(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-28
(45)【発行日】2025-08-05
(54)【発明の名称】機関システム
(51)【国際特許分類】
F02M 21/02 20060101AFI20250729BHJP
F01M 5/00 20060101ALI20250729BHJP
F01M 3/00 20060101ALI20250729BHJP
【FI】
F02M21/02 G
F01M5/00 A
F01M5/00 D
F01M3/00 D
(21)【出願番号】P 2022108239
(22)【出願日】2022-07-05
【審査請求日】2024-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】奥田 弘一
(72)【発明者】
【氏名】山村 憲弘
(72)【発明者】
【氏名】寺田 竜啓
(72)【発明者】
【氏名】小西 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】伯耆 雄介
(72)【発明者】
【氏名】関口 慶人
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0283364(US,A1)
【文献】特開平11-336562(JP,A)
【文献】特開2016-109005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01M 1/00-13/06
F02B 43/00-45/10
F02M 21/00-21/12、31/00-33/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイルを貯留するオイル貯蔵部を有し、水素を燃料とする内燃機関と、
前記水素の原料を加熱することにより前記水素を生成する水素生成装置と、
前記水素生成装置と前記オイル貯蔵部に貯留されるオイルとの間で熱交換をする熱交換機構と、を備え
、
前記水素生成装置は、
前記水素の原料から前記水素を生成するための反応炉と、
前記反応炉内の前記水素の原料を加熱する加熱器と、を有し、
前記熱交換機構は、前記反応炉及び前記加熱器から選ばれる1以上からの熱を伝える伝熱体を有し、
前記伝熱体の一部又は全部は、前記オイル貯蔵部内に位置している
機関システム。
【請求項2】
オイルを貯留するオイル貯蔵部を有し、水素を燃料とする内燃機関と、
前記水素の原料を加熱することにより前記水素を生成する水素生成装置と、
前記水素生成装置と前記オイル貯蔵部に貯留されるオイルとの間で熱交換をする熱交換機構と、を備え
、
前記熱交換機構は、
前記オイル貯蔵部及び前記水素生成装置の間でオイルを循環させるための循環通路と、
前記循環通路内のオイルを圧送するオイルポンプと、を有する
機関システム。
【請求項3】
前記水素生成装置及び前記オイルポンプを制御対象とする制御装置を備え、
前記制御装置は、前記オイル貯蔵部に貯留されるオイルに含まれる水分の濃度が予め定められた閾値以上であることを条件に、前記水素生成装置を駆動させつつ前記オイルポンプを駆動させることによりオイルを循環させる循環処理を実行する
請求項2に記載の機関システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記オイル貯蔵部に貯留されるオイルに含まれる水分の濃度が前記閾値以上であることに加え、前記内燃機関が停止していることを条件に、前記循環処理を実行する
請求項3に記載の機関システム。
【請求項5】
前記オイルポンプは、電動オイルポンプである
請求項2~請求項4の何れか一項に記載の機関システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機関システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の機関システムは、内燃機関、及び水素生成装置を備えている。内燃機関は、水素を燃料とする。水素生成装置は、電気分解により水から水素を生成する。そして、水素生成装置により生成された水素は、内燃機関に燃料として供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2018/0112608号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような機関システムでは、内燃機関の気筒内で水素が燃焼することで水が発生する。そして、発生した水の一部は、内燃機関のオイル貯蔵部に貯留されているオイルに混入する。仮に、オイル貯蔵部のオイルに含まれる水分の濃度が過度に高くなると、オイルが変質するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための機関システムは、オイルを貯留するオイル貯蔵部を有し、水素を燃料とする内燃機関と、前記水素の原料を加熱することにより前記水素を生成する水素生成装置と、前記水素生成装置と前記オイル貯蔵部に貯留されるオイルとの間で熱交換をする熱交換機構と、を備える。
