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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-28
(45)【発行日】2025-08-05
(54)【発明の名称】ハイブリッド車
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/06 20060101AFI20250729BHJP
   B60K 6/48 20071001ALI20250729BHJP
   B60K 6/547 20071001ALI20250729BHJP
   B60W 10/08 20060101ALI20250729BHJP
   B60W 20/00 20160101ALI20250729BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/48 ZHV
B60K6/547
B60W10/08 900
B60W20/00 900
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022004097
(22)【出願日】2022-01-14
(65)【公開番号】P2023103535
(43)【公開日】2023-07-27
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小松 雄大
(72)【発明者】
【氏名】今井 創一
(72)【発明者】
【氏名】中野 智洋
【審査官】三宅 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-204682(JP,A)
【文献】特開2021-187320(JP,A)
【文献】特開2001-054208(JP,A)
【文献】特開2007-153212(JP,A)
【文献】特開2011-089485(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 6/20 - 6/547
B60W 10/00 - 20/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンの出力軸にクラッチを介して接続されたモータと、前記モータに接続されたトルクコンバータと、前記トルクコンバータと駆動輪に接続された変速機出力軸とに接続された自動変速機と、前記エンジンと前記モータと前記クラッチと前記自動変速機とを制御する制御装置と、を備えるハイブリッド車であって、
前記エンジンの前記出力軸の回転に同期して回転すると共に所定の第1回転角毎に形成される複数の歯のうち少なくとも1つが欠歯とされたロータと、前記ロータの回転時に前記歯が通過する毎に信号を出力する検知部と、を有するクランクポジションセンサ
を備え、
前記制御装置は、
停車時に前記エンジンを始動する際には、前記クラッチを完全係合して前記モータにより前記エンジンをクランキングし、前記エンジンの回転数が開始回転数以上になったときに前記エンジンにおける燃料噴射と点火とを開始するように前記エンジンと前記モータと前記クラッチとを制御し、
最初に前記欠歯を通過した後に前記クランクポジションセンサからの信号に基づいて前記エンジンの前記出力軸が所定の第2回転角だけ回転するのに要した所要時間を演算し、前記所要時間を用いて演算される前記エンジンの回転数としての第1回転数と、前記クランクポジションセンサからの信号に基づいて前記エンジンを停止したときのクランク角である停止クランク角からのクランク角の変化量に基づくクランク角速度から演算した前記エンジンの回転数としての第2回転数と、のうち、大きいほうの回転数を、前記エンジンの回転数とし、
前記開始回転数を、前記エンジンの冷却水温が低いときには高いときに比して低くし、且つ、前記自動変速機の作動油の油温が低いときには高いときに比して低くする
ハイブリッド車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車に関し、詳しくは、エンジンと、モータと、トルクコンバータと、自動変速機と、制御装置と、を備えるハイブリッド車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のハイブリッド車として、エンジンと、エンジンの出力軸にクラッチを介して接続されたモータと、モータに接続されたトルクコンバータと、トルクコンバータと駆動輪とに接続された自動変速機とを備え、エンジンとモータとクラッチと自動変速装置とを制御するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、クラッチを半係合してモータによりエンジンをクランキングしてエンジンを始動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-111276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述のハイブリッド車では、停車時にクラッチを完全係合してモータによりエンジンをクランキングし、エンジンの回転数が予め設定された一定の値である所定回転数以上のときにエンジンにおける燃料噴射と点火とを開始する場合、エンジンの温度や自動変速機の作業油の温度によってはエンジンのフリクションや自動変速機の作動油の引き摺りトルクが大きくなる。エンジンのフリクションや自動変速機の作動油の引き摺りトルクが大きくなると、所定回転数の設定によっては、所定回転数以上にまでエンジンをクランキングすることができなくなり、エンジンにおける燃料噴射と点火とが開始できなくなる場合がある。この場合、エンジンの始動性が低下してしまう。
