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7720104トルセミドおよびクロモリンを含む代謝疾患予防または治療用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-30
(45)【発行日】2025-08-07
(54)【発明の名称】トルセミドおよびクロモリンを含む代謝疾患予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/44 20060101AFI20250731BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20250731BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20250731BHJP
   A61K 31/352 20060101ALI20250731BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20250731BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20250731BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20250731BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20250731BHJP
【FI】
A61K31/44
A61P43/00 121
A61P3/00
A61K31/352
A61P3/04
A61P3/10
A61P1/16
A23L33/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023554933
(86)(22)【出願日】2022-02-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 KR2022001844
(87)【国際公開番号】W WO2022191443
(87)【国際公開日】2022-09-15
【審査請求日】2023-11-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0029950
(32)【優先日】2021-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】519289305
【氏名又は名称】オンコクロス カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】キム,イ-ラン
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-501841(JP,A)
【文献】特表2010-540519(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2019-0130241(KR,A)
【文献】特開2020-007364(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0213362(US,A1)
【文献】国際公開第2020/017916(WO,A1)
【文献】特表2016-512202(JP,A)
【文献】Obesity Medicine,2020年,18, 100218
【文献】Pharmacological Research,102,176-183
【文献】Am J Health-Syst Pharm,1995年,Vol 52,1771-1780
【文献】The Annals of Pharmacotherapy,1995年,Volume 29 ,396-402
【文献】Journal of Gastroenterology and Hepatology,2004年,19,854-858
【文献】肝臓,64巻, 2号,2023年,33-43
【文献】肝臓,65巻, 9号,2024年,420-432
【文献】再掲 NAFLDの名称と分類法の変更について | 日本消化器病学会,[online],2023年11月24日,[検索日:2025年6月19日], 取得先<https://www.jsge.or.jp/news/20231121/>
【文献】NAFLD/NASHはMASLD/MASHにーMASLD/MASHの日本語名称が正式に決定! | ニュース | 日本生活習慣病予防協会,[online],2024年09月05日,[検索日:2025年6月19日], <取得日:https://seikatsusyukanbyo.com/calendar/2024/010760.php>
【文献】日本内科学会雑誌,109巻, 1号
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/44
A61P 43/00
A61P 3/00
A61K 31/352
A61P 3/04
A61P 3/10
A61P 1/16
A23L 33/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルセミド(torsemide)またはその薬学的に許容可能な塩、およびクロモリン(cromolyn)またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する代謝機能障害関連脂肪肝炎(Metabolic Dysfunction Associated Steatohepatitis、MASH)の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項2】
