(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-28
(45)【発行日】2025-08-05
(54)【発明の名称】電池パックの排気構造
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20250729BHJP
B60K 11/06 20060101ALI20250729BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20250729BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60K11/06
B62D25/20 G
(21)【出願番号】P 2022133182
(22)【出願日】2022-08-24
【審査請求日】2024-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白河 雅啓
【審査官】熊谷 健治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-098703(JP,A)
【文献】特開2016-128289(JP,A)
【文献】特開2016-113038(JP,A)
【文献】特開2008-260405(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0162901(US,A1)
【文献】特開2015-048009(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00-6/12
B60K 7/00-8/00
B60K 11/00-15/10
B60K 16/00
B62D 17/00-25/08
B62D 25/14-29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアパネルの上に搭載され、内部を通過した冷却風を排出する排気口を有する電池パックと、
前記車両の車室内の空調を行う空調装置と、
前記排気口と前記空調装置とを連通させる冷却風通路と、
を備え、
前記冷却風通路は、前記フロアパネルの上に敷かれるフロアカーペットと、前記フロアパネルとの間に形成されて
おり、
前記冷却風通路は、前記フロアカーペットに対して車両下方に凹むように形成された前記フロアパネルを利用して形成されている
電池パックの排気構造。
【請求項2】
前記空調装置は、前記電池パックに対して車両前方側に位置し、
前記排気口は、前記車両の運転席及び助手席より下方かつ車両幅方向における前記運転席と前記助手席との間に設けられ、前記車両前方側に向けて前記冷却風を排出し、
前記冷却風通路は、車両前後方向に沿って延びるように形成されている
請求項1に記載の電池パックの排気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池パックの排気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、バッテリの冷却構造を開示している。この冷却構造では、バッテリパックを冷却した冷却風は、排気通路によりエアコンディショナに導かれる。当該排気通路は、車両の運転席と助手席との間に配置されたセンターコンソールボックスにより構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1によれば、電池パックを通過した冷却風は、センターコンソールボックスを通過する。その結果、センターコンソールボックスの内部又は周囲に配置された部品(例えば、カップホルダー又はシフトレバー)が冷却風によって温められる。その結果、車両の搭乗者に不快感を与える可能性がある。
【0005】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたものであり、車両の搭乗者に不快感を与えにくくしつつ電池パックを通過した冷却風を車室内に戻せるようにした電池パックの排気構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る電池パックの排気構造は、電池パックと、空調装置と、冷却風通路と、を備える。電池パックは、車両のフロアパネルの上に搭載されており、内部を通過した冷却風を排出する排気口を有する。空調装置は、車両の車室内の空調を行う。冷却風通路は、排気口と空調装置とを連通させる。冷却風通路は、フロアパネルの上に敷かれるフロアカーペットと、フロアパネルとの間に形成されている。
【0007】
冷却風通路は、フロアパネルに対して車両上方に膨らむように形成されたフロアカーペットを利用して形成されてもよい。
【0008】
冷却風通路は、フロアカーペットに対して車両下方に凹むように形成されたフロアパネルを利用して形成されてもよい。
【0009】
