(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-30
(45)【発行日】2025-08-07
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/70 20180101AFI20250731BHJP
【FI】
G16H20/70
(21)【出願番号】P 2024563675
(86)(22)【出願日】2024-07-31
(86)【国際出願番号】 JP2024027459
【審査請求日】2024-10-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518237129
【氏名又は名称】株式会社ライフクエスト
(74)【代理人】
【識別番号】100123618
【氏名又は名称】雨宮 康仁
(72)【発明者】
【氏名】浜口 玲央
(72)【発明者】
【氏名】香山 哲
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 糧三
(72)【発明者】
【氏名】高橋 広嗣
【審査官】原 秀人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/100875(WO,A1)
【文献】特開2007-021019(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2024-0059510(KR,A)
【文献】アンドロイダー,できるポケット Androidスマートフォンアプリ超事典1000,初版,日本,株式会社インプレス,2016年12月21日,p. 174
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
G06Q 50/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の画像(22)
と、所定のホルモン又は神経伝達物質の分泌に異常が生じているユーザに、第1の種類の感情を誘発させるコンテンツ(21)を表示するタッチパネル(11)と、
前記ユーザに、生じている
前記第1の種類の感情に合致する前記画像(22)
を第1方向にスワイプすることを指示する
とともに、生じている該第1の種類の感情に対応しない前記画像(22)を第2方向にスワイプすることを指示する制御部(13)と、
を備える情報処理装置(1)。
【請求項2】
前記制御部(13)は、ドーパミン及びエンドルフィンの分泌に異常が生じている前記ユーザに、
前記第1の種類の感情として、喜びの感情を誘発させる
前記コンテンツ(21)を前記タッチパネル(11)に表示し、該喜びの感情に対応する前記画像(22)を前記第1方向にスワイプすることを指示するとともに、該喜びの感情に対応しない該画像(22)を前記第2方向にスワイプすることを指示することにより、前記ドーパミン及び前記エンドルフィンの分泌を正常化する、
ことを特徴とする
請求項1に記載の情報処理装置(1)。
【請求項3】
前記制御部(13)は、
ストレス耐性が低減している前記ユーザに、
前記第1の種類の感情として、怒り、嫌悪、恐怖、及び/又は悲しみの感情を誘発させる
前記コンテンツ(21)を前記タッチパネル(11)に表示し、該怒り、嫌悪、恐怖、及び/又は悲しみの感情に対応する前記画像(22)を前記第2方向にスワイプすることを指示する第1処理を実行し、
前記第1処理の実行後、前記ストレス耐性が低減している前記ユーザに、
記第1の種類の感情として、喜びの感情を誘発させる前記コンテンツ(21)を前記タッチパネル(11)に表示し、該喜びの感情に対応する前記画像(22)を前記第1方向にスワイプすることを指示する第2処理を実行することにより
、コルチゾールの分泌を正常化して、前記ユーザの該ストレス耐性を向上させる、
ことを特徴とする
請求項1に記載の情報処理装置(1)。
【請求項4】
前記制御部(13)は、前記第2処理を前記第1処理よりも多い回数実行する、
ことを特徴とする
請求項3に記載の情報処理装置(1)。
【請求項5】
前記制御部(13)は、
前頭葉の機能が低減している前記ユーザに、
前記第1の種類の感情として、怒り、嫌悪、恐怖、及び/又は悲しみの感情を誘発させる
前記コンテンツ(21)を前記タッチパネル(11)に表示し、該怒り、嫌悪、恐怖、及び/又は悲しみの感情に対応する前記画像(22)を前記第2方向にスワイプすることを指示し、該ユーザの不安を除去することにより、該ユーザの前頭葉の機能を向上させる、
ことを特徴とする
請求項1に記載の情報処理装置(1)。
【請求項6】
前記第2方向は、前記第1方向とは反対方向である、
ことを特徴とする
請求項1に記載の情報処理装置(1)。
【請求項7】
所定の画像(22)と、前帯状回の機能が低減している
ユーザに、喜びの感情を誘発させるコンテンツ(21)を表示するタッチパネル(11)と、
前記ユーザに、該喜びの感情に対応する前記画像(22)
を第1方向にスワイプすることを指示して、セロトニン、オキシトシン、エンドルフィン、及びドーパミンの分泌を促進することにより、該ユーザの前帯状回の機能を向上させる
制御部(13)と、
を備える情報処理装置(1)。
【請求項8】
所定の画像(22)と、扁桃体及び側坐核の機能が低減している
ユーザに、第1の種類の感情を誘発させるコンテンツ(21)を表示するタッチパネル(11)と、
前記ユーザに、
前記第1の種類の感情として、喜びの感情を誘発させる
前記コンテンツ(21)を前記タッチパネル(11)に表示し、該喜びの感情に対応する前記画像(22)
を第1方向にスワイプすることを指示して、セロトニン、オキシトシン、エンドルフィン、及びドーパミンの分泌を促進した後、
該第1の種類の感情として、驚きの感情を誘発させる該コンテンツ(21)を該タッチパネル(11)に表示し、該驚きの感情に対応する該画像(22)を該第1方向にスワイプすることを指示して、ノルアドレナリン及びアドレナリンの分泌を促進し、該ユーザの扁桃体及び側坐核に刺激を与えることにより、該ユーザの扁桃体及び側坐核の機能を向上させる
制御部(13)と、
を備える情報処理装置(1)。
【請求項9】
前記制御部(13)は、前記ユーザに
前記第1の種類の感情を誘発させる
前記コンテンツ(21)を、該感情が生じることにより分泌される前記所定のホルモン及び/又は神経伝達物質に応じて、色相、彩度、及び/又は明度を調整して前記タッチパネル(11)に表示する、
ことを特徴とする請求項1
又は8に記載の情報処理装置(1)。
【請求項10】
前記制御部(13)は、前記ユーザに、前記第1方向として、該ユーザの下方向にスワイプすることを指示する、
ことを特徴とする請求項1
、7、又は8に記載の情報処理装置(1)。
【請求項11】
前記制御部(13)は、前記ユーザに、前記第1方向として、該ユーザの利腕方向にスワイプすることを指示する、
ことを特徴とする請求項1
、7、又は8に記載の情報処理装置(1)。
【請求項12】
タッチパネル(11)が、所定の画像(22)
と、所定のホルモン又は神経伝達物質の分泌に異常が生じているユーザに、第1の種類の感情を誘発させるコンテンツ(21)を表示し、
制御部(13)が、
前記ユーザに、生じている
前記第1の種類の感情に合致する前記画像(22)
を第1方向にスワイプすることを指示する
とともに、生じている該第1の種類の感情に対応しない前記画像(22)を第2方向にスワイプすることを指示する、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項13】
タッチパネル(11)が、所定の画像(22)と、前帯状回の機能が低減しているユーザに、喜びの感情を誘発させるコンテンツ(21)を表示し、
制御部(13)が、前記ユーザに、該喜びの感情に対応する前記画像(22)を第1方向にスワイプすることを指示して、セロトニン、オキシトシン、エンドルフィン、及びドーパミンの分泌を促進することにより、該ユーザの前帯状回の機能を向上させる、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項14】
所定の画像(22)と、扁桃体及び側坐核の機能が低減しているユーザに、第1の種類の感情を誘発させるコンテンツ(21)を表示するタッチパネル(11)を備える情報処理装置(1)による情報処理方法であって、
制御部(13)が、前記ユーザに、前記第1の種類の感情として、喜びの感情を誘発させる前記コンテンツ(21)を前記タッチパネル(11)に表示し、該喜びの感情に対応する前記画像(22)を第1方向にスワイプすることを指示して、セロトニン、オキシトシン、エンドルフィン、及びドーパミンの分泌を促進した後、
前記制御部(13)が、該第1の種類の感情として、驚きの感情を誘発させる該コンテンツ(21)を該タッチパネル(11)に表示し、該驚きの感情に対応する該画像(22)を該第1方向にスワイプすることを指示して、ノルアドレナリン及びアドレナリンの分泌を促進し、該ユーザの扁桃体及び側坐核に刺激を与えることにより、該ユーザの扁桃体及び側坐核の機能を向上させる、
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項15】
コンピュータに、
所定の画像(22)
と、所定のホルモン又は神経伝達物質の分泌に異常が生じているユーザに、第1の種類の感情を誘発させるコンテンツ(21)をタッチパネル(11)に
表示する手順と、
ユーザに、生じている
前記第1の種類の感情に合致する前記画像(22)
を第1方向にスワイプすることを指示する
とともに、生じている該第1の種類の感情に対応しない前記画像(22)を第2方向にスワイプすることを指示する手順と、
を実行させるためのプログラム。
【請求項16】
コンピュータに、
所定の画像(22)と、前帯状回の機能が低減しているユーザに、喜びの感情を誘発させるコンテンツ(21)をタッチパネル(11)に表示する手順と、
前記ユーザに、該喜びの感情に対応する前記画像(22)を第1方向にスワイプすることを指示して、セロトニン、オキシトシン、エンドルフィン、及びドーパミンの分泌を促進することにより、該ユーザの前帯状回の機能を向上させる手順と、
を実行させるためのプログラム。
【請求項17】
所定の画像(22)と、扁桃体及び側坐核の機能が低減しているユーザに、第1の種類の感情を誘発させるコンテンツ(21)を表示するタッチパネル(11)を備えるコンピュータに、
前記ユーザに、前記第1の種類の感情として、喜びの感情を誘発させる前記コンテンツ(21)を前記タッチパネル(11)に表示し、該喜びの感情に対応する前記画像(22)を第1方向にスワイプすることを指示して、セロトニン、オキシトシン、エンドルフィン、及びドーパミンの分泌を促進する手順と、
該第1の種類の感情として、驚きの感情を誘発させる該コンテンツ(21)を該タッチパネル(11)に表示し、該驚きの感情に対応する該画像(22)を該第1方向にスワイプすることを指示して、ノルアドレナリン及びアドレナリンの分泌を促進し、該ユーザの扁桃体及び側坐核に刺激を与えることにより、該ユーザの扁桃体及び側坐核の機能を向上させる手順と、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関し、特に、ユーザ内の神経伝達物質及び/又はホルモンの分泌を適切に制御可能な情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者が、スマートフォンや、スマートウォッチ、タブレットコンピュータ、パーソナルコンピュータ等から構成される情報処理装置を用いて、治療のためのトレーニングを行うことが知られている(例えば特許文献1及び2参照)。なお、本明細書中に特許文献1及び2の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参考として取り込むものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開2020/222264号公報
【文献】国際公開2022/079923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなトレーニングは、簡易且つ効果的なものが望ましく、そのためには、患者内の神経伝達物質及び/又はホルモンの分泌を適切に制御することが求められる。
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、ユーザ内の神経伝達物質及び/又はホルモンの分泌を適切に制御可能な治療支援装置、治療支援方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る情報処理装置(1)は、所定の画像(22)を表示するタッチパネル(11)と、ユーザに、生じている感情に対応する前記画像(22)を、該感情により分泌される前記所定のホルモン及び/又は神経伝達物質の分泌を促進する第1方向にスワイプすることを指示する制御部(13)と、を備える。
【0007】
上記の情報処理装置(1)において、前記制御部(23)は、前記ユーザに、生じている感情に対応しない前記画像(22)を、前記所定のホルモン及び/又は神経伝達物質の分泌を抑制する第2方向にスワイプすることを指示する、ようにしてもよい。
