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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-30
(45)【発行日】2025-08-07
(54)【発明の名称】薬液合成装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/06 20060101AFI20250731BHJP
   B01J 4/00 20060101ALI20250731BHJP
   C07B 61/00 20060101ALI20250731BHJP
   C07K 1/02 20060101ALI20250731BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20250731BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20250731BHJP
【FI】
B01J8/06
B01J4/00 103
C07B61/00 B
C07K1/02
C12M1/00 A
C12M1/00 Z
C12N15/10 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021091312
(22)【出願日】2021-05-31
(65)【公開番号】P2022153223
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2024-02-02
(31)【優先権主張番号】P 2021054589
(32)【優先日】2021-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山本 清人
(72)【発明者】
【氏名】井中 千草
(72)【発明者】
【氏名】津田 雄一郎
【審査官】中根 知大
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-258737(JP,A)
【文献】特開2020-093236(JP,A)
【文献】特開2019-034290(JP,A)
【文献】特開平07-089983(JP,A)
【文献】特許第7692713(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J
C12M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が収容された薬液収容部と、
前記薬液と担体とを反応させる反応容器部と、
を備え、前記薬液収容部から反応容器部に薬液が大気に触れることなく送液される薬液合成装置であって、
前記反応容器部と接続され、前記反応容器部に薬液が供給される第1薬液供給部と、前記第1薬液供給部よりも鉛直方向上側に設けられる薬液排出部とを有しており、前記担体が前記反応容器部に付着するのを抑える第2薬液供給部を備え
前記反応容器部には、前記反応容器部内のガスを排出させる排気部が前記薬液排出部の高さ位置以上の高さ位置に配置設けられていることを特徴とする薬液合成装置。
【請求項2】
薬液が収容された薬液収容部と、
前記薬液と担体とを反応させる反応容器部と、
を備え、前記薬液収容部から反応容器部に薬液が大気に触れることなく送液される薬液合成装置であって、
前記反応容器部と接続され、前記反応容器部に薬液が供給される第1薬液供給部と、前記第1薬液供給部よりも鉛直方向上側に設けられる薬液排出部とを有しており、
前記薬液排出部から薬液を排出させた後、前記反応容器部の内壁に付着した担体を落下させる第2薬液供給部を備え
前記反応容器部には、前記反応容器部内のガスを排出させる排気部が前記薬液排出部の高さ位置以上の高さ位置に配置設けられていることを特徴とする薬液合成装置。
【請求項3】
前記第2薬液供給部は、前記薬液排出部に接続され、前記薬液排出部を逆流させて薬液が供給されることを特徴とする請求項1又は2に記載の薬液合成装置。
【請求項4】
前記第2薬液供給部から供給された薬液は、前記反応容器部の側壁に伝わせて供給されることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の薬液供給装置。
【請求項5】
前記反応容器部の薬液は、前記第1薬液供給部を逆流させて排出させることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の薬液合成装置。
【請求項6】
前記反応容器部には、前記第2薬液供給部を通じて供給された薬液を前記反応容器部の側壁に導く誘導部材が設けられていることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の薬液合成装置。
【請求項7】
前記誘導部材は、フィルタと共用されていることを特徴とする請求項に記載の薬液合成装置。
【請求項8】
前記薬液に代えて洗浄液が用いられることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の薬液合成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気に触れることなく送液される薬液を合成させる薬液合成装置に関するものであり、特に合成効率の低下を抑えることができる薬液合成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
タンパク質、ペプチド、ポリマー、核酸等を化学合成する薬液合成装置では、複数の薬液(試薬)を反応容器部に供給し化学合成が行われる。例えば、核酸を合成する場合には、反応容器部内に担体(多孔質のビーズ。)を多数設け、この反応容器部に薬液を順次供給しながら、脱トリチル化、カップリング、酸化、キャッピング等の処理を繰り返し行ってビーズに塩基を次々に結合させる。
【0003】