【0005】
本発明のハイブリッド車は、エンジンの始動性の低下を抑制することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のハイブリッド車は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明のハイブリッド車は、
エンジンと、前記エンジンの出力軸にクラッチを介して接続されたモータと、前記モータに接続されたトルクコンバータと、前記トルクコンバータと駆動輪に接続された変速機出力軸とに自動変速機と、前記エンジンと前記モータと前記クラッチと前記自動変速機とを制御する制御装置と、を備えるハイブリッド車であって、
前記制御装置は、
停車時に前記エンジンを始動する際には、前記クラッチを完全係合して前記モータにより前記エンジンをクランキングし、前記エンジンの回転数が開始回転数以上になったときに前記エンジンにおける燃料噴射と点火とを開始するように前記エンジンと前記モータと前記クラッチとを制御し、
前記開始回転数を、前記エンジンの冷却水温と前記自動変速機の作動油の油温とに基づいて設定する
ことを要旨とする。
【0008】
この本発明のハイブリッド車では、停車時にエンジンを始動する際には、クラッチを完全係合してモータによりエンジンをクランキングし、エンジンの回転数が開始回転数以上になったときにエンジンにおける燃料噴射と点火とを開始するようにエンジンとモータとクラッチを制御する。そして、開始回転数を、エンジンの冷却水温と自動変速機の作動油の油温とに基づいて設定する。エンジンの冷却水温は、エンジンのフリクションの大きさを反映し、自動変速機の作動油の油温は、自動変速機の作動油の引き摺りトルクの大きさを反映する。したがって、開始回転数を、エンジンの冷却水温と自動変速機の作動油の油温とに基づいて設定することにより、開始回転数以上の回転数までエンジンをクランキングでき、より確実にエンジンにおける燃料噴射と点火とを開始できる。この結果、エンジンの始動性を向上させることができる。
【0009】
こうした本発明のハイブリッド車において、前記制御装置は、前記冷却水温が低いときには高いときに比して前記開始回転数を低くし、且つ、前記油温が低いときには高いときに比して前記開始回転数を低くしてもよい。エンジンの冷却水温が低いときには高いときに比してエンジンのフリクションが大きく、自動変速機の作動油の油温が低いときには高いときに比して自動変速機の作動油の引き摺りトルクが大きい。エンジンのフリクションや自動変速機の作動油の引き摺りトルクが大きいときには、モータによるエンジンのクランキングで上昇させ得るエンジンの回転数の上限値が低下する。したがって、冷却水温が低いときには高いときに比して開始回転数を低くし、且つ、油温が低いときには高いときに比して開始回転数を低くすることにより、エンジンのフリクションや自動変速機の作動油の引き摺りトルクが大きいときでも、開始回転数以上までエンジンをクランキングすることができ、より確実にエンジンにおける燃料噴射と点火とを開始できる。これにより、エンジンの始動性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明のハイブリッド車において、前記エンジンの前記出力軸の回転に同期して回転すると共に所定回転角毎に形成される複数の歯のうち少なくとも1つが欠歯とされたロータと、前記ロータの回転時に前記歯が通過する毎に信号を出力する検知部と、を有するクランクポジションセンサを備え、前記制御装置は、最初に前記欠歯を通過した後に前記クランクポジションセンサからの信号に基づいて前記エンジンの前記出力軸が所定回転角だけ回転するのに要した所要時間を演算し、前記所要時間を用いて演算される前記エンジンの回転数としての第1回転数と、前記クランクポジションセンサからの信号に基づいて前記エンジンを停止したときのクランク角である停止クランク角からのクランク角の変化量に基づくクランク角速度から演算した前記エンジンの回転数としての第2回転数と、のうち、大きいほうの回転数を、前記エンジンの回転数としてもよい。エンジンを停止したときのクランクポジションセンサのロータの欠歯の位置によっては、エンジンのクランキングを開始してから第1回転数の演算を開始するまでに時間を要する。そのため、常に第1回転数をエンジンの回転数とすると、実際にはエンジンの回転数が開始回転数以上であっても、開始回転数未満と判定し、燃料噴射と点火とが遅れてしまうことがある。そこで、第1回転数と、クランクポジションセンサからの信号に基づいてエンジンを停止したときのクランク角である停止クランク角からのクランク角速度から演算したエンジンの回転数としての第2回転数と、のうち、大きいほうの回転数を、エンジンの回転数とすることにより、常に第1回転数をエンジンの回転数とするものに比して、より迅速にエンジンを始動できる。
【0011】