【0008】
上記の情報処理装置(1)において、前記制御部(13)は、ドーパミン及びエンドルフィンの分泌に異常が生じている前記ユーザに、喜びの感情を誘発させるコンテンツ(21)を前記タッチパネル(11)に表示し、該喜びの感情に対応する前記画像(22)を前記第1方向にスワイプすることを指示するとともに、該喜びの感情に対応しない該画像(22)を前記第2方向にスワイプすることを指示することにより、前記ドーパミン及び前記エンドルフィンの分泌を正常化する、ようにしてもよい。
【0009】
上記の情報処理装置(1)において、前記制御部(13)は、ストレス耐性が低減している前記ユーザに、怒り、嫌悪、恐怖、及び/又は悲しみの感情を誘発させるコンテンツ(21)を前記タッチパネル(11)に表示し、該怒り、嫌悪、恐怖、及び/又は悲しみの感情に対応する前記画像(22)を前記第2方向にスワイプすることを指示する第1処理を実行し、前記第1処理の実行後、前記ストレス耐性が低減している前記ユーザに、喜びの感情を誘発させる前記コンテンツ(21)を前記タッチパネル(11)に表示し、該喜びの感情に対応する前記画像(22)を前記第1方向にスワイプすることを指示する第2処理を実行することにより、該コルチゾールの分泌を正常化して、前記ユーザの該ストレス耐性を向上させる、ようにしてもよい。
【0010】
上記の情報処理装置(1)において、前記制御部(13)は、前記第2処理を前記第1処理よりも多い回数実行する、ようにしてもよい。
【0011】
上記の情報処理装置(1)において、前記制御部(13)は、前帯状回の機能が低減している前記ユーザに、喜びの感情を誘発させるコンテンツ(21)を前記タッチパネル(11)に表示し、該喜びの感情に対応する前記画像(22)を前記第1方向にスワイプすることを指示して、セロトニン、オキシトシン、エンドルフィン、及びドーパミンの分泌を促進することにより、該ユーザの前帯状回の機能を向上させる、ようにしてもよい。
【0012】
上記の情報処理装置(1)において、前記制御部(13)は、扁桃体及び側坐核の機能が低減している前記ユーザに、喜びの感情を誘発させるコンテンツ(21)を前記タッチパネル(11)に表示し、該喜びの感情に対応する前記画像(22)を前記第1方向にスワイプすることを指示して、セロトニン、オキシトシン、エンドルフィン、及びドーパミンの分泌を促進した後、驚きの感情を誘発させる該コンテンツ(21)を該タッチパネル(11)に表示し、該驚きの感情に対応する該画像(22)を該第1方向にスワイプすることを指示して、ノルアドレナリン及びアドレナリンの分泌を促進し、該ユーザの扁桃体及び側坐核に刺激を与えることにより、該ユーザの扁桃体及び側坐核の機能を向上させる、ようにしてもよい。
【0013】
上記の情報処理装置(1)において、前記制御部(13)は、前頭葉の機能が低減している前記ユーザに、怒り、嫌悪、恐怖、及び/又は悲しみの感情を誘発させるコンテンツ(21)を前記タッチパネル(11)に表示し、該怒り、嫌悪、恐怖、及び/又は悲しみの感情に対応する前記画像(22)を前記第2方向にスワイプすることを指示し、該ユーザの不安を除去することにより、該ユーザの前頭葉の機能を向上させる、ようにしてもよい。
【0014】
上記の情報処理装置(1)において、前記制御部(13)は、前記画像(22)をスワイプする方向を前記ユーザに指示する矢印(23)を、該ユーザ内で分泌される前記所定のホルモン及び/又は神経伝達物質に応じて異なる色で前記タッチパネル(11)に表示する、ようにしてもよい。
【0015】
上記の情報処理装置(1)において、前記制御部(13)は、セロトニン、オキシトシン、エンドルフィン、及びドーパミンの分泌に関連する前記画像(22)のスワイプを指示する前記矢印(23)を、ノルアドレナリン、アドレナリン、及びコルチゾールの分泌に関連する該画像(22)のスワイプを指示する該矢印(23)とは異なる色で表示する、ようにしてもよい。
【0016】
上記の情報処理装置(1)において、前記制御部(13)は、前記セロトニン、オキシトシン、エンドルフィン、及びドーパミンの分泌に関連する前記画像(22)のスワイプを指示する前記矢印(23)を青系統又は緑系統の色で表示する一方で、前記ノルアドレナリン、アドレナリン、及びコルチゾールの分泌に関連する該画像(22)のスワイプを指示する該矢印(23)を赤系統の色で表示する、ようにしてもよい。
【0017】
上記の情報処理装置(1)において、前記制御部(23)は、前記セロトニン、オキシトシン、エンドルフィン、及びドーパミンの分泌に関連する前記画像(22)のスワイプを指示する前記矢印(23)をパステルカラーで表示する、ようにしてもよい。
【0018】
上記の情報処理装置(1)において、前記制御部(13)は、前記ユーザに感情を誘発させるコンテンツ(21)を、該感情が生じることにより分泌される前記所定のホルモン及び/又は神経伝達物質に応じて、色相、彩度、及び/又は明度を調整して前記タッチパネル(11)に表示する、ようにしてもよい。
【0019】
上記の情報処理装置(1)において、前記制御部(13)は、前記ユーザに、前記第1方向として、該ユーザの下方向にスワイプすることを指示する、ようにしてもよい。
【0020】
上記の情報処理装置(1)において、前記制御部(13)は、前記ユーザに、前記第1方向として、該ユーザの利腕方向にスワイプすることを指示する、ようにしてもよい。
【0021】
上記の情報処理装置(1)において、前記第2方向は、前記第1方向とは反対方向である、ようにしてもよい。
【0022】
本発明の第2の観点に係る情報処理方法は、タッチパネル(11)が、所定の画像(22)を表示し、制御部(13)が、ユーザに、生じている感情に対応する前記画像(22)を、該感情により分泌される前記所定のホルモン及び/又は神経伝達物質の分泌を促進する第1方向にスワイプすることを指示する、ことを特徴とする。
【0023】
本発明の第3の観点に係るプログラムは、コンピュータに、所定の画像(22)をタッチパネル(11)に表示する手順と、ユーザに、生じている感情に対応する前記画像(22)を、該感情により分泌される前記所定のホルモン及び/又は神経伝達物質の分泌を促進する第1方向にスワイプすることを指示する手順と、を実行させる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、ユーザ内の神経伝達物質及び/又はホルモンの分泌を適切に制御可能な情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施形態に係る情報処理装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】タッチパネルにおける画像表示例を示す図である。
【
図3】トレーニングパターン選択テーブルの構成例を示す図である。
【
図4】トレーニングパターンの構成例を示す図である。
【
図5】情報処理装置が実行するトレーニング処理の詳細を例示するフローチャートである。
【
図6】実施例1に係るトレーニング処理におけるシーケンス図である。
【
図7】実施例2に係るトレーニング処理におけるシーケンス図である。
【
図8】実施例3に係るトレーニング処理におけるシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0027】
まず、本発明の実施形態に係る情報処理装置の構成について図面を参照しつつ説明する。
【0028】
情報処理装置1は、例えばタッチパネルを備える汎用のスマートフォン、スマートウォッチ、タブレットコンピュータ、又はパーソナルコンピュータ等から構成される。情報処理装置1は、患者(ユーザ)にトレーニングを通じて基本6感情(「怒り」・「嫌悪」・「恐怖」・「喜び」・「悲しみ」・「驚き」)を誘発して、その感情に関連するホルモン(「アドレナリン」・「コルチゾール」・「オキシトシン」・「エンドルフィン」)及び/又は神経伝達物質(「ノルアドレナリン」・「セロトニン」・「ドーパミン」)の分泌を促進又は低減することにより、患者を治療するものである。
【0029】
「ノルアドレナリン」は、「戦うか逃げるか」の反応を引き起こす神経伝達物質として知られ、感情の反応や評価を調節する「扁桃体」や、報酬系の中心的な役割を果たす「側坐核」等の脳の部位を活性化し、身体的・精神的なアラート状態を引き起こす。「アドレナリン」は、「戦うか逃げるか」の反応を制御し、心拍数や血圧の上昇に関与するストレスホルモンである。「ノルアドレナリン」及び「アドレナリン」は、「怒り」、「嫌悪」、「恐怖」、及び「驚き」の感情で分泌が促進される。
【0030】
「コルチゾール」は、ストレス応答に関与するホルモンで、体のエネルギー供給を調整する。「コルチゾール」は、ストレス反応により、その分泌が引き起こされ、特に意思決定や自己制御に関与する「前頭葉」や、記憶や学習に関わる「海馬」等の脳の部位の機能を低下させる。「コルチゾール」は、「怒り」、「嫌悪」、「恐怖」、及び「悲しみ」の感情で分泌が促進される。
【0031】
「セロトニン」は、気分の安定や、食欲、睡眠、社会的行動に関与する神経伝達物質で、幸福感に影響を与えるものであるため、「幸福ホルモン」とも呼ばれる。「セロトニン」は、感情の評価や自己認識に関わりを持つ「前帯状回」や、「扁桃体」等の脳の部位を活性化する。「セロトニン」は、「喜び」の感情で分泌が促進される。
【0032】
「オキシトシン」は、社会的絆や愛情を促進するホルモンとして知られ、「前頭葉」や「前帯状回」等の脳の部位を活性化し、信頼や親和性を高めるものである。「オキシトシン」は、「喜び」の感情で分泌が促進される。
【0033】
「エンドルフィン」は、体内で自然に産生される鎮痛剤や快感物質として機能するホルモンで、「自然の鎮痛剤」とも呼ばれる。「エンドルフィン」は、「側坐核」や「前帯状回」等の脳の部位を活性化し、痛みを緩和したり、快楽を感じさせたりする。「エンドルフィン」は、「喜び」の感情で分泌が促進される。
【0034】
「ドーパミン」は、報酬や、快楽、動機付けに関与する神経伝達物質で、「側坐核(報酬系)」や「前頭葉」等の脳の部位を活性化する。「ドーパミン」は、「喜び」の感情で分泌が促進される。
【0035】
図1は、本実施形態に係る情報処理装置を示すブロック図である。
【0036】
図1に示すように、情報処理装置1は、タッチパネル11と、記憶部12と、制御部13と、を備え、これらはバス等を介して接続される。
【0037】
タッチパネル11は、例えば液晶表示装置とポインティングデバイスとを組み合わせた汎用のタッチパネル等から構成される。タッチパネル11は、各種画面を表示するとともに、患者による各種操作を受け付ける。本実施形態において、タッチパネル11には、治療プログラムの設定画面が表示され、患者又は患者の支援者は、設定画面を指でタップする等して、患者の疾患、利腕、及び好きな色等の患者情報を設定する。
【0038】
図2は、タッチパネルにおける画像表示例を示す図である。
【0039】
図2に示すように、タッチパネル11には、トレーニングが開始されると、患者に基本6感情を誘発して、その感情に関連するホルモン及び/又は神経伝達物質の分泌を促進又は低減することを目的とするコンテンツとして感情誘発画像21が表示される。感情誘発画像21は、風景等の静止画像又は動画像、若しくは所定の状況を説明するためのテロップ等であればよい。
【0040】
例えば、タッチパネル11には、患者に「喜び」の感情を誘発して、患者内に「セロトニン」、「オキシトシン」、「エンドルフィン」、及び「ドーパミン」の分泌を促進する感情誘発画像21として、綺麗な風景やリラックスできる風景の画像、子供やペット等のかわいい画像、感動する画像、及び笑ってしまう画像等が表示される。
【0041】
また、タッチパネル11には、患者に「怒り」、「嫌悪」、「恐怖」、及び/又は「悲しみ」の感情を誘発して、患者内にネガティブな側面から神経伝達物質「ノルアドレナリン」、並びにストレスホルモン「アドレナリン」及び「コルチゾール」の分泌を促進する感情誘発画像21が表示される。
【0042】
さらに、タッチパネル11には、患者に「驚き」の感情を誘発したり、勇気が出る(奮い立つ)等の情動の変化を誘発したりして、患者内にポジティブな側面から神経伝達物質「ノルアドレナリン」、並びにストレスホルモン「アドレナリン」及び「コルチゾール」の分泌を促進する感情誘発画像21として、ピンチからの大逆転の画像や勧善懲悪の画像等が表示される。
【0043】
ここで、Elliot, A. J., & Maier, M. A. (2014). Color psychology: How colors influence the mind. Psychology of Aesthetics, Creativity, and the Arts, 8(4), 368-375.には、色とホルモン及び/又は神経伝達物質との関係が記載されている。具体的に、Elliot, A. J., & Maier, M. A. (2014).には、色が感情や行動に影響を与え、感情やストレスの反応がホルモン及び/又は神経伝達物質のレベルに影響を与えることが記載されている。すなわち、Elliot, A. J., & Maier, M. A. (2014).には、色が感情等を介してホルモン及び/又は神経伝達物質のレベルに影響を与えることが記載されている。なお、本明細書中にElliot, A. J., & Maier, M. A. (2014).を参考として取り込むものとする。
