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特許7721084アポトーシスを治療しプログラム細胞死を変更する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-01
(45)【発行日】2025-08-12
(54)【発明の名称】アポトーシスを治療しプログラム細胞死を変更する方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/465 20060101AFI20250804BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20250804BHJP
【FI】
A61K31/465
A61P11/00
【請求項の数】 1
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021185699
(22)【出願日】2021-11-15
(62)【分割の表示】P 2020517818の分割
【原出願日】2018-09-13
(65)【公開番号】P2022036958
(43)【公開日】2022-03-08
【審査請求日】2021-12-14
【審判番号】
【審判請求日】2023-07-25
(31)【優先権主張番号】62/565,248
(32)【優先日】2017-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522301980
【氏名又は名称】ティーエヌエフ ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ、ジョニー アール.
【合議体】
【審判長】原田 隆興
【審判官】川口 裕美子
【審判官】田中 耕一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/161055号(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/4439
CAPLUS/MEDLINE/BIOSIS/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気腫および他の呼吸障害を治療するのに使用するための単離されたイソミオスミンまたはその薬学的に許容される塩を含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
この出願は、2017年9月29日に出願された米国仮特許出願第62/565,248号の優先権を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
酸化的損傷は、複製老化およびヒトの加齢の主要な原因である。人間は、誕生時には15,000個のテロメアを有するが、20歳では10,000個のみであり、65歳では5,000個のみである。酸化ストレスレベルの外部調整により、所与の細胞培養物のテロメア短縮化速度および複製寿命期間を改変することができる。例えば、過酸素症(40%酸素分圧)は、ミトコンドリア呼吸の活性酸素種(ROS)の産生を加速し、テロメアの短縮化を劇的に増加させる。短いテロメアは、アポトーシス(プログラム細胞死)および老化につながるDNA損傷応答を活性化する。細胞が分裂すると、末端複製の問題のために、短いテロメアが蓄積する。短いテロメアは、アポトーシスまたは老化の細胞プログラムを活性化するDNA損傷タンパク質をリクルートする。この細胞応答は、臨床的に認識可能なテロメア短縮化の症候群において臓器不全として現れる。
【0003】
プログラム細胞死を有益に変更する(またはプログラム細胞寿命を調整する)ための治療を開発することが望ましいものとなるが、この治療は、次いで、疾患の発症を延長し、寿命期間を増加させ、個体における通常の加齢過程を逆転させる。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、プログラム細胞死(アポトーシス)を変更する方法は、それを必要とする個体に、治療有効量のイソミオスミンまたはその医薬的に許容可能な塩を含有する医薬組成物を投与することを含む。プログラム細胞死を有益に変更する(またはプログラム細胞寿命を調整する)ことは、様々な疾患の発症を先送りする、寿命期間を延長する、および/または個体における通常の加齢過程を逆転させることがある。
【0005】
別の態様では、血中酸素飽和度を増加させる方法は、それを必要とする個体に、治療有効量のイソミオスミンまたはその医薬的に許容可能な塩を含有する医薬組成物を投与することを含む。
【0006】
別の態様では、免疫系を調節する方法は、それを必要とする個体に、治療有効量のイソミオスミンまたはその医薬的に許容可能な塩を含有する医薬組成物を投与することを含む。
【0007】
別の態様では、T細胞を調節する方法は、それを必要とする個体に、治療有効量のイソミオスミンまたはその医薬的に許容可能な塩を含有する医薬組成物を投与することを含む。
【0008】
別の態様では、継続的な遺伝子変異を防止する方法は、それを必要とする個体に、治療有効量のイソミオスミンまたはその医薬的に許容可能な塩を含有する医薬組成物を投与することを含む。
【0009】
別の態様では、ベータ細胞の寿命を延長する方法は、それを必要とする個体に、治療有効量のイソミオスミンまたはその医薬的に許容可能な塩を含有する医薬組成物を投与することを含む。
【0010】
別の態様では、細胞の健康を改善する方法は、それを必要とする個体に、治療有効量のイソミオスミンまたはその医薬的に許容可能な塩を含有する医薬組成物を投与することを含む。
【0011】
別の態様では、細胞寿命を延長する方法は、それを必要とする個体に、治療有効量のイソミオスミンまたはその医薬的に許容可能な塩を含有する医薬組成物を投与することを含む。細胞寿命の延長の一態様は、ヒトの寿命の延長を含む。
【0012】
さらに別の態様では、フェリチンレベルを調節する方法またはヘモクロマトーシスを治療する方法は、それを必要とする個体に、治療有効量のイソミオスミンまたはその医薬的に許容可能な塩を含有する医薬組成物を投与することを含む。一部の実施例において、イソミオスミンまたはそのその医薬的に許容可能な塩の投与は、200ng/mL以下の個体においてフェリチンレベルを維持するために有効である。一部の実施例において、イソミオスミンまたはその医薬的に許容可能な塩の投与は、150ng/mL以下の個体におけるフェリチンレベルを維持するために有効である。
【0013】
別の態様では、創傷を治療する方法は、それを必要とする個体に、治療有効量のイソミオスミンまたはその医薬的に許容可能な塩を含有する医薬組成物を投与することを含む。イソミオスミンの局所投与は特に、治癒を劇的に向上させることが、例えば外科的切開の周囲の瘢痕化を回避することが見出された。
【0014】
別の態様では、外傷性脳損傷を治療する方法は、それを必要とする個体に、治療有効量のイソミオスミンまたはその医薬的に許容可能な塩を含有する医薬組成物を投与することを含む。イソミオスミンは、自動車事故、スポーツ衝突、またはその他の頭部への外傷源の結果として生じる振盪の治療に特に有効であることがある。
【0015】
別の態様では、宇宙旅行の影響を軽減する方法は、それを必要とする個体に、治療有効量のイソミオスミンまたはその医薬的に許容可能な塩を含有する医薬組成物を投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明およびそのある特定の利点に関するさらに完全な理解は、添付の図面を考慮し、以下の詳細な記載を参照することによって得られうる。
【0017】
図1図1は、テロメアが短縮しアポトーシス(プログラム細胞死)および老化をもたらす過程の概略図である。
【0018】
図2図2は、組織損傷における酸化ストレス機構を示す図であり、生体異物によって誘発される遊離ラジカルの毒性と以降の細胞性酵素による解毒とを含む。
【0019】
図3図3は、イソミオスミン、ミオスミン、アナタビン、アナバシン、およびノルニコチンの、MAO-Aの酵素活性を阻害する能力を示すグラフである。
【0020】
図4図4は、イソミオスミン、ミオスミン、アナタビン、アナバシン、およびノルニコチンの、MAO-Bの活性を阻害する能力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書の態様は、部分的には医薬組成物を開示する。本明細書に使用される際に、用語「医薬的に許容可能」とは、個体に投与された場合に有害な、アレルギー性の、またはその他の不都合もしくは不要な反応を産生しない、任意の分子実体または組成物を意味する。本明細書で使用される際に、用語「医薬的に許容可能な組成物」とは、「医薬組成物」と同義であり、治療有効濃度の活性成分、例えば、本明細書に開示される治療化合物のいずれかなどを意味する。本明細書に開示される医薬組成物は、医療用途および獣医学用途に有用である。医薬組成物は、単独で、または他の補助的な活性成分、剤、薬物、またはホルモンと組み合わせて、個体に投与されてもよい。
