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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-28
(45)【発行日】2025-08-05
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20250729BHJP
【FI】
H01L21/304 651B
H01L21/304 648L
H01L21/304 643A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021133186
(22)【出願日】2021-08-18
(65)【公開番号】P2023027859
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2024-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清原 公平
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直樹
(72)【発明者】
【氏名】東 克栄
【審査官】山口 祐一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-206019(JP,A)
【文献】特開2013-131783(JP,A)
【文献】特開2020-061405(JP,A)
【文献】特開2008-098594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に保持する基板保持部材と、
前記基板保持部材に保持されている基板に薬液を供給する薬液供給ユニットと、
前記基板保持部材を取り囲む筒状の第1ガードであって、円筒部、および、前記円筒部よりも内側に向かって前記円筒部から張り出す環状部を有する第1ガードと、
前記環状部よりも下方において、前記円筒部よりも内側に向かって前記円筒部から斜め上に張り出す環状部材であって、前記第1ガードに対して着脱可能な環状部材と
前記環状部材を前記円筒部に対して固定する締付部材とを含み、
前記環状部材は、前記締付部材によって前記円筒部に固定される固定部を含み、
前記環状部材が、前記環状部材よりも上方から前記環状部材よりも下方への流体の通過を許容する少なくとも1つの通過許容部を前記環状部材の外周部に有し、
前記締付部材は、前記環状部材を前記第1ガードに固定可能であり、かつ前記第1ガードに対する前記環状部材の固定を解除可能である、基板処理装置。
【請求項2】
前記環状部材が、前記環状部材の周方向に沿って配置された複数の前記通過許容部を有する、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
複数の前記通過許容部が、前記周方向に沿って等間隔に設けられている、請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記通過許容部が、前記環状部材の外周縁を切り欠く切り欠きを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記通過許容部が、前記環状部材の外周部を貫通する貫通孔を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記環状部材が、前記環状部と平行に前記円筒部から張り出している、請求項1~5のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記薬液供給ユニットが、前記基板保持部材に保持されている基板の上面に薬液を供給する上面薬液供給部材を含み、
前記環状部の内周縁が前記基板保持部材に保持されている基板の上面よりも下方に位置する下位置、および、前記環状部の内周縁が前記基板保持部材に保持されている基板の上面よりも上方に位置する上位置の間で、前記環状部材とともに前記第1ガードを昇降させるガード駆動機構をさらに含み、
前記環状部材の内周縁は、前記第1ガードが前記上位置に位置するときに、前記基板保持部材に保持されている基板の上面よりも下方に位置する、請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記基板保持部材が、円板状のベースと、前記ベースよりも上方で前記基板の周縁部を把持する複数の把持ピンとを含み、
前記環状部材の内周縁は、前記第1ガードが前記上位置に位置するときに、前記ベースに側方から対向する、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記基板保持部材に保持されている基板の下面にリンス液を供給する下面リンス液供給部材をさらに含む、請求項に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記環状部、および、前記環状部材の間の空間の雰囲気を、前記通過許容部を介して排出する排出配管をさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項11】
前記第1ガードよりも外側に配置され前記基板保持部材を取り囲む筒状の第2ガードをさらに含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【請求項12】
前記第2ガードよりも外側に配置され、前記基板保持部材を取り囲む筒状の第3ガードをさらに含む、請求項11に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板を処理する基板処理装置に関する。
処理の対象となる基板には、たとえば、半導体ウェハ、液晶表示装置および有機EL(Electroluminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板等が含まれる。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に開示されている基板処理装置は、スピンチャックを取り囲む処理カップを含む。処理カップは、スピンチャックに保持されている基板の周囲に飛散した薬液を受け止める2つのガードを含む。内側の第1のガードは、スピンチャックを取り囲んでおり、外側の第2のガードは、第1のガードの外側において、スピンチャックを取り囲んでいる。
【0003】
第1のガードは、円筒状の筒状部と、筒状部の上面外周部から上方に延びる円筒状の中段部と、中段部の上端から内方に向かって斜め上に延びる円環状の傾斜部とを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-198356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されている基板処理装置では、チャンバ内で形成される気流(ダウンフロー)が、処理カップ内を通って排気ダクトに排出される。第1のガードの傾斜部の下方の空間は、第1のガードおよび第2のガードの空間と比べて大きい。そのため、第1のガードの傾斜部よりも下方の空間では、排気効率が不充分となり易い。排気効率が不充分となることで、気流の乱れが生じ易く、雰囲気の停滞が起こり易い。雰囲気が停滞すると、雰囲気中に含まれる薬液の蒸気およびミストが基板に付着し、基板上にパーティクルが発生するおそれがある。
【0006】
そこで、この発明の1つの目的は、第1ガードの環状部よりも下方における雰囲気の停滞を抑制できる基板処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一実施形態は、基板を水平に保持する基板保持部材と、前記基板保持部材に保持されている基板に薬液を供給する薬液供給ユニットと、前記基板保持部材を取り囲む筒状の第1ガードであって、円筒部、および、前記円筒部よりも内側に向かって前記円筒部から張り出す環状部を有する第1ガードと、前記環状部よりも下方において、前記円筒部よりも内側に向かって前記円筒部から斜め上に張り出す環状部材とを含む、基板処理装置を提供する。前記環状部材が、前記環状部材よりも上方から前記環状部材よりも下方への流体の通過を許容する少なくとも1つの通過許容部を前記環状部材の外周部に有する。
【0008】
この装置によれば、第1ガードの円筒部よりも内側に向かって円筒部から張り出す環状部材が、第1ガードの環状部よりも下方に設けられている。環状部材の外周部には、環状部材よりも上方から環状部材よりも下方への流体の通過を許容する少なくとも1つの通過許容部が設けられている。そのため、第1ガードの環状部よりも下方において、通過許容部を介して環状部材よりも上方から環状部材よりも下方へ向かう気流を形成することができる。これにより、環状部よりも下方において、雰囲気を整流することができ、雰囲気の停滞を抑制できる。
【0009】
基板の上面に供給された薬液は基板の外方に飛散して、円筒部および環状部材によって主に受けられる。通過許容部は、環状部材の外周部に設けられている。そのため、円筒部によって受けられた薬液は、円筒部から落下する際に、または、円筒部に沿って下方に流れる際に、通過許容部を介して環状部材を通過することができる。環状部材は、円筒部よりも内側に向かって円筒部から斜め上に張り出している。そのため、環状部材に付着した薬液は、環状部材に沿って環状部材の外周部に向かって流れる。環状部材の外周部まで流れた薬液は、通過許容部を介して環状部材を通過する。これにより、基板の外方に飛散した薬液が環状部材上に溜まることを抑制できる。したがって、雰囲気の整流のために環状部材を設けた場合において、環状部材上に薬液が溜まることを抑制できる。
