(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-07-31
(45)【発行日】2025-08-08
(54)【発明の名称】光電変換素子、光電変換モジュールおよび光電変換システム
(51)【国際特許分類】
H10K 30/50 20230101AFI20250801BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20250801BHJP
H10K 30/88 20230101ALI20250801BHJP
H10K 39/10 20230101ALI20250801BHJP
【FI】
H10K30/50
H10K30/40
H10K30/88
H10K39/10
(21)【出願番号】P 2024029926
(22)【出願日】2024-02-29
【審査請求日】2025-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】514244170
【氏名又は名称】シャープエネルギーソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】木本 賢治
【審査官】丸橋 凌
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2022-0162951(KR,A)
【文献】特開2019-169615(JP,A)
【文献】特開2022-176440(JP,A)
【文献】特開2020-053616(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0049396(US,A1)
【文献】特表2015-515088(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第117377333(CN,A)
【文献】特開2021-129102(JP,A)
【文献】国際公開第2023/132134(WO,A1)
【文献】国際公開第2023/132136(WO,A1)
【文献】特開2014-225331(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 30/00-39/18
H10F 19/80-19/85
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、
前記基体上に設けられ、ペロブスカイト化合物を含有する光電変換層を含む光電変換部と、
前記基体上で、前記光電変換部が存在しない領域上に設けられた封止層と、
前記基体と前記封止層との間に形成される密着補助層とを有
し、
前記密着補助層は、複数の離散した島状に設けられることを特徴とする光電変換素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光電変換素子であって、
前記密着補助層は、前記光電変換層よりも基板面に平行方向の電気抵抗が高い層であることを特徴とする光電変換素子。
【請求項3】
請求項1に記載の光電変換素子であって、
前記密着補助層は、前記封止層と接触して設けられることを特徴とする光電変換素子。
【請求項4】
請求項1に記載の光電変換素子であって、
前記密着補助層は、不活性層であることを特徴とする光電変換素子。
【請求項5】
請求項1に記載の光電変換素子であって、
前記密着補助層は、非ペロブスカイト構造であることを特徴とする光電変換素子。
【請求項6】
請求項1に記載の光電変換素子であって、
前記密着補助層は、アモルファスであることを特徴とする光電変換素子。
【請求項7】
請求項1に記載の光電変換素子であって、
前記密着補助層は、無機酸化物または無機窒化物の少なくとも1つを含むことを特徴とする光電変換素子。
【請求項8】
請求項1に記載の光電変換素子であって、
前記密着補助層は、酸化シリコンまたは窒化シリコンの少なくとも1つを含むことを特徴とする光電変換素子。
【請求項9】
請求項1に記載の光電変換素子であって、
前記密着補助層は、ヨウ化鉛、臭化鉛、ヨウ化スズおよび臭化スズのうち、少なくとも1つを含むことを特徴とする光電変換素子。
【請求項10】
請求項1に記載の光電変換素子であって、
前記光電変換部は、電子輸送層および正孔輸送層のうち、少なくとも一方を有することを特徴とする光電変換素子。
【請求項11】
請求項10に記載の光電変換素子であって、
前記密着補助層は、前記電子輸送層
または前記正孔輸送層の
何れか一方に接して設けられることを特徴とする光電変換素子。
【請求項12】
請求項1から
11の何れか1項に記載の光電変換素子であって、
直列接続された複数の前記光電変換部を有する光電変換モジュールとして構成されるこ
とを特徴とする光電変換素子。
【請求項13】
請求項1から
11の何れか1項に記載の光電変換素子の一形態である光電変換モジュールであって、
直列接続された複数の光電変換部を有することを特徴とする光電変換モジュール。
【請求項14】
請求項
