IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-スポイラを有するカイト 図1
  • 特許-スポイラを有するカイト 図2
  • 特許-スポイラを有するカイト 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-28
(45)【発行日】2025-08-05
(54)【発明の名称】スポイラを有するカイト
(51)【国際特許分類】
   B64C 31/06 20200101AFI20250729BHJP
   B64C 9/02 20060101ALI20250729BHJP
   A63H 27/08 20200101ALI20250729BHJP
【FI】
B64C31/06
B64C9/02 A
A63H27/08 D
A63H27/08 H
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022112022
(22)【出願日】2022-07-12
(65)【公開番号】P2024010593
(43)【公開日】2024-01-24
【審査請求日】2024-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100071216
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 昌毅
(74)【代理人】
【識別番号】100130395
【弁理士】
【氏名又は名称】明石 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】深川 建
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-037630(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0320332(US,A1)
【文献】特表2006-514591(JP,A)
【文献】特表2013-527820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 31/06
B64C 9/02
A63H 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テザーに接続されて空中に飛揚されるカイトであって、
左右の翼部と
前記左右の翼部のそれぞれの上面に設けられた平板状のスポイラにして、その前縁が前記上面に枢着され、その後縁が前記翼部上面から離れる方向に枢動可能であるスポイラを有し、
前記スポイラが前記翼部の後縁よりも前縁に近い部位に配置され、
前記スポイラの後縁に於いて、該スポイラの平板の面方向に対して交差し、前記翼部上面から離れる方向に延在した板状部が設けられ
前記板状部が前記スポイラの平板の面方向に対して略垂直方向に延在しているカイト。
【請求項2】
請求項1のカイトであって、前記板状部の前記スポイラの後縁との接続部分から末縁までの長さが、前記スポイラの前縁から後縁までの長さの5~20%であるカイト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上空に飛揚し係留されるカイト(凧)に係り、より詳細には、カイトの表面に設けられる空力デバイスであるスポイラの形状に係る。
【背景技術】
【0002】
上空にカイトなどの飛行体を飛揚し、風力発電などを行うカイトシステムの利用が検討されている(例えば、特許文献1)。カイトシステムに於ける飛行体は、その飛揚及び滞空のためのエネルギーとして、主として高高度域に流れる偏西風或いは貿易風等の気流エネルギーを利用することとなるので、省エネルギーの観点から極めて有利である。そのようなカイトシステムに於ける飛行体であるカイトに関して、例えば、特許文献2に於いては、線状部材(テザー)に接続された飛行体(カイト)の飛行の安定性を向上させる技術として、風圧から揚力を発生させる翼部と線状部材上に設けられる起点部とを接続する接続部に於いて、翼部が受ける力に応じて弾性変形する変形部を設け、変形部の変形によって、起点部から翼部の一方の端部までの距離と、起点部から翼部の他方の端部までの距離との比率を変更可能に構成することが開示されている。