(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-28
(45)【発行日】2025-08-05
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/34 20060101AFI20250729BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250729BHJP
H02M 3/157 20060101ALI20250729BHJP
H02M 3/155 20060101ALI20250729BHJP
【FI】
H02J7/34 B
H02J7/00 P
H02M3/157
H02M3/155 C
H02M3/155 H
(21)【出願番号】P 2022134902
(22)【出願日】2022-08-26
【審査請求日】2024-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西 航平
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-131772(JP,A)
【文献】特開2010-068611(JP,A)
【文献】特開2016-052242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 -10/48
H02M 3/157
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回生電力を発生可能な負荷への電力供給を制御する電源システムであって、
第1バッテリと、
複数のスイッチング素子によって昇降圧動作が可能に構成され、前記第1バッテリの電力を前記負荷の動作電圧に変換して前記負荷に供給する双方向DCDCコンバータと、
前記負荷に接続され、前記第1バッテリの失陥時に前記負荷に電力を供給する第2バッテリと、
前記双方向DCDCコンバータの動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記第1バッテリから前記負荷への電力供給状態において前記負荷による回生電力の発生を検出した場合、前記双方向DCDCコンバータ
を構成する前記複数のスイッチング素子のうち、前記負荷から前記第1バッテリに向けて整流する寄生ダイオードを有する降圧用上アームスイッチング素子と昇圧用下アームスイッチング素子とをハードウェアによって
オフ動作させて、前記負荷の回生電力が前記第1バッテリへ供給されるように制御する、電源システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前
記複数のスイッチング素子のオン/オフ動作を、所定のプログラムに従ってソフトウェア制御する第1制御部と、
前記複数のスイッチング素子のオン/オフ動作を、所定の電気回路を介してハードウェア制御する第2制御部と、を備え、
前記第1バッテリから前記負荷への電力供給状態において前記負荷による回生電力の発生を検出した場合、前記第2制御部の前記電気回路が、前記第1制御部によってオン動作している
前記降圧用上アームスイッチング素子及び前記昇圧用下アームスイッチング素子をオフ動作にラッチさせる、請求項1に記載の電源システム。
【請求項3】
前記第2制御部は、前記第2バッテリの電圧が所定の閾値を超えた場合、前記
降圧用上アームスイッチング素子及び前記昇圧用下アームスイッチング素子をオフ動作にラッチさせる、請求項2に記載の電源システム。
【請求項4】
前記第1制御部は、前記第2バッテリの電圧が前記所定の閾値を超えた状態が所定の時間継続している場合、前記第2制御部の前記電気回路を遮断して前記降圧用上アーム
スイッチング素子をオン動作に制御する、請求項
3に記載の電源システム。
【請求項5】
前記所定の閾値は、前記第2バッテリの定格電圧である、請求項3又は4に記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に搭載される電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、電動発電機で発生する回生電力を高い電力効率で回収できる車両電源システムが開示されている。この車両電源システムでは、減速回生時に、主電源である第1バッテリを補う副電源である第2バッテリのSOCが回生許可上限値以下である場合には、第2インバータから第2電力線に供給される回生電力で第2バッテリを充電し、第2バッテリのSOCが回生許可上限値より大きい場合には、第2バッテリの充電を禁止すると共に、回生電力の少なくとも一部を電力変換器と第1電力線とを介して第1バッテリに供給(放電)する、ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の車両電源システムでは、回生電力が急激に増加したときなど過大な回生電力が生じた場合、電力変換器によるソフトウェア的な第1バッテリへの放電制御が間に合わず、第2バッテリが過充電されてしまうおそれがある。