【0010】
この発明の一実施形態では、前記環状部材が、前記環状部材の周方向に沿って配置された複数の前記通過許容部を有する。
そのため、環状部材の周方向における整流作用のむらを低減でき、かつ、環状部材に沿って流れて環状部材の外周部に達する薬液を、環状部材よりも下方へ効率良く排出することができる。
【0011】
この発明の一実施形態では、複数の前記通過許容部が、前記周方向に沿って等間隔に設けられている。
この構成によれば、環状部材の周方向における整流作用のむらを一層低減できる。さらに、環状部材に沿って環状部材上を流れて環状部材の外周部に達した薬液を一層効率良く環状部材よりも下方へ排出することができる。
【0012】
この発明の一実施形態では、前記通過許容部が、前記環状部材の外周縁を切り欠く切り欠きを含む。
この構成によれば、切り欠きによって環状部材の外周縁が切り欠かれている。そのため、切り欠きよりも外側には、薬液が溜まる部分が存在しない。したがって、環状部材上の薬液を一層効率良く環状部材よりも下方に排出できる。
【0013】
しかしその一方で、環状部材の外周部を貫通する貫通孔が設けられていてもよい。
この発明の一実施形態では、前記環状部材が、前記環状部と平行に前記円筒部から張り出している。
環状部材と環状部との間には、環状部材の外周部へ向かう放射状気流が形成される。そのため、環状部材が環状部と平行であれば、環状部材の内周部付近における放射状気流の速度と環状部材の外周部付近における放射状気流の速度との差を低減できる。これにより、環状部よりも下方における雰囲気の停滞を一層抑制できる。
【0014】
この発明の一実施形態では、前記環状部材が、前記第1ガードに対して着脱可能である。そのため、基板処理に適した環状部材に適宜取り換えることができる。
前記基板処理装置が、前記環状部材を前記円筒部に対して固定する締付部材をさらに含んでいてもよい。前記環状部材が、前記締付部材によって前記円筒部に固定される固定部を含んでいてもよい。前記締付部材が、前記環状部材を前記第1ガードに固定可能であり、かつ前記第1ガードに対する前記環状部材の固定を解除可能であってもよい。
この発明の一実施形態では、前記薬液供給ユニットが、前記基板保持部材に保持されている基板の上面に薬液を供給する上面薬液供給部材を含む。前記基板処理装置が、前記環状部の内周縁が前記基板保持部材に保持されている基板の上面よりも下方に位置する下位置、および、前記環状部の内周縁が前記基板保持部材に保持されている基板の上面よりも上方に位置する上位置の間で、前記環状部材とともに前記第1ガードを昇降させるガード駆動機構をさらに含む。前記環状部材の内周縁は、前記第1ガードが前記上位置に位置するときに、前記基板保持部材に保持されている基板の上面よりも下方に位置する。
【0015】
この構成によれば、基板の上面を、環状部の内周縁よりも下方で、かつ、環状部材の内周縁よりも上方に位置させることができる。そうすることによって、基板の上面から飛散する薬液を環状部材と環状部との間に流入させることができる。これにより、環状部材と環状部との間で円筒部の外側へ向かう、すなわち、通過許容部へ向かう気流の形成を促進できる。さらに、円筒部の外側へ向かう気流の形成を促進することによって、環状部材および第1ガードからの薬液の跳ね返りを抑制できる。
【0016】
この発明の一実施形態では、前記基板保持部材が、円板状のベースと、前記ベースよりも上方で前記基板の周縁部を把持する複数の把持ピンとを含む。そして、前記環状部材の内周縁は、前記第1ガードが前記上位置に位置するときに、前記ベースに側方から対向する。
この構成によれば、ベースの側方に環状部材の内周縁を対向させることによって、ベースと環状部材との間の隙間を小さくできる。そのため、ベースと環状部材との間を通って下方へ向かう気流を形成することができる。したがって、環状部よりも下方における雰囲気の整流化を補助できる。
【0017】
この発明の一実施形態では、前記薬液供給ユニットが、前記基板保持部材に保持されている基板の下面にリンス液を供給する下面リンス液供給部材を含む。
そのため、基板保持部材のベースに側方から対向する状態で、すなわち、環状部材が基板よりも充分に低い位置に位置する状態で、下面リンス液供給部材から基板の下面に向けてリンス液を供給することができる。そうであれば、基板の下面から排出されるリンス液によって第1ガードおよび環状部材を洗浄することができる。これにより、第1ガードおよび環状部材に付着している薬液を除去することができる。
【0018】
なお、基板の下面からの液体の飛散方向は、基板の上面からの液体の飛散方向よりも下方に向いている。そのため、基板の下面から飛散する液体は、基板の上面から飛散する液体よりも、円筒部よりも内側において、環状部材に付着しやすい。
そのため、基板の上面から飛散する薬液よりも、基板の下面から飛散するリンス液は、環状部材の内周縁付近に付着し易い。したがって、環状部材に付着した薬液の残留を抑制することができる。さらに、基板の上面にリンス液を供給して第1ガードおよび環状部材を洗浄する場合と比較して、環状部材の内周縁付近を洗浄し易い。すなわち、基板の上面にリンス液を供給する場合と比較して、環状部材の全体を洗浄し易い。
【0019】
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記環状部、および、前記環状部材の間の空間の雰囲気を、前記通過許容部を介して排出する排出配管をさらに含む。
この構成によれば、通過許容部を介して環状部材よりも上方から環状部材よりも下方へ向かう気流を強制的に形成することができる。そのため、環状部よりも下方において、雰囲気を整流することができ雰囲気の停滞を抑制できる。
【0020】
この発明の一実施形態では、前記基板処理装置が、前記第1ガードよりも外側に配置され前記基板保持部材を取り囲む筒状の第2ガードをさらに含んでいてもよい。さらに、前記基板処理装置が、前記第2ガードよりも外側に配置され、前記基板保持部材を取り囲む筒状の第3ガードをさらに含んでいてもよい。このように、ガードが複数設けられている構成においても適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置の構成例を説明するための平面図である。
図2図2は、前記基板処理装置に備えられる処理ユニットの構成を説明するための模式図である。
図3A図3Aは、前記処理ユニットに備えられる複数のガードおよびその周辺の断面図であり、複数のガードの配置が第1配置であるときの様子を示す図である。
図3B図3Bは、前記処理ユニットに備えられる複数のガードおよびその周辺の断面図であり、複数のガードの配置が第2配置であるときの様子を示す図である。
図4A図4Aは、前記処理ユニットに備えられる環状部材の斜視図である。
図4B図4Bは、図2に示すIVB-IVB線に沿う断面図である。
図5図5は、前記基板処理装置の電気的構成を説明するためのブロック図である。
図6図6は、前記基板処理装置による基板処理の一例を説明するためのフローチャートである。
図7A図7Aは、前記基板処理が行われているときの複数のガードの様子を説明するための模式図である。
図7B図7Bは、前記基板処理が行われているときの複数の前記ガードの様子を説明するための模式図である。
図8図8は、変形例に係る基板処理を説明するためのフローチャートである。
図9図9は、変形例に係る前記基板処理が行われているときの複数の前記ガードの様子を説明するための模式図である。
図10A図10Aは、第1変形例に係る環状部材の斜視図である。
図10B図10Bは、第1変形例に係る前記環状部材の平面図である。
図11図11は、第2変形例に係る環状部材の平面図である。
図12A図12Aは、第3変形例に係る環状部材の下面図である。
図12B図12Bは、第3変形例に係る前記環状部材の要部の模式図である。
図13図13は、第2実施形態に係る基板処理装置に備えられる処理ユニットの構成を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下では、この発明の実施の形態を、添付図面を参照して説明する。
<第1実施形態に係る基板処理装置の構成>
図1は、この発明の第1実施形態に係る基板処理装置1の構成例を説明するための平面図である。
基板処理装置1は、基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。この実施形態では、基板Wは、円板状を有する。基板Wは、シリコンウエハ等の基板Wであり、一対の主面を有する。
【0023】
基板処理装置1は、基板Wを処理する複数の処理ユニット2と、処理ユニット2で処理される複数枚の基板Wを収容するキャリアC(収容器)が載置されるロードポートLP(収容器保持ユニット)と、ロードポートLPと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する搬送ロボット(第1搬送ロボットIRおよび第2搬送ロボットCR)と、基板処理装置1に備えられる各部材を制御するコントローラ3とを含む。
【0024】