さらに、本発明のハイブリッド車において、前記モータと電力をやりとりする第1バッテリと、前記エンジンの前記出力軸をクランキングする前記モータより定格出力が低いスタータモータと、前記スタータモータに電力を供給する前記第1バッテリより定格電圧が低い第2バッテリと、を備え、前記制御装置は、前記自動変速機における動力の伝達を解除した状態で停車時に前記エンジンを始動する際に、前記冷却水温が所定温度以上のときには、前記クラッチを完全係合して前記モータにより前記エンジンをクランキングし、前記エンジンの回転数が開始回転数以上になったときに前記エンジンにおける燃料噴射と点火とを開始するように前記エンジンと前記モータと前記クラッチと前記自動変速機とを制御し、前記冷却水温が所定温度未満のときには、前記クラッチを解放して前記スタータモータにより前記エンジンをクランキングして前記エンジンが所定回転数以上のときに前記エンジンにおける燃料噴射と点火とを開始するように前記エンジンと前記モータと前記クラッチと前記自動変速機と前記スタータモータとを制御してもよい。所定温度は、第1バッテリからモータにエンジンをクランキングするために十分な電力を供給できるか否かを判定するための閾値である。こうすれば、冷却水温が所定温度未満で第1バッテリからモータにエンジンをクランキングするために十分な電力を供給できないときでも、スタータモータによりエンジンをクランキングして燃料噴射と点火とを開始することができる。これにより、エンジンの始動性の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド車20の構成の概略を示す構成図である。
図2】ハイブリッド車20が搭載するエンジン22の構成の概略を示す構成図である。
図3】クランクポジションセンサ140の構成の概略を示す構成図である。
図4】クランクポジションセンサ140(検知部140b)からの出力信号の一例を示す説明図である。
図5】エンジンECU24により実行される回転数設定処理の一例を示すフロチャートである。
図6】第1回転数Ne1、第2回転数Ne2の時間変化の一例を説明するための説明図である。
図7】HVECU70により実行される開始回転数設定処理の一例を示すフロチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態を実施例を用いて説明する。
【実施例
【0014】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド車20の構成の概略を示す構成図である。図2は、ハイブリッド車20が搭載するエンジン22の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド車20は、図1に示すように、エンジン22と、モータ30と、インバータ32と、クラッチK0と、自動変速装置40と、高電圧バッテリ60と、低電圧バッテリ62と、DC/DCコンバータ64と、ハイブリッド用電子制御ユニット(以下、「HVECU」という)70とを備える。
【0015】
エンジン22は、例えばガソリンや軽油などの燃料を用いて吸気、圧縮、膨張(爆発燃焼)、排気の4行程により動力を出力する6気筒の内燃機関として構成されている。図2に示すように、エンジン22は、吸気ポートに燃料を噴射するポート噴射弁126と、筒内に燃料を噴射する筒内噴射弁127とを有する。エンジン22は、ポート噴射弁126と筒内噴射弁127とを有することにより、ポート噴射モードと筒内噴射モードと共用噴射モードとのうちの何れかで運転可能となっている。ポート噴射モードでは、エアクリーナ122により清浄された空気を吸気管123に吸入してスロットルバルブ124やサージタンク125を通過させると共に、吸気管123のサージタンク125よりも下流側のポート噴射弁126から燃料を噴射し、空気と燃料とを混合する。そして、この混合気を吸気バルブ128を介して燃焼室129に吸入し、点火プラグ130による電気火花によって爆発燃焼させて、シリンダボア131内でそのエネルギにより押し下げられるピストン132の往復運動をクランクシャフト23の回転運動に変換する。筒内噴射モードでは、ポート噴射モードと同様に空気を燃焼室129に吸入し、吸気行程や圧縮行程において筒内噴射弁127から燃料を噴射し、点火プラグ130による電気火花により爆発燃焼させてクランクシャフト23の回転運動を得る。共用噴射モードでは、空気を燃焼室129に吸入する際にポート噴射弁126から燃料を噴射すると共に吸気行程や圧縮行程において筒内噴射弁127から燃料を噴射し、点火プラグ130による電気火花により爆発燃焼させてクランクシャフト23の回転運動を得る。これらの噴射モードは、エンジン22の運転状態に基づいて切り替えられる。燃焼室129から排気バルブ133を介して排気管134に排出される排気は、浄化装置135およびPMフィルタ136を介して外気に排出される。浄化装置135は、排気中の一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)の有害成分を浄化する浄化触媒(三元触媒)135aを有する。PMフィルタ136は、セラミックスやステンレスなどにより多孔質フィルタとして形成されており、排気中の煤などの粒子状物質(PM:Particulate Matter)を捕集する。なお、PMフィルタ136に代えて、三元触媒の浄化機能と粒子状物質に対する捕集機能とを組み合わせた四元触媒を用いてもよい。
【0016】
エンジン22は、エンジンECU24により運転制御されている。エンジンECU24は、図示しないが、CPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に、処理プログラムを記憶するROMや、データを一時的に記憶するRAM、データを記憶保持するフラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを備える。