【0005】
本開示は、上記課題を鑑みてなされたものであり、バックアップ用のサブバッテリに接続される負荷において過大な回生電力が生じた場合にサブバッテリが過充電されることを抑制することができる、電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示技術の一態様は、回生電力を発生可能な負荷への電力供給を制御する電源システムであって、第1バッテリと、第1バッテリの電力を負荷の動作電圧に変換して負荷に供給する双方向DCDCコンバータと、負荷に接続され、第1バッテリの失陥時に負荷に電力を供給する第2バッテリと、双方向DCDCコンバータの動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、負荷による回生電力の発生を検出した場合、負荷の回生電力が第1バッテリへ供給されるように双方向DCDCコンバータをハードウェアによって制御する、電源システムである。
【発明の効果】
【0007】
上記本開示の電源システムによれば、バックアップ用の第2バッテリに接続される負荷において過大な回生電力が生じた場合に、双方向DCDCコンバータをハードウェア的に制御する。これにより、ハードウェアの応答速度でメインの第1バッテリへの給電が可及的速やかに実施され、第2バッテリが過充電されることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る電源システムとその周辺部の機能ブロック図
【
図2】過電圧検出部の詳細な電気回路の一例を示す図
【
図3】制御部が実行する電力制御を説明する処理フローチャート
【
図4】通常制御時における双方向DCDCコンバータの電力の流れを説明する図
【
図5】回生電力のハードウェア制御時における双方向DCDCコンバータの電力の流れを説明する図
【
図6】回生電力のソフトウェア制御時における双方向DCDCコンバータの電力の流れを説明する図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示によるメインバッテリとサブバッテリとで冗長構成された電源システムは、メインバッテリ側とサブバッテリ側との間における電力授受を、ソフトウェアとハードウェアとの双方によって制御する。ソフトウェア制御では処理が間に合わない大きな電力がサブバッテリ側で発生した場合には、ハードウェア制御によって素早くメインバッテリ側に放電する。この制御により、サブバッテリが過充電されてしまうことを抑制できる。
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0010】
<実施形態>
[構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る電源システム1とその周辺部の機能ブロック図である。
図1に例示した電源システム1は、第1バッテリ11と、第2バッテリ12と、双方向DCDCコンバータ30と、制御部40と、を備える。この
図1においては、電力が流れる接続線を実線で示し、検出信号や制御信号などが流れる接続線を点線で示している。この電源システム1は、例えば自動車などの車両に搭載される。
【0011】
第1バッテリ11は、充放電可能に構成された二次電池であり、例えば鉛蓄電池である。第1バッテリ11は、第1負荷21及び双方向DCDCコンバータ30に接続されており、自らが蓄えている電力を第1負荷21に供給したり、双方向DCDCコンバータ30を介して自らが蓄えている電力を第2負荷22に供給したりする。また、第1バッテリ11は、図示しない発電機などが発生する電力を蓄えたり、図示しない高圧バッテリが出力する電力を蓄えたりすることができる。この第1バッテリ11は、第2負荷22に対して電力供給を行うメインバッテリとして機能する。
【0012】
第2バッテリ12は、充放電可能に構成された二次電池であり、例えばリチウムイオン電池である。第2バッテリ12は、第2負荷22及び双方向DCDCコンバータ30に接続されており、自らが蓄えている電力を第2負荷22に供給したり、双方向DCDCコンバータ30を介して第1バッテリ11から出力される電力を充電したりする。この第2バッテリ12は、第1バッテリ11が失陥したときなどに、第2負荷22に対して電力をバックアップ供給するサブバッテリとして機能する。
【0013】
