する圧力が同程度であると、ハブM上部の外径と、ハブM下部の外径との誤差をより低減できる。
【0023】
図6は、ハブMのサイジング加工が終了したタイミングにおけるサイジング装置1の状態を示す模式断面図である。上パンチ12及び第1の下パンチ13からの押圧によって、歯部Dは押し潰され、歯部D近傍の空隙は大半が消失し、歯部Dは直線状に加工されている。
【0024】
なお、本実施形態に係るサイジング装置1は、歯部Dを押し潰す工程を実行するため、サイジング加工前の歯部Dは、潰し代として、完成品の寸法よりも鉛直方向を長めに加工されることが好ましい。
【0025】
以上、説明したように、本実施形態に係るサイジング装置1は、ハブMの外周部に位置する歯部Dを押圧する際に鉛直方向上下双方向から押圧することによって、ハブM上部の外径と、ハブM下部の外径との誤差を抑制する。そのため、テーパ形状の金型を用いる必要がなく、サイジング加工後のハブ外径の誤差の低減に必要な設備コストを抑制できる。
【0026】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0027】
1 サイジング装置
11 ダイス
12 上パンチ
13 第1の下パンチ
14 第2の下パンチ
15 第3の下パンチ
16 コアロッド
M ハブ