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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-28
(45)【発行日】2025-08-05
(54)【発明の名称】ハイブリッド車両の制御装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 10/06 20060101AFI20250729BHJP
   B60K 6/28 20071001ALI20250729BHJP
   B60K 6/445 20071001ALI20250729BHJP
   B60W 10/26 20060101ALI20250729BHJP
   B60W 20/17 20160101ALI20250729BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20250729BHJP
【FI】
B60W10/06 900
B60K6/28 ZHV
B60K6/445
B60W10/26 900
B60W20/17
F02D29/06 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022112313
(22)【出願日】2022-07-13
(65)【公開番号】P2024010803
(43)【公開日】2024-01-25
【審査請求日】2024-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川西 範貢
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-71622(JP,A)
【文献】特開2017-154688(JP,A)
【文献】特開2021-95107(JP,A)
【文献】特開平8-256403(JP,A)
【文献】国際公開第2010/005079(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00 - 20/50
B60K 6/20 - 6/547
F02D 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンからの動力の少なくとも一部を用いて発電可能な電動機と、前記電動機からの電力により充電可能なバッテリとを含むハイブリッド車両の制御装置において、
前記ハイブリッド車両の走行に要求されるパワーと、前記バッテリの目標充電電力とに基づいて前記エンジンの目標パワーを設定する目標パワー設定部と、
前記目標パワーに応じた前記エンジンの要求回転数と下限回転数との大きい方を前記エンジンの目標回転数に設定すると共に、前記目標充電電力が小さく制限され、かつ前記要求回転数が前記下限回転数未満である状態が所定時間だけ継続したときに、前記エンジンの回転数が前記所定時間内における前記要求回転数の変動範囲内の値になるように前記目標回転数を設定する目標回転数設定部と、
を備えるハイブリッド車両の制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記目標回転数設定部は、前記目標充電電力が小さく制限され、かつ前記要求回転数が前記下限回転数未満である状態が前記所定時間だけ継続したときに、前記エンジンの回転数が前記変動範囲内の前記値まで緩変化するように前記目標回転数を設定するハイブリッド車両の制御装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記目標回転数設定部は、前記目標充電電力が小さく制限され、かつ前記要求回転数が前記下限回転数未満である状態が前記所定時間だけ継続したときに、前記エンジンの回転数が前記変動範囲内の最大値になるように前記目標回転数を設定するハイブリッド車両の制御装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記目標回転数設定部は、前記エンジンが効率よく動作するように前記目標パワーに基づいて前記要求回転数を設定すると共に、前記目標充電電力が小さく制限され、かつ前記要求回転数が前記下限回転数以上であるときに、前記要求回転数を前記下限回転数に設定するハイブリッド車両の制御装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記バッテリのSOCおよび温度に基づいて前記バッテリの許容充電電力を設定すると共に、前記バッテリの充電状態に基づいて前記バッテリの充電電力制限値を設定するバッテリ管理部を更に備え、
前記バッテリ管理部は、前記許容充電電力が前記充電電力制限値未満である場合、前記充電電力制限値を前記許容充電電力に設定すると共に前記目標充電電力を小さく制限し、
前記目標回転数設定部は、前記バッテリの充電が要求されているときに、前記バッテリの温度と、前記許容充電電力と、前記充電電力制限値とに基づいて、前記目標充電電力が小さく制限されているか否かを判定するハイブリッド車両の制御装置。
【請求項6】
請求項5に記載のハイブリッド車両の制御装置において、
前記バッテリは、リチウムイオン二次電池であり、
前記充電電力制限値は、前記バッテリの負極におけるリチウムの析出が抑制されるように設定されるハイブリッド車両の制御装置。
【請求項7】
エンジンと、前記エンジンからの動力の少なくとも一部を用いて発電可能な電動機と、前記電動機からの電力により充電可能なバッテリとを含むハイブリッド車両の制御方法において、
前記ハイブリッド車両の走行に要求されるパワーと、前記バッテリの目標充電電力とに基づいて前記エンジンの目標パワーを設定し、
