(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-28
(45)【発行日】2025-08-05
(54)【発明の名称】昇圧コンバータ制御装置および昇圧コンバータ制御装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/155 20060101AFI20250729BHJP
【FI】
H02M3/155 H
H02M3/155 W
(21)【出願番号】P 2022199607
(22)【出願日】2022-12-14
【審査請求日】2024-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 泰輝
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-112664(JP,A)
【文献】特開2017-143656(JP,A)
【文献】特開2016-082622(JP,A)
【文献】特開2020-089024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両の走行用モータを駆動する昇圧コンバータ制御装置であって、
前記走行用モータに電力を供給する二次電池に対して互いに並列に接続され、前記二次電池の電圧を昇圧する複数の昇圧コンバータと、
前記複数の昇圧コンバータの各々を制御する制御部と、を備え、
前記複数の昇圧コンバータの各々は、リアクトルおよびスイッチング素子からなり、
前記制御部は、
前記二次電池の暖
機が必要な場合に、
前記二次電池に流れる電流値が所定の閾値よりも大きくなったことに応じて、前記複数の昇圧コンバータの少なくとも2つの位相が同位相になるように調整する第1制御を行い、
前記二次電池に流れる電流値が前記所定の閾値以下になったことに応じて、前記複数の昇圧コンバータの一部の動作を停止させる第2制御を行う、昇圧コンバータ制御装置。
【請求項2】
前記所定の閾値は、前記二次電池に流れる電流の最大許容値の1/2である、請求項1に記載の昇圧コンバータ制御装置。
【請求項3】
前記二次電池の温度を検知する温度センサをさらに備え、
前記制御部は、前記温度センサの検出値が氷点下の所定範囲内である場合に、前記二次電池に暖
機が必要であると判定する、請求項1または2に記載の昇圧コンバータ制御装置。
【請求項4】
前記複数の昇圧コンバータは、第1昇圧コンバータと、第2昇圧コンバータとを含み、
前記制御部は、
前記二次電池の暖
機が不要な場合に、前記第1昇圧コンバータおよび前記第2昇圧コンバータの位相が互いに逆位相になるように調整する第3制御を行い、
前記第1制御は、前記第1昇圧コンバータおよび前記第2昇圧コンバータの位相が互いに同位相になるように調整する制御を含み、
前記第2制御は、前記第1昇圧コンバータおよび前記第2昇圧コンバータのうち一方を動作させた状態で、前記第1昇圧コンバータおよび前記第2昇圧コンバータのうち他方を停止させる制御を含む、請求項1または2に記載の昇圧コンバータ制御装置。
【請求項5】
走行用モータを駆動する昇圧コンバータ制御装置の制御方法であって、
前記走行用モータに電力を供給する二次電池に対して互いに並列に接続され、前記二次電池の電圧を昇圧する複数の昇圧コンバータの各々は、リアクトルおよびスイッチング素子からなり、
前記二次電池の暖
機が必要な場合に、前記二次電池に流れる電流値が所定の閾値よりも大きくなったことに応じて、前記複数の昇圧コンバータの少なくとも2つの位相が同位相になるように調整する第1制御を行う工程と、
前記二次電池の暖
機が必要な場合に、前記二次電池に流れる電流値が前記所定の閾値以下になったことに応じて、前記複数の昇圧コンバータの一部を停止させる第2制御を行う工程と、を備える、昇圧コンバータ制御装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、昇圧コンバータ制御装置および昇圧コンバータ制御装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-137391号公報(特許文献1)には、電気自動車のバッテリに対して互いに並列に接続されている2つの昇圧コンバータが設けられるシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるシステムにおいて、バッテリの暖気が必要となる場合がある。