トルセミドは、下記化学式1で表される化合物である、請求項1に記載の代謝機能障害関連脂肪肝炎の予防または治療用薬学的組成物:
【化1】
【請求項3】
クロモリンは、下記化学式2で表される化合物である、請求項1に記載の代謝機能障害関連脂肪肝炎の予防または治療用薬学的組成物:
【化2】
【請求項4】
インスリン抵抗性を減少させる、請求項1に記載の代謝機能障害関連脂肪肝炎の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項5】
体重を減少させる、請求項1に記載の代謝機能障害関連脂肪肝炎の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項6】
肝組織内の中性脂肪蓄積を減少させる、請求項1に記載の代謝機能障害関連脂肪肝炎の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項7】
クロモリンの塩は、クロモリンナトリウム(cromolyn sodium)である、請求項1に記載の代謝機能障害関連脂肪肝炎の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項8】
トルセミドまたはその薬学的に許容可能な塩、およびクロモリンまたはその薬学的に許容可能な塩を含有する代謝機能障害関連脂肪肝炎の予防または改善用健康機能食品。
【請求項9】
トルセミドは、下記化学式3で表される化合物である、請求項に記載の代謝機能障害関連脂肪肝炎の予防または改善用健康機能食品:
【化3】
【請求項10】
クロモリンは、下記化学式4で表される化合物である、請求項に記載の代謝機能障害関連脂肪肝炎の予防または改善用健康機能食品:
【化4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルセミドおよびクロモリンを含む代謝疾患の治療のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
肝臓(liver)は、身体で右側、上側の腹腔内に位置している大きな臓器であって、成人ではその重さが約1.5Kgである。正常な肝臓は、肉眼的に赤い色調を帯びており、表面は滑らかである。このような肝臓の形と大きさは、肝臓に疾病が発生すると変わるようになる。代表的な例として、お酒をたくさん飲んで肝臓に脂肪がたまるようになると、肝臓の大きさが大きくなり、脂肪によって黄色い色調を帯びるようになる。逆に、肝硬変症が酷くなると、肝臓の大きさが減って表面は凸凹に変わる。肝臓は様々な機能を有している非常に重要な臓器であって、その機能を整理すると、次のとおりである。第一に、肝臓は私たちの体にある様々な栄養素を適切に処理する機能、すなわち代謝機能をする。腸から吸収された飲食物は、私たちの体の様々な組織で使用できるように肝臓で適切に変化するようになり、様々な組織で栄養素を利用して残った老廃物はさらに肝臓に運搬されて処理されるものである。第二に、肝臓では私たちの体に必要ないくつかの栄養素を保管する機能をする。第三に、腸で栄養素の吸収のために必ず必要な物質である胆汁酸を作り、これを胆道を通じて腸に排出する機能をする。このような胆汁酸が作られなければ、様々な栄養素の吸収ができず、栄養欠乏が生じるようになる。第四に、私たちの体が適切な機能を果たすのに絶対的に必要な物質(アルブミン、血液凝固タンパク質、コレステロールなど)を作る機能をする。最後に、お酒(アルコール)、薬物、および私たちの体から生じた様々な毒素を解毒する作用である(Eugene Brainward、et al.Harrison’s principles of internal medicine.15th edition. 2001)。
【0003】
代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(Metabolic Dysfunction Associated Steatotic Liver Disease、MASLD)は、アルコールによる肝損傷ではなく、脂肪酸が中性脂肪の形態で肝臓の実質細胞内に5%以上蓄積された場合と定義する。病理学的には、単純性脂肪肝(simple steatosis)と炎症を伴う脂肪肝炎(steatohepatitis)に分類される。代謝機能障害関連脂肪肝炎(Metabolic Dysfunction Associated Steatohepatitis、MASH)は、前記代謝機能障害関連脂肪性肝疾患MASLD)の悪化過程で発生する疾患であって、肝細胞内に脂肪が蓄積されるとともに肝細胞変性/壊死が発生し、これによる炎症および肝線維化(liver fibrosis)によって肝硬変(cirrhosis)および肝臓癌(liver cancer)に発展するようになるため、全世界的に深刻な疾患として認識されている。MASHは、体内過剰な遊離脂肪酸(free fatty acid、FFA)による肝臓内の脂肪蓄積と併せて、直接的な肝損傷の誘発が重要な役割をすると提示されている。肥満でインスリン抵抗性がある場合、肝臓内にFFAの流入が増加するようになるが、FFAはベータ酸化過程(β-oxidation)または中性脂肪(triglyceride、TG)のエステル化を通じて肝臓内の脂肪蓄積が行われるようになる。