前記目標パワーに応じた前記エンジンの要求回転数と下限回転数との大きい方を前記エンジンの目標回転数に設定すると共に、前記目標充電電力が小さく制限されており、かつ前記要求回転数が前記下限回転数未満である状態が所定時間だけ継続したときに、前記エンジンの回転数が前記所定時間内における前記要求回転数の変動範囲内の値になるように前記目標回転数を設定するハイブリッド車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エンジンと、当該エンジンからの動力の少なくとも一部を用いて発電可能な電動機と、当該電動機により発電された電力により充電可能なバッテリとを含むハイブリッド車両の制御装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン二次電池を含むバッテリのSOCを目標値に近づけるための第1要求パワーと、ハイブリッド車両の走行に必要な第2要求パワーとの合計を車両要求パワーとして算出し、バッテリの入出力許可電力値に基づいてエンジンとモータジェネレータとの間でのパワー配分を行うハイブリッド車両の制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この制御装置は、リチウムイオン二次電池の負極におけるリチウムの析出を抑制するために、バッテリへの充放電電流の履歴に基づいて入出力許可電力値を変更すると共に、当該充放電電流の履歴に基づいて第1要求パワーを変更する。より詳細には、バッテリへの充電電流の大きさが充電閾値より小さい場合、入力許可電力値が第1標準値に設定され、バッテリへの充電電流の大きさが当該充電閾値より大きい場合、入力許可電力値が第1標準値よりも制限される。更に、バッテリへの充電電流の大きさと充電閾値との差が所定値よりも小さくなった場合、当該バッテリの充電上限値が更に制限されて第1要求パワーが充電電力として小さく設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-071622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来ハイブリッド車両においてリチウム析出のおそれがある場合、充電電流の大きさに応じて入出力許可電力値が増減すると共に第1要求パワーが変動し、それに伴って車両要求パワーも変動する。そして、車両要求パワーの変動に応じて、エンジンおよびモータジェネレータに指令されるパワーが増減するので、当該エンジンおよびモータジェネレータの回転数が短い周期で増減し、騒音や振動が顕在化するおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、エンジンからの動力を用いて発電する電動機からの電力によるバッテリの充電が制限されるときに、ハイブリッド車両で騒音や振動が顕在化するのを抑制する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のハイブリッド車両の制御装置は、エンジンと、前記エンジンからの動力の少なくとも一部を用いて発電可能な電動機と、前記電動機からの電力により充電可能なバッテリとを含むハイブリッド車両の制御装置において、前記ハイブリッド車両の走行に要求されるパワーと、前記バッテリの目標充電電力とに基づいて前記エンジンの目標パワーを設定する目標パワー設定部と、前記目標パワーに応じた前記エンジンの要求回転数と下限回転数との大きい方を前記エンジンの目標回転数に設定すると共に、前記目標充電電力が小さく制限され、かつ前記要求回転数が前記下限回転数未満である状態が所定時間だけ継続したときに、前記エンジンの回転数が前記所定時間内における前記要求回転数の変動範囲内の値になるように前記目標回転数を設定する目標回転数設定部とを含むものである。
【0007】
また、本開示のハイブリッド車両の制御方法は、エンジンと、前記エンジンからの動力の少なくとも一部を用いて発電可能な電動機と、前記電動機からの電力により充電可能なバッテリとを含むハイブリッド車両の制御方法において、前記ハイブリッド車両の走行に要求されるパワーと、前記バッテリの目標充電電力とに基づいて前記エンジンの目標パワーを設定し、前記目標パワーに応じた前記エンジンの要求回転数と下限回転数との大きい方を前記エンジンの目標回転数に設定すると共に、前記目標充電電力が小さく制限され、かつ前記要求回転数が前記下限回転数未満である状態が所定時間だけ継続したときに、前記エンジンの回転数が前記所定時間内における前記要求回転数の変動範囲内の値になるように前記目標回転数を設定するものである。
【0008】
本開示のハイブリッド車両の制御装置および方法によれば、エンジンからの動力を用いて発電する電動機からの電力によるバッテリの充電が制限されるときに、ハイブリッド車両で騒音や振動が顕在化するのを良好に抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の制御装置により制御されるハイブリッド車両を示す概略構成図である。
図2図1のハイブリッド車両のエンジンが負荷運転されるときに、本開示の制御装置により実行されるルーチンを示すフローチャートである。
図3図2のステップS50における一連の処理を示すフローチャートである。
図4】本開示の制御装置により図2のルーチンが実行される間のエンジンの目標回転数等の時間変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照しながら、本開示の発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