第1搬送ロボットIRは、キャリアCと第2搬送ロボットCRとの間で基板Wを搬送する。第2搬送ロボットCRは、第1搬送ロボットIRと処理ユニット2との間で基板Wを搬送する。各搬送ロボットは、たとえば、多関節アームロボットである。
複数の処理ユニット2は、第2搬送ロボットCRによって基板Wが搬送される搬送経路TRに沿って搬送経路TRの両側に配列され、かつ、上下方向に積層されて配列されている。複数の処理ユニット2は、たとえば、同様の構成を有している。
【0025】
複数の処理ユニット2は、水平に離れた4つの位置にそれぞれ配置された4つの処理タワーTWを形成している。各処理タワーTWは、上下方向に積層された複数の処理ユニット2を含む。4つの処理タワーTWは、ロードポートLPから第2搬送ロボットCRに向かって延びる搬送経路TRの両側に2つずつ配置されている。
処理ユニット2は、基板処理の際に基板Wを収容するチャンバ4を有する。チャンバ4は、第2搬送ロボットCRによって、チャンバ4内に基板Wを搬入したりチャンバ4から基板Wを搬出したりするための出入口(図示せず)と、出入口を開閉するシャッタユニット(図示せず)とを含む。チャンバ4内で基板Wに供給される処理液としては、詳しくは後述するが、薬液、リンス液等が挙げられる。
【0026】
<第1実施形態に係る処理ユニットの構成>
図2は、処理ユニット2の構成を説明するための模式図である。
処理ユニット2は、基板Wを所定の処理姿勢に基板Wを保持しながら、回転軸線A1のまわりに基板Wを回転させるスピンチャック5と、基板Wに向けて処理液を吐出する複数の処理液ノズル(薬液ノズル30、上面リンス液ノズル31、下面リンス液ノズル32)と、スピンチャック5に保持されている基板Wから飛散する処理液を受ける処理カップ8とをさらに含む。スピンチャック5、複数の処理液ノズル、および、処理カップ8は、チャンバ4内に配置されている。
【0027】
回転軸線A1は、基板Wの中心部を通り、処理姿勢に保持されている基板Wの各主面に対して直交する。処理姿勢は、図2に示す基板Wの姿勢であり、基板Wの主面が水平面となる水平姿勢である。処理姿勢が水平姿勢である場合、回転軸線A1は、鉛直に延びる。スピンチャック5は、基板Wを処理姿勢に保持する基板保持部材の一例であり、基板Wを処理姿勢に保持しながら回転軸線A1まわりに基板Wを回転させる回転保持部材の一例でもある。
【0028】
スピンチャック5は、水平方向に沿う円板形状を有するスピンベース21と、スピンベース21の上方で基板Wを把持しスピンベース21よりも上方で基板Wの周縁部を把持する複数の把持ピン20と、スピンベース21に連結され鉛直方向に延びる回転軸22と、回転軸22をその中心軸線(回転軸線A1)のまわりに回転させる回転駆動機構23と、回転軸22および回転駆動機構23を収容するハウジング24とを含む。スピンベース21は、円板状のベースの一例である。
【0029】
複数の把持ピン20は、スピンベース21の周方向に間隔を空けてスピンベース21の上面に配置されている。回転駆動機構23は、たとえば、電動モータ等のアクチュエータを含む。回転駆動機構23は、回転軸22を回転させることでスピンベース21および複数の把持ピン20が回転軸線A1のまわりに回転する。これにより、基板Wは、スピンベース21および複数の把持ピン20とともに回転軸線A1のまわりに回転される。
【0030】
複数の把持ピン20は、基板Wの周縁部に接触して基板Wを把持する閉位置と、基板Wに対する把持を解除する開位置との間で移動可能である。複数の把持ピン20は、開閉機構(図示せず)によって移動される。
複数の把持ピン20は、閉位置に位置するとき、基板Wの周縁部を把持して基板Wを水平に保持する。複数の把持ピン20は、開位置に位置するとき、基板Wに対する把持を解除する一方で、基板Wの周縁部を下方から支持する。開閉機構は、たとえば、リンク機構と、リンク機構に駆動力を付与するアクチュエータとを含む。
【0031】
複数の処理液ノズルは、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面(上側の主面)に向けて、薬液の連続流を吐出する薬液ノズル30と、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に向けてリンス液の連続流を吐出する上面リンス液ノズル31と、スピンチャック5に保持されている基板Wの下面(下側の主面)に向けてリンス液の連続流を吐出する下面リンス液ノズル32とをさらに含む。
【0032】
薬液ノズル30は、スピンチャック5に保持されている基板Wに薬液を供給する薬液供給ユニットの一例である。薬液ノズル30は、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面に処理液を供給する上面薬液供給部材の一例である。
上面リンス液ノズル31および下面リンス液ノズル32は、いずれも、スピンチャック5に保持されている基板Wにリンス液を供給するリンス液供給ユニットの一例である。上面リンス液ノズル31は、スピンチャック5に保持されている基板Wの上面にリンス液を供給する上面リンス液供給部材の一例である。下面リンス液ノズル32は、スピンチャック5に保持されている基板Wの下面にリンス液を供給する下面リンス液供給部材の一例である。
【0033】
薬液ノズル30、および、上面リンス液ノズル31は、複数のノズル移動機構(第1ノズル移動機構35および第2ノズル移動機構36)によって水平方向にそれぞれ移動される。
各ノズル移動機構は、対応するノズルを、中央位置と退避位置との間で移動させることができる。中央位置は、ノズルが基板Wの上面の中央領域に対向する位置である。基板Wの上面の中央領域とは、基板Wの上面において回転中心(中央部)と回転中心の周囲の部分とを含む領域のことである。退避位置は、ノズルが基板Wの上面に対向しない位置であり、処理カップ8の外側の位置である。
【0034】
各ノズル移動機構は、対応するノズルを支持するアーム(図示せず)と、対応するアームを水平方向に移動させるアーム移動機構(図示せず)とを含む。各アーム移動機構は、電動モータ、エアシリンダ等のアクチュエータを含む。
この実施形態とは異なり、薬液ノズル30および上面リンス液ノズル31は、共通のノズル移動機構によって一体移動するように構成されていてもよい。薬液ノズル30および上面リンス液ノズル31は、所定の回動軸線まわりに回動する回動式ノズルであってもよいし、対応するアームが延びる方向に直線的に移動する直動式ノズルであってもよい。薬液ノズル30および上面リンス液ノズル31は、鉛直方向にも移動できるように構成されていてもよい。
【0035】
下面リンス液ノズル32は、たとえば、スピンベース21の中央部に形成された貫通孔と中空の回転軸22とに挿入されている。下面リンス液ノズル32の吐出口は、基板Wの下面の中央領域に下方から対向する。基板Wの下面の中央領域は、基板Wの下面において回転中心(中央部)と回転中心の周囲の部分とを含む領域のことである。
薬液ノズル30から吐出される薬液は、たとえば、過酸化水素水(H)、フッ酸(HF)、希フッ酸(DHF)、バッファードフッ酸(BHF)、塩酸(HCl)、HPM液(hydrochloric acid-hydrogen peroxide mixture:塩酸過酸化水素水混合液)、SPM液(sulfuric acid/hydrogen peroxide mixture:硫酸過酸化水素水混合液)、アンモニア水、TMAH液(Tetramethylammonium hydroxide solution:水酸化テトラメチルアンモニウム溶液)、または、APM液(ammonia-hydrogen peroxide mixture:アンモニア過酸化水素混合液)を含有する。
【0036】
薬液は、過酸化水素水、フッ酸、希フッ酸、バッファードフッ酸、塩酸、HPM液、SPM液をのうちの少なくとも1つを含有する液体であってもよい。また、薬液は、アンモニア水、APM液、TMAH液のうちの少なくとも1つを含有する液体であってもよい。
上面リンス液ノズル31および下面リンス液ノズル32から吐出されるリンス液は、たとえば、DIW(脱イオン水)等の水である。ただし、リンス液は、DIWに限られない。リンス液は、DIWに限られず、DIW、炭酸水、電解イオン水、希釈濃度(たとえば、1ppm以上で、かつ、100ppm以下)の塩酸水、希釈濃度(たとえば、1ppm以上で、かつ、100ppm以下)のアンモニア水、還元水(水素水)のうちの少なくとも1つを含有する液体である。
【0037】
薬液ノズル30は、薬液ノズル30に薬液を案内する薬液配管40に接続されている。薬液配管40には、薬液配管40を開閉する薬液バルブ50が設けられている。薬液バルブ50が薬液配管40に設けられるとは、薬液バルブ50が薬液配管40に介装されることを意味してもよい。以下で説明する他のバルブにおいても同様である。
上面リンス液ノズル31は、上面リンス液ノズル31にリンス液を案内する上面リンス液配管41に接続されている。上面リンス液配管41には、上面リンス液配管41を開閉する上面リンス液バルブ51が設けられている。
【0038】
下面リンス液ノズル32は、下面リンス液ノズル32にリンス液を案内する下面リンス液配管42に接続されている。下面リンス液配管42には、下面リンス液配管42を開閉する下面リンス液バルブ52が設けられている。
図示はしないが、薬液バルブ50は、弁座が内部に設けられたバルブボディと、弁座を開閉する弁体と、開位置と閉位置との間で弁体を移動させるアクチュエータとを含む。他のバルブについても同様の構成を有している。
