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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-29
(45)【発行日】2025-08-06
(54)【発明の名称】低温デバイスのための極低温冷凍
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/10 20230101AFI20250730BHJP
   H01L 23/36 20060101ALI20250730BHJP
   H10N 60/00 20230101ALI20250730BHJP
【FI】
H10N60/10 Z
H01L23/36 Z
H10N60/00 Z ZAA
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022528627
(86)(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 EP2020082680
(87)【国際公開番号】W WO2021099461
(87)【国際公開日】2021-05-27
【審査請求日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】16/687,722
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/687,725
(32)【優先日】2019-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(74)【代理人】
【識別番号】100120710
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ホルメス、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】サダナ、デヴェンドラ
(72)【発明者】
【氏名】ベデル、ステファン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ニン
【審査官】市川 武宜
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-505989(JP,A)
【文献】特開2002-022845(JP,A)
【文献】特表2002-518853(JP,A)
【文献】R.Leoni et al.,Electron cooling by arrays of submicron tunnel junctions,Journal of Applied Physics,米国,1999年04月01日,vol.85,p. 3877-3882
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 60/00
H10N 60/10
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
能動冷却構造体であって、
複数の非超伝導トレースを含む非超伝導層と、
複数の超伝導トレースを含む超伝導体層であって、前記複数の非超伝導トレースが前記複数の超伝導トレースと直交して延びる、前記超伝導体層と、
前記複数の非超伝導トレースと前記複数の超伝導トレースとの間の超伝導体-絶縁体-常伝導金属(NIS)トンネル接合のグリッドと、
を備える、能動冷却構造体。
【請求項2】
前記複数の超伝導トレースを電気的に並列に接続する第1の複数の共通パッドをさらに備える、請求項1に記載の能動冷却構造体。
【請求項3】
前記複数の非超伝導トレースを電気的に並列に接続する第2の複数の共通パッドをさらに備える、請求項1または2に記載の能動冷却構造体。
【請求項4】
前記非超伝導層と前記超伝導体層との間に絶縁体層をさらに備える、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の能動冷却構造体。
【請求項5】
複数の非超伝導トレースを含む非超伝導層と、
複数の超伝導トレースを含む超伝導体層と、
前記非超伝導層と前記超伝導体層との間に絶縁体層と、
前記複数の非超伝導トレースと前記複数の超伝導トレースとの間の超伝導体-絶縁体-常伝導金属(NIS)トンネル接合のアレイと
を備え、前記非超伝導層が銀を含み、
前記絶縁体層が二酸化ケイ素を含み、
前記超伝導体層がアルミニウムを含む、能動冷却構造体。
【請求項6】
複数の非超伝導トレースを含む非超伝導層と、
複数の超伝導トレースを含む超伝導体層と、
前記非超伝導層と前記超伝導体層との間に絶縁体層と、
前記複数の非超伝導トレースと前記複数の超伝導トレースとの間の超伝導体-絶縁体-常伝導金属(NIS)トンネル接合のアレイと
を備え、前記非超伝導層が銀を含み、
前記絶縁体層が二酸化ケイ素を含み、
前記超伝導体層がニオブを含む、能動冷却構造体。
【請求項7】
複数の非超伝導トレースを含む非超伝導層と、
複数の超伝導トレースを含む超伝導体層と、
前記非超伝導層と前記超伝導体層との間に絶縁体層と、
前記複数の非超伝導トレースと前記複数の超伝導トレースとの間の超伝導体-絶縁体-常伝導金属(NIS)トンネル接合のアレイと
を備え、前記非超伝導層が銀を含み、
前記絶縁体層が二酸化ハフニウムを含み、
前記超伝導体層がアルミニウムを含む、能動冷却構造体。
【請求項8】
複数の非超伝導トレースを含む非超伝導層と、
複数の超伝導トレースを含む超伝導体層と、
前記非超伝導層と前記超伝導体層との間に絶縁体層と、
前記複数の非超伝導トレースと前記複数の超伝導トレースとの間の超伝導体-絶縁体-常伝導金属(NIS)トンネル接合のアレイと
を備え、前記非超伝導層が銀を含み、
前記絶縁体層が二酸化ハフニウムを含み、
前記超伝導体層がニオブを含む、能動冷却構造体。
【請求項9】
量子プロセッサであって、
第1の基板と、