図1は、本開示の制御装置により制御されるハイブリッド車両(HEV)1を示す概略構成図である。同図に示すハイブリッド車両1は、エンジン2と、動力分配機構としてのシングルピニオン式のプラネタリギヤ3と、ギヤ列4と、何れも同期発電電動機(三相交流電動機)であるモータジェネレータMG1およびMG2と、バッテリ(蓄電装置)5と、当該バッテリ5に接続されると共にモータジェネレータMG1およびMG2を駆動する電力制御装置(以下、「PCU」という。)6と、車両全体を制御する本開示の制御装置としてのハイブリッド電子制御ユニット(以下、「HVECU」という。)100とを含む。
【0012】
ハイブリッド車両1のエンジン2は、複数の燃焼室における炭化水素系燃料(ガソリン)と空気との混合気の燃焼に伴うピストン(図示省略)の往復運動をクランクシャフト(出力軸)CSの回転運動へと変換する内燃機関である。ただし、エンジン2は、ガソリンエンジンに限られるものではなく、LPGエンジンであってもよく、ディーゼルエンジンであってもよい。
【0013】
かかるエンジン2は、エンジン電子制御装置(以下、「エンジンECU」という。)200により制御される。エンジンECU200は、図示しないCPU,ROM,RAM、入出力インターフェース等を有するマイクロコンピュータや、各種駆動回路、各種ロジックIC等を含む。エンジンECU200は、図示しないクランク角センサからのクランクポジションに基づいてエンジン2(クランクシャフトCS)の回転数Neを算出すると共に、図示しないエアフローメータからの吸入空気量とエンジン2の回転数Neとに基づいて負荷率KLを算出する。そして、エンジンECU200は、HVECU100からの指令信号や回転数Ne、負荷率KL等に基づいて、当該エンジン2の吸入空気量や燃料噴射量、点火時期等を制御する。
【0014】
プラネタリギヤ3は、サンギヤ3sと、リングギヤ3rと、複数のピニオンギヤ3pを回転自在に支持するプラネタリキャリヤ3cとを含む差動回転機構である。図1に示すように、サンギヤ3sは、モータジェネレータMG1のロータに連結され、プラネタリキャリヤ3cは、ダンパ機構DDを介してエンジン2のクランクシャフトCSに連結される。また、出力要素としてのリングギヤ3rは、ギヤ列4のカウンタドライブギヤ4a(出力部材)と同軸かつ一体に回転する。
【0015】
ギヤ列4は、カウンタドライブギヤ4aに加えて、カウンタドリブンギヤ4b、ファイナルドライブギヤ(ドライブピニオンギヤ)4cを含む。ファイナルドライブギヤ4cは、デファレンシャルギヤDFのデフリングギヤDrに噛合し、当該デファレンシャルギヤDFおよびドライブシャフトDSを介して左右の車輪(駆動輪)Wに連結される。これにより、プラネタリギヤ3、ギヤ列4、およびデファレンシャルギヤDFは、動力発生源としてのエンジン2の出力トルクの一部を車輪Wに伝達すると共にエンジン2とモータジェネレータMG1とを互いに連結するトランスアクスルを構成する。
【0016】
モータジェネレータMG1は、主に、負荷運転されるエンジン2により駆動されて、当該エンジン2からの動力の少なくとも一部を電力に変換する発電機として作動する。また、モータジェネレータMG2は、ドライブギヤ4d、カウンタドリブンギヤ4b、ファイナルドライブギヤ4c、デフリングギヤDrを含むデファレンシャルギヤDFおよびドライブシャフトDSを介して左右の車輪Wに連結される。かかるモータジェネレータMG2は、主に、バッテリ5からの電力およびモータジェネレータMG1からの電力の少なくとも何れか一方により駆動されてドライブシャフトDSに駆動トルクを発生する電動機として作動する。
【0017】
バッテリ5は、本実施形態において、リチウムイオン二次電池である。バッテリ5は、図示しないCPU等を有するマイクロコンピュータ等を含むバッテリ管理電子制御装置(以下、「バッテリECU」という。)500により管理される。バッテリECU500は、図示しない電圧センサにより検出されるバッテリ5の端子間電圧VBや、図示しない電流センサにより検出されるバッテリ5の充放電電流IB、図示しないバッテリ温度センサにより検出されるバッテリ5の温度Tb等を取得する。
【0018】
バッテリ管理部としてのバッテリECU500は、充放電電流IBの積算値を算出すると共に、当該積算値に基づいてバッテリ5のSOCを算出する。また、バッテリECU500は、バッテリ5のSOCと温度Tbとに基づいてバッテリ5の充電に許容される電力である許容充電電力Win(負の値)とバッテリ5の放電に許容される電力である許容放電電力Wout(正の値)とを算出する。本実施形態において、バッテリ5の許容充電電力Winは、バッテリ5の温度Tbに対応した充電ベース値にSOCに対応した補正係数を乗じることにより、温度Tbが低く、かつSOCが多いほど、充電電力として小さくなるように(絶対値が小さくなるように)設定される。また、許容放電電力Woutは、温度Tbに対応した放電ベース値にSOCに対応した補正係数を乗じることにより設定される。更に、バッテリECU500は、バッテリ5の目標充放電電力Pb*(ここでは、放電側を正とし、充電側を負とする)をSOC等に基づいて許容充電電力Winから許容放電電力Woutまでの範囲内の値になるように算出する。
【0019】
加えて、バッテリECU500は、バッテリ5の保護等を図るべく、周知の手法に従って当該バッテリ5(リチウムイオン二次電池)の負極におけるリチウムの析出を抑制するための充電電力制限値IWin(負の値)をバッテリ5の充電状態に基づいて設定する。そして、バッテリECU500は、SOCと温度Tbとに基づく許容充電電力Winが充電状態に基づく充電電力制限値IWin未満である場合、当該充電電力制限値IWinを許容充電電力Winに設定する。充電電力制限値IWinは、バッテリ5の充放電電流(充電電流)IBの絶対値が負極でリチウムを析出させない最大電流である許容充電電流の絶対値よりも大きくならないように許容充電電力Winを補正することにより算出される。また、当該許容充電電流は、充放電電流IB、温度TbおよびSOCに基づいて、充電継続時間に応じて絶対値が小さくなると共に放電継続時間に応じて絶対値が大きくなるように算出される。充電電力制限値IWinが許容充電電力Winに設定された場合、バッテリ5の目標充放電電力Pb*は、当該充電電力制限値IWin以上になるように(絶対値が小さくなるように)設定(制限)されることになる。
