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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-28
(45)【発行日】2025-08-05
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20250729BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20250729BHJP
【FI】
B60R11/02 C
G09F9/00 350Z
G09F9/00 351
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022016751
(22)【出願日】2022-02-04
(65)【公開番号】P2023114399
(43)【公開日】2023-08-17
【審査請求日】2024-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 和久
(72)【発明者】
【氏名】清水 辰弥
(72)【発明者】
【氏名】田端 隆伸
(72)【発明者】
【氏名】安藤 康幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇裕
(72)【発明者】
【氏名】小野木 文寛
【審査官】高島 壮基
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-349977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の天井から出入可能に構成された矩形フィルム状の表示部と、
前記表示部の下縁部に設けられ、該表示部の下縁部を補強する下縁補強部と、
前記表示部の前記天井からの突出量に応じて伸縮可能に構成され、該表示部を支持する支持機構と、
を備え
前記天井には、車幅方向が長手方向とされ、前記表示部の出入に伴って開閉する蓋部が設けられており、
前記支持機構は、前記蓋部の長手方向両端部に設けられ、前記下縁補強部を支持する一対の支持アームで構成されている車両用表示装置。
【請求項2】
一対の前記支持アームは、該支持アームを常時短縮させる方向に付勢されている請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記下縁補強部の長手方向両端部に一対の被係止部が設けられており、
一対の前記支持アームの先端部に一対の前記被係止部に係止される係止部が形成されている請求項1又は請求項2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記下縁補強部の長手方向両端部に該長手方向を軸方向とした一対の係合ローラが設けられており、
一対の前記支持アームの先端部に一対の前記係合ローラに係止される係止突起が形成されている請求項又は請求項に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記支持機構は、前記表示部の側縁部を支持する側縁支持部を含んで構成されている請求項1~請求項4の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記表示部は、前記天井の裏側に、該天井と略平行に収納される請求項1~請求項5の何れか1項に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車室の天井に、車室内へ出入可能に構成されたフィルム状のモニター(表示装置)が設けられた運転支援システムは、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-194179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、可撓性を有するフィルム状のモニター(表示装置)であると、そのモニターが備えている剛性は極めて小さいため、車両の走行時に、車両に加わる振動により、モニターに表示される映像を乗員が視認し難くなる。
【0005】
そこで、本発明は、可撓性を有するフィルム状に構成されていても、その剛性が確保される車両用表示装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明に係る請求項1に記載の車両用表示装置は、車室の天井から出入可能に構成された矩形フィルム状の表示部と、前記表示部の下縁部に設けられ、該表示部の下縁部を補強する下縁補強部と、前記表示部の前記天井からの突出量に応じて伸縮可能に構成され、該表示部を支持する支持機構と、を備え、前記天井には、車幅方向が長手方向とされ、前記表示部の出入に伴って開閉する蓋部が設けられており、前記支持機構は、前記蓋部の長手方向両端部に設けられ、前記下縁補強部を支持する一対の支持アームで構成されている
