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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-30
(45)【発行日】2025-08-07
(54)【発明の名称】液体状態検出センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/06 20060101AFI20250731BHJP
   G01N 27/00 20060101ALI20250731BHJP
【FI】
G01N27/06 A
G01N27/06 Z
G01N27/00 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022573005
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(86)【国際出願番号】 JP2021047017
(87)【国際公開番号】W WO2022145273
(87)【国際公開日】2022-07-07
【審査請求日】2024-10-17
(31)【優先権主張番号】P 2020218839
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021029516
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永井 勇冴
(72)【発明者】
【氏名】亀田 幸則
(72)【発明者】
【氏名】吉田 尚弘
(72)【発明者】
【氏名】中村 瞭平
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-153272(JP,A)
【文献】国際公開第2008/143013(WO,A1)
【文献】米国特許第4644263(US,A)
【文献】特開2007-155706(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/182030(US,A1)
【文献】米国特許第5216409(US,A)
【文献】国際公開第2020/084281(WO,A2)
【文献】米国特許出願公開第2007/0018652(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00 - G01N 27/10
G01N 27/14 - G01N 27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の状態を検出する液体状態検出センサであって、
前記液体の流路に配置され、互いに対向して設けられた一対の電極を有する電極部と、
前記電極部の前記一対の電極の電極間電圧値を取得する時間の長さである電圧値取得時間を設定する電圧値取得時間設定部と、
前記電圧値取得時間における前記電極間電圧値を取得する電圧値取得部と、
前記電圧値取得部により取得された前記電極間電圧値のうち、前記電圧値取得時間の開始時から所定時間経過以降の前記電極間電圧値に基づいて前記液体の導電率を算出する導電率算出部と、
を備える液体状態検出センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の液体状態検出センサであって、
前記所定時間は、前記電圧値取得時間の開始時から前記電極間電圧値が安定するまでの時間である液体状態検出センサ。
【請求項3】
請求項1に記載の液体状態検出センサであって、
前記導電率算出部は、前記電圧値取得時間における前記所定時間経過以降の前記電極間電圧値の平均値に基づいて前記液体の前記導電率を算出する液体状態検出センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体状態検出センサに関する。
【背景技術】
【0002】
回転部や摺動部に循環供給され、これら各部品の摩耗を防いで円滑に動作させるためのオイルについて、オイルの状態を検出する装置が知られている。この種の装置では、オイル流路に互いに平行して2枚の電極が設置され、これら2枚の電極間に交流電圧を印加することによって、電極間電圧値を測定し、得られた電極間電圧値に基づいてオイルの誘電率および導電率を求める。そして、求めた誘電率および導電率に基づいてオイルの状態を検出する(例えば、JP2009-2693A参照。)。
【発明の概要】
【0003】
しかしながら、JP2009-2693Aに記載のような装置では、2枚の電極間に交流電圧を印加した直後には、電極間電圧値が不安定になり、電極間電圧値取得期間内の電極間電圧値の精度が悪化するおそれがある。2枚の電極間に直流電圧を印加することによって電極間電圧値を得る場合も同様の現象が生じるおそれがある。