一般的な薬液合成装置としては、例えば、図7に示すように、担体110(図8参照)を収容し薬液が供給される反応容器部100と、この反応容器部100に供給する薬液を貯留する薬液タンク101等の薬液収容部と、反応容器部100から排出された排液を貯留する排液タンク102とを備えている。そして、それぞれが配管103で接続されており、圧力供給源107からの圧力により薬液が圧送され、薬液が大気に触れることなく、薬液と担体110を合成反応させることができるようになっている(例えば、下記特許文献1参照)。具体的には、反応容器部100は、鉛直方向下端部に薬液が供給される薬液供給部106と、鉛直方向上端部に薬液が排出される薬液排出部105とを有しており、選択された薬液タンクから配管103を通じて下端部の薬液供給部106から薬液が供給されると、反応容器部100で薬液と担体とが合成反応された後、反応後の薬液が上端部の薬液排出部105から配管103を通じて排液タンク102に排出される(図8(a)参照)。
【0004】
ここで、上述の通り、反応容器部100への薬液の供給は、鉛直方向下端部の薬液供給部106から行われる。すなわち、下端部の薬液供給部106から薬液は、重力の影響により反応容器部2の径方向に広がりつつ貯留される。そのため、反応容器部2全体に薬液を行きわたらせることができ、上端側から薬液を供給する場合に比べて、担体110との合成効率が向上し、反応容器部2内の担体110と薬液とを無駄なく化学合成させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-093236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記薬液合成装置では、反応容器部100における合成効率が低下する虞があった。すなわち、反応容器部100に薬液を貯留させて合成反応を行わせた後、図8(a)に示すように、上端部の薬液排出部105から薬液を排出すると、図8(b)に示すように、反応容器部100の上部に担体110の一部が貼り付いたままという現象が生じる。この状態で反応容器部100に少量の薬液を貯留させて反応させたい場合に、薬液供給部106から薬液を供給すると、貼り付いた担体110に薬液が到達せず、反応が十分に行えないという問題があった。
【0007】
また、薬液供給直後の担体の中には、反応容器部100内の薬液表面に浮遊するものが存在する場合があり、薬液供給時の液面の揺れにより、反応容器部100の壁面に付着する場合がある。このような場合にも、上述した問題と同様の問題が生じ、供給完了後の薬液が、担体が付着した高さ位置まで到達しない状態では、反応が十分に行えないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、薬液を大気と非接触で送液する薬液合成装置において、反応容器部内の担体と薬液との合成効率を高めることができる薬液合成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明の薬液合成装置は、薬液が収容された薬液収容部と、前記薬液と担体とを反応させる反応容器部と、を備え、前記薬液収容部から反応容器部に薬液が大気に触れることなく送液される薬液合成装置であって、前記反応容器部と接続され、前記反応容器部に薬液が供給される第1薬液供給部と、前記第1薬液供給部よりも鉛直方向上側に設けられる薬液排出部とを有しており、前記担体が前記反応容器部に付着するのを抑える第2薬液供給部を備え、前記反応容器部には、前記反応容器部内のガスを排出させる排気部が前記薬液排出部の高さ位置以上の高さ位置に配置設けられていることを特徴としている。
【0010】
上記薬液合成装置によれば、第2薬液供給部を備えているため、反応容器部の内壁に担体が付着するのを抑えることができる。すなわち、薬液の液面が揺れることにより、反応容器部の内壁に担体が付着しようとしても、薬液の液面よりも上側に設けられる第2薬液供給部から供給されることにより担体が付着するのが抑えられ、仮に反応容器部の内壁に付着しても薬液側に流し戻すことができる。したがって、下端部側の第1薬液供給部から供給される薬液と接触させやすくなり、担体と薬液との合成効率を高めることができる。そして、排出部を設けることにより、反応容器部内のガスを排出させることができるため、第2薬液供給部から薬液を容易に供給することができる。
【0011】
また、上記課題を解決するために本発明の薬液合成装置は、薬液が収容された薬液収容部と、前記薬液と担体とを反応させる反応容器部と、を備え、前記薬液収容部から反応容器部に薬液が大気に触れることなく送液される薬液合成装置であって、前記反応容器部と接続され、前記反応容器部に薬液が供給される第1薬液供給部と、前記第1薬液供給部よりも鉛直方向上側に設けられる薬液排出部とを有しており、前記薬液排出部から排出させた後、前記反応容器部の内壁に付着した担体を落下させる第2薬液供給部を備え、前記反応容器部には、前記反応容器部内のガスを排出させる排気部が前記薬液排出部の高さ位置以上の高さ位置に配置設けられていることを特徴としている。
【0012】
上記薬液合成装置によれば、第2薬液供給部を備えているため、鉛直方向上側の薬液排出部から薬液を排出させた後、反応容器部の内壁に付着した担体を落下させることができる。すなわち、第2薬液供給部から供給された薬液が反応容器部の内壁に付着した担体に接触することにより、供給させる薬液と共に担体を落下させ、担体を反応容器部の下端部に戻すことができる。したがって、下端部側の第1薬液供給部から供給される薬液と接触させやすくなり、担体と薬液との合成効率を高めることができる。そして、排出部を設けることにより、反応容器部内のガスを排出させることができるため、第2薬液供給部から薬液を容易に供給することができる。
【0013】
また、前記第2薬液供給部は、前記薬液排出部に接続され、前記薬液排出部を逆流させて薬液が供給される構成にしてもよい。
【0014】
この構成によれば、薬液排出部を利用して薬液を供給することができるため、反応容器部に第2薬液供給部専用の独立したポートを形成する必要がない。よって、必要以上に配管を複雑にすることなく、第2薬液供給部を設けることができる。
【0015】
また、前記第2薬液供給部から供給された薬液は、前記反応容器部の側壁に伝わせて供給される構成にしてもよい。
【0016】