【0044】
「赤色」は、一般的に「危険」、「失敗」、及び「停止」と関連付けられる。「赤色」は、人々の注意を引き付け、危険や失敗のリスクを意識させることで、アラートを引き起こすため、例えばテストの前に見せられると、テストの成績が低下する。このように、「赤色」は、ストレスや危険に関連する状況において、しばしばアラートのサインとして機能し、これが「ノルアドレナリン」及び「アドレナリン」の分泌を促進する。
【0045】
過剰に明るい色や、不快な色の組合せ等は、ストレスや不安を引き起こすとされる色とされ、ストレスホルモンである「コルチゾール」の分泌を促進する。
【0046】
このため、派手な赤系統の色等は、ストレス効果を有し、「ノルアドレナリン」、「アドレナリン」、及び「コルチゾール」の分泌を促進する。
【0047】
「青色」等の青系統の色は、一般的に「安全」、「平和」、及び「進む」と関連付けられる。「青色」等の青系統の色は、クリエイティブな思考や問題解決のタスクにおいて、より良いパフォーマンスを奨励する。このような「青色」等の青系統の色の他、「緑色」等の緑系統の色等の落ち着いた色は、リラックスや平和の感覚を高め、これが「セロトニン」等の分泌を促進する。
【0048】
淡い「パステルカラー」等の快適な環境や幸せな記憶に関連する色は、「エンドルフィン」等の分泌を促進する。
【0049】
このため、落ち着いた「青色」等の青系統の色や「緑色」等の緑系統の色、及び淡い「パステルカラー」等は、リラックス効果を有し、「セロトニン」及び「エンドルフィン」等の分泌を促進する。
【0050】
また、美しい景色の観察や、患者の好きな色の使用等、報酬や快楽に関連する活動は、「ドーパミン」の分泌を促進する。特定の色や経験が「ドーパミン」のレベルにどのように影響するかは、患者個々人によって大きく異なる。
【0051】
そこで、本実施形態では、上記の色とホルモン及び/又は神経伝達物質との関係に基づいて、感情誘発画像21が、分泌を促進するホルモン及び/又は神経伝達物質に応じて、色相、彩度、及び明度が調整されてタッチパネル11に表示される。
【0052】
具体的に、色相、彩度、及び明度を調整して感情誘発画像21の赤系統の色相を強め、彩度及び明度からなる色のトーンを高めて派手にすることで、ストレス効果を高め、患者内で「ノルアドレナリン」、「アドレナリン」、及び「コルチゾール」の分泌を促進する。一方、感情誘発画像21を、落ち着いた「青色」等の青系統の色や「緑色」等の緑系統の色等の色相を強めたり、色のトーンを弱めて淡い「パステルカラー」にしたりすることで、リラックス効果を高め、患者内で「セロトニン」及び「エンドルフィン」等の分泌を促進する。
【0053】
感情誘発画像21を表示してから所定期間経過後、タッチパネル11には、患者に感情を提示する感情提示画像(所定の画像)22と、その感情提示画像22のスワイプ方向を患者に指示する矢印23と、が表示される。患者は、タッチパネル11に表示される感情提示画像22を矢印23の方向に指を滑らせてスワイプ等する。
【0054】
本実施形態において、感情提示画像22が提示する感情のうち、「喜び」の感情に関連する「快」の感情としては、例えば「安心」、「嬉しい」、「楽しい」、「かわいい」、及び「感動する」等が挙げられる。また、「喜び」の感情とは異なる「快」の感情(以下、「「刺激」の感情」という。)としては、「やる気」、「勇気」、「自信」、「希望」、「意欲」、及び「熱意」等が挙げられる。さらに、「喜び」の感情とは反対の「不快」の感情としては、「不安」、「怒り」、「嫌悪」、「恐怖」、及び「悲しみ」等が挙げられる。
【0055】
また、矢印23は、上記の色とホルモン及び/又は神経伝達物質との関係に基づいて、分泌されるホルモン及び/又は神経伝達物質に応じて異なる色で表示される。具体的には、矢印23に派手な赤系統の色等を付与して表示することで、ストレス効果を高め、患者内で「ノルアドレナリン」、「アドレナリン」、及び「コルチゾール」等の分泌を促進する。これに対して、矢印23に落ち着いた「青色」等の青系統の色や「緑色」等の緑系統の色、及び淡い「パステルカラー」等を付与して表示することで、リラックス効果を高め、患者内で「セロトニン」及び「エンドルフィン」等の分泌を促進する。
【0056】
ここで、患者が、タッチパネル11に表示される感情提示画像22を、下方向にスワイプすると、自分に取り込むようなイメージが生じ、その感情提示画像22が提示する感情が強くなって、その感情に対応するホルモン及び/又は神経伝達物質の分泌が促進されることが知られている。これに対して、患者が、タッチパネル11に表示される感情提示画像22を、上方向にスワイプすると、自分から遠ざけるようなイメージが生じ、その感情提示画像22が提示する感情が弱くなって、その感情に対応するホルモン及び/又は神経伝達物質の分泌が低減することが知られている。
【0057】
また、患者が、タッチパネル11に表示される感情提示画像22を、自分の利腕方向(右利きであれば右方向、左利きであれば左方向)にスワイプすると、自分に取り込むようなイメージが生じ、その感情提示画像22が提示する感情が強くなって、その感情に対応するホルモン及び/又は神経伝達物質の分泌が促進されることが知られている。一方、患者が、タッチパネル11に表示される感情提示画像22を、自分の利腕反対方向(右利きであれば左方向、左利きであれば右方向)にスワイプすると、自分から遠ざけるようなイメージが生じ、その感情提示画像22が提示する感情が弱くなって、その感情に対応するホルモン及び/又は神経伝達物質の分泌が低減することが知られている。
【0058】
そこで、本実施形態では、上記のスワイプ方向とホルモン及び/又は神経伝達物質との関係に基づいて、タッチパネル11には、感情誘発画像21から誘発された患者の感情を強くする場合、これに関連する感情を提示する感情提示画像22を、下方向又は患者の利腕方向(右利きであれば右方向、左利きであれば左方向)、或いは利腕下方向(右利きであれば右下方向、左利きであれば左下方向)にスワイプすることを患者に指示する矢印23が表示される。これに対して、タッチパネル11には、感情誘発画像21から誘発された患者の感情を弱くする場合、これに関連する感情を提示する感情提示画像22を、上方向又は患者の利腕反対方向(右利きであれば左方向、左利きであれば右方向)、或いは利腕反対上方向(右利きであれば左上方向、左利きであれば右上方向)にスワイプすることを患者に指示する矢印23が表示される。
【0059】
患者は、感情誘発画像21から誘発された感情に関連する感情を提示する感情提示画像22を、矢印23の方向にスワイプすることにより、感情誘発画像21から誘発された感情を強め、その感情に対応するホルモン及び/又は神経伝達物質の分泌が促進されたり、反対に、感情誘発画像21から誘発された感情を弱め、その感情に対応するホルモン及び/又は神経伝達物質の分泌が低減したりする。
【0060】
感情誘発画像21が表示されてから、患者に感情提示画像22が矢印23の方向にスワイプされるまでの表示を1セットとし、一のトレーニングにおいて、タッチパネル11には、複数セットの表示が行われる。
【0061】
図1に示す記憶部12は、例えば汎用のフラッシュメモリ等の不揮発性メモリ等から構成される。記憶部12には、患者にトレーニングを通じて基本6感情を誘発して、その感情に関連するホルモン及び/又は神経伝達物質の分泌を促進又は低減し、患者を治療するためのアプリケーションプログラム(以下、「治療プログラム」という。)等の各種アプリケーションプログラムがインストールされている。
【0062】
また、記憶部12は、患者、或いは患者の家族及び担当医師等の支援者により設定された患者の疾患や、右利き、左利きといった患者の利腕、患者の好きな色等の患者情報を記憶する。
【0063】
さらに、記憶部12は、患者のトレーニングにおいてタッチパネル11に表示される感情誘発画像21、感情提示画像22、及び矢印23を、それぞれ複数種類記憶する。
【0064】
加えて、記憶部12は、患者のトレーニングにおいてタッチパネル11に順次表示される感情誘発画像21の種類、感情提示画像22の種類、及び矢印23の種類を規定するトレーニングパターンを選択するためのトレーニングパターン選択テーブル3を記憶する。
【0065】
図3は、トレーニングパターン選択テーブルの構成例を示す図である。
【0066】
図3に示すように、トレーニングパターン選択テーブル3は、患者情報から特定される患者の疾患、利腕、及び好きな色に対応付けて、複数種類のトレーニングパターンTPi(iは自然数)を選択可能に登録する。
【0067】
図4は、トレーニングパターンの構成例を示す図である。
【0068】
図4に示すように、トレーニングパターンTPiには、セット数に対応付けて、タッチパネル11に表示する感情誘発画像21の種類、感情提示画像22の種類、及び矢印23の種類が設定されている。なお、トレーニングパターン選択テーブル3には、患者の疾患、利腕、及び好きな色の組合せ毎に、一つずつトレーニングパターンTPiが登録されていてもよいし、複数種類のトレーニングパターンTPiが選択可能に登録されていてもよい。
【0069】
図1に示す制御部13は、例えばCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等から構成される。CPUは、RAMをワークメモリとして用い、ROM及び記憶部12に記憶されている各種プログラム等を適宜実行することによって、情報処理装置1の各種動作を制御する。
【0070】
本実施形態において、RAMには、1セットの表示が何回行われたかをカウントするための表示カウンタ、及び矢印23の色及び方向を決定するのに使用される乱数をカウントするための乱数カウンタ等が設けられている。
【0071】
制御部13は、患者がタッチパネル11に表示される治療プログラムに対応するアイコンをタップしたことに応答して、記憶部12に記憶される治療プログラムを起動し、治療プログラムの設定画面をタッチパネル11に表示する。
【0072】
制御部13は、患者が設定画面を指でタップする等して設定した患者自身の疾患、利腕、及び好きな色等の患者情報を、記憶部12に記憶する。なお、患者情報の設定は、患者の支援者が行ってもよい。
【0073】
患者情報の設定後、制御部13は、患者がタッチパネル11においてトレーニングの開始を指示したことに応答して、記憶部12に記憶されている患者情報を読み出す。
【0074】
次に、制御部13は、記憶部12から読み出した患者情報から特定される患者の疾患、利腕、及び好きな色に対応するトレーニングパターンTPiを、トレーニングパターン選択テーブル3から選択する。なお、トレーニングパターン選択テーブル3に、患者の疾患、利腕、及び好きな色の組合せ毎に、複数種類のトレーニングパターンTPiが選択可能に登録されていている場合には、乱数カウンタから乱数を抽出する等して、患者の疾患、利腕、及び好きな色の組合せに対応する複数種類のトレーニングパターンTPiの中から、一のトレーニングパターンTPiを選択するようにすればよい。
【0075】
そして、制御部13は、選択したトレーニングパターンTPiに従って、感情誘発画像21、感情提示画像22、及び矢印23をタッチパネル11に順次表示して行くことにより、患者を治療するためのトレーニングを実行する。
【0076】
次に、上記の構成を備える情報処理装置1が実行するトレーニング処理について図面を参照しつつ説明する。
【0077】
情報処理装置1では、制御部13が、患者がタッチパネル11に表示される治療プログラムに対応するアイコンをタップして治療プログラムを起動した後、タッチパネル11においてトレーニングの開始を指示したことに応答して、トレーニング処理を開始する。
【0078】
図5は、情報処理装置が実行するトレーニング処理の詳細を例示するフローチャートである。
【0079】
図5に示すトレーニング処理において、まず、制御部13は、記憶部12に記憶されている患者情報を読み出す(ステップS51)。
【0080】
次に、制御部13は、ステップS51で読み出した患者情報から特定される患者の疾患、利腕、及び好きな色に対応するトレーニングパターンTPiを、トレーニングパターン選択テーブル3から選択する(ステップS52)。
【0081】
続いて、制御部13は、RAM等に設けられた表示カウンタにおけるカウント値(表示カウント値)を“0”に初期化する(ステップS53)。
【0082】
さらに、制御部13は、表示カウント値を“1”カウントアップして更新し(ステップS54)、更新後の表示カウント値が、選択したトレーニングパターンTPiに従って表示される総セット数以下であるか否かを判別する(ステップS55)。例えば、選択したトレーニングパターンTPiに従って、感情誘発画像21が表示されてから、患者に感情提示画像22が矢印23の方向にスワイプされるまでの1セットの表示が5回行われる場合、総セット数は“5”となる。
【0083】