前記第1の基板上に形成された複数の量子ビットと、
前記量子ビットと熱連通する能動冷却構造体であり、
非超伝導層、
超伝導体層、および
前記非超伝導層と前記超伝導体層との間の絶縁体層を含む、前記能動冷却構造体と、
を備え、前記非超伝導層が複数の非超伝導トレースを含み、
前記超伝導体層が前記複数の非超伝導トレースと交差する複数の超伝導トレースを含み、
前記複数の非超伝導トレースと前記複数の超伝導トレースとの間に超伝導体-絶縁体-常伝導金属(NIS)トンネル接合のグリッドが形成されている、量子プロセッサ。
【請求項10】
前記複数の非超伝導トレースと前記複数の超伝導トレースとは直交する、請求項に記載の量子プロセッサ。
【請求項11】
前記能動冷却構造体が前記複数の量子ビットに隣接している、請求項または10に記載の量子プロセッサ。
【請求項12】
前記能動冷却構造体が前記複数の量子ビット間にある、請求項ないし11のいずれか一項に記載の量子プロセッサ。
【請求項13】
前記非超伝導層が非超伝導材料の平坦面で構成され、
前記超伝導体層が超伝導体の平坦面で構成されている、請求項ないし12のいずれか一項に記載の量子プロセッサ。
【請求項14】
量子プロセッサであって、
第1の表面および第2の表面を含む第1の基板と、
前記第1の基板上に形成された複数の量子ビットと、
前記量子ビットと熱連通する能動冷却構造体であり、
非超伝導層、
超伝導体層、および
前記非超伝導層と前記超伝導体層との間の絶縁体層を含む、前記能動冷却構造体と、を備え、前記複数の量子ビットが前記第1の表面上に形成され、前記能動冷却構造体が前記第2の表面上に形成されている、量子プロセッサ。
【請求項15】
量子プロセッサであって、
第1の基板と、
第2の基板と、
前記第1の基板上に形成された複数の量子ビットと、
前記量子ビットと熱連通する能動冷却構造体であり、
非超伝導層、
超伝導体層、および
前記非超伝導層と前記超伝導体層との間の絶縁体層を含む、前記能動冷却構造体と、を備え、前記複数の量子ビットが前記第1の基板上に形成され、前記能動冷却構造体が前記第2の基板上に形成されている、量子プロセッサ。
【請求項16】
前記第1の基板が第1の表面および第2の表面を含み、
前記第2の基板が第3の表面および第4の表面を含み、
前記複数の量子ビットが前記第1の基板の前記第1の表面上に形成され、前記能動冷却構造体が前記第2の基板の前記第3の表面上に形成されている、
請求項15に記載の量子プロセッサ。
【請求項17】
前記第2の表面が前記第4の表面と接触している、請求項16に記載の量子プロセッサ。
【請求項18】
前記第1の基板と前記第2の基板との間に流体チャネルをさらに備える、請求項15ないし17のいずれか一項に記載の量子プロセッサ。
【請求項19】
量子プロセッサを極低温に冷却する方法であって、
量子プロセッサと熱連通する能動冷却構造体に電圧を印加することであり、前記能動冷却構造体が
複数の非超伝導トレースを含む非超伝導層と、
複数の超伝導トレースを含む超伝導体層と、
前記非超伝導層と前記超伝導体層との間の絶縁体層と
を備え、前記複数の非超伝導トレースが前記複数の超伝導トレースと交差して延び、前記複数の非超伝導トレースと前記複数の超伝導トレースとの間の超伝導体-絶縁体-常伝導金属(NIS)トンネル接合のグリッドが形成される、
前記電圧を印加すること、
を含む、方法。
【請求項20】
能動冷却構造体を製造するための方法であって、
非超伝導層と超伝導体層との間に超伝導体-絶縁体-常伝導金属(NIS)トンネル構造のグリッドを形成することであり、
前記非超伝導層が第1の方向に略平行に延びる複数の非超伝導トレースを含み、
前記超伝導体層が第2の方向に略平行に延びる複数の超伝導トレースを含み、前記複数の超伝導トレースが、前記複数の非超伝導トレースと交差して前記グリッドを形成する前記グリッドを形成すること、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、低温電子デバイスのための冷却装置および製造方法、より詳細には、低温および極低温超伝導デバイスのための能動冷却が開示される。
【背景技術】
【0002】
分子および素粒子は、物理世界が基本的なレベルでどのように機能するかを探求する物理学の一分野である量子力学の法則に従う。このレベルでは、粒子は、奇妙な振る舞いをし、同時に2つ以上の状態をとり、非常に遠く離れた他の粒子と相互作用する。量子コンピューティングは、これらの量子現象を利用して情報を処理する。
【0003】
量子コンピューティングでの使用に適した多くの量子デバイスは、機能するために低温または極低温を必要とする。温度がこれらのレベルを超えて上昇すると、量子コンピューティング・プロセスにエラーがもたらされる。しかしながら、従来の蒸気圧縮式冷却器は、かさばり、高価であり、デバイスのアレイをこれらの温度に維持するには完全に信頼できるものではない。
【発明の概要】
【0004】
1つまたは複数の実施形態によると、非超伝導層と、超伝導層と、超伝導体-絶縁体-常伝導金属(NIS)トンネル接合のアレイと、を含む能動冷却構造体。非超伝導層は、複数の非超伝導トレースを含むことができる。超伝導層は、複数の超伝導トレースを含むことができる。超伝導体-絶縁体-常伝導金属(NIS)トンネル接合のアレイは、複数の非超伝導トレースと複数の超伝導トレースとの間に配置することができる。
【0005】
1つまたは複数の実施形態によると、第1の基板と、第1の基板上に形成された複数の量子ビットと、量子ビットと熱連通する能動冷却構造体と、を備える量子プロセッサ。能動冷却構造体は、非超伝導層と、超伝導体層と、非超伝導層と超伝導体層との間の絶縁体層と、を含むことができる。
【0006】
本量子プロセッサは、例えば、以下の特徴のうちの少なくとも1つまたは複数をさらに含むことができる。
【0007】