この構成によれば、反応容器部の側壁に付着しようとする担体、あるいは、付着した担体を流し戻すことができるため、担体が反応容器部の側壁に付着して合成効率が低下するのを抑えることができる。
【0017】
また、前記反応容器部の薬液は、前記第1薬液供給部を逆流させて排出させる構成にしてもよい。
【0018】
この構成によれば、第1薬液供給部が前記薬液排出部よりも鉛直方向下側に位置しているため、前記薬液排出部から薬液を排出させる場合に比べて、担体が前記反応容器部の壁面に付着するのを抑えることができる。
【0021】
また、前記反応容器部には、前記第2薬液供給部を通じて供給された薬液を前記反応容器部の側壁に導く誘導部材が設けられている構成にしてもよい。
【0022】
この構成によれば、第2薬液送液部から送液した薬液が誘導部材により反応容器部の側壁に誘導されることにより、誘導された薬液が側壁を伝って流れやすくなる。これにより、効率よく、側壁に貼り付いた状態の担体を薬液と共に落下させることができる。
【0023】
具体的な前記誘導部材の態様としては、前記フィルタと共用させることにより、構成を簡略にすることができる。
【0024】
また、上述の薬液は、洗浄液としてもよく、薬液に代えて洗浄液を使用しても同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の薬液合成装置によれば、薬液を大気と非接触で送液する薬液合成装置において、反応容器部内の担体と薬液との合成効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の薬液合成装置の概略的な配管経路図である。
図2】上記薬液合成装置の反応容器部の図である。
図3】第1薬液供給部から反応容器部に薬液を供給させる通常モードを示す配管経路図である。
図4】反応容器部から薬液を排出する状態を示す図であり、(a)は、薬液排出部から薬液を排出させている際に担体が上側に移動した状態を示す図であり、(b)は、薬液排出部から薬液を排出させた後、担体が上部に貼り付いた状態を示す図である。
図5】第2薬液供給部から薬液排出部を逆流させて反応容器部に薬液を供給させる担体戻しモードを示す配管経路図である。
図6】他の誘導部材が反応容器部に設けられた状態を示す図である。
図7】従来の薬液合成装置の概略的な配管経路図である。
図8】従来の反応容器部から薬液を排出する状態を示す図であり、(a)は、上端部の薬液排出部から薬液を排出させている際に担体が上側に移動した状態を示す図であり、(b)は、薬液排出部から薬液を排出させた後、担体が上部に貼り付いた状態を示す図である。
図9】供給された薬液により反応容器部内に浮遊する担体が薬液内に沈下する状態を示す図である。
図10】供給された薬液を反応容器部の側壁に伝わせる構成を示す図であり、(a)は配管が蓋部の壁面内に収納された状態を示す図、(b)は配管が蓋部の壁面から突出した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の薬液合成装置に係る実施の形態について図面を用いて説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態における薬液合成装置を示す配管経路図である。なお、本実施形態では、流体として薬液(試薬)が用いられる例を説明するが、本発明は薬液に限定されるものではなく、薬液以外の液体を化学合成、混合等行う場合にも適用することができる。
【0029】
図1に示すように、薬液合成装置は、薬液が貯留される薬液収容部である薬液タンク1と、薬液の計量を行う計量部3と、担体S(多孔質のビーズ。図2参照)を収容した反応容器部2と、この反応容器部2から排出された排液を貯留する収容容器部である排液タンク11と、を備えており、それぞれ配管4で連結されている。そして、薬液タンク1から供給された薬液が計量部3で計量された後、薬液が反応容器部2に供給されると反応容器部2で担体Sと薬液が接触することにより化学合成される。そして、化学合成後の薬液は、排液タンク11に送液されることにより排出される。例えば、核酸を合成する場合には、反応容器部2内に多孔質の担体Sが一定量含まれており、この反応容器部2に計量された薬液を順次供給しながら、脱トリチル化、カップリング、酸化、キャッピング等の処理を繰り返し行ってビーズに塩基を次々に結合させる。
【0030】
薬液タンク1は、化学合成で用いる試薬を貯留するためのものである。図1の例では、3つの薬液タンク1を図示しているが、実際には多数の薬液タンク1が設けられており、それぞれの薬液タンク1が配管42で計量部3と連結されている。すなわち、それぞれの薬液タンク1に収容された薬液が、他の薬液と混ざることなく計量部3に送液されるようになっている。
【0031】
薬液タンク1には、圧力調整手段6が接続されており、この圧力調整手段6により薬液タンク1の薬液が圧送により送液されるように構成されている。圧力調整手段6は、ガスが充填されているガスタンク61と、このガスタンク61と薬液タンク1とを連結する配管41とを有しており、この配管41を通じてガスタンク61のガスを薬液タンク1に供給することができる。すなわち、ガスタンク61のガスが供給されることにより、薬液タンク1の圧力がガスタンク61の圧力に調節され、計量部3内の圧力との差圧を形成することにより薬液タンク1の薬液が計量部3に送液される。そして、ガスタンク61の圧力を調節することにより、薬液タンク1から送液される薬液の流量を調節することができる。すなわち、薬液タンク1の圧力と計量部3との差圧を大きくすると、薬液タンク1から送液される薬液の送液速度が大きくなって薬液量を大きくすることができ、薬液タンク1の圧力と計量部3との差圧を小さくすると、薬液タンク1から送液される薬液の送液速度が小さくなって薬液量を抑えることができる。
【0032】
また、本実施形態では、薬液タンク1の1つには、洗浄液が収容されている。この洗浄液は、所定の薬液を送液する場合、先に送液させた薬液と混合させることができない場合に、先の薬液を送液させた後、後の薬液を送液させる前に洗浄液を送液し、反応容器部2及び配管4を洗浄するためのものである。この洗浄液も上述した薬液同様の構成の薬液タンク1(図1では薬液タンク1a)に収容されており、洗浄液の送液も上述した薬液と同様の構成で行われるようになっている。