【0006】
上記構成によれば、水素生成装置が駆動して当該水素生成装置の熱がオイル貯蔵部に貯留されるオイルに伝達されることにより当該オイルの温度が上昇する。これにより、オイルに含まれる水分が蒸発することで、オイルに含まれる水分の濃度を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
<機関システムの概略構成>
以下、本発明の一実施形態を
図1及び
図2にしたがって説明する。先ず、機関システム100の概略構成について説明する。
【0009】
図1に示すように、機関システム100は、内燃機関10を備えている。内燃機関10は、水素を燃料とする内燃機関である。内燃機関10は、ヘッドカバー21、シリンダヘッド22、シリンダブロック23、クランクケース24、及びオイルパン25を備えている。また、内燃機関10は、複数のピストン31、複数のコネクティングロッド32、クランク軸33、吸気管41、及び排気管42を備えている。
【0010】
シリンダブロック23は、当該シリンダブロック23の内部の空間として、4つの気筒23A、及び4つの上部空間23Bを備えている。気筒23Aは、シリンダブロック23の上端から上下の中央付近まで延びている。気筒23Aは、燃料と吸気との混合気を燃焼させるための空間である。上部空間23Bは、気筒23Aの下端からシリンダブロック23の下端まで延びている。ピストン31は、気筒23Aの内部に位置している。ピストン31は、コネクティングロッド32を介してクランク軸33に連結している。ピストン31は、気筒23Aにおいて燃料と吸気との混合気が燃焼することにより、気筒23Aの内部で往復運動する。そして、ピストン31の往復運動により、クランク軸33が回転する。なお、
図1では、1つの気筒23Aのみを代表して図示している。
【0011】
クランクケース24は、シリンダブロック23の下端に接続している。クランクケース24の構造は、いわゆるラダーフレーム構造である。したがって、クランクケース24は、当該クランクケース24の内部の空間として、4つの下部空間24Aを備えている。下部空間24Aは、クランクケース24の上端から下端まで延びている。下部空間24Aは、上部空間23Bの下端に接続している。シリンダブロック23及びクランクケース24は、両者の間で挟み込んだ状態でクランク軸33を支持している。シリンダブロック23の上部空間23B及びクランクケース24の下部空間24Aは、クランク軸33を収容するクランク室として機能する。
【0012】
オイルパン25は、クランクケース24の下端に接続している。オイルパン25の形状は、底を有する概ね四角箱形状である。したがって、オイルパン25は、当該オイルパン25の内部の空間として、オイル室25Aを備えている。オイル室25Aは、オイルを貯留している。なお、オイル室25Aのオイルは、図示しないポンプにより内燃機関10の各部に供給される。本実施形態において、オイルパン25は、オイル貯蔵部の一例である。
【0013】
シリンダヘッド22は、シリンダブロック23の上端に接続している。シリンダヘッド22は、当該シリンダヘッド22の内部の空間として、4つの吸気ポート22A、4つの排気ポート22B、及び4つの燃焼凹部22Cを備えている。燃焼凹部22Cは、シリンダヘッド22の下面から上方に向かって窪んでいる。燃焼凹部22Cは、気筒23Aの上端に接続している。なお、燃焼凹部22C、気筒23A、及びピストン31は、燃焼室を区画している。
【0014】
吸気ポート22Aの第1端は、燃焼凹部22Cに接続している。吸気ポート22Aの第2端は、シリンダヘッド22の側面に開口している。吸気管41は、吸気ポート22Aの第2端に接続している。吸気管41は、内燃機関10の外部からの吸気を吸気ポート22Aへと導入する。吸気ポート22Aは、吸気管41を流通した吸気を気筒23Aへと導入する。
【0015】