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、車室の天井から出入可能に構成された矩形フィルム状の表示部が、その下縁部に設けられた下縁補強部によって補強されるとともに、表示部の天井からの突出量に応じて伸縮可能に構成された支持機構によって支持される
【0008】
したがって、表示部が、可撓性を有するフィルム状に構成されていても、その剛性が確保される。
【0009】
また、支持機構が、表示部の出入に伴って開閉する蓋部の長手方向両端部に設けられた一対の支持アームで構成されており、各支持アームは、表示部の下縁部に設けられた下縁補強部を支持する。つまり、表示部が蓋部によって背面から支持される。したがって、表示部の厚み方向に対する耐振動性能が向上される。
【0010】
また、請求項に記載の車両用表示装置は、請求項に記載の車両用表示装置であって、一対の前記支持アームは、該支持アームを常時短縮させる方向に付勢されている。
【0011】
請求項に記載の発明によれば、一対の支持アームは、その支持アームを常時短縮させる方向に付勢されている。したがって、天井からの表示部の突出に伴って各支持アームが伸長されていても、表示部が天井の裏側に収納される際に、自動的に支持アームも収納される。
【0012】
また、請求項に記載の車両用表示装置は、請求項又は請求項に記載の車両用表示装置であって、前記下縁補強部の長手方向両端部に一対の被係止部が設けられており、一対の前記支持アームの先端部に一対の前記被係止部に係止される係止部が形成されている。
【0013】
請求項に記載の発明によれば、下縁補強部の長手方向両端部に一対の被係止部が設けられており、一対の支持アームの先端部に、各被係止部に係止される係止部が形成されている。したがって、各支持アームは、表示部の出入に伴って精度よく伸縮され、表示部は、その支持アームを有する蓋部によって効果的に支持される。
【0014】
また、請求項に記載の車両用表示装置は、請求項又は請求項に記載の車両用表示装置であって、前記下縁補強部の長手方向両端部に該長手方向を軸方向とした一対の係合ローラが設けられており、一対の前記支持アームの先端部に一対の前記係合ローラに係止される係止突起が形成されている。
【0015】
請求項に記載の発明によれば、下縁補強部の長手方向両端部に、その長手方向を軸方向とした一対の係合ローラが設けられており、一対の支持アームの先端部に、各係合ローラに係止される係止突起が形成されている。したがって、各支持アームは、表示部の出入に伴って精度よく伸縮され、表示部は、その支持アームを有する蓋部によって効果的に支持される。
【0016】
また、請求項に記載の車両用表示装置は、請求項1~請求項の何れか1項に記載の車両用表示装置であって、前記支持機構は、前記表示部の側縁部を支持する側縁支持部を含んで構成されている。
【0017】
請求項に記載の発明によれば、支持機構が、表示部の側縁部を支持する側縁支持部を含んで構成されている。したがって、支持機構が、表示部の側縁部を支持する側縁支持部を含んで構成されていない場合に比べて、表示部のねじれ方向に対する剛性が確保される。
【0018】
また、請求項に記載の車両用表示装置は、請求項1~請求項の何れか1項に記載の車両用表示装置であって、前記表示部は、前記天井の裏側に、該天井と略平行に収納される。
【0019】
請求項に記載の発明によれば、表示部が、天井の裏側に、その天井と略平行に収納される。したがって、表示部が、天井の裏側に、その天井と略平行に収納されない場合に比べて、天井の裏側における空間部の上下方向の間隔を広げなくても、表示部が収納される。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、車両用表示装置の表示部が可撓性を有するフィルム状に構成されていても、その剛性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態に係る車両用表示装置を備えた車両の車室を示す概略側面図である。
図2】本実施形態に係る車両用表示装置のディスプレイが天井の裏側に収納されている状態を拡大して示す概略側面図である。
図3】本実施形態に係る車両用表示装置のディスプレイにおける側縁支持部の構成を拡大して示す概略平面図である。
図4】本実施形態に係る車両用表示装置の支持アームが短縮されている状態を拡大して示す概略側面図である。
図5】本実施形態に係る車両用表示装置の支持アームが伸長されている状態を拡大して示す概略側面図である。
図6】本実施形態に係る車両用表示装置のディスプレイが天井から略半分だけ突出された状態を拡大して示す概略側面図である。
図7】本実施形態に係る車両用表示装置のディスプレイが天井から略半分だけ突出された状態を拡大して示す概略正面図である。