【0033】
また、配管41、配管42には、バルブ51が設けられている。このバルブ51は、対象となる薬液タンク1と計量部3とを選択的に接続させるものである。すなわち、供給対象として選択された薬液タンク1のバルブ51を開にした状態(開状態)で、ガスタンク61からガスを供給して薬液タンク1を加圧することにより薬液タンク1の圧力が計量部3の圧力よりも大きくなるように制御され、選択された薬液タンク1の薬液が配管42を通じて計量部3に送液される。なお、配管41、42、・・は、特に区別する必要がない場合は、単に配管4と呼ぶ。
【0034】
また、本実施形態では、圧力調節手段6は、ガスタンク61を使用する例について説明するが、ガスタンク61に代えて、薬液合成装置を設置する建屋に備え付けられたガス供給源を用いるものであってもよい。また、このガスタンク61のガスは、薬液タンク1の薬液と反応しないガス(例えばアルゴンガス等)が用いられている。
【0035】
また、計量部3は、供給された薬液を精度よく計量するものである。本実施形態では、供給された薬液の質量を計量し、反応容器部2の担体Sと反応させる薬液量を精度よく計量できるようになっている。すなわち、計量部3は、計量容器31と計量容器31に接続されたロードセル(不図示)とを有しており、計量容器31に貯留された薬液がロードセルにより計量されるようになっている。
【0036】
計量容器31には、上端部に配管42が接続され、下端部に配管43が接続されており、薬液タンク1から送液された薬液が配管42を通じて供給され、計量後の薬液が配管43を通じて排出されるようになっている。具体的には、選択された薬液タンク1と計量容器31とを接続する配管4のバルブ51が開状態で、選択された薬液タンク1がガスタンク61により加圧されることにより、その薬液が配管42を通じて計量容器31に供給される。そして、反応容器部2において、1度の合成反応に必要な薬液量が計量されると同時に送液が停止されることにより、計量容器31において、合成反応に必要な薬液が貯留された状態になる。そして、計量後の薬液が計量容器31から反応容器部2に配管43を通じて送液される。
【0037】
この計量部3からの送液は、ガスタンク62(圧力調節手段6)によって行われる。すなわち、計量容器31には、ガスタンク61とは別にガスタンク62が接続されており、ガスタンク62から計量容器31にガスが供給できるようになっている。そして、ガスタンク62から計量容器31にガスが供給されることにより、計量容器31の圧力が調節され、計量部3と反応容器部2との差圧が調節されることにより、計量容器31内の薬液が反応容器部2に送液されるようになっている。図1の例では、計量後の薬液は、配管43及び配管44を通じて反応容器部2に供給される。なお、このガスタンク62についても、建屋に備え付けられたガス供給源を用いるものであってもよい。
【0038】
また、反応容器部2は、反応容器部2内に含む担体Sと供給された薬液等を接触させて化学合成させる反応場を提供するものである。本実施形態では、反応容器部2は、一方向に延びるガラス製の円筒管が使用されており、反応容器部2内には担体Sが収容されている(図2参照)。また、この反応容器部2の鉛直方向両端部には、薬液が供給される第1薬液供給部71と、薬液が排出される薬液排出部72とが接続されている。すなわち、反応容器部2は、第1薬液供給部71を通じて薬液が供給され、薬液排出部72を通じて薬液が排出されるようになっている。本実施形態では、鉛直方向上側に薬液排出部72、鉛直方向下側に第1薬液供給部71が設けられている。
【0039】
第1薬液供給部71は、反応容器部2の鉛直方向下側において薬液の供給を行うものであり、本実施形態では、第1ポート21aと配管44によって形成されている。すなわち、反応容器部2は、図2に示すように、鉛直方向下側に第1ポート21aを有しており、この第1ポート21aに配管44が接続されている。したがって、計量部3から配管43を通じて送液された薬液は、三方弁53、配管44を通じて、反応容器部2に供給されるようになっている。そして、第1薬液供給部71から薬液が供給されると、供給された薬液が重力の影響により反応容器部2の径方向に広がりつつ貯留される。そのため、反応容器部2全体に薬液を行きわたらせることができ、薬液を反応容器部2に収容された担体Sと無駄なく化学合成させることができる。
【0040】
薬液排出部72は、反応容器部2の鉛直方向上側において薬液の排出を行うものであり、本実施形態では、第2ポート21bと配管45によって形成されている。すなわち、反応容器部2は、図2に示すように、鉛直方向上側に第2ポート21bを有しており、この第2ポート21bに配管45が接続されている。
【0041】
また、反応容器部2の下流側には、後述の排液タンク11が設けられており、反応容器部2と排液タンク11とが配管45によって接続されている。すなわち、反応容器部2の薬液は、薬液排出部72から配管45を通じて排出させることができる。
【0042】
また、反応容器部2の下流側には、反応容器部2で反応完了後に排液された薬液等を貯留する収容容器部としての排液タンク11が設けられている。排液タンク11は、反応容器部2に比べて容量が大きく形成されており、反応容器部2から複数回排出された場合でも貯留できる容量に形成されている。本実施形態では、薬液排出部72を経て、反応後の薬液が排液タンク11に排出されるようになっている。すなわち、反応後の薬液は、ガスタンク62からガスが供給されることにより反応容器部2が加圧され、薬液排出部72を通じて排液タンク11に排出されるようになっている。このようにして、本発明の薬液合成装置は、薬液タンク1から排液タンク11まで大気に触れることなく、薬液が送液されるように構成されている。
【0043】