13に記載の光電変換モジュールと制御回路とを備えることを特徴とする光電変換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ペロブスカイト化合物を用いた光電変換素子、光電変換モジュールおよび光電変換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ペロブスカイト化合物を用いた光電変換層(有機活性層)を含む太陽電池(ペロブスカイト太陽電池)が注目されている。ペロブスカイト太陽電池は、光電変換層が外気や水分等に晒されることで性能が低下するため、光電変換層を含む光電変換部に対して封止を行う必要がある。特許文献1には、光電変換素子を無機材料で覆ったバリア層(封止層)を備えたペロブスカイト太陽電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バリア層は、光電変換素子または光電変換モジュールを封止するものであり、一般的には樹脂材料が望まれる。
【0005】
ペロブスカイト太陽電池における封止層は、上部基板と下部基板との間に形成されるが、基板(もしくは基板との間に存在する他の接触層)との密着性が低いと十分な封止性が得られず、電池性能の低下を招く虞がある。
【0006】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、封止層と他の接触層との密着性を向上させることのできる光電変換素子、光電変換モジュールおよび光電変換システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、次の光電変換素子、光電変換モジュールおよび光電変換システムを提供する。
【0008】
(1)光電変換素子
本開示の光電変換素子は、基体と、前記基体上に設けられ、ペロブスカイト化合物を含有する光電変換層を含む光電変換部と、前記基体上で、前記光電変換部が存在しない領域上に設けられた封止層と、前記基体と前記封止層との間に形成される密着補助層とを有することを特徴とする。
【0009】
光電変換素子において封止層および密着補助層は必須の構成であるが、封止層は1つの光電変換部に対して1つ有することを必要とするものではなく、複数の光電変換部を有する光電変換モジュール(詳細は下記)において1つの封止層を有することを許容する。すなわち、言い換えると、光電変換素子とは、少なくとも基体と、光電変換部と、封止層と、密着補助層を有するものを指し、複数の光電変換部を有する光電変換モジュールで封止層と密着補助層を共有するもの(例えば
図8に記載の光電変換モジュール)であっても、それは光電変換素子であり、かつ、光電変換素子の1形態である光電変換モジュールであると言うこともできる。尚、基体上とは、特に説明が無い限り、必ずしも基体に接することを必要とせず、基体より上方を含むことができる。すなわち、基体上とは、基体に接する基体の上方、または、基体に接しない基体の上方を意味する。本開示において、基体以外でも「~上」と言えば、同様のことを意味する。
【0010】
(2)光電変換モジュール
本開示の光電変換モジュールは、基体と、前記基体上に設けられ、ペロブスカイト化合物を含有する光電変換層を含む光電変換部と、前記基体上で、前記光電変換部が存在しない領域上に設けられた封止層と、前記基体と前記封止層との間に形成される密着補助層とを有す、上記光電変換素子において、光電変換部が複数あり、複数の光電変換部は直列接続されていることを特徴とする。
【0011】
すなわち、光電変換素子のうち、直列に接続された、複数の光電変換部を有するものを光電変換モジュールという。光電変換モジュールにおいては、複数の光電変換部で封止を共有することができる。すなわち、光電変換部毎に封止し、それを接続する必要はなく、例えば
図8に記載の光電変換モジュールのように、光電変換部が一定数接続された光電変換モジュールにおいてその一定数の光電変換部をまとめて封止を行なうことができる。
【0012】
(3)光電変換システム
本開示の光電変換システムは、上記記載の光電変換モジュールと制御回路とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本開示の光電変換素子、光電変換モジュールおよび光電変換システムは、封止層と他の接触層との密着性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態の光電変換素子の概略構成を示す断面図である。
【
図2】第1実施形態の光電変換素子における変形例を示す断面図である。
【
図3】第1実施形態の光電変換素子における他の変形例を示す断面図である。
【
図4】第1実施形態の光電変換素子におけるさらに他の変形例を示す断面図である。
【
図5】第2実施形態の光電変換素子の概略構成を示す断面図である。
【
図6】第3実施形態の光電変換素子の概略構成を示す断面図である。
【
図7】本開示に係る光電変換モジュールの平面図である。
【
図8】
図7に示す光電変換モジュールの断面図である。
【
図9】
図7に示す光電変換モジュールの回路図である。
【
図10】本開示に係る光電変換システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本開示の一実施形態を示すものであり、光電変換素子10の概略構成を示す断面図である。
【0016】
図1に示すように、光電変換素子10は、上部基板11および下部基板(基体)12を有しており、これらの基板間に光電変換部PEが挟持されている。
図1の光電変換部PEは、下部電極13、電子輸送層14、光電変換層15、正孔輸送層16、上部電極17がこの順で(