また、過剰なFFA自体による酸化ストレスの増加と炎症シグナル伝達過程の活性化によって直接的な肝損傷が起き、これに対する保護機序にとして、肝臓内TGが蓄積されるようになる。これにより肝細胞死滅と不十分な復旧は、最終的に肝線維化と疾病の進行を誘発する重大な病変である代謝機能障害関連脂肪肝炎MASH)に進行される(Ong JP et al.、Obesity Surgery volume 15、pages 310-315、2005)。代謝機能障害関連脂肪肝炎は、原因によって原発性と続発性に分けられるが、原発性はメタボリック症候群の特徴である高止血、糖尿、または肥満などによって発生し(Szczepaniak LS et al.、2005)、続発性は栄養的原因(急激な体重減少、飢餓、腸バイパス術)、多様な薬物、毒性物質(毒キノコ、細菌毒素)、代謝性原因およびその他の要因によって発生することで知られている。原発性要因であるメタボリック症候群の重要な特徴である糖尿および肥満と関連する代謝機能障害関連脂肪肝炎の発生率は、糖尿患者の約50%、肥満患者の約76%、肥満の糖尿患者の殆どで発生することが知られている(Gupte P et al.、2004)。またアラニンアミノトランスフェラーゼ(Alanine aminotransferase、ALT)の水準が増加した糖尿および肥満患者で生検を実施した結果、脂肪肝炎の発生率が18-36%で示された(Braillon A et al.、1985)。
【0004】
代謝機能障害関連脂肪肝炎は、進展しない良性の疾患であるとされてきたが、非飲酒家であるにも関わらず、アルコール性肝炎に類似した炎症および肝線維化の組織像を示すことが明らかとなり、予後不良の疾患であることが知られている。特に近年になって、肥満、糖尿病などを背景とするメタボリック症候群(Metabolic Syndrome)が注目を浴び、代謝機能障害関連脂肪肝炎(Metabolic Dysfunction Associated Steatohepatitis、MASH)はその症候群の一つであるとの考えが広がっている。しかしながら、その機序は不明であり、また効果的な治療法・治療薬剤が確立されていない。現在まで代謝機能障害関連脂肪肝炎に対する確立された治療法はないが、これは、代謝機能障害関連脂肪肝炎が糖尿病、肥満、冠動脈疾患、生活習慣などの多様な要素と関連して示されるためである。いくつかの糖尿または肥満治療薬剤投与による脂肪肝疾患に対する効果が報告されたが、経口用肥満治療剤として使用されているオルリスタット(Orlistat)の場合、脂肪肝炎患者における肝臓の組織学的向上を誘導したという報告(Hussein et al.、2007)があり、メトホルミン(Metformin)が糖尿を伴わない代謝機能障害関連脂肪肝炎患者で血中肝酵素数値、肝臓の壊死性炎症および線維化を減少させたという報告がある(Bugianesi et al.、2005)。また、PPAR(peroxisome proliferatoractivated receptor)の作用物質(agonist)であるチアゾリジンジオン(Thiazolidinedione、TZD)系列の薬物は、肝臓と筋肉における脂肪蓄積を抑制し、代謝機能障害関連脂肪肝炎の動物モデルで肝臓に対して直接的な抗線維化作用を示すことが報告されている(Galli A et al.、2002)。しかし、現在、代謝機能障害関連脂肪肝炎の薬物治療として公認され得る組成物はない状況であり、前記疾患の治療または予防のための新規な治療剤の開発が至急である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Eugene Brainward、et al.Harrison’s principles of internal medicine.15th edition. 2001
【文献】Ong JP et al.、Obesity Surgery volume 15、pages 310-315、2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、代謝疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供することである。
【0007】
また、本発明の目的は、代謝疾患の予防または改善用健康機能食品を提供することである。
【0008】
また、本発明の目的は、代謝疾患の治療方法を提供することである。
【0009】
併せて、本発明の目的は、代謝疾患の予防および治療用薬学的組成物の製造に使用するための用途を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的の達成のために、本発明は、トルセミドおよびクロモリン、またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する代謝疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0011】
また、本発明は、トルセミドおよびクロモリン、またはその薬学的に許容可能な塩を含有する代謝疾患の予防または改善用健康機能食品を提供する。
【0012】
また、本発明は、トルセミドおよびクロモリン、またはその薬学的に許容可能な塩を薬学的に有効な量で代謝疾患を有する個体に投与するステップを含む代謝疾患の治療方法を提供する。
【0013】