また、特許文献3に於いては、後退翼を有する凧型飛行体(カイト)の強度を確保しつつ、飛行安定性を向上する構造として、左右翼部の後縁であって、凧型飛行体の左右方向に凧型飛行体の重心を通って延びる直線と左右翼部の揚力作用点を結ぶ曲線との交点よりも左右翼部の端部側のそれぞれに、板状部材を取り付け、板状部材の後端が後退翼の翼面よりも上側に位置するように傾いた構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-94521
【文献】特開2021-154976
【文献】特開2022-37630
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の如きカイトシステムに於けるカイトのロール方向の姿勢制御のための一つの構成として、カイトの左右翼部の上面に於いて、スポイラの如き空力デバイスを設け、左右翼部上面に流れる気流を適宜剥離して、左右翼部に作用する揚力の大きさを低下する構成が有効である。また、カイトのような構造が弾性的である飛行体の場合、その翼部の後端寄りに空力作用のあるデバイスを設置すると、翼部の後側がねじれる変形が発生して、空力作用の効果が低下し、或いは、期待する作用とは逆方向の作用が生じ得るので(エルロンリバーサル等)、スポイラは、翼部の前端寄りに設けられることが多い。そして、カイトに於いて、カイトの受けている風力とテザーからの張力とがほぼつり合い、上空でほぼ静止している状態では、カイト自体の速度が略0であり、これにより、カイトの姿勢に対する風の変動の影響が相対的に大きくなるので、できるだけ広範囲の姿勢条件にて、スポイラによる空力作用(揚力の低下)が有効であることが好ましい。
【0005】
上記の如きカイトの上面に取り付けられるスポイラに関して、本発明の発明者の研究によれば、左右翼部上面に於ける揚力の調節のためのスポイラを翼部の前端寄りに設けた構成の場合、スポイラの形状が単なる平板状であるときには、翼部の迎角(風向きに対する翼部の前後方向の角度-図2(B)中のα参照)が小さくなると、スポイラの空力作用が低下し、かかる作用が逆向きにも成り得ることが見出された。より詳細には、スポイラの空力作用は、平板状のスポイラが翼部上面からその面と交差する方向に外方へ突出することにより、翼部前端から流れてきた気流を翼部上面から剥離して、翼部上面に作用する揚力を低下させることであるところ、平板状のスポイラを翼部の前端寄りに設けただけの場合、迎角が小さいときは、スポイラで一旦剥離した流れが、スポイラ後流で再付着や回り込みにより、剥離の作用効果が十分に発揮されないことが見出された(図3(B)参照)。そこで、本発明の発明者が、スポイラの形状について検討したところ、スポイラの形状として、平板形状の後縁に板状部が翼部上面から離れる方向に延在又は直立している形状を採用すると、迎角が小さいときでも有効な剥離作用が得られることが見出された。本発明に於いては、この知見が利用される。
【0006】
かくして、本発明の課題は、カイトに於いて、迎角が小さいときでも翼部上面に於ける気流の有効な剥離作用が得られるスポイラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、上記の課題は、テザーに接続されて空中に飛揚されるカイトであって、
左右の翼部と
前記左右の翼部のそれぞれの上面に設けられた平板状のスポイラにして、その前縁が前記上面に枢着され、その後縁が前記翼部上面から離れる方向に枢動可能であるスポイラを有し、
前記スポイラの後縁に於いて、該スポイラの平板の面方向に対して交差し、前記翼部上面から離れる方向に延在した板状部が設けられているカイト
によって達成される。
【0008】