【0017】
エンジンECU24には、エンジン22を運転制御するのに必要な各種センサからの信号が入力ポートを介して入力される。エンジンECU24に入力される信号としては、例えば、エンジン22のクランクシャフト23の回転位置を検出するクランクポジションセンサ140からのクランク角θcrや、エンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ142からの冷却水温Twを挙げることができる。吸気バルブ128を開閉するインテークカムシャフトの回転位置や排気バルブ133を開閉するエキゾーストカムシャフトの回転位置を検出するカムポジションセンサ144からのカム角θci,θcoも挙げることができる。スロットルバルブ124のポジションを検出するスロットルバルブポジションセンサ124aからのスロットル開度THや、吸気管123のスロットルバルブ124よりも上流側に取り付けられたエアフローメータ123aからの吸入空気量Qa、吸気管
123のスロットルバルブ124よりも上流側に取り付けられた温度センサ123tからの吸気温Ta、サージタンク125に取り付けられた圧力センサ125aからのサージ圧Psも挙げることができる。排気管134の浄化装置135よりも上流側に取り付けられたフロント空燃比センサ137からのフロント空燃比AF1や、排気管134の浄化装置135よりも下流側に取り付けられたリヤ空燃比センサ138からのリヤ空燃比AF2、PMフィルタ136の前後の差圧(上流側と下流側との差圧)を検出する差圧センサ136aからの差圧ΔPも挙げることができる。
【0018】
エンジンECU24からは、エンジン22を運転制御するための各種制御信号が出力ポートを介して出力される。エンジンECU24から出力される信号としては、例えば、スロットルバルブ124への制御信号や、ポート噴射弁126への制御信号、筒内噴射弁127への制御信号、点火プラグ130への制御信号を挙げることができる。
【0019】
エンジンECU24は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。エンジンECU24は、クランクポジションセンサ140からのエンジン22のクランク角θcrに基づいてエンジン22の回転数Neを演算する。また、エンジンECU24は、エアフローメータ123aからの吸入空気量Qaとエンジン22の回転数Neとに基づいて負荷率(エンジン22の1サイクルあたりの行程容積に対する1サイクルで実際に吸入される空気の容積の比)KLを演算する。さらに、エンジンECU24は、差圧センサ136aからの差圧ΔPに基づいてPMフィルタ136に堆積した粒子状物質の堆積量としてのPM堆積量Qpmを演算したり、エンジン22の回転数Neや負荷率KLに基づいてPMフィルタ136の温度としてのフィルタ温度Tfを演算したりする。
【0020】
ここで、クランクポジションセンサ140の構成について説明する。図3は、クランクポジションセンサ140の構成の概略を示す構成図である。クランクポジションセンサ140は、図示するように、エンジン22のクランクシャフト23に取り付けられたタイミングロータ140aと、検知部140bと、を有する電磁ピックアップセンサとして構成されている。以下、歯が形成されている部分を歯部140cといい、欠歯の部分を欠歯部140dという。タイミングロータ140aは、10度毎に形成される36の歯のうち基準位置(例えば、所定気筒の上死点)の検出用に隣り合う2つが欠歯とされて、即ち、34の歯と隣り合う2つの欠歯とを有するように構成されている。検知部140bは、タイミングロータ140aの回転時にタイミングロータ140aの歯が通過する毎に整形波を出力する。図4は、クランクポジションセンサ140(検知部140b)からの出力信号の一例を示す説明図である。エンジンECU24は、基本的には、クランクポジションセンサ140からの出力信号に基づいてタイミングロータ140a、即ち、クランクシャフト23が30度回転するのに要する所要時間T30からエンジン22の回転数Neを演算する。クランクポジションセンサ140からの出力信号は、図示するように、タイミングロータ140aの歯部140cが検知部140bを通過する際と欠歯部140dが検知部140bを通過する際とで周期が異なる。そのため、エンジンECU24は、欠歯部140dが検知部140bを通過するときのクランクポジションセンサ140からの出力信号については、エンジン22の回転数Neの演算に用いなかったり、補正して用いたりする。エンジン22が回転停止していると、クランクポジションセンサ140から整形波が出力されないことから、回転停止しているエンジン22を始動する際には、最初に欠歯部140dが検知部140bを通過した後に、エンジン22の回転数Neの演算を開始する。
【0021】
エンジン22のクランクシャフト23には、エンジン22をクランキングするためのモータ30より定格出力が低いスタータモータ25や、エンジン22からの動力を用いて発電するオルタネータ26が接続されている。スタータモータ25およびオルタネータ26は、低電圧バッテリ62と共に低電圧側電力ライン63に接続されており、HVECU70により制御される。
【0022】