排気ポート22Bの第1端は、燃焼凹部22Cに接続している。排気ポート22Bの第2端は、シリンダヘッド22の側面に開口している。排気管42は、排気ポート22Bの第2端に接続している。排気ポート22Bは、気筒23Aからの排気を排気管42へと排出する。排気管42は、排気ポート22Bを流通した排気を内燃機関10の外部へと排出する。
【0016】
ヘッドカバー21は、シリンダヘッド22の上端に接続している。ヘッドカバー21は、シリンダヘッド22を覆っている。また、ヘッドカバー21は、シリンダヘッド22と共に収容空間21Aを区画している。収容空間21Aは、図示しない動弁機構等を収容している。
【0017】
内燃機関10は、複数の吸気弁34、複数の排気弁35、複数の燃料噴射弁36、複数の点火装置37、及びスロットルバルブ38を備えている。
吸気弁34は、吸気ポート22A及び燃焼凹部22Cの接続部分に位置している。吸気弁34は、図示しない動弁機構からの駆動力により吸気ポート22Aの下流端を開閉する。排気弁35は、排気ポート22B及び燃焼凹部22Cの接続部分に位置している。排気弁35は、図示しない動弁機構からの駆動力により排気ポート22Bの上流端を開閉する。
【0018】
スロットルバルブ38は、吸気管41の途中に位置している。スロットルバルブ38は、吸気管41を流通する吸気の量を調整する。燃料噴射弁36の先端は、吸気ポート22Aの途中に位置している。燃料噴射弁36は、吸気ポート22Aに燃料としての水素を噴射する。その結果、吸気ポート22A及び燃焼凹部22Cを介して気筒23Aへと水素が供給される。点火装置37の先端は、燃焼凹部22Cに位置している。点火装置37は、燃料と吸気との混合気を火花放電により点火する。
【0019】
機関システム100は、モータジェネレータ60、及びバッテリ65を備えている。モータジェネレータ60は、内燃機関10のクランク軸33に連結している。したがって、モータジェネレータ60は、内燃機関10のクランク軸33からの駆動力により電力を発電可能である。バッテリ65は、モータジェネレータ60が発電した電力を蓄電可能である。
【0020】
機関システム100は、水素生成装置50、供給通路56、及び燃料タンク57を備えている。水素生成装置50の一例は、バイオマスから水素を生成する装置である。水素生成装置50は、反応炉51、及び加熱器52を備えている。反応炉51は、当該反応炉51に収容された水素の原料から水素を生成する。ここで、水素の原料としては、例えば木質バイオマスである。加熱器52は、反応炉51に収容された水素の原料を加熱可能である。水素生成装置50は、例えば以下のように水素を生成する。先ず、加熱器52は、反応炉51に収容された木質バイオマスを、800℃~1000℃程度まで加熱する。すると、反応炉51内の木質バイオマスがガス化される。このガスは、例えば、エタノールガス、メタノールガス等を含んでいる。そして、反応炉51は、ガスを改質することにより水素を生成する。すなわち、水素生成装置50は、水素の原料を加熱することにより水素を生成する装置である。なお、水素生成装置50の構成自体は周知である。例えば、水素生成装置50の構成は、特開2019-026503号公報、特開2019-041681号公報等に記載されている。
【0021】
供給通路56の第1端は、水素生成装置50に接続している。供給通路56の第2端は、燃料噴射弁36に接続している。燃料タンク57は、供給通路56の途中に位置している。燃料タンク57は、水素を貯留可能である。したがって、水素生成装置50が生成した水素は、一旦燃料タンク57に貯留される。そして、燃料タンク57に貯留された水素は、燃料タンク57から視て燃料噴射弁36側の供給通路56を介して燃料噴射弁36へと供給される。なお、図示は省略するが、供給通路56における燃料タンク57から視て燃料噴射弁36側の部分には、燃料である水素の圧力を減圧するためのレギュレータ等が設けられている。
【0022】
機関システム100は、熱交換機構70を備えている。熱交換機構70は、循環通路71、及びオイルポンプ72を備えている。オイルポンプ72は、吸入口を介して吸入したオイルを、吐出口から圧送する。本実施形態において、オイルポンプ72は、図示しない電動モータにより駆動する電動式のポンプ、いわゆる電動オイルポンプである。
【0023】