【0022】
本明細書に開示される医薬組成物は、医薬的に許容可能な組成物への活性成分の加工を容易にする医薬的に許容可能な担体を含みうる。本明細書に使用される際に、用語「薬理学的に許容可能な担体」は、「薬理学的担体」と同義であり、投与されるときに実質的に長期的なまたは永久的な有害作用を持たない任意の担体を意味し、「薬理学的に許容可能な媒体」、「安定剤」、「希釈剤」、「添加剤」、「補助剤」または「賦形剤」などの用語を包含する。このような担体は一般に、活性化合物と混合されるか、または活性化合物を希釈または封入することができ、固体剤、半固体剤、または液体剤とすることができる。活性成分は、可溶性とすることができるか、または所望の担体もしくは希釈剤の懸濁液として送達できることが理解されよう。種々の医薬的に許容可能な担体のいずれかを使用することができるが、そのようなものとしては、限定はないが、水性媒体、例えば水、生理食塩水、グリシン、ヒアルロン酸など;固体担体、例えばマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、タルカム、セルロース、グルコース、スクロース、炭酸マグネシウムなど;溶媒;分散媒体;被覆剤;抗細菌剤および抗真菌剤;等張剤および吸収遅延剤;または他の任意の不活性成分が挙げられる。薬理学的に許容可能な担体の選択は、投与様式に依存することがある。薬理学的に許容可能な担体が活性成分に適合しない場合を除けば、医薬的に許容可能な組成物におけるその使用が想定される。そのような医薬担体の特定の使用の非限定的な例は、Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(Howard C.Ansel et al.,eds.,Lippincott Williams & Wilkins Publishers,7th ed.1999);REMINGTON:THE SCIENCE AND PRACTICE OF PHARMACY(Alfonso R.Gennaro ed.,Lippincott,Williams & Wilkins,20th ed.2000);Goodman & Gilman's The Pharmacological Basis of Therapeutics(Joel G.Hardman et al.,eds.,McGraw-Hill Professional,10th ed.2001);and Handbook of Pharmaceutical Excipients(Raymond C.Rowe et al.,APhA Publications,4th edition 2003)に見出すことができる。これらのプロトコルは、日常的な手順であり、いかなる改変も、当業者の範囲内に、本開示における教示から十分に得られる。
【0023】
イソミオスミン
医薬組成物はイソミオスミンを含有しうる。イソミオスミン(3-(3,4-ジヒドロ-2H-ピロール-2-イル)-ピリジン)は、ニコチンを含有するナス科植物に存在する、ニコチン関連アルカロイドである。
【化1】
【0024】
イソミオスミンは、公知の手法を用いて合成により調製されることがあり、また、複数の化学物質供給業者から商業的に入手可能である。イソミオスミンは、そのピリジン環に結合するピロール環内の不斉炭素原子に起因する二つの光学異性体(+/-)を有する。文脈から別段に明確でない限り、用語「イソミオスミン」は、本明細書に使用される際には、ラセミ混合物を含むエナンチオマー混合物(+/-)、ならびに一方または他方のエナンチオマーの単離形態を含む。
【0025】
文脈から別段に明確でない限り、本明細書に使用される「イソミオスミン」は、イソミオスミンの塩および非塩の両方の形態を指す。ありうる塩の非限定的な例は、P.H.Stahl et al.,Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use,Weinheim/Zurich:Wiley-VCH/VHCA,2002に記載されており、そのようなものとしては、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、2,2-ジクロロ酢酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-オキソグルタル酸、4-アセトアミド安息香酸、4-アミノサリチル酸、酢酸、アジピン酸、アスコルビン酸(L)、アスパラギン酸(L)、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウ酸(+)、カンファー-10-スルホン酸(+)、カプリン酸(デカン酸)、カプロン酸(ヘキサン酸)、カプリル酸(オクタン酸)、炭酸、ケイ皮酸、クエン酸、サイクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクト糖酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸(D)、グルコン酸(D)、グルクロン酸(D)、グルタミン酸、グルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩酸、イソ酪酸、乳酸(DL)、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、リンゴ酸(-L)、マロン酸、マンデル酸(DL)、メタンスルホン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、プロプリオン酸(proprionic acid)、ピログルタミン酸(-L)、サリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸(+L)、チオシアン酸、トルエンスルホン酸(p)、およびウンデシレン酸の塩が挙げられる。
【0026】
イソミオスミンを合成により調製する代替法として、イソミオスミンを、タバコまたは自然に生じる他の供給源からの抽出によって得ることができる。例えば、タバコ抽出物は、乾燥処理したタバコの茎、葉柄、またはその両方から調製されうる。抽出過程では、乾燥処理したタバコ材は、溶媒を、典型的には水、エタノール、蒸気、または二酸化炭素を用いて抽出される。結果として得られた溶液は、イソミオスミンを含む、タバコの可溶性構成成分を含有する。イソミオスミンは、液体クロマトグラフィーなどの適した手法を使用して、タバコの他の構成成分から精製されうる。
【0027】
医薬品用途では、イソミオスミンの単離形態が一般的に使用される。「イソミオスミンの単離形態」は、本明細書に使用される際には、合成により調製されているか、またはそれが生じる天然材料から実質的に分離されているかのどちらかのイソミオスミンを指す。イソミオスミンの単離形態は、非常に高い純度(エナンチオマーが使用されている場合のエナンチオマー純度を含む)を有するべきである。合成イソミオスミンの場合、例えば、純度は、最終反応産物の重量に対するイソミオスミンの重量の比率を指す。天然材料からイソミオスミンを単離する場合、例えば、純度は、イソミオスミン含有抽出物の総重量に対するイソミオスミンの重量の比率を指す。通常、純度のレベルは、少なくとも約95%であり、さらに通常では少なくとも約96%、約97%、約98%、またはそれよりも高い。例えば、純度のレベルは、約98.5%、99.0%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、またはそれよりも高いものでありうる。
【0028】
人が加齢するにつれて、加齢細胞の天然の細胞死は、炎症老化とよばれる現象または酸化性ストレスを誘発しうる。プロフェッショナル貪食細胞、サイトカイン、インターフェロン、キラー細胞、および補体系から構成される、先天免疫系が強く発達する。しかし、B細胞、T細胞、および抗体から構成される適応(または獲得)免疫系は弱化する。適応系の弱化は、胸腺の萎縮によるものである。この過程は免疫老化として知られている。この自己認識の喪失により、先天免疫系の上方制御が開始される。インデューサーの宿主による先天免疫系の活性化により、酸化ストレスとして知られる炎症促進性プロファイルが作り出される。
【0029】
理論に束縛されることを望むものではないが、イソミオスミンが免疫代謝調節因子として機能する独自の能力を有することを前提とする。最近の研究では、主要な免疫細胞であるリンパ球が、それらの機能的状態による異なる代謝要件を有することが示されている。天然のリンパ球(まだ抗原に曝露されていないリンパ球)は、酸化的リン酸化、すなわちミトコンドリアにおける低速の解糖系とそれに続くKrebs回路に依存する。その代わりに、活性化リンパ球は、好気的解糖、すなわち細胞質ゾルにおける高速の解糖系と乳酸発酵とにさらに依存し、これはがん細胞でも用いられるワールブルク効果とよばれる代謝利用である。メモリーリンパ球は、数年間にわたって体内に残るようにプログラムされており、脂肪酸の酸化に依存する。リンパ球の細胞寿命は、解糖系および酸化的リン酸化からのATP合成によって決まる。免疫代謝調節因子として、イソミオスミンは、酸化ストレスから両方の経路を保護し調節する能力を有する。電子の流れ、ATP、および酸素飽和を増加させることにより、イソミオスミンは、糖尿病から自己免疫まで、がんまでに及ぶ広範囲の疾患の治療に有用性を有することが期待される。