この場合、複数の昇圧コンバータによるリプル電流を増加させることによりバッテリの発熱量を大きくすることが望まれている。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、二次電池の暖気が必要な場合に、複数の昇圧コンバータによるリプル電流を増加させることより二次電池の発熱量を大きくすることが可能な昇圧コンバータ制御装置および昇圧コンバータ制御装置の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の局面に係る昇圧コンバータ制御装置は、電動車両の走行用モータを駆動する昇圧コンバータ制御装置であって、走行用モータに電力を供給する二次電池に対して互いに並列に接続され、二次電池の電圧を昇圧する複数の昇圧コンバータと、複数の昇圧コンバータの各々を制御する制御部と、を備える。複数の昇圧コンバータの各々は、リアクトルおよびスイッチング素子からなる。制御部は、二次電池の暖気が必要な場合に、二次電池に流れる電流値が所定の閾値よりも大きくなったことに応じて、複数の昇圧コンバータの少なくとも2つの位相が同位相になるように調整する第1制御を行い、二次電池に流れる電流値が所定の閾値以下になったことに応じて、複数の昇圧コンバータの一部の動作を停止させる第2制御を行う。なお、複数の昇圧コンバータが同位相であるとは、複数の昇圧コンバータにおけるスイッチング素子のオン(オフ)のタイミングが互いに揃っていることを意味する。
【0007】
本開示の第1の局面に係る昇圧コンバータ制御装置では、上記のように、二次電池の暖気が必要な場合に、二次電池に流れる電流値が所定の閾値よりも大きくなったことに応じて、複数の昇圧コンバータの少なくとも2つの位相が同位相になるように調整する第1制御が行われる。これにより、複数の昇圧コンバータの各々の動作に基づくリプル電流の発生タイミングを互いに揃えることができるので、リプル電流の大きさ(合計値)に基づく二次電池の発熱量を大きくすることができる。また、上記昇圧コンバータ制御装置では、二次電池に流れる電流値が所定の閾値以下になったことに応じて、複数の昇圧コンバータの一部の動作を停止させる第2制御が行われる。これにより、停止していない昇圧コンバータに流れる電流値を、全ての昇圧コンバータが動作している場合に比べて大きくすることができる。ここで、リアクトルは、流れる電流値が大きくなるほどインダクタンスが小さくなる。また、リプル電流は、リアクトルのインダクタンスが小さいほど大きくなる。したがって、リプル電流に基づく二次電池の発熱量を大きくすることができる。上記のように、複数の昇圧コンバータによるリプル電流を増加させることより二次電池の発熱量を大きくすることができる。
【0008】
上記第1の局面に係る昇圧コンバータ制御装置において、好ましくは、上記所定の閾値は、二次電池に流れる電流の最大許容値の1/2である。このように構成すれば、上記所定の閾値が上記最大許容値の1/2よりも小さい場合に比べて、第2制御において昇圧コンバータ(リアクトル)に流れる電流値が小さくなるのを抑制することができる。その結果、第2制御におけるリプル電流が小さくなるのを容易に抑制することができる。
【0009】
上記第1の局面に係る昇圧コンバータ制御装置は、好ましくは、二次電池の温度を検知する温度センサをさらに備える。制御部は、温度センサの検出値が氷点下の所定範囲内である場合に、二次電池に暖気が必要であると判定する。このように構成すれば、氷点下以下の温度条件においてリプル電流が増加される上記第1制御および上記第2制御が行われる。その結果、二次電池以外の電気機器がリプル電流の増加(発熱量の増加)に起因して劣化するのを、温度の低さによって抑制することができる。
【0010】