制御部13は、更新後の表示カウント値が、総セット数以下であれば(ステップS55;No)、更新後の表示カウント値に対応してトレーニングパターンTPiに登録されている種類の感情誘発画像21、感情提示画像22、及び矢印23を、記憶部12から読み出す(ステップS56)。
【0084】
続いて、制御部13は、RAM等に設けられた乱数カウンタから乱数を抽出して、タッチパネル11に表示する矢印23の色及び方向を決定する(ステップS57)。
【0085】
具体的に、制御部13は、患者に「快」の感情を提示する感情提示画像22のスワイプを指示する場合、抽出した乱数の値に基づいて、矢印23の色を、「青」や、「緑」、「パステルカラー」等のリラックス効果を高める色の中から決定するとともに、矢印23の方向を、下方向、患者の利腕方向(右利きであれば右方向、左利きであれば左方向)、及び利腕下方向(右利きであれば右下方向、左利きであれば左下方向)の中のいずれかに決定する。
【0086】
一方、制御部13は、患者に「刺激」の感情又は「不快」の感情を提示する感情提示画像22のスワイプを指示する場合、抽出した乱数の値に基づいて、矢印23の色を、派手な赤色系統のストレス効果を高める色の中から決定する。
【0087】
そして、制御部13は、感情誘発画像21から誘発された患者の感情を強めて、その感情に対応するホルモン及び/又は神経伝達物質の分泌を促進する場合、矢印23の方向を、自分に取り込むようなイメージが生じる第1方向(下方向、患者の利腕方向(右利きであれば右方向、左利きであれば左方向)、及び利腕下方向(右利きであれば右下方向、左利きであれば左下方向))の中のいずれかに決定する。
【0088】
これに対して、制御部13は、感情誘発画像21から誘発された患者の感情を弱めて、その感情に対応するホルモン及び/又は神経伝達物質の分泌を低減する場合、矢印23の方向を、自分から遠ざけるようなイメージが生じる第2方向(上方向、患者の利腕反対方向(右利きであれば左方向、左利きであれば右方向)、及び利腕反対上方向(右利きであれば左上方向、左利きであれば右上方向))の中のいずれかに決定する。
【0089】
なお、感情誘発画像21及び感情提示画像22も、乱数カウンタから抽出した乱数の値に基づいて、複数種類の中から決定されるものであってもよい。
【0090】
そして、制御部13は、タッチパネル11に、ステップS56で読み出した感情誘発画像21を表示し、所定期間経過後、感情提示画像22、及びステップS57で決定した矢印23を表示する(ステップS58)。また、制御部13は、タッチパネル11に、感情提示画像22及び矢印23を表示しているときに、「今の感情に合致するものを下方向にスワイプして下さい。」及び「今の感情に合致しないものと上方向にスワイプして下さい。」等といった患者への指示を表示する。
【0091】
その後、制御部13は、患者によって、ステップS58で表示された感情提示画像22がスワイプされたか否かを判別する(ステップS59)。
【0092】
制御部13は、感情提示画像22がスワイプされるまでループして待ち(ステップS59;No)、感情提示画像22がスワイプされると(ステップS59;Yes)、1セットの表示が終わったとして、ステップS54へとリターンする。
【0093】
そして、制御部13は、更新後の表示カウント値が、総セット数より大きくなると(ステップS55;Yes)、選択したトレーニングパターンTPiに従って行われる全てのセットの表示が完了したとして、トレーニング処理を終了する。
【0094】
続いて、上記のトレーニング処理について、具体例を挙げてより詳細に説明する。
【実施例1】
【0095】
実施例1では、「依存症」の患者を治療するためのトレーニング処理を例に説明する。
【0096】
「依存症」の患者は、オピオイドやアルコール等の依存物質の摂取又は使用により、「ドーパミン」及び「エンドルフィン」が過剰に分泌される。一方、「依存症」の患者は、依存物質を摂取又は使用しないと、「ドーパミン」及び「エンドルフィン」の分泌が不足するとともに、ストレスや不安が増加して「コルチゾール」が過剰に分泌される。また、「依存症」の患者は、全般的に「セロトニン」の分泌が不足している。
【0097】
「依存症」の中心的なメカニズムは、報酬の感じやすさや依存物質の喜好を調節する中心的な部位である「側坐核(報酬系)」の異常活性化に関連している。「側坐核(報酬系)」は、上記のように、特に物質や行動から得られる快楽や報酬を処理する役割を持つ。依存物質の摂取又は使用により、「ドーパミン」の分泌が増加して「側坐核(報酬系)」が活性化し、「依存症」の患者は、快感や満足感を得ることができる。しかしながら、依存物質の摂取又は使用を繰り返すことにより、「側坐核(報酬系)」は、「ドーパミン」の分泌に対して耐性を持つようになり、同じ量の依存物質の摂取又は使用では以前と同じ快感を得ることができなくなってしまう。
【0098】
また、オピオイドやアルコールのような一部の依存物質は、「エンドルフィン」の放出を刺激し、それによって快感がもたらされる。この系の過度の活性化は、物質の摂取を続ける欲求を強化する可能性がある。「エンドルフィン」による「側坐核(報酬系)」の過度の活性化は、「依存症」の患者が依存物質の摂取又は使用をし続ける欲求を強化してしまう。
【0099】
そこで、本実施例に係る情報処理装置1は、「依存症」の患者に、依存物質の摂取又は使用することなく、「喜び」の感情を誘発して、「依存症」の患者内で「ドーパミン」及び「エンドルフィン」等の分泌を促進することにより、「ドーパミン」及び「エンドルフィン」の分泌を正常化する。
【0100】
また、「依存症」の進行とともに、行動の制御や、意志の力、意思決定に関与する部位である「前頭葉」の機能が低下し、抑制力の低下や衝動的な行動が増加することが知られる。また、記憶の形成や情動に関与する「海馬」は、依存物質の使用経験と関連する記憶の形成や活性化に関わっている。依存物質の未摂取又は不使用により、「依存症」の患者のストレスや不安が増加すると、「コルチゾール」の分泌が増加して「前頭葉」及び「海馬」の機能が低下する。依存物質の摂取又は使用により、「依存症」の患者は、ストレス反応を一時的に緩和することができるが、長期的には「コルチゾール」の分泌により「前頭葉」及び「海馬」の機能が低下する。
【0101】
そこで、本実施例に係る情報処理装置1は、「依存症」の患者に「怒り」・「嫌悪」・「恐怖」・「悲しみ」の感情を誘発して、「依存症」の患者内で「コルチゾール」の分泌を促進させた後に、「依存症」の患者に「喜び」の感情を誘発して、「依存症」の患者内で「セロトニン」、「オキシトシン」、「エンドルフィン」、及び「ドーパミン」の分泌を促進させることにより、「依存症」の患者にストレスや不安に対する耐性を作り、「コルチゾール」の分泌を正常化する。
【0102】
さらに、情動やストレス応答に関与する「扁桃体」は、依存症の進行や離脱時に生じる情緒的な不安定さと関連がある。一部の依存物質は、情緒や気分を調節する役割を持つ「セロトニン」の動きを変化させることが知られている。このため、選択式セロトニン再取り込み阻害薬(Selective Serotonin Reuptake Inhibitor;SSRI)等の薬物は、「依存症」の治療に役立つ場合がある。
【0103】
そこで、本実施例に係る情報処理装置1は、「依存症」の患者に、依存物質の摂取又は使用することなく、「喜び」の感情を誘発して、「依存症」の患者内で「セロトニン」等の分泌を促進させることにより、「セロトニン」の分泌の不足を解消する。
【0104】
本実施例において、
図5に示すトレーニング処理では、情報処理装置1の制御部13が、患者情報から特定される患者の疾患「依存症」及び利腕「右利き」等に対応するトレーニングパターンTP1を、トレーニングパターン選択テーブル3から選択し(ステップS52)、選択したトレーニングパターンTP1に従って、感情誘発画像21、感情提示画像22、及び矢印23をタッチパネル11に順次表示して行く(ステップS54~S59)。トレーニングパターンTP1に従って表示される総セット数は“5”である。
【0105】
図6は、実施例1に係るトレーニング処理におけるシーケンス図である。
【0106】
図6に示すように、「依存症」の患者を治療するためのトレーニング処理において、最初のセット(1セット目)では、主に「依存症」の患者内での「ドーパミン」及び「エンドルフィン」の分泌を正常化するための表示が行われる。
【0107】
具体的に、表示カウント値が“1”である場合、まず、制御部13は、ステップS58において、綺麗な風景やリラックスできる風景の画像、子供やペット等のかわいい画像、感動する画像、及び笑ってしまう画像等といった、「依存症」の患者に「喜び」の感情を誘発させる感情誘発画像21をタッチパネル11に表示する。
【0108】
感情誘発画像21を表示してから所定期間後、制御部13は、タッチパネル11に「嬉しい」、「楽しい」、「かわいい」、及び「感動する」等の「喜び」の感情に関連する「快」の感情を提示する感情提示画像22を複数種類表示するとともに、「不安」、「怒り」、「嫌悪」、「恐怖」、及び「悲しみ」等といった「喜び」の感情とは反対の「不快」の感情を提示する感情提示画像22を複数種類表示する。
【0109】
また、制御部13は、タッチパネル11に、例えばパステルカラーで下方向(自分に取り込むようなイメージが生じる第1方向)の矢印23と、派手な赤系統の色で上方向(自分から遠ざけるようなイメージが生じる第2方向)の矢印23と、を表示するとともに、「今の感情に合致するものを下方向に、合致しないものを上方向にスワイプして下さい。」といった「依存症」の患者への指示を表示する。
【0110】
そして、「依存症」の患者が、現在生じている感情に対応する感情提示画像22を下方向にスワイプするとともに、対応しない感情提示画像22を上方向にスワイプすると(ステップS59;Yes)、制御部13は、1セットの表示が終わったとして、表示カウント値を“1”カウントアップして“2”に更新する(ステップS54)。
【0111】
このように、「依存症」の患者は、「喜び」の感情に対応する「快」の感情を提示する感情提示画像22を、リラックス効果を高めるパステルカラーの矢印23に従って、自分に取り込むように、下方向にスワイプすることで、「喜び」の感情を強め、「依存症」の患者内で「ドーパミン」及び「エンドルフィン」等の分泌を効果的に促進させることができる。
【0112】
また、「依存症」の患者は、「喜び」の感情とは反対の「不快」の感情を提示する感情提示画像22を、ストレス効果を高める派手な赤系統の色の矢印23に従って、自分から遠ざけるように、上方向にスワイプすることで、「不快」の感情を弱めて感情の起伏を惹起し、「依存症」の患者内で「ドーパミン」及び「エンドルフィン」等の分泌をより効果的に促進させることができる。
【0113】
これにより、本実施例に係る情報処理装置1は、最初のセット(1セット目)において、「依存症」の患者に、依存物質の摂取又は使用することなく、「喜び」の感情を誘発して、「依存症」の患者内で「ドーパミン」及び「エンドルフィン」等の分泌を促進させることにより、「ドーパミン」及び「エンドルフィン」の分泌を正常化することができる。
【0114】
また、本実施例に係る情報処理装置1は、「依存症」の患者が、依存物質の画像ではなく、「不快」の感情を提示する感情提示画像22を自分から遠ざけるようにスワイプするものであるため、「依存症」の患者に依存物質を意識させることなく、「ドーパミン」及び「エンドルフィン」の分泌を正常化することができる。
【0115】
続く2~4セット目では、「依存症」の患者にストレスや不安に対する耐性を作り、「依存症」の患者内での「コルチゾール」の分泌を正常化するための表示が行われる。具体的には、2セット目において、「依存症」の患者内で「コルチゾール」の分泌を促進させる第1処理を1回実行した後に、「セロトニン」、「オキシトシン」、「エンドルフィン」、及び「ドーパミン」の分泌を促進させる第2処理を2回実行することで、「依存症」の患者にストレスや不安に対する耐性を作り、「コルチゾール」の分泌を正常化することができる。
【0116】
表示カウント値が“2”である場合、まず、制御部13は、ステップS58において、ゴミゴミした風景や、貧しさ、犯罪を想起する画像等といった、「依存症」の患者に「怒り」、「嫌悪」、「恐怖」、及び/又は「悲しみ」の感情を生じさせてストレスを誘発する感情誘発画像21をタッチパネル11に表示する。
【0117】
感情誘発画像21を表示してから所定期間後、制御部13は、タッチパネル11に「不安」、「怒り」、「嫌悪」、「恐怖」、及び「悲しみ」等といった「喜び」の感情とは反対の「不快」の感情を提示する感情提示画像22を複数種類表示する。
【0118】
また、制御部13は、タッチパネル11に、例えば派手な赤系統の色で「依存症」の患者の利腕方向(右方向)(自分に取り込むようなイメージが生じる第1方向)の矢印23を表示するとともに、「今の感情に合致するものを右方向にスワイプして下さい。」といった「依存症」の患者への指示を表示する。
【0119】
そして、「依存症」の患者が、現在生じている感情に対応する感情提示画像22を利腕方向(右方向)にスワイプすると(ステップS59;Yes)、制御部13は、1セットの表示が終わったとして、表示カウント値を“1”カウントアップして“3”に更新する(ステップS54)。