上記の構成に於いて、「カイト」とは、カイトシステムに於いて、テザーに接続されて空中に飛揚される任意の形式のカイトであってよい。カイトは、前後方向の中心軸から左右方向に延在する翼部を有し、それらの前縁から後縁へ流れる気流(風)により揚力を得て空中へ飛揚される。テザーは、カイトと地上の施設又は別の飛行体との間を接続するテザー(ロープ)であってよい。「平板状のスポイラ」は、上記の如く、左右の翼部のそれぞれの上面に於いて、その前縁が枢着され、その後縁が翼部上面から離れる方向に枢動可能に取り付けられる空力デバイスである。翼部上面に対するスポイラの平板の延在方向の角度(スポイラ角)が有意な角度となると、スポイラによって、翼部前縁から翼部上面に沿って流れてくる気流が剥離され、その程度に応じて、翼部の揚力が低減される。左右翼部のスポイラのスポイラ角は、任意の手法にて制御されてよく、実施形態の欄に於いて詳述される如く、スポイラ角が大きくなるほど、翼部の揚力の低減作用が大きくなるので、左右のスポイラ角をそれぞれ調節することによって、左右翼部の揚力が調節され、カイトのロール姿勢が制御されることとなる。
【0009】
上記のカイトの左右の翼部上面のそれぞれに設けられるスポイラの形状に関して、既に触れた如く、その形状が単なる平板状である場合には、カイトの迎角が小さくなると、翼部の揚力の低減作用が低下し、例えば、迎角が0°であるときには、殆ど、翼部の揚力の低減作用が発揮されないどころか、翼部の揚力を上昇させる作用が生ずることとなる。そこで、本発明によるカイトのスポイラに於いては、上記の如く、スポイラの後縁に於いて、板状部が、該スポイラの平板の面方向に対して交差し、翼部上面から離れる方向に延在するように設けられる。かかる構成によれば、カイトの迎角が小さくても、スポイラによる翼部上面に沿う気流の剥離作用がより効果的に発揮され、例えば、迎角が0°であるときでも、翼部の揚力が有意に低減できることとなる。
【0010】
上記の本発明の構成に於いて、スポイラの後縁に於ける板状部は、スポイラの平板の面方向に対して略垂直方向に延在していてよい。これにより、スポイラによる気流の強制的な剥離がより効果的に達成されることとなる。また、翼部の風洞試験等に於けるスポイラによる揚力の低減効果と翼部の受ける抵抗とのバランスとの評価により、板状部のスポイラの後縁との接続部分から末縁までの長さは、スポイラの前縁から後縁までの長さの5~20%が適当であることが見出されている。
【0011】
上記のスポイラは、翼部の後縁よりも前縁に近い部位に配置されてよい。既に触れた如く、カイトの如き弾性構造からなる飛行体の場合には、空力デバイスを後縁寄りに配置すると、翼部の後側のねじり変形による空力作用の低下が生じ易くなる。また、カイトの場合、翼部は、前縁の方が厚く形成され、構造の補強がより容易であり、揚力を発生させるための荷重分布が前縁側に偏っている。これらのことから、上記の如く、スポイラを翼部の中心よりも前縁に近い部位に配置することにより、より効果的な揚力の制御が達成できることとなる。
【発明の効果】
【0012】
かくして、上記の本発明の構成によれば、カイトの左右の翼部のそれぞれの上面に、揚力制御のために設置されるスポイラに於いて、その後縁から翼部上面から立ち上がる方向に板状部を設けることにより、カイトの迎角が小さいときでも翼部上面に於いて、気流の有効な剥離作用が得られ、これにより、カイトのロール姿勢制御が効率的に達成できることとなる。本発明の作用効果は、スポイラの後縁に上記の如き板状部を設けるだけの比較的簡単な構成により得られる点でも有利である。
【0013】
本発明のその他の目的及び利点は、以下の本発明の好ましい実施形態の説明により明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(A)は、本実施形態が適用されるカイトの模式的な斜視図である。図1(B)は、カイトの翼部上面に取り付けられるスポイラの模式的な斜視図であり、図1(C)は、カイトの翼部上面に取り付けられたスポイラの模式的な側面図である。
図2図2(A)は、カイトを後方からみた模式図であり、スポイラにより生ずるローリングモーメントを説明する図である。図2(B)は、カイトの模式的な側面図であり、風向きWに対する迎角αを説明する図である。