【0020】
PCU6は、モータジェネレータMG1を駆動する第1インバータや、モータジェネレータMG2を駆動する第2インバータ、バッテリ5からの電力を昇圧すると共にモータジェネレータMG1、MG2側からの電力を降圧することができる昇圧コンバータ等(何れも図示省略)を含む。PCU6は、図示しないCPU等を有するマイクロコンピュータ等を含むモータ電子制御装置(以下、「MGECU」という。)600により制御される。
【0021】
HVECU100は、図示しないCPU,ROM,RAM、入出力インターフェース等を有するマイクロコンピュータや、各種駆動回路、各種ロジックIC等を含む。HVECU100は、図示しない車速センサにより検出される車速V、図示しないアクセルペダルポジションセンサにより検出されるアクセルペダルの踏み込み量を示すアクセル開度Acc、図示しないシフトポジションセンサにより検出される図示しないシフトレバーのシフトポジションSP等を取得する。更に、HVECU100は、上記ECU200,500,600や、図示しない油圧ブレーキアクチュエータを制御するブレーキ電子制御装置(図示省略)等と相互に情報をやり取りし、車速Vやアクセル開度Acc、各ECU200,500,600等からの信号等に基づいてハイブリッド車両1を統括的に制御する。
【0022】
図2は、エンジン2が負荷運転される際にHVECU100により予め定められた実行周期で繰り返し実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。図2の駆動制御ルーチンの実行タイミングが到来すると、HVECU100(CPU)は、制御に必要なデータを取得する(ステップS10)。ステップS10において、HVECU100は、アクセル開度Acc、車速V、MGECU600からのモータジェネレータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2、バッテリECU500からのバッテリ5の温度Tb、目標充放電電力Pb*、許容充電電力Win、許容放電電力Woutおよび充電電力制限値IWin等を取得する。
【0023】
次いで、HVECU100は、図示しない要求トルク設定マップから、ステップS10にて取得したアクセル開度Accおよび車速Vに対応したドライブシャフトDSに出力されるべき要求トルクTr*を導出する(ステップS20)。更に、HVECU100は、要求トルクTr*やドライブシャフトDSの回転数Ndsに基づいてハイブリッド車両1の走行に要求される要求走行パワーPd*(=Tr*×Nds)を算出し、当該要求走行パワーPd*やステップS10にて取得した目標充放電電力Pb*等に基づいてエンジン2に出力させるべき目標パワーPe*(=Pd*-Pb*+損失分)を設定する(ステップS30)。
【0024】
また、HVECU100は、目標充放電電力Pb*が負の値であるか、すなわちバッテリ5の充電が要求されているか否かを判定する(ステップS40)。目標充放電電力Pb*がゼロ以上であってバッテリ5の充電が要求されていない場合(ステップS40:NO)、HVECU100は、予め定められた動作ライン(最適燃費ライン)から目標パワーPe*に対応した効率向上のためにエンジン2に要求される要求回転数Nrqを導出する(ステップS45)。更に、ステップS45において、HVECU100は、当該要求回転数Nrqと例えばハイブリッド車両1の走行状態等に応じて設定されるエンジン2の下限回転数Nlimとの大きい方をエンジン2の目標回転数Ne*に設定する。動作ラインは、エンジン2を効率よく動作させるように、いわゆる燃料消費率等高線に基づいて予め作成されたものである。また、目標充放電電力Pb*が負の値であってバッテリ5の充電が要求されている場合(ステップS40:YES)、HVECU100は、図3に示す一連の処理を実行してエンジン2の目標回転数Ne*を設定する(ステップS50)。
【0025】
ステップS40またはS50の処理の後、HVECU100は、ステップS10にて取得したバッテリ5の許容充電電力Winおよび許容放電電力Woutの範囲内で要求トルクTr*や目標回転数Ne*等に応じたモータジェネレータMG1,MG2に対するトルク指令Tm1*,Tm2*を設定する(ステップS60)。そして、HVECU100は、目標パワーPe*および目標回転数Ne*をエンジンECU200に送信すると共に、トルク指令Tm1*,Tm2*をMGECU600に送信する(ステップS70)。
【0026】
エンジンECU200は、目標回転数Ne*や、目標パワーPe*および目標回転数Ne*に応じた目標トルクTe*(=Pe*/Ne*)等に基づいてエンジン2の吸入空気量や燃料噴射量、点火時期等を制御する。これにより、エンジン2は、回転数Neが目標回転数Ne*になり、かつ目標トルクTe*に相当するトルクを出力するように制御される。また、MGECU600は、トルク指令Tm1*,Tm2*に基づいて第1および第2インバータや昇圧コンバータをスイッチング制御する。エンジン2が負荷運転される場合、モータジェネレータMG1およびMG2は、エンジン2から出力されるパワーの一部(バッテリ5の充電時)またはすべて(バッテリ5の放電時)をプラネタリギヤ3と共にトルク変換してドライブシャフトDSに出力するように制御される。
【0027】
続いて、図3および図4を参照しながら、目標充放電電力Pb*が負の値であってバッテリ5の充電が要求されているときの目標回転数Ne*の設定手順について説明する。