第1負荷21は、車両に搭載されたECU(Electronic Control Unit)と呼ばれる電子機器や電装部品などの装置である。この第1負荷21は、第1バッテリ11に蓄えられた電力で動作するように構成されている。第1負荷21としては、ヘッドランプや室内灯などの灯火類、ヒーターやクーラーなどの空調類の装置を例示できる。
【0014】
第2負荷22は、車両に搭載されたECUと呼ばれる電子機器や電装部品などの装置である。この第2負荷22は、第1負荷21のうち、冗長的な電源構成が要求される装置について同一又は等価の機能を有する装置が冗長的に設けられたものである。より具体的には、第2負荷22は、第1バッテリ11が失陥した場合でも第2バッテリ12から所定の期間かつ所定の電流による電力供給を必要とする、車両の安全走行に関わる重要負荷である。第2負荷22としては、電動パワーステアリング(EPS)、電動ブレーキ(EBK)、自動運転(AD)や先進運転支援(ADAS)、及びシフトバイワイヤ(SBW)などの装置を例示できる。本実施形態では、回生電力を発生することができる少なくとも1つの負荷(例えばEPS)が、第2負荷22に含まれている。なお、どのような電子機器や電装部品が第2負荷22として搭載されるかは、車両の仕様や要求される性能などに応じて適切に決定される。
【0015】
双方向DCDCコンバータ30は、入力する電力を所定の電圧(例えば、第2負荷22の動作電圧)の電力に変換して出力するための電力変換器である。この双方向DCDCコンバータ30は、第1バッテリ11が接続された1次側端子から入力する電圧V1の電力を電圧V2の電力に変換(例えば昇圧)して、第2バッテリ12が接続された2次側端子へ出力することができる。また、双方向DCDCコンバータ30は、2次側端子から入力する電圧V2の電力を電圧V1の電力に変換して(例えば降圧)、1次側端子へ出力することができる。
【0016】
この双方向DCDCコンバータ30は、1次側端子と2次側端子との間に直列に接続されたスイッチング素子SW1(降圧用上アーム素子)、インダクタL、及びスイッチング素子SW4(昇圧用上アーム素子)と、スイッチング素子SW1とインダクタLとの間を接地するスイッチング素子SW2(降圧用下アーム素子)と、インダクタLとスイッチング素子SW4との間を接地するスイッチング素子SW3(昇圧用下アーム素子)と、を構成に含んでいる。この双方向DCDCコンバータ30は、後述する制御部40の指示(電圧指令値など)に基づいて動作する。
【0017】
複数のスイッチング素子SW1~SW4は、制御部40によるオン動作とオフ動作との切り替え制御が可能な能動素子であり、例えば金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。この複数のスイッチング素子SW1~SW4は、オン動作(ゲートにオン電圧を印加)のときに電流を流すことができる。スイッチング素子SW1は、寄生ダイオード(又はボディダイオード)が第2バッテリ12側から第1バッテリ11側へ整流する向きで設けられる。スイッチング素子SW4は、寄生ダイオードが第1バッテリ11側から第2バッテリ12側へ整流する向きで設けられる。インダクタLは、流れる電流によって磁界を発生させて磁気エネルギーを蓄えることが可能な受動素子であり、例えば電流を維持しようとする定電流特性を有しているチョークコイルである。
【0018】
制御部40は、双方向DCDCコンバータ30の動作(昇圧/降圧、変換方向)を制御することによって、第1バッテリ11と第2バッテリ12及び第2負荷22との間の電力授受を制御する。この制御部40は、DDC制御部41と、過電圧検出部42と、を備える。
【0019】
DDC制御部41は、双方向DCDCコンバータ30を構成する複数のスイッチング素子SW1~SW4のオン/オフ動作を、所定のプログラムに従ってソフトウェア的に制御して、第1バッテリ11の電力を第2バッテリ12及び第2負荷22に供給することを行うための構成(第1制御部)である。具体的には、DDC制御部41は、双方向DCDCコンバータ30の出力電圧が予め定めた目標電圧になるように、各スイッチング素子SW1~SW4のゲートに印加する信号のデューティ比を個別に指示することによって、各スイッチング素子SW1~SW4のオン/オフ動作を独立して制御する。
【0020】