能動冷却構造体は、非伝導層と超伝導層との間に超伝導体-絶縁体-常伝導金属(NIS)トンネル構造のグリッドを含むことができる。非超伝導層は、第1の方向に延びる複数の非超伝導トレースを含むことができ、超伝導体層は、第2の方向に延びる複数の超伝導トレースを含むことができる。複数の超伝導トレースおよび複数の非超伝導トレースは、X-Y平面内の複数の位置で交差することができる。
【0008】
非超伝導層は、銀を含んでもよく、絶縁体層は、二酸化ケイ素および二酸化ハフニウムからなる群から選択されてもよく、超伝導体層は、アルミニウムおよびニオブからなる群から選択されてもよい。
【0009】
1つまたは複数の実施形態によると、量子プロセッサと熱連通する能動冷却構造体に電圧を印加することを含む量子プロセッサを極低温に冷却する方法。能動冷却構造体は、非超伝導層と、超伝導体層と、非超伝導層と超伝導体層との間の絶縁体層と、を含むことができる。
【0010】
1つまたは複数の実施形態によると、非伝導層と超伝導層との間に超伝導体-絶縁体-常伝導金属(NIS)トンネル構造のアレイを形成することを含む、能動冷却構造体を製造するための方法が提供される。非超伝導層は、第1の方向に延びる複数の非超伝導トレースを含むことができる。超伝導体層は、第2の方向に延びる複数の超伝導トレースを含むことができる。
【0011】
能動冷却構造体を製造するための方法は、例えば、以下の特徴のうちの少なくとも1つまたは複数をさらに含むことができる。
【0012】
本製造方法は、複数の超伝導トレースを電気的に並列に接続する第1の複数のパッドを形成することと、非超伝導トレースを電気的に並列に接続する第2の複数のパッドを形成することと、を含むことができる。
【0013】
本製造方法は、基板にフォトレジスト層を塗布することと、フォトレジスト層をパターンに露光して露光済みフォトレジストおよび未露光フォトレジストを生成することと、露光済みフォトレジスト層を除去することと、未露光フォトレジストおよび基板上に金属層を施すことと、未露光フォトレジストを除去することと、を含むことができる。
【0014】
本製造方法は、非超伝導層上に絶縁体層を形成することを含むことができる。
【0015】
本製造方法は、絶縁体層にリフトオフ・レジスト層を塗布することと、リフトオフ・レジスト層をパターンに露光して、露光済みリフトオフ・レジストおよび未露光リフトオフ・レジストを生成することと、露光済みリフトオフ・レジスト層を除去することと、超伝導層を未露光リフトオフ・レジスト層および絶縁体層上に塗布することと、未露光リフトオフ・レジストを除去することと、を含むことができる。
【0016】
1つまたは複数の実施形態によると、第1の基板上に形成された複数の量子ビットを形成することと、量子ビットと熱連通する能動冷却構造体を形成することと、を含む量子プロセッサのための製造方法が提供される。能動冷却構造体は、非超伝導金属層と、非超伝導層の上に形成された絶縁体層と、絶縁体層の上に形成された超伝導体層と、を含むことができる。
【0017】
量子プロセッサのための製造方法は、例えば、以下の特徴のうちの少なくとも1つまたは複数をさらに含むことができる。
【0018】
本製造方法は、基板にフォトレジスト層を塗布することと、フォトレジスト層をパターンに露光して露光済みフォトレジストおよび未露光フォトレジストを生成することと、露光済みフォトレジスト層を除去することと、未露光フォトレジストおよび基板上に金属層を施すことと、未露光フォトレジストを除去することと、を含むことができる。
【0019】
本製造方法は、非超伝導層上に絶縁体層を形成することを含むことができる。
【0020】
本製造方法は、絶縁体層にリフトオフ・レジスト層を塗布することと、リフトオフ・レジスト層をパターンに露光して、露光済みリフトオフ・レジストおよび未露光リフトオフ・レジストを生成することと、露光済みリフトオフ・レジスト層を除去することと、超伝導層を未露光リフトオフ・レジスト層および絶縁体層上に塗布することと、未露光リフトオフ・レジストを除去することと、を含むことができる。
【0021】
1つまたは複数の実施形態によると、熱化構造を製造するための半導体製造システムが提供される。半導体製造システムは、プロセッサによって操作されると、製造方法を実行させる、製造設備のための命令セットが符号化されたコンピュータ可読記憶媒体を備えることができる。本製造方法は、非伝導層と超伝導層との間に超伝導体-絶縁体-常伝導金属(NIS)トンネル構造のアレイを形成することを含むことができる。非超伝導層は、第1の方向に延びる複数の非超伝導トレースを含むことができ、超伝導体層は、第2の方向に延びる複数の超伝導トレースを含むことができる。
【0022】
上記の概要は、本開示のそれぞれの例示された実施形態またはすべての実施態様を説明することは意図されていない。
【0023】
本出願に含まれる図面は、本明細書に組み込まれ、その一部を形成する。これらの図面は、本開示の実施形態を例示し、説明とともに、本開示の原理を説明するのに役立つ。図面は、特定の実施形態の例示に過ぎず、本開示を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】一部の実施形態と整合性のあるデータ処理システムのネットワークのブロック図である。
図2】(A)は、一部の実施形態と整合性のある例示的な能動平面冷却構造体の上面図である。(B)は、線BBに沿って切断された図2(A)の例示的な冷却構造体を示す図である。
図2C】一部の実施形態と整合性のある別の例示的な能動平面冷却構造体を示す図である。
図3A】一部の実施形態と整合性のある例示的な能動冷却型量子プロセッサを示す図である。
図3B】一部の実施形態と整合性のある別の例示的な能動冷却型量子プロセッサを示す図である。
図4】一部の実施形態と整合性のある別の例示的な能動冷却型量子プロセッサを示す図である。
図5】一部の実施形態と整合性のある別の例示的な能動冷却型量子プロセッサを示す図である。