【0004】
本発明は、精度の高い導電率を得ることにより、液体の状態を的確に検出する液体状態検出センサを提供することを目的とする。
【0005】
本発明のある態様によれば、液体の状態を検出する液体状態検出センサであって、前記液体の流路に配置され、互いに対向して設けられた一対の電極を有する電極部と、前記電極部の前記一対の電極の電極間電圧値を取得する時間の長さである電圧値取得時間を設定する電圧値取得時間設定部と、前記電圧値取得時間における前記電極間電圧値を取得する電圧値取得部と、前記電圧値取得部により取得された前記電極間電圧値のうち、前記電圧値取得時間の開始時から所定時間経過以降の前記電極間電圧値に基づいて前記液体の導電率を算出する導電率算出部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は第1実施形態に係る液体状態検出センサの電気的構成を示す図である。
図2図2は第1実施形態に係る液体状態検出センサの処理フローを示す図である。
図3図3は第1実施形態に係る液体状態検出センサにおける電圧値取得時間と、電極間電圧値及び電極間電圧値のA/D変換波形と、の関係を示す図である。
図4図4は第2実施形態に係る液体状態検出センサの電気的構成を示す図である。
図5図5は第2実施形態に係る液体状態検出センサの処理フローを示す図である。
図6図6は第3実施形態に係る液体状態検出センサの電気的構成を示す図である。
図7図7は第3実施形態に係る液体状態検出センサの処理フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<第1実施形態>
以下、図1から図3を参照して、第1実施形態に係る液体状態検出センサ1について説明する。
【0008】
<液体状態検出センサ1の電気的構成>
本実施形態に係る液体状態検出センサ1は、流路を流れる流体としての液体の状態を検出するものであって、図1に示すように、電極部10と、電極部10に直流電圧を印加する直流電圧印加部20と、電極部10の電極間電圧値を取得する時間の長さである電圧値取得時間を設定する電圧値取得時間設定部30と、電圧値取得時間における電極間電圧値を取得する電圧値取得部40と、電圧値取得部40において取得された電極間電圧値に基づいて電圧値を算出する電圧値算出部50と、電圧値算出部50で算出された電圧値に基づいて液体の導電率を算出する導電率算出部60と、を備える。なお、電圧値取得時間設定部30と、電圧値取得部40と、電圧値算出部50と、導電率算出部60とは、CPU100の機能の一部である。
【0009】
電極部10は、例えば、互いに対向して設けられた一対の電極を有し、液体が流れる流路に設置される。電極部10の一対の電極は、内側電極と外側電極とからなる間隔dの同心円筒型の電極である。なお、電極部10の一対の電極は、同心円筒型に限らず、例えば、平行平板型やくし型であってもよい。
【0010】
直流電圧印加部20は、図示しない直流電圧を供給する電圧源と、CPU100からの制御信号に応じて電圧源の出力を電極部10の一方の電極と他方の電極とに接続する接続部と、を有する。直流電圧印加部20は、電極部10の電極表面のイオン化を打ち消すため、電極部10の一方の電極と他方の電極とに+方向の電圧と-方向の電圧とを交互に印加することが好ましい。
【0011】
電圧値取得時間設定部30は、電極部10の一対の電極の電極間電圧値を取得する時間の長さである電圧値取得時間を設定する。ここで、電極間電圧値とは、電極部10の一方の電極と他方の電極との電位差である。また、電圧値取得時間とは、電圧値取得部40による電極間電圧値の取得開始から取得完了までの時間であり、直流電圧印加部20による電極部10の電極間への電圧の印加開始から印加完了までの時間の長さでもある。電圧値取得時間は、初期値が予め設定されているが、例えば、電圧値取得時間を長く設定すれば、後述するように電圧値取得部40において取得される電極間電圧値の数が増え、電圧値算出部50が算出する電極間電圧値の精度が向上する。しかしながら、この場合では、導電率算出部60における導電率の算出までの時間が長くなるという傾向がある。一方で、電圧値取得時間を短く設定すれば、電圧値算出部50が算出する電極間電圧値の精度は低下するが、導電率算出部60における導電率の算出までの時間が短くなるという傾向がある。
【0012】