図8】本実施形態に係る車両用表示装置のディスプレイが天井から全体的に突出された状態を拡大して示す概略側面図である。
図9】本実施形態に係る車両用表示装置のディスプレイが天井から全体的に突出された状態を拡大して示す概略正面図である。
図10】本実施形態に係る車両用表示装置のディスプレイが天井から全体的に突出されたときの蓋部の状態を拡大して示す概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。なお、説明の便宜上、各図において適宜示す矢印UPを車体上方向、矢印FRを車体前方向、矢印LHを車体左方向とする。そして、以下の説明で、特記することなく上下、前後、左右の方向を記載した場合は、車体上下方向の上下、車体前後方向の前後、車体左右方向(車幅方向)の左右を示すものとする。
【0023】
図1に示されるように、本実施形態に係る車両用表示装置40を備えた車両10は、車室14の主な部分を構成する車体12を備えている。車体12の下方側にはフロア部16が配設されており、車体12の上方側にはルーフ部18が配設されている。そして、フロア部16には、乗員Pが着座するシート20が配設されている。
【0024】
シート20は、乗員Pの臀部及び大腿部を支持するシートクッション22と、乗員Pの背部を支持するシートバック24と、乗員Pの頭部を支持するヘッドレスト26と、を含んで構成されている。なお、シートバック24は、その下端部がシートクッション22の後端部に回動可能に支持されており、その傾斜角度が調整可能に構成されている。
【0025】
シート20の前方側、即ち車室14の前方側には、フロントウインドシールドガラス28が配設されている。フロントウインドシールドガラス28は、透明なガラス板で構成されており、車幅方向から見た側面視で、ルーフ部18の前側の周縁部から前方下側へ延在されている。
【0026】
ルーフ部18は、車体12の意匠面の一部を構成するルーフパネル30を備えている。ルーフパネル30は、内装部材としてのルーフトリム32によって下方側から覆われている。ルーフトリム32は、車室14の天井を構成するようになっており、主に車室14の天井となる天井部32Aと、天井部32Aの前側の周縁部から上方側に延出された前壁部32Bと、を含んで構成されている。
【0027】
図2に示されるように、ルーフパネル30は、前後方向に間隔をあけて配置された複数のルーフリインフォースメント34で補強されている。ルーフリインフォースメント34は、断面略ハット型形状に形成されて車幅方向に延在されており、車幅方向から見た断面視で、前後のフランジ部34Aがルーフパネル30に接合されることで、そのルーフパネル30とで閉断面形状を構成している。
【0028】
なお、最も前方側に位置するルーフリインフォースメント34Fは、ルーフパネル30の前側の周縁部に沿って配置されている。具体的には、ルーフパネル30の前端部にルーフリインフォースメント34Fの前側のフランジ部34Aが下方側から重ねられ、そのフランジ部34Aに前壁部32Bの上端部が下方側から重ねられて接合されている。そして、ルーフパネル30の前端部の上側にフロントウインドシールドガラス28の上端部が重ねられて接合されている。
【0029】
ルーフトリム32の天井部32Aの裏側、即ちルーフパネル30とルーフトリム32の天井部32Aとの間の空間部Sには、車両用表示装置40を構成する表示部としてのディスプレイ42が収納可能とされている。ディスプレイ42は、有機エレクトロルミネッセンス素子を備えた矩形フィルム状とされており、一方の面(下面)に乗員P(図1参照)に対して情報を表示可能な表示面42A(図7図9参照)を有している。
【0030】
ディスプレイ42は、車両用表示装置40の各種制御を行う制御装置(図示省略)と図示しない配線を介して電気的に接続されており、制御装置から出力された信号によって駆動されることで、表示面42Aに種々の映像等を表示可能とされている。そして、ディスプレイ42は、ディスプレイ支持部60によってルーフ部18(ルーフパネル30)に支持されるとともに、ディスプレイ駆動部50によって天井部32Aから車室14内へ突出したり、天井部32Aの裏側に収納されたりするようになっている。
【0031】
具体的に説明すると、ディスプレイ駆動部50は、ルーフリインフォースメント34Fに一対のマウント36を介して支持された一対のピニオン52と、各ピニオン52に下方側から噛合する後述する一対のラック44と、一方のピニオン52と同軸的に設けられたモータ56と、一対のラック44を下方側から支持する一対のローラガイド58と、を含んで構成されている。
【0032】
ラック44は、可撓性を有する材料で構成されており、ディスプレイ42の車幅方向両端部、即ち表示面42Aよりも車幅方向外側端部(以下「側縁部」という)42Bにおける他方の面(背面)に、それぞれディスプレイ42の出入方向に沿って設けられている。そして、ラック44よりも車幅方向外側の側縁部42Bは、ディスプレイ42の天井部32Aからの出入に伴ってスライド可能に構成された支持機構としての側縁支持部46によって支持されるようになっている。