モータ30は、同期発電電動機として構成されており、回転子コアに永久磁石が埋め込まれた回転子と、固定子コアに三相コイルが巻回された固定子とを有する。このモータ30の回転子が固定された回転軸31は、クラッチK0を介してエンジン22のクランクシャフト23に接続されていると共に自動変速機45の入力軸41に接続されている。インバータ32は、モータ30の駆動に用いられると共に高電圧側電力ライン61に接続されている。モータ30は、モータ用電子制御ユニット(以下、「モータECU」という)34によってインバータ32の複数のスイッチング素子がスイッチング制御されることにより、回転駆動される。
【0023】
モータECU34は、図示しないが、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。モータECU34には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。モータECU34に入力される信号としては、例えば、モータ30の回転子(回転軸31)の回転位置を検出する回転位置センサ30aからの回転位置θmや、モータ30の各相の相電流を検出する電流センサからの相電流Iu,Ivを挙げることができる。モータECU34からは、インバータ32への制御信号などが出力ポートを介して出力されている。モータECU34は、HVECU70と通信ポートを介して接続されている。モータECU34は、回転位置センサ30aからのモータ30の回転子(回転軸31)の回転位置θmに基づいてモータ30の回転数Nmを演算している。
【0024】
クラッチK0は、例えば油圧駆動の摩擦クラッチとして構成されており、HVECU70によって制御され、エンジン22のクランクシャフト23とモータ30の回転軸31との接続および接続の解除を行なう。
【0025】
自動変速装置40は、トルクコンバータ43と、例えば6段変速の自動変速機45とを有する。トルクコンバータ43は、一般的な流体伝動装置として構成されており、モータ30の回転軸31に接続された入力軸41の動力を自動変速機45の入力軸である変速機入力軸44にトルクを増幅して伝達したり、トルクを増幅することなくそのまま伝達したりする。自動変速機45は、変速機入力軸44と、駆動輪49にデファレンシャルギヤ48を介して連結された出力軸(変速機出力軸)42と、複数の遊星歯車と、油圧駆動の複数の摩擦係合要素(クラッチ,ブレーキ)とを有する。複数の摩擦係合要素は、何れも、ピストン、複数の摩擦係合プレート(摩擦プレートおよびセパレータプレート)、作動油が供給される油室などにより構成される油圧サーボを有する。自動変速機45は、複数の摩擦係合要素の係脱により、第1速から第6速までの前進段や後進段を形成して、変速機入力軸44と出力軸42との間で動力を伝達する。クラッチK0や自動変速機45には、図示しない油圧制御装置により、機械式オイルポンプや電動オイルポンプからの作動油の油圧が調圧されて供給される。油圧制御装置は、複数の油路が形成されたバルブボディや、複数のレギュレータバルブ、複数のリニアソレノイドバルブなどを有する。この油圧制御装置は、HVECU70により制御される。
【0026】
高電圧バッテリ60は、例えば定格電圧が数百V程度のリチウムイオン二次電池やニッケル水素二次電池として構成されており、インバータ32と共に高電圧側電力ライン61に接続されている。低電圧バッテリ62は、例えば定格電圧が12Vや14V程度の鉛蓄電池として構成されており、スタータモータ25やオルタネータ26と共に低電圧側電力ライン63に接続されている。DC/DCコンバータ64は、高電圧側電力ライン61と低電圧側電力ライン63とに接続されている。このDC/DCコンバータ64は、高電圧側電力ライン61の電力を低電圧側電力ライン63に電圧の降圧を伴って供給する。
【0027】
HVECU70は、図示しないが、CPUやROM、RAM、フラッシュメモリ、入出力ポート、通信ポートを有するマイクロコンピュータを備える。HVECU70には、各種センサからの信号が入力ポートを介して入力されている。HVECU70に入力される信号としては、例えば、自動変速装置40の入力軸41に取り付けられた回転数センサ41aからの回転数Ninや、自動変速装置40の変速機入力軸44に取り付けられた回転数センサ44aからの回転数Nmi、自動変速装置40の出力軸42に取り付けられた回転数センサ42aからの回転数Nout、自動変速装置40の自動変速機45の作動油の温度を検出する温度センサ45aからの油温Toilを挙げることができる。高電圧バッテリ60の端子間に取り付けられた電圧センサからの高電圧バッテリ60の電圧Vbhや、高電圧バッテリ60の出力端子に取り付けられた電流センサからの高電圧バッテリ60の電流Ibh、低電圧バッテリ62の端子間に取り付けられた電圧センサからの電圧Vblも挙げることができる。イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号や、シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP、アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc、ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP、車速センサ87からの車速Vも挙げることができる。シフトレバー81のシフトポジションSPとして、駐車時に用いる駐車ポジション(Pポジション)、後進走行用のリバースポジション(Rポジション) 、中立のニュートラルポジション(Nポジション)、前進走行用の通常のドライブポジション(Dポジション)の他に、アクセルオン時の駆動力の設定等はDポジションと同一であるが走行中のアクセルオフ時に車両に作用させる制動力がDポジションより大きく設定されるブレーキポジション(Bポジション)、アップシフト指示ポジションおよびダウンシフト指示ポジションを有するシーケンシャルシフトポジション(Sポジション)などがある。