上記第1の局面に係る昇圧コンバータ制御装置において、好ましくは、複数の昇圧コンバータは、第1昇圧コンバータと、第2昇圧コンバータとを含む。制御部は、二次電池の暖気が不要な場合に、第1昇圧コンバータおよび第2昇圧コンバータの位相が互いに逆位相になるように調整する第3制御を行う。第1制御は、第1昇圧コンバータおよび第2昇圧コンバータの位相が互いに同位相になるように調整する制御を含む。第2制御は、第1昇圧コンバータおよび第2昇圧コンバータのうち一方を動作させた状態で、第1昇圧コンバータおよび第2昇圧コンバータのうち他方を停止させる制御を含む。このように構成すれば、二次電池の暖気が不要な場合は、第1昇圧コンバータの動作によりリプル電流が生じるタイミングと第2昇圧コンバータの動作によりリプル電流が生じるタイミングとを互いにずらすことができる。その結果、リプル電流に起因する二次電池の発熱量の増加を抑制することができる。また、二次電池の暖気が必要な場合は、第1昇圧コンバータおよび第2昇圧コンバータによるリプル電流を増加させることより二次電池の発熱量を大きくすることができる。
【0011】
本開示の第2の局面に係る昇圧コンバータ制御装置の制御方法は、走行用モータを駆動する昇圧コンバータ制御装置の制御方法である。走行用モータに電力を供給する二次電池に対して互いに並列に接続され、二次電池の電圧を昇圧する複数の昇圧コンバータの各々は、リアクトルおよびスイッチング素子からなる。上記制御方法は、二次電池の暖気が必要な場合に、二次電池に流れる電流値が所定の閾値よりも大きくなったことに応じて、複数の昇圧コンバータの少なくとも2つの位相が同位相になるように調整する第1制御を行う工程と、二次電池の暖気が必要な場合に、二次電池に流れる電流値が所定の閾値以下になったことに応じて、複数の昇圧コンバータの一部を停止させる第2制御を行う工程と、を備える。
【0012】
本開示の第2の局面に係る昇圧コンバータ制御装置の制御方法では、上記のように、二次電池の暖気が必要な場合に、二次電池に流れる電流値が所定の閾値よりも大きくなったことに応じて、複数の昇圧コンバータの少なくとも2つの位相が同位相になるように調整する第1制御が行われる。また、上記制御方法では、二次電池の暖気が必要な場合に、二次電池に流れる電流値が所定の閾値以下になったことに応じて、複数の昇圧コンバータの一部の動作を停止させる第2制御が行われる。これにより、複数の昇圧コンバータによるリプル電流を増加させることより二次電池の発熱量を大きくすることが可能な昇圧コンバータ制御装置の制御方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、二次電池の暖気が必要な場合に、複数の昇圧コンバータによるリプル電流を増加させることより二次電池の発熱量を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態による昇圧コンバータ制御装置の構成を示す図である。
【
図2】一実施形態による昇圧コンバータ制御装置の第1制御(同位相制御)を示す図である。
【
図3】第1制御時におけるリアクトルの電流値を示す図である。
【
図4】一実施形態による昇圧コンバータ制御装置の第2制御(片側制御)を示す図である。
【
図5】第2制御時におけるリアクトルの電流値を示す図である。
【
図6】リアクトルの電流値とインダクタンスとの関係を示す図である。
【
図7】一実施形態による昇圧コンバータ制御装置の第3制御(通常動作)を示す図である。
【
図8】第3制御時におけるリアクトルの電流値を示す図である。
【
図9】一実施形態による昇圧コンバータ制御装置の制御方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図中、同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0016】
図1は、本実施形態に係る昇圧コンバータ制御装置1の構成を示す図である。昇圧コンバータ制御装置1は、電動車両300の走行用モータ310を駆動する。昇圧コンバータ制御装置1は、昇圧回路100と、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)200とを備える。なお、ECU200は、本開示の「制御部」の一例である。
【0017】
昇圧回路100は、二次電池10と、フィルムコンデンサ20と、第1昇圧コンバータ30と、第2昇圧コンバータ40と、インバータ50と、温度センサ60と、電流センサ70とを含む。なお、第1昇圧コンバータ30および第2昇圧コンバータ40の各々は、本開示の「昇圧コンバータ」の一例である。
【0018】
二次電池10は、走行用モータ310に電力を供給する。また、二次電池10には、走行用モータ310からの回生エネルギーが供給される。フィルムコンデンサ20は、二次電池10に対して並列に接続されている。