【0033】
図2に示されるように、側縁支持部46は、ディスプレイ42の収納状態では、ローラガイド58よりも下方側(天井部32Aからの突出方向下流側)に配置されている。側縁支持部46は、樹脂製であり、図3に示されるように、断面略「U」字状に形成された複数のスライド部材47で構成されている。
【0034】
最内部のスライド部材47Aは、ディスプレイ42の側縁部42Bにおける下端部(後述する下縁補強部43の直上)に固定されており、詳細な図示は省略するが、最外部のスライド部材47Bは、それぞれマウント36に固定されている。各スライド部材47は、最内部のスライド部材47Aから最外部のスライド部材47Bへかけて順次外側へ重なるような(大きくなるような)形状に形成されている。
【0035】
また、最外部のスライド部材47Bを除き、各スライド部材47の上端部には、互いに重なり合うスライド部材47の下端部に係止される張出部(図示省略)が形成されている。そして、各スライド部材47の車幅方向内側端部には、ディスプレイ42の厚み方向内側へ突出するレール部(図示省略)が形成されている。各レール部は、互いに重なり合うスライド部材47の車幅方向内側端部に係止されており、その車幅方向内側端部に沿って摺動可能となるように構成されている。
【0036】
このような構成により、各スライド部材47が、ディスプレイ42の側縁部42Bを覆った状態でスライド可能となる構成になっている(図7図9参照)。なお、側縁支持部46は、ディスプレイ42の収納状態では、各スライド部材47が互いに重ね合わされた最短縮状態とされている。
【0037】
図2に示されるように、一対のピニオン52は、車幅方向に延在する回転軸54に固定されており、各ラック44に噛合されている。また、一方のピニオン52の車幅方向外側における回転軸54には、モータ56の出力軸(図示省略)が同軸的かつ一体的に連結されており、制御装置からの制御信号に基づいてモータ56が駆動することにより、各ピニオン52が同期して正逆両方向へ回転可能になっている。これにより、ディスプレイ42が天井部32Aから出入可能となる構成になっている。
【0038】
なお、一方のピニオン52側における回転軸54の一端部は、一方側のマウント36に軸受(図示省略)を介して支持されており、他方のピニオン52側における回転軸54の他端部も、他方側のマウント36に軸受(図示省略)を介して支持されている。そして、各マウント36は、ルーフリインフォースメント34Fに設けられたウエルドナット38に図示しない締結部材で固定されている。
【0039】
また、モータ56は、一方側のマウント36に支持されており、詳細な図示は省略するが、各マウント36には、各ローラガイド58も回転自在に支持されている。このローラガイド58によってディスプレイ42の側縁部42Bに設けられたラック44の下面側が下方側から支持される構成になっている。そして、ディスプレイ42は、ピニオン52の回転及びローラガイド58の回転で案内されることにより、車室14内へ(前方下側へ)送り出されるようになっている。
【0040】
ディスプレイ支持部60は、ディスプレイ42の突出方向上流側を支持可能に構成されており、一対のガイドレール62及び一対のレールマウント64を含んで構成されている。各ガイドレール62は、ローラガイド58よりも後方側において、ディスプレイ42の側縁部42Bに対応して前後方向(出入方向)に沿って延設されており、前後方向から見た正面視で、車幅方向内側へ開放する略「U」字形状に形成されている。
【0041】
そして、各ガイドレール62には、ラック44を含むディスプレイ42の側縁部42Bが挿入可能とされており、各ガイドレール62は、ディスプレイ42を、その出入方向(前後方向)に沿って案内可能になっている。なお、各ガイドレール62は、それぞれレールマウント64を介して、ルーフリインフォースメント34Fよりも後方側のルーフリインフォースメント34に取り付けられている。つまり、各レールマウント64は、ルーフリインフォースメント34に設けられたウエルドナット38に図示しない締結部材で固定されている。
【0042】
また、図2に示されるように、ルーフトリム32の天井部32Aと前壁部32Bとの境界部分で、かつ車幅方向における所定の位置には、上方側へ屈曲して凹む凹部33が形成されている。そして、凹部33の後方側には、車幅方向に延在するスリット部Tが形成されており、ディスプレイ42は、このスリット部Tを通って天井部32Aの裏側から車室14内へ突出可能になっている。
【0043】
