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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-28
(45)【発行日】2025-08-05
(54)【発明の名称】ペットフード製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23K 50/45 20160101AFI20250729BHJP
   A23K 10/22 20160101ALI20250729BHJP
【FI】
A23K50/45
A23K10/22
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024010244
(22)【出願日】2024-01-26
【審査請求日】2024-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】524036413
【氏名又は名称】安冨 浩司
(73)【特許権者】
【識別番号】524036424
【氏名又は名称】安冨 めぐみ
(74)【代理人】
【識別番号】110004288
【氏名又は名称】弁理士法人桐生知財総合事務所
(72)【発明者】
【氏名】安冨 浩司
(72)【発明者】
【氏名】安冨 めぐみ
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特許第6661338(JP,B2)
【文献】特許第3917996(JP,B2)
【文献】特開2004-008022(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 50/45
A23K 10/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生魚の中落に水及び酢を加えて加圧加熱処理を行い、前記中落から第1出汁を抽出する1次加圧加熱工程と、
前記1次加圧加熱工程において加圧加熱処理がなされた中落の粉砕処理を行う粉砕工程と、
前記粉砕工程において粉砕処理がなされた中落に新たに水及び酢を加えて再度加圧加熱処理を行い、前記中落から第2出汁を抽出する2次加圧加熱工程と、
前記1次加圧加熱工程において抽出された第1出汁と前記2次加圧加熱工程において抽出された第2出汁とを混合してスープを生成するスープ生成工程と
を備えたことを特徴とするペットフード製造方法。
【請求項2】
前記1次加圧加熱工程の前に、前記中落を焼く焼工程をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のペットフード製造方法。
【請求項3】
前記スープ生成工程において生成されたスープを小分けして冷凍する冷凍工程をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のペットフード製造方法。
【請求項4】
前記スープ生成工程において生成されたスープに果物又は野菜を加えて煮込む煮込工程をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載のペットフード製造方法。
【請求項5】
前記2次加圧加熱工程において第2出汁が抽出された後の中落を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程で乾燥させた中落を粉末状にする粉末化工程と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載のペットフード製造方法。
【請求項6】
前記1次加圧加熱工程及び前記2次加圧加熱工程において、同一の条件で同じ時間だけ加圧加熱処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のペットフード製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペットフード製造方法に関し、より詳細には、安全性及び栄養価が高く、また、水分の供給源として使用することができるペットフード製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来市販されているペットフードは、製造コストを削減するために低コストの食材を使用したり、当該食材に複数の添加物を添加して風味や保存性を向上させたりしているものが多い。このようなペットフードを犬、猫等のペットが食した場合、体調不良、アレルギー、アトピー性皮膚炎、臓器の病気、目元の涙やけ、口臭等、種々の異変がペットに生じることがあった。
【0003】
また、ペットは積極的に水分を取らない傾向があるため、ペットに強制的に水分を補給する必要があるが、日持ちのする乾燥したペットフードが多い中、飼い主は手軽にペットに水分を補給することができないという問題があった。
【0004】