また、薬液合成装置には、第1薬液供給部71とは別に、第2薬液供給部73が設けられている(図1参照)。第2薬液供給部73は、担体Sが反応容器部2に付着するのを抑えるものであり、反応容器部2に付着した担体Sを落下させるためのものである。本実施形態では、第2薬液供給部73は、三方弁53により配管43に接続される配管46によって形成されており、この配管46が配管45に三方弁55で接続されることにより形成されている。そして、第2薬液供給部73により、計量後の薬液が配管43から三方弁53を経由して配管46によって送液され、三方弁55を経由して配管45を通じて反応容器部2に送液されるようになっている。すなわち、第2薬液供給部73により、薬液排出部72を逆流させて反応容器部2に薬液が供給されるようになっている。そして、この第2薬液供給部73から薬液が供給されることにより、薬液が反応容器部2の側壁22aを流れ、反応容器部2に付着した担体を落下させることができるようになっている。
【0044】
また、第2薬液供給部73から供給された薬液が反応容器部2の側壁22aを流れることにより、反応容器部2の側壁22aに付着しようとする担体Sを流し戻し、担体Sが側壁22aに付着するのを抑えることができる。さらに、図9に示すように、第2薬液供給部73から薬液が供給されることにより、薬液の流れが液面に浮遊する担体Sに直撃し、担体を沈めることにより、反応容器部2の側壁22aに担体Sが付着するのを抑えることができる。特に、薬液が反応容器部2の側壁22aを流れることにより、側壁22a近くの液面に浮遊する担体Sに薬液の流れが直接当たることにより、下側の第1薬液供給部71から薬液を供給する場合に比べて、薬液が担体Sと馴染みやすく、さらに薬液供給に伴う液面の揺れにより側壁22aに付着しようとする担体Sを沈下させることができる。これにより、担体Sが側壁22aに付着するのを抑えることができる。
【0045】
また、配管44は、バルブ58により配管48を経て配管45に接続されており、反応容器部2が、配管44、配管48、配管45を通じて排液タンク11と接続されている。すなわち、第2薬液供給部73から供給された反応容器部2の薬液は、第1薬液供給部71を逆流させて排出させることができるようになっている。
【0046】
なお、上述した説明では、薬液を対象にして説明したが、薬液に代えて洗浄液を対象とすることができ、洗浄液を対象とした場合でも、薬液と同様の構成で、計量、送液が行われるようになっている。
【0047】
また、反応容器部2は、図2に示すように、担体S(ビーズ)を収容する反応容器本体22と、反応容器本体22の軸方向両端部に設けられる蓋部23とを有している。この蓋部23には、第1ポート21a及び第2ポート21bが設けられており、第1ポート21aから薬液が供給され、第2ポート21bから薬液が排出される。
【0048】
また、反応容器本体22の出入口には、フィルタ24が設けられており、反応容器本体22から第1ポート21a、第2ポート21bに通じる流路を塞ぐように設けられている。これにより、第1ポート21a又は第2ポート21bを通じて供給される薬液内に仮に不純物が含まれていた場合には、この不純物を除去できるようになっている。また、反応容器部2から反応後の薬液が排出される場合には、フィルタ24により担体Sの排出が防止され、反応容器部2内の担体Sが外部に漏れるのを防止できるようになっている。
【0049】
また、フィルタ24は、円形の平板形状に形成されており、その外縁部が反応容器本体22の側壁22aと連続する壁面に当接するように設けられている。すなわち、反応容器本体22は、蓋部23と接続される部分が突出して形成されており、フィルタ24は、その突出した部分の壁面に接するように配置されている。これにより、第2ポート21bから供給された薬液は、反応容器本体22の側壁22aを伝って反応容器本体22内に供給される。すなわち、第2ポート21bから薬液が供給される場合、すなわち、第2薬液供給部73から薬液を供給し、薬液排出部72を逆流させて薬液が供給されると、図2の矢印で示すように、フィルタ24内に浸透することによりフィルタ24全面に薬液が移動する。そして、そのまま継続して薬液が供給されることにより、フィルタ24内に薬液が保持できなくなり、フィルタ24の外縁部が反応容器部本体22の側壁22aと連続していることにより、フィルタ24内に保持できない薬液が側壁22aとの表面張力により引っ張られ、側壁22aを伝うようにして流れる。すなわち、このフィルタ24は、薬液を反応容器部2の側壁22aに導く誘導部材8として機能している。
【0050】
また、反応容器部2には、第2ポート21bとは別に、排気部9としての排気ポート91を備えている。この排気部9は、反応容器部2内のガス(ガス及び気泡含む)を排出させるためのものである。この排気ポート91は、排液タンク11に接続される配管49と接続されており、この配管49を通じて、排気ポート91から排出された流体が排液タンク11に排出されるようになっている。この配管49には、バルブ59が設けられており、排気ポート91から排出される流体の流れを制御できるようになっている。すなわち、バルブ59が開状態で、反応容器本体22が加圧されることにより、反応容器本体22内の流体が配管49を通じて排出され、閉状態で排気ポート91から排出される流体の流れを停止させることができるようになっている。
【0051】
排気ポート91は、第2ポート21bと同様に、蓋部23に設けられており、薬液排出部72の高さ位置以上の高さ位置に配置されている。本実施形態では、薬液排出部72は、第2ポート21bと配管45とによって形成されており、配管45がフィルタ24に当接するまで延びて形成されている。すなわち、排気ポート91は、薬液排出部72の下端部、すなわち、配管45がフィルタ24に当接する位置Pよりも高い位置に配置されている。これにより、第2ポート21bから薬液をスムーズに供給することができる。すなわち、第2ポート21bから薬液が供給されると、反応容器本体22内の圧力が高くなるが、排気ポート91を開状態にすることにより、排気ポート91が配管45よりも高い位置にあるため、第2ポート21bから供給された薬液が直接排気ポート91から排出されることを回避することができる。したがって、反応容器本体22内のガスが排気ポート91から効率よく排出され、第2ポート21bから薬液をスムーズに供給することができる。
【0052】