図6】(A)は、一部の実施形態と整合性のある別の例示的な能動冷却型量子プロセッサを示す図である。(B)は、一部の実施形態と整合性のある別の例示的な能動冷却型量子プロセッサを示す図である。
図7】(A)~(D)は、一部の実施形態と整合性のある、能動平面量子冷却構造体の製造のための例示的なプロセスの様々な段階におけるデバイスを示すデバイス断面図である。
図8】一部の実施形態と整合性のある、能動平面量子冷却構造体を製造するための例示的なコンピュータ実装プロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、様々な修正形態および代替形態を受け入れることができるが、その詳細は、図面において例として示されており、詳細に説明される。しかしながら、その意図は、本発明を記載された特定の実施形態に限定することではないことを理解されたい。それどころか、その意図は、本発明の思想および範囲内にあるすべての修正形態、均等形態、および代替形態を包含することである。
【0026】
「低温」の範囲は、本明細書で使用される場合、77ケルビン(K)または約77ケルビン(K)で始まる極低温の温度範囲を指す。「極低温」は、10ケルビンまたは約10ケルビンで始まり、少なくとも1ミリケルビン(0.001K)まで、場合によっては利用可能な技術を使用して可能な限り低く、現在では約0.000001Kに達する。
【0027】
「低温デバイス」(LTD)は、低温または極低温範囲で動作するデバイスである。低温または極端な温度で動作するほとんどのLTDは、それらの温度で超伝導特性を示す材料に依拠する。
【0028】
概要
本開示の態様は、低温電子デバイスのための冷却装置および製造方法に関し、より詳細な態様は、低温および極低温超伝導デバイスのための能動冷却に関する。本開示は、必ずしもこのような用途に限定されないが、本開示の様々な態様は、本文脈を使用した様々な例の議論を通じて理解され得る。
【0029】
超伝導デバイスを含むLTDデバイスは、動作時に熱を発生する。しかしながら、このような極低温の温度範囲での熱除去は、独特の課題を提起する。
【0030】
一部の実施形態は、LTDデバイスを低温または極低温に維持するのを支援するために、希釈冷凍機の冷却チャンバ内のLTDデバイスの近くに、またはLTDデバイスと接触して、能動固体冷却デバイスをパッケージ化している。一部の実施形態は、他の冷却構造体のうちの一部を削減することもでき、全体的な信頼性を向上させることができる。
【0031】
量子コンピューティング
今日使用されているコンピュータのほとんどは、古典的なコンピュータとして知られている。古典的なコンピュータは、フォン・ノイマン・アーキテクチャとして知られているものにおいて、半導体材料および技術を用いて製造された従来のプロセッサと、半導体メモリと、磁気または固体記憶デバイスと、を使用する。特に、従来のコンピュータにおけるプロセッサは、バイナリ・プロセッサであり、すなわち、1と0で表されるバイナリ・データで動作する。量子プロセッサ(qプロセッサ)は、対照的に、もつれ合った量子ビット・デバイス(本明細書では簡潔に「量子ビット」と呼ばれる)の奇妙な性質を使用して、計算タスクを実行する。量子力学が機能する特定の領域では、物質の粒子は、「オン」状態、「オフ」状態、および同時に「オン」と「オフ」の両方の状態など、複数の状態で存在することができる。半導体プロセッサを使用するバイナリ・コンピューティングがオン状態とオフ状態(バイナリ・コードの1と0に相当)のみを使用することに限定されているのに対し、量子プロセッサは、物質のこれらの量子状態を利用してデータ・コンピューティングで使用可能な信号を出力する。
【0032】
古典的なコンピュータは、情報をビットで符号化する。各ビットは、1または0の値をとることができる。これらの1と0は、最終的にコンピュータ機能を駆動するオン/オフ・スイッチとして機能する。一方、量子コンピュータは、量子物理学の2つの主要な原理、すなわち重ね合わせ(superposition)およびもつれ(entanglement)に従って動作する量子ビットに基づいている。重ね合わせとは、各量子ビットが同時に1と0の両方を表すことができることを意味する。もつれとは、重ね合わせ状態にある量子ビットが非古典的な仕方で互いに相関し得ること、すなわち、(1であるか、0であるか、またはその両方であるかにかかわらず)一方の状態が、もう一方の状態に依存し得ること、および2つの量子ビットがもつれ合っている場合の方が、2つの量子ビットを個々に扱う場合よりも、2つの量子ビットに関して確認され得る情報が多いことを意味する。
【0033】
これらの2つの原理を使用して、量子ビットは、情報のより洗練されたプロセッサとして動作し、量子コンピュータが、従来のコンピュータを使用してでは取り扱いにくい困難な問題を解決できるような方法で機能することを可能にする。
【0034】
超伝導量子ビットは、一般に、デバイス特性および機能を実装するために1つまたは複数の異なる材料の層を使用する。材料の層は、超伝導性、導電性、半導電性、絶縁性、抵抗性、誘導性、容量性であってもよく、または任意の数の他の特性を有することができる。材料の性質、材料の形状、サイズまたは配置、材料に隣接する他の材料、および他の多くの考慮事項を考慮して、材料の異なる層を異なる方法を使用して形成しなければならない場合がある。
【0035】
量子コンピューティングにおいて量子ビットとして使用するのに適したほとんどの量子デバイスは、機能するために低温または極低温を必要とする。
【0036】
データ処理環境
図1は、例示的な実施形態を実施することができるデータ処理環境のネットワークのブロック図を示す。データ処理環境100は、例示的な実施形態を実施することができるコンピュータのネットワークである。データ処理環境100は、ネットワーク102を含む。ネットワーク102は、データ処理環境100内で互いに接続された様々なデバイスおよびコンピュータ間の通信リンクを提供するために使用される媒体である。ネットワーク102は、有線、無線通信リンク、または光ファイバ・ケーブルなどの接続を含むことができる。