【0019】
第1昇圧コンバータ30は、上アームのスイッチング素子31と、下アームのスイッチング素子32と、リアクトル33とを有する。リアクトル33は、スイッチング素子31とスイッチング素子32とを接続するノード34に接続されている。
【0020】
第2昇圧コンバータ40は、上アームのスイッチング素子41と、下アームのスイッチング素子42と、リアクトル43とを有する。リアクトル43は、スイッチング素子41とスイッチング素子42とを接続するノード44に接続されている。
【0021】
第1昇圧コンバータ30および第2昇圧コンバータ40は、二次電池10に対して互いに並列に接続されている。すなわち、第1昇圧コンバータ30および第2昇圧コンバータ40の各々は、共通の二次電池10から電流が供給される。また、第1昇圧コンバータ30および第2昇圧コンバータ40の各々は、インバータ50に与える電圧を二次電池10の電圧以上に昇圧する。
【0022】
温度センサ60は、二次電池10の温度を測定する。温度センサ60の測定結果は、ECU200に送信される。
【0023】
電流センサ70は、二次電池10に流れる電流Ibの値を測定する。電流センサ70は、リアクトル33およびリアクトル43の各々と二次電池10との間に設けられている。
【0024】
ECU200は、第1昇圧コンバータ30および第2昇圧コンバータ40の各々を制御する。ECU200は、プロセッサ201と、メモリ202と、ストレージ203と、インターフェイス204とを含む。
【0025】
プロセッサ201は、たとえばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro-Processing Unit)である。メモリ202は、たとえばRAM(Random Access Memory)である。ストレージ203は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性メモリである。インターフェイス204は、ECU200と、昇圧回路100の構成部品との間の通信を制御する。
【0026】
ECU500は、昇圧回路100に含まれる各種センサ(60、70)から取得したセンサ値に基づいて制御指令を生成し、生成された制御指令を昇圧回路100に出力する。ECU200は、機能ごとに複数のECUに分割されていてもよい。また、
図1にはECU200が1つのプロセッサ201を含む例を示すが、ECU200が複数のプロセッサを含んでもよい。メモリ202およびストレージ203についても同様である。
【0027】
ここで、従来のシステムにおいて、二次電池の暖気が必要となる場合がある。この場合、複数の昇圧コンバータによるリプル電流を増加させることにより二次電池の発熱量を大きくすることが望まれている。
【0028】
そこで、本実施形態では、ECU200は、二次電池10の暖気が必要な場合に、二次電池10に流れる電流Ibの値が所定の閾値よりも大きくなったことに応じて、第1昇圧コンバータ30および第2昇圧コンバータ40の位相が互いに同位相になるように調整する第1制御(同位相制御)を行う。具体的には、
図2に示すように、第1制御では、スイッチング素子31(CTP1)がオン(オフ)するタイミングと、スイッチング素子41(CTP2)がオン(オフ)するタイミングとが揃えられる。なお、スイッチング素子32(CTN1)は、スイッチング素子31と逆位相でオンオフされる。また、スイッチング素子42(CTN2)は、スイッチング素子41と逆位相でオンオフされる。
【0029】
これにより、
図3に示すように、第1昇圧コンバータ30の動作に起因するリアクトル33のリプル電流と、第2昇圧コンバータ40の動作に起因するリアクトル43のリプル電流とが、互いに同じタイミングで発生する。
【0030】
なお、上記所定の閾値は、二次電池10に流れる電流Ibの最大許容値の1/2である。上記最大許容値の1/2という閾値は、ECU200のメモリ202に予め記憶されている。なお、電流Ibの最大許容値とは、二次電池10の能力で決められている最大電流値である。二次電池10は、上記最大許容値以下の範囲で動作が可能であるように設計されている。
【0031】
また、本実施形態では、ECU200は、二次電池10の暖気が必要な場合に、二次電池10に流れる電流Ibの値が上記所定の閾値以下になったことに応じて、第1昇圧コンバータ30および第2昇圧コンバータ40のうち一方を動作させた状態で、第1昇圧コンバータ30および第2昇圧コンバータ40のうち他方を停止させる第2制御(片側制御)を行う。たとえば