また、凹部33の下面には、スリット部Tを下方側から閉鎖可能なように、車幅方向が長手方向とされた平板状の蓋部70の前端部が回動可能に設けられている。図10にも示されるように、凹部33の下面における車幅方向両端部には、一対のブラケット66がそれぞれ一体的に突設されており、各ブラケット66には車幅方向に貫通する貫通孔(図示省略)が形成されている。
【0044】
一方、蓋部70の前端部には、各ブラケット66の間に配置される円筒部71が一体的に設けられている。円筒部71の内径は、各ブラケット66の貫通孔の内径よりも大径とされている。したがって、各円筒部71を各ブラケット66の間に配置し、ブラケット66の貫通孔及び円筒部71の貫通孔に、ブラケット66の貫通孔に圧入可能な外径を有する円柱状のピン67等を挿通することにより、蓋部70が凹部33に対して回動可能に設けられる構成になっている。
【0045】
そして、この蓋部70は、円筒部71の外周面に嵌められたトーションスプリング68の付勢力により、ディスプレイ42の不使用時(ディスプレイ42の収納時)には、その厚み方向を上下方向とした閉状態に保持されるようになっており、ディスプレイ42の出入に伴って開閉するように構成されている。
【0046】
すなわち、この蓋部70は、スリット部Tから前方下側へ突出しようとするディスプレイ42によって上方側から押されることにより、トーションスプリング68の付勢力に抗して、その後端部側が、ピン67を中心に下方側へ回動し、開状態となるように構成されている。
【0047】
また、図2に示されるように、蓋部70の裏面(閉状態とされたときの上面)における車幅方向両端部には、支持機構としての一対の支持アーム72が設けられている。図4図5図10に示されるように、各支持アーム72は、金属製であり、円筒状の小径ロッド78と、円筒状の大径ロッド74と、小径ロッド78よりも直径が大きく、大径ロッド74よりも直径が小さい円筒状の中径ロッド76と、を含んで構成されている。
【0048】
そして、図4図5に示されるように、各支持アーム72は、大径ロッド74と中径ロッド76との間に、中径ロッド76を大径ロッド74の内部へ常時付勢する(支持アーム72の全長を短縮させる方向へ常時付勢する)付勢部材としての圧縮コイルスプリング(以下、単に「コイルスプリング」という)75が設けられている。
【0049】
すなわち、コイルスプリング75の一端部75Aは、大径ロッド74の一端部74Aに径方向内側へ張り出すように形成されたフランジ部74Fに当接され、コイルスプリング75の他端部75Bは、中径ロッド76の他端部76Bに径方向外側へ張り出すように形成されたフランジ部76Fbに当接されている。これにより、フランジ部74Fとフランジ部76Fbとを互いに離隔する方向へ常時付勢するようになっている。
【0050】
同様に、各支持アーム72は、中径ロッド76と小径ロッド78との間に、小径ロッド78を中径ロッド76の内部へ常時付勢する(支持アーム72の全長を短縮させる方向へ常時付勢する)付勢部材としての圧縮コイルスプリング(以下、単に「コイルスプリング」という)77が設けられている。
【0051】
すなわち、コイルスプリング77の一端部77Aは、中径ロッド76の一端部76Aに径方向内側へ張り出すように形成されたフランジ部76Faに当接され、コイルスプリング77の他端部77Bは、小径ロッド78の他端部78Bに径方向外側へ張り出すように形成されたフランジ部78Fに当接されている。これにより、フランジ部76Faとフランジ部78Fとを互いに離隔する方向へ常時付勢するようになっている。
【0052】
なお、小径ロッド78の先端部(一端部)には、後述する係合ローラ48に係止される係止部としての係止突起80が一体に形成されている。図4図5に示されるように、係止突起80は、略円柱状に形成されるとともに、その軸方向に沿って切断した断面視で略「L」字状に屈曲形成されており、ディスプレイ42を天井部32Aから突出させた際に、係合ローラ48が上方側から係合するように(係合ローラ48に引っ掛かるように)構成されている(図8参照)。
【0053】
図2図8図10に示されるように、ディスプレイ42の下縁部には、その下縁部を補強する樹脂製の下縁補強部43が全長に亘って設けられている。この下縁補強部43の重さにより、収納状態におけるディスプレイ42のローラガイド58よりも前側が、前方下側へ垂れ下がる姿勢となる構成になっている(図2参照)。そして、その下縁補強部43の表示面42Aとは表裏反対側の背面における長手方向(車幅方向)両端部には、一対の被係止部としての係合ローラ48が回転自在に設けられている。
【0054】
具体的に説明すると、図8図10に示されるように、下縁補強部43の背面における長手方向両端部(スライド部材47Aの直下)には、一対のブラケット41がそれぞれ一体的に突設されており、各ブラケット41には貫通孔(図示省略)が形成されている。そして、係合ローラ48の軸心部にも貫通孔(図示省略)が形成されており、その内径は、ブラケット41の貫通孔の内径よりも大径とされている。