図1では下部基板12側から)積層されて構成されている。尚、積層順は必ずしもこの順(順構造型)である必要はなく、電子輸送層と正孔輸送層の順番を逆(逆構造型)にしてもよい。すなわち、正孔輸送側を下側に、電子輸送側を上側にしてもよい。本開示では、順構造型の電子輸送層として説明するが、矛盾しない限り、逆構造型の場合は正孔輸送層と置き換えることができる。
【0017】
尚、光電変換部とは、少なくとも光電変換層を有し、上部電極および下部電極を有してもよく、その光電変換層を平面視(基板の面に垂直な方向に沿って見たことを意味する、本開示で同様)した場合の光電変換層の存在する領域(上部電極および下部電極を有す場合は上部電極および下部電極との重畳領域)に存在する光電変換素子の構成(基板は除く)の部分のことを意味している。例えば、
図1から
図6の断面図に示すように、光電変換部PEで示す幅である光電変換層の幅より外の部分は光電変換部ではない。光電変換層は、光電変換素子の光電変換機能を担う部分として機能する部分を意味し、光電変換素子や光電変換モジュールを構成する部材との位置関係から理解できる。すなわち、光電変換部が存在しない領域とは、光電変換素子や光電変換モジュールの光電変換機能を担う光電変換層を平面視(基板の面に垂直な方向に沿って見たことを意味する、本開示で同様)した場合の領域以外の領域を意味することができる。尚、光電変換素子10は、必ず上部基板11または下部基板(基体)12を有している必要はなく、適宜一方を有さないこともできる。また、2つの基板の機能を担う別のものが代替する場合は両方とも有さないことができる。
【0018】
本実施形態では、光電変換素子10は下面側が受光面とされており、光電変換層15の下面側(光電変換層15より下面側も含む、本開示で同様)は透明となる。すなわち、本実施形態では電子輸送側(または負極側、本開示で同様)は透明となる。例えば、下部基板12は透明基板、下部電極13は透明電極となる。光電変換層15は、光を吸収することで光エネルギを電気エネルギに変換する活性層であり、ペロブスカイト化合物を含有している。尚、必ずしも下面側を受光面としなければならないものではなく、上面側を受光面としてもよく、その場合は光電変換層15の上面側(光電変換層15より上面側も含む、本開示で同様;本実施形態では正孔輸送側)を透明としてもよい。また、上面側と下面側とを共に受光面としてもよく、光電変換層15の下面側および光電変換層の上面側は透明となる。
【0019】
尚、透明または光透過性とは、光を透過することを意味するが、少しでも光を反射または吸収するものを除外するものではなく、光電変換素子10の受光面側に設けられ適切に光を透過できればよく、光電変換素子10の受光面側に設けられていることと同義と考えることができる。したがって、少なくとも光電変換素子10の受光面側に設けられていることをもって透明であるとすることができる。
【0020】
光電変換素子10において、光電変換部PEは、封止層18によって外気や水分が遮断される。封止層18は、上部基板11および下部基板12の基板間において光電変換部PEが存在しない領域上に設けられ、基板の面に垂直な方向に沿って見た平面視で光電変換部PEの周囲を囲うように形成される。また、封止層18と下部基板12との間には、不活性層19が設けられる。本実施形態では、光電変換部PEを形成する層のうち、下部電極13および電子輸送層14が光電変換部PEの領域外に拡がって下部基板12のほぼ全面に形成されており、不活性層19は、電子輸送層14に接して形成されている。光電変換素子10において、不活性層19は、封止層18と電子輸送層14との間の密着性を向上させるための密着補助層として機能する。
【0021】
尚、不活性とは、光を吸収して電子と正孔を発生させないまたは少なくとも効率的には発生させないものを意味する。例えば光電変換層15に用いたペロブスカイト化合物とは異なる。
【0022】
また、密着補助層とは、封止層18が他の材料と密着する部位に密着を補助する層として存在する不活性層19を含む層を意味する。例えば封止層18が他の材料と密着する部位に密着補助層が存在していることで、ペロブスカイト光電変換素子が商品化するに足る密着性を有する程度に密着を補助していればよい。すなわち、密着補助層の密着度合は、封止層18が他の材料と密着する部位に密着補助層が存在しているペロブスカイト光電変換素子が商品化に至っていれば足り、物性値の確認は要さない。
【0023】
以下、本実施形態の光電変換素子10の製造方法の一例について説明する。先ずは、下部基板12上への光電変換部PEの形成手順を説明する。
【0024】
下部基板12は、基板、基材、または基体などとも呼ばれ、それらと同じものとでき、それらを含むこともできる。下部基板12は、硬質、剛性の高いものでもよく、また、可撓性のあるもの、剛性の低いものでもよい。下部基板を受光面側とする場合は、下部基板12は、光透過性のある材料を用いることができる。例えばガラスを用いることができ、あるいは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド等の樹脂フィルムであってもよい。尚、上部基板17も本開示記載の下部基板12のさまざまな部材を用いることができる。ただし、下部基板12のみを受光面側とする場合は、上部基板17は、硬質、剛性の高いものでもよく、また、可撓性のあるもの、剛性の低いものであればよく、光透過性の有る材料を用いる必要はない。尚、両基板とも光透過性のある材料として光電変換素子10自体を光透過性のあるものとすることもできる。
【0025】