図4に示すように、第1昇圧コンバータ30が動作された状態で、第2昇圧コンバータ40が停止されるとする。この場合、第1昇圧コンバータ30のリアクトル33に流れる電流値が、通常動作時および第1制御時に比べて2倍になる。したがって、
図5に示すように、第2制御時におけるリアクトル33のリプル電流値は、通常動作時および第1制御時の各々におけるリアクトル33のリプル電流値よりも大きくなる。
【0032】
なお、リアクトルのリプル電流値(Ir)は、下記の式(1)に基づいた値となる。下記の式(1)におけるVinは、リアクトルの電圧値を意味する。Dutyは、昇圧コンバータのデューティ比を意味する。Lは、リアクトルのインダクタンスを意味する。fsは、昇圧コンバータの制御周期を意味する。
【0033】
Ir=Vin×Duty/(L×fs) ・・・(1)
また、
図6に示すように、リアクトルは、リアクトルに流れる電流値(
図6の横軸)が大きくなるほど、インダクタンス(
図6の縦軸)が小さくなる。したがって、上記第2制御において、リアクトルのインダクタンスは、リアクトルに流れる電流が大きくなることに起因して小さくなる。その結果、上記の式(1)に基づいて、リアクトルのリプル電流が大きくなる。
【0034】
また、ECU200は、二次電池10の暖気が不要な場合に、第1昇圧コンバータ30および第2昇圧コンバータ40の位相が互いに逆位相になるように調整する第3制御(通常動作)を行う。具体的には、
図7に示すように、第3制御では、スイッチング素子31(CTP1)がオンされるタイミングで、スイッチング素子41(CTP2)がオフされる。また、スイッチング素子31(CTP1)がオフされるタイミングで、スイッチング素子41(CTP2)がオンされる。
【0035】
これにより、
図8に示すように、第1昇圧コンバータ30の動作に起因するリアクトル33のリプル電流と、第2昇圧コンバータ40の動作に起因するリアクトル43のリプル電流とが、互いに異なるタイミングで発生する。
【0036】
また、ECU200は、二次電池10の温度を測定する温度センサ60の検出値が氷点下の所定範囲内である場合に、二次電池10に暖気が必要であると判定する。上記所定範囲は、たとえば-40℃~0℃の範囲である。
【0037】
(昇圧コンバータ制御装置の制御方法)
次に、
図9を参照して、昇圧コンバータ制御装置1の制御方法を説明する。なお、ステップS1~S8の処理フローは、所定の制御周期(たとえば10分)ごとに実行される。
【0038】
ステップS1において、ECU200は、二次電池10の暖気が必要であるか否かを判定する。具体的には、ECU200は、温度センサ60の検出値が氷点下の所定範囲(-40℃~0℃)の範囲である場合に二次電池10の暖気が必要であると判定する。二次電池10の暖気が必要である場合(S1においてYes)、処理はステップS2に進む。二次電池10の暖気が不要である場合(S1においてNo)、処理はステップS7に進む。
【0039】
ステップS2において、ECU200は、昇圧コンバータ(30、40)を駆動させる(スイッチング素子をオンオフさせる)キャリア周波数(制御周波数)を、所定の低値に設定する。上記所定の低値とは、たとえば、設定可能なキャリア周波数のうちの最低値である。
【0040】
ステップS3において、ECU200は、二次電池10に流れる電流Ibの値(電流センサ70の検出値)が電流Ibの最大許容値の1/2よりも大きいか否かを判定する。電流Ibの値が上記最大許容値の1/2よりも大きい場合(S3においてYes)、処理はステップS4に進む。電流Ibの値が上記最大許容値の1/2以下の場合(S3においてNo)、処理はステップS5に進む。
【0041】
ステップS4において、ECU200は、第1昇圧コンバータ30および第2昇圧コンバータ40の位相を互いに同位相にする第1制御(同位相制御)を開始する。
【0042】
ステップS5において、ECU200は、第1昇圧コンバータ30および第2昇圧コンバータ40のうち一方を動作させた状態で、第1昇圧コンバータ30および第2昇圧コンバータ40のうち他方を停止させる第2制御(片側制御)を開始する。なお、第1昇圧コンバータ30および第2昇圧コンバータ40のうちいずれが停止されるかは、予め設定されていてもよい。