併せて、本発明は、代謝疾患の予防および治療用薬学的組成物の製造に使用するための、トルセミドおよびクロモリン、またはその薬学的に許容可能な塩の用途を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、トルセミドとクロモリンを併用投与すると、クロモリンを単独処理した場合に比べてMASH動物モデルで体重減少、インスリン抵抗性減少および肝脂肪の蓄積が顕著に減少したため、これを糖尿病、肥満、インスリン抵抗性および代謝性肝疾患を含む代謝疾患の予防または治療用途で有用に活用することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】各週別に測定した群別のマウス平均体重(gram)を示したグラフ(平均体重±標準偏差)である。
図2】実験13週目に測定した群別のマウス平均空腹血糖数値(mg/dl)を示
図3】Oil Red O染色で確認した肝組織内の中性脂肪蓄積程度を示したイメージおよびグラフ(染色%±標準偏差)である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施例で本発明を詳しく説明することにする。ただし、下記実施例は、本発明に対する例示として提示されるものであって、当業者にとって周知著名な技術または構成に対する具体的な説明が本発明の要旨を不要にすることができるものと判断される場合には、その詳細な説明を省略することができ、これにより本発明が制限されない。本発明は、後述する特許請求の範囲の記載およびそれから解析される均等範疇内で多様な変形および応用が可能である。
【0017】
また、本明細書において使用される用語(terminology)は、本発明の好ましい実施例を適切に表現するために使用された用語であって、これは、ユーザ、運用者の意図または本発明の属する分野の慣例などによって変わることがある。よって、本用語に対する正義は、本明細書の全般にわたった内容に基づいて下されなければならないだろう。明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0018】
本発明において使用されるすべての技術用語は、別に正義されない限り、本発明の関連分野において通常の当業者が一般的に理解するような意味で使用される。また、本明細書には、好ましい方法や試料が記載されるが、これと類似するか、または同等なものも本発明の範疇に含まれる。本明細書に参考文献として記載されるすべての刊行物の内容は、本発明に導入される。
【0019】
一側面において、本発明は、トルセミド(torsemide)およびクロモリン(cromolyn)、またはその薬学的に許容可能な塩を有効成分として含有する代謝疾患の予防または治療用薬学的組成物に関する。
【0020】
一実施例において、トルセミドは、下記化学式1で表される化合物であってよく、クロモリンは、下記化学式2で表される化合物であってよい。
【0021】
【化1】
【0022】
および;
【0023】
【化2】
【0024】
一実施例において、代謝疾患は、糖尿病、肥満、インスリン抵抗性および代謝性肝疾患からなる群より選択されるいずれか一つであってよく、代謝性肝疾患は、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(Metabolic Dysfunction Associated Steatotic Liver Disease、MASLD)であってよく、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患は、代謝機能障害関連脂肪肝炎(Metabolic Dysfunction Associated Steatohepatitis、MASH)、非アルコール性脂肪肝(non-alcoholic fatty liver;NAFL)およびNAFLD-関連肝線維症(liver fibrosis)からなる群より選択されるいずれか一つ以上であってよく、代謝機能障害関連脂肪肝炎であることがさらに好ましい。
【0025】
一実施例において、代謝疾患の予防または治療はインスリン抵抗性減少、体重減少および肝組織内の中性脂肪蓄積減少からなり得る。
【0026】
一実施例において、クロモリンの薬学的に許容可能な塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、無機酸との塩、有機酸との塩および酸性アミノ酸との塩からなる群より選択されることができ、クロモリンナトリウムであることが最も好ましい。
【0027】
一実施例において、本発明のトルセミドおよびクロモリンまたはその薬学的に許容可能な塩は、トルセミドおよびクロモリンそれぞれを0.01mg/kg~1g/kgの用量で投与することができる。
【0028】
一実施例において、トルセミドおよびクロモリンは、同時に(simultaneous)、別途に(separate)または順次(sequential)に投与されることができる。
【0029】
本発明は、化学式1および2で表されるトルセミドおよびクロモリンだけでなく、これらの薬学的に許容される塩、これから製造され得る可能な溶媒和物、水和物、ラセミ体、または立体異性体をいずれも含む。
【0030】