図3図3(A)は、翼部に平板状のスポイラが設けられたカイトに於けるスポイラ角に対するロールモーメント係数の変化を示すグラフ図である。図中の数値は、カイトの迎角を表わしている。図3(B)は、平板状のスポイラが取り付けられた翼部に於ける気流afを模式的に表わした図である。図3(C)は、翼部に本実施形態によるスポイラが設けられたカイトに於けるスポイラ角に対するロールモーメント係数の変化を示すグラフ図である。図中の数値は、カイトの迎角を表わしている。図3(D)は、本実施形態によるスポイラが取り付けられた翼部に於ける気流afを模式的に表わした図である。
【符号の説明】
【0015】
1…カイト
1L、1R…左翼部、右翼部
1a…翼部上面
2、2a…テザー
3L、3R…左スポイラ、右スポイラ
3a…スポイラの平板状部分
3b…スポイラの直立板状部
4…ブライドル
W…風
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
カイトの構成
図1(A)を参照して、本実施形態の適用されるカイト1は、カイトシステムに於けるテザー2に接続されて空中に飛揚される飛行体であってよい。カイト1は、図示の如く、左右方向に延在する翼部1L、1Rを有しており、空中に於いて、風Wの力により空中に浮揚し、かかる風力と、地上又は別の飛行体との間に接続されたテザー2からの張力Tとのつり合いによって、空中に係留される。そして、カイト1の姿勢の制御は、カイト1に取り付けられたモーションセンサ(図示せず)により、姿勢角(ロール角、ヨー角、ピッチ角)、角速度、加速度を検出して、それらの検出値に基づいて、カイト1の左右翼部1L、1Rのそれぞれの上面1aに取り付けられてその周囲の気流を変化させるスポイラ3L、3Rの如き空力デバイスを適宜作動すること、或いは、テザー2に取り付けられたブライドル4により、ブライドル4からカイト1の左右の部位へ接続されているテザー2aの長さを調節することなどにより、達成されてよい。
【0017】
スポイラの構成と作用
次に、図1(B)、1(C)を参照して、本実施形態に於いて、翼部上面1aに取り付けられるスポイラ3L、3Rは、図示の如く、平板状部分3aと、その後縁3arから翼面1aから離れる方向に延在する板状部3bとを有するよう形成される。そして、スポイラ3L、3Rは、それぞれ、平板状部分3aの前縁3afが翼面1a上に枢着され、平板状部分3aが前縁3af周りに翼面1aに対して枢動するよう構成される。即ち、スポイラ3L、3Rは、翼面1aの前方fから後方rへ向かって、前縁3af周りに回動可能に、延在するよう設置される。平板状部分3aと板状部3bとの交差する角度δは、典型的には、略直角であってよいが、後に説明される気流の剥離作用が発揮可能な範囲で適宜変更されてよい。翼面1aに対するスポイラ3L、3Rの平板状部分3aの角度(スポイラ角)βは、図示していない駆動装置(ステップモータなど)により、0°以上の範囲に於いて、適宜、調節されてよい。
【0018】
カイト1に於いて、上記のスポイラ3L、3Rは、作動されると、左右の翼部3L、3Rのそれぞれの上面1aに於いて、上方へ突出することにより、翼部の前端から上面1aに沿って流れてくる気流を上面1aから剥離し、これにより、上向きの揚力を低減するよう作用する。図2(A)を参照して、例えば、カイト1に於いて、右スポイラ3Rが作動され、右翼部1Rの上面1aから上方に突出されると、上面1aの気流が剥離されることにより、右翼部1Rを上方へ引き揚げる揚力が低下することとなる。その結果、右翼部1Rに於いては、上下の揚力差から、下向きの力Fl_dが作用することとなり、これにより、左翼部1Lを持ち上げ、右翼部1Rを押し下げる方向のローリングモーメントMrが発生し、かくして、カイト1のロール姿勢が制御されることとなる。
【0019】
なお、カイト1は、典型的には、弾性的に変形し得る構造となっているので、翼部の後縁寄りにスポイラの如き空力デバイスを設けた場合、翼部の後側に於いて、ねじり変形が起き易くなり、期待する空力作用が得られなくなり得る(エルロンリバーサル等)。一方、カイトの翼部は、図示の如く、一般に、前縁の方が厚く形成され、構造の補強がより容易であり、揚力を発生させるための荷重分布が前縁側に偏っている。従って、空力デバイスの空力作用は、空力デバイスを翼部の前縁寄りに設置した方がより効果的になる。そこで、図2(B)に示されている如く、スポイラ3L、3Rは、好ましくは、カイト1の翼部の中心Cよりも前縁寄りfに設けられる。