ここで、どの程度の電圧値取得時間を設定するのかについては、導電率の算出目的やシステムの要件等により異なる。そのため、例えば、液体状態検出センサ1にタッチパネルが設けられ、ユーザのタッチ操作によって、電圧値取得時間を設定することが可能である。また、液体状態検出センサ1がネットワークに接続され、管理端末等から電圧値取得時間を設定することも可能である。同様に、導電率算出部60により導電率を所定の間隔ごとに算出する際に、導電率の算出間隔、言い換えれば、後述するように電圧値取得部40が複数の電極間電圧値を取得する一連の動作の実行間隔を設定することも可能である。
【0013】
電圧値取得部40は、図3に示すように、電圧値取得時間における電極間電圧値を所定時間間隔ごとに取得する。電圧値取得部40は、例えば、図示しないA/Dコンバータを有する。電圧値取得部40は、例えば、電極部10の電極間電圧値をCPU100からの制御信号に応じて所定間隔ごとに取り込む。電極間電圧値は、連続的に得られるアナログ電圧値である。電圧値取得部40は、取り込んだ電極間電圧値をA/Dコンバータによりデジタル信号に変換したものを、CPU100内の電圧値算出部50に出力する。
【0014】
電圧値算出部50は、電圧値取得部40において取得された電極間電圧値のうち、電圧値取得時間の開始時(電極間電圧値の取得開始時及び直流電圧印加部20における直流電圧の印加開始時)から所定時間経過以降の複数の電極間電圧値に基づいて、電圧値取得時間における電圧値を算出する。電圧値算出部50が算出する電圧値は、例えば、複数の電極間電圧値の平均値(単純平均)である。電圧値算出部50は、算出した電圧値を導電率算出部60に出力する。ここで、「所定時間」とは、電圧値取得時間における電極間電圧値の取得開始から電極間電圧値が安定するまでの時間であり、直流電圧印加部20における直流電圧の印加開始から電極間電圧値が安定するまでの時間でもある。例えば、「所定時間」は、150msである。
【0015】
導電率算出部60は、電圧値算出部50から出力された電圧値に基づいて液体の導電率を算出する。具体的には、導電率算出部60は、電圧値算出部50から出力された電圧値に基づいて電極部10の一方の電極と他方の電極との間の抵抗成分を求め、求めた抵抗成分によって液体の導電率(σ)を求める。これにより、流路を流れる液体の導電率が算出される。なお、電圧値取得部40が電極部10の電極間電圧値をデジタル電圧値として連続的に取得し、電圧値取得部40が取得した電極間電圧値を導電率算出部60がCPU100からの制御信号に応じて所定間隔ごとに取り込んでもよい。そして、導電率算出部60は、取り込んだ電極間電圧値のうち、電圧値取得時間の開始時から所定時間経過以降の電極間電圧値の平均値(単純平均)に基づいて液体の導電率を算出するようにしてもよい。つまり、電圧値算出部50は、液体状態検出センサ1において必須の構成ではない。
【0016】
<液体状態検出センサ1の処理>
図2図3を用いて、本実施形態に係る液体状態検出センサ1の処理について説明する。
【0017】
図2に示すように、まず、CPU100は、直流電圧印加部20を作動させ、電極部10の一方の電極と他方の電極に直流電圧を印加させる(ステップS101)。
【0018】
CPU100は、次いで、電圧値取得部40を起動させる。電圧値取得部40は、電極部10の一方の電極と他方の電極との電位差である電極間電圧値をCPU100からの制御信号に応じて所定間隔ごとに取り込む。電極間電圧値は、連続的に得られるアナログ電圧値である。そして、取り込んだ電極間電圧値をA/Dコンバータによりデジタル信号に変換して、CPU100に出力する(ステップS102)。
【0019】
CPU100は、電圧値取得部40から出力される電極間電圧値を図示しない記憶部に保存する(ステップS103)。
【0020】
そして、CPU100は、電圧値取得部40が電極間電圧値を取り込み始めてから電圧値取得時間が経過したか否かを判定する(ステップS104)。このとき、CPU100が、電圧値取得時間が経過していないと判定すると(ステップS104の「NO」)、処理をステップS102に戻す。
【0021】
一方で、CPU100は、電圧値取得部40が電極間電圧値を取り込み始めてから電圧値取得時間が経過していると判定すると(ステップS104の「YES」)、直流電圧印加部20の作動を停止させ、電圧値算出部50を起動させる(ステップS105)。そして、CPU100は、記憶部に保存された電極間電圧値を読みだして、電圧値算出部50に出力する。
【0022】
電圧値算出部50は、記憶部から出力された電極間電圧値のうち、例えば、電圧値取得時間の開始時(電極間電圧値の取得開始時及び直流電圧印加部20における直流電圧の印加開始時)から所定時間経過以降の複数の電極間電圧値の平均値を算出することにより電圧値を導出する。電圧値算出部50は、導出した電圧値を導電率算出部60に出力する。