本発明の化学式1および2で表されるトルセミドおよびクロモリンは、薬学的に許容可能な塩の形態で使用することができ、塩としては、薬学的に許容可能な遊離酸によって形成された酸付加塩が有用である。酸付加塩は、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、亜硝酸または亜リン酸などのような無機酸類と脂肪族モノおよびジカルボキシレート、フェニル-置換されたアルカノエート、ヒドロキシアルカノエートおよびアルカンジオエート、芳香族酸類、脂肪族および芳香族スルホン酸類のような無毒性有機酸から得る。このような薬学的に無毒な塩類としては、サルフェート、ピロサルフェート、バイサルフェート、サルファイト、バイサルファイト、ニトレート、ホスフェート、モノハイドロジェンホスフェート、ジハイドロジェンホスフェート、メタホスフェート、ピロホスフェートクロライド、ブロマイド、ヨージド、フルオライド、アセテート、プロピオネート、デカノエート、カプリレート、アクリレート、ホルマート、イソブチレート、カプレート、ヘプタノエート、プロピオレート、オキサレート、マロネート、サクシネート、スベレート、セバケート、フマレート、マレエート、ブチン-1,4-ジオエート、ヘキサン-1,6-ジオエート、ベンゾエート、クロロベンゾエート、メチルベンゾエート、ジニトロベンゾエート、ヒドロキシベンゾエート、メトキシベンゾエート、フタレート、テレフタレート、ベンゼンスルホネート、トルエンスルホネート、クロロベンゼンスルホネート、キシレンスルホネート、フェニルアセテート、フェニルプロピオネート、フェニルブチレート、シトレート、ラクテート、ヒドロキシブチレート、グリコレート、マレート、タルトレート、メタンスルホネート、プロパンスルホネート、ナフタレン-1-スルホネート、ナフタレン-2-スルホネートまたはマンデレートを含む。
【0031】
本発明による酸付加塩は、通常の方法、例えば、トルセミドまたはクロモリンを過量の酸水溶液中に溶解させ、この塩を水混和性有機溶媒、例えば、メタノール、エタノール、アセトンまたはアセトニトリルを用いて沈殿させて製造することができる。また、この混合物から溶媒や過量の酸を蒸発させて乾燥するか、または析出された塩を吸入濾過させて製造することもできる。また、塩基を用いて薬学的に許容可能な金属塩を作ることができる。アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩は、例えば、化合物を過量のアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物溶液中に溶解し、非溶解化合物塩を濾過し、濾液を蒸発、乾燥させて得る。このとき、金属塩としてはナトリウム、カリウムまたはカルシウム塩を製造することが製薬上適している。また、これに対応する銀塩は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属塩を適当な銀塩(例、窒酸銀)と反応させて得る。
【0032】
本発明の薬学的組成物は、有効成分としてトルセミドおよび/またはクロモリン、またはこれの塩の以外に公知の代謝疾患治療剤をさらに含むことができ、これらの疾患の治療のために公知の他の治療と併用されることができる。
【0033】
本発明において、用語「予防」とは、本発明による薬学的組成物の投与により代謝疾患の発生、拡散および再発を抑制または遅延させる全ての行為を意味し、「治療」とは、本発明の組成物の投与で代謝疾患の症状を好転させるか、または有益に変更するすべての行為を意味する。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、大韓医学協会などで提示された資料を参照して、本願の組成物が効果のある疾患の正確な基準を知り、改善、向上および治療の程度を判断することができるはずである。
【0034】
本発明において、有効成分と結合して使用された「治療学的に有効な量」という用語は、対象疾患を予防または治療するのに有効な量を意味し、本発明の組成物の治療的に有効な量は、いくつかの要素、例えば、投与方法、目的部位、患者の状態などによって変わり得る。したがって、人体に使用する際の投与量は、安全性および効率性を一緒に考慮して適正量を決定しなければならない。動物実験を通じて決定した有効量から、ヒトに使用する量を推定することも可能である。有効な量の決定時に考慮されるべきこれらの事項は、例えば、Hardman and Limbird、eds.、Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics、10th ed.(2001)、Pergamon Press;およびE.W.Martin ed.、Remington’s Pharmaceutical Sciences、18th ed.(1990)、Mack Publishing Co.に記述されている。
【0035】
本発明の薬学組成物は、薬学的に有効な量で投与する。本発明において使用される用語「薬学的に有効な量」は、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/危険比率で疾患を治療するのに十分であり、副作用を引き起こさない程度の量を意味し、有効用量水準は、患者の健康状態、代謝疾患の種類、代謝疾患の発病原因、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与方法、投与時間、投与経路および排出割合、治療期間、配合または同時に使用される薬物を含む要素およびその他の医学分野でよく知られた要素に基づいて決定することができる。本発明の組成物は、個別治療剤として投与するか、他の治療剤と併用して投与されることができ、従来の治療剤と順次または同時に投与されることができ、単一または多重投与されることができる。前記要素をいずれも考慮して、副作用なく最小限の量で最大の効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは当業者により容易に決定され得る。
【0036】