このような問題点を解決するために、栄養価が高く水分が多い補助食をペットに手軽に提供できるようにすることが望まれる。例えば、肉や魚を煮出してペット用のスープを製造することが考えられるが、煮出した後の肉や魚を廃棄することは環境汚染につながるため、煮出した後の原材料をも有効活用することが望まれる。
【0005】
特許文献1には、魚の加工時に副産物として派生する魚骨をカルシウム供給用の食品素材として有効に利用するために、加圧加熱工程により魚骨を軟化させた後、微粒子化を行うことにより、適度な粘性及び滑らかな食感を有する魚骨ペーストを生成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】WO2007/066654号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の魚骨ペーストは水分の含有量が少ないため、ペットの水分補給源として即座に利用することができない。また、特許文献1に記載の魚骨ペーストは魚の骨のみを使用しているため、当該魚骨ペーストはカルシウムの供給源にはなるが、その他の栄養成分の補給源とすることができない。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、栄養価が高く水分の補給源となるペットフードを製造するペットフード製造方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、原材料を無駄なく使用してペットフードを製造することができるペットフード製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のペットフード製造方法は、
生魚の中落に水及び酢を加えて加圧加熱処理を行い、前記中落から第1出汁を抽出する1次加圧加熱工程と、
前記1次加圧加熱工程において加圧加熱処理がなされた中落の粉砕処理を行う粉砕工程と、
前記粉砕工程において粉砕処理がなされた中落に新たに水及び酢を加えて再度加圧加熱処理を行い、前記中落から第2出汁を抽出する2次加圧加熱工程と、
前記1次加圧加熱工程において抽出された第1出汁と前記2次加圧加熱工程において抽出された第2出汁とを混合してスープを生成するスープ生成工程と
を備えたことを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、生魚の中落に水及び酢を加えて1次加圧加熱処理を行い、1次加圧加熱処理後の中落の粉砕処理を行った後に、新たに水及び酢を加えて2次加圧加熱処理を行うため、中落の中骨及び中骨に付着している魚肉から栄養分を十分に抽出することができるため、栄養価が高く水分の補給源となるペットフードを製造することができる。
【0011】
上記発明において、
前記1次加圧加熱工程の前に、前記中落を焼く焼工程をさらに備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、魚の生臭さが低減し、香ばしい風味の出汁をとることができる。
【0013】
上記発明において、
前記スープ生成工程において生成されたスープを小分けして冷凍する冷凍工程をさらに備えることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、前記スープ生成工程において生成されたスープを小分けして冷凍することで、保存性が高まり、また、飼い主は必要な分だけ解凍してペットに与えることができる。
【0015】
上記発明において、
前記スープ生成工程において生成されたスープに果物又は野菜を加えて煮込む煮込工程をさらに備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、魚の中落の栄養成分に果物又は野菜の栄養成分を加えた栄養価の高いスープを生成することができる。
【0017】
上記発明において、
前記2次加圧加熱工程において第2出汁が抽出された後の中落を乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程で乾燥させた中落を粉末状にする粉末化工程と
を備えたことを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、第2出汁が抽出された後の中落を乾燥及び粉末状にすることで、ふりかけとして使用することができ、材料を無駄なく利用することができる。
【0019】
上記発明において、
前記1次加圧加熱工程及び前記2次加圧加熱工程において、同一の条件で同じ時間だけ加圧加熱処理を行うことを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、スープを複数回製造する場合でも、完成したスープの品質を一定に保つことができるため、品質が一定に保たれたスープを製造及び販売することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係るペットフード製造方法の工程図である。