【0023】
導電率算出部60は、電圧値算出部50から出力された電圧値に基づいて液体の導電率を算出し(ステップS106)、処理を終了する。
【0024】
<作用・効果>
本実施形態における液体状態検出センサ1では、電圧値取得部40は、電圧値取得時間における電極間電圧値を所定間隔ごとに取得する。電圧値算出部50は、電圧値取得部40において取得された電極間電圧値のうち、電圧値取得時間の開始時から所定時間経過以降の複数の電極間電圧値から電圧値を算出し、算出した電圧値を導電率算出部60に出力する。導電率算出部60は、電圧値算出部50から出力された電圧値に基づいて液体の導電率を算出する。すなわち、導電率算出部60は、電圧値取得部40において取得された電極間電圧値のうち、電圧値取得時間の開始時から所定時間経過以降の複数の電極間電圧値に基づいて液体の導電率を算出する。そのため、導電率算出部60は、電圧値取得部40により取得された電極間電圧値のうち、少なくとも、電極間電圧値が最も不安定となる電圧値取得時間の開始直後(電極部10への交流電圧の印加直後)を除く電極間電圧値に基づいて液体の導電率を算出する。これにより、液体状態検出センサ1では、電極間電圧値の精度の悪化を抑制し、精度の高い導電率を得ることによって、液体の状態を的確に検出することができる。
【0025】
また、本実施形態の液体状態検出センサ1において、所定時間は、電圧値取得時間の開始時から電極間電圧値が安定するまでの時間である。つまり、導電率算出部60は、安定した電極間電圧値に基づいて液体の導電率を算出することから、液体状態検出センサ1では、電極間電圧値の精度の悪化を抑制し、精度の高い導電率を得ることにより、液体の状態を的確に検出することができる。
【0026】
また、本実施形態における液体状態検出センサ1の導電率算出部60は、電圧値取得時間の開始時から所定時間経過以降の電極間電圧値の平均値に基づいて液体の導電率を算出する。つまり、導電率算出部60は、電圧値取得部40により取得された電極間電圧値のうち、少なくとも、電極間電圧値が最も不安定となる電圧値取得時間の開始直後を除く電極間電圧値の平均値(電圧値)に基づいて液体の導電率を算出する。そのため、電極間電圧値の精度の悪化を抑制し、精度の高い導電率を得ることにより、液体の状態を的確に検出することができる。
【0027】
なお、本実施形態における液体状態検出センサ1の処理を実行した場合としない場合とでは、実験結果として、電極間電圧値において、約10mVの差が生じることが判明している。この電極間電圧値の差は、導電率に換算すると、約380pS/mに相当する。ここで、液体状態検出センサの導電率に関する目標精度を±30pS/m以下とすると、液体状態検出センサ1の処理を実行しない場合の精度は、上記目標精度から大きく逸脱する精度となり、その影響度は多大である。
【0028】
<第2実施形態>
図4図5を用いて、第2実施形態に係る液体状態検出センサ1Aについて説明する。第1実施形態では、「所定時間」を「電圧値取得時間の開始時から電極間電圧値が安定するまでの時間」とし、予め定められた時間としていた。本実施形態では、電圧値取得部40から得られる電極間電圧に基づいて、適宜、「所定時間」を定める例について説明する。
【0029】
<液体状態検出センサ1Aの電気的構成>
本実施形態における液体状態検出センサ1Aは、図4に示すように、電極部10と、直流電圧印加部20と、電圧値取得時間設定部30と、電圧値取得部40と、電圧値算出部50Aと、導電率算出部60と、所定時間判定部70と、を備える。なお、第1実施形態と同様の符号を付す構成要素については、同様の機能を有することから、その詳細な説明については省略する。
【0030】
電圧値算出部50Aは、電圧値取得部40において取得された電極間電圧値のうち、後述するように所定時間判定部70により判定された所定時間経過以降の複数の電極間電圧値に基づいて電圧値を算出し、算出した電圧値を導電率算出部60に出力する。
【0031】
所定時間判定部70は、電圧値取得部40において取得された電極間電圧値に基づいて、電圧値取得時間の開始時から電極間電圧値が安定するまでの時間である所定時間を判定する。なお、具体的な判定方法については、後述する。
【0032】
<液体状態検出センサ1Aの所定時間判定処理>
図5を用いて、本実施形態における液体状態検出センサ1Aの所定時間判定処理について説明する。
【0033】
所定時間判定部70は、電圧値取得部40において取得された電極間電圧値を図示しない記憶部に入力順に格納する(ステップS201)。