循環通路71の上流端は、オイルポンプ72の吐出口に接続している。循環通路71の下流端は、オイルポンプ72の吸入口に接続している。すなわち、オイルポンプ72は、循環通路71内のオイルを圧送可能である。循環通路71の一部分は、水素生成装置50の内部に位置している。具体的には、循環通路71の一部分は、水素生成装置50における反応炉51及び加熱器52の近傍に位置している。したがって、循環通路71のうち、水素生成装置50における反応炉51及び加熱器52の近傍に位置する部分のオイルは、反応炉51及び加熱器52により暖められる。また、オイルパン25は、循環通路71の一部分を構成している。オイルパン25は、循環通路71において水素生成装置50から視て下流側に位置している。したがって、水素生成装置50における反応炉51及び加熱器52の近傍を流通したオイルは、オイルパン25の内部に流入する。そして、オイルパン25の内部のオイルは、オイルポンプ72へと流出する。換言すると、循環通路71のオイルは、オイルポンプ72、水素生成装置50、オイルパン25の順に循環する。すなわち、循環通路71は、オイルパン25及び水素生成装置50の間でオイルを循環させるための通路である。本実施形態において、熱交換機構70は、上記のようにオイルを循環させることにより、水素生成装置50とオイルパン25に貯留されているオイルとの間で熱交換させる。
【0024】
図1に示すように、機関システム100は、水分濃度センサ81、及び制御装置90を備えている。水分濃度センサ81は、オイルパン25に貯留されているオイルに含まれる水分の濃度である水分濃度MCを検出する。制御装置90は、水分濃度MCを示す信号を水分濃度センサ81から取得する。
【0025】
制御装置90は、内燃機関10、水素生成装置50、モータジェネレータ60、及び熱交換機構70を制御対象としている。具体的には、制御装置90は、内燃機関10に制御信号を出力することにより、燃料噴射弁36からの燃料噴射量の調整、点火装置37の点火時期の調整、スロットルバルブ38の開度の調整などの各種の制御を実行する。制御装置90は、水素生成装置50に制御信号を出力することにより、水素生成装置50による水素の生成量などを調整する。制御装置90は、モータジェネレータ60に制御信号を出力することにより、モータジェネレータ60による発電量などを調整する。制御装置90は、熱交換機構70に制御信号を出力することにより、オイルポンプ72が圧送するオイルの量などを調整する。
【0026】
制御装置90は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサを含む回路(circuitry)として構成し得る。なお、制御装置90は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、又はそれらの組み合わせを含む回路として構成してもよい。プロセッサは、CPU及び、RAM並びにROM等のメモリを含む。メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる媒体を含む。
【0027】
<水分抑制制御>
次に、制御装置90が実行する水分抑制制御について説明する。本実施形態において、制御装置90は、内燃機関10が停止していることを条件に、水分抑制制御を繰り返し実行する。
【0028】
図2に示すように、制御装置90は、水分抑制制御を開始すると、ステップS11の処理を実行する。ステップS11において、制御装置90は、水分濃度MCが予め定められた閾値A以上であるか否かを判定する。ここで、閾値Aは、例えば以下のように定めている。先ず、実験等により、水分濃度MCとして許容できる上限値を求める。そして、求めた上限値よりも一定値だけ低い値を、閾値Aとして定めている。ステップS11において、水分濃度MCが閾値A未満であると制御装置90が判定した場合(S11:NO)、制御装置90は、今回の水分抑制制御を終了する。一方、ステップS11において、水分濃度MCが閾値A以上であると制御装置90が判定した場合(S11:YES)、制御装置90は、処理をステップS12に進める。換言すると、制御装置90は、オイルパン25に貯留されているオイルに含まれる水分濃度MCが閾値A以上であることに加え、内燃機関10が停止していることを条件に、ステップS12以降の処理を進める。
【0029】
ステップS12において、制御装置90は、水素生成装置50に制御信号を出力することにより、当該水素生成装置50を駆動する。具体的には、制御装置90は、加熱器52により反応炉51に収容された水素の原料を加熱する。なお、別の要因により水素生成装置50が既に駆動している場合には、その状態を維持する。その後、制御装置90は、処理をステップS13に進める。
【0030】