【0120】
このように、「依存症」の患者は、「不安」、「怒り」、「嫌悪」、「恐怖」、及び「悲しみ」の感情を提示する感情提示画像22を、ストレス効果を高める派手な赤系統の色の矢印23に従って、自分に取り込むように、利腕方向(右方向)にスワイプすることで、「怒り」、「嫌悪」、「恐怖」、及び/又は「悲しみ」の感情を強め、「依存症」の患者内で「コルチゾール」の分泌を効果的に促進させることができる。
【0121】
表示カウント値が“3”である場合、まず、制御部13は、ステップS58において、綺麗な風景やリラックスできる風景の画像、子供やペット等のかわいい画像、感動する画像、及び笑ってしまう画像等といった、「依存症」の患者に「喜び」の感情を誘発させる感情誘発画像21をタッチパネル11に表示する。
【0122】
感情誘発画像21を表示してから所定期間後、制御部13は、タッチパネル11に「嬉しい」、「楽しい」、「かわいい」、及び「感動する」等の「喜び」の感情に関連する「快」の感情を提示する感情提示画像22を複数種類表示する。
【0123】
また、制御部13は、タッチパネル11に、例えば青色で「依存症」の患者の利腕下方向(右下方向)(自分に取り込むようなイメージが生じる第1方向)の矢印23を表示するとともに、「今の感情に合致するものを右下方向にスワイプして下さい。」といった「依存症」の患者への指示を表示する。
【0124】
そして、「依存症」の患者が、現在生じている感情に対応する感情提示画像22を利腕下方向(右下方向)にスワイプすると(ステップS59;Yes)、制御部13は、1セットの表示が終わったとして、表示カウント値を“1”カウントアップして“4”に更新する(ステップS54)。
【0125】
表示カウント値が“4”である場合、制御部13は、表示カウント値が“3”である場合と同様に、ステップS58において、タッチパネル11に、「依存症」の患者に「喜び」の感情を誘発する感情誘発画像21を表示し、所定期間後、「喜び」の感情に関連する「快」の感情を複数種類提示する感情提示画像22、及びリラックス効果を高める色で、自分に取り込むようなイメージが生じる第1方向の矢印23を表示する。
【0126】
この場合、感情誘発画像21、感情提示画像22、及び矢印23は、表示カウント値が“3”である場合とは異なるものであることが好ましい。例えば、表示カウント値が“3”であるときに感情誘発画像21として子供やペット等のかわいい画像を表示した場合、表示カウント値が“4”であるときには、感情誘発画像21として感動する画像を表示すればよい。また、表示カウント値が“3”であるときに、青色で「依存症」の患者の利腕下方向(右下方向)の矢印23を表示しているので、表示カウント値が“4”であるときには、緑色で下方向の矢印23を表示すればよい。
【0127】
そして、「依存症」の患者が、現在生じている感情に対応する感情提示画像22を下方向にスワイプすると(ステップS59;Yes)、制御部13は、1セットの表示が終わったとして、表示カウント値を“1”カウントアップして“5”に更新する(ステップS54)。
【0128】
このように、「依存症」の患者は、「喜び」の感情に関連する「快」の感情を提示する感情提示画像22を、リラックス効果を高める青色や緑色の矢印23に従って、自分に取り込むように、利腕下方向(右下方向)や下方向にスワイプすることで、「喜び」の感情を強め、「依存症」の患者内で「セロトニン」、「オキシトシン」、「エンドルフィン」、及び「ドーパミン」の分泌を効果的に促進させることができる。
【0129】
これにより、本実施例に係る情報処理装置1は、2セット目において、「依存症」の患者に「怒り」・「嫌悪」・「恐怖」・「悲しみ」の感情を誘発して「依存症」の患者内で「コルチゾール」の分泌を促進させた後に、3及び4セット目において、「依存症」の患者に「喜び」の感情を誘発して「依存症」の患者内で「セロトニン」、「オキシトシン」、「エンドルフィン」、及び「ドーパミン」の分泌を促進させることができる。
【0130】
このように、情報処理装置1は、「依存症」の患者内で「コルチゾール」の分泌を促進させる第1処理を1回実行した後に、「セロトニン」、「オキシトシン」、「エンドルフィン」、及び「ドーパミン」の分泌を促進させる第2処理を2回実行することで、「依存症」の患者にストレスや不安に対する耐性を作り、「コルチゾール」の分泌を正常化することができる。
【0131】
なお、制御部13は、「コルチゾール」よりも多くの「セロトニン」、「オキシトシン」、「エンドルフィン」、及び「ドーパミン」を分泌させれば、回数は任意であり、例えば、第1処理を2回実行した後に、第2処理を3回実行するようにしてもよい。
【0132】
そして、最後のセット(5セット目)では、主に「依存症」の患者内の「セロトニン」の分泌の不足を解消するための表示が行われる。
【0133】
具体的に、表示カウント値が“5”である場合、制御部13は、表示カウント値が“1”である場合と同様に、ステップS58において、タッチパネル11に、「依存症」の患者に「喜び」の感情を誘発する感情誘発画像21を表示する。
【0134】
この場合、「依存症」の患者内で「セロトニン」の分泌をより効果的に促進させるべく、感情誘発画像21は、綺麗な風景やリラックスできる風景の画像といったリラックス効果の高いものであることが好ましい。
【0135】
また、制御部13は、感情誘発画像21を、落ち着いた「青色」や「緑色」の色相を強めたり、色のトーンを弱めたりして、リラックス効果の高い色彩に調整してタッチパネル11に表示してもよい。
【0136】
感情誘発画像21を表示してから所定期間後、制御部13は、タッチパネル11に「快」の感情を提示する感情提示画像22を複数種類表示するとともに、「不快」の感情を提示する感情提示画像22を複数種類表示する。
【0137】
また、制御部13は、タッチパネル11に、例えば青色で「依存症」の患者の利腕方向(右方向)(自分に取り込むようなイメージが生じる第1方向)の矢印23と、派手な赤系統の色で利腕反対方向(左方向)(自分から遠ざけるようなイメージが生じる第2方向)へのスワイプを患者に指示する矢印23と、を表示するとともに、「今の感情に合致するものを右方向に、合致しないものを左方向にスワイプして下さい。」といった「依存症」の患者への指示を表示する。
【0138】
その後、「依存症」の患者が、現在生じている感情に対応する感情提示画像22を利腕方向(右方向)にスワイプするとともに、対応しない感情提示画像22を利腕反対方向(左方向)にスワイプすると(ステップS59;Yes)、制御部13は、1セットの表示が終わったとして、表示カウント値を“1”カウントアップして“6”に更新する(ステップS54)。
【0139】
そして、制御部13は、更新後の表示カウント値“6”が、総セット数“5”より大きくなるので(ステップS55;Yes)、選択したトレーニングパターンTP1に従って行われる全てのセットの表示が完了したとして、トレーニング処理を終了する。
【0140】
これにより、本実施例に係る情報処理装置1は、最後のセット(5セット目)において、「依存症」の患者に、「喜び」の感情を誘発して、「依存症」の患者内で「セロトニン」等の分泌を促進させることにより、「セロトニン」の分泌の不足を解消することができる。
【0141】
以上説明したように、本実施例に係る情報処理装置1は、最初のセット(1セット目)において、「依存症」の患者内での「ドーパミン」及び「エンドルフィン」の分泌を正常化することができる。また、本実施例に係る情報処理装置1は、2~4セット目の表示において、「依存症」の患者にストレスや不安に対する耐性を作り、「コルチゾール」の分泌を正常化することができる。そして、本実施例に係る情報処理装置1は、最後のセット(5セット目)において、「セロトニン」の分泌の不足を解消することができる。これにより、本実施例に係る情報処理装置1は、「依存症」の患者を治療することができる。
【実施例2】
【0142】
実施例2では、上記のトレーニング処理について、患者情報から特定される患者自身の疾患が「うつ病」である場合を例に説明する。
【0143】
「うつ病」の患者は、「セロトニン」の分泌の不足を主要因として、「前帯状回」、「扁桃体」、「前頭葉」、及び「側坐核」等の各脳機能の低下が起こった状態となっている。
【0144】
具体的に、「うつ病」の患者では、自己認識、感情の評価、そして痛みの認知に関与する「前帯状回」の異常な活動が観察され、これが自己評価の低さや自分に対するネガティブな考え方と関連している。
【0145】
そこで、本実施例に係る情報処理装置1は、「うつ病」の患者に、「喜び」の感情を誘発して、「うつ病」の患者内で「セロトニン」、「オキシトシン」、及び「エンドルフィン」の分泌を促進させることにより、「前帯状回」を活性化して、その機能を高める。
【0146】
また、「うつ病」の患者では、感情の反応や評価、特に恐怖や危険に関連する反応を調節する「扁桃体」が過度に活性化し、これが「うつ病」の患者の過度にネガティブな感情の反応や評価に関連している。
【0147】
そこで、本実施例に係る情報処理装置1は、「うつ病」の患者に、「喜び」の感情を誘発して、「うつ病」の患者内で「セロトニン」の分泌を促進させることにより、「扁桃体」の過活動を抑制する一方で、「驚き」の感情を誘発して、「うつ病」の患者内で「アドレナリン」及び「ノルアドレナリン」の分泌を促進させることにより、「扁桃体」が適切に活動するように調整する。
【0148】
さらに、「うつ病」の患者には、意思決定、計画立案、自己制御、及び動機付け等の高次機能を担当する「前頭葉」の活動が低下する傾向が見られ、これが無気力、意欲の低下、及び決断困難等の症状に関連している。
【0149】
そこで、本実施例に係る情報処理装置1は、「うつ病」の患者に、「喜び」の感情を誘発して、「うつ病」の患者内で「オキシトシン」及び「ドーパミン」の分泌を促進させる一方で、「うつ病」の患者に情動の変化を促して、「うつ病」の患者内で「コルチゾール」の分泌を促進させることにより、「前頭葉」を活性化して、その機能を高める。
【0150】
そして、「うつ病」の患者では、報酬系において中心的な役割を果たし、快楽や動機付けに関与する「側坐核」に機能障害が発生しており、これが喜びや楽しみを感じることの困難さと関連している。
【0151】
そこで、本実施例に係る情報処理装置1は、「うつ病」の患者に、「喜び」の感情を誘発して、「うつ病」の患者内で「エンドルフィン」及び「ドーパミン」の分泌を促進させる一方で、「驚き」の感情を誘発して、「うつ病」の患者内で「アドレナリン」及び「ノルアドレナリン」の分泌を促進させることにより、「側坐核」を活性化して、その機能を高める。
【0152】
このように、本実施例に係る情報処理装置1は、「うつ病」の患者内で「セロトニン」、「オキシトシン」、「エンドルフィン」、及び「ドーパミン」の分泌を促進させる一方で、適宜「ノルアドレナリン」、並びにストレスホルモンである「アドレナリン」及び「コルチゾール」の分泌を促進させて刺激を与えることで、「前帯状回」、「扁桃体」、「前頭葉」、及び「側坐核」等の各脳機能を高めることにより、「うつ病」の患者を治療する。
【0153】
本実施例において、
図5に示すトレーニング処理では、情報処理装置1の制御部13が、患者情報から特定される患者の疾患「うつ病」及び利腕「右利き」等に対応するトレーニングパターンTP2を、トレーニングパターン選択テーブル3から選択し(ステップS52)、選択したトレーニングパターンTP2に従って、感情誘発画像21、感情提示画像22、及び矢印23をタッチパネル11に順次表示して行く(ステップS54~S59)。トレーニングパターンTP2に従って表示される総セット数は“4”である。
【0154】
図7は、実施例2に係るトレーニング処理におけるシーケンス図である。
【0155】
図7に示すように、「うつ病」の患者を治療するためのトレーニング処理において、最初の2セット(1及び2セット目)では、「うつ病」の患者内で「セロトニン」、「オキシトシン」、「エンドルフィン」、及び「ドーパミン」の分泌を促進させることにより、「前帯状回」の機能を向上させるための表示が行われる。本実施例において、1セット目では、とりわけ「セロトニン」、2セット目では、とりわけ「オキシトシン」の分泌を促進させるための表示が行われる。
【0156】
具体的に、表示カウント値が“1”である場合、まず、制御部13は、ステップS58において、綺麗な風景やリラックスできる風景の画像等といったリラックス効果の高い感情誘発画像21をタッチパネル11に表示する。この場合、制御部13は、感情誘発画像21を、落ち着いた「青色」や「緑色」の色相を強めたり、色のトーンを弱めたりして、リラックス効果の高い色彩に調整してタッチパネル11に表示してもよい。
【0157】
感情誘発画像21を表示してから所定期間後、制御部13は、タッチパネル11に「嬉しい」、「楽しい」、「かわいい」、及び「感動する」等の「喜び」の感情に関連する「快」の感情を提示する感情提示画像22を複数種類表示する。
【0158】
また、制御部13は、タッチパネル11に、例えば青色で下方向(自分に取り込むようなイメージが生じる第1方向)の矢印23を表示するとともに、「今の感情に合致するものを下方向にスワイプして下さい。」といった「うつ病」の患者への指示を表示する。