【0039】
薬液バルブ50が開かれると、薬液ノズル30から薬液の連続流が吐出される。上面リンス液バルブ51が開かれると、上面リンス液ノズル31からリンス液の連続流が吐出される。下面リンス液バルブ52が開かれると、下面リンス液ノズル32からリンス液の連続流が吐出される。
処理カップ8は、スピンチャック5に保持された基板Wから外方に飛散する処理液を受け止める複数のガード25と、複数のガード25によって下方に案内された処理液をそれぞれ受け止める複数のカップ26と、複数のガード25および複数のカップ26を取り囲む円筒状の外壁部材27とを含む。
【0040】
複数のガード25は、平面視でスピンチャック5を取り囲む筒状の第1ガード25Aと、第1ガード25Aよりも外側に配置され、平面視でスピンチャック5を取り囲む筒状の第2ガード25Bとを含む。各ガード25の上端部は、ガード25よりもガード25の中心軸線側に向かうように内側に傾斜している。第1ガード25Aは、内側ガードともいい、第2ガード25Bは、外側ガードともいう。
【0041】
複数のカップ26は、第1ガード25Aによって下方に案内される処理液を受ける第1カップ26Aと、第2ガード25Bによって下方に案内される処理液を受ける第2カップ26Bとを含む。各カップ26は、上向きに開放された環状溝の形態を有している。第2カップ26Bは、第1ガード25Aと単一材料で一体的に形成されている。
複数のガード25および複数のカップ26は、同軸上に配置されている。複数のガード25および複数のカップ26の中心軸線は、互いに一致しており、複数のガード25および複数のカップ26の中心軸線は、回転軸線A1と一致している。
【0042】
第1ガード25Aは、上下方向に延びスピンチャック5を取り囲む第1円筒部60と、第1円筒部60よりも内側に向かって第1円筒部60から張り出す第1環状部61と、第1円筒部60よりも外側に第1円筒部60から間隔を隔てて配置される第1外側円筒部62とを含む。第1円筒部60よりも内側とは、第1円筒部60の中心軸線側(径方向内方)でもあり、回転軸線A1側でもある。逆に、第1円筒部60よりも外側とは、第1円筒部60の中心軸線とは反対側(径方向外方)でもあり、回転軸線A1とは反対側でもある。
【0043】
第1円筒部60の上端部は、第1環状部61の外端部に連結されている。第1外側円筒部62の上端部は、第1円筒部60の中心側に向かって延びており、第1円筒部60の上端部に連結されている。第1円筒部60、第1環状部61および第1外側円筒部62は、単一材料で一体に形成されている。
第2ガード25Bは、上下方向に延びスピンチャック5を取り囲む第2円筒部70と、第2円筒部70よりも内側(第2円筒部の中心軸線側)に向かって第2円筒部70から張り出す第2環状部71とを含む。
【0044】
第1カップ26Aは、第1底壁65と、第1底壁65の内端部から上方に延びる筒状の第1内壁66と、第1底壁65の外端部から上方に延びる筒状の第1外壁67とを含む。第1外壁67は、第1円筒部60および第1外側円筒部62の間に位置する。第1内壁66は、ハウジング24と係合している。
第2カップ26Bは、第2底壁75と、第2底壁75の内端部から上方に延びる筒状の第2内壁76と、第2底壁75の外端部から上方に延びる筒状の第2外壁77とを含む。第2カップ26Bは、第1ガード25Aと単一材料で一体的に形成されている。第2内壁76は、第1外側円筒部62に連結されている。
【0045】
処理ユニット2は、複数のガードを個別に昇降させる複数のガード駆動機構28(第1ガード駆動機構28Aおよび第2ガード駆動機構28B)をさらに含む。
各ガード駆動機構28の構成は特に制限されていないものの、ガード駆動機構28は、たとえば、シリンダ機構、ボールねじ機構、リニアモータ機構、および、ラックアンドピニオン機構の少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0046】
ガード駆動機構28は、たとえば、モータ等のアクチュエータ(図示せず)と、対応するガードに結合され、アクチュエータから付与される駆動力をガードに伝達しガードを昇降させる昇降運動伝達機構(図示せず)とを含む。昇降運動伝達機構は、たとえば、ボールねじ機構またはラックアンドピニオン機構を含む。
処理ユニット2は、チャンバ4の外気を清浄しながらチャンバ4内に送るFFU(ファンフィルタユニット)等の送風ユニット37と、チャンバ4内の雰囲気を排出、すなわち、排気する排出配管38とを含む。送風ユニット37は、チャンバ4の上壁に配置されている。排出配管38は、外壁部材27に接続されている。
【0047】
排出配管38は、排出配管38を介してチャンバ4内の雰囲気を排出する排出ダクト(図示せず)に接続されている。排出ダクト内の雰囲気は吸引装置(図示せず)によって吸引される。吸引装置は、排出ダクトの途中または端部に設けられ排出ダクトを吸引する吸引ポンプ等を含む。排出ダクトおよび吸引装置は、基板処理装置1が設置されるクリーンルームまたはクリーンルームに付随する設備内に設けられている。排気ダクトおよび吸引装置は、基板処理装置1の一部であってもよい。
【0048】
送風ユニット37および排出配管38の作用によって、チャンバ4内の空間には、上方から下方に向かう気流Fが形成される。気流Fは、処理カップ8の内部を通って、排出配管38に流入する。
基板Wに供給された処理液は、基板Wの周縁部から飛散していずれかのガード25によって受けられる。ガード25によって受けられた処理液は、対応するカップ26に案内され、各カップ26に対応する排液配管(図示せず)によって回収または廃棄される。
【0049】
<第1実施形態に係る処理カップの構成>
図3Aおよび図3Bは、複数のガード25およびその周辺の断面図である。
図3Aおよび図3Bを参照して、第1ガード25Aの第1環状部61は、水平方向に対して傾斜しており、第1円筒部60の中心軸線側に向かって斜め上に延びる第1傾斜部80と、第1傾斜部80の内端部から水平に延びる第1水平部81と、第1水平部81の内端部から下方に延びる第1垂下部82とを含む。
【0050】
第2ガードの第2環状部71は、水平方向に対して傾斜し、第2円筒部70の中心軸線側に向かって斜め上に延びる第2傾斜部90と、第2傾斜部90の内端部から水平に延びる第2水平部91と、第2傾斜部90の内端部から下方に延びる第2垂下部92とを含む。
第2環状部71は、上方から第1環状部61に対向している。第2環状部71は、第1環状部61と平行に延びている。
【0051】
処理カップ8は、第1環状部61よりも下方において、第1円筒部60よりも内側に向かって第1円筒部60から斜め上に張り出す環状部材100をさらに含む。環状部材100は、第1環状部61よりも下方で第1円筒部60よりも内側に向かって第1円筒部60から斜め上に延びる下側傾斜部101と、下側傾斜部101の内端部から水平に延びる下側水平部102と、下側水平部102の内端部から下方に延びる下側垂下部103とを含む。環状部材100は、第1環状部61と平行に第1円筒部60から張り出している。環状部材100は、第1円筒部60の中心軸線側に向かって斜め上に延びる上面100aを有する。
【0052】
図4Aは、環状部材100の斜視図である。図4Bは、図2に示すIVB-IVB線に沿う断面図である。図4Aおよび図4Bを参照して、環状部材100は、環状部材100の周方向CDに沿って環状部材100の外周部100b(下側傾斜部101の外周部でもある)に設けられた複数の切り欠き104を有する。環状部材100は、切り欠き104同士の間を仕切る複数の仕切部105を含む。
【0053】
環状部材100の外周部100bは、環状部材100の外周縁と外周縁よりも内側の部分とを含む環状の部分である。逆に、環状部材100の内周部100cは、環状部材100の内周縁と内周縁よりも外側の部分とを含む環状の部分である。外周部100bと内周部100cとの間の部分を中間部という。
環状部材100は、第1ガード25Aに対して取り外し不能である。環状部材100および第1ガード25Aは、いかなる手法によって一体化していてもよい。たとえば、環状部材100は、たとえば、単一材料によって第1ガード25Aと一体に成形されていてもよい。あるいは、環状部材100は、溶接によって第1ガード25Aと一体化していてもよいし、ねじ、リベット、圧入等の機械的接合によって第1ガード25Aと一体化していてもよい。
【0054】
環状部材100の外端部が第1ガード25Aの第1円筒部60に連結されている。複数の切り欠き104は、周方向CDに沿って等間隔に設けられている。図4Aおよび図4Bに示す例では、切り欠き104は、周方向CDに沿って6箇所に形成されている。図4Bに示すように、周方向CDにおける仕切部105の幅W1は、周方向CDにおける切り欠き104の幅W2よりも大きい。
【0055】
図3Aを再び参照して、切り欠き104は、環状部材100および第1環状部61の間の上方空間110から、環状部材100よりも下方の下方空間111への流体(処理液、処理液の蒸気、処理液のミスト)の通過を許容する通過許容部の一例である。
各ガード25は、対応するガード駆動機構28によって、下位置と上位置との間で昇降される。各ガード25は、下位置、上位置、および、これらの間の位置に位置することができる。
【0056】