【0030】
細胞は、何回分裂しかつ死細胞を置き換えるかをそれらに指示する内部「時計」を有する。成人細胞は通常、14~29回のみ分裂する。そのため、残りの分裂の回数は年齢と共に減少する。染色体端のキャップであるテロメアは、部分片が細胞分裂と共に端から失われると燃え尽きる細胞の「ヒューズ」というに等しい。テロメアの早期の短縮は、個体の早期死につながる可能性がある。テロメアは、酵素テロメラーゼによって長さが維持される単純な反復配列から構成される。例えば、疾患状態または通常の加齢過程によるROSの過剰産生に起因するテロメラーゼ機能の喪失は、進行性のテロメア短縮および染色体の不安定化をもたらす。
【0031】
イソミオスミンの前述の特性は、テロメアを伸長させるのに十分なテロメラーゼレベルを維持しプログラム細胞死(アポトーシス)を有益に変更する能力に、寄与するものと考えられる。イソミオスミンは、それによって、様々な疾患の発症を先送りし、生存期間を延長し、および/または個体の通常の加齢過程を逆転させることがある。
【0032】
酸化ストレスは、活性酸素種の全身的な症状発現と、反応中間体を容易に解毒するかまたは結果的な損傷を修復する生体系の能力との間の、不均衡を反映する。細胞の正常な酸化還元状態の乱れにより、タンパク質、脂質、およびDNAを含む細胞の全ての構成成分を損傷する過酸化物およびフリーラジカルの産生を通じて、毒性作用が引き起こされる可能性がある。酸化的代謝に由来する酸化ストレスにより、DNAの塩基損傷ならびに鎖切断が生じる。塩基損傷は、殆どが間接的であり、生成された活性酸素種(ROS)、例えばO (スーパーオキシドラジカル)、OH(ヒドロキシルラジカル)、およびH(過酸化水素)によって引き起こされる。一部の活性酸化種は、酸化還元シグナル伝達において細胞性メッセンジャーとしての役割を果たす。そのため、酸化ストレスは、細胞シグナル伝達の正常な機構の破綻をさらに引き起こす可能性がある。別段に文脈から明確でない限り、本明細書の「酸化ストレス」への言及は、特に慢性酸化ストレスを指す。
【0033】
一部の態様では、イソミオスミンは、酸化ストレスに関連する状態または障害を治療するために個体に投与されうる。一部の実施例では、個体における免疫応答は、尿酸および/またはフェリチンのレベルを測定することによって特定または定量化されうる。他の例では、コルチゾールレベルは、慢性ストレス状態を特定または定量化するために測定されうる。コルチゾールレベルは、アドレナリンの放出とともに「闘争または逃走」の間に個体において上昇してゆく。健康な個体では、コルチゾールレベルは、そのような遭遇の直後に通常のレベルに戻る。しかし、コルチゾールレベルが休息中にさえ個体で上昇している際には、これは慢性状態のストレスを標示していることがあり、そのようなストレスは重度の不安または感情的苦痛によって引き起こされうる。コルチゾールレベルの上昇も、冠動脈疾患および歯周炎、George R.S.et al.,Int'l J Res Med Sci. 2017 May 5(5):1930-1935;および2型糖尿病、Della Volpe,"High Evening Cortisol Levels Linked to Increased Risk for Type 2 Diabetes," 2016,https://www.endocrineweb.com/amp/20168と関連して観察されている。
【0034】
コルチゾゾルレベルの上昇も、宇宙旅行中の宇宙飛行士に観察されている。ストレスおよび睡眠サイクルの破綻は、白血球分布の変化、T細胞機能の低減、および/またはサイトカイン産生プロファイルの変更を含む、免疫系の調節不全に寄与することがある。ウイルスの再活性化も、宇宙飛行士に6ヶ月の任務の間にわたって観察されてきた。本明細書に開示される一部の態様では、これらのおよび/または宇宙旅行の他の効果は、それを必要とする個体に、有効量のイソミオスミンまたはその医薬的に許容可能な塩を投与することによって軽減されうる。
【0035】
ミトコンドリア呼吸の破綻とミトコンドリア損傷とを伴う累積的な酸化ストレスは、ルー・ゲーリック病(ALS)、パーキンソン病、およびアルツハイマー病を含む神経変性疾患に関連付けられてきた。酸化ストレスは、種々の他の障害に寄与することがあり、そのようなものとしては、ハンチントン病、うつ、多発性硬化症、アスパルガー症候群、ADHD、がん、ラフォラ病、アテローム性動脈硬化症、心不全、心筋梗塞、脆弱X症候群、鎌状赤血球性貧血、扁平苔癬、白斑、自閉症、感染症、および慢性疲労症候群が挙げられる。
【0036】
血管内皮内のLDLの酸化はプラーク形成の前触れであるため、酸化ストレスは、ある特定の心血管疾患に関連付けられると考えられる。酸化ストレスは、低酸素後の酸素再灌流損傷に起因する虚血性カスケードにおいても役割を果たす。このカスケードは、脳卒中と心臓発作との両方を含む。酸化ストレスは慢性疲労症候群にも関係付けられてきた。酸化ストレスはまた、照射および過酸素症の後ならびに糖尿病における組織損傷(図2を参照)に寄与する。
【0037】
酸化ストレスは、がんの加齢性発症に関与することが予想される。酸化ストレス時に産生される反応性種は、DNAに直接的な損傷を引き起こす可能性があり、それゆえ変異誘発性であり、また、アポトーシスを抑制し、増殖、侵襲性および転移を促進することがある。ヒトの胃における活性酸素種および窒素種の産生を増加させるヘリコバクター・ピロリによる感染も、胃癌の発症において重要と考えられている。
【0038】
フェリチンは、すべての組織、特に肝臓、脾臓、骨格筋、および骨髄に見られるタンパク質-鉄複合体である。フェリチン分子は、重鎖と軽鎖との24個のサブユニットからなる。これらのサブユニットは、結晶鉄が蓄えられる空洞の周りに殻を形成する。フェリチンの細胞内蓄積は、リソソームによって取り込まれる凝集体を形成する。フェリチンがリソソームのプロテアーゼによって分解されると、ヘモジデリンが形成される。血清フェリチンは、全身の鉄の貯蔵を評価するための最も有用な基準である。血清フェリチンは、ヘモグロビン合成に使用されない細胞内に貯蔵された過剰な鉄から生じる。血漿中のフェリチンの量は、組織中にフェリチンとして貯蔵される全身の鉄を直接的に反映する。鉄欠損症では、血清フェリチンは、多くの場合に12ng/mLよりも低いのに対し、鉄過剰負荷では1000ng/mLを超えることがある。閉経前女性については200ng/mL超の、または男性については400ng/mL超の血清フェリチンレベル(炎症、がん、または肝炎が存在しない場合)は、遺伝性ヘモクロマトーシスの診断を裏付けるものである。
【0039】
血液中のフェリチン(鉄)のレベルの上昇は、ROS蓄積を通じて細胞死に繋がる可能性がある。過剰な鉄もまたベータ細胞を攻撃しうる。血清フェリチンレベルは、II型糖尿病に罹患している患者において有意に高いことが知られている。血清フェリチンのレベルの増加したII型糖尿病の患者は、血糖コントロールに乏しく、それはHBA1cレベルの増加により反映される。理論に束縛されることを望むものではないが、イソミオスミンはフェリチンに結合する能力を有し、この能力は、ひいては、フェリチンレベルの調節と、血清中鉄レベルの増加に直接的に関連する疾患(例えばヘモクロマトーシス)または間接的に関連する疾患(例えばII型糖尿病)の治療とを可能にするものと考えられている。一部の態様では、イソミオスミンは、約200ng/mL未満または約150ng/mL未満など、個体にとって適切な範囲で血清フェリチンレベルを維持するのに有効な量で、個体に投与されることがある。
【0040】
2型糖尿病(T2DM)は、インスリン分泌の不全、グルコース不耐性、および高血糖を特徴とする。T2DMは、長期間の免疫系の不均衡、メタボリック症候群、または肥満に関連のある栄養過多によって引き起こされる慢性の低悪性度の炎症性疾患として、現在広く見られる。腎臓、動脈、および眼におけるT2DM関連合併症も、炎症性過程によって現れる。炎症の調節では、長い間にわたって先天免疫に、特にマクロファージに焦点を当てられてきたが、一方で、T細胞が代謝性炎症およびインスリン抵抗性の発生のために極めて重要であることを示唆するエビデンスが増えつつある。増大しているエビデンスは、2型糖尿病の病因におけるT細胞の決定的で密接な関与を裏付けるものである。Xia et al.,"Role of T Lymphocytes in Type 2 Diabetes and Diabetes-Associated Inflammation,"Journal of Diabetes Research,Vol.2017,Article 6494795.