【0028】
図3に示すように、目標充放電電力Pb*が負の値である場合(ステップS40:YES)、HVECU100は、上述の動作ライン(最適燃費ライン)から目標パワーPe*に対応したエンジン2の要求回転数Nrqを導出する(ステップS500)。更に、HVECU100は、バッテリ管理部としてのバッテリECU500により目標充放電電力Pb*が充電電力として小さく制限されているか否かを判定する(ステップS502)。より詳細には、ステップS502において、HVECU100は、ステップS10にて取得したバッテリ5の温度Tbが所定温度T0(例えば、-10℃前後の温度)以下であり、かつステップS10にて取得した許容充電電力Winが充電電力制限値IWinにより制限されているか否かを判定する。バッテリ5の温度Tbが所定温度T0以下であり、かつ許容充電電力Winが充電電力制限値IWinに一致している場合、HVECU100は、ハイブリッド車両1がリチウム析出のおそれのある低温環境下にあってバッテリECU500により目標充放電電力Pb*が充電電力として小さく制限されていると判定し(ステップS502:YES)、充電制限フラグFchlimを“1”に設定する(ステップS504)。
【0029】
次いで、HVECU100は、フラグFが“0”であるか否かを判定し(ステップS506)、フラグFが“0”である場合(ステップS506:YES)、ステップS500にて導出した要求回転数Nrqがエンジン2の下限回転数Nlim未満であるか否かを判定する(ステップS508)。要求回転数Nrqが下限回転数Nlim以上である場合(ステップS508:NO)、HVECU100は、ステップS500にて導出した要求回転数Nrqをエンジン2の下限回転数Nlimに設定する(ステップS509)。更に、HVECU100は、ステップS500にて導出した要求回転数Nrqと、ステップS509にて設定した下限回転数Nlimとの大きい方をエンジン2の目標回転数Ne*に設定し(ステップS520)、上記ステップS60以降の処理を実行する。ステップS509にて要求回転数Nrqが下限回転数Nlimに設定された場合、当該要求回転数Nrqがエンジン2の目標回転数Ne*に設定されることになる。
【0030】
これに対して、ステップS500にて導出した要求回転数Nrqが下限回転数Nlim未満である場合(ステップS508:YES)、HVECU100は、カウンタCをインクリメントした上で(ステップS510)、当該カウンタCが予め定められた閾値Cref以上であるか否かを判定する(ステップS512)。カウンタCは、ステップS508にて要求回転数Nrqが下限回転数Nlim未満であると判定されてからの経過時間を示すものである。また、ステップS512にて用いられる閾値Crefは、例えば1-5秒の範囲から選択される時間tref(所定時間)を図2のルーチンの実行周期で除して得られる整数である。
【0031】
カウンタCが閾値Cref未満であって要求回転数Nrqが下限回転数Nlim未満になってから時間trefが経過していない場合(ステップS512:NO)、HVECU100は、ステップS500にて導出される要求回転数Nrqのピーク値であるピーク回転数NpをRAMに記憶させる(ステップS513)。すなわち、ステップS513において、HVECU100は、ステップS500にて導出された要求回転数Nrqが図2のルーチンの前回実行時における前回値以上である場合、当該要求回転数Nrqをピーク回転数NpとしてRAMに記憶させる。また、ステップS513において、HVECU100は、ステップS500にて導出された要求回転数Nrqが前回値未満である場合、ピーク回転数Npを当該前回値に保持する。更に、HVECU100は、下限回転数Nlimを図2のルーチンの前回実行時における前回値に保持(設定)した上で(ステップS515)、ステップS500にて導出した要求回転数Nrqと、ステップS515にて保持した下限回転数Nlimとの大きい方をエンジン2の目標回転数Ne*に設定し(ステップS520)、上記ステップS60以降の処理を実行する。
【0032】
また、カウンタCが閾値Cref以上であって要求回転数Nrqが下限回転数Nlim未満になってから時間trefが経過した場合(ステップS512:YES)、HVECU100は、フラグFを“1”に設定すると共にカウンタCをリセットし(ステップS514)、下限回転数NlimがステップS513にて記憶(取得)されたピーク回転数Npを上回っているか否かを判定する(ステップS516)。下限回転数Nlimがピーク回転数Npを上回っている場合(ステップS516:YES)、HVECU100は、図2のルーチンの前回実行時における下限回転数Nlimから予め適合されたレート値ΔNを減じた値を今回の下限回転数Nlimに設定する(ステップS518)。更に、HVECU100は、ステップS500にて導出した要求回転数Nrqと、ステップS518にて設定した下限回転数Nlimとの大きい方をエンジン2の目標回転数Ne*に設定し(ステップS520)、上記ステップS60以降の処理を実行する。
【0033】
ステップS514にてフラグFが“1”に設定された後、図2のルーチンが実行されると、ステップS506にて否定判定がなされ、ステップS516以降の処理が実行される。これにより、下限回転数Nlimは、徐々に低下するように設定されていく。また、下限回転数Nlimがピーク回転数Np以下になると(ステップS516:NO)、HVECU100は、フラグFを“0”に設定すると共に、当該ピーク回転数Npを下限回転数Nlimに設定する(ステップS519)。この場合も、HVECU100は、ステップS500にて導出した要求回転数Nrqと、ステップS519にて設定した下限回転数Nlimとの大きい方をエンジン2の目標回転数Ne*に設定し(ステップS520)、上記ステップS60以降の処理を実行する。