【0028】
HVECU70からは、各種制御信号が出力ポートを介して出力されている。HVECU70から出力される信号としては、例えば、スタータモータ25への制御信号や、オルタネータ26への制御信号を挙げることができる。クラッチK0や自動変速装置40(油圧制御装置)への制御信号、DC/DCコンバータ64への制御信号も挙げることができる。HVECU70は、エンジンECU24やモータECU34と通信ポートを介して接続されている。HVECU70は、回転数センサ41aからの自動変速装置40の入力軸41の回転数Ninを回転数センサ42aからの自動変速装置40の出力軸42の回転数Noutで除して自動変速装置40の回転数比Gtを演算している。
【0029】
こうして構成された実施例のハイブリッド車20では、HVECU70とエンジンECU24とモータECU34との協調制御により、ハイブリッド走行モード(HV走行モード)や電動走行モード(EV走行モード)で走行するように、エンジン22とクラッチK0とモータ30と自動変速装置40とを制御する。ここで、HV走行モードは、クラッチK0を係合状態としてエンジン22の動力を用いて走行するモードであり、EV走行モードは、クラッチK0を解放状態としてエンジン22の動力を用いずに走行するモードである。
【0030】
HV走行モードやEV走行モードにおける自動変速装置40の制御では、HVECU70は、最初に、アクセル開度Accおよび車速Vに基づいて自動変速機45の目標変速段M*を設定する。そして、自動変速機45の変速段Mと目標変速段M*とが一致するときには、変速段Mが保持されるように自動変速機45を制御する。一方、変速段Mと目標変速段M*とが異なるときには、変速段Mが目標変速段M*に一致するように自動変速機45を制御する。
【0031】
HV走行モードにおけるエンジン22およびモータ30の制御では、HVECU70は、最初に、アクセル開度Accおよび車速Vに基づいて走行に要求される(自動変速装置40の出力軸42に要求される)要求トルクTout*を設定する。続いて、出力軸42の要求トルクTout*を自動変速装置40の回転数比Gtで除した値を入力軸41の要求トルクTin*の仮値としての仮要求トルクTintmpに設定する。そして、入力軸41の仮要求トルクTintmpにレート処理やなまし処理などの緩変化処理を施した値を入力軸41の要求トルクTin*に設定する。こうして入力軸41の要求トルクTin*を設定すると、要求トルクTin*が入力軸41に出力されるようにエンジン22の目標トルクTe*やモータ30のトルク指令Tm*を設定し、エンジン22の目標トルクTe*をエンジンECU24に送信すると共にモータ30のトルク指令Tm*をモータECU34に送信する。エンジンECU24は、目標トルクTe*を受信すると、エンジン22が目標トルクTe*で運転されるようにエンジン22の運転制御(吸入空気量制御や燃料噴射制御、点火制御など)を行なう。モータECU34は、トルク指令Tm*を受信すると、モータ30がトルク指令Tm*で駆動されるようにインバータ32の複数のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0032】
EV走行モードにおけるモータ30の制御では、HVECU70は、HV走行モードと同様に入力軸41の要求トルクTin*を設定し、要求トルクTin*が入力軸41に出力されるようにモータ30のトルク指令Tm*を設定してモータECU34に送信する。モータECU34は、モータ30がトルク指令Tm*で駆動されるようにインバータ32の複数のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。
【0033】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド車20の動作、特に、停車時にエンジン22を始動する際の動作について説明する。
【0034】
実施例のハイブリッド車20では、停車する際にエンジン22が運転中のときには、エンジン22における燃料噴射と点火とを停止すると共にエンジン22の回転数Neが閾値Nstop(例えば、600rpm、700rpm、800rpmなど)未満のときにクラッチK0を解放する。そして、車両が停車すると、変速機入力軸44と出力軸42との間で動力を伝達しないよう自動変速機45を制御すると共にエンジン22が停止したときのクランク角(停止クランク角)θstopをHVECU70のRAMに記憶する。
【0035】
停車時にエンジン22を始動する際には、HVECU70とエンジンECU24とモータECU34との協調制御により、変速機入力軸44と出力軸42との間で動力を伝達しないよう自動変速機45を制御した状態でエンジン始動制御を実行する。エンジン始動制御では、エンジン22の冷却水温Twが所定水温Tref(例えば、-18℃、-16℃、-14℃など)以上のときには、クラッチK0を完全係合させてモータ30によりエンジン22をクランキングし、エンジン22の回転数Neが開始回転数Nst以上になったときにエンジン22における燃料噴射と点火とを開始するようにエンジン22とモータ30とクラッチK0とを制御する。エンジン22の回転数Neは、エンジンECU24により実行される後述の回転数設定処理で設定したものを用いる。開始回転数Nstは、HVECU70により実行される後述の開始回転数設定処理で設定したものを用いる。