【0159】
なお、「うつ病」の患者を治療するためのトレーニング処理では、「快」の感情にフォーカスするため、「依存症」の患者を治療するためのトレーニング処理とは異なり、タッチパネル11には、「快」の感情を提示する感情提示画像22のみが表示され、「不快」の感情を提示する感情提示画像22は表示されない。
【0160】
そして、「うつ病」の患者が、現在生じている感情に対応する感情提示画像22を下方向にスワイプすると(ステップS59;Yes)、制御部13は、1セットの表示が終わったとして、表示カウント値を“1”カウントアップして“2”に更新する(ステップS54)。
【0161】
このように、「うつ病」の患者は、「喜び」の感情に関連する「快」の感情を提示する感情提示画像22を、リラックス効果を高める青色の矢印23に従って、自分に取り込むように、下方向にスワイプすることで、「喜び」の感情を強め、「うつ病」の患者内で「セロトニン」、「オキシトシン」、「エンドルフィン」、及び「ドーパミン」、とりわけ「セロトニン」の分泌を効果的に促進させることができる。
【0162】
表示カウント値が“2”である場合、制御部13は、ステップS58において、子供やペット等のかわいい画像等といった、愛情を感じよるような感情誘発画像21をタッチパネル11に表示する。この場合、制御部13は、感情誘発画像21を、落ち着いた「青色」や「緑色」の色相を強めたり、色のトーンを弱めたりして、リラックス効果の高い色彩に調整してタッチパネル11に表示してもよい。
【0163】
感情誘発画像21を表示してから所定期間後、制御部13は、タッチパネル11に「嬉しい」、「楽しい」、「かわいい」、及び「感動する」等の「喜び」の感情に関連する「快」の感情を提示する感情提示画像22を複数種類表示する。
【0164】
また、制御部13は、タッチパネル11に、例えば緑色で、「うつ病」の患者の利腕方向(右方向)(自分に取り込むようなイメージが生じる第1方向)の矢印23を表示するとともに、「今の感情に合致するものを右方向にスワイプして下さい。」といった「うつ病」の患者への指示を表示する。
【0165】
そして、「うつ病」の患者が、現在生じている感情に対応する感情提示画像22を利腕方向(右方向)にスワイプすると(ステップS59;Yes)、制御部13は、1セットの表示が終わったとして、表示カウント値を“1”カウントアップして“2”に更新する(ステップS54)。
【0166】
このように、「うつ病」の患者は、「喜び」の感情に関連する「快」の感情を提示する感情提示画像22を、リラックス効果を高め緑色の矢印23に従って、自分に取り込むように、利腕方向(右方向)にスワイプすることで、「喜び」の感情を強め、「うつ病」の患者内で「セロトニン」、「オキシトシン」、「エンドルフィン」、及び「ドーパミン」、とりわけ「オキシトシン」の分泌を効果的に促進させることができる。
【0167】
これにより、本実施例に係る情報処理装置1は、最初の2セット(1及び2セット目)において、「うつ病」の患者に、「喜び」の感情を誘発して、「うつ病」の患者内で「セロトニン」、「オキシトシン」、及び「エンドルフィン」等を促進させることにより、「前帯状回」を活性化して、その機能を高めることができる。
【0168】
なお、「エンドルフィン」及び「ドーパミン」は、「喜び」の感情を誘発する感情誘発画像21であれば、綺麗な風景やリラックスできる風景の画像等といったリラックス効果の高い感情誘発画像21や、子供やペット等のかわいい画像等といった、愛情を感じよるような感情誘発画像21でなくても促進させることができる。このため、「うつ病」の患者を治療するためのトレーニング処理では、リラックス効果の高い感情誘発画像21や、愛情を感じよるような感情誘発画像21以外の感情誘発画像21がタッチパネル11に表示されてもよい。
【0169】
続く3及び4セット目では、「うつ病」の患者内で、適宜「ノルアドレナリン」、並びにストレスホルモンである「アドレナリン」及び「コルチゾール」の分泌を促進させて刺激を与え、「扁桃体」、「前頭葉」、及び「側坐核」の機能を向上させるための表示が行われる。本実施例において、3セット目では、「ノルアドレナリン」及び「アドレナリン」の分泌を促進させることにより、「扁桃体」及び「側坐核」の機能を向上させるための表示が行われる。4セット目では、「コルチゾール」の分泌を促進させることにより、「前頭葉」の機能を向上させるための表示が行われる。
【0170】
表示カウント値が“3”である場合、制御部13は、ステップS58において、ピンチからの大逆転の画像等といった、患者に「驚き」の感情を生じさせて、ポジティブな側面からストレスを誘発する感情誘発画像21をタッチパネル11に表示する。
【0171】
感情誘発画像21を表示してから所定期間後、制御部13は、タッチパネル11に「驚き」の感情に関連する「刺激」の感情を提示する感情提示画像22を複数種類表示する。
【0172】
また、制御部13は、タッチパネル11に、例えば派手な赤系統の色で、「うつ病」の患者の利腕下方向(右下方向)(自分に取り込むようなイメージが生じる第1方向)の矢印23を表示するとともに、「今の感情に合致するものを右下方向にスワイプして下さい。」といった「うつ病」の患者への指示を表示する。
【0173】
そして、「うつ病」の患者が、現在生じている感情に対応する感情提示画像22を利腕下方向(右下方向)にスワイプすると(ステップS59;Yes)、制御部13は、1セットの表示が終わったとして、表示カウント値を“1”カウントアップして“4”に更新する(ステップS54)。
【0174】
このように、「うつ病」の患者は、「驚き」の感情に関連する「刺激」の感情を提示する感情提示画像22を、ストレス効果を高める派手な赤系統の色の矢印23に従って、自分に取り込むように、利腕下方向(右下方向)にスワイプすることで、「驚き」の感情を強め、「うつ病」の患者内で、適宜「ノルアドレナリン」及びストレスホルモンである「アドレナリン」の分泌をポジティブな側面から促進させて刺激を与えることにより、「扁桃体」及び「側坐核」を活性化して、その機能を高めることができる。
【0175】
表示カウント値が“4”である場合、制御部13は、ステップS58において、勧善懲悪の画像等といった、「うつ病」の患者に勇気が出る(奮い立つ)等の情動の変化を促す感情誘発画像21をタッチパネル11に表示する。
【0176】
このような情動の変化を促す感情誘発画像21は、「うつ病」の患者に「怒り」、「嫌悪」、「恐怖」、及び/又は「悲しみ」の感情ではなく、「やる気」、「勇気」、「自信」、「希望」、「意欲」、及び「熱意」等といった「刺激」の感情を誘発させて、ポジティブな側面のストレスを誘発する。
【0177】
なお、制御部13は、「うつ病」の患者に情動の変化を促し、「刺激」の感情を誘発させる感情誘発画像21として、場合によっては性的な画像をタッチパネル11に表示することも考えられる。
【0178】
感情誘発画像21を表示してから所定期間後、制御部13は、タッチパネル11に「やる気」、「勇気」、「自信」、「希望」、「意欲」、及び「熱意」等といった「刺激」の感情を提示する感情提示画像22を複数種類表示する。
【0179】
また、制御部13は、タッチパネル11に、例えば派手な赤系統の色で下方向(自分に取り込むようなイメージが生じる第1方向)の矢印23を表示するとともに、「今の感情に合致するものを下方向にスワイプして下さい。」といった「うつ病」の患者への指示を表示する。
【0180】
その後、「うつ病」の患者が、現在生じている感情に対応する感情提示画像22を下方向にスワイプすると(ステップS59;Yes)、制御部13は、1セットの表示が終わったとして、表示カウント値を“1”カウントアップして“5”に更新する(ステップS54)。
【0181】
そして、制御部13は、更新後の表示カウント値“5”が、総セット数“4”より大きくなるので(ステップS55;Yes)、選択したトレーニングパターンTP2に従って行われる全てのセットの表示が完了したとして、トレーニング処理を終了する。
【0182】
このように、「うつ病」の患者は、「刺激」の感情を提示する感情提示画像22を、ストレス効果を高める派手な赤系統の色の矢印23に従って、自分に取り込むように、下方向にスワイプすることで、「うつ病」の患者に情動の変化を促すことで、「うつ病」の患者内で、適宜ストレスホルモンである「コルチゾール」の分泌を促進させてポジティブな側面から刺激を与えることにより、「前頭葉」を活性化して、その機能を高めることができる。
【0183】
以上説明したように、本実施例に係る情報処理装置1は、1及び2セット目において、「うつ病」の患者内で「セロトニン」、「オキシトシン」、「エンドルフィン」、及び「ドーパミン」の分泌を促進させる一方で、3及び4セット目において、適宜「アドレナリン」、並びにストレスホルモンである「ノルアドレナリン」及び「コルチゾール」の分泌をポジティブな側面から促進させて刺激を与えることで、「前帯状回」、「扁桃体」、「前頭葉」、及び「側坐核」等の各脳機能を高めることにより、「うつ病」の患者を治療することができる。
【実施例3】
【0184】
実施例3では、上記のトレーニング処理について、患者情報から特定される患者自身の疾患が「不安障害」である場合を例に説明する。
【0185】
「不安障害」の患者は、不安、恐怖により、「扁桃体」、「前帯状回」、「前頭葉」、及び「側坐核」等の各脳機能の低下が起こった状態となっている。
【0186】
「不安障害」の患者では、感情、特に恐れや脅威に対する反応を処理する中心としての役割を持つ「扁桃体」の過度な活性化が見られ、これが不適切な恐怖や焦慮の反応を引き起こす。
【0187】
そこで、本実施形態に係る情報処理装置1は、「不安障害」の患者に、「喜び」の感情を誘発して、「不安障害」の患者内で「セロトニン」及び「オキシトシン」の分泌を促進させることにより、「扁桃体」の過活動を抑制する。
【0188】
また、「不安障害」の患者では、感情の処理や評価に関与する「前帯状回」の機能や結合の異常が見られ、これが感情の調整に問題を生じさせる。さらに、「不安障害」の患者では、特にその背外側部分が感情の自己制御や認知的な評価に関与する「前頭葉」の活動に不調が見られ、これが恐怖や焦慮に関する情報の過度な処理や、感情の調整の不足を生じさせる。
【0189】
そこで、本実施形態に係る情報処理装置1は、「不安障害」の患者に、「喜び」の感情を誘発して、「不安障害」の患者内で「セロトニン」、「エンドルフィン」、及び「ドーパミン」の分泌を促進させることにより、「前帯状回」及び「前頭葉」を活性化して、その機能を高める。
【0190】
そして、「不安障害」の患者では、長期的なストレスに起因する、「コルチゾール」の過剰な分泌により、報酬や動機付けの処理に関与する「側坐核」の機能が低下するという異常が見られ、これが「不安障害」の一部の症状、特に回避行動や報酬に対する反応の低下と関連している。
【0191】
そこで、本実施形態に係る情報処理装置1は、「不安障害」の患者に、「怒り」、「嫌悪」、「恐怖」、及び/又は「驚き」の感情を誘発して、「ノルアドレナリン」及び「アドレナリン」を促進させて刺激を与える一方で、「喜び」の感情を誘発して、気分を高める効果がある「エンドルフィン」、及び報酬系や気分の調整に関与する「ドーパミン」の分泌を促進させることにより、「側坐核」を活性化して、その機能を高める。
【0192】
このように、本実施形態に係る情報処理装置1は、「不安障害」の患者内で「セロトニン」、「オキシトシン」、「エンドルフィン」、及び「ドーパミン」の分泌を促進させる一方で、適宜「ノルアドレナリン」及びストレスホルモンである「アドレナリン」の分泌を促進させて刺激を与えることで、「扁桃体」、「前帯状回」、「前頭葉」、及び「側坐核」等の各脳機能を高めることにより、「不安障害」の患者を治療する。
【0193】
本実施例において、
図5に示すトレーニング処理では、情報処理装置1の制御部13が、患者情報から特定される患者の疾患「不安障害」及び利腕「右利き」等に対応するトレーニングパターンTP3を、トレーニングパターン選択テーブル3から選択し(ステップS52)、選択したトレーニングパターンTP3に従って、感情誘発画像21、感情提示画像22、及び矢印23をタッチパネル11に順次表示して行く(ステップS54~S59)。トレーニングパターンTP3に従って表示される総セット数は“4”である。
【0194】
図8は、実施例3に係るトレーニング処理におけるシーケンス図である。
【0195】
図8に示すように、「不安障害」の患者を治療するためのトレーニング処理において、最初の2セット(1及び2セット目)では、「不安障害」の患者内で「セロトニン」、「オキシトシン」、「エンドルフィン」、及び「ドーパミン」を促進させることにより、「前帯状回」の機能を向上させるための表示が行われる。本実施例において、1セット目では、とりわけ「セロトニン」を、2セット目では、とりわけ「オキシトシン」の分泌を促進させるための表示が行われる。
【0196】