空調装置は、電池パックに対して車両前方側に位置してもよい。排気口は、車両の運転席及び助手席より下方かつ車両幅方向における運転席と助手席との間に設けられ、車両前方側に向けて冷却風を排出してもよい。そして、冷却風通路は、車両前後方向に沿って延びるように形成されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る電池パックの排気構造によれば、フロアパネルとフロアカーペットとの間に形成された冷却風通路を利用して、排気口からの冷却風(すなわち、電池パックを冷却した後の温風)を空調装置に導くことができる。そして、冷却風通路は、フロアカーペットによって搭乗者の乗車空間と隔てられている。このため、電池パックからの冷却風が搭乗者に不快感を与えることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態に係る電池パックの排気構造が適用された車両の車室内を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示す電池パックの構成の一例を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示す車室内を車両上方から見下ろした図である。
【
図7】実施の形態の変形例に係る冷却風通路を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本開示の実施の形態について説明する。なお、各図において共通する要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略又は簡略する。
【0013】
1.電池パックの排気構造
図1は、実施の形態に係る電池パックの排気構造が適用された車両1の車室内を示す斜視図である。
【0014】
車室内には、前部座席としての運転席2と助手席3とが車両幅方向D1に並んで設けられている。運転席2及び助手席3は、それぞれ、フロアパネル4に固定されている。フロアパネル4の表面には、フロアカーペット5が敷かれている。
【0015】
車両1は、電池パック10を備える。車両1は、電池パック10から供給される電力を利用して走行する電動車であり、例えばハイブリッド車(HEV)又はバッテリ電気自動車(BEV)である。電池パック10は、運転席2及び助手席3の下方において、フロアパネル4の上に搭載されている。より詳細には、電池パック10は、フロアパネル4に固定されることにより、又は当該フロアパネル4に締結若しくは溶接等により接合される部材に固定されることにより、当該フロアパネル4の上に搭載されている。電池パック10は、フロアカーペット5によって覆われている。
【0016】
付け加えると、電池パック10は、略直方体形状に形成されている。
図1に示すように、一例として、電池パック10は、電池パック10の長手方向が車両幅方向D1と平行となるように配置されている。
【0017】
図2は、
図1に示す電池パック10の構成の一例を示す斜視図である。電池パック10は、電池パック本体11と、吸気口12を含む吸気ベゼル13と、吸気ダクト14と、冷却ファン15と、排気口16と、を含む。電池パック本体11には、積層された複数の電池セル17(
図4参照)が収容されている。
【0018】
吸気口12は、車室内の空気(冷却風)を取り込むために設けられている。吸気口12は、一例として、車両幅方向D1における電池パック10の一端に設けられている。吸気ダクト14は、吸気口12によって取り込まれた冷却風を冷却ファン15に導く。冷却ファン15は、例えば電動式であり、吸気ダクト14からの冷却風を電池パック本体11内に供給する。電池パック本体11には、各電池セル17の周囲に冷却風の内部通路が形成されている。
【0019】
そして、排気口16は、電池パック10(電池パック本体11)の内部(内部通路)を通過した冷却風を排出するために設けられている。一例として、排気口16は、電池パック10の筐体の上部に設けられている。なお、
図2に示す例では、冷却ファン15は、電池パック本体11の上流側に配置されている。しかしながら、電池パック10が備える冷却ファンは、電池パック本体11の下流側(すなわち、排気口16の側)に配置されてもよい。
【0020】
また、車両1は、車室内の空調を行う空調装置20を備える。空調装置20は、インストルメントパネル6内に収容されている。より詳細には、空調装置20は、少なくとも、車室内に冷気を供給する冷房運転を実行可能に構成されている。空調装置20は、車室内の空気を空調装置20内に導入するための内気口と、外気口と、選択された内気口又は外気口から空気を取り込むファンと、を含む。内気口は、例えば、助手席3の前方、又は助手席3と運転席2との間(すなわち、車両幅方向D1の中央)に配置される。
【0021】
さらに、車両1は、冷却風通路30を備える。冷却風通路30は、電池パック10の排気口16と空調装置20(の内気口)とを連通させる通路として形成されている。以下、
図1とともに
図3~
図6を追加的に参照して、冷却風通路30及びその周囲の具体的な構成が説明される。
図3は、
図1に示す車室内を車両上方から見下ろした図である。
図4は、
図3中のA-A線断面図である。
図5は、
図3中のB-B線断面図である。
図6は、
図3中のC-C線断面図である。なお、