下部基板12上には、下部電極13を形成する。下部電極13としては、光透過性の導電性材料が用いられ、例えばITO、ZnO、FTO、SnO2、IZO等の透明導電材料を用いることができる。下部電極13は、スパッタ法、蒸着法等の公知の方法で下部基板12上に成膜すればよい。下部電極13の膜厚は、例えば、30nm以上1000nm以下とする。
【0026】
下部電極13上には、電子輸送層14を形成する。電子輸送層14は光電変換層15において発生した電子を輸送する機能を有する層である。尚、光電変換素子10が機能する限り、光電変換層15の負極側(光電変換層15より負極側を含む、本開示で同様)にある電子輸送層14が電子輸送する機能を有することは自明の理であり、確認は要さない。すなわち、光電変換素子10が光電変換素子として機能する限り、光電変換層15の負極側にある層を電子輸送層という。尚、負極側を電子輸送側と言い換えることもできる。電子輸送層14としては、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等を用いることができる。電子輸送層14は、スピンコート法、スパッタ法等の公知の方法で成膜すればよい。
【0027】
電子輸送層14上に、光電変換層15を形成する。光電変換層とは、光を電気に変換する層である。光電変換層15としては、例えば、ペロブスカイト化合物を用いることができる。光電変換層15は、スピンコート法、ダイコート法、インクジェット法等の公知の成膜方法で成膜すればよい。光電変換層15の層厚は、例えば、100nm以上1000nm以下とする。光電変換層15は、光電変換素子10が光電変換機能を有する限り、光電変換素子10が有しているのは当然の帰結である。したがって、光電変換素子10が光電変換機能を有する限り、適切な材料を有していれば、光電変換層15の存在を確認するために層自体の光電変換の機能を確認する必要はない。
【0028】
ペロブスカイト化合物は、
一般式:ABX3・・・(1)
で表される化合物で構成される。但し、それぞれの組成比は1:1:3であることが好ましいが、必ずしも1:1:3でなくてもよく、それぞれの元素の含有率が適宜上下してもよく、それぞれの構成元素が1種類である必要もなく、光電変換素子10が光電変換機能を有する限り説明したような構成の自由度を有すものである。一般式(1)中、Aは有機分子(有機基または有機カチオンを含む、本開示において同様。)または無機原子(無機カチオンを含む、本開示において同様。)またはそれらの組合せであり、Bは金属原子(金属カチオンを含む、本開示において同様。)であり、Xはハロゲン原子(ハロゲンアニオンを含む、本開示において同様。)である。一般式(1)中、3つのXは、互いに同一でも異なっていてもよい。ペロブスカイト化合物は光電変換層15に含まれることにより、光を吸収し電気に変換することが可能であり、そのことを合わせて考慮すべきであり、すなわちペロブスカイト化合物であることは、例えば、有機分子、金属原子およびハロゲン原子を有していることが分かればよい。さらに、ペロブスカイト化合物であることは、光電変換素子が光電変換機能を有する限りにおいて、A、BおよびXに該当する元素が検出されればよい。例えば、有機分子としては炭素、窒素、水素を含む分子が好適であり、それゆえ、炭素、窒素、水素、金属元素、および、ハロゲン元素が検出されればよい。または、ペロブスカイト化合物であることは、A、BおよびXを有していればよく、例えば、無機原子、金属原子およびハロゲン原子を有していることが分かればよい。さらに、ペロブスカイト化合物であることは、光電変換素子が光電変換機能を有する限りにおいて、A、BおよびXに該当する元素が検出されれば確認できる。例えば、無機原子としてはセシウムまたはルビジウムが好適であり、それゆえ、セシウムまたはルビジウム、金属元素 (好適には鉛、スズ)、および、ハロゲンが検出されればよい。また、ペロブスカイト化合物であることは、光電変換素子が光電変換機能を有するためには結晶構造を有していることは当然の帰結であることに基づき、結晶構造を有していることの確認を要するものではない。光電変換層にはペロブスカイト化合物以外を含むことを除外しない。
【0029】
層とは、特に言及しない限り、厚みや幅を規定するものではなく、パターン状または島状のものや厚みの異なる部分を有するものも含む。層とは、好適には略一定の厚みのあるものが望ましい。
【0030】
尚、特に言及しない限り、略または程度とは、製造誤差の幅を意味し、優先的には、その数値のプラス15%およびマイナス15%のばらつきを許容することを示す。
【0031】
一般式(1)中、Aで表される有機分子としては、例えば、アルキルアミン、アルキルアンモニウム、および含窒素複素環式化合物等を挙げることができる。ペロブスカイト化合物(1)において、Aで表される有機分子は、1種の有機分子のみであってもよく、2種以上の有機分子であってもよい。
【0032】
アルキルアミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン、トリヘキシルアミン、エチルメチルアミン、メチルプロピルアミン、ブチルメチルアミン、メチルペンチルアミン、ヘキシルメチルアミン、エチルプロピルアミン、およびエチルブチルアミン等を挙げることができる。
【0033】