過電圧検出部42は、双方向DCDCコンバータ30を構成するスイッチング素子SW1~SW4の一部である特定のスイッチング素子のオン/オフ動作を、第2負荷22で発生する回生電力に応じてハードウェア的に制御して、回生電力を第1バッテリ11及び/又は第1負荷21に供給することを行うための構成(第2制御部)である。具体的には、過電圧検出部42は、第2負荷22で発生する回生電力の影響によって第2バッテリ12の端子電圧である電圧V2が所定の閾値を超えるまで上昇したことを検出すると、第1バッテリ11及び第1負荷21に向けて回生電力が放電(供給)されるように双方向DCDCコンバータ30の状態をハードウェア動作によって強制的に切り替える。電圧V2が上昇する状態としては、第2バッテリ12が満充電状態に達してこれ以上電力を充電できない状態などを例示できる。よって、所定の閾値は、第2バッテリ12の定格電圧に基づいて任意の値を設定することができる。
【0021】
図2に、過電圧検出部42の詳細な電気回路の構成の一例を示す。
図2に例示する過電圧検出部42は、第2バッテリ12の端子電圧である電圧V2及び閾値Vfefを入力とする比較器の出力を、双方向DCDCコンバータ30のスイッチング素子SW1及びSW3(特定のスイッチング素子)のゲートに接続した構成である。この過電圧検出部42は、電圧V2と閾値Vfefとを比較して、電圧V2が閾値Vfefを超えると比較器の出力をローレベルに固定する。このように、電圧V2が閾値Vfefを超えた場合、スイッチング素子SW1及びSW3のゲート電圧を低下させるため、DDC制御部41のゲート信号Gcontによってソフトウェア制御されていたスイッチング素子SW1及びSW3のオン動作が、過電圧検出部42のハードウェア制御によって強制的にオフ動作に切り替えられる。
【0022】
以下、第2負荷22で回生電力が発生した場合に、制御部40(DDC制御部41及び過電圧検出部42)によって実行される電力制御を、詳細に説明する。
【0023】
[制御]
次に、
図3をさらに参照して、電源システム1によって行われる制御を説明する。
図3は、制御部40が実行する電力制御の処理手順を説明するフローチャートである。
図3に例示する電力制御は、例えば、車両のイグニッションがオンにされると開始され、イグニッションがオフされるまで繰り返し行われる。
【0024】
(ステップS301)
制御部40のDDC制御部41は、過剰な回生電力が発生していない通常時の動作として、第1バッテリ11の電力を第2バッテリ12及び第2負荷22に供給するように双方向DCDCコンバータ30をソフトウェア制御(SW制御)する。より具体的には、例えば第1バッテリ11の電圧が第2バッテリ12の定格電圧よりも低い場合、DDC制御部41は、スイッチング素子SW1及びSW4をオン動作、スイッチング素子SW2をオフ動作、スイッチング素子SW3をデューティ比オン/オフ動作させることで、双方向DCDCコンバータ30を昇圧回路として機能させる。
図4に、通常制御時において昇圧回路として機能する双方向DCDCコンバータ30の電力の流れを示す。
【0025】
DDC制御部41によって、第1バッテリ11から第2バッテリ12及び第2負荷22へのソフトウェア制御による給電(通常動作)がなされると、ステップS302に処理が進む。
【0026】
(ステップS302)
制御部40の過電圧検出部42は、第2バッテリ12の端子電圧である電圧V2が閾値Vfefを超えたか否かを判断する。すなわち、過電圧検出部42は、第2負荷22によって第2バッテリ12が許容できる量を超える回生電力が発生したか否かを判断する。閾値Vfefは、例えば第2バッテリ12の定格電圧である。
【0027】
過電圧検出部42が、電圧V2が閾値Vfefを超えたと判断した場合は(ステップS302、はい)、ステップS303に処理が進む。一方、過電圧検出部42が、電圧V2が閾値Vfef未満であると判断した場合は(ステップS302、いいえ)、ステップS301に処理が進む。
【0028】
(ステップS303)
制御部40の過電圧検出部42は、第2負荷22で発生した回生電力を第1バッテリ11へ放電できるように双方向DCDCコンバータ30をハードウェア制御(HW制御)する。より具体的には、過電圧検出部42は、スイッチング素子SW1及びSW3のゲート電圧をローレベルにラッチさせてスイッチング素子SW1及びSW3をオフ動作させる。
図5に、回生電力のハードウェア制御時における双方向DCDCコンバータ30の電力の流れを示す。
図5に示すように、スイッチング素子SW1を強制的にオフ動作させることによって、第1バッテリ11から第2バッテリ12への電荷の回り込みを防止しつつ、寄生ダイオードを介して第2負荷22で発生した回生電力を第1バッテリ11及び第1負荷21へ逃がすことができる。
【0029】
過電圧検出部42によって第2バッテリ12及び第2負荷22側から第1バッテリ11及び第1負荷21側へのハードウェア制御による放電がなされると、ステップS304に処理が進む。
【0030】
(ステップS304)