【0037】
データ処理環境100は、ネットワーク102を介してストレージ・ユニット108と通信可能に結合する複数のクライアント110、112、114、132および複数のサーバ104、106を含む。図1に示すクライアント110、112、114、サーバ104、106、およびストレージ・ユニット108は、ネットワーク102に接続された特定のデータ処理システムの例示的な役割のみで説明されたデバイスであり、これらのデータ処理システムの他の構成または役割を排除することは意図されていない。サーバ104もしくは106、またはクライアント110、112、114、もしくは132などの、データ処理環境100内の構成要素のいずれも、データを含むことができ、その上で実行されるソフトウェア・アプリケーションまたはソフトウェア・ツールあるいはその両方105を有することができる。
【0038】
デバイス132およびクライアント114は、クライアント・デバイスの例である。例えば、デバイス132は、スマートフォン、タブレット・コンピュータ、ラップトップ・コンピュータ、ウェアラブル・コンピューティング・デバイス、アプライアンス、または任意の他の適切なデバイスの形態をとることができる。図1の別のデータ処理システムにおいて実行されるものとして説明されたソフトウェア・アプリケーションまたはツールあるいはその両方105は、一部の実施形態では、デバイス132において同様のやり方で実行されるように構成されてもよい。図1の別のデータ処理システムにおいて記憶または生成されたデータまたは情報は、一部の実施形態では、デバイス132において同様のやり方で記憶または生成されるように構成されてもよい。
【0039】
フォトリソグラフィ・アプリケーション105aを使用して、本明細書に記載される一部の実施形態を実施または部分的に実施することができる。これらの実施形態では、フォトリソグラフィ・アプリケーション105aは、能動平面冷却構造体、ジョセフソン接合、量子ビットまたは量子コンピューティング・デバイスで使用される他の超伝導構造あるいはその組合せを製造するためのシステムのソフトウェア・コンポーネントである。フォトリソグラフィ・アプリケーション105aは、本明細書に記載される一部の実施形態において企図されるいくつかの新規な極低温方法およびシステムのアセンブリをもたらすための命令を、そのような製造システムに提供する。
【0040】
冷却構造体
図2(A)は、一部の実施形態と整合性のある例示的な能動平面冷却構造体200の上面図を示す。図2(B)は、線Bに沿って切断された図2(A)の例示的な冷却構造体200を示す。図2(A)および図2(B)の冷却構造体200の実施形態は、絶縁体層230によって分離された超伝導体層210および常伝導金属(すなわち、非超伝導)層220を含む。一部の実施形態における超伝導体層210は、第1の方向(図示のようにY方向)に延びる複数の略平行な超伝導体トレース212(明確にするために一部のみにラベル付けされている)へと形成される。超伝導体トレース212は、共通パッド214aおよび214bに電気的に接続されてもよい。常伝導金属層220は、同様に、第1の方向と直交する第2の方向(図示のようにX方向)に延びる複数の略平行な常伝導金属トレース222(明確にするために一部のみにラベル付けされている)へと形成される。常伝導金属トレース222は、共通パッド224aおよび224bに電気的に接続されている。一部の実施形態では、超伝導体層210が最初に基板260の上に(すなわち、隣接して)形成され、その後に、常伝導金属層220が絶縁体層230の上に(すなわち、隣接して)形成される。他の実施形態では、常伝導金属層220が最初に基板260の上に(すなわち、隣接して)形成され、その後に、超伝導体層210が絶縁体層230の上に(すなわち、隣接して)形成される。
【0041】
超伝導体-絶縁体-常伝導金属(NIS)トンネル構造240(明確にするために一部のみにラベル付けされている)のアレイが、超伝導体トレース212と常伝導金属トレース222との(X-Y平面における)交差部に格子パターンで形成されている。例示的な冷却構造体200はまた、複数の電気接点250(明確にするために一部のみにラベル付けされている)を備え、基板260の表面上に作成されてもよい。
【0042】
一部の実施形態では、小さな電位(バイアス電圧V)が超伝導体層210と常伝導金属層220との間に印加されると、比較的エネルギーが高い(「ホット」)エレクトロンが2つの層間の誘電体を横切ることができる。対照的に、比較的エネルギーが低い(「コールド」)エレクトロンは、誘電体を横切ることができない。合わさって、これは、量子デバイスまたはインターフェース電子機器などの熱源から熱エネルギーを移動させる効果を有する。
【0043】
一部の実施形態では、常伝導金属層は、基板260と適合し、かつ構造体200の残りの部分(図7図8参照)または被冷却デバイス(図3図6参照)あるいはその両方を形成するためにその後必要となる任意の製造プロセスと適合する任意の物質であってよい。一部の実施形態および一部の用途では、常伝導金属層が、選択された低温または極低温あるいはその両方の動作温度で超伝導体としては機能しないが、抵抗を介してシステムに加えられる熱を減らすために依然として良好な常伝導体であること、ならびに常伝導金属層が、量子ビットとの干渉を回避するために非磁性であることが望ましい場合もある。適切な常伝導金属としては、銀、金、銅、白金、およびパラジウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