【0041】
一部の態様では、治療有効量のイソミオスミンまたはその医薬的に許容可能な塩は、それを必要とする個体に、創傷または以下からなる群から選択される障害を治療するために投与される:ヘモクロマトーシス、外傷性脳損傷、大うつ病、小うつ病、非定型うつ病、気分変調症、注意欠陥障害、多動、行為障害、ナルコレプシー、社会恐怖症、強迫性障害、非定型顔面痛、摂食障害、薬物離脱症候群および薬物依存性障害、抑うつ、パニック障害、過食症、アネルギー性うつ病、治療抵抗性うつ病、頭痛、慢性疼痛症候群、全般性不安障害、妊娠中毒症、冠状動脈疾患、鎌状赤血球性貧血、特発性肺線維症、ならびに子宮内膜症。
【0042】
本明細書に開示される医薬組成物としては、限定はないが、任意選択的に、他の医薬的に許容可能な構成成分(または医薬構成成分)を挙げることができ、そのようなものとしては、限定はないが、緩衝液、保存剤、張性調整剤、塩、抗酸化剤、浸透圧調整剤、生理学的物質、薬理学的物質、増量剤、乳化剤、湿潤剤、甘味剤または芳香剤などが挙げられる。pHを調節するための様々な緩衝液および手段を使用して、本明細書に開示される医薬組成物を調製することができるが、但し、結果として得られる調製物は医薬的に許容可能である。そのような緩衝液としては、限定はないが、酢酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、およびホウ酸塩緩衝液が挙げられる。酸または塩基を、組成物のpHを調節するために必要に応じて使用できることが理解されよう。医薬的に許容可能な抗酸化剤としては、限定はないが、ピロ亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソール、およびブチル化ヒドロキシトルエンが挙げられる。有用な保存剤としては、限定はないが、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、安定化オキシクロロ組成物、およびキレート剤、例えばDTPAまたはDTPA-ビスアミド、カルシウムDTPA、およびCaNaDTPA-ビスアミドなどが挙げられる。医薬組成物に有用な張性調整剤としては、限定はないが、塩、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、マンニトールまたはグリセリン、および他の医薬的に許容可能な張性調整剤が挙げられる。医薬組成物は、塩として提供されてもよく、数多くの酸を用いて形成することができ、そのような酸としては、以下に限定されないが、塩酸、硫酸、酢酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸などが挙げられる。塩は、対応の遊離塩基形態よりも水性溶媒または他のプロトン性溶媒に溶解する傾向がある。薬理学の技術分野で公知のこれらのおよび他の物質を、医薬組成物に含めることができることが理解されよう。
【0043】
一実施形態では、医薬組成物は、イソミオスミンと医薬的に許容可能なアジュバントとを含む。別の実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、イソミオスミン、医薬的に許容可能な溶媒、および医薬的に許容可能なアジュバントを含む。この実施形態の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、医薬的に許容可能な安定剤をさらに含みうる。この実施形態の他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、医薬的に許容可能な担体、医薬的に許容可能な構成成分、または医薬的に許容可能な担体と医薬的に許容可能な構成成分との両方をさらに含みうる。
【0044】
組成物は、イソミオスミンを単独で含有していてもよいし、他の治療化合物と共に含有していてもよい。治療化合物は、疾患の診断、治癒、軽減、治療、または予防における薬理学的活性または他の直接的な効果を提供するための、または人もしくは動物の身体の構造もしくは任意の機能に影響を及ぼすための化合物である。本明細書に開示される治療化合物は、医薬的に許容可能な塩、溶媒和物、または塩の溶媒和物、例えば塩酸塩の形態で使用されうる。さらに、本明細書に開示される治療化合物は、ラセミ体として、またはR-もしくはS-エナンチオマーを含む個別のエナンチオマーとして提供されうる。そのため、本明細書に開示される治療化合物は、治療化合物のR-エナンチオマーのみ、S-エナンチオマーのみ、またはR-エナンチオマーとS-エナンチオマーとの両方の組み合わせを含みうる。一部の態様では、治療化合物は抗炎症活性を有することがある。
【0045】
本明細書における「治療化合物」への言及は、イソミオスミン、本明細書に記載されるようなイソミオスミン以外の活性化合物、またはその両方を指す場合がある。
【0046】
一実施形態では、本明細書に開示される治療化合物は、炎症誘発性分子のレベルを低減することができる抗炎症活性を有する。この実施形態の一態様では、本明細書に開示される治療化合物は、物質P(SP)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、グルタミン酸塩、またはそれらの組み合わせのレベルを低減することができる抗炎症活性を有する。この実施形態の他の態様では、本明細書に開示される治療化合物は、感覚ニューロンから放出されるSP、CGRP、グルタミン酸塩、またはそれらの組合せのレベルを、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%低減することができる抗炎症活性を有する。この実施形態のさらに他の態様では、本明細書に開示される治療化合物は、感覚ニューロンから放出されるSP、CGRP、グルタミン酸塩、またはそれらの組合せのレベルを、例えば、約10%から約100%、約20%から約100%、約30%から約100%、約40%から約100%、約50%から約100%、約60%から約100%、約70%から約100%、約80%から約100%、約10%から約90%、約20%から約90%、約30%から約90%、約40%から約90%、約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、約10%から約80%、約20%から約80%、約30%から約80%、約40%から約80%、約50%から約80%、または約60%から約80%、約10%から約70%、約20%から約70%、約30%から約70%、約40%から約70%、または約50%から約70%の範囲で低減することができる抗炎症活性を有する。
【0047】
プロスタグランジンは、局所的炎症応答を媒介し、プロスタグランジン受容体への作用を通じて全ての炎症機能に関与し、化学走性(マクロファージ、好中球、および好酸球)、血管拡張および痛覚鋭敏を含む炎症シグナル伝達を媒介する。しかしながら、PG媒介性炎症応答は自己限定的である(消散する)。本源の消散因子は、15dPGJ2と呼ばれるプロスタグランジンであり、これは、ペルオキシソーム増殖因子活性化因子受容体ガンマ(PPAR-γ)シグナル伝達の内因性アゴニストである。PPAR-γシグナル伝達経路は、1)マクロファージM1細胞のアポトーシスを誘発し、それによってTh1炎症促進性サイトカインのレベルを低減し、2)マクロファージM2細胞への単球の分化を促進する。マクロファージM2細胞は、Th2抗炎症性サイトカインを産生し放出する。
【0048】