なお、「不安障害」の患者を治療するためのトレーニング処理でも、「うつ病」の患者を治療するためのトレーニング処理と同様に、「快」の感情にフォーカスするため、タッチパネル11には、「快」の感情を提示する感情提示画像22のみが表示され、「不快」の感情を提示する感情提示画像22は表示されない。一方、「不安障害」の患者を治療するためのトレーニング処理では、不安解消を目的とするため、「うつ病」の患者を治療する場合とは異なり、タッチパネル11に、リラックス効果の高い感情誘発画像21や、愛情を感じよるような感情誘発画像21のみが表示され、それ以外の「喜び」の感情を誘発する感情誘発画像21は表示されない。
【0197】
具体的に、表示カウント値が“1”である場合、まず、制御部13は、ステップS58において、綺麗な風景やリラックスできる風景の画像等といったリラックス効果の高い感情誘発画像21をタッチパネル11に表示する。この場合、制御部13は、感情誘発画像21を、落ち着いた「青色」や「緑色」の色相を強めたり、色のトーンを弱めたりして、リラックス効果の高い色彩に調整してタッチパネル11に表示してもよい。
【0198】
感情誘発画像21を表示してから所定期間後、制御部13は、タッチパネル11に「嬉しい」、「楽しい」、「かわいい」、及び「感動する」等の「喜び」の感情に関連する「快」の感情を提示する感情提示画像22を複数種類表示する。
【0199】
また、制御部13は、タッチパネル11に、例えば青色で下方向(自分に取り込むようなイメージが生じる第1方向)の矢印23を表示するとともに、「今の感情に合致するものを下方向にスワイプして下さい。」といった「不安障害」の患者への指示を表示する。
【0200】
そして、「不安障害」の患者が、現在生じている感情に対応する感情提示画像22を下方向にスワイプすると(ステップS59;Yes)、制御部13は、1セットの表示が終わったとして、表示カウント値を“1”カウントアップして“2”に更新する(ステップS54)。
【0201】
このように、「不安障害」の患者は、「喜び」の感情に関連する「快」の感情を提示する感情提示画像22を、リラックス効果を高める青色の矢印23に従って、自分に取り込むように、下方向にスワイプすることで、「喜び」の感情を強め、「不安障害」の患者内で「セロトニン」、「オキシトシン」、「エンドルフィン」、及び「ドーパミン」、とりわけ「セロトニン」の分泌を効果的に促進させることができる。
【0202】
表示カウント値が“2”である場合、制御部13は、ステップS58において、子供やペット等のかわいい画像等といった、愛情を感じよるような感情誘発画像21をタッチパネル11に表示する。この場合、制御部13は、感情誘発画像21を、落ち着いた「青色」や「緑色」の色相を強めたり、色のトーンを弱めたりして、リラックス効果の高い色彩に調整してタッチパネル11に表示してもよい。
【0203】
感情誘発画像21を表示してから所定期間後、制御部13は、タッチパネル11に「嬉しい」、「楽しい」、「かわいい」、及び「感動する」等の「喜び」の感情に関連する「快」の感情を提示する感情提示画像22を複数種類表示する。
【0204】
また、制御部13は、タッチパネル11に、例えば緑色で、「不安障害」の患者の利腕方向(右方向)(自分に取り込むようなイメージが生じる第1方向)の矢印23を表示するとともに、「今の感情に合致するものを右方向にスワイプして下さい。」といった「不安障害」の患者への指示を表示する。
【0205】
そして、「不安障害」の患者が、現在生じている感情に対応する感情提示画像22を利腕方向(右方向)にスワイプすると(ステップS59;Yes)、制御部13は、1セットの表示が終わったとして、表示カウント値を“1”カウントアップして“2”に更新する(ステップS54)。
【0206】
このように、「不安障害」の患者は、「喜び」の感情に関連する「快」の感情を提示する感情提示画像22を、リラックス効果を高め緑色の矢印23に従って、自分に取り込むように、利腕方向(右方向)にスワイプすることで、「喜び」の感情を強め、「不安障害」の患者内で「セロトニン」、「オキシトシン」、「エンドルフィン」、及び「ドーパミン」、とりわけ「オキシトシン」の分泌を効果的に促進させることができる。
【0207】
これにより、本実施例に係る情報処理装置1は、最初の2セット(1及び2セット目)において、「不安障害」の患者に、「喜び」の感情を誘発して、「不安障害」の患者内で「セロトニン」、「オキシトシン」、及び「エンドルフィン」等の分泌を促進させることにより、「前帯状回」を活性化して、その機能を高めることができる。
【0208】
続く3セット目では、「不安障害」の患者から、不安を除去することにより、「前頭葉」の機能を向上させるための表示が行われる。
【0209】
具体的に、表示カウント値が“3”である場合、まず、制御部13は、ステップS58において、ゴミゴミした風景や、貧しさ、犯罪を想起する画像等といった、「不安障害」の患者に「怒り」、「嫌悪」、「恐怖」、及び/又は「悲しみ」の感情を生じさせてストレスを誘発する感情誘発画像21をタッチパネル11に表示する。
【0210】
感情誘発画像21を表示してから所定期間後、制御部13は、タッチパネル11に「不安」、「怒り」、「嫌悪」、「恐怖」、及び「悲しみ」等といった「喜び」の感情とは反対の「不快」の感情を提示する感情提示画像22を複数種類表示する。
【0211】
また、制御部13は、タッチパネル11に、例えば派手な赤系統の色で、「不安障害」の患者の利腕反対方向(左方向)(自分から遠ざけるようなイメージが生じる第2方向)の矢印23を表示するとともに、「今の感情に合致しないものを左方向にスワイプして下さい。」といった「不安障害」の患者への指示を表示する。
【0212】
そして、「不安障害」の患者が、現在生じている感情に対応する感情提示画像22を利腕反対方向(左方向)にスワイプすると(ステップS59;Yes)、制御部13は、1セットの表示が終わったとして、表示カウント値を“1”カウントアップして“4”に更新する(ステップS54)。
【0213】
このように、「不安障害」の患者は、「不安」、「怒り」、「嫌悪」、「恐怖」、及び「悲しみ」の感情を提示する感情提示画像22を、ストレス効果を高める派手な赤系統の色の矢印23に従って、自分から遠ざけるように、利腕反対方向(左方向)にスワイプすることで、不安を除去することにより、「前頭葉」を活性化して、その機能を高めることができる。
【0214】
続く4セット目では、「うつ病」の患者の場合と同様に、「不安障害」の患者内で、適宜「ノルアドレナリン」及びストレスホルモンである「アドレナリン」の分泌を促進させて刺激を与え、「扁桃体」及び「側坐核」の機能を向上させるための表示が行われる。
【0215】
表示カウント値が“4”である場合、制御部13は、ステップS58において、ピンチからの大逆転の画像等といった、患者に「驚き」の感情を生じさせて、ポジティブな側面のストレスを誘発する感情誘発画像21をタッチパネル11に表示する。
【0216】
感情誘発画像21を表示してから所定期間後、制御部13は、タッチパネル11に「驚き」の感情に関連する「刺激」の感情を提示する感情提示画像22を複数種類表示する。
【0217】
また、制御部13は、タッチパネル11に、例えば派手な赤系統の色で、「不安障害」の患者の利腕下方向(右下方向)(自分に取り込むようなイメージが生じる第1方向)の矢印23を表示するとともに、「今の感情に合致するものを右下方向にスワイプして下さい。」といった「不安障害」の患者への指示を表示する。
【0218】
その後、「不安障害」の患者が、現在生じている感情に対応する感情提示画像22を利腕下方向(右下方向)にスワイプすると(ステップS59;Yes)、制御部13は、1セットの表示が終わったとして、表示カウント値を“1”カウントアップして“5”に更新する(ステップS54)。
【0219】
そして、制御部13は、更新後の表示カウント値“5”が、総セット数“4”より大きくなるので(ステップS55;Yes)、選択したトレーニングパターンTP3に従って行われる全てのセットの表示が完了したとして、トレーニング処理を終了する。
【0220】
このように、「不安障害」の患者は、「驚き」の感情に関連する「刺激」の感情を提示する感情提示画像22を、ストレス効果を高める派手な赤系統の色の矢印23に従って、自分に取り込むように、利腕下方向(右下方向)にスワイプすることで、「驚き」の感情を強め、「うつ病」の患者内で、適宜「ノルアドレナリン」及びストレスホルモンである「アドレナリン」の分泌をポジティブな側面から促進させて刺激を与えることにより、「扁桃体」及び「側坐核」を活性化して、その機能を高めることができる。
【0221】
以上説明したように、本実施例に係る情報処理装置1は、1及び2セット目において、「不安障害」の患者内で「セロトニン」、「オキシトシン」、「エンドルフィン」、及び「ドーパミン」の分泌を促進させる一方で、3セット目において、「不安障害」の患者から不安を除去するとともに、4セット目において、適宜「ノルアドレナリン」及びストレスホルモンである「アドレナリン」の分泌をポジティブな側面から促進させて刺激を与えることで、「前帯状回」、「扁桃体」、「前頭葉」、及び「側坐核」等の各脳機能を高めることにより、「不安障害」の患者を治療することができる。
【0222】
以上説明したように、本実施形態に係る情報処理装置1は、ユーザに感情を提示する感情提示画像(所定の画像)22等を表示するタッチパネル11と、制御部13と、を備える。
【0223】
制御部13は、患者(ユーザ)に、生じている感情に対応する感情提示画像22を、当該感情により分泌されるホルモン及び/又は神経伝達物質の分泌を促進する第1方向(患者の下方向や利腕方向等)にスワイプすることを指示する。その一方で、制御部13は、患者に、生じている感情に対応しない感情提示画像22を、ホルモン及び/又は神経伝達物質の分泌を抑制する第2方向(第1方向とは反対の、患者の上方向や利腕反対方向等)にスワイプすることを指示する。
【0224】
このように、本実施形態に係る情報処理装置1によれば、患者内の神経伝達物質及び/又はホルモンの分泌を適切に制御することができる。
【0225】
一例として、制御部13は、「依存症」等のドーパミン及びエンドルフィンの分泌に異常が生じている患者に、「喜び」の感情を誘発させる感情誘発画像21をタッチパネル11に表示し、「喜び」の感情に対応する感情提示画像22を第1方向にスワイプすることを指示するとともに、「喜び」の感情に対応しない感情提示画像22を第2方向にスワイプすることを指示することにより、ドーパミン及びエンドルフィンの分泌を正常化することができる。
【0226】
このように、本実施形態に係る情報処理装置1によれば、患者のスワイプ動作により、ドーパミン及びエンドルフィンの分泌を正常化することができるため、簡易且つ効果的に、「依存症」等のドーパミン及びエンドルフィンの分泌に異常が生じている患者を治療することができる。
【0227】
他の例として、制御部13は、「依存症」等のストレス耐性が低減している患者に、「怒り」、「嫌悪」、「恐怖」、及び/又は「悲しみ」の感情を誘発させる感情誘発画像21をタッチパネル11に表示し、「怒り」、「嫌悪」、「恐怖」、及び/又は「悲しみ」の感情に対応する感情提示画像22を第2方向にスワイプすることを指示する第1処理を実行する。第1処理の実行後、「依存症」等のストレス耐性が低減している患者に、喜びの感情を誘発させる感情誘発画像21をタッチパネル11に表示し、喜びの感情に対応する感情誘発画像22を第1方向にスワイプすることを指示する第2処理を実行することにより、コルチゾールの分泌を正常化して、患者のストレス耐性を向上させることができる。
【0228】
このように、本実施形態に係る情報処理装置1によれば、患者のスワイプ動作により、コルチゾールの分泌を正常化して、患者のストレス耐性を向上させることができるため、簡易且つ効果的に、「依存症」等のストレス耐性が低減している患者を治療することができる。
【0229】
さらに、制御部13は、第2処理を第1処理よりも多い回数実行することにより、より効果的に患者のストレス耐性を向上させて、「依存症」等のストレス耐性が低減している患者を治療することができる。
【0230】
さらに他に例として、制御部13は、「うつ病」や「不安障害」の患者等の前帯状回の機能が低減している患者に、「喜び」の感情を誘発させる感情誘発画像21をタッチパネル11に表示し、「喜び」の感情に対応する感情提示画像22を第1方向にスワイプすることを指示して、セロトニン、オキシトシン、エンドルフィン、及びドーパミンの分泌を促進することにより、患者の前帯状回の機能を向上させることができる。
【0231】
また、制御部13は、「うつ病」や「不安障害」の患者等の扁桃体及び側坐核の機能が低減している患者に、「喜び」の感情を誘発させる感情誘発画像21をタッチパネル11に表示し、「喜び」の感情に対応する感情提示画像22を第1方向にスワイプすることを指示して、セロトニン、オキシトシン、エンドルフィン、及びドーパミンの分泌を促進した後、「驚き」の感情を誘発させる感情誘発画像21をタッチパネル11に表示し、「驚き」の感情に対応する感情提示画像22を第1方向にスワイプすることを指示して、ノルアドレナリン及びアドレナリンの分泌を促進し、患者の扁桃体及び側坐核に刺激を与えることにより、患者の扁桃体及び側坐核の機能を向上させることができる。