【0034】
一方、ステップS10にて取得したバッテリ5の温度Tbが所定温度T0を上回っているか、あるいはステップS10にて取得した許容充電電力Winが充電電力制限値IWinよりも大きい場合(ステップS502:NO)、HVECU100は、充電制限フラグFchlimを“0”に設定すると共に(ステップS503)、ハイブリッド車両1の走行状態等に応じた値をエンジン2の下限回転数Nlimに設定する(ステップS505)。ステップS505において、HVECU100は、下限回転数Nlimがハイブリッド車両1の走行状態等に応じた値に一致していない場合、予め適合されたレート値を用いて下限回転数Nlimをハイブリッド車両1の走行状態等に応じた値まで緩変化させる。そして、HVECU100は、ステップS500にて導出した要求回転数Nrqと、ステップS505にて設定した下限回転数Nlimとの大きい方をエンジン2の目標回転数Ne*に設定し(ステップS520)、上記ステップS60以降の処理を実行する。
【0035】
上述のような図2の駆動制御ルーチンすなわち図3に示すステップS50における一連の処理が実行される結果、ハイブリッド車両1では、当該ハイブリッド車両1の走行に要求される要求走行パワーPd*と、バッテリ5の目標充放電電力Pb*とに基づいてエンジン2の目標パワーPe*が設定される(ステップS30)。更に、当該目標パワーPe*に応じたエンジン2の要求回転数Nrqと下限回転数Nlimとの大きい方がエンジン2の目標回転数Ne*に設定される(ステップS45,S50)。また、低温環境下で目標充放電電力Pb*が充電電力として小さく制限されており(ステップS502:YES)、かつ目標パワーPe*に応じた要求回転数Nrqがエンジン2の下限回転数Nlim以上である場合(ステップS508:NO)、当該要求回転数Nrqが下限回転数Nlimに設定される(ステップS509)。ステップS509にて要求回転数Nrqが下限回転数Nlimに設定された場合、当該要求回転数Nrqがエンジン2の目標回転数Ne*に設定されることになる(図4における時刻t0からt1まで、および時刻t6からt7まで参照)。
【0036】
更に、低温環境下で目標充放電電力Pb*が充電電力として小さく制限されており(ステップS502:YES)、かつ目標パワーPe*に応じた要求回転数Nrqが下限回転数Nlim未満である場合(ステップS508:YES)、要求回転数Nrqが下限回転数Nlim未満になってから時間tref(所定時間)が経過するまで(ステップS512:NO)、当該下限回転数Nlimが保持される(ステップS515)。ステップS515にて下限回転数Nlimが保持される間、当該下限回転数Nlimがエンジン2の目標回転数Ne*に設定されることになる(図4における時刻t1からt2まで、時刻t3からt4、時刻t5からt6まで参照)。
【0037】
また、低温環境下で目標充放電電力Pb*が充電電力として小さく制限されており(ステップS502:YES)、かつ要求回転数Nrqが下限回転数Nlim未満になってから時間tref(所定時間)が経過した場合(ステップS512:YES)、下限回転数Nlimが当該時間tref内における要求回転数Nrqの変動範囲内の値であるピーク回転数Npまでレート値ΔNに従って緩変化するように設定される(ステップS518,S519)。ステップS518,S519にて下限回転数Nlimが設定される間に要求回転数Nrqが低く推移した場合、ステップS518またはS519にて設定された下限回転数Nlimがエンジン2の目標回転数Ne*に設定されることになる(図4における時刻t2からt3まで、および時刻t4からt5まで参照)。
【0038】
すなわち、ハイブリッド車両1のHVECU100は、低温環境下で目標充放電電力Pb*が充電電力として小さく制限され、かつ要求回転数Nrqが下限回転数Nlim未満である状態が時間trefだけ継続したときに(ステップS512:YES)、エンジン2の回転数Neが当該時間tref内における要求回転数Nrqの変動範囲内のピーク回転数Npになるように目標回転数Ne*を設定する(ステップS518-S520)。これにより、低温環境下でリチウムの析出を抑制してバッテリ5の保護等を図るために目標充放電電力Pb*が充電電力として小さく(絶対値が小さく)制限されてエンジン2の目標パワーPe*が小さくなったときに、エンジン2の回転数Neの高止まりや、当該回転数Neの短周期での増減を抑えることができる。この結果、低温環境下でエンジン2からの動力を用いて発電するモータジェネレータMG1からの電力によるバッテリ5の充電が制限されるときに、ハイブリッド車両1で騒音や振動が顕在化するのを良好に抑制することが可能となる。
【0039】
また、HVECU100は、低温環境下で目標充放電電力Pb*が充電電力として小さく制限され(S502:YES)、かつ要求回転数Nrqが下限回転数Nlim未満である状態が時間trefだけ継続したときに(ステップS512:YES)、エンジン2の回転数Neが当該時間tref内における要求回転数Nrqの変動範囲内のピーク回転数Npまで緩変化するように目標回転数Ne*を設定する(ステップS518-S520)。これにより、エンジン2の回転数の変動によりハイブリッド車両1の乗員に違和感を与えるのを良好に抑制することが可能となる。
【0040】
更に、上記実施形態において、ピーク回転数Npは、時間tref内における要求回転数Nrqの変動範囲内の最大値(最大回転数)、より詳細には、当該変動範囲内で生じた極値の最大値である。これにより、下限回転数Nlimの変更に伴うエンジン2の回転数Neの変動幅が大きくなるのを抑制して騒音や振動の顕在化を良好に抑制することが可能となる。ただし、ステップS518-S520では、下限回転数Nlim(目標回転数Ne*)が例えば時間tref内における要求回転数Nrqの平均値といった上記変動範囲内のピーク回転数Np以外の値まで緩変化するように設定されてもよい。