一実施形態において、治療化合物は、プロスタグランジンを誘導する炎症のレベルを低減することができる抗炎症活性を有する。この実施形態の他の態様では、治療化合物は、感覚ニューロンから放出されるプロスタグランジンを誘導する炎症のレベルを、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%低減することができる抗炎症活性を有する。本実施形態のさらに他の態様では、治療化合物は、感覚ニューロンから放出されるプロスタグランジンを誘導する炎症のレベルを、例えば、約10%から約100%、約20%から約100%、約30%から約100%、約40%から約100%、約50%から約100%、約60%から約100%、約70%から約100%、約80%から約100%、約10%から約90%、約20%から約90%、約30%から約90%、約40%から約90%、約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、約10%から約80%、約20%から約80%、約30%から約80%、約40%から約80%、約50%から約80%、または約60%から約80%、約10%から約70%、約20%から約70%、約30%から約70%、約40%から約70%、または約50%から約70%の範囲で低減することができる抗炎症活性を有する。
【0049】
別の実施形態では、治療化合物は、15dPGJ2と実質的に類似した抗炎症活性を有する。この実施形態の態様では、治療化合物は、15dPGJ2に観察される活性の例えば、少なくとも5%、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%の抗炎症活性を持つ。この実施形態の他の態様では、治療化合物は、15dPGJ2に観察される活性の例えば、約5%から約100%、約50%から約100%、約60%から約100%、約70%から約100%、約80%から約100%、約25%から約90%、約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、約80%から約90%、約25%から約80%、約50%から約80%、約60%から約80%、約70%から約80%、約25%から約70%、約50%から約70%、約25%から約60%、約50%から約60%、または約25%から約50%の範囲にある抗炎症活性を有する。
【0050】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は、遺伝子の発現を調節する転写因子として機能する核受容体タンパク質の一群である。全てのPPARは、レチノイドX受容体(RXR)とヘテロ二量体化し、ペルオキシソーム増殖因子ホルモン応答エレメント(PPRE)とよばれる標的遺伝子のDNAの特定領域に結合することが知られている。PPARは、細胞の分化、発達、および代謝(炭水化物、脂質、タンパク質)、ならびに高等生物の腫瘍発生の調節において、必須の役割を果たす。このファミリーは、三つのメンバー、すなわちPPAR-α、PPAR-γ、及びPPAR-δ(PPAR-βとも呼ばれる)を含む。PPAR-αは、肝臓、腎臓、心臓、筋肉、脂肪組織、ならびにその他の組織で発現される。PPAR-δは、多くの組織で発現されるが、脳、脂肪組織、および皮膚では顕著に発現される。PPAR-γは、三つの選択的スプライシング形態を含み、そのそれぞれは異なる発現パターンを有する。PPAR-γ1は、心臓、筋肉、結腸、腎臓、膵臓、および脾臓を含む、事実上全ての組織で発現される。PPAR-γ2は、主に脂肪組織で発現される。PPAR-γ3は、マクロファージ、大腸、および白色脂肪組織で発現される。PPARの内因性リガンドとしては、遊離脂肪酸およびエイコサノイドが挙げられる。PPAR-γはPGJ2(プロスタグランジン)によって活性化されるのに対し、PPAR-αはロイコトリエンB4によって活性化される。
【0051】
一部の態様では、治療化合物は、一部または全てのPPARシグナル伝達経路を刺激することができる抗炎症活性を有することがある。そのような治療化合物は、それゆえ、PPARパンアゴニストとして、または選択的PPARアゴニストとして、作用し得ることが想定される。
【0052】
他の態様では、治療化合物は、PPAR-αシグナル伝達経路を刺激することができる抗炎症活性を有する。この実施形態の態様では、本明細書に開示される治療化合物は、PPAR-αシグナル伝達経路を、例えば、少なくとも5%、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%刺激する。この実施形態の他の態様では、本明細書に開示される治療化合物は、例えば、約5%から約100%、約50%から約100%、約60%から約100%、約70%から約100%、約80%から約100%、約25%から約90%、約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、約80%から約90%、約25%から約80%、約50%から約80%、約60%から約80%、約70%から約80%、約25%から約70%、約50%から約70%、約25%から約60%、約50%から約60%、または約25%から約50%の範囲で、PPAR-αシグナル伝達経路を刺激する。
【0053】
一部の態様では、治療化合物は、PPAR-6シグナル伝達経路を刺激することができる抗炎症活性を有する。治療化合物は、例えば、PPAR-6シグナル伝達経路を少なくとも5%、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%刺激しうる。一部の事例では、治療化合物は、PPAR-6シグナル伝達経路を、例えば、約5%から約100%、約50%から約100%、約60%から約100%、約70%から約100%、約80%から約100%、約25%から約90%、約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、約80%から約90%、約25%から約80%、約50%から約80%、約60%から約80%、約70%から約80%、約25%から約70%、約50%から約70%、約25%から約60%、約50%から約60%、または約25%から約50%の範囲で刺激する。
【0054】
一部の態様では、治療化合物は、PPAR-γシグナル伝達経路を刺激することができる抗炎症活性を有する。治療化合物は、PPAR-γの全てのアイソフォームに結合することもあれば、PPAR-γ1、PPAR-γ2、PPAR-γ3、またはそれらのいずれか二つの組み合わせに選択的に結合することもある。治療化合物は、PPAR-γシグナル伝達経路を、例えば、少なくとも5%、少なくとも15%、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%刺激しうる。治療化合物は、PPAR-γシグナル伝達経路を、例えば、約5%から約100%、約50%から約100%、約60%から約100%、約70%から約100%、約80%から約100%、約25%から約90%、約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、約80%から約90%、約25%から約80%、約50%から約80%、約60%から約80%、約70%から約80%、約25%から約70%、約50%から約70%、約25%から約60%、約50%から約60%、または約25%から約50%の範囲で刺激しうる。
【0055】
マクロファージは活性化され、独自の細胞表面分子を発現し別々のセットのサイトカインおよびケモカインを分泌する別個の表現型に極性化される。古典的なM1表現型は、例えばインターロイキン-6(IL-6)、IL-12、およびIL-23などのサイトカインによって駆動される炎症促進性Th1応答を支援するのに対し、代わりのM2表現型は、一般にIL-10によって駆動される抗炎症性過程を支援する。M2細胞は、刺激の種類ならびにその後の表面分子およびサイトカインの発現に基づいて、サブセットであるM2a、M2b、およびM2cにさらに分類することができる。
【0056】
さらに別の実施形態では、治療化合物は、M1からM2の分離表現型の変化を促進することができる抗炎症活性を有する。治療化合物は、マクロファージM1細胞のアポトーシスを誘導することができる抗炎症活性を有してもよい。治療化合物は、マクロファージM2細胞の分化を促進することができる抗炎症活性を有してもよい。この実施形態のさらに別の態様では、本明細書に開示される治療化合物は、マクロファージM1細胞のアポトーシスを誘導すること、およびマクロファージM2細胞の分化を促進することができる抗炎症活性を有する。