本発明の薬学組成物は、生物学的製剤に通常使用される担体、希釈剤、賦形剤、または2つ以上のこれらの組み合わせを含むことができる。本発明で使用される用語「薬学的に許容可能な」とは、前記組成物に露出する細胞やヒトに毒性がない特性を示すことを意味する。前記担体は、組成物を生体内伝達に適したものであれば、特に制限されず、例えば、Merck Index、13th ed.、Merck&Co.Inc.に記載された化合物、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノールおよびこれらの成分のうちの1成分以上を混合して利用することができ、必要に応じて抗酸化剤、緩衝液、静菌剤など、他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤および潤滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などのような、注射用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤に製剤化することができる。さらに、当分野の適正な方法で、またはRemington’s Pharmaceutical Science(Mack Publishing Company、Easton PA、18th、1990)に開示されている方法を用いて、各疾患に応じて、または成分に応じて好ましく製剤化することができる。
【0037】
一実施例において、前記薬学組成物は、経口型剤形、外用剤、坐剤、滅菌注射溶液および噴霧剤を含む群から選択される1つ以上の剤形であることができ、経口型または注射用剤形がより好ましい。
【0038】
本発明において使用される用語「投与」とは、任意の適切な方法で、個体または患者に所定の物質を提供することを意味し、目的とする方法によって非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に注射剤形に適用)するか、経口投与することができ、投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度などにより、その範囲が多様である。本発明の組成物の経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当するが、通常使用される単純希釈剤である水、液体パラフィン以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが一緒に含まれることができる。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などが含まれる。本発明の薬学的組成物は、活性物質が標的細胞に移動することができる任意の装置によって投与されることもできる。好ましい投与方式および製剤は、静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤などである。注射剤は、生理食塩液、リンゲル液などの水性溶剤、植物油、高級脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルなど)、アルコール類(例えば、エタノール、ベンジルアルコール、プロピレングリコール、グリセリンなど)などの非水性溶剤などを用いて製造することができ、変質防止のための安定化剤(例えば、アスコルビン酸、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、BHA、トコフェロール、EDTAなど)、乳化剤、pH調節のための緩衝剤、微生物発育を阻止するための保存剤(例えば、硝酸フェニル水銀、チメロサル、塩化ベンザルコニウム、フェノール、クレソール、ベンジルアルコールなど)などの薬学的担体を含むことができる。
【0039】
本発明において使用される用語「個体」とは、前記代謝疾患が発病したか、発病し得るヒトを含むサル、牛、馬、羊、豚、鶏、七面鳥、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、ラット、ウサギ、またはモルモットを含むすべての動物を意味し、本発明の薬学的組成物を個体に投与することにより、前記疾患を効果的に予防または治療することができる。本発明の薬学的組成物は、既存の治療剤と並行して投与されることができる。
【0040】
本発明の薬学組成物は、薬剤学的に許容可能な添加剤をさらに含むことができ、このとき、薬剤学的に許容可能な添加剤としては、デンプン、ゼラチン化デンプン、微結晶セルロース、乳糖、ポビドン、コロイダル二酸化ケイ素、リン酸水素カルシウム、ラクトース、マンニトール、飴、アラビアゴム、アルファ化澱粉、トウモロコシ澱粉、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、オパドライ、デンプングリコール酸ナトリウム、カルナウバロウ、合成ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、白糖、デキストロース、ソルビトールおよびタルクなどが使用されることができる。本発明による薬剤学的に許容可能な添加剤は、前記組成物に対して0.1重量部~90重量部含まれることが好ましいが、これに限定されるものではない。
一側面において、本発明は、トルセミドおよびクロモリン、またはその薬学的に許容可能な塩を含有する代謝疾患の予防および改善用健康機能食品に関する。
【0041】
一実施例において、トルセミドは、下記化学式3で表される化合物であってよく、クロモリンは、下記化学式4で表される化合物であってよい。