ステップS13において、制御装置90は、オイルポンプ72に制御信号を出力することにより、当該オイルポンプ72を駆動する。その結果、オイルポンプ72の駆動により循環通路71のオイルが循環する。本実施形態において、ステップS12及びステップS13の処理は、水素生成装置50を駆動させつつ、オイルポンプ72を駆動させることによりオイルを循環させる循環処理である。その後、制御装置90は、今回の水分抑制制御を終了する。なお、本実施形態において、制御装置90は、内燃機関10を駆動する場合に、ステップS13の処理を終了する。
【0031】
<本実施形態の作用>
図2に示すように、機関システム100では、オイルパン25に貯留されているオイルに含まれる水分濃度MCが閾値A以上であることに加え、内燃機関10が停止していることを条件に、ステップS12以降の処理が実行される。そして、ステップS12及びステップS13においては、水素生成装置50を駆動させつつ、オイルポンプ72を駆動させることによりオイルを循環させる循環処理が実行される。このように循環処理が実行されると、水素生成装置50における反応炉51及び加熱器52の近傍を流通したオイルがオイルパン25の内部に流入する。すると、水素生成装置50における反応炉51及び加熱器52の熱がオイルパン25に貯留されるオイルに伝達されることにより当該オイルの温度が上昇する。
【0032】
<本実施形態の効果>
(1)機関システム100では、上記のようにオイルが循環することにより、オイルパン25に貯留されるオイルの温度を上昇させることが可能である。これにより、オイルパン25に貯留されるオイルに含まれる水分が蒸発する。その結果、オイルパン25に貯留されているオイルの水分濃度MCを低下させることができる。
【0033】
(2)本実施形態では、循環通路71及びオイルポンプ72を有する熱交換機構70を採用している。この構成によれば、内燃機関10と水素生成装置50との間にある程度の距離があっても、オイルパン25内のオイルに水素生成装置50の熱を効率よく伝達することができる。また、オイルパン25及び水素生成装置50を繋ぐ循環通路71を設置できれば、水素生成装置50とオイルパン25に貯留されているオイルとの間で熱交換をする熱交換機構70を実現できる。そのため、熱交換機構70を採用するにあたり、内燃機関10及び水素生成装置50に対する設計変更を最小限に留めることができる。
【0034】
(3)本実施形態において、制御装置90は、オイルパン25に貯留されているオイルに含まれる水分濃度MCが閾値A以上であることを条件に、循環処理を実行する。この構成によれば、水分濃度MCが閾値A未満である場合には循環処理が実行されない。これにより、水分濃度MCが比較的に低い状況で循環処理が無用に実行されることは抑制できる。その結果、例えば循環処理の実行に起因して水素生成装置50及びオイルポンプ72を駆動するためのエネルギーが消費されることは抑制できる。
【0035】
(4)本実施形態において、制御装置90は、オイルパン25に貯留されているオイルに含まれる水分濃度MCが閾値A以上であることに加え、内燃機関10が停止していることを条件に、循環処理を実行する。この構成によれば、内燃機関10が駆動していることで既にオイルの温度が相応に高くなっている状態で、循環処理が実行されることはない。つまり、本実施形態によれば、オイルの温度を高くする必要性が低いときには、循環処理が実行されない。
【0036】
(5)本実施形態において、オイルポンプ72は、電動オイルポンプである。この構成によれば、例えばクランク軸33に連結している機械式のオイルポンプを備えている構成に比べて、内燃機関10が駆動しているか否か、及び内燃機関10のクランク軸33の回転速度に拘わらず、循環通路71を流通するオイルの量を調整可能である。
【0037】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0038】
・上記実施形態において、水分抑制制御は変更してもよい。
例えば、制御装置90は、内燃機関10が停止しているか否かに拘わらず、水分抑制制御を実行してもよい。この構成によれば、ステップS11において肯定判定されれば、内燃機関10が駆動している状況であっても、循環処理を実行できる。
【0039】
・例えば、ステップS11の処理を省略してもよい。すなわち、制御装置90は、水分抑制制御を開始したときに、ステップS12の処理を実行してもよい。この構成によれば、水分濃度MCに拘わらず、循環処理を実行可能である。
【0040】
・上記実施形態において、水分濃度MCを取得する構成は変更してもよい。
例えば、制御装置90は、燃料噴射弁36から噴射した水素の積算値、オイルパン25に貯留されているオイルの温度等に基づいて、水分濃度MCを算出してもよい。
【0041】
・上記実施形態において、機関システム100の構成は変更してもよい。