【0034】
所定時間判定部70は、N回目とN+1回目(Nの初期値は1)に記憶部に格納した電極間電圧値の差である差分値を算出し、格納部に格納する(ステップS202)。
【0035】
そして、所定時間判定部70は、格納した差分値が所定の範囲内であるか否かを判定する(ステップS203)。ここで、「所定の範囲」とは、例えば、図3に示すように、電極間電圧値が想定される減衰挙動をたどる場合の減衰量の範囲をいう。つまり、差分値が所定の範囲よりも大きい時には、入力した電極間電圧値がゼロデータである。つまり、電圧値取得部40において取得される電極間電圧値の差分値が所定の範囲よりも大きい時には、電圧値取得部40において取得される電極間電圧値が安定しておらず、電圧値取得時間の開始時から電極間電圧値が安定するまでの時間である所定時間が経過していないものと判断する。所定時間判定部70が格納した差分値が所定の範囲内ではないと判定すると(ステップS203の「NO」)、NをN+1とする処理を行って(ステップS204)、処理をステップS202に遷移させる。
【0036】
一方で、所定時間判定部70が算出した差分値が所定の範囲内であると判定すると(ステップS203の「YES」)、電圧値算出部50Aは、電圧値取得時間の開始時から電極間電圧値が安定するまでの時間である所定時間が経過したと判定する。そして、電圧値算出部50Aは、所定時間以降に入力した電極間電圧値、つまり、差分値の算出に用いた電極間電圧値よりも後に記憶部に格納された電極間電圧値の平均値を算出し、算出した平均値を電圧値として、導電率算出部60に出力する(ステップS205)。
【0037】
導電率算出部60は、電圧値算出部50Aから出力された電圧値に基づいて液体の導電率を算出し、処理を終了する。
【0038】
<作用・効果>
本実施形態では、電圧値取得部40から得られる電極間電圧値に基づいて、所定時間判定部70が、適宜、「所定時間」を判定する。具体的には、所定時間判定部70は、電圧値取得部40から得られる電極間電圧が安定しているのか否かを判断し、「所定時間」が経過したかどうかを判定する。そのため、導電率算出部60における導電率の算出精度を維持しつつ、導電率の算出までの時間を短縮させることができるため、短時間で液体の状態を的確に検出することができる。
【0039】
なお、所定時間判定部70が判定する所定時間によっては、電圧値算出部50Aが電圧値の算出に用いる電極間電圧値の数が少なくなる可能性もある。このような場合には、CPU100Aが能動的に電圧値取得時間を変化させてもよい。
【0040】
<第3実施形態>
図6図7を用いて、第3実施形態に係る液体状態検出センサ1Bについて説明する。第1実施形態の電圧値取得部40においては、例えば、外乱ノイズ等の影響により、所定時間以降であっても、稀に、取得した電極間電圧値が異常値となる場合がある。このような異常値を含めたまま、他の電極間電圧値とともに平均値を求めても、真値との誤差が大きく、精度の高い導電率を得ることはできない。そのため、本実施形態においては、異常に高い電極間電圧値を検出し、これを除去することにより、精度の高い導電率を得る。
【0041】
<液体状態検出センサ1Bの電気的構成>
本実施形態に係る液体状態検出センサ1Bは、図6に示すように、電極部10と、直流電圧印加部20と、電圧値取得時間設定部30と、電圧値取得部40と、電圧値算出部50Bと、導電率算出部60と、異常電圧値検出部80と、を備える。なお、第1実施形態あるいは第2実施形態と同様の符号を付す構成要素については、同様の機能を有することから、その詳細な説明については省略する。
【0042】
電圧値算出部50Bは、電圧値取得部40において取得された電極間電圧値のうち、電圧値取得時間の開始時から所定時間経過以降のものであって後述するように異常電圧値検出部80において検出された異常電圧値を除去した電極間電圧値から電圧値を算出する。電圧値算出部50Bは、算出した電圧値を導電率算出部60に出力する。
【0043】
異常電圧値検出部80は、電圧値取得部40が取得する電極間電圧値のうち、予め定めた電圧値の閾値を超える電極間電圧値を示すものを検出し、検出した電極間電圧値を除外した電極間電圧値を電圧値算出部50Bに出力する。なお、具体的な検出方法については後述する。
【0044】
なお、異常電圧値検出部80は、電圧値取得部40が取得する電極間電圧値のうち、予め定めた電圧値の閾値を超える電極間電圧値を示すものを検出し、その検出結果を電圧値算出部50Bに出力してもよい。そして、電圧値算出部50Bは、異常電圧値検出部80から出力された検出結果と、電圧値取得部40から入力した電極間電圧値とから、異常値である電極間電圧値を除く電極間電圧値の平均値(電圧値)を求めて導電率算出部60に出力してもよい。