超伝導体層210は、一部の実施形態では、選択された低温または極低温あるいはその両方の動作温度で超伝導特性を示し、他の選択された材料と適合し、かつ使用される任意の製造プロセスと適合する任意の物質であってよい。一部の実施形態および一部の用途に適した超伝導材料としては、アルミニウム、ニオブ、タンタル、チタン、窒化タンタル、窒化チタン、バナジウム、鉛、スズ、およびガリウムが挙げられるが、これらに限定されない。絶縁体層230は、低温または極低温あるいはその両方の動作温度で、超伝導金属層210と常伝導層220との間の誘電体として機能するだけでなく、他の選択された材料および製造プロセスと適合する任意の物質であってよい。一部の実施形態および一部の用途では、適切なそのような物質としては、二酸化ケイ素(SiO)、二酸化ハフニウム(HfO)、および酸化アルミニウム(Al)が挙げられる。窒化ケイ素、窒化ハフニウム、窒化アルミニウム、および窒化ジルコニウムなどの様々な窒化物も、一部の実施形態および一部の用途に適している場合がある。
【0045】
図2Cは、一部の実施形態と整合性のある別の例示的な能動平面冷却構造体200cを示す。図2Cの能動平面冷却構造体200cは、絶縁体層230によって分離された超伝導体層210および常伝導金属(すなわち、非超伝導)層220も含む。しかしながら、図2Cの超伝導体層210および常伝導金属層220はそれぞれ、超伝導体材料または常伝導金属の単一の平坦面272、282を含む。図2(A)~図2(B)の実施形態と同様に、2つの平面272、282が重なり合う場所にNISトンネル構造240が形成されている。この能動平面冷却構造体の実施形態200cは、図3Bの能動平面冷却構造体303などの、スペースが制約された場所での能動冷却に望ましい場合がある。
【0046】
図3Aおよび図3Bは、一部の実施形態と整合性のある例示的な能動冷却型量子プロセッサ300を示す。図3Aの量子プロセッサ300aは、量子プロセッサ310などの被冷却デバイスの周辺部に細長く配置された4つの能動平面冷却構造体302を備える。量子回路310は、量子ビット315(明確にするために一部のみにラベル付けされている)などの複数の量子デバイスを含む。図3Bの量子プロセッサ300Bは、5つの能動平面冷却構造体302、303を備える。図3Aと同様に、能動平面冷却構造体302の4つが量子プロセッサ310などの被冷却デバイスの周辺部に細長く配置されている。第5の能動平面冷却構造体303は、量子ビット315の2つのグループ間など、被冷却デバイスの周辺部内に配置されている。
【0047】
図3Aおよび図3Bの両方において、能動平面冷却構造体302は、量子回路310を構成する量子ビット315の横にまたはそれらの間にあるいはその両方で、基板360の同じ表面(例えば、頂面)上に直接形成されている。これらの配置は、能動平面冷却構造体302を量子回路310と同じ製造プロセスを使用して同時に形成することができるため望ましい場合がある。この配置はまた、能動平面冷却構造体302が量子デバイスに物理的に近接して配置されるため望ましい場合がある。
【0048】
図4は、本発明の一部の実施形態と整合性のある別の例示的な能動冷却型量子プロセッサ400を示す。量子プロセッサ400は、基板460の1つの表面(例えば、底部)上に形成された略正方形の能動平面冷却構造体402を備える。反対側の表面(例えば、頂部)上には、複数の量子デバイス415(明確にするために一部のみにラベル付けされている)が形成されており、これらを組み合わせて量子回路410を形成することができる。
【0049】
図5は、別の例示的な能動冷却型量子プロセッサ500を示す。本例では、能動平面冷却構造体502が1つの基板560a上に形成され、量子回路510を構成する量子デバイス515(明確にするために1つのみにラベル付けされている)が第2の基板560b上に形成されている。次いで、2つの基板560aと560bが背中合わせに、接合されるか、機械的にクランプされるか、またはその他の方法で一緒に接着される。これらの量子プロセッサの実施形態400および500は、材料および製造プロセスにおいてより広い選択肢を提供することができるため望ましい場合がある。
【0050】
図6(A)は、本発明の一部の実施形態と整合性のある別の例示的な能動冷却型量子プロセッサ600aを示す。図6(A)の量子プロセッサ600は、第1の基板660aの1つの表面(例えば、底部)上に形成された能動平面冷却構造体602aと、第2の基板660bの1つの表面(例えば、頂部)上に形成された能動平面冷却構造体602bとの2つの能動平面冷却構造体を備える。本実施形態における2つの基板660aと660bは、2つの基板660a、660bが量子回路610を構成する量子デバイス615(明確にするために1つのみにラベル付けされている)を挟むように、接合され、クランプされ、またはその他の方法で一緒に接着されてもよい。図6(B)は、本発明の一部の実施形態と整合性のある別の例示的な能動冷却型量子プロセッサ600bを示す。この量子プロセッサ600bの実施形態では、頂部能動平面冷却構造体602bが量子回路610を構成する量子デバイス615(明確にするために1つのみにラベル付けされている)に最も近い(すなわち、面している)基板660bの表面上にある。
【0051】
図6(B)はまた、2つの基板660aと660bが接合されるか、クランプされるか、またはその他の方法で一緒に接着される際に、量子デバイス615との物理的接触を防止する複数のスペーサ680を含む。スペーサ680は、任意選択で、量子回路610と頂部能動平面冷却構造体602bとの間の通路690内への、およびそこを通る冷媒(例えば、液体水素またはヘリウム)の通過を可能にするチャネル(図示せず)を含むことができる。図6(A)および図6(B)の実施形態は、量子デバイス615および量子回路610を保護することもできるため望ましい場合がある。
【0052】
製造方法