【0057】
さらに別の実施形態では、治療化合物は、Th1およびTh2のサイトカインを調整することができる抗炎症活性を有する。治療化合物は、Th1細胞から放出されるインターフェロンガンマ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、インターロイキン12(IL-12)、またはそれらの組み合わせのレベルを低減することができる抗炎症活性を有しうる。この実施形態の他の態様では、治療化合物は、Th1細胞から放出されるIFN-γ、TNF-α、IL-12、またはそれらの組み合わせのレベルを、例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%低減することができる抗炎症活性を有しうる。この実施形態のさらに他の態様では、治療化合物は、Th1細胞から放出されるIFN-γ、TNF-α、IL-12、またはそれらの組み合わせのレベルを、例えば、約5%から約100%、約10%から約100%、約20%から約100%、約30%から約100%、約40%から約100%、約50%から約100%、約60%から約100%、約70%から約100%、約80%から約100%、約10%から約90%、約20%から約90%、約30%から約90%、約40%から約90%、約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、約10%から約80%、約20%から約80%、約30%から約80%、約40%から約80%、約50%から約80%、または約60%から約80%、約10%から約70%、約20%から約70%、約30%から約70%、約40%から約70%、または約50%から約70%の範囲で低減することができる抗炎症活性を有しうる。
【0058】
この実施形態の別の態様では、治療化合物は、Th2細胞から放出されるIL-10のレベルを増加させることができる抗炎症活性を有する。治療化合物は、Th2細胞から放出されるIL-10のレベルを、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%増加させることができる抗炎症活性を有することがある。この実施形態のさらに他の態様では、治療化合物は、Th2細胞から放出されるIL-10のレベルを、例えば、約5%から約100%、約10%から約100%、約20%から約100%、約30%から約100%、約40%から約100%、約50%から約100%、約60%から約100%、約70%から約100%、約80%から約100%、約10%から約90%、約20%から約90%、約30%から約90%、約40%から約90%、約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、約10%から約80%、約20%から約80%、約30%から約80%、約40%から約80%、約50%から約80%、または約60%から約80%、約10%から約70%、約20%から約70%、約30%から約70%、約40%から約70%、または約50%から約70%の範囲で増加することができる抗炎症活性を有しうる。
【0059】
この実施形態の別の態様では、治療化合物は、Th1細胞から放出されるIFN-γ、TNF-α、IL-12、またはそれらの組み合わせのレベルを減少させ、Th2細胞から放出されたIL-10のレベルを増加させることができる抗炎症活性を有する。治療化合物は、Th1細胞から放出されるIFN-γ、TNF-α、IL-12、またはそれらの組み合わせを、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%増加させることができ、Th2細胞から放出されたIL-10のレベルを、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%増加させることができる抗炎症活性を有する。さらにこの実施形態の態様において、治療化合物は、Th1細胞から放出されるIFN-γ、TNF-α、IL-12、またはそれらの組み合わせを、例えば、約5%から約100%、約10%から約100%、約20%から約100%、約30%から約100%、約40%から約100%、約50%から約100%、約60%から約100%、約70%から約100%、約80%から約100%、約10%から約90%、約20%から約90%、約30%から約90%、約40%から約90%、約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、約10%から約80%、約20%から約80%、約30%から約80%、約40%から約80%、約50%から約80%、または約60%から約80%、約10%から約70%、約20%から約70%、約30%から約70%、約40%から約70%、または約50%から約70%の範囲で低減することができ、Th2細胞から放出されるIL-10のレベルを、例えば、約10%から約100%、約20%から約100%、約30%から約100%、約40%から約100%、約50%から約100%、約60%から約100%、約70%から約100%、約80%から約100%、約10%から約90%、約20%から約90%、約30%から約90%、約40%から約90%、約50%から約90%、約60%から約90%、約70%から約90%、約10%から約80%、約20%から約80%、約30%から約80%、約40%から約80%、約50%から約80%、または約60%から約80%、約10%から約70%、約20%から約70%、約30%から約70%、約40%から約70%、または約50%から約70%の範囲で増加することができる抗炎症活性を有しうる。
【0060】
イソホスミンに加えて、本明細書に記載される医薬製剤は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)などの追加的な治療化合物を含むことがある。NSAIDは、鎮痛性、抗炎症性、および抗発熱性を有する治療化合物の大きな一群である。NSAIDは、シクロオキシゲナーゼを遮断することによって炎症を低減させる。NSAIDとしては、アセクロフェナック、アセメタシン、アクタリット、アルコフェナク、アルミノプロファン、アンフェナク、アロキシピリン、アミノフェナゾン、アントラフェニン、アスピリン、アザプロパゾン、ベノリラート、ベノキサプロフェン、ベンジダミン、ブチブフェン、セレコキシブ、クロルテノキサシン、サリチル酸コリン、クロメタシン、デクスケトプロフェン、ジクロフェナク、ジフルニサル、エモルファゾン、エピリゾール、エトドラク、エトリコキシブ、フェクロブゾン、フェルビナク、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フルルビプロフェン、グラフェニン、サリチル酸ヒドロキシエチル、イブプロフェン、インドメタシン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、ラクチルフェネチジン、ロキソプロフェン、ルミラコキシブ、メフェナム酸、メロキシカム、メタミゾール、メチアジン酸、モフェブタゾン、モフェゾラク、ナブメトン、ナプロキセン、ニフェナゾン、ニフルミン酸、オキサメタシン、フェナセチン、ピペブゾン、プラノプロフェン、プロピフェナゾン、プロカゾン、プロチジン酸、ロフェコキシブ、サリチルアミド、サルサレート、スリンダク、スプロフェン、チアラミド、チノリジン、トルフェナム酸、バルデコキシブ、およびゾメピラクが挙げられる。
【0061】