さらに、薬液排出部72の配管45は、フィルタ24に当接されているため、第2薬液供給部73から配管45を通じて圧送される薬液がフィルタ24を通過し、そのまま反応容器本体22に投入される。すなわち、配管45がフィルタ24から離れている場合には、配管45から圧送される薬液がフィルタ24の表面を流れ、直接排気ポート91に流れようとする虞があるが、配管45がフィルタ24に当接させていることにより、供給された薬液は、フィルタ24内を流れて反応容器本体22に入るため、薬液が反応容器本体22に入る前に、直接、排気ポート91から排出されるのを回避することができる。
【0053】
また、核酸合成装置は、図示しない制御装置を有しており、制御装置により各バルブ、圧力調節手段6が制御され、薬液の流れが制御されるようになっている。すなわち、制御装置により反応容器部2への薬液の供給、排出形態についても制御されるようになっており、後述の通常供給モード、担体戻しモードが制御される。
【0054】
通常供給モードは、第1薬液供給部71から薬液が供給される形態である。具体的には、図3に示すように、三方弁53が配管43から配管44に流れる方向に開状態、バルブ52が開状態、三方弁55が配管45に流れる方向に開状態に設定されることにより、計量部3で計量された薬液が第1薬液供給部71を通じて反応容器部2に供給される。ここで、各バルブの開閉状態は、白色が開状態、黒色が閉状態を示している。そして、ガスタンク62により計量容器31が加圧されることにより、反応容器部2に対して差圧が生じ、計量容器31から薬液が送液される。反応容器部2に供給された薬液は、反応容器部2内の担体Sと接触することにより合成反応が行われる。
【0055】
この通常供給モードは、メインで使用される薬液供給状態であり、効率よく合成反応を行うことができる。すなわち、第1薬液供給部71から送液されることにより、反応容器部2の下側から薬液が導入され、反応容器部2全体に薬液を行き渡らせることができる。すなわち、下方の配管44から反応容器部2に導入された薬液は、重力の影響を受けるため、径方向に広がりつつ反応容器部2内に貯留され、反応容器部2に収容された担体S全体と化学合成が行われる。仮に、上方から導入された場合には、重力の影響により、第2ポート21bから供給された薬液がそのまま第1ポート21aに進んでしまうため、径方向に広がりにくい。そのため、上方から導入された薬液は、第2ポート21b直下の軸方向に存在する担体Sと化学合成が進むものの、径方向外側に離れたところに位置する担体Sとは反応しにくく、局所的に未反応の担体Sが残ってしまう場合もある。したがって、通常供給モードでは、反応容器部2内の担体Sと薬液とを無駄なく反応させることができ、通常の薬液供給経路として使用される。
【0056】
そして、反応容器部2に供給された薬液と担体Sとの反応が完了すると、薬液が排出される。すなわち、ガスタンク62により加圧することにより、薬液が第2ポート21bから排出され、配管45を通じて排液タンク11に排出される(図4(a)参照)。
【0057】
また、担体戻しモードは、反応容器部2の側壁に付着した担体を落下させ、担体を元の位置(反応容器部2の下端部分)に戻すためのモードである。この担体戻しモードは、通常供給モードに対して逆方向の薬液供給形態であり、反応容器部2の上端部側から送液されるものである。本実施形態では、第2薬液供給部73から薬液排出部72を通じて送液される。通常、各処理部が配管で接続され、薬液を大気に触れさせることなく合成反応を行うタイプの薬液合成装置では、上述の通常供給モードのみで効率よく担体Sと合成反応させることができるため、別途、反応容器部2の上側から薬液を供給する経路を設ける必要はない。ところが、反応容器部2に担体Sが収容されている場合には、通常供給モードのように薬液を上側の第2ポート21bから排出した場合、反応容器本体22の側壁22a(特に上方)、上側のフィルタ24に付着したままになる場合がある(図4(b)参照)。このように、担体Sが付着した状態で、合成反応させる次の薬液の量が少ない場合には、反応容器部2に薬液を供給しても薬液が付着した担体Sに触れることが困難になり、効率よく合成反応が行うことが難しいという問題がある。この問題を解消するため、担体戻しモードが実行されることにより、上側から導入された薬液が、付着した担体Sが洗い落とすことにより、薬液と担体Sとの合成効率を高めることができる。
【0058】
担体戻しモードは、第2薬液供給部73から薬液が供給される。具体的には、図5に示すように、三方弁53が配管43から配管46に流れる方向に開状態、三方弁55が配管46から反応容器部2側に流れる方向に開状態に設定されることにより、計量部3で計量された薬液が第2薬液供給部73から薬液排出部72を通じて反応容器部2に供給される。すなわち、通常供給モードと同様に、ガスタンク62により計量容器31が加圧されることにより、反応容器部2に対して差圧が生じ、計量容器31から薬液が送液される。
【0059】
反応容器部2に薬液が供給されると、第1ポート21aを通じて供給された薬液は、フィルタ24(誘導部材8)により、反応容器部本体22の側壁22aに誘導される。すなわち、フィルタ24に浸透した薬液は、図2の矢印で示すように、フィルタ24内に浸透し、フィルタ24全面に薬液が移動する。そして、フィルタ24の外縁部が反応容器部本体22の側壁22aと連続していることにより、フィルタ24内に保持できない薬液が側壁22aとの表面張力により引っ張られ、側壁22aを伝うようにして流れる。これにより、側壁22aを伝う薬液は、側壁22aに付着した担体S(図4(b)参照)を側壁22aから浮かせ、薬液の流れと共に担体Sを反応容器部2の下端部側に落下させる。これにより、反応容器部2の側壁22aに付着した担体Sを元の位置(反応容器部の下端部)に戻すことができ、担体Sと薬液との合成効率を高めることができる。すなわち、担体Sが側壁22aに付着したままの状態に比べて、薬液とすべての担体とを接触させることができ、合成反応を効率的に行うことができる。
【0060】