第1ガード25Aの上位置は、図3Aに示す位置であり、第1ガード25Aの下位置は、図3Bに示す位置である。図3Aおよび図3Bに示す第2ガード25Bの位置は上位置である。
第1ガード25Aおよび第2ガード25Bがともに上位置に位置するとき、基板Wから飛散する処理液は、第1ガード25Aによって受けられる。第1ガード25Aが下位置に位置し、第2ガード25Bが上位置に位置するとき、基板Wから飛散する処理液は、第2ガード25Bによって受けられる。
【0057】
各ガード25の上位置は、処理姿勢でスピンチャック5に保持されている基板Wの上面よりもガード25の上端(内周縁)が上方に位置する位置である。各ガード25の下位置は、処理姿勢でスピンチャック5に保持されている基板Wの上面よりもガード25の上端(内周縁)が下方に位置する位置である。
第1ガード25Aおよび第2ガード25Bが上位置に位置するときの複数のガード25の配置、すなわち、図3Aに示す複数のガード25の配置を「第1配置」という。第1ガード25Aが下位置に位置し第2ガード25Bが上位置に位置するときの複数のガード25の配置、すなわち、図3Bに示す複数のガード25の配置を「第2配置」という。
【0058】
環状部材100は、第1ガード駆動機構28Aによって、第1ガード25Aとともに昇降される。第1ガード25Aが上位置に位置するとき、環状部材100の内周縁は、スピンベース21に側方から対向する。そのため、第1ガード25Aが上位置に位置するとき、環状部材100の内周縁は、処理姿勢でスピンチャック5に保持されている基板Wの上面よりも下方に位置する。
【0059】
第1ガード25Aが上位置に位置するとき、環状部材100の内周縁は、スピンベース21の上面21aと同じ高さ位置に位置することが一層好ましいが、環状部材100の内周縁の位置は、スピンベース21の上面21aよりも低くてもよい。具体的には、第1ガード25Aが上位置に位置するとき、環状部材100の内周縁は、スピンベース21の上面21aよりも低くスピンベース21に側方から対向してもよい。
【0060】
図3Aに示すように、環状部材100と第1環状部61との間には、環状部材100の外周部100bへ向かう放射状の気流(放射状気流F3)が形成される。さらに、第1円筒部60と第2円筒部70との間を下方へ向かう外方気流F1と、環状部材100の内周縁およびスピンベース21の間の隙間G1とを通って、上方空間110から下方空間111へ向かう内方気流F2とが形成される。
【0061】
図3Bに示すように、第1環状部61および第2環状部71の間には、第1環状部61へ向かう放射状の気流(放射状気流F6)が形成される。さらに、上方空間110から下方空間111へ向かう外方気流F4と、第1環状部61の内周縁およびスピンベース21の間の隙間G2とを通って、下方へ向かう内方気流F5とが形成される。
図示しないが、第1ガード25Aおよび第2ガード25Bがともに下位置に位置するときには、第2搬送ロボットCRが、チャンバ4内に基板Wを搬入したりチャンバ4内から基板Wを搬出したりすることができる。
【0062】
<第1実施形態に係る基板処理の電気的構成>
図5は、基板処理装置1の電気的構成を説明するためのブロック図である。
コントローラ3は、マイクロコンピュータを備え、所定の制御プログラムに従って基板処理装置1に備えられた制御対象を制御する。
具体的には、コントローラ3は、プロセッサ3A(CPU)と、制御プログラムが格納されたメモリ3Bとを含む。コントローラ3は、プロセッサ3Aが制御プログラムを実行することによって、基板処理のための様々な制御を実行するように構成されている。
【0063】
とくに、コントローラ3は、第1搬送ロボットIR、第2搬送ロボットCR、回転駆動機構23、第1ノズル移動機構35、第2ノズル移動機構36、ガード駆動機構28、送風ユニット37、薬液バルブ50、上面リンス液バルブ51、下面リンス液バルブ52等を制御するようにプログラムされている。
コントローラ3によってバルブが制御されることによって、対応するノズルからの流体の吐出の有無や、対応するノズルからの流体の吐出流量が制御される。
【0064】
以下に示す各工程は、コントローラ3が基板処理装置1に備えられる各部材を制御することにより実行される。言い換えると、コントローラ3は、以下に示す各工程を実行するようにプログラムされている。
また、図5には、代表的な部材が図示されているが、図示されていない部材についてコントローラ3によって制御されないことを意味するものではなく、コントローラ3は、基板処理装置1に備えられる各部材を適切に制御することができる。図5には、後述する各変形例および第2実施形態で説明する部材についても併記しており、これらの部材もコントローラ3によって制御される。
【0065】
<基板処理の一例>
図6は、基板処理装置1によって実行される基板処理の一例を説明するためのフローチャートである。図7Aおよび図7Bは、基板処理が行われているときの複数のガード25の様子を説明するための模式図である。図6には、主として、コントローラ3がプログラムを実行することによって実現される処理が示されている。
【0066】
基板処理装置1による基板処理では、たとえば、図6に示すように、基板搬入工程(ステップS1)、薬液供給工程(ステップS2)、下面リンス工程(ステップS3)、ガード切換工程(ステップS4)、上面リンス工程(ステップS5)、スピンドライ工程(ステップS6)および基板搬出工程(ステップS7)がこの順番で実行される。以下では、図2および図6を主に参照し、基板処理の詳細について説明する。図7Aおよび図7Bについては適宜参照する。
【0067】
まず、未処理の基板Wは、第2搬送ロボットCR(図1を参照)によってキャリアCから処理ユニット2に搬入され、スピンチャック5に渡される(基板搬入工程:ステップS1)。これにより、基板Wは、スピンチャック5によって水平に保持される(基板保持工程)。スピンチャック5に基板Wが保持されている状態で、回転駆動機構23が基板Wの回転を開始する(基板回転工程)。基板Wは、スピンドライ工程(ステップS6)が終了するまで、スピンチャック5によって保持され続ける。また、基板処理の実行中において、チャンバ4内の空間には、上方から下方に向かう気流F(図2を参照)が常時形成されており、気流Fは、処理カップ8の内部を通って、排出配管38に流入している。
【0068】
第2搬送ロボットCRが処理ユニット2外に退避した後、基板Wの上面に薬液を供給する薬液供給工程(ステップS2)が実行される。具体的には、複数のガード駆動機構28によって、複数のガード25の配置が第1配置に変更される。第1ノズル移動機構35が、薬液ノズル30を処理位置に移動させる。処理位置は、たとえば、中央位置である。
この状態で薬液バルブ50を開くことで、薬液ノズル30から基板Wの上面に向けて、薬液の連続流が吐出(供給)される(薬液吐出工程、薬液供給工程)。
【0069】
図7Aに示すように、基板Wの上面に供給された薬液は、基板Wの回転の遠心力の作用によって、基板Wの上面の周縁部に向かって移動して基板Wの上面の全体に広がる。これにより、基板Wの上面が薬液によって処理される。基板Wの上面の薬液は、基板Wの上面の周縁部から基板W外へ飛散して、第1円筒部60および環状部材100によって主に受けられる。
【0070】
複数の切り欠き104は、環状部材100の外周部100bに設けられている。そのため、第1円筒部60によって受けられた薬液は、第1円筒部60から落下する際に、または、第1円筒部60に沿って下方に流れる際に、複数の切り欠き104を介して環状部材100を通過する。
上述したように、環状部材100は、第1円筒部60よりも内側に向かって第1円筒部60から斜め上に張り出す。そのため、環状部材100の上面100aに付着した薬液は、環状部材100の外周部100bに向かって流れる。環状部材100の外周部100bまで流れた薬液は、複数の切り欠き104を介して環状部材100を通過する。これにより、基板Wから飛散した薬液が環状部材100の上面100aに溜まることを抑制できる。切り欠き104に流入した薬液は、落下し、第1カップ26A(図2を参照)に受けられる。
【0071】
図7Aに示すように、薬液供給工程(ステップS2)の実行中、複数のガード25の配置は、第1配置である。そのため、薬液供給工程(ステップS2)の実行中には、外方気流F1および内方気流F2が形成される。
薬液供給工程(ステップS2)の後、基板Wの下面にリンス液を供給して基板Wの下面を洗浄する下面リンス工程(ステップS3)が実行される。
【0072】
具体的には、薬液バルブ50が閉じられて、基板Wの上面への薬液の供給が停止される。その代わりに、下面リンス液バルブ52が開かれる。これにより、下面リンス液ノズル32から基板Wの下面へのリンス液の供給が開始される。薬液ノズル30は、退避位置に移動される。
図7Bに示すように、基板Wの下面に供給されたリンス液は、基板Wの回転の遠心力の作用によって、基板Wの下面の周縁部に向かって移動し基板Wの下面の全体に広がる。これにより、基板Wの下面が洗浄される。そのため、基板Wの周縁部を伝って基板Wの下面に付着した薬液を基板Wの下面から排除できる。基板Wの下面のリンス液は、基板Wの上面の周縁部から飛散して、第1円筒部60および環状部材100によって主に受けられる。
【0073】