制御部40の過電圧検出部42は、第2バッテリ12の端子電圧である電圧V2が閾値Vfefを超えてから所定の時間が経過するまで、電圧V2が閾値Vfefを超えた状態が継続しているか否かを判断する。上記ステップS303において回生電力を第1バッテリ11及び第1負荷21へ放電しているにもかかわらず依然として電圧V2が高い状態が続く場合には、スイッチング素子SW1の破壊が懸念される。よって、この判断は、スイッチング素子SW1の破壊を回避するために行われる。所定の時間は、スイッチング素子SW1の構造や性能などに基づいて適切に設定される。
【0031】
過電圧検出部42が、電圧V2が閾値Vfefを超えた状態で所定の時間が経過したと判断した場合は(ステップS304、はい)、ステップS305に処理が進む。一方、過電圧検出部42が、電圧V2が閾値Vfefを超えた状態であるが所定の時間はまだ経過していないと判断した場合は(ステップS304、いいえ)、ステップS302に処理が進む。
【0032】
(ステップS305)
制御部40のDDC制御部41は、第2負荷22で発生した回生電力を第1バッテリ11側へより多く放電できるように双方向DCDCコンバータ30をソフトウェア制御(SW制御)する。より具体的には、DDC制御部41は、例えばスイッチング素子SW1(のゲート)と過電圧検出部42との接続をリレーRで強制的に遮断して、スイッチング素子SW1をオン動作させる。
図6に、回生電力のソフトウェア制御時における双方向DCDCコンバータ30の電力の流れを示す。
図6に示すように、スイッチング素子SW1をオン動作させることによって寄生ダイオードだけでなくトランジスタを介して多くの電流を流すことができるので、スイッチング素子SW1の破壊を回避した回生電力の第1バッテリ11及び第1負荷21側への放電を行うことができる。
【0033】
DDC制御部41によって第2バッテリ12及び第2負荷22側から第1バッテリ11及び第1負荷21側へのソフトウェア制御による放電(特別動作)がなされると、ステップS306に処理が進む。
【0034】
(ステップS306)
制御部40の過電圧検出部42は、第2バッテリ12の端子電圧である電圧V2が閾値Vfef未満になったか否かを判断する。すなわち、過電圧検出部42は、第2負荷22で発生する回生電力がなくなったか否か、あるいは第2負荷22によって発生する回生電力が第2バッテリ12の許容量以下になったか否かを判断する。
【0035】
過電圧検出部42が、電圧V2が閾値Vfef未満になったと判断した場合は(ステップS306、はい)、ステップS301に処理が進む。一方、過電圧検出部42が、電圧V2が閾値Vfef未満になっていないと判断した場合は(ステップS306、いいえ)、ステップS305に処理が進む。
【0036】
なお、上記実施形態では、第2バッテリ12の端子電圧である電圧V2を監視することによって、第2負荷22における過大な回生電力の発生を判断した。しかし、この電圧V2以外にも、スイッチング素子SW1を流れる電流や、第2バッテリ12に流入する電流などを監視することによっても、第2負荷22における過大な回生電力の発生を判断することができる。
【0037】
<作用・効果>
以上のように、本開示の一実施形態に係る電源システム1は、第1バッテリ11のバックアップ用である第2バッテリ12に接続された第2負荷22において第2バッテリ12が許容(処理)できない過大な回生電力が発生した場合、回生電力を第1バッテリ11及び第1負荷21側へ放電できるようにハードウェア回路によって双方向DCDCコンバータ30を強制的に制御する。この制御によって、回生電力で第2バッテリ12が過充電状態になってしまうことを抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態に係る電源システム1は、過大な回生電力の発生が長い時間続いた場合には、DDC制御部41によって双方向DCDCコンバータ30をソフトウェア的に制御して、第1バッテリ11及び第1負荷21側と第2バッテリ12及び第2負荷22側との電気的な導通を維持する。この制御によって、双方向DCDCコンバータ30を構成するスイッチング素子SW4の破壊を防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本開示の電源システムは、回生電力を発生することができる負荷を搭載した車両などに利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 電源システム
11 第1バッテリ
12 第2バッテリ
21 第1負荷
22 第2負荷
30 双方向DCDCコンバータ
40 制御部
41 DDC制御部(第1制御部)
42 過電圧検出部(第2制御部)
SW1~SW4 スイッチング素子(MOSFET)
L インダクタ