【0036】
エンジン22の冷却水温Twが所定水温Tref未満のときには、低温のためモータ30によりエンジン22をクランキングするのに十分な出力を高電圧バッテリ60から出力できないから、クラッチK0を解放してスタータモータ25によりエンジン22をクランキングし、エンジン22のクランク角θcrが所定位置になったときにエンジン22における燃料噴射と点火とを開始するようにエンジン22とモータ30とクラッチK0とを制御する。そして、クラッチK0の係合条件が成立するとクラッチK0を係合する。
【0037】
ここで、回転数設定処理および開始回転数設定処理について説明する。実施例では、最初に、エンジンECU24により実行される回転数設定処理を説明し、次に、HVECU70により実行される開始回転数設定処理を説明する。
【0038】
図5は、エンジンECU24により実行される回転数設定処理の一例を示すフロチャートである。回転数設定処理は、停車時にエンジン22の始動要求がなされ、且つ、冷却水温Twが所定水温Tref以上のときに、所定時間毎(例えば、数msec毎)に繰り返し実行される。回転数設定処理では、エンジンECU24の図示しないCPUは、欠歯部140dが最初に検知部140bを通過した後であるか否かを判定する(ステップS100)。欠歯部140dが最初に検知部140bを通過した後であれば、クランクポジションセンサ140(検知部140b)からの出力信号に基づいて所要時間T30から演算したエンジン22の回転数Neとしての第1回転数Ne1を演算し(ステップS110)、欠歯部140dが最初に検知部140bを通過する前であれば、第1回転数Ne1に値0を設定する(ステップS120)。
【0039】
次に、クランクポジションセンサ140からの出力信号に基づいてRAMに記憶している停止クランク角θstopからのクランク角θcrの変化量Δθcrとエンジン22のクランキングを開始してからの経過時間tcrとに基づくクランク角速度ωeから演算したエンジン22の回転数としての第2回転数Ne2を演算する(ステップS130)。
【0040】
そして、第1回転数Ne1と第2回転数Ne2とのうち大きいほうの回転数をエンジン22の回転数Neに設定して(ステップS140)、回転数設定処理を終了する。図6は、第1回転数Ne1、第2回転数Ne2の時間変化の一例を説明するための説明図である。図中、時刻t0は、クラッチK0を完全係合させてモータ30によるエンジン22のクランキングを開始したときである。エンジンECU24は、第1回転数Ne1は、欠歯部140dが最初に検知部140bを通過したとき(時刻t2)以降に、所要時間T30から第1回転数Ne1を演算する。そのため、エンジン22を停止したときのクランクポジションセンサ140のタイミングロータ140aの欠歯部140dの位置によっては、エンジン22のクランキングを開始してから第1回転数Ne1の演算を開始するまでに時間を要する。そのため、常に第1回転数Ne1をエンジン22の回転数とすると、実際にはエンジン22の回転数が開始回転数Nest以上であっても、開始回転数Nest未満と判定し、燃料噴射と点火とが遅れてしまうことがある。第2回転数Ne2は、第1回転数Ne1をエンジン22の回転数Neとする場合に比して、エンジン22の回転数Neの検出精度が低下するが、モータ30によりエンジン22のクランキングの開始と共に演算するから、第1回転数Ne1に比して早期に演算が開始される。実施例では、第1回転数Ne1と第2回転数Ne2とのうち大きいほうの回転数を、エンジン22の回転数Neとすることにより、常に第1回転数Ne1をエンジン22の回転数Neとするものに比して、より適正にエンジン22の回転数Neを設定してエンジン22における燃料噴射と点火とを開始して、迅速にエンジン22を始動できる。
【0041】
次に、開始回転数設定処理について説明する。図7は、HVECU70により実行される開始回転数設定処理の一例を示すフロチャートである。開始回転数設定処理は、停車時にエンジン22の始動要求がなされ、且つ、冷却水温Twが所定水温Tref以上のときに実行される。
【0042】
開始回転数設定処理では、HVECU70の図示しないCPUは、エンジン22の冷却水温Twと自動変速機45の作動油の油温Toilを入力する(ステップS200)。冷却水温Twは、水温センサ142により検出されたものをエンジンECU24から通信を介して入力する。油温Toilは、温度センサ45aにより検出されたものを入力している。
【0043】
続いて、冷却水温Twと油温Toilとに基づいて開始回転数Nestを設定して(ステップS210)、開始回転数設定処理を終了する。開始回転数Nestを、冷却水温Twが低いときには高いときに比して低く、且つ、油温Toilが低いときには高いときに比して低く設定される。エンジン22のフリクションや自動変速機45の作動油の引き摺りトルクが大きいときには、モータ30によるエンジン22のクランキングで上昇させ得るエンジン22の回転数Neの上限値が低下する。そのため、開始回転数Nestを冷却水温Twや油温Toilに拘わらず一定の回転数とすると、エンジン22の回転数Neが開始回転数Nest以上に至らず、エンジン22における燃料噴射と点火とを開始することができず、エンジン22の始動に失敗することがある。そこで、冷却水温Twが低いときには高いときに比して開始回転数Nestを低くし、且つ、油温Toilが低いときには高いときに比して開始回転数Nestを低くするのである。これにより、エンジン22のフリクションや自動変速機45の作動油の引き摺りトルクが大きいときでも、開始回転数Nest以上までエンジン22をクランキングしてエンジン22における燃料噴射と点火とを開始することができ、エンジン22の始動性の低下を抑制できる。