図3では、フロアカーペット5の図示は省略されている。
【0022】
各図に示すように、冷却風通路30は、フロアカーペット5と、フロアパネル4との間に形成されている。すなわち、フロアカーペット5とフロアパネル4との間に存在する空間が冷却風通路30として機能する。より詳細には、冷却風通路30の一端(上流端)は、電池パック10の排気口16である。冷却風通路30の他端(下流端)は、空調装置20の内気口である。
【0023】
図6に示すように、車両幅方向D1における運転席2と助手席3との間の位置において、フロアカーペット5は、フロアパネル4に対して車両上方に膨らむように形成されている。このように形成されたフロアカーペット5を利用して、冷却風通路30が形成されている。
【0024】
より詳細には、
図3等に示すように、空調装置20は、電池パック10に対して車両前方側に位置している。排気口16は、車両の運転席2及び助手席3より下方かつ車両幅方向D1における運転席2と助手席3との間に設けられている。排気口16は、車両前方側に向けて冷却風を排出する。そして、冷却風通路30は、車両前後方向D2に沿って延びるように形成されている。すなわち、冷却風通路30は、排気口16から排出された冷却風が車両前方側に向けて流れるように形成されている。なお、冷却風通路30の上方には、フロアカーペット5を介してセンターコンソールボックスが配置されていてもよい。
【0025】
上述した本実施形態に係る車室内の構造によれば、冷却ファン15が駆動されると、車室内の空気(冷却風)が吸気口12から吸気ダクト14内に取り込まれる。吸気ダクト14内に取り込まれた冷却風は、冷却ファン15を通過して電池パック本体11内に供給される。そして、電池パック本体11内に供給された冷却風は、各電池セル17の周囲を流れて各電池セル17を冷却した後、排気口16から電池パック10の外に排出される。
【0026】
排気口16から排出された冷却風は、フロアカーペット5とフロアパネル4との間に形成された冷却風通路30を通って車両前方側に向けて流れる。そして、冷却風通路30を通過した冷却風は、インストルメントパネル6内の空間に導かれる。その結果、空調装置20が作動している場合には、冷却風は、吸気口から空調装置20の内部に取り込まれる。これにより、冷却風は、空調装置20によって冷却され、その後、再び車室内に戻される。
【0027】
2.効果
以上説明したように、本実施形態に係る電池パック10の排気構造によれば、フロアパネル4とフロアカーペット5との間に形成された冷却風通路30を利用して、排気口16からの冷却風(すなわち、電池パック10を冷却した後の温風)を空調装置20に導くことができる。そして、冷却風通路30は、フロアカーペット5によって搭乗者の乗車空間7と隔てられている。このため、電池パック10からの冷却風(温風)が搭乗者に不快感を与えることを抑制できる。
【0028】
付け加えると、本実施形態の排気構造は、冷却風の排気のためにセンターコンソールボックスを利用しない。このため、当該排気構造は、搭乗者の前席側から後席側への移動を容易とするためにセンターコンソールボックスを有しないウォークスルー構造を採用する車両に対しても適用可能である。また、当該排気構造によれば、冷却風通路30の上方にセンターコンソールボックスが配置されている場合であっても、冷却風通路30とセンターコンソールボックスとの間にはフロアカーペット5が介在している。このため、排気口16から排出された冷却風によってセンターコンソールボックスの内部又は周囲に配置された部品(例えば、カップホルダー又はシフトレバー)が温められることが抑制される。このため、センターコンソールボックスの内部又は周囲の部品が温められることが原因で搭乗者に不快感を与えることを抑制できる。
【0029】
3.変形例
図7は、実施の形態の変形例に係る冷却風通路40を説明するための図である。
図7は、
図6に示すC-C断面と同様の位置での断面を示している。
【0030】
図7に示すように、この変形例では、車両幅方向D1における運転席2と助手席3との間の位置において、フロアパネル8は、フロアカーペット9に対して車両下方に凹むように形成されている。このように形成されたフロアパネル8を利用して、冷却風通路40が形成されている。
【0031】
上述した変形例によっても、冷却風通路40は、フロアカーペット9によって搭乗者の乗車空間7と隔てられている。このため、当該変形例によっても、電池パック10からの冷却風(温風)が搭乗者に不快感を与えることを抑制できる。
【0032】
付け加えると、
図6に示す構成と
図7に示す構成とが組み合わされてもよい。すなわち、本開示に係る「冷却風通路」を形成するために、フロアパネルに対して車両上方に膨らむようにフロアカーペットを形成しつつ、フロアカーペットに対して車両下方に凹むようにフロアパネルが形成されてもよい。
【符号の説明】
【0033】
1 車両
2 運転席
3 助手席
4、8 フロアパネル
5、9 フロアカーペット
6 インストルメントパネル
7 乗車空間
10 電池パック
15 冷却ファン
16 電池パックの排気口
20 空調装置
30、40 冷却風通路