第1円筒部60によって受けられたリンス液は、第1円筒部60から落下する際に、または、第1円筒部60に沿って下方に流れる際に、複数の切り欠き104を介して環状部材100を通過する。環状部材100に付着したリンス液は、環状部材100に沿って環状部材100の外周部100bに向かって流れる。環状部材100の外周部100bまで流れたリンス液は、複数の切り欠き104を介して環状部材100を通過する。これにより、基板Wから飛散したリンス液が環状部材100の上面100aに溜まることを抑制できる。切り欠き104に流入したリンス液は、落下し、第1カップ26A(図2を参照)で受けられる。
【0074】
下面リンス工程(ステップS3)では、スピンベース21に側方から対向する状態で、すなわち、環状部材100が基板Wよりも充分に低い位置に位置する状態で、下面リンス液ノズル32から基板Wの下面に向けてリンス液が供給される。そのため、基板Wの下面から飛散するリンス液の少なくとも一部は、環状部材100の上面100aに付着する。環状部材100の上面100aに付着したリンス液は、上面100aに沿って環状部材100の外周縁に向かって流れる。これにより、環状部材100を洗浄し、環状部材100に付着しているリンス液を除去することができる。
【0075】
なお、基板Wから排出されるリンス液は、複数の把持ピン20に衝突する。そのため、リンス液は、上下に広がりながら飛散する。基板Wの下面から飛散するリンス液は、基板Wによって、上方への飛散が抑制される。そのため、基板Wの下面からのリンス液の飛散方向は、基板Wの上面からの薬液の飛散方向よりも下方に向いている。そのため、基板Wの下面から飛散するリンス液は、基板Wの上面から飛散する薬液よりも、第1円筒部60よりも内側において、環状部材100に付着しやすい。
【0076】
そのため、基板Wの上面から飛散する薬液よりも、基板Wの下面から飛散するリンス液は、環状部材100の内周縁付近(内周部100c)に付着し易い。したがって、環状部材100に付着した薬液の残留を抑制することができる。さらに、基板Wの上面にリンス液を供給して環状部材100を洗浄する場合と比較して、環状部材100の内周部100cを洗浄し易い。すなわち、基板Wの上面にリンス液を供給して環状部材100を洗浄する場合と比較して、環状部材100の全体を洗浄し易い。
【0077】
図7Bに示すように、下面リンス工程(ステップS3)の実行中においても、複数のガード25の配置は、第1配置である。そのため、下面リンス工程(ステップS3)の実行中においても、外方気流F1および内方気流F2が形成される。
下面リンス工程(ステップS3)の後、複数のガード25の配置を第1配置から第2配置に切り換えるガード切換工程(ステップS4)が実行される。
【0078】
具体的には、下面リンス液バルブ52が閉じられて基板Wの下面へのリンス液の供給が停止される。その後、第1ガード駆動機構28Aによって、第1ガード25Aが下位置に移動される。一方、第2ガード25Bは、上位置に維持される。これにより、複数のガード25の配置が第2配置(図3Bに示す配置)に切り換えられる。
ガード切換工程(ステップS4)の後、基板Wの上面にリンス液を供給し基板Wの上面を洗浄する上面リンス工程(ステップS5)が実行される。
【0079】
具体的には、第2ノズル移動機構36が、上面リンス液ノズル31を処理位置に移動させる。処理位置は、たとえば、上面リンス液ノズル31が基板Wの上面の中央領域に対向する位置である。この状態で上面リンス液バルブ51を開くことで、上面リンス液ノズル31から基板Wの上面に向けて、リンス液の連続流が吐出(供給)される(上面リンス液吐出工程、上面リンス液供給工程)。
【0080】
基板Wの上面に供給されたリンス液は、基板Wの回転の遠心力の作用によって、基板Wの上面の周縁部に向かって移動して基板Wの上面の全体に広がる。基板Wの上面のリンス液は、基板Wの上面の周縁部から基板W外へ飛散する。基板Wの上面から飛散したリンス液は、主に、第2ガード25Bの第2円筒部70によって受けられる。第2円筒部70によって受けられたリンス液は、第2円筒部70によって下方に案内されて第2カップ26B(図2を参照)で受けられる。下面リンス工程の後に上面リンス工程を行うことで、上面リンス工程に先立って環状部材100が洗浄されるため、第2ガード25Bによって受けられる薬液の量を低減することができる。
【0081】
なお、上面リンス工程(ステップS5)では、たとえば、基板Wを低速度(たとえば、10rpm)で回転させている状態から、基板Wの回転を加速して基板Wの回転速度を高速度(たとえば、1500rpm)とし、その後、再び、基板Wの回転を低速度(たとえば、10rpm)としてもよい。
次に、基板Wを高速回転させて基板Wの上面を乾燥させるスピンドライ工程(ステップS6)が実行される。具体的には、上面リンス液バルブ51を閉じて基板Wの上面へのリンス液の供給を停止させる。
【0082】
そして、回転駆動機構23が基板Wの回転を加速し、基板Wを高速回転(たとえば、1500rpm)させる。それによって、大きな遠心力が基板Wに付着しているリンス液に作用し、リンス液が基板Wの周囲に振り切られる。
スピンドライ工程(ステップS6)の後、回転駆動機構23が基板Wの回転を停止させる。その後、第2搬送ロボットCRが、処理ユニット2に進入して、スピンチャック5から処理済みの基板Wを受け取って、処理ユニット2外へと搬出する(基板搬出工程:ステップS7)。その基板Wは、第2搬送ロボットCRから第1搬送ロボットIRへと渡され、第1搬送ロボットIRによって、キャリアCに収納される。
【0083】
<第1実施形態のまとめ>
第1実施形態によれば、第1ガード25Aの第1円筒部60よりも内側に向かって第1円筒部60から張り出す環状部材100が、第1ガード25Aの第1環状部61よりも下方に設けられている。環状部材100の外周部100bには、環状部材100よりも上方から環状部材100よりも下方への流体の通過を許容する複数の切り欠き104が設けられている。そのため、第1ガード25Aの第1環状部61よりも下方において、複数の切り欠き104を介して環状部材100よりも上方から環状部材100よりも下方へ向かう外方気流F1を形成することができる。これにより、第1環状部61よりも下方において、雰囲気を整流することができ、雰囲気の停滞を抑制できる。
【0084】
複数の切り欠き104、および、環状部材100の内周縁およびスピンベース21の間の隙間G1の断面積は、環状部材100が設けられていない場合の第1環状部61よりも下方の空間の断面積よりも小さい。外方気流F1および内方気流F2の線速度は、環状部材100が設けられていない場合において第1環状部61よりも下方で生じる気流の線速度と比較して高い。線速度は、単位面積当たりの気体の速度である。そのため、第1環状部61よりも下方において、雰囲気を整流することができ、雰囲気の停滞を抑制できる。
【0085】
上方空間110には、環状部材100の内周部100cから外周部100bへ向かって雰囲気が流入する。そのため、上方空間110では、環状部材100の外周部100bの近傍において特に雰囲気が停滞し易い。第1実施形態によれば、複数の切り欠き104は、環状部材100の外周部100bに設けられている。そのため、上方空間110に雰囲気が停滞することを抑制できる。これにより、雰囲気中に含まれる薬液の蒸気およびミストが基板Wに付着することを抑制でき、基板W上にパーティクルが発生することを抑制できる。
【0086】
基板Wの上面に供給された処理液は基板Wから飛散する。複数の切り欠き104は、環状部材100の外周部100bに設けられている。そのため、第1円筒部60によって受けられた処理液は、第1円筒部60から落下する際に、または、第1円筒部60に沿って下方に流れる際に、複数の切り欠き104を介して環状部材100を通過することができる。環状部材100に付着した処理液は、環状部材100に沿って環状部材100の外周部100bに向かって流れる。
【0087】
環状部材100の外周部100bまで流れた処理液は、複数の切り欠き104を介して環状部材100を通過する。これにより、基板Wから飛散した処理液が環状部材100の上面100aに溜まることを抑制できる。したがって、雰囲気の整流のために環状部材100を設けることに起因して環状部材100の上面100aに処理液が溜まることを抑制できる。
【0088】
第1実施形態によれば、環状部材100が第1ガード25Aに取り付けられており、第1ガード25Aと一体的に昇降する。そのため、環状部材100を昇降させるための駆動機構を第1ガード駆動機構28Aとは別に設ける必要がない。したがって、複数のガード25および環状部材100の昇降に要する部材のコストを削減できる。
基板Wへの薬液の再付着がパーティクルの原因となり易いため、上方空間110での薬液雰囲気の停滞を抑制することが特に重要である。そのため、環状部材100による整流作用によるパーティクルの抑制効果は、基板Wに対して薬液を供給する際に、より顕著となる。
【0089】
基板Wへの薬液の供給を停止した後においても、上方空間110には薬液雰囲気が残存している場合がある。そのため、薬液供給工程(ステップS2)の直後に基板Wにリンス液を供給する際には、すなわち、下面リンス工程(ステップS3)では、複数のガード25の配置を第1配置としておくことが好ましい。
第1実施形態によれば、環状部材100には、周方向CDに沿って配置された複数の切り欠き104が形成されている。そのため、環状部材100の周方向CDにおける整流作用のむらを低減でき、かつ、環状部材100に沿って流れて環状部材100の外周部100bに達する薬液を、環状部材100よりも下方へ効率良く排出することができる。