アルキルアンモニウムは、前述のアルキルアミンのイオン化物である。アルキルアンモニウムとしては、例えば、メチルアンモニウム(CH3NH3)、エチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ペンチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、ジプロピルアンモニウム、ジブチルアンモニウム、ジペンチルアンモニウム、ジヘキシルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、トリペンチルアンモニウム、トリヘキシルアンモニウム、エチルメチルアンモニウム、メチルプロピルアンモニウム、ブチルメチルアンモニウム、メチルペンチルアンモニウム、ヘキシルメチルアンモニウム、エチルプロピルアンモニウム、およびエチルブチルアンモニウム等を挙げることができる。
【0034】
含窒素複素環式化合物としては、例えば、イミダゾール、アゾール、ピロール、アジリジン、アジリン、アゼチジン、アゼト、アゾール、イミダゾリン、およびカルバゾール等を挙げることができる。含窒素複素環式化合物は、イオン化物であってもよい。イオン化物である含窒素複素環式化合物としては、フェネチルアンモニウムが好ましい。
【0035】
一般式(1)中、Aで表される有機分子としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、ブチルアンモニウム、ペンチルアンモニウム、ヘキシルアンモニウムまたはフェネチルアンモニウムが好ましく、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、またはプロピルアンモニウムがより好ましく、メチルアンモニウムがさらに好ましい。
【0036】
一般式(1)中、Bで表される金属原子としては、例えば、鉛、スズ、亜鉛、チタン、アンチモン、ビスマス、ニッケル、鉄、コバルト、銀、銅、ガリウム、ゲルマニウム、マグネシウム、カルシウム、インジウム、アルミニウム、マンガン、クロム、モリブデン、およびユーロピウム等を挙げることができる。ペロブスカイト化合物において、Bで表される金属原子は、1種の金属原子のみであってもよく、2種以上の金属原子であってもよい。ペロブスカイト化合物の光吸収特性および電荷発生特性を向上させる観点から、Bで表される金属原子としては、鉛原子またはスズ原子が好ましい。鉛を削減する観点からはスズ原子が好ましい。
【0037】
また、一般式(1)中、Xで表されるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、およびヨウ素原子等、並びに、カルコゲン原子としては、例えば酸素原子、硫黄原子、セレン原子およびテルル原子を挙げることができる。ペロブスカイト化合物において、Xで表されるハロゲン原子またはカルコゲン原子は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。Xで表されるハロゲン原子としては、ペロブスカイト化合物が広い波長帯の光を利用できるようにする観点から、ヨウ素原子が好ましい。詳しくは、3つのXのうち、少なくとも1つのXがヨウ素原子を表すことが好ましく、3つのXがヨウ素原子を表すことがより好ましい。
【0038】
光電変換層15に含まれるペロブスカイト化合物は、一般式(1)中、Aとしては、セシウム、ルビジウム、メチルアンモニウム、 ホルムアミジニウムからなる群から選ばれる何れか1つ以上であることが好ましい。また、一般式(1)中、Bとしては、鉛、スズからなる群から選ばれる何れか1つ以上であることが好ましい。また、一般式(1)中、Cとしては、ヨウ素、臭素、塩素からなる群から選ばれる何れか1つ以上であることが好ましい。
【0039】
光電変換層15上には、正孔輸送層16を形成する。正孔輸送層16は、正孔を移動させる機能を有する層である。尚、光電変換素子10が機能する限り、光電変換層15の正極側(光電変換層より正極側も含む、本開示で同様)にある正孔輸送層16が正孔輸送する機能を有することは自明の理であり、確認は要さない。すなわち、光電変換素子10が機能する限り、光電変換層15の正極側にある層を正孔輸送層という。尚、正極側を正孔輸送側と言い換えてもよい。正孔輸送層16としては、例えば、spiro-OMeTAD(2,2',7,7'-Tetrakis(N,N-di-p-methoxyphenylamino)-9,9'-spirobifluorene)、PTAA(Poly[bis(4-phenyl)(2,4,6-triMethylphenyl)amine])、P3HT(Poly(3-hexylthiophene-2,5-diyl))、poly-TPD(Poly[N,N'-bis(4-butylphenyl)-N,N'-bis(phenyl)-benzidine])、PEDOT(Poly(3,4-EthyleneDiOxyThiophene)):PSS(Poly(4-StyreneSulfonate))等を用いることができる。正孔輸送層16は、スピンコート法、ダイコート法、インクジェット法等の公知の成膜方法で成膜すればよい。正孔輸送層16の層厚は、例えば、40nm以上600nm以下とする。また、光電変換素子10の耐久性を向上させるために、正孔輸送層16として無機材料を用いることも好ましく、例えば、酸化ニッケル、酸化銅等を用いてもよい。
【0040】