【0055】
したがって、各ブラケット41の間に係合ローラ48を配置し、ブラケット41の貫通孔及び係合ローラ48の貫通孔に、ブラケット41の貫通孔に圧入可能な外径を有する円柱状のピン82等を挿通することにより、係合ローラ48が回転自在に設けられる構成になっている。なお、係合ローラ48の軸方向中央部は、周方向に亘って断面略円弧状に凹んでおり、その略円弧状に凹んだ凹部48Aに係止突起80が係合するようになっている(図8図10参照)。
【0056】
以上のような構成とされた本実施形態に係る車両用表示装置40において、次にその作用について説明する。
【0057】
図2に示されるように、ディスプレイ42を使用しないときには、ディスプレイ42はルーフトリム32の天井部32Aの裏側に収納された収納状態を維持する。このとき、ディスプレイ42の側縁部42Bの大半がガイドレール62に保持されている。また、ディスプレイ42の下縁部は、下縁補強部43によって補強されており、ディスプレイ42のローラガイド58よりも前側は、その下縁補強部43の重さにより、前方下側へ向かって垂れ下がっている。
【0058】
そして、側縁支持部46は、そのディスプレイ42の垂れ下がった部分において、各スライド部材47が最も短い長さ(最短縮状態)となるように互いに重ねられた状態で配置されている。また、スリット部Tは、蓋部70によって閉鎖されており、この状態のときには、係合ローラ48は、係止突起80の上方側に位置し、係止突起80に係合(接触)しないようになっている。
【0059】
図6図7に示されるように、ディスプレイ42の表示面42Aの一部(例えば突出方向下流側の略半分)を使用するときには、制御装置の制御によりピニオン52を図6の時計回り方向に所定量回転させ、ディスプレイ42を前方下側へ向けて送り出す。このとき、ディスプレイ42の前方下側への移動に伴い、係合ローラ48が支持アーム72の係止突起80に上方側から係合する。すなわち、係止突起80が係合ローラ48に相対的に係止される(引っ掛かる)。
【0060】
そして、その状態でディスプレイ42が更に前方下側へ送り出されることにより、蓋部70の後端部側がトーションスプリング68の付勢力に抗してピン67を中心に下方側へ回動し、スリット部Tが開放されるとともに、ディスプレイ42が車室14内へ突出される。つまり、ディスプレイ42は、その側縁部42Bの突出方向上流側がガイドレール62に保持されたまま、その背面側(前方側)が一対の支持アーム72を介して蓋部70によって支持された状態で車室14内へ突出する。
【0061】
また、このとき、側縁支持部46を構成する最内部のスライド部材47Aがディスプレイ42の前方下側への移動に伴って引っ張られるため、各スライド部材47が相対的に順次伸長する方向へスライドする。これにより、ディスプレイ42の側縁部42Bにおける突出方向下流側も、その側縁支持部46(各スライド部材47)によって支持される。
【0062】
したがって、ディスプレイ42が、可撓性を有するフィルム状に構成されていても、その剛性が確保される。つまり、可撓性を有するフィルム状のディスプレイ42であっても、例えば車両10の走行時に、その車両10に加わる振動で、ディスプレイ42に表示される映像を乗員Pが視認し難くなるという現象を抑制することができ、その視認性を向上させることができる。
【0063】
図8図9図10に示されるように、ディスプレイ42の表示面42A全体を使用するときには、制御装置の制御によりピニオン52を図8の時計回り方向に更に所定量回転させ、ディスプレイ42を前方下側へ向けて送り出す。すると、ディスプレイ42の前方下側への移動に伴い、各係合ローラ48が各支持アーム72の係止突起80に上方側から係合したまま、各係止突起80を前方下側へ押圧する。
【0064】
各係止突起80が前方下側へ押圧されると、各支持アーム72は、コイルスプリング75及びコイルスプリング77の付勢力に抗して伸長する。つまり、蓋部70は、ディスプレイ42に対し、一対の支持アーム72を介して、その背面側から支持する状態を維持し続ける。
【0065】
また、このとき、側縁支持部46を構成する最内部のスライド部材47Aがディスプレイ42の前方下側への移動に伴って更に引っ張られるため、各スライド部材47が相対的に順次伸長する方向へスライドする。つまり、側縁支持部46は、最も長い長さとなる最伸長状態となる。したがって、ディスプレイ42の側縁部42Bも、その側縁支持部46(各スライド部材47)によって支持された状態が維持される。
【0066】
このように、可撓性を有するフィルム状のディスプレイ42の表示面42Aが全体的に車室14内へ突出されても、その剛性が確保される。しかも、このディスプレイ42は、上記した通り、一対の支持アーム72を介して蓋部70によって背面側から支持される構成であるため、車両10の走行時等におけるディスプレイ42の厚み方向に対する耐振動性能を向上させることができる。