【0090】
第1実施形態によれば、複数の切り欠き104が、周方向CDに沿って等間隔に設けられている。そのため、環状部材100の周方向CDにおける整流作用のむらを一層低減できる。さらに、環状部材100の上面100aに沿って流れて環状部材100の外周部100bに達した薬液を一層効率良く環状部材100よりも下方へ排出することができる。
第1実施形態によれば、環状部材100の外周縁は、周方向CDに沿う複数箇所において、切り欠かれている。そのため、複数の切り欠き104よりも外側には薬液が溜まる部分が存在しない。したがって、環状部材100上の薬液を一層効率良く環状部材100よりも下方に排出できる。
【0091】
第1実施形態によれば、環状部材100が、第1環状部61と平行に第1円筒部60から張り出している。環状部材100が第1環状部61と平行であれば、環状部材100の内周部100c付近における放射状気流F3の速度と環状部材100の外周部100b付近における放射状気流F3の速度との差を低減できる。これにより、第1環状部61よりも下方における雰囲気の停滞を一層抑制できる。
【0092】
環状部材100の内周縁は、第1ガード25Aが上位置に位置するときに、基板Wの上面よりも下方に位置する。そのため、基板Wの上面を、第1環状部61の内周縁よりも下方で、かつ、環状部材100の内周縁よりも上方に位置させることができる。そうすることによって、基板Wの上面から飛散する薬液を環状部材100と第1環状部61との間に流入させることができる。これにより、環状部材100と第1環状部61との間で第1円筒部60の外側へ向かう放射状気流F3の形成を促進できる。さらに、放射状気流F3の形成を促進することによって、環状部材100および第1ガード25Aからの薬液の跳ね返りを抑制できる。
【0093】
第1実施形態によれば、環状部材100の内周縁は、第1ガード25Aが上位置に位置するときに、スピンベース21に側方から対向する。スピンベース21の側方に環状部材100の内周縁を対向させることによって、スピンベース21と環状部材100との間の隙間G1を小さくできる。そのため、スピンベース21と環状部材100との間を通って下方へ向かう気流(内方気流F2)を形成することができる。したがって、第1環状部61よりも下方における雰囲気の整流化を補助できる。
【0094】
ただし、第1実施形態とは異なり環状部材100の外周部100bに切り欠き104が設けられていなければ、環状部材100の外周部100b付近の雰囲気の停滞を解消することが困難である。そのため、内方気流F2を形成できる場合であっても、環状部材100には、切り欠き104が設けられている必要がある。
第1実施形態によれば、排出配管38によって、上方空間110の雰囲気が複数の切り欠き104を介して排出される。そのため、内方気流F2および外方気流F1を強制的に形成することができる。そのため、第1環状部61よりも下方において、雰囲気を整流することができ雰囲気の停滞を抑制できる。
【0095】
<変形例に係る基板処理>
図8は、変形例に係る基板処理を説明するためのフローチャートである。図9は、変形例に係る基板処理が行われているときの複数のガード25の様子を説明するための模式図である。
変形例に係る基板処理では、薬液供給工程(ステップS2)の後に、図9に示すように、複数のガード25の配置を第1配置に維持しながら、基板Wの下面とともに基板Wの上面を洗浄するリンス工程(ステップS10)が実行される。具体的には、基板Wの上面への薬液の供給が停止された後、上面リンス液ノズル31からのリンス液の供給および下面リンス液ノズル32からのリンス液の供給が開始される。基板Wから飛散するリンス液は、第1円筒部60および環状部材100によって主に受けられる。
【0096】
第1円筒部60によって受けられたリンス液は、第1円筒部60から落下する際に、または、第1円筒部60に沿って下方に流れる際に、複数の切り欠き104を介して環状部材100を通過する。環状部材100に付着したリンス液は、環状部材100に沿って環状部材100の外周部100bに向かって流れる。環状部材100の外周部100bまで流れたリンス液は、複数の切り欠き104を介して環状部材100を通過する。これにより、基板Wから飛散したリンス液が環状部材100の上面100aに溜まることを抑制できる。切り欠き104に流入したリンス液は、落下し、第1カップ26A(図2を参照)で受けられる。
【0097】
リンス工程(ステップS10)では、スピンベース21に側方から対向する状態で、すなわち、環状部材100が基板Wよりも充分に低い位置に位置する状態で、基板Wの上面および下面の両方に向けてリンス液が供給される。そのため、基板Wの上面および下面から飛散するリンス液の少なくとも一部は、環状部材100の上面100aに付着する。環状部材100の上面100aに付着したリンス液は、上面100aに沿って環状部材100の外周縁に向かって流れる。これにより、環状部材100を洗浄し、環状部材100に付着しているリンス液を除去することができる。
【0098】
上述したように、基板Wの下面から飛散するリンス液は、基板Wの上面から飛散するリンス液よりも、第1円筒部60よりも内側において、環状部材100に付着しやすい。そのため、基板Wの上面にリンス液を供給して環状部材100を洗浄する場合と比較して、環状部材100の内周縁を洗浄し易い。すなわち、基板Wの上面のみにリンス液を供給して環状部材100を洗浄する場合と比較して、環状部材100の全体を洗浄し易い。
【0099】
その後、ガード切換工程(ステップS4)が実行される。ガード切換工程(ステップS4)の後、スピンドライ工程(ステップS6)が実行される。上面リンス工程(ステップS5)が省略される。
変形例に係る基板処理によれば、基板Wの上面および下面を同時に洗浄することができる。そのため、薬液供給工程(ステップS2)の後に下面リンス工程(ステップS3)を実行し、ガード切換工程(ステップS4)の後に上面リンス工程(ステップS5)を実行する場合と比較して、基板処理に要する時間を短縮できる。
【0100】
<変形例に係る環状部材>
以下では、第1変形例~第3変形例に係る環状部材100の構成について説明する。
図10Aは、第1変形例に係る環状部材100の斜視図である。図10Bは、第1変形例に係る環状部材100の平面図である。
第1変形例に係る環状部材100では、切り欠き104が、周方向CDに沿って24箇所に形成されている。周方向CDにおける仕切部105の幅W1が、周方向CDにおける切り欠き104の幅W2よりも短い。
【0101】
切り欠き104が設けられている箇所は、6箇所または24箇所に限られず、環状部材100の外周縁の少なくとも1箇所に切り欠き104が設けられていればよい。また、切り欠き104が2箇所以上に設けられていれば、周方向CDにおける整流作用のむらを低減でき、かつ、環状部材100に沿って流れて環状部材100の外周部100bに達する薬液を、環状部材100よりも下方へ効率良く排出することができる。
【0102】
図10Aおよび図10Bに示す環状部材100は、図4Aおよび図4Bに示す環状部材100と比較して、平面視における切り欠き104の面積(開口面積)が大きい。図10Aおよび図10Bに示す環状部材100の排液効率は、図4Aおよび図4Bに示す環状部材100の排液効率よりも高い。そのため、図4Aおよび図4Bに示す環状部材100よりも、基板Wの周縁部へ跳ね返る処理液の量が少なく、ディフェクト等の基板不良の発生を一層低減できる。また、開口面積が大きいため、環状部材100の外周部100bに残存する処理液の量が少ない状態を維持できるため、パーティクル源(パーティクル溜まり)になりにくい。
【0103】
図11は、第2変形例に係る環状部材100の平面図である。図11に示すように、環状部材100の外周部100bには、複数の切り欠き104の代わりに、複数の貫通孔106が形成されていてもよい。貫通孔106が形成されている場合には、貫通孔106よりも外側には、貫通孔106の周縁部106aが存在する。そのため、図4Aおよび図4Bに示すように、切り欠き104が設けられている構成の方が、環状部材100の上面100aに薬液が溜まることを抑制できる。
【0104】
図12Aは、第3変形例に係る環状部材100の下面図である。図12Bは、第3変形例に係る環状部材100の要部の模式図である。図12Aおよび図12Bに示すように、環状部材100は、第1ガード25Aに対して着脱可能であってもよい。
具体的には、処理カップ8は、環状部材100を第1ガード25Aに対して締め付けることで締付部材120を含む。複数の締付部材120は、周方向CDに等間隔で配置されている。
【0105】
締付部材120は、ボルト121と、ボルト軸部121aに取り付けられるナット122とを含む。ボルト頭部121bと第1円筒部60との間には、ワッシャ(図示せず)が設けられていてもよい。環状部材100は、下側傾斜部101の外周端から下方に向かって延び、締付部材120によって第1円筒部60に固定される複数の固定部107を含む。
【0106】
締付部材120は、固定部107と同数設けられている。固定部107は、仕切部105から下方に向かって延びている。固定部107は、全ての仕切部105に設けられている。固定部107は、必ずしも全ての仕切部105に設けられている必要はなく、第1ガード25Aに対して環状部材100を固定できるのであれば、固定部107の数は任意である。