【0042】
【化3】
【0043】
および;
【0044】
【化4】
【0045】
一実施例において、代謝疾患は、糖尿病、肥満、インスリン抵抗性および代謝性肝疾患からなる群より選択されるいずれか一つであってよく、代謝性肝疾患は、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(Metabolic Dysfunction Associated Steatotic Liver Disease、MASLD)であってよく、代謝機能障害関連脂肪性肝疾患は、代謝機能障害関連脂肪肝炎(Metabolic Dysfunction Associated Steatohepatitis、MASH)、非アルコール性脂肪肝(non-alcoholic fatty liver;NAFL)およびNAFLD-関連肝線維症(liver fibrosis)からなる群より選択されるいずれか一つ以上であってよく、代謝機能障害関連脂肪肝炎であることがさらに好ましい。
【0046】
一実施例において、代謝疾患の予防または治療は、インスリン抵抗性減少、体重減少および肝組織内の中性脂肪蓄積減少からなり得る。
【0047】
一実施例において、クロモリンの薬学的に許容可能な塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、無機酸との塩、有機酸との塩および酸性アミノ酸との塩からなる群より選択されることができ、クロモリンナトリウムであることが最も好ましい。
【0048】
一実施例において、本発明のトルセミドおよびクロモリンまたはその薬学的に許容可能な塩は、トルセミドおよびクロモリンそれぞれを0.01mg/kg~1g/kgの用量で投与することができる。
【0049】
一実施例において、トルセミドおよびクロモリンは、同時に、別途にまたは順次に投与されることができる。
【0050】
本発明の組成物を食品組成物として使用する場合、前記組成物をそのまま添加するか、他の食品または食品成分とともに使用することができ、通常の方法によって適切に使用することができる。前記組成物は、有効成分以外に食品学的に許容可能な食品補助添加剤を含むことができ、有効成分の混合量は、使用目的(予防、健康または治療的処置)によって適して決定されることができる。
【0051】
本発明において使用される用語「食品補助添加剤」とは、食品に補助的に添加されることができる構成要素を意味し、各剤形の健康機能食品を製造するのに添加されるものであって、当業者が適切に選択して使用することができる。食品補助添加剤の例としては、様々な栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤および天然風味剤などの風味剤、着色剤および充填剤、ペクチン酸およびその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などが含まれるが、前記例により本発明の食品補助添加剤の種類が制限されるものではない。
【0052】
本発明の食品組成物には、健康機能食品が含まれることができる。本発明において使用される用語「健康機能食品」とは、人体に有用な機能性を有する原料や成分を使用して、精製、カプセル、粉末、顆粒、液状および丸などの形態で製造および加工した食品を言う。ここで「機能性」とは、人体の構造および機能に対して栄養素を調節するか、生理学的作用などのような保健用途に有用な効果を得ることを意味する。本発明の健康機能食品は、通常の技術分野において通常的に使用される方法によって製造可能であり、前記製造時には、通常の技術分野において通常的に添加する原料および成分を添加して製造することができる。また前記健康機能食品の剤形もまた健康機能食品と認められる剤形であれば、制限なく製造されることができる。本発明の食品用組成物は、様々な形の剤形で製造されることができ、一般薬品とは異なり、食品を原料とし、薬品の長期服用時に発生し得る副作用などがない利点があり、携帯性に優れ、本発明の健康機能食品は、代謝疾患治療剤の効果を増進させるためのサプリメントとして摂取が可能である。
【0053】
また、本発明の組成物が使用されることができる健康食品の種類には制限がない。なお、本発明の組成物を活性成分として含む組成物は、当業者の選択に応じて、健康機能食品に含有されることができる適切なその他の補助成分と公知の添加剤とを混合して製造することができる。添加できる食品の例としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、飴類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料、お茶、ドリンク剤、アルコール飲料およびビタミン配合剤などがあり、本発明による抽出物を主成分として製造した汁、お茶、ゼリーおよびジュースなどに添加して製造することができる。
【0054】
一側面において、本発明は、トルセミドおよびクロモリン、またはその薬学的に許容可能な塩を薬学的に有効な量で代謝疾患を有する個体に投与するステップを含む代謝疾患の治療方法に関する。
【0055】
一側面において、本発明は、代謝疾患の予防および治療用薬学的組成物の製造に使用するための、トルセミドおよびクロモリン、またはその薬学的に許容可能な塩の用途に関する。
【実施例
【0056】
下記の実施例を通じて、本発明をより詳細に説明する。しかし、下記の実施例は、本発明の内容を具体化するためのものであって、これにより本発明が限定されるものではない。
【0057】