【0041】
また、HVECU100は、エンジン2が効率よく動作するように目標パワーPe*に基づいて要求回転数Nrqを設定すると共に(ステップS500)、低温環境下で目標充放電電力Pb*が充電電力として小さく制限され(ステップS502:YES)、かつ要求回転数Nrqが下限回転数Nlim以上であるときに、要求回転数Nrqを下限回転数Nlimに設定する(ステップS509)。これにより、低温環境下でバッテリ5の保護等を図るために目標充放電電力Pb*が充電電力として小さく制限されるときに、目標回転数Ne*が必要以上に制限されないようにしてエンジン2の効率低下を抑制することが可能となる。
【0042】
更に、HVECU100は、目標充放電電力Pb*が負の値であってバッテリ5の充電が要求されているときに(ステップS40:YES)、バッテリ5の温度Tbと、SOCと温度Tbとに基づく許容充電電力Winと、充電状態に基づく充電電力制限値IWinとに基づいて、目標充放電電力Pb*が充電電力として小さく制限されているか否かを判定する(ステップS502)。これにより、低温環境下で目標充放電電力Pb*が充電電力として小さく制限されているか否かを適正に判定することが可能となる。
【0043】
また、ハイブリッド車両1において、充電電力制限値IWinは、バッテリ5の負極におけるリチウムの析出が抑制されるように設定される。かかるバッテリ5を含むハイブリッド車両1にHVECU100を適用することで、当該ハイブリッド車両1における騒音や振動の顕在化を抑えつつ、充電の継続による劣化に起因したリチウムの析出を良好に抑制してバッテリ5を良好に保護することが可能となる。ただし、バッテリ5は、リチウムイオン二次電池以外のニッケル水素二次電池等であってもよい。バッテリ5がリチウムイオン二次電池以外の二次電池である場合には、ステップS502にて、充電電力制限値IWin以外の要件により目標充放電電力Pb*が充電電力として小さく制限されているか否かが判定されてもよい。
【0044】
更に、図3のステップS518およびS505において、下限回転数Nlimは、レート値ΔN等を用いたレート処理以外の緩変化処理によって緩変化させられてもよい。また、図2および図3の処理を実行するHVECU100が、モータジェネレータMG1,MG2およびプラネタリギヤ3を含む上記ハイブリッド車両1以外のハイブリッド車両に適用され得ることはいうまでもない。すなわち、HVECU100が適用されるハイブリッド車両は、エンジンのクランクシャフトに機械的に連結される電動機(モータジェネレータ)を含むものであれば、1モータ式あるいはプラネタリギヤ3を含まない2モータ式のハイブリッド車両であってもよく、シリーズ式のハイブリッド車両であってもよい。更に、ハイブリッド車両1において、プラネタリギヤ3の出力要素であるリングギヤ3rとデファレンシャルギヤDFとの間に、ギヤ列4の代わりに有段変速機が介設されてもよい。また、HVECU100等が適用されるハイブリッド車両は、プラグインハイブリッド車両(PHEV)であってもよい。
【0045】
以上説明したように、本開示のハイブリッド車両の制御装置は、エンジン(2)と、前記エンジン(2)からの動力の少なくとも一部を用いて発電可能な電動機(MG1)と、前記電動機(MG1)からの電力により充電可能なバッテリ(5)とを含むハイブリッド車両(1)の制御装置(100)において、前記ハイブリッド車両(1)の走行に要求されるパワー(Pd*)と、前記バッテリ(5)の目標充電電力(Pb*)とに基づいて前記エンジン(2)の目標パワー(Pe*)を設定する目標パワー設定部(S30)と、前記目標パワー(Pe*)に応じた前記エンジン(2)の要求回転数(Nrq)と下限回転数(Nlim)との大きい方を前記エンジン(2)の目標回転数(Ne*)に設定する(S45,S50,S500)と共に、前記目標充電電力(Pb*)が小さく制限され(S502:YES)、かつ前記要求回転数(Nrq)が前記下限回転数(Nlim)未満である状態が所定時間(tref)だけ継続したときに(S508:YES,S512:YES)、前記エンジン(2)の回転数(Ne)が前記所定時間(tref)内における前記要求回転数(Nrq)の変動範囲内の値(Np)になるように前記目標回転数(Ne*)を設定する目標回転数設定部(S50,S500-S520)とを含むものである。
【0046】
本開示のハイブリッド車両の制御装置は、ハイブリッド車両の走行に要求されるパワーと、バッテリの目標充電電力とに基づいてエンジンの目標パワーを設定し、当該目標パワーに応じたエンジンの要求回転数と下限回転数との大きい方を当該エンジンの目標回転数に設定する。更に、当該制御装置は、目標充電電力が小さく制限され、かつ要求回転数が下限回転数未満である状態が所定時間だけ継続したときに、エンジンの回転数が所定時間内における要求回転数の変動範囲内の値になるように目標回転数を設定する。これにより、バッテリの保護等を図るために目標充電電力が充電電力として小さく制限されて(絶対値が小さくなって)エンジンの目標パワーが小さくなったときに、エンジンの回転数の高止まりや、当該回転数の短周期での増減を抑えることができる。この結果、本開示のハイブリッド車両の制御装置によれば、エンジンからの動力を用いて発電する電動機からの電力によるバッテリの充電が制限されるときに、ハイブリッド車両で騒音や振動が顕在化するのを良好に抑制することが可能となる。
【0047】
また、前記目標回転数設定部(S50)は、前記目標充電電力(Pb*)が小さく制限され(S502:YES)、かつ前記要求回転数(Nrq)が前記下限回転数(Nlim)未満である状態が前記所定時間(tref)だけ継続したときに(S508:YES,S512:YES)、前記エンジン(2)の回転数(Ne)が前記変動範囲内の前記値(Np)まで緩変化するように前記目標回転数(Ne*)を設定する(S518-S20)ものであってもよい。