正孔輸送層16上には、上部電極17を形成する。上部電極17は、Au、Ag、Cu、Alの何れか1つ以上を含む金属または合金を含むことが好ましい。あるいは、上部電極17として、ITO、ZnO、FTO、SnO2、IZO等の透明導電材料を用いてもよい。上部電極17は、蒸着法、スパッタ法、スピンコート法、ダイコート法、インクジェット法等の公知の方法で成膜すればよい。上部電極17の膜厚は、例えば、50nm以上300nm以下とする。また、上部電極17は、グラファイト、グラフェンや、カーボンナノワイヤ―、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、カーボンブラックなどの導電性を有する材料を用いることができる。材料としては、基本的に導電性を有するものであれば適用を除外するものではない。
【0041】
次に、下部基板12の外周領域(光電変換部PE以外の領域)において、ウェットエッチング法、ドライエッチング法、レーザースクライブ法、またはメカニカルスクライブ法等により、光電変換層15から上部電極17までの積層部分をエッチング除去することにより、光電変換部PEをパターニングする。このとき、エッチングされた領域では、電子輸送層14の少なくとも一部が露出する。尚、このときに下部電極13および電子輸送層14を併せてエッチングしてもよく、その場合は下部基板12の少なくとも一部が露出する。
【0042】
次に、光電変換部PEの周囲における封止層18および不活性層19の形成手順を説明する。光電変換部PEの周囲領域において、上記エッチングにより露出した電子輸送層14上には、不活性層19を形成する。さらに、不活性層19上には、封止層18を形成する。封止層18は、例えば、UV硬化樹脂、熱硬化樹脂、polyisobutylene等を用いることができる。
【0043】
その後、下部基板12と上部基板11とで光電変換部PEを挟み込むように、封止層18上に上部基板11を設ける。これにより、光電変換部PEが、下部基板12、封止層18、上部基板11等によって囲まれ、外部から隔絶される(封止される)。
【0044】
本実施形態の光電変換素子10では、封止層18と電子輸送層14との間に不活性層19を形成することにより、封止層18と電子輸送層14との間の密着性(接合強度)が向上し、光電変換素子10の耐久性が向上する。不活性層19は、好適には以下のような層として形成することができる。
・不活性層19は光電変換層15よりも基板面に平行方向の電気抵抗が高いことが好ましい。本開示において、特に言及しない限り、「電気抵抗が高い」とは「基板面に平行方向の電気抵抗が高い」を意味する。これにより、不活性層19は、光電変換部PEに対して外部との絶縁性を高めることができる。また、不活性層19は、光照射下において、光電変換層15よりも電気抵抗が高いことがさらに好ましい。これにより、不活性層19は、光照射下においても、光電変換部PEに対して外部との絶縁性を高めることができる。また、不活性層19は光電変換層15よりも電気抵抗率が高い物質を含むことが好ましい。また、不活性層19は光電変換層15よりも光照射下における電気抵抗率が高い物質を含むことがさらに好ましい。また、不活性層19は光電変換層15よりも電気抵抗率が高い物質からなることが好ましい。また、不活性層19は光電変換層15よりも光照射下における電気抵抗率が高い物質からなることがさらに好ましい。また、不活性層19は、絶縁体を含むことが好ましい。また、不活性層19は、絶縁体からなることがさらに好ましい。
・不活性層19は、例えば、下部基板12の外周領域をエッチングした後に、ヨウ化鉛を蒸着法によって形成することができる。
・不活性層19は、不連続な島状に形成されることが好ましい。例えば、スプレー法により前駆体溶液を吹き付けることにより、不連続な島状に形成することができる。
・不活性層19は、非ペロブスカイト構造であることが好ましい。この場合、不活性層19の電気抵抗が高くなりやすいため、外部との絶縁がとりやすい。尚、非ペロブスカイト構造とは、ペロブスカイト化合物とは異なる結晶構造を意味し、アモルファスも含む。
・不活性層19は、アモルファスであることが好ましい。この場合、不活性層19の電気抵抗が高くなりやすいため、外部との絶縁がとりやすい。
・不活性層19は、無機酸化物または無機窒化物の少なくとも1つを含んでいてもよい。不活性層19は、無機酸化物、無機窒化物、または、無機酸窒化物であってもよい。
・不活性層19は、酸化シリコンまたは窒化シリコンの少なくとも1つを含んでいてもよい。
・不活性層19は、酸化シリコン、窒化シリコン、または、酸窒化シリコンであってもよい。この場合、不活性層19は、例えばスパッタ法、CVD法等で形成することができる。
・不活性層19は、ヨウ化鉛、臭化鉛、ヨウ化スズおよび臭化スズのうち、少なくとも1つを含んでいてもよい。また、不活性層19は、ヨウ化鉛、臭化鉛、ヨウ化スズまたは臭化スズであってもよい。この場合、不活性層は、例えば、蒸着法、スプレー法等によって形成することができる。
【0045】
図2は、本実施形態に係る光電変換素子10の変形例を示す断面図である。
図2に示すように、封止層18は、上部基板11および下部基板12の基板間を隙間なく充填するように形成されてもよい。すなわち、封止層18は、光電変換部PEの表面全体を覆うように形成されてもよい。この場合、不活性層19は、光電変換部PEの周囲領域全体に形成されてもよく、光電変換部PEの周囲領域の一部に形成されていてもよい。尚、光電変換素子10が光電変換モジュール等で光電変換部PE以外にも両基板間の構成を有するような場合(例えば、