例えば、オイルポンプ72は、電動オイルポンプに限らない。具体的には、オイルポンプ72として、内燃機関10のクランク軸33に連結している機械式のオイルポンプを採用してもよい。この場合、内燃機関10が駆動していない状態でも、モータジェネレータ60を電動機として機能させれば、クランク軸33を回転させることで機械式のオイルポンプを駆動できる。
【0042】
・オイル貯蔵部は、上記実施形態の例に限らない。例えば、内燃機関10においては、オイルパン25とは別にオイルを駐留する貯蔵タンクを備える潤滑方式、いわゆるドライサンプ方式の構成を採用してもよい。この場合、上記の貯蔵タンクは、オイル貯蔵部として採用できる。
【0043】
・熱交換機構の構成は、上記実施形態の例に限らない。具体例として、熱交換機構は、水素生成装置50の反応炉51からの熱を伝える伝熱体を備えていてもよい。この伝熱体は、反応炉51の外面から延び、一部がオイルパン25内に位置している。そして、伝熱体の材質は、熱伝導性のよい金属、例えばアルミニウム合金である。この変更例によれば、反応炉51の熱が伝熱体に伝わって、伝熱体が高温になる。そして、高温の伝熱体にオイルが触れる、又は高温の伝熱体からの輻射熱により、オイルが温められる。なお、反応炉51から延びる伝熱体を例に説明したが、加熱器52から伝熱体が延びていてもよい。
【0044】
さらに、例えば、反応炉51の外壁の一部が、オイルパン25内に露出していてもよい。この構成によれば、反応炉51の熱が直接的にオイルパン25内のオイルに伝わる。また、同様に、加熱器52の外壁の一部がオイルパン25内に露出していてもよい。これらの変更例の場合、反応炉51のうちオイルパン25内に露出している部分、又は加熱器52のうちオイルパン25内に露出している部分が、伝熱体として機能する。
【0045】
・熱交換機構は、上記実施形態の循環通路71及びオイルポンプ72と、上記変更例の伝熱体の構成とを、共に有していてもよい。
・水素生成装置50は、上記実施形態の例に限らない。すなわち、水素生成装置50としては、水素の原料を加熱することにより水素を生成するものであれば様々な構成を採用でき得る。
【0046】
<関連する技術的思想>
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
(付記1)
オイルを貯留するオイル貯蔵部を有し、水素を燃料とする内燃機関と、
前記水素の原料を加熱することにより前記水素を生成する水素生成装置と、
前記水素生成装置と前記オイル貯蔵部に貯留されるオイルとの間で熱交換をする熱交換機構と、を備える
機関システム。
【0047】
(付記2)
前記水素生成装置は、
前記水素の原料から前記水素を生成するための反応炉と、
前記反応炉内の前記水素の原料を加熱する加熱器と、を有し、
前記熱交換機構は、前記反応炉及び前記加熱器から選ばれる1以上からの熱を伝える伝熱体を有し、
前記伝熱体の一部又は全部は、前記オイル貯蔵部内に位置している
付記1に記載の機関システム。
【0048】
(付記3)
前記熱交換機構は、
前記オイル貯蔵部及び前記水素生成装置の間でオイルを循環させるための循環通路と、
前記循環通路内のオイルを圧送するオイルポンプと、を有する
付記1又は付記2に記載の機関システム。
【0049】
(付記4)
前記水素生成装置及び前記オイルポンプを制御対象とする制御装置を備え、
前記制御装置は、前記オイル貯蔵部に貯留されるオイルに含まれる水分の濃度が予め定められた閾値以上であることを条件に、前記水素生成装置を駆動させつつ前記オイルポンプを駆動させることによりオイルを循環させる循環処理を実行する
付記3に記載の機関システム。
【0050】
(付記5)
前記制御装置は、前記オイル貯蔵部に貯留されるオイルに含まれる水分の濃度が前記閾値以上であることに加え、前記内燃機関が停止していることを条件に、前記循環処理を実行する
付記4に記載の機関システム。
【0051】
(付記6)
前記オイルポンプは、電動オイルポンプである
付記3~付記5の何れか一項に記載の機関システム。
【符号の説明】
【0052】
10…内燃機関
21…ヘッドカバー
22…シリンダヘッド
23…シリンダブロック
24…クランクケース
25…オイルパン
31…ピストン
32…コネクティングロッド
33…クランク軸
36…燃料噴射弁
41…吸気管
42…排気管
50…水素生成装置
51…反応炉
52…加熱器
56…供給通路
57…燃料タンク
60…モータジェネレータ
65…バッテリ
70…熱交換機構
71…循環通路
72…オイルポンプ
81…水分濃度センサ
90…制御装置
100…機関システム