【0020】
板状部を設けたスポイラの作用効果
カイト1は、飛行機のように推進力により飛行する飛行体と異なり、カイトの受けている風力とテザーからの張力とがほぼつり合い、上空でほぼ静止している状態にて係留される場合がある。そのような状態に於いては、速度が略0となり、カイトの姿勢に対する風の変動の影響が相対的に大きくなるので、スポイラによる空力作用(揚力の低下)は、できるだけ広範囲の姿勢条件にて、有効であることが好ましい。
【0021】
この点に関し、発明の概要の欄に於いて触れた如く、スポイラが単なる平板状であり、翼部の前縁寄りに設けられている場合(図2(B)参照)、カイト1の迎角(風向きに対するカイトの前後方向の角度)αが比較的小さいとき、スポイラの空力作用、即ち、揚力の低減作用が殆ど無くなり、迎角αが0°のときには、却って揚力が若干増大することもあることが見出された。実際、図3(A)に示されているように、カイトの迎角αが0°~20°の範囲にあるときに、右スポイラを作動させた場合のロールモーメント係数CIを測定したところ、迎角αが5°を下回ると、スポイラ角を大きくしても、ロールモーメント係数CIが然程に大きくならず、迎角αが0°であるときには、ロールモーメント係数CIが負となり、期待する作用と逆方向の作用が生ずることとなった。これは、図3(B)に模式的に描かれている如く、翼部の前方からの風Wのうち、翼部前端1fから上面1aに沿った気流afが、翼部の前端寄りにてスポイラ3L、3Rにより剥離された後、翼部後方に於いて、再付着したり(Rt)、回り込みすることで、気流の剥離効果が十分に達成されないためであると考えられる。
(ロールモーメント係数CIとは、空力的に発生するローリングモーメントMrを無次元化した量であり、以下の式で与えられる。
CI=Mr/(1/2・ρVS)
ここで、ρ、V、Sは、それぞれ、空気密度(kg/m3)、風速、翼部面積である。ロールモーメント係数CIは、その値が正側に大きいほど、スポイラにより得られるローリングモーメントが大きくなることを示している。)
【0022】
一方、本発明の発明者による研究によれば、上記の図1(B)、(C)のように、スポイラの形状として、平板状部分3aにそれと交差する方向に延在する板状部3bを備えた形状を採用した場合には、カイト1の迎角αが小さいときでも、有意な気流の剥離効果が得られることが見出された。実際、図3(C)に示されているように、カイトの迎角αが0°~20°の範囲にあるときに、右スポイラを作動させた場合のロールモーメント係数CIを測定したところ、板状部3bを備えたスポイラの場合には、カイトの迎角αが0°であっても、ロールモーメント係数CIが正側に有意な値となることが見出された。これは、図3(D)に模式的に描かれている如く、スポイラ3L、3Rの平板状部分3aに、それに交差した方向に延在する板状部3bが存在することによって、翼部の前端1fから上面1aに沿って流れてきた気流afが、スポイラ3L、3Rの上記の特徴的な形状によって乱されて、翼部後方でも、上面1aに再付着することなく、強制的に剥離された状態となるためであると考えられる。
【0023】
かくして、上記の本実施形態の如く、平板状部分3aにそれと交差する方向に延在する板状部3bを備えた形状のスポイラを用いることで、カイトの迎角が小さいときでも翼部上面に於ける気流の有効な剥離作用が得られることとなる。
【0024】
なお、翼部の風洞試験等に於けるスポイラによる揚力の低減効果と翼部の受ける抵抗とのバランスとの評価により得られた知見から、板状部3bのスポイラの後縁3arとの接続部分から末縁までの長さは、スポイラの前縁3afから後縁3arまでの長さの5~20%であってよい。
【0025】
以上の説明は、本発明の実施の形態に関連してなされているが、当業者にとって多くの修正及び変更が容易に可能であり、本発明は、上記に例示された実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の概念から逸脱することなく種々の装置に適用されることは明らかであろう。
図1
図2
図3