図7(A)~図7(D)は、一部の実施形態と整合性のある、能動平面量子冷却構造体の製造のための例示的なプロセスの様々な段階におけるデバイスを示すデバイス断面図である。図7(A)に示すように、最初に、基板760上にフォトレジスト層770を堆積させ、次いで、マスクおよび光源(図示せず)を使用して、第1の層710(例えば、常伝導金属層)のためのフォトレジスト・パターンがフォトレジスト層770上に露光される。露光済み/現像済みフォトレジストを洗い流した後、構造体の第1の層のための材料(例えば、選択された常伝導金属)を施すことができる。次いで、残りの未露光/未現像フォトレジスト層770を、選択された材料および基板に適した溶媒によって溶解させることができる。図7(B)は、結果として得られた構造を示す。
【0053】
次に、絶縁層730(例えば、SiO2またはHfO2)を、構造体の残っている(すなわち、パターニングされた)層710(例えば、常伝導金属層)の上に堆積させる。適切な方法としては、原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVD)、および物理的気相堆積(PVD)が挙げられるが、これらに限定されない。結果として得られた構造が図7(C)に示されている。パターン・リフトオフ・レジスト層780が、構造体の次の層720(例えば、超伝導体層)を形成する際に使用するために塗布されてもよい。次いで、マスクおよび光源(図示せず)を使用してレジスト層780上に反転パターンを露光することができ、第2の層の材料(例えば、選択された超伝導体)を堆積させることができる。結果として得られた構造が図7(D)に示されている。次に、露光済み/現像済みレジスト層780が、その表面上の任意の材料とともに洗い流されて、所望の形状の第2の層(例えば、超伝導体)を形成する。最後に、常伝導金属または超伝導体アレイあるいはその両方に適した電気接点(図示せず)が作成され、極低温冷却構造体への設置に適した向きでパッケージ化される。
【0054】
図8は、一部の実施形態と整合性のある能動平面量子冷却構造体を製造するための例示的なコンピュータ実装プロセス800を示す。プロセス800は、一部の実施形態では、図1のフォトリソグラフィ・アプリケーション105aにおいて実施されてもよい。ブロック802において、フォトリソグラフィ・アプリケーション105aは、基板760上に堆積させる平面能動冷却構造体の第1の層710(例えば、常伝導金属層)のためのパターンを作成する。次に、ブロック804において、フォトリソグラフィ・アプリケーション105aは、基板760上にフォトレジスト層を堆積させ、フォトレジスト層に第1のパターンを露光する。ブロック806において、フォトリソグラフィ・アプリケーション105aは、露光済み/現像済みフォトレジストを洗い流し、結果として得られる構造に適切な材料(例えば、選択された常伝導金属)を施す。次いで、フォトリソグラフィ・アプリケーション105aは、ブロック807において、未露光/未現像フォトレジストが、任意の隣接する常伝導金属とともに除去されるようにし、こうして、パターニングされた層710を形成させる。
【0055】
ブロック808において、フォトリソグラフィ・アプリケーション105aは、パターニングされた層710の上に絶縁層730を堆積させる。ブロック810において、フォトリソグラフィ・アプリケーション105aは、第2の(例えば、超伝導)層720のためのパターンを作成する。次いで、フォトリソグラフィ・アプリケーション105aは、現在の構造へのパターン・リフトオフ・レジスト層780の塗布を指示し(ブロック812)、その後、このパターン・リフトオフ・レジスト層がマスクおよび光を使用して露光される(ブロック814)。次いで、フォトリソグラフィ・アプリケーション105aは、ブロック816において、現在の構造の上に第2の層720(例えば、超伝導体層)を堆積させる。ブロック818において、フォトリソグラフィ・アプリケーション105aは、露光済み/現像済みレジスト層780を、その表面上の任意の超伝導体とともに洗い流して、パターニングされた層720を形成するように指示する。最後に、ブロック820において、フォトリソグラフィ・アプリケーション105aは、電気接点を現在の構造に取り付けさせる。そして、フォトリソグラフィ・アプリケーション105aが終了する。
【0056】
一般
本発明は、その特定の実施例を参照して詳細に説明されてきたが、その本質的な思想または属性から逸脱することなく、他の特定の形態で具現化されてもよい。例えば、一部の実施形態は、コンピュータ可読記憶媒体(例えば、リリース・インターフェース・テープまたは「RIT」、「テープアウト」、「GDS2」など)上に符号化された、製造設備(「fab」)用の命令セットとして配布することができる。コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、電子記憶デバイス、磁気記憶デバイス、光記憶デバイス、電磁記憶デバイス、半導体記憶デバイス、または前述の任意の適切な組合せであってもよい。コンピュータ可読記憶媒体のより具体的な例の非網羅的なリストには、ポータブル・コンピュータ・ディスケット、ハード・ディスク、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)、消去可能プログラム可能読み取り専用メモリ(EPROMまたはフラッシュ・メモリ)、スタティック・ランダム・アクセス・メモリ(SRAM)、ポータブル・コンパクト・ディスク読み取り専用メモリ(CD-ROM)、デジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、メモリ・スティック、フロッピー(R)・ディスク、パンチ・カードまたは命令が記録された溝内の隆起構造などの機械的に符号化されたデバイス、および前述の任意の適切な組合せが含まれる。コンピュータ可読記憶媒体は、本明細書で使用される場合、電波もしくは他の自由に伝播する電磁波、導波路もしくは他の伝送媒体を通して伝播する電磁波(例えば、光ファイバ・ケーブルを通過する光パルス)、またはワイヤを通して伝送される電気信号などの、それ自体一過性の信号であると解釈されるべきではない。
【0057】