また、この担体戻しモードは、上述の通り、反応容器部2の側壁22aにすでに付着した担体Sを流し落とすだけでなく、薬液に浮遊する担体Sが側壁22aに付着するのを抑えることもできる。すなわち、第2薬液供給部73から供給された薬液は、反応容器部2の側壁22aを伝って流れるため、この薬液の流れが液面に浮遊する担体Sに直撃し、担体を沈めることができる。すなわち、反応容器部2内の薬液を排出させる前であっても反応容器部2の側壁22aに担体Sが付着するのを抑えることができる。また、薬液の供給により液面が揺れることにより担体Sが側壁22aに付着しようとしても、側壁22aを伝って流れる薬液が担体Sを流し戻し、担体Sが側壁22aに付着するのを抑えることができる。
【0061】
そして、この担体戻しモードでは、薬液を反応容器部2の側壁22aに導く誘導部材8(本実施形態では、フィルタ24)により、第2薬液供給部73から供給された薬液が反応容器部2の側壁22aを伝って流れるように構成されているため、反応容器部2の鉛直方向上側(本実施形態では、薬液排出部72)から直接、薬液を供給することができる。上述したように、上方から導入された薬液は、径方向に広がりにくいため、径方向外側に位置する担体Sとは反応しにくくなるが、本実施形態では、反応容器部2の側壁22aを伝って供給されるため、径方向外側に位置する担体Sにも薬液を供給することができる。したがって、この担体戻しモードは、反応容器部2に対して、通常の薬液供給手段としても用いることができる。そして、この担体戻しモードにより、担体Sが反応容器部2の側壁22aに付着するのを抑えつつ、反応容器部2に薬液を供給することができる。
【0062】
ここで、担体戻しモードで反応容器部2に薬液を貯留するために、バルブ52は閉状態に設定されるため、反応容器部2内は薬液が供給されると共に加圧されることにより、一定量を超える薬液は、送液できない状態になる。そのため、担体戻しモードでは、排気部9が開状態に設定されることにより、反応容器部2内のガス(主にガス。気泡含む)を排液タンク11に逃がし、送液される薬液に関わらず、薬液の貯留を可能にすることができる。
【0063】
ところが、排気部9を常に開状態に設定すると、反応容器部2内の流体(主にガス)が排出されることにより、フィルタ24の種類(フィルタ24による流体抵抗)によっては、薬液がフィルタ24を通過することなく排気部9から排出される虞がある。そのため、担体戻しモードでは、薬液供給状態と、容器排出状態とが交互に切り替えられることにより薬液が供給される。ここで、薬液供給状態とは、排気部9が閉状態で、かつ、第2薬液供給部73及び薬液排出部72が送液状態で薬液が供給される状態である。また、容器排出状態とは、第2薬液供給部73及び薬液排出部72が送液停止状態で、かつ、排気部9が開の状態である。
【0064】
すなわち、薬液供給状態により、バルブ59が閉じられることにより排気部9が閉状態で第2ポート21bから薬液が供給されると、反応容器部2の圧力が高くなるが、排気部9が閉状態であるため、フィルタ24の流体抵抗に抗して反応容器部本体内に薬液が導入される。この状態を継続させると、反応容器部2内の圧力が高くなり、薬液排出部72から供給される薬液が入らなくなる。この反応容器部2の圧力が一定以上高くなった状態で、バルブ59を開き、さらに、三方弁55を閉状態にして薬液の供給を止めて容器排出状態に切り替えることにより、反応容器部2内の流体が排出され、高くなった圧力を戻すことができる。そして、再度、薬液供給状態にして薬液を供給する。このように、薬液供給状態と容器排出状態を切り替えることにより、供給された薬液がフィルタ24を通過することなく排気部9から排出される問題を回避して、薬液を供給することができる。なお、薬液供給状態と容器排出状態を切り替えるタイミングは、反応容器部2の圧力制御、あるいは、時間制御等により、薬液がスムーズに導入できる所定のタイミングに設定することができる。
【0065】
また、制御装置は、計量後の薬液が残ることなく反応容器部2に供給されるように残液送液動作を行うように設定されている。本実施形態では、残液送液動作は、気液センサ32aによって行うことができるようになっており、気液センサ32aがOFFになった後、送液動作を余分に行うことで残液を送液させるようになっている。具体的には、配管45には、気液センサ32aが設けられており、配管45内に薬液が存在しているか否かを検知できるようになっている。この気液センサ32aは、薬液が通過することによりONになった後、OFFになることにより、薬液の通過が完了したことが検知できる。そして、予め、気液センサ32aの取付位置から、どの程度、送液動作を行えば配管45内の残液が反応容器部2に送液されるか把握しておくことで、配管45内の残液を送液することができる。例えば、気液センサ32aの取付位置から第2ポート21b内に残留している薬液が、薬液供給状態と容器排出状態とを交互に3回行うことにより反応容器部2に流れきる場合には、気液センサ32aがONからOFFになった時点から、残液送液動作として、薬液供給状態と容器排出状態が交互に3回ずつ行われることにより、配管45内の残液を確実に送液することができる。この残液送液動作により、センサ取付位置を自由に設定できる。すなわち、通常、送液完了を検出するには、配管4内の残液を極力少量にするため反応容器の近くにセンサを取り付けることが好ましいが、上述した残液送液動作が行われることにより、センサ取付位置に影響することなく、センサ反応後に配管4内に残留する薬液を配管4内に残すことなく送液させることができるため、所望の位置にセンサを取付けることができる。
【0066】
また、通常供給モードにおいても同様に残液送液動作が行われる。すなわち、通常供給モードでは、配管44に気液センサ32bが設けられており、この気液センサ32bがONからOFFになった後、所定時間、ガスタンク62により計量容器31が加圧されることにより、気液センサ32bから第1ポート21a内に残留している薬液が残ることなく反応容器部2に送液されるようになっている。なお、上記実施形態では、担体戻しモードにおける残液送液動作が薬液供給状態と容器排出状態の繰り返し回数によって制御される例について説明したが、薬液供給状態の時間によって制御されるものであってもよい。
【0067】
なお、上述した説明では、薬液を対象にして説明したが、薬液に代えて洗浄液を対象とすることができ、洗浄液を対象とした場合でも、上述の制御装置により洗浄液の流れが制御される。
【0068】