【0045】
<液体状態検出センサ1Bの異常電圧値検出処理>
図7を用いて、本実施形態に係る液体状態検出センサ1Bの異常電圧値検出処理について説明する。
【0046】
異常電圧値検出部80は、電圧値取得部40において取得された電極間電圧値を入力する(ステップS301)。
【0047】
異常電圧値検出部80は、電圧値取得部40から出力された電極間電圧値と閾値とを比較する(ステップS302)。
【0048】
そして、異常電圧値検出部80は、電圧値取得部40から出力された電極間電圧値が閾値よりも小さいと判定すると(ステップS302の「NO」)、当該電極間電圧値を記憶部に格納する(ステップS303)。一方で、異常電圧値検出部80は、電圧値取得部40から入力した電極間電圧値が閾値よりも大きいと判定すると(ステップS302の「YES」)、当該電極間電圧値を記憶部に格納せずに、処理をステップS304に遷移させる。
【0049】
異常電圧値検出部80は、電圧値取得時間において電圧値取得部40から出力された全ての電極間電圧値に対してステップS302の判定をしたか否かを判定する(ステップS304)。そして、異常電圧値検出部80が、電圧値取得時間における全ての電極間電圧値に対してステップS302の判定をしていないと判定すると(ステップS304の「NO」)、処理をステップS301に戻す。
【0050】
一方で、異常電圧値検出部80が、電圧値取得時間における全ての電極間電圧値に対してステップS302の判定をしたと判定すると(ステップS304の「YES」)、記憶部に格納した電極間電圧値を電圧値算出部50Bに出力し(ステップS305)、処理を終了する。
【0051】
なお、例えば、異常電圧値検出部80が、電圧値取得部40から出力された電極間電圧値が閾値よりも大きいと判定すると、当該電極間電圧値にフラグを付加して記憶部に格納してもよい。そして、電圧値算出部50Bにおいて、フラグが付加された電極間電圧値を除く記憶部に格納された電極間電圧値に基づいて、電圧値を算出するようにしてもよい。
【0052】
<作用・効果>
本実施形態では、異常電圧値検出部80は、電圧値取得部40が取得する電極間電圧値のうち、予め定めた電圧値の閾値を超える電極間電圧値を示すものを検出し、検出した電極間電圧値を除外した電極間電圧値を電圧値算出部50Bに出力する。そして、電圧値算出部50Bは、異常電圧値検出部80から出力された電極間電圧値のうち、電圧値取得時間の開始時から所定時間を経過した以降の複数の電極間電圧値に基づいて電圧値を算出し、算出した電圧値を導電率算出部60に出力する。そのため、導電率算出部60における導電率の算出に用いられる電極間電圧値の精度が向上することから、液体状態検出センサ1Bでは、電極間電圧値の精度の悪化を抑制し、精度の高い導電率を得ることにより、液体の状態を的確に検出することができる。
【0053】
なお、異常電圧値検出部80は、電圧値取得部40が取得する電極間電圧値のうち、予め定めた電圧値の閾値を超える電極間電圧値を示すものを検出し、検出した電極間電圧値を除外することから、電圧値算出部50Bが算出に用いる電極間電圧値の数が少なくなる可能性もある。このような場合には、CPU100Bが能動的に電圧値取得時間を変化させてもよい。
【0054】
<変形例1>
第1実施形態から第3実施形態における電圧値算出部50、50A、50Bでは、電圧値取得部40において取得された電極間電圧値のうち、電圧値取得時間の開始時から所定時間経過以降の複数の電極間電圧値の単純平均を算出することにより、導電率算出部60に出力する電圧値を算出する。しかしながら、外乱等の影響がなければ、電極間電圧を示す曲線は、時間の経過とともに減衰し、その後、安定する。つまり、電極部10への直流電圧印加後の経過時間が長いほど、その時点における電極間電圧値が真値に近い。そのため、電圧値取得時間の終了直前に取得された電極間電圧値を基準とし、その差分値に基づく重みを算出し、所定時間経過以降の複数の電極間電圧値に対して加重平均を算出することにより、導電率算出部60に出力する電極間電圧値を算出してもよい。このように電極間電圧値を算出することによって、導電率算出部60における導電率の算出に用いられる電極間電圧値の精度を向上させ、精度の高い導電率を得ることにより、液体状態検出センサ1,1A,1Bにおいて液体の状態を的確に検出することができる。なお、外乱等により、電極間電圧を示す曲線を逸脱する電極間電圧値を検出する機能を設け、検出した電極間電圧値を排除する処理等を実行することが好ましい。