【0067】
また、下縁補強部43に設けられている係合ローラ48が、支持アーム72に設けられている係止突起80に係合する(係止突起80が係合ローラ48に係止される)構成であるため、支持アーム72は、ディスプレイ42の出入に伴って精度よく伸縮することができる。よって、ディスプレイ42を蓋部70によって効果的に支持することができる。
【0068】
また、ディスプレイ42が天井部32Aから出入する際、その側縁部42Bが側縁支持部46(スライドする複数のスライド部材47)によって支持される。したがって、ディスプレイ42の側縁部42Bに側縁支持部46が設けられていない場合に比べて、ディスプレイ42のねじれ方向に対する剛性も確保することができる。
【0069】
なお、図8に示されるように、ディスプレイ42の表示面42A全体が車室14内へ突出されても、その側縁部42Bの一部はガイドレール62に保持されたままとなっている。そのため、例えばディスプレイ42の表示面42A全体が車室14内へ突出されたときに、その側縁部42Bがガイドレール62から外れてしまう構成に比べて、ディスプレイ42を収納するときに、ディスプレイ42の側縁部42Bをガイドレール62に再び嵌合させる必要がない。よって、ディスプレイ42は、スムーズに収納される。
【0070】
すなわち、ディスプレイ42を収納する際には、制御装置の制御によりピニオン52を図6図8の反時計回り方向(上記とは逆方向)に回転させる。すると、車室14内へ突出されていたディスプレイ42は後方上側へ移動するが、その際、各支持アーム72は、コイルスプリング75及びコイルスプリング77によって、常時短縮される方向に付勢されているため、ディスプレイ42の後方上側への移動に伴って自動的に短縮する。
【0071】
つまり、各支持アーム72も、ディスプレイ42の収納動作に伴って自動的に収納される。したがって、蓋部70は、ディスプレイ42が収納される際にも、そのディスプレイ42に対し、一対の支持アーム72を介して、その背面側から支持する状態を維持することができる。
【0072】
また、ディスプレイ42の収納動作に伴い、側縁支持部46を構成する各スライド部材47も相対的に順次短縮する方向へスライドする。そして、蓋部70がトーションスプリング68の付勢力によってスリット部Tを閉鎖する位置まで(側縁支持部46が最短縮状態となるまで)ディスプレイ42が収納されると、係合ローラ48が係止突起80から外れて、図2に示される状態となる。
【0073】
したがって、係合ローラ48が係止突起80から外れない構成とされている場合に比べて、蓋部70及びディスプレイ42の形状に制約を受けることを抑制又は防止することができる。換言すれば、蓋部70及びディスプレイ42の形状において、ある程度の自由度を確保することができる。
【0074】
また、ディスプレイ42は、ローラガイド58よりも前側の部分(前方下側へ垂れ下がっている部分)を除き、天井部32Aの裏側に、その天井部32Aと略平行に収納される。したがって、ディスプレイ42が、天井部32Aの裏側に、その天井部32Aと略平行に収納されない場合に比べて、天井部32Aの裏側における空間部Sの上下方向の間隔を広げなくても、ディスプレイ42を収納することができる。
【0075】
以上、本実施形態に係る車両用表示装置40について、図面を基に説明したが、本実施形態に係る車両用表示装置40は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。例えば、支持機構は、図示のものに限定されるものではない。
【0076】
すなわち、側縁支持部46は、図示の構成に限定されるものではない。側縁支持部46は、例えば硬質ゴム等で構成されていてもよく、その場合、側縁支持部46は、ディスプレイ42と共に撓み変形可能となるため、ローラガイド58よりも後方側へ収納可能となる。
【0077】
また、支持アーム72も、図示の構成に限定されるものではなく、支持アーム72を常時短縮させる方向に付勢する構成も、図示の構成に限定されるものではない。また、被係止部も、係合ローラ48に限定されるものではないし、係止部も、係止突起80に限定されるものではない。下縁補強部43における被係止部は、ディスプレイ42の突出方向への移動に伴って、蓋部70の支持アーム72における係止部が係止可能に構成されていればよい。
【符号の説明】
【0078】
10 車両
14 車室
32A 天井部(天井)
40 車両用表示装置
42 ディスプレイ(表示部)
43 下縁補強部
46 側縁支持部(支持機構)
48 係合ローラ(被係止部)
70 蓋部
72 支持アーム(支持機構)
80 係止突起(係止部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10