図2】本発明の第2実施形態に係るペットフード製造方法の工程図である。
図3】本発明の第3実施形態に係るペットフード製造方法の工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0023】
(第1実施形態)
まず、図1に示す工程図を参照して、本発明の実施形態に係るペットフードの製造方法を説明する。
【0024】
(1次加圧加熱工程)
まず、1kgの生魚の中落を用意する。用意する魚の種類としては、ペットがアレルギーを起こしにくく、かつ、栄養価の高い魚である鰤(大きさによっては、ハマチ又はイナダともいう)が好ましい。鰤は、不飽和脂肪酸、コラーゲン、数種類のビタミン、たんぱく質、無機質等を含む。
さらに、3Lの水と、45gの酢を用意する。水は、飲料可能な地下水が好ましい。
また、これらの用意した原材料(中落、水、酢)を収容可能な電気圧力鍋を用意する。
当該電気圧力鍋に、用意した中落、水及び酢を投入し、約1時間~1時間半程度、加圧加熱処理を行う。これにより、中落から1番出汁が抽出される(1次加圧加熱工程S10)。当該抽出した1番出汁は、別の容器に移して保存しておく。
【0025】
(粉砕工程)
次に、1次加圧加熱工程S10において加圧加熱処理がなされた中落を電気圧力鍋から取り出して、当該中落の粉砕処理を行う(粉砕工程S20)。
【0026】
(2次加圧加熱工程)
次に、粉砕工程S20において粉砕処理が行われた中落を電気圧力鍋に戻し、新たに、1次加圧加熱工程S10と同じ量の水3L及び酢45gを加える。そして、再度、1次加圧加熱工程S10と同じ時間(1時間~1時間半程度)だけ、加圧加熱処理を行う。これにより、当該中落から2番出汁が抽出される(2次加圧加熱工程S30)。粉砕工程S20において中落の中骨を粉砕したことにより、当該中骨のコラーゲンが抽出し易くなっているため、この2次加圧加熱処理によって、当該中骨からコラーゲンを十分に抽出することができる。
【0027】
(スープ生成工程)
次に、1次加圧加熱工程S10において別容器に移しておいた1番出汁に、2次加圧加熱工程S30において抽出された2番出汁を加えて、混合する(スープ生成工程S40)。これにより、中落を煮込んだスープが完成する。
【0028】
(冷凍工程)
次に、スープ生成工程S40において生成されたスープを小分けして冷凍する(冷凍工程S50)。
具体的には、スープを冷ましてから、例えば、キューブ状の300mlの氷を18個作成できる製氷皿に取り分けた上で冷凍する。冷凍することで、添加物を使用しなくても一定期間の品質の維持が可能となる。また、スープを小分けして冷凍することで、飼い主は必要な分だけ解凍してペットに与えることができる。
【0029】
(乾燥工程)
次に、ふりかけを製造する。2次加圧加熱工程S30において第2出汁が抽出された後の中落をフードドライヤー等で乾燥させる(工程S60)。
【0030】
(粉末化工程)
次に、乾燥工程S60で乾燥させた中落をフードプロセッサー等で細かく砕いて、粉末状にする(粉末化工程S70)。これにより、中落を粉末状にしたふりかけが完成する。
【0031】
(第2実施形態)
次に、図2に示す工程図を参照して第2実施形態について説明する。第2実施形態の第1実施形態と異なる点は、図2に示すように、1次加圧加熱工程S10の1次加圧加熱工程の前に、生魚の中落を焼く焼工程S05を加えた点である。
中落を焼いてから1次加圧加熱工程S10及び2次加圧加熱工程S30における加圧加熱処理を行うことで、生臭さが低減した香ばしい風味の1番出汁及び2番出汁をとることができる。
【0032】
(第3実施形態)
次に、図3に示す工程図を参照して、第3実施形態について説明する。第3実施形態の第1実施形態と異なる点は、図3に示すように、スープ生成工程S40と冷凍工程S50との間に、煮込工程S45を設けた点である。
煮込工程S45においては、スープ生成工程S40において生成されたスープに、果物又は野菜を加えて煮込む。
【0033】
ここで、スープに加えて煮込む果物としては、ペットが食することが可能で栄養価の高いりんごが考えられる。りんごを加熱することで、りんごに含まれるペクチンが増加するため、りんご入りスープを食したペットの腸内環境を整えることができる。りんごを煮込む時間を調整して、りんごをコンポート風にしてもよいし、ジャム風にしてもよい。
【0034】
スープに加えて煮込む野菜としては、かぶ、大根、人参、トマト、ズッキーニ、生姜、パプリカ等、ペットが食することができる様々な野菜が考えられる。生姜には、保温、血行促進、殺菌、抗菌等の作用を持つ辛み成分や香り成分が含まれている。
【0035】
スープにこれらの野菜を複数加えて煮込むことで、ミネストローネ風にしてもよい。
このように、スープに果物又は野菜を加えて煮込むことで、魚の中落の栄養成分に果物又は野菜の栄養成分を加えた栄養価の高いスープを生成することができる。