NSAIDは、その化学構造または作用機構に基づいて分類されうる。NSAIDの非限定的な例としては、サリチル酸誘導体NSAID、p-アミノフェノール誘導体NSAID、プロピオン酸誘導体NSAID、酢酸誘導体NSAID、エノール酸誘導体NSAID、フェナム酸誘導体NSAID、非選択的シクロキシゲナーゼ(COX)阻害剤、選択的シクロオキシゲナーゼ-1(COX-1)阻害剤、および選択的シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤が挙げられる。NSAIDはプロフェンであってもよい。適したサリチル酸誘導体NSAIDの例としては、限定はないが、アセチルサリチル酸(アスピリン)、ジフルニサル、およびサルサレートが挙げられる。適したp-アミノフェノール誘導体NSAIDの例としては、限定はないが、パラセタモールおよびフェナセチンが挙げられる。適したプロピオン酸誘導体NSAIDの例としては、限定はないが、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、デクスケトプロフェン、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ロキソプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、プラノプロフェン、およびサプロフェンが挙げられる。適した酢酸誘導体NSAIDの例としては、限定はないが、アセクロフェナク、アセメタシン、アクタリット、アルコフェナク、アムフェナク、クロメタシン、ジクロフェナク、エトドラク、フェルビナク、フェンクロフェナク、インドメタシン、ケトロラク、メチアジン酸、モフェゾラク、ナブメトン、ナプロキセン、オキサメタシン、スリンダク、およびゾメピラクが挙げられる。適したエノール酸(オキシカム)誘導体NSAIDの例としては、限定はないが、ドロキシカム、イソキシカム、ロルノキシカム、メロキシカム、ピロキシカム、およびテノキシカムが挙げられる。適したフェナム酸誘導体NSAIDの例としては、限定はないが、フルフェナム酸、メフェナム酸、メクロフェナム酸、およびトルフェナム酸が挙げられる。適した選択的COX-2阻害剤の例としては、限定はないが、セレコキシブ、エトリコキシブ、フィロコキシブ、ルミラコキシブ、メロキシカム、パレコキシブ、ロフェコキシブ、およびバルデコキシブが挙げられる。
【0062】
治療化合物は、化合物が有機溶媒に可溶性であることを標示するlog P値を有しうる。本明細書で使用される際に、「log値」という用語は、化合物についての分配係数(P)の対数(底10)を指し、親油性の尺度である。典型的には、Pは、平衡にある二つの不混和性溶媒の混合物の二つの相における非イオン化化合物の濃度の比として定義される。したがって、log P=Log10(P)であって、式中、P=[不混和性溶媒1中の溶質]/[不混和性溶媒2中の溶質]である。有機相および水相に関して、化合物のlog P値は、任意の所与の水性溶媒および有機溶媒の対について一定であり、その値は、例えば振盪フラスコアッセイ、HPLCアッセイ、および二つの不混和性電解質溶液間の干渉(ITIES)アッセイを含む、当業者に公知のいくつかの層分配法の一つによって、実験的に決定することができる。
【0063】
この実施形態の態様では、治療化合物は、化合物が有機溶媒に実質的に可溶性であることを標示するlog P値を有しうる。この実施形態の態様では、本明細書に開示される治療化合物は、本化合物が例えば、有機溶媒中で少なくとも50%可溶性であること、有機溶媒中で少なくとも60%可溶性であること、有機溶媒中で少なくとも70%可溶性であること、有機溶媒中で少なくとも80%可溶性であること、または有機溶媒中で少なくとも90%可溶性であることを標示する、log P値を有しうる。この実施形態の態様では、本明細書に開示される治療化合物は、本化合物が例えば、有機溶媒中で約50%と約100%との間で可溶性であること、有機溶媒中で約60%と約100%との間で可溶性であること、有機溶媒中で約70%と約100%との間で可溶性であること、有機溶媒中で約80%と約100%との間で可溶性であること、有機溶媒中で約90%と約100%との間で可溶性であることを標示する、log P値を有しうる。
【0064】
この実施形態の態様において、本明細書に開示される治療化合物は、例えば、1.1超、1.2超、1.4超、1.6超、1.8超、2.0超、2.2超、2.4超、2.6超、2.8超、3.0超、3.2超、3.4超、または3.6超のlog P値を有しうる。この実施形態の他の態様では、本明細書に開示される治療化合物は、例えば1.8と4.0との間、2.0と4.0との間、2.1と4.0との間、2.2と4.0との間、2.3と4.0との間、2.4と4.0との間、2.5と4.0との間、2.6と4.0との間、または2.8と4.0との間の範囲にlog P値を有しうる。この実施形態の他の態様では、本明細書に開示される治療化合物は、例えば3.0と4.0との間、または3.1と4.0との間、3.2と4.0との間、3.3と4.0との間、3.4と4.0との間、3.5と4.0との間、または3.6と4.0との間の範囲にlog P値を有しうる。この実施形態のさらに他の態様では、本明細書に開示される治療化合物は、例えば2.0と2.5との間、2.0と2.7との間、2.0と3.0との間、または2.2と2.5との間の範囲にlog P値を有しうる。
【0065】
治療化合物は、疎水性の極性表面積を有しうる。本明細書で使用される際に、用語「極性表面積」は、化合物の構造における全ての極性原子の表面和を指し、疎水性の尺度である。典型的には、これらの極性原子としては、例えば、酸素、窒素、およびそれらの付加水素を含む。この実施形態の態様では、本明細書に開示される治療化合物は、例えば8.0nm未満、7.0nm未満、6.0nm未満、5.0nm未満、4.0nm未満、または3.0nm未満の極性表面積を有しうる。
【0066】
一部の態様では、治療化合物はPPAR-γアゴニストであってもよい。適したPPAR-γアゴニストの例としては、限定はないが、ベンズブロマロン、カンナビジオール、シロスタゾール、クルクミン、デルタ(9)-テトラヒドロカンナビノール、グリチルレチン酸、インドメタシン、イルベサルタン、モナシン、ミコフェノール酸、レスベラトロール、6-ショウガオール、テルミサルタン、チアゾリジンジオン、例えばロシグリタゾン、ピオグリタゾン、およびトログリタゾンなど、NSAID、ならびにフィブラートが挙げられる。他の適切なPPAR-γアゴニストは、Masson et al.米国特許出願公開第2011/0195993A1号に記載されており、その開示は参照により本明細書に援用される。
【0067】
治療化合物は核受容体結合剤であってもよい。適した核受容体結合剤の例としては、限定はないが、レチノイン酸受容体(RAR)結合剤、レチノイドX受容体(RXR)結合剤、肝臓X受容体(LXR)結合剤、およびビタミンD結合剤が挙げられる。
【0068】
治療化合物は抗高脂血症剤であってもよい。いくつかのクラスの抗高脂血症剤(脂質低下剤としても知られる)がある。それらは、コレステロールプロファイルへの影響と有害作用との両方において異なる場合がある。例えば、低密度リポタンパク質(LDL)が低い場合がある一方で、高密度リポタンパク質(HDL)を優先的に増加させる場合がある。臨床的には、薬剤の選択は、個体のコレステロールプロファイル、個体の心血管リスク、ならびに/または個体の肝臓機能および腎臓機能に依存するものとなる。適した抗高脂血性剤の例としては、限定はないが、フィブラート、スタチン、トコトリエノール、ナイアシン、胆汁酸捕捉剤(樹脂)、コレステロール吸収阻害剤、膵リパーゼ阻害剤、および交感神経刺激アミンが挙げられる。
【0069】
治療化合物はフィブラートであることがある。フィブラートは、脂質レベルの修飾特性を有する両親媒性のカルボン酸のクラスである。これらの治療化合物は、代謝障害の範囲に使用される。非限定的な使用の一つは、抗高脂血症剤としてであり、その場合、例えば、トリグリセリドおよびLDLなどのレベルを低下させるとともに、HDLのレベルを増加させることがある。適したフィブラートの例としては、限定はないが、ベザフィブラート、シプロフィブラート、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、およびフェノフィブラートが挙げられる。