本明細書に記載されたコンピュータ可読命令は、コンピュータ可読記憶媒体からそれぞれのコンピューティング/処理デバイスに、あるいはネットワーク、例えばインターネット、ローカル・エリア・ネットワーク、ワイド・エリア・ネットワークまたはワイヤレス・ネットワークあるいはその組合せを介して外部コンピュータもしくは外部記憶デバイスにダウンロードすることができる。ネットワークは、銅線伝送ケーブル、光伝送ファイバ、無線伝送、ルータ、ファイアウォール、スイッチ、ゲートウェイ・コンピュータまたはエッジ・サーバあるいはその組合せを含むことができる。各コンピューティング/処理デバイスのネットワーク・アダプタ・カードまたはネットワーク・インターフェースは、ネットワークからコンピュータ可読プログラム命令を受信し、コンピュータ可読プログラム命令をそれぞれのコンピューティング/処理デバイス内のコンピュータ可読記憶媒体に記憶するために転送する。
【0058】
本発明の実施形態はまた、クライアント企業、非営利団体、政府機関、内部組織構造などとのサービス契約の一部として配信されてもよい。これらの実施形態の態様はまた、クライアント・エンティティからの仕様を分析することと、分析に応答して勧告を作成することと、勧告の一部または全部を実装する回路のための設計を生成することと、設計のための製造命令を配信することと、結果として得られる回路を試験することと、を含むことができる。
【0059】
本発明の様々な実施形態が、関連する図面を参照して本明細書に記載されている。本発明の範囲から逸脱することなく、代替の実施形態を考案することができる。様々な接続および位置関係(例えば、の上、の下、隣接するなど)が、以下の説明および図面において要素間に記載されるが、当業者は、本明細書で説明される位置関係の多くが、たとえ向きが変わったとしても説明される機能が維持される場合は向きに依存しないことを認識するであろう。これらの接続または位置関係あるいはその両方は、特に明記されていない限り、直接的または間接的であってもよく、本発明は、この点に関して限定的であることは意図されていない。したがって、エンティティの結合は、直接的または間接的な結合のいずれかを指すことができ、エンティティ間の位置関係は、直接的または間接的な位置関係であり得る。間接的な位置関係の例として、本明細書における層「B」の上に層「A」を形成することへの言及は、層「A」および層「B」の関連する特性および機能性が中間層によって実質的に変化しない限り、1つまたは複数の中間層(例えば、層「C」)が層「A」と層「B」との間にある状況を含む。
【0060】
以下の定義および略語は、特許請求の範囲および本明細書の解釈のために使用される。本明細書で使用される場合、用語「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」、「含んでいる(including)」、「有する(has)」、「有している(having)」、「含有する(contains)」もしくは「含有している(containing)」またはそれらの任意の他の変形は、非排他的な包含をカバーすることが意図されている。例えば、要素のリストを含む組成物、混合物、プロセス、方法、物品、または装置は、必ずしもそれらの要素のみに限定されず、明示的に列挙されていない、またはそのような組成物、混合物、プロセス、方法、物品、もしくは装置に固有の他の要素を含むことができる。
【0061】
さらに、用語「例示的」は、本明細書では、「例、実例、または例示として役立つ」ことを意味するために使用される。「例示的」として本明細書に記載される任意の実施形態または設計は、必ずしも、他の実施形態または設計よりも好ましいまたは有利であると解釈されるべきではない。用語「少なくとも1つ」および「1つまたは複数」は、1以上の任意の整数、すなわち、1、2、3、4などを含むと理解される。「複数」という用語は、2以上の任意の整数、すなわち、2、3、4、5などを含むと理解される。「接続」という用語は、間接的な「接続」および直接的な「接続」を含むことができる。
【0062】
本明細書における「一実施形態」、「実施形態」、「例示的な実施形態」などへの言及は、記載される実施形態が特定の特徴、構造、または特性を含むことができるが、すべての実施形態が特定の特徴、構造、または特性を含んでも含まなくてもよいことを示す。さらに、そのような語句は、必ずしも同じ実施形態を指すものではない。さらに、特定の特徴、構造、または特性が実施形態に関連して記載されている場合、明示的に記載されているかどうかにかかわらず、他の実施形態に関連してそのような特徴、構造、または特性に影響を与えることは当業者の知識の範囲内であることが提示される。
【0063】
用語「約」、「実質的に」、「およそ」およびそれらの変形は、本出願の出願時に利用可能な装置に基づく特定の量の測定に関連する誤差の程度を含むことが意図されている。例えば、「約」は、所与の値の±8%または5%または2%の範囲を含むことができる。
【0064】
本発明の様々な実施形態の説明は、例示の目的で提示されてきたが、網羅的であることは意図されておらず、または開示された実施形態に限定されることは意図されていない。記載された実施形態の範囲および思想から逸脱することなく、多くの修正形態および変形形態が当業者には明らかであろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、実際の用途、または市場で見出される技術に対する技術的改善を最もよく説明するために、または他の当業者が本明細書で説明される実施形態を理解することを可能にするために選択された。したがって、本明細書に記載された実施形態は、すべての点で限定的ではなく、例示的であるとみなされ、本発明の範囲を決定するために添付の特許請求の範囲を参照することが望まれる。
図1
図2
図2C
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8