【0036】
ペットへのスープの与え方は、冷凍したスープをレンジで溶かし、水で希釈して、人肌程度の温度に温めた上で、ペットが普段食しているドライフードにかける。これにより、水分を積極的に取らない傾向のあるペットに、食事の際に水分を補給することができ、また、不飽和脂肪酸の補給もすることができる。ペットは、人間と同様に不飽和脂肪酸は食事で摂取しなければならないため、ペットに不飽和脂肪酸が豊富に含まれるスープを与えることで、ペットの臓器、筋肉、骨等の健康維持や、認知症の予防に資することができる。
また。ドライフードにスープをかけることにより、ドライフードの風味がよくなり、また、スープをかけない場合よりも満腹感が出ることで、ペットが食するドライフードの量を若干減らすことができ、肥満対策につながる。
【0037】
以上説明したように、生魚の中落に水及び酢を加えて1次加圧加熱処理を行い、1次加圧加熱処理後の中落の粉砕処理を行った後に、新たに水及び酢を加えて2次加圧加熱処理を行うため、中落の中骨及び中骨に付着している魚肉から栄養分を十分に抽出することができ、栄養価が高く水分の補給源となるペットフードとしてのスープを製造することができる。
また、ペットフードとしてのスープを製造することによって、従来ペットが食していたペットフードの栄養補助食及び水分補給食として使うことができる。
これにより、ペットの心臓、腎臓、神経認知機能等の健康の維持に資することが可能となる。
また、1次加圧加熱工程S10及び2次加圧加熱工程S20において、電気圧力鍋を用いて、同一の条件で同じ時間だけ加圧加熱処理をすることで、スープを複数回製造する場合でも、完成したスープの品質を一定に保つことができる。これにより、品質が一定に保たれたスープを製造及び販売することが可能となる。
また、第2出汁が抽出された後の中落を乾燥及び粉末状にすることで、ふりかけとして使用することができ、原材料を無駄なく活用することができる。
【0038】
なお、上述した実施形態は一例に過ぎず、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形を行うことができる。
例えば、上述した実施形態においては、魚として鰤を用いたが、これに限定されることはなく、その他の魚を用いてもよい。
また、上述した実施形態においては、原材料を加圧加熱する機材として電気圧力鍋を用いたが、これに限定されることはなく、例えば、温度や圧力の調整が容易にできる場合にはガス式の圧力鍋を用いてもよい。また、用意する原材料の量に合わせて、大容量の加圧加熱機を用いてもよい。
また、上述した実施形態においては、1次加圧加熱工程S10において用意する中落1kgに対して、1次加圧加熱工程S10及び2次加圧加熱工程S30において水3L及び酢45gの割合で加えたが、これに限定されることはなく、適宜配合割合を調整してもよい。また、この配合割合で10倍の量の原材料及び大容量の加圧加熱機を用意して、大量にスープを製造してもよい。
また、上述した実施形態においては、1次加圧加熱工程S10及び2次加圧加熱工程S30とも、同一の条件で、同じ時間だけ加圧加熱したが、これに限定されることはなく、圧力、温度及び加圧加熱時間の調整が容器な高性能の加圧加熱機を用いる場合には、1次加圧加熱工程S10及び2次加圧加熱工程S30における加圧する圧力、加熱温度、及び、加圧加熱時間を異ならせてもよい。
また、上述した実施形態においては、スープを小分けして冷凍するとして説明したが、これに限定されることはなく、例えば、レトルトパウチのパックに小分けして密封してもよい。
また、上述した実施形態において説明した中落の乾燥方法や粉末状にする方法は一例に過ぎず、例えば、天日干しにして乾燥してもよいし、すり鉢を用いて粉末状にしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
S05 焼工程
S10 1次加圧加熱工程
S20 粉砕工程
S30 2次加圧加熱工程
S40 スープ生成工程
S45 煮込工程
S50 冷凍工程
S60 乾燥工程
S70 粉末化工程

【要約】
【課題】栄養価が高く水分の補給源となるペットフードを製造するペットフード製造方法を提供する。
【解決手段】本発明のペットフード製造方法は、生魚の中落に水及び酢を加えて加圧加熱処理を行い、前記中落から第1出汁を抽出する1次加圧加熱工程S10と、前記1次加圧加熱工程において加圧加熱処理がなされた中落の粉砕処理を行う粉砕工程S20と、前記粉砕工程S20において粉砕処理がなされた中落に新たに水及び酢を加えて再度加圧加熱処理を行い、前記中落から第2出汁を抽出する2次加圧加熱工程S30と、前記1次加圧加熱工程において抽出された第1出汁と前記2次加圧加熱工程において抽出された第2出汁とを混合してスープを生成するスープ生成工程S40とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3