【0232】
さらに、制御部13は、「不安障害」の患者等の前頭葉の機能が低減している患者に、「怒り」、「嫌悪」、「恐怖」、及び/又は「悲しみ」の感情を誘発させる感情誘発画像21をタッチパネル11に表示し、「怒り」、「嫌悪」、「恐怖」、及び/又は「悲しみ」の感情に対応する感情提示画像22を第2方向にスワイプすることを指示し、患者の不安を除去することにより、ユーザの前頭葉の機能を向上させることができる。
【0233】
このように、本実施形態に係る情報処理装置1によれば、患者のスワイプ動作により、患者の脳の各機能を向上させることができるため、簡易且つ効果的に、「うつ病」や「不安障害」の患者等の脳の各機能が低減している患者を治療することができる。
【0234】
また、制御部13は、感情提示画像22をスワイプする方向を患者に指示する矢印23を、患者内で分泌されるホルモン及び/又は神経伝達物質に応じて異なる色でタッチパネル11に表示する。
【0235】
より詳しくは、制御部13は、セロトニン、オキシトシン、エンドルフィン、及びドーパミンの分泌に関連する感情提示画像22のスワイプを指示する矢印23を、ノルアドレナリン、アドレナリン、及びコルチゾールの分泌に関連する感情提示画像22のスワイプを指示する矢印23とは異なる色で表示する。
【0236】
具体的に、制御部13は、セロトニン、オキシトシン、エンドルフィン、及びドーパミンの分泌に関連する感情提示画像22のスワイプを指示する矢印23を青系統又は緑系統の色、若しくはパステルカラーで表示する一方で、ノルアドレナリン、アドレナリン、及びコルチゾールの分泌に関連する感情提示画像22のスワイプを指示する矢印23を赤系統の色で表示する。
【0237】
このように、本実施形態に係る情報処理装置1によれば、スワイプする方向を患者に指示する矢印23が、目的とするホルモン及び/又は神経伝達物質に応じて異なる色で表示されるため、目的とするホルモン及び/又は神経伝達物質をより効率的に分泌させることができ、患者の治療効果をさらに向上させることができる。
【0238】
さらに、制御部13は、患者に感情を誘発させる感情誘発画像21を、感情が生じることにより分泌されるホルモン及び/又は神経伝達物質に応じて、色相、彩度、及び/又は明度を調整してタッチパネル11に表示する。
【0239】
このように、本実施形態に係る情報処理装置1によれば、感情誘発画像21が、目的とするホルモン及び/又は神経伝達物質に応じて、色相、彩度、及び/又は明度が調整されて表示されるため、目的とするホルモン及び/又は神経伝達物質をより効率的に分泌させることができ、患者の治療効果をさらに向上させることができる。
【0240】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な上記の実施形態の変形態様について、説明する。
【0241】
上記の実施形態において、患者情報、感情誘発画像21、感情提示画像22、矢印23、トレーニングパターン選択テーブル3は、情報処理装置1が備える記憶部12に記憶されるものとして説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、患者情報、感情誘発画像21、感情提示画像22、矢印23、トレーニングパターン選択テーブル3は、情報処理装置1とインターネット等のネットワークを介して接続されたサーバコンピュータが備える記憶部に記憶されるものであってもよい。
【0242】
この場合、情報処理装置1では、制御部13が、患者がタッチパネル11に表示される治療プログラムに対応するアイコンをタップして治療プログラムを起動した後、タッチパネル11においてトレーニングの開始を指示したことに応答して、患者を特定可能なトレーニング開始通知をネットワークを介してサーバコンピュータに送信する。
【0243】
サーバコンピュータでは、制御部が、情報処理装置1からネットワークを介して送信されるトレーニング開始通知を受信したことに応答して、ステップS51~S57と同様の処理を実行する。そして、サーバコンピュータの制御部は、ステップS56で読み出した感情誘発画像21を表示し、所定期間経過後、感情提示画像22、及びステップS57で決定した矢印23を表示するための表示データを、ネットワークを介して情報処理装置1に送信する。
【0244】
情報処理装置1では、制御部13が、サーバコンピュータからネットワークを介して送信される表示データを受信したことに応答して、表示データに基づいて、表示データから特定される感情誘発画像21を表示し、所定期間経過後、感情提示画像22及び矢印23を表示する(ステップS58)。 その後、制御部13は、患者によって、ステップS58で表示された感情提示画像22がスワイプされたか否かを判別する(ステップS59)。そして、制御部13は、感情提示画像22がスワイプされるまでループして待ち(ステップS59;No)、感情提示画像22がスワイプされると(ステップS59;Yes)、1セットの表示が終わったとして、1セット完了通知をネットワークを介してサーバコンピュータに送信する。
【0245】
サーバコンピュータでは、制御部が、情報処理装置1からネットワークNを介して送信される1セット完了通知を受信したことに応答して、ステップS54の処理へとリターンすればよい。
【0246】
上記の実施形態において、制御部13は、第1処理の実行後、第2処理を第1処理よりも多い回数実行する実行することにより、「依存症」の患者にストレスや不安に対する耐性が作られたとしていた。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、制御部13は、「依存症」の患者の顔に表れる微表情に基づいて、「依存症」の患者にストレスや不安に対する耐性が作られたか否かを判別し、ストレスや不安に対する耐性が作られたか否かを判別するまで、第2処理を実行するようにしてもよい。
【0247】
この場合、情報処理装置1は、例えばCCD(Charge Coupled Device)等の受光素子を含んで構成される、図示せぬ撮像部をさらに備える。図示せぬ撮像部は、「依存症」の患者を治療するためのトレーニング処理において、患者の顔を撮像する。次に、制御部13は、図示せぬ撮像部で撮像して得られた患者の顔の動画像を構成するフレーム画像毎に、患者の顔に表れる微表情を検出し、微表情が検出された複数のフレーム画像における、各種微表情のそれぞれが検出されたフレーム画像の数の割合に基づいて、患者のストレスを判定する(例えば国際公開2023/002636号公報参照)。なお、本明細書中に国際公開2023/002636号公報の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参考として取り込むものとする。
【0248】
そして、制御部13は、患者にストレスが未だあると判別した場合、第2処理をさらに実行し、患者にストレスがなくなったと判別した場合、コルチゾールによるネガティブな表情の遷延が解除されたとして、「依存症」の患者にストレスや不安に対する耐性が作られたと判別し、次の、主に「依存症」の患者内の「セロトニン」の分泌の不足を解消するための表示を行う最後のセットに移行すればよい。
【0249】
上記の実施形態において、感情誘発画像21から誘発される感情は、患者の別を問わず、同一のものを想定していた。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、制御部13は、トレーニング処理を実行する毎に、感情誘発画像21から誘発される感情を特定し、患者毎に、表示した感情誘発画像21と、特定した感情と、を対応付けてデータベースに蓄積して行ってもよい。そして、制御部13は、患者毎に、目的とする感情を誘発する感情誘発画像21を、データベースから検出して表示するようにしてもよい。
【0250】
具体的に、制御部13は、患者毎に、表示した感情誘発画像21と、スワイプした感情と、を対応付けてデータベースに蓄積して行ってもよいし、感情誘発画像21を表示した際に患者の顔に表れる微表情に基づいて感情を推定し、表示した感情誘発画像21と、推定した感情と、を対応付けてデータベースに蓄積して行ってもよい。
【0251】
この場合、制御部13は、図示せぬ撮像部で撮像して得られた患者の顔の動画像を構成するフレーム画像毎に、患者の顔に表れる微表情を検出し、微表情が検出された複数のフレーム画像における、各種微表情のそれぞれが検出されたフレーム画像の数の割合に基づいて、患者の感情を推定すればよい(例えば国際公開2022/259560号公報参照)。なお、本明細書中に国際公開2023/002636号公報の明細書、特許請求の範囲、図面全体を参考として取り込むものとする。
【0252】
上記の実施形態では、治療対象として、「依存症」、「うつ病」、及び「不安障害」の患者を例に説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、治療対象は、ドーパミン及びエンドルフィンの分泌に異常が生じているユーザ、ストレス耐性が低減しているユーザ、及び脳の機能が低減しているユーザ等であれば任意であり、例えば、「軽度認知障害(Mild Cognitive Impairment;MCI)」、「認知症」、及び「発達障害」の患者等にも適用可能である。あるいは、高血圧や、慢性疼痛、がん等の内科系の疾患等の患者にも効果が期待できる。
【0253】
上記の実施形態において、ユーザは何等かの疾患を有する患者であるものとして説明した。しかしながら、本発明は限定されるものでなく、ユーザは何等の疾患を有していなくてもよく、例えばストレス解消やリラックス等のために使用されるものであってもよい。
【0254】
上記の実施形態では、患者(ユーザ)に感情を誘発するコンテンツとして、静止画像又は動画像等からなる感情誘発画像21を例に説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、コンテンツは、患者(ユーザ)に感情を誘発するものであれば任意であり、例えば、ゲーム、文章、映画、テレビ番組、音楽、音声、演劇、写真、マンガ、イラストレーション、コンピュータグラフィックス、及びアニメーション等であってもよい。
【0255】
上記の実施形態において、画像として、感情を提示する感情提示画像22を例に説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、ユーザに生じている感情に対応し、スワイプ可能な画像であれば任意であり、例えばユーザに生じている感情に対応し、スワイプ可能なイラストレーション、コンピュータグラフィックス、及びアニメーション等であってもよい。
【0256】
上記の実施形態において、制御部13のCPUが実行するプログラムは、予めROM、並びに記憶部12等に記憶されるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、上述の処理を実行させるためのプログラムを、既存の汎用コンピュータに適用することで、上記の実施形態に係る情報処理装置1として機能させてもよい。
【0257】
このようなプログラムの提供方法は任意であり、例えばコンピュータが読取可能な記録媒体(フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM等)に格納して配布してもよいし、インターネット等のネットワーク上のストレージにプログラムを格納しておき、これをダウンロードさせることにより提供してもよい。
【0258】
さらに、上記の処理をOS(Operating System)とアプリケーションプログラムとの分担、又はOSとアプリケーションプログラムとの協働によって実行する場合には、アプリケーションプログラムのみを記録媒体やストレージに格納してもよい。また、搬送波にプログラムを重畳し、ネットワークを介して配信することも可能である。例えば、ネットワーク上の掲示板(BBS:Bulletin Board System)に上記プログラムを掲示し、ネットワークを介してプログラムを配信してもよい。そして、このプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上記の処理を実行できるように構成してもよい。
【0259】
なお、本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明の一実施例を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【符号の説明】
【0260】
1 情報処理装置
3 トレーニングパターン選択テーブル
11 タッチパネル
12 記憶部
13 制御部
21 感情誘発画像
22 感情提示画像
23 矢印
TPi トレーニングパターン
【要約】
ユーザ内の神経伝達物質及び/又はホルモンの分泌を適切に制御する。
制御部(13)は、患者に、生じている感情に対応する感情提示画像(22)を、当該感情により分泌されるホルモン及び/又は神経伝達物質の分泌を促進する第1方向にスワイプすることを指示する。その一方で、制御部(13)は、患者に、生じている感情に対応しない感情提示画像(22)を、ホルモン及び/又は神経伝達物質の分泌を抑制する第2方向にスワイプすることを指示する。