【0044】
以上説明した実施例のハイブリッド車20によれば、停車時にエンジン22を始動する際に、冷却水温Twが所定水温Tref以上のときには、クラッチK0を完全係合してモータ30によりエンジン22をクランキングし、エンジン22の回転数Neが開始回転数Nest以上になったときにエンジン22における燃料噴射と点火とを開始するようにエンジン22とモータ30とクラッチK0とを制御し、開始回転数Nestを、エンジン22の冷却水温Twと自動変速機45の作動油の油温Toilとに基づいて設定することにより、エンジン22の始動性の低下を抑制できる。
【0045】
実施例のハイブリッド車20では、エンジン始動制御において、エンジン22の冷却水温Twが所定水温Tref以上のときに、エンジン22の回転数Neとして図5に例示した回転数設定処理で設定したものを用いている。しかし、エンジン22の回転数Neとして、図5に例示した回転数設定処理で設定したものに代えて、クランクポジションセンサ140からの出力信号に基づいて所要時間T30から演算したもの(図5に例示した回転数設定処理のステップS110で設定した第1回転数Ne1と同じ)を用いてもよいし、クランク角速度ωeから演算したもの(図5に例示した回転数設定処理のステップS130で設定した第2回転数Ne2と同じ)を用いてもよい。
【0046】
実施例のハイブリッド車20では、クランクポジションセンサ140のタイミングロータ140aの歯が34で且つ欠歯が2であることを踏まえて、クランクシャフト23が30度回転するのに要した所要時間T30を演算している。しかし、タイミングロータ140aの欠歯の数と歯の数との関係に応じて、30度に代えて、10度,20度などを用いるものとしてもよい。
【0047】
実施例のハイブリッド車20では、エンジン始動制御において、エンジン22の冷却水温Twが所定水温Tref以上であるか否かに応じて、異なる方法でエンジン22を始動している。しかし、ハイブリッド車20がスタータモータ25を備えていない場合は、エンジン22の冷却水温Twが所定水温Tref以上であるか否かに拘わらず、クラッチK0を完全係合させてモータ30によりエンジン22をクランキングし、エンジン22の回転数Neが開始回転数Nst以上になったときにエンジン22における燃料噴射と点火とを開始するようにエンジン22とモータ30とクラッチK0とを制御してもよい。
【0048】
実施例のハイブリッド車20では、6段変速の自動変速機45を備えている。しかし、4段変速や5段変速、8段変速などの自動変速機を備えるものとしてもよい。
【0049】
実施例のハイブリッド車20では、エンジンECU24とモータECU34とHVECU70とを備えている。しかし、これらのうちの少なくとも2つを一体に構成するものとしてもよい。
【0050】
実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「エンジン」に相当し、モータ30が「モータ」に相当し、トルクコンバータ43が「トルクコンバータ」に相当し、自動変速機45が「自動変速機」に相当し、HVECU70とエンジンECU24とモータECU34とが「制御装置」に相当する。
【0051】
なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0052】
以上、本発明を実施するための形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、ハイブリッド車の製造産業などに利用可能である。
【符号の説明】
【0054】
20 ハイブリッド車、22 エンジン、23 クランクシャフト、24 エンジンECU、25 スタータモータ、26 オルタネータ、30 モータ、30a 回転位置センサ、31 回転軸、32 インバータ、34 モータECU、40 自動変速装置、41 入力軸、41a 回転数センサ、42 出力軸、42a 回転数センサ、43 トルクコンバータ、44 変速機入力軸、44a 回転数センサ、45 自動変速機、46 温度センサ、48 デファレンシャルギヤ、49 駆動輪、60 高電圧バッテリ、61 高電圧側電力ライン、62 低電圧バッテリ、63 低電圧側電力ライン、64 DC/DCコンバータ、70 HVECU、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、87 車速センサ、122 エアクリーナ、123 吸気管、123a エアフローメータ、123t 温度センサ、124 スロットルバルブ、124a スロットルバルブポジションセンサ、125 サージタンク、125a 圧力センサ、126 ポート噴射弁、127 筒内噴射弁、128 吸気バルブ、129 燃焼室、130 点火プラグ、132 ピストン、133 排気バルブ、134 排気管、135 浄化装置、135a 浄化触媒、136 PMフィルタ、136a 差圧センサ、137 フロント空燃比センサ、138 リヤ空燃比センサ、140 クランクポジションセンサ、142 水温センサ、144 カムポジションセンサ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7