【0043】
ステップS6において、ECU200は、第1制御(同位相制御)または第2制御(片側制御)により二次電池10を暖気する。
【0044】
一方、ステップS7において、ECU200は、第1制御または第2制御が実行中か否かを判定する。第1制御または第2制御が実行中の場合(S7においてYes)、処理はステップS8に進む。第1制御または第2制御が実行中ではなく通常動作中の場合(S7においてNo)、処理は終了する。
【0045】
ステップS8において、ECU200は、第1昇圧コンバータ30および第2昇圧コンバータ40の動作を第3制御(通常動作)に戻す処理を行う。
【0046】
以上のように、上記実施形態においては、ECU200は、二次電池10の暖気が必要な場合に、二次電池10に流れる電流値が所定の閾値(電流Ibの最大許容値の1/2)よりも大きくなったことに応じて、第1昇圧コンバータ30および第2昇圧コンバータ40の位相が互いに同位相になるように調整する第1制御を行う。また、ECU200は、二次電池10の暖気が必要な場合に、二次電池10に流れる電流値が上記所定の閾値以下になったことに応じて、第1昇圧コンバータ30および第2昇圧コンバータ40の一方を動作させた状態で、第1昇圧コンバータ30および第2昇圧コンバータ40の他方を停止させる第2制御を行う。これにより、第1制御によって、第1昇圧コンバータ30によるリプル電流と第2昇圧コンバータ40によるリプル電流とを互いに重畳させることができる。また、第2制御によって、二次電池10に流れる電流Ibを第1昇圧コンバータ30および第2昇圧コンバータ40のいずれか一方に集約することができる。これらにより、第1制御および第2制御の各々において、リアクトルに生じるリプル電流を大きくすることができる。その結果、二次電池10を暖気することができる。
【0047】
また、上記実施形態においては、昇圧コンバータのキャリア周波数の低下と、第1制御および第2制御とが組み合わされることにより、リプル電流が増加されている。これにより、キャリア周波数の低下だけを行う場合に比べて、リプル電流をより増加させることが可能である。
【0048】
上記実施形態では、第1制御および第2制御がいずれが実行されるかの閾値が、二次電池10を流れる電流Ibの最大許容値の1/2である例を示したが、本開示はこれに限られない。上記閾値が、上記最大許容値の1/2以外の値(たとえば上記最大許容値の1/3)であってもよい。
【0049】
上記実施形態では、二次電池10の暖気が必要と判定される二次電池10の温度範囲が氷点下である例を示したが、本開示はこれに限られない。上記温度範囲の少なくとも上限値が0℃より大きくてもよい。
【0050】
上記実施形態では、二次電池10に対して互いに並列な2つの昇圧コンバータが設けられる例を示したが、本開示はこれに限られない。二次電池10に対して互いに並列な3つ以上の昇圧コンバータが設けられていてもよい。この場合、第1制御および第2制御のいずれが実行されるかの閾値を、二次電池10を流れる電流Ibの最大許容値を昇圧コンバータの個数で除算した値としてもよい。
【0051】
上記実施形態では、キャリア周波数を所定の低値にする制御が実行される例を示したが、本開示はこれに限られない。上記制御は実行されなくてもよい。
【0052】
上記実施形態では、2つのリアクトル(33、43)に対して1つの電流センサ70が設けられる例を示したが、本開示はこれに限られない。2つのリアクトルの各々に対応するように2つの電流センサが設けられていてもよい。
【0053】
上記実施形態では、二次電池10の暖気が不要な場合に通常動作が実行される例を示したが、本開示はこれに限られない。二次電池10の暖気が不要な場合に第1制御(同位相制御)または第2制御(片側制御)が実行されてもよい。
【0054】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0055】
1 昇圧コンバータ制御装置,10 二次電池,30 第1昇圧コンバータ(昇圧コンバータ),31、32、41、42 スイッチング素子,33、43 リアクトル,40 第2昇圧コンバータ(昇圧コンバータ),60 温度センサ,200 ECU(制御部),300 電動車両,310 走行用モータ,Ib 電流(二次電池に流れる電流)。