図8に示すような切込み箇所に対応する領域P1,P2,P3等を有するような場合)は、封止層18が上部基板11および下部基板12の基板間を隙間なく充填する場合であっても、必ずしも封止層18は、光電変換部PEの表面全体を直接接する形で覆わず、光電変換部PE以外の構成を含めて覆うこととなる。
【0046】
図3は、本実施形態に係る光電変換素子10の他の変形例を示す断面図である。
図3に示すように、光電変換部PEにおいて、下部電極13、電子輸送層14、光電変換層15、正孔輸送層16および上部電極17は、平面視で全て同領域にパターニングされていてもよい。すなわち、下部電極13および電子輸送層14は、
図1の例のように光電変換部PEの領域外に拡がって形成されている必要は無い。この場合、不活性層19は、下部電極13に接して形成されている。
【0047】
尚、
図1の例のように、下部電極13および電子輸送層14を光電変換部PEの領域外に拡げて形成する場合には、下部電極13および電子輸送層14のパターニングが不要となることから、光電変換素子10の製造工程を簡略化でき、製造コストも低減できる。但し、この場合の電子輸送層14は、光電変換部PEの素子性能を向上させる観点から材料が選択される必要があり、封止層18との密着性を高めるための材料選択の自由度が無くなる。したがって、電子輸送層14と封止層18との間に不活性層19を介在させて封止層18の密着性を向上させる本開示の構成を適用することが有効である。
【0048】
図4は、本実施形態に係る光電変換素子10のさらに他の変形例を示す断面図である。
図4に示すように、不活性層19は、封止層18と下部基板12との間だけでなく、封止層18と上部基板11との間にも設けられてもよい。但し、本実施形態では、上部基板11は、電子輸送層14(あるいは第3実施形態における正孔輸送層16)や透明基板とされる下部基板12に比べて材料選択の自由度が高い。このため、上部基板11はそれ自体が封止層18との密着性が高い材料とすることも容易であり、封止層18と上部基板11との間では不活性層19を省略することも可能である。
【0049】
〔第2実施形態〕
図5は、本実施形態の光電変換素子10の概略構成を示す断面図である。
図5に示すように、不活性層19は、均一の厚みに成膜された層ではなく、複数の離散した島状に形成されていてもよい。それ以外は、変形例も含めて第1実施形態と同様の構成とすることができる。
【0050】
このように不活性層19を島状に形成した場合、不活性層19と封止層18との接触面積が大きくなり、封止層18と下部基板12との間の密着性(接合強度)をより向上させることができる。また、不活性層19が離散的に形成されることで、光電変換部PEと外部との絶縁性をより高めることができる。
【0051】
〔第3実施形態〕
図6は、本実施形態の光電変換素子10の概略構成を示す断面図である。
図6に示す光電変換素子10は、
図1に示す光電変換素子10に対して電子輸送層14および正孔輸送層16の互いの位置が入れ替わった構成である。すなわち、光電変換部PEでは、下部電極13と光電変換層15との間に正孔輸送層16が形成され、上部電極17と光電変換層15との間に電子輸送層14が形成されてもよい。それ以外は、変形例も含めて第1実施形態と同様の構成とすることができる。
【0052】
また、光電変換部PEにおいて電子輸送層14および正孔輸送層16の両方が備えられることも必須ではなく、光電変換部PEには電子輸送層14および正孔輸送層16の何れか一方のみが含まれていてもよい。あるいは、光電変換部PEにおいて電子輸送層14および正孔輸送層16の両方が省略されていてもよい。
【0053】
尚、光電変換素子10に電子輸送層14または正孔輸送層16を設け、その電子輸送層14または正孔輸送層16が不活性層19と下部基板12との間に存在する層である場合には、無機材料で形成されることが好ましい。
【0054】
〔第4実施形態〕
本実施形態では、本開示の光電変換モジュールおよび光電変換システムについて説明する。
図7は、本開示に係る光電変換モジュール100において、上部基板11を省略した状態の平面図である。
図8は、
図7に示す光電変換モジュール100の断面VIII-VIIIにおける断面図である。但し、
図8では上部基板11を省略していない。
【0055】
光電変換モジュール100は、光電変換素子10のうち、直列に接続された複数の光電変換部PEを有するものを指す。すなわち、光電変換モジュール100は、光電変換素子10の一形態である。光電変換モジュール100において、封止層18は複数の光電変換部PEに対して共通して設けられる。また、光電変換モジュール100は、第1~第3実施形態で説明した何れかの光電変換素子10を適用可能であり、
図8は、
図1の光電変換素子10を適用した光電変換モジュール100を例示している。
【0056】
光電変換モジュール100は、
図7に示すように、いくつかの切込みによってパターニングされ、これらの切込み箇所に対応する領域P1,P2,P3を有する。
図7では、光電変換部PEが備える上部電極17と、下部電極13(または電子輸送層14)とが表面に存在している。
【0057】
図8に示すように、領域P1における切込みは、下部電極13をエッチング除去して形成されるものであり、隣り合う2つの光電変換部PE(例えば、
図8における光電変換素部PEa,PEb)の下部電極13を分離している。
【0058】