実施例1.代謝機能障害関連脂肪肝炎動物モデルで体重変化確認
代謝機能障害関連脂肪肝炎(Metabolic Dysfunction Associated Steatohepatitis、MASH)動物モデルを製作し、本発明の薬物のこれに対する効果を確認するために、脂肪含量60%の高脂肪飼料を12週間摂取させる方式の高脂肪食餌モデル(High fat diet model)を利用して、代謝機能障害関連脂肪肝炎(Metabolic Dysfunction Associated Steatohepatitis、MASH)を誘発させた。具体的に、6週齢ICRマウス21匹を飼育環境に適応させるために一般飼料で実験開始前の7日間予備飼育した後、対照群(n=3、脂肪含量10%の飼料を摂取させる正常脂肪食餌(normal fat diet)、NFD)、高脂肪食餌対照群(n=9、high fat diet、HFD)、高脂肪食餌実験群(n=6、cromolyn treat)および高脂肪食餌実験群(n=6、cromolyn+torsemide treat)(MASH誘発群)に分けた。総飼育期間は13週であって、実験食餌と飲料水は自由に摂取するようにし、すべての実験食餌は飼育期間の間冷蔵保管した。薬物投与は、高脂肪食餌を始めてから6週が過ぎた時点から6週間進行し、対照群はPBS(Phosphate Buffered Saline)を、実験群はクロモリン(cromolyn sodium)10mg/kgまたはクロモリン10mg/kg+トルセミド(torsemide)10mg/kgを1週3回腹腔投与した。前記群のマウスを実験期間の間毎週1回一定の時間に体重を測定して、体重変化を確認した。
【0058】
その結果、12週後の高脂肪食餌実験群(HFD)は平均体重が61.3gで平均体重が50.8gである正常食餌群(NFD)より有意に増加して、MASH動物モデルがよく樹立されたことを確認した(図1A)。また、クロモリン投与高脂肪食餌実験群(HFD cromolyn)は、高脂肪食餌対照群(HFD PBS)に対して体重変化が有意に示されていないのに対し、クロモリンとトルセミドを併用投与した高脂肪食餌実験群(HFD cromolyn+torsemide)の場合、9週齢から体重が有意に減少し、12週目には体重が57.8gであって、高脂肪食餌実験群(HFD)の平均体重より統計的に有意に体重減少が示された(p-value<0.05)(図1B)。
【0059】
実施例2.代謝機能障害関連脂肪肝炎動物モデルでインスリン抵抗性確認
クロモリンおよび/またはトルセミド投与によるMASH動物モデルでのインスリン抵抗性を確認するために、実験13週目に群別マウスの血糖変化を確認した。具体的に、前記実施例1のように13週間食餌および薬物投与した後、実験動物を16時間禁食させた後、尾末梢血管で空腹状態の血液を採取した。また、各群に1.5mg/kgのグルコース溶液(Sigma Aldrich、St.Louis、MO、USA)を腹腔投与(intraperitoneal injection)した後、それぞれ15、30、45、60、90および120分経過時に尾静脈から採血して血糖の濃度変化を測定した。
【0060】
GTT(Glucose Tolerance Test)結果、90分に対照群(HFD PBS)の平均空腹血糖数値(mg/dl)は509.6mg/dl、実験群(cromolyn + torsemide treat)の平均空腹血糖数値(mg/dl)は319.4mg/dlで示され、120分にそれぞれ486mg/dlおよび267.4mg/dlで示され、クロモリンおよびトルセミド併用処理によって血糖数値が顕著に減少することが示された(図2)。併せて、ITT(Insulin Tolerance Test)結果、120分に対照群(HFD PBS)は260mg/dlおよび実験群(cromolyn+torsemide treat)は158.6mg/dlで実験群で血糖数値がさらに低く示され、対照群が実験群に比べてインスリン抵抗性がさらに高く、実験順では血糖を下げる役割をするインスリンがよく作用しているので、インスリン抵抗性が顕著に低くなったことを確認することができた(p-value<0.05)(図2)。
【0061】
実施例3.肝組織内の中性脂肪確認
クロモリンおよび/またはトルセミド投与によるMASH動物モデルでの脂肪の蓄積程度変化を確認するために、Oil Red O染色分析を遂行した。具体的に、前記実施例1のように、13週間食餌および薬物投与した後、各群の実験動物を犠牲にさせて肝臓を摘出し、Cryo状態の組織ブロック(tissue block)を12um厚さでセクションした。セクションした組織上にOil RED O working solution(oil red O:D.W.3:2)を処理して、5分間常温でインキュベーションした。その後、流れる水に20分間洗浄して水溶性マウンティング媒質(Water-soluble mounting medium)を利用してカバースリップ(cover slip)に組織をマウンティングした。その後、常温で10分インキュベーションし、顕微鏡で観察して薬物処理による肝組織内の中性脂肪蓄積程度変化を確認した。
【0062】
その結果、対照群(NFD、HFD PBS)に比べてHFD PBS群で増加した肝組織内の中性脂肪が実験群(HFD cromolyn、HFD cromolyn+torsemide)で相対的に減少したことと示され、特に、クロモリンとトルセミドを併用処理した群で顕著に減少することが示された(p-value<0.05)(図3)。
図1
図2
図3