【0048】
これにより、エンジンの回転数の変動によりハイブリッド車両の乗員に違和感を与えるのを抑制することが可能となる。
【0049】
更に、前記目標回転数設定部(S50)は、前記目標充電電力(Pb*)が小さく制限され(S502:YES)、かつ前記要求回転数(Nrq)が前記下限回転数(Nlim)未満である状態が前記所定時間(tref)だけ継続したときに(S508:YES,S512:YES)、前記エンジン(2)の回転数(Ne)が前記変動範囲内の最大値(Np)になるように前記目標回転数(Ne*)を設定する(S518-S20)ものであってもよい。
【0050】
これにより、下限回転数の変更に伴うエンジンの回転数の変動幅が大きくなるのを抑制して騒音や振動の顕在化を良好に抑制することが可能となる。
【0051】
また、前記目標回転数設定部(S50)は、前記エンジン(2)が効率よく動作するように前記目標パワー(Pe*)に基づいて前記要求回転数(Nrq)を設定すると共に(S500)、前記目標充電電力(Pb*)が小さく制限され(S502:YES)、かつ前記要求回転数(Nrq)が前記下限回転数(Nlim)以上であるときに(S508:NO)、前記要求回転数(Nrq)を前記下限回転数(Nlim)に設定するものであってもよい。
【0052】
これにより、バッテリの保護等を図るために目標充電電力が充電電力として小さく制限されるときに、目標回転数が必要以上に制限されないようにしてエンジンの効率低下を抑制することが可能となる。
【0053】
更に、前記制御装置は、前記バッテリ(5)のSOCおよび温度(Tb)に基づいて前記バッテリ(5)の許容充電電力(Win)を設定すると共に、前記バッテリ(5)の充電状態に基づいて前記バッテリ(5)の充電電力制限値(IWin)を設定するバッテリ管理部(500)を含むものであってもよく、前記バッテリ管理部(500)は、前記許容充電電力(Win)が前記充電電力制限値(IWin)未満である場合、前記充電電力制限値(IWin)を前記許容充電電力(Win)に設定すると共に前記目標充電電力(Pb*)を小さく制限するものであってもよく、前記目標回転数設定部(S50)は、前記バッテリ(5)の充電が要求されているときに、前記バッテリ(5)の温度(Tb)と、前記許容充電電力(Win)と、前記充電電力制限値(IWin)とに基づいて、前記目標充電電力(Pb*)が小さく制限されているか否かを判定する(ステップS502)ものであってもよい。
【0054】
これにより、低温環境下で目標充電電力が小さく制限されているか否かを適正に判定することが可能となる。
【0055】
また、前記バッテリ(5)は、リチウムイオン二次電池であってもよく、前記充電電力制限値(IWin)は、前記バッテリ(5)の負極におけるリチウムの析出が抑制されるように設定されてもよい。かかるバッテリを含むハイブリッド車両に本開示の制御装置を適用することで、当該ハイブリッド車両における騒音や振動の顕在化を抑えつつ、充電の継続による劣化に起因したリチウムの析出を抑制してバッテリを良好に保護することが可能となる。ただし、本開示の制御装置は、例えばニッケ水素二次電池といったリチウムイオン二次電池以外のバッテリを含むハイブリッド車両に適用されてもよい。
【0056】
本開示のハイブリッド車両の制御方法は、エンジン(2)と、前記エンジン(2)からの動力の少なくとも一部を用いて発電可能な電動機(MG1)と、前記電動機(MG1)からの電力により充電可能なバッテリ(5)とを含むハイブリッド車両(1)の制御方法において、前記ハイブリッド車両(1)の走行に要求されるパワー(Pd*)と、前記バッテリ(5)の目標充電電力(Pb*)とに基づいて前記エンジン(2)の目標パワー(Pe*)を設定し、前記目標パワー(Pe*)に応じた前記エンジン(2)の要求回転数(Nrq)と下限回転数(Nlim)との大きい方を前記エンジン(2)の目標回転数(Ne*)に設定する(S45,S50,S500)と共に、前記目標充電電力(Pb*)が小さく制限され(S502:YES)、かつ前記要求回転数(Nrq)が前記下限回転数(Nlim)未満である状態が所定時間(tref)だけ継続したときに(S508:YES,S512:YES)、前記エンジン(2)の回転数(Ne)が前記所定時間(tref)内における前記要求回転数(Nrq)の変動範囲内の値(Np)になるように前記目標回転数(Ne*)を設定するものである。
【0057】
かかる方法によれば、低温環境下でバッテリの充電が制限されるときに、ハイブリッド車両で騒音や振動が顕在化するのを良好に抑制することが可能となる。
【0058】
そして、本開示の発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本開示の外延の範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。更に、上記実施形態は、あくまで発明の概要の欄に記載された発明の具体的な一形態に過ぎず、発明の概要の欄に記載された発明の要素を限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本開示の発明は、ハイブリッド車両の製造産業等において利用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 ハイブリッド車両、2 エンジン、3 プラネタリギヤ、4 ギヤ列、5 バッテリ、6 電力制御装置(PCU)、100 ハイブリッド電子制御ユニット(HVECU)、MG1,MG2 モータジェネレータ。
図1
図2
図3
図4