【0055】
<変形例2>
第1実施形態から第3実施形態における電圧値算出部50、50A、50Bでは、任意の電圧値取得時間内に電圧値取得部40において取得された電極間電圧値のうち、電圧値取得時間の開始時から所定時間経過以降の複数の電極間電圧値により、導電率算出部60に出力する電圧値を算出していた。しかしながら、例えば、任意の電圧値取得時間内に算出された導電率算出部60に出力する電圧値と当該任意の電圧値取得時間より前の電圧値取得時間内に算出された導電率算出部60に出力する電圧値とを用いて、例えば、平均化処理を実行した後に、導電率算出部60に出力する電圧値を算出するようにしてもよい。このように、電圧値を算出することによって、導電率算出部60における導電率の算出に用いられる電極間電圧値の精度を向上させ、精度の高い導電率を得ることにより、液体の状態を的確に検出することができる。
【0056】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、および効果をまとめて説明する。
【0057】
液体の状態を検出する液体状態検出センサ1,1A,1Bは、液体の流路に配置され、互いに対向して設けられた一対の電極を有する電極部10と、電極部10の一対の電極の電極間電圧値を取得する時間の長さである電圧値取得時間を設定する電圧値取得時間設定部30と、電圧値取得時間における電極間電圧値を取得する電圧値取得部40と、電圧値取得部40により取得された電極間電圧値のうち、電圧値取得時間の開始時から所定時間経過以降の電極間電圧値に基づいて液体の導電率を算出する導電率算出部60と、を備える。
【0058】
この構成では、電圧値取得部40は、電圧値取得時間における電極部10の一対の電極の電極間電圧値を取得する。導電率算出部60は、電圧値取得部40により取得された電極間電圧値のうち、電圧値取得時間の開始時(電極間電圧値の取得開始)から所定時間経過以降の電極間電圧値に基づいて液体の導電率を算出する。言い換えれば、導電率算出部60は、電圧値取得部40により取得された電極間電圧値のうち、電極部10への電圧(直流電圧及び交流電圧)の印加時から所定時間経過以降の電極間電圧値に基づいて液体の導電率を算出する。そのため、導電率算出部60は、電圧値取得部40により取得された電極間電圧値のうち、少なくとも、電極間電圧値が最も不安定となる電圧値取得時間の開始直後(電極部10への電圧の印加直後)の電極間電圧値を除く電極間電圧値に基づいて液体の導電率を算出する。これにより、液体状態検出センサ1,1A,1Bでは、電極間電圧値の精度の悪化を抑制し、精度の高い導電率を得ることにより、液体の状態を的確に検出することができる。
【0059】
液体状態検出センサ1,1A,1Bでは、所定時間は、電圧値取得時間の開始時から電極間電圧値が安定するまでの時間である。
【0060】
この構成では、導電率算出部60は、安定した電極間電圧値に基づいて液体の導電率を算出する。そのため、液体状態検出センサ1,1A,1Bでは、電極間電圧値の精度の悪化を抑制し、精度の高い導電率を得ることにより、液体の状態を的確に検出することができる。
【0061】
液体状態検出センサ1,1A,1Bでは、導電率算出部60は、電圧値取得時間における所定時間経過以降の電極間電圧値の平均値に基づいて液体の前記導電率を算出する。
【0062】
この構成では、導電率算出部60は、電圧値取得部40により取得された電極間電圧値のうち、少なくとも、電極間電圧値が最も不安定となる電圧値取得時間の開始直後の電極間電圧値を除く電極間電圧値の平均値に基づいて液体の導電率を算出する。言い換えれば、電極間電圧値が安定した後において取得された十分な数の電極間電圧値の平均値に基づいて、液体の導電率を算出することから、より真値に近い導電率を短時間で算出することが可能となる。そのため、液体状態検出センサ1,1A,1Bでは、電極間電圧値の精度の悪化を抑制し、精度の高い導電率を得ることにより、液体の状態を的確に検出することができる。
【0063】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一つを示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0064】
本願は、2020年12月28日に日本国特許庁に出願された特願2020-218839、及び2021年2月26日に日本国特許庁に出願された特願2021-029516に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7