【0107】
環状部材100は、各固定部107に設けられ対応するナット122を収容する収容凹部108と、収容凹部108の底面でありナット122を載置する載置面108aと、載置面108aを貫通しボルト軸部121aが挿入される第1挿入孔108bとを有する。固定部107は、締付部材120と同数設けられる。ナット122は、回転しないように収容凹部108内に収容されている。
【0108】
第1円筒部60は、第1挿入孔108bと重なる位置に第1挿入孔108bと同数設けられ、ボルト軸部121aが挿入される第2挿入孔61aを有する。
ボルト頭部121bを締付方向に回転させることで、環状部材100を第1ガード25Aに固定する(取り付ける)ことができる。逆に、ボルト頭部121bを締付解除方向に回転させることで、第1ガード25Aに対する環状部材100の固定を解除することができる。複数の締付部材120による固定を全て解除することで、環状部材100を第1ガード25Aから取り外すことができる。
【0109】
このように、環状部材100が第1ガード25Aに対して着脱可能であれば、基板処理の内容に応じて、基板処理に適した環状部材100に適宜取り換えることができる。具体的には、基板処理における排気流量によって、切り欠き104の大きさを変更したり、基板処理で用いられる薬液の種類によって、環状部材100の材質を変更したりすることができる。
【0110】
<第2実施形態に係る基板処理装置>
図13は、第2実施形態に係る基板処理装置1Aに備えられている処理ユニット2の構成を説明するための模式図である。図13において、前述の図1図12Bに示された構成と同等の構成については、図1等と同一の参照符号を付してその説明を省略する。
第2実施形態に係る処理ユニット2が第1実施形態に係る処理ユニット2と主に異なる点は、第2実施形態に係る処理カップ8が、第2ガード25Bよりも外側に配置され、スピンチャック5を取り囲む筒状の第3ガード25Cと、第3ガード25Cによって下方に案内される処理液を受ける第3カップ26Cとをさらに含む点である。
【0111】
第3ガード25Cは、上下方向に延びスピンチャック5を取り囲む第3円筒部130と、第3円筒部130よりも内側(第3円筒部130の中心軸線側)に向かって第3円筒部130から張り出す第3環状部131とを含む。
第2ガード25Bは、第2円筒部70よりも外側に第2円筒部70から間隔を隔てて配置される第2外側円筒部72をさらに含む。第2円筒部70の上端部は、第2環状部71の外端部に連結されている。第2外側円筒部72の上端部は、第2円筒部70よりも内側に向かって延びており、第2円筒部70の上端部に連結されている。
【0112】
第3カップ26Cは、第3底壁135と、第3底壁135の内端部から上方に延びる筒状の第3内壁136と、第3底壁135の外端部から上方に延びる筒状の第3外壁137とを含む。第3カップ26Cは、第2ガード25Bと単一材料で一体的に形成されている。第3内壁136は、第2外側円筒部72と連結されている。
第2実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。第2実施形態においても、上述した各変形例(図8図12B)を適用することができる。
【0113】
<その他の実施形態>
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、さらに他の形態で実施することができる。
(1)たとえば、上述の各実施形態とは異なり、ガード25が複数設けられておらず、第1ガード25Aのみが設けられていてもよい。また、ガード25が4つ以上設けられていてもよい。カップ26は、ガード25と同数設けられる。
【0114】
(2)各ガード25の構成は、上述したものに限られない。たとえば、第1ガード25Aの第1円筒部60の直径は均一である必要はなく、上下方向に沿って直径が変化していてもよい。第1ガード25Aは、第1円筒部60よりも外側に向かって第1円筒部60から斜め上に延びる部分、または、第1円筒部60よりも内側に向かって第1円筒部60から斜め上に延びる部分を有していてもよい。また、第1ガード25Aには、第1垂下部82が設けられていなくてもよいし、第1水平部81が設けられていなくてもよい。他のガード25についても同様である。環状部材100にも、下側垂下部103が設けられていなくてもよいし、下側水平部102が設けられていなくてもよい。
【0115】
(3)上述の各実施形態では、スピンチャック5は、基板Wの周縁を複数の把持ピン20で把持する把持式のスピンチャック5であるが、スピンチャック5は把持式のスピンチャック5に限られない。たとえば、スピンチャック5は、スピンベース21に基板Wを吸着させる真空吸着式のスピンチャック5であってもよい。また、基板保持部材は、必ずしも基板Wを回転させる必要はなく、基板Wを処理姿勢(たとえば、水平姿勢)に保持するように構成されていればよい。
【0116】
(4)上述の各実施形態では、第1ガード25Aが上位置に位置するとき、環状部材100の内周縁は、スピンベース21に側方から対向する。しかしながら、第1ガード25Aが上位置に位置するとき、環状部材100の内周縁は、スピンベース21の上面21aよりも上方に位置していてもよい。たとえば、第1ガード25Aが上位置に位置するとき、環状部材100の内周縁は、基板Wの上面と同じ高さに位置してもよいし、基板Wの上面とスピンベース21との間の高さに位置していてもよい。
【0117】
(5)上述の各実施形態では、複数のノズルから処理液が吐出されるように構成されている。しかしながら、上述の実施形態とは異なり、水平方向における位置が固定された固定ノズルから基板Wの上面に向けて処理液が吐出されてもよいし、単一のノズルから複数の処理液が吐出されるように構成されていてもよい。また、薬液供給部材、上面リンス液供給部材、および、下面リンス液供給部材は、ノズルの形態を有している必要はなく、液体を吐出する吐出口が設けられた部材であれば、ノズルとは異なる形態であってもよい。
【0118】
(6)また、上述の各実施形態とは異なり、基板Wの下面に薬液を供給する下面薬液ノズルが設けられていてもよく、基板処理において基板Wの下面が薬液によって処理されてもよい。下面薬液ノズルは薬液供給ユニットの一例である。薬液ノズル30(上面薬液ノズル)および下面薬液ノズルの両方が設けられていてもよく、この場合、上面薬液ノズルおよび下面薬液ノズルによって薬液供給ユニットが構成される。
【0119】
(7)また、基板処理は、図6および図8に示したものに限られない。たとえば、図6の基板処理から下面リンス工程が省略されてもよい。薬液ノズル30の代わりに下面薬液ノズルが設けられている場合には、薬液供給工程において、基板Wの下面に薬液が供給される。
(8)上述の各実施形態とは異なり、基板Wの上面に上方から対向し、平面視で基板Wと同等の大きさの円形状を有する遮断板(図示せず)が設けられていてもよい。遮断板は、基板Wの上面に近接する近接位置に配置されることで、基板Wの上面と遮断板との間への気流の流入を抑制する。
【0120】
(9)上述の各実施形態では、コントローラ3が基板処理装置1の全体を制御する。しかしながら、基板処理装置1の各部材を制御するコントローラは、複数箇所に分散されていてもよい。
(10)また、上述の実施形態では、基板処理装置1,1Aが、搬送ロボット(第1搬送ロボットIRおよび第2搬送ロボットCR)と、複数の処理ユニット2と、コントローラ3とを備えている。しかしながら、基板処理装置1,1Aは、単一の処理ユニット2とコントローラ3とによって構成されており、搬送ロボットを含んでいなくてもよい。あるいは、基板処理装置1,1Aは、単一の処理ユニット2のみによって構成されていてもよい。言い換えると、処理ユニット2が基板処理装置の一例であってもよい。
【0121】
(11)なお、上述の実施形態では、「沿う」、「水平」、「鉛直」、「円筒」といった表現を用いたが、厳密に「沿う」、「水平」、「鉛直」、「円筒」であることを要しない。すなわち、これらの各表現は、製造精度、設置精度等のずれを許容するものである。
(12)また、各構成を模式的にブロックで示している場合があるが、各ブロックの形状、大きさおよび位置関係は、各構成の形状、大きさおよび位置関係を示すものではない。
【0122】
その他、特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0123】
1 :基板処理装置
1A :基板処理装置
5 :スピンチャック(基板保持部材)
20 :把持ピン
21 :スピンベース(ベース)
25A :第1ガード
25B :第2ガード
25C :第3ガード
28A :第1ガード駆動機構(ガード駆動機構)
30 :薬液ノズル(薬液供給ユニット、上面薬液供給部材)
31 :上面リンス液ノズル
32 :下面リンス液ノズル(下面リンス液供給部材)
38 :排出配管
60 :第1円筒部(円筒部)
61 :第1環状部(環状部)
100 :環状部材
100b :外周部
104 :切り欠き(通過許容部)
106 :貫通孔(通過許容部)
110 :上方空間(環状部材および環状部の間の空間)
W :基板
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図13