このように、上記薬液合成装置によれば、第2薬液供給部73を備えているため、反応容器部2の内壁に担体Sが付着するのを抑えることができる。すなわち、薬液の液面が揺れることにより、反応容器部2の内壁に担体Sが付着しようとしても、薬液の液面よりも上側に設けられる第2薬液供給部73から供給されることにより担体Sが付着するのが抑えられ、仮に反応容器部2の内壁に付着しても薬液側に流し戻すことができる。なお、反応容器部2の内壁とは、上記実施形態では側壁22aを主として説明したが、反応容器部本体22及び蓋部23で形成される反応容器部2の内側の壁である。
【0069】
また、上記実施形態における薬液合成装置によれば、第1薬液供給部71とは別に、第2薬液供給部73を備えているため、鉛直方向上側の薬液排出部72から薬液を排出させた後、反応容器部2の内壁に付着した担体を落下させることができる。すなわち、第2薬液供給部73から供給された薬液が付着した担体に接触することにより、供給させる薬液と共に担体を落下させ、担体を反応容器部2の下端部に戻すことができる。したがって、下端部側の第1薬液供給部71から供給される薬液と接触させやすくなり、担体と薬液との反応効率を高めることができる。
【0070】
また、上記実施形態では、第2薬液供給部73が薬液排出部72に接続され、第2薬液供給部73から送液された薬液が薬液排出部72を通じて反応容器部2に供給される例について説明したが、第2薬液供給部73から直接、反応容器部2に供給されるものであってもよい。具体的には、図2において、反応容器部2の上端部側蓋部に第2ポート21b、排出ポート91とは別に、第3ポート(不図示)を設け、この第3ポートに配管46を接続し、計量後の薬液、洗浄液が配管46、第3ポートを通じて反応容器部2に供給されるように構成するものであってもよい。
【0071】
また、上記実施形態では、担体戻しモードでは、薬液供給状態と容器排出状態とが交互に切り替えることにより、反応容器部2に薬液が供給される例について説明したが、薬液供給状態のみで薬液が供給されるものであってもよい。すなわち、反応容器本体22に付着した担体Sを一度の薬液供給状態で落としきれる場合には、1回の薬液供給状態のみで薬液を供給し、合成反応を行うものであってもよい。
【0072】
また、上記実施形態では、送液が完了したか否かを検知するセンサが気液センサ32a、32bである場合について説明したが、配管4内の薬液を検知できるセンサであれば、他のセンサを用いるものであってもよい。例えば、静電容量式の近接センサ、透過型のフォトマイクロセンサ等を使用することができる。
【0073】
また、上記実施形態では、誘導部材8がフィルタ24である例について説明したが、送液された薬液を反応容器部2の側壁22aに導く部材であれば何でもよい。例えば、図6に示すように、円錐形の部材を反応容器部2の出入り口付近に設け、その外縁部が反応容器本体22の側壁22aと連続する壁面に導くように設けるものであってもよい。このような部材であっても、第2ポート21bから供給された薬液は、反応容器本体22の側壁22aを伝って反応容器本体22内に供給されるため、側壁22aに付着した担体Sを流し落とすことができる。
【0074】
また、上記実施形態では、フィルタ24が反応容器部2に設けられる例について説明したが、薬液排出部72に設けるものであってもよい。例えば、図6に示すように、第1ポート部21a、排気ポート91に接続される配管4内に設けるものであってもよい。
【0075】
また、上記実施形態では、誘導部材8(フィルタ24)により、第2薬液供給部73(上記実施形態では、第2ポート21bに挿通される配管45)から供給された薬液が反応容器部2の側壁22aに誘導される例について説明したが、誘導部材8がなくても、蓋部23に反応容器部2の側壁22aに連続する壁面が形成され、その壁面に供給された薬液を伝わせるように構成してもよい。具体的には、図10(a)に示すように、蓋部23は、底面部23aまで貫通する挿通孔23bが形成されており、挿通孔23bに配管45が挿通されている。そして、配管45の先端部は、挿通孔23bの内壁に接触させて設けられている。これにより、配管45から供給された薬液fを反応容器部2の側壁22aに伝わせることができる。すなわち、配管45から供給された薬液fは、配管45の先端部が挿通孔23bの内壁に接触しているため、配管45の開口部を流れ出る薬液fが表面張力により挿通孔23bの内壁に沿うように流れる。そして、挿通孔23bの内壁は、蓋部23の底面部23aを介して反応容器部2の側壁22aに連続して形成されているため、挿通孔23bの内壁を伝って流れる薬液fは、底面部23aから側壁22aに沿うように流れる。このように、配管45の開口部から反応容器部2の側壁22aに連続するように構成することにより、供給された薬液fを反応容器部2の側壁22aに伝わせて流すことができる。
【0076】
なお、図10(a)では、配管45の開口部が挿通孔23b内に収容される例について説明したが、図10(b)に示すように、配管45の開口部が蓋部の底面部23aよりも突出して設けるものであってもよい。この場合でも、配管45の開口部から出た薬液fは、表面張力により底面部23aを通じて反応容器部2の側壁22aに伝わせることができる。すなわち、反応容器部2の側壁22aに連続して形成する構成には、このような配管45の開口部から出た薬液fが表面張力により最終的に側壁22aに伝って流れる構成が含まれる。これにより、反応容器部2の内壁(反応容器部本体22の側壁22a及び蓋部23の底面部23aを含む反応容器部2の内側の壁)に担体Sが付着するのを抑え、仮に担体Sが付着した場合であっても、付着した担体Sを落として薬液側に流し戻すことができる。
【符号の説明】
【0077】
1 薬液収容部
2 反応容器部
3 計量部
4 配管
8 誘導部材
9 排出部
11 排液タンク(収容容器部)
21a 第1ポート
21b 第2ポート
24 フィルタ
31 計量容器
32 気液センサ
71 第1薬液供給部
72 薬液排出部
73 第2薬液供給部
91 排出ポート
S 担体(ビーズ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10