領域P2における切込みは、電子輸送層14、光電変換層15および正孔輸送層16をエッチング除去して形成されるものであり、隣り合う2つの光電変換部PE(例えば
図8における光電変換部PEa,PEb)を電気接続するために設けられる。すなわち、領域P2では、形成された切込みに上部電極17の材料が充填されることで、一方の光電変換部PE(例えば光電変換部PEa)の上部電極17と他方の光電変換部PE(例えば光電変換部PEb)の下部電極13とが接続される。
【0059】
領域P3における切込みは、光電変換層15、正孔輸送層16および上部電極17をパターニングして形成されるものであり、隣り合う2つの光電変換部PE(例えば、
図8における光電変換部PEa,PEb)の上部電極17の分離のために設けられる。尚、
図8の領域P3では、形成された切込みは、光電変換層15までをエッチング除去しており、領域P3の表面では電子輸送層14が露出している。但し、領域P3では、少なくとも上部電極17が除去されていればよく、正孔輸送層16も除去されていることがより好ましいが、光電変換層15は必ずしも除去されなくてもよい。つまり、光電変換層15の一部は残留していてもよい。この場合、領域P3の表面では光電変換層15が露出する。また、正孔輸送層16の少なくとも一部を除去せずに正孔輸送層16の少なくとも一部を露出させてもよい。あるいは、電子輸送層14をも除去して下部電極13の少なくとも一部を露出させてもよい。
【0060】
光電変換モジュール100では、領域P3と領域P1との間であって領域P2を含まない領域が、光電変換部PEの形成領域となる。すなわち、光電変換部PEの形成領域においては、同一の光電変換部PEにおける上部電極17、光電変換層15および下部電極13が平面視において重畳する。尚、領域P3と領域P1との間であって領域P2を含む領域は、隣り合う2つの光電変換部PEを電気接続するための接続領域である。
【0061】
このように、光電変換モジュール100は、領域P1および領域P3によって光電変換部PEの分離を行い、領域P2によって隣り合う2つの光電変換部PEを電気接続する構成である。これにより、光電変換モジュール100は、
図9の回路図に示すように、直列接続された複数の光電変換部PEを含むものとなる。
【0062】
図10は、本開示に係る光電変換システム1000の概略図である。
図10に示すように、光電変換システム1000は、上述した光電変換モジュール100と、パワーコンディショナー101と、分電盤102と、電力メーター103と、蓄電池104と、電気機器105と、を備える。
図10に例示する光電変換システム1000は、光電変換モジュール100、パワーコンディショナー101、分電盤102、電力メーター103、蓄電池104および電気機器105が1つずつ設けられているが、それぞれ複数設けられていてもよい。
【0063】
パワーコンディショナー(制御回路)101は、光電変換モジュール100から出力される電力が最適になるように電流・電圧を制御するのと共に、光電変換モジュール100の出力電力と蓄電池104の充電量とをモニターしながら所望の電力配分を行い、蓄電池104と分電盤102に電力を出力する。このとき、蓄電池104へは直流電力を出力し、分電盤102へは交流電力を出力する。つまり、パワーコンディショナー101は、直流電力を交流電力に変換する機能を有する。
【0064】
分電盤102は、パワーコンディショナー101から受けた交流電力を、パワーコンディショナー101の出力電力と電気機器105の消費電力とをモニターしながら所望の配分で、電気機器105および電力メーター103に供給する。
【0065】
電力メーター103は、分電盤102から供給される電力を計測し、商用電力系統に供給する。
【0066】
電気機器105は、分電盤102に接続される代わりに、パワーコンディショナー101に接続されていてもよい。この場合、パワーコンディショナー101は、光電変換モジュール100の出力電力、蓄電池104の充電量、および電気機器105の消費電力をモニターしながら、所望の電力分配を行い、分電盤102に交流電力を供給し、蓄電池104に直流電力を供給し、電気機器105へ交流電力を供給する。電気機器105が直流電力用であれば、直流電力を供給してもよい。
【0067】
今回開示した実施形態は全ての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。したがって、本開示の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて定められる。
【符号の説明】
【0068】
10 光電変換素子
11 上部基板
12 下部基板(基体)
13 下部電極
14 電子輸送層
15 光電変換層
16 正孔輸送層
17 上部電極
18 封止層
19 不活性層
100 光電変換モジュール
101 パワーコンディショナー(制御回路)
1000 光電変換システム
PE 光電変換部
【要約】
【課題】封止層と他の接触層との密着性を向上させることのできる光電変換素子、光電変換モジュールおよび光電変換システムを提供する。
【解決手段】光電変換素子10は、下部基板12と、下部基板12上に設けられ、ペロブスカイト化合物を含有する光電変換層15を含む光電変換部PEと、下部基板12上で、光電変換部PEが存在しない領域上に設けられた封止層18と、下部基板12と封止層18との間に形成される不活性層19とを有する。
【選択図】
図1