【0070】
治療化合物はスタチンであってもよい。スタチン(またはHMG-CoAレダクターゼ阻害剤)は、肝臓内のコレステロールの産生において中心的な役割を果たす酵素HMG-CoAレダクターゼを阻害することにより、LDLおよび/またはコレステロールのレベルを低下させるために使用される治療化合物のクラスである。コレステロール利用能の減少を補償するために、肝臓LDL受容体の合成が増加し、その結果、血液由来のLDL粒子のクリアランスが増加する。適切なスタチンの例としては、限定はないが、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチン、およびシンバスタチンが挙げられる。
【0071】
治療化合物はトコトリエノールであってもよい。トコトリエノールは、HMG-CoAレダクターゼ阻害剤の別のクラスであり、肝臓LDL受容体の上方制御を誘導することおよび/または血漿LDLレベルを減少させることによって、LDLおよび/またはコレステロールのレベルを低下させるために、使用されることがある。適したトコトリエノールの例としては、限定はないが、γ-トコトリエノールおよびδ-トコトリエノールが挙げられる。
【0072】
治療化合物はナイアシンであってもよい。ナイアシンは、脂質レベル修飾特性を有する治療化合物のクラスである。例えば、ナイアシンは、肝ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ2を選択的に阻害することによって、LDLを低下させることがあり、トリグリセリド合成を減少させ、受容体HM74およびHM74AまたはGPR109Aを介してVLDL分泌を減少させることがある。これらの治療化合物は、代謝障害の範囲に使用される。非限定的な使用の一つは、抗高脂血症剤としてであり、その場合、脂肪組織の脂肪の分解を阻害しうる。ナイアシンは、脂肪の分解を遮断することから、血液中の遊離脂肪酸の減少を引き起こし、結果として、非常に低密度のリポタンパク質(VLDL)およびコレステロールの肝臓による分泌が減少する。VLDLレベルを低下させることによって、ナイアシンは、血液中のHDLのレベルも増加させうる。ナイアシンの例としては、限定はないが、アシピモックス、ナイアシン、ニコチンアミド、およびビタミンB3が挙げられる。
【0073】
治療化合物は胆汁酸捕捉剤であってもよい。胆汁酸捕捉剤(樹脂としても知られる)は、胃腸管内の胆汁のある特定の構成成分に結合するために使用される治療化合物のクラスである。これらの剤は、それらの成分を捕捉して腸からの再吸収を防止することによって、胆汁酸の腸肝循環を途絶させる、胆汁酸捕捉剤は、腸内に放出されたコレステロール含有胆汁酸を捕捉し、腸からの再吸収を防止することによって、LDLおよびコレステロールを低下させるために特に有効である。さらに、胆汁酸捕捉剤は、HDLレベルも上昇させうる。適した胆汁酸捕捉剤の例としては、限定はないが、コレスチラミン、コレセベラム、およびコレスチポールが挙げられる。
【0074】
一部の態様では、治療化合物はコレステロール吸収阻害剤であってもよい。コレステロール吸収阻害剤は、腸からのコレステロールの吸収を阻害する治療化合物のクラスである。コレステロール吸収の減少は、細胞表面上のLDL受容体の上方制御と、これらの細胞内へのLDLコレステロール取り込みの増加に繋がり、それゆえに血漿中のLDLのレベルが減少する。適したコレステロール吸収阻害剤の例としては、限定はないが、エゼチミブ、フィトステロール、ステロール、およびスタノールが挙げられる。
【0075】
治療化合物は脂肪吸収阻害剤であってもよい。脂肪吸収阻害剤は、腸からの脂肪の吸収を阻害する治療化合物のクラスである。脂肪吸収の減少により、カロリー摂取が減少する。一態様では、脂肪吸収阻害剤は、腸内のトリグリセリドを分解する酵素である膵リパーゼを阻害する。適した脂肪吸収阻害剤の例としては、限定はないが、オルリスタットが挙げられる。
【0076】
治療化合物は交感神経刺激アミンであってもよい。交感神経刺激アミンは、カテコラミン類、エピネフリン(アドレナリン)、ノルエピネフリン(ノルアドレナリン)、および/またはドーパミンなどの交感神経系の伝達物質の効果を模倣する治療化合物のクラスである。交感神経刺激アミンは、α-アドレナリンアゴニスト、β-アドレナリンアゴニスト、ドーパミンアゴニスト、モノアミンオキシダーゼ(MAO)阻害剤、およびCOMT阻害剤として作用しうる。そのような治療化合物は、とりわけ、心停止、低血圧を治療するため、または早期分娩を遅延させるためにさえ使用される。適した交感神経刺激アミンの例としては、限定はないが、クレンブテロール、サルブタモール、エフェドリン、シュードエフェドリン、メタンフェタミン、アンフェタミン、フェニレフリン、イソプロテレノール、ドブタミン、メチルフェニデート、リスデキサンフェタミン、カシン、カチノン、メトカチノン、コカイン、ベンジルピペラジン(BZP)、メチレンジオキシピロバレロン(MDPV)、4-メチルアミノレックス、ペモリン、フェンメトラジン、およびプロピルヘキセドリンが挙げられる。
【0077】
別の態様では、禁煙を促進すること、またはその他ニコチンへの渇望またはニコチンへの依存性の低減または排除に際し個体を支援することを含めて、タバコまたはその他の物質の嗜癖を治療するために、イソミオスミンが投与されることがある。イソミオスミンは、MAO-AおよびMAO-Bの両方を含むモノアミンオキシダーゼ(MAO)の強力な阻害剤であることが見いだされた。これらの、および/または一つもしくは複数の前述の抗炎症機構を含むその他の機構を通じて、イソミオスミンを含有する医薬組成物は、タバコ嗜癖を治療するために、および/またはニコチンへの渇望もしくはニコチンへの依存性の低減または排除に際し個体を支援するために、特に効果的でありうる。一部の個体については、イソミオスミンの投与は、一つを超える障害を治療するために有効でありうる。例えば、COPDは、喫煙者間で比較的共通の障害である。イソミオスミンを含有する組成物は、喫煙に起因または関係しているか否か関わらず、禁煙によるのみでなく、COPDおよび/または個体の罹患する他の慢性炎症関連障害の治療においても、そのような個体を支援するのに有用となりうる。
【0078】
イソミオスミンを含有する医薬組成物は、MAO活性に関連する他の障害の治療にも有効であることがあり、そのようなものとしては、大うつ病、小うつ病、非定型うつ病、気分変調症、注意欠陥障害、多動、行為障害、ナルコレプシー、社会恐怖症、強迫性障害、非定型顔面痛、摂食障害、アルコール、オピオイド、アンフェタミン、コカイン、タバコ、および大麻(マリファナ)への依存を含む薬物離脱症候群および薬物依存性障害、抑うつ、パニック障害、過食症、アネルギー性うつ病、治療抵抗性うつ病、頭痛、慢性疼痛症候群、ならびに全般性不安障害が挙げられる。
【0079】
本明細書に開示される治療化合物は、治療化合物のエステルであってもよい。一般に、治療化合物のエステルは、エステル修飾のない同じ治療化合物に比べてlog P値が増加する。エステル基は、例えば、治療化合物の存在するカルボン酸またはヒドロキシ官能基によって、治療化合物に付加されていることがある。治療化合物のエステルは、疎水性が増加していることがあり、またそれゆえに、体積の低減した本明細書に開示される溶媒に溶解されることがある。一部の実例では、治療化合物のエステルは、本明細書に開示されるアジュバントと直接的に組み合わされてもよく、それによって溶媒の必要性が排除される。治療化合物のエステルは、同じ治療化合物の非エステル化体がそうしなければ本明細書に開示される溶媒に不混和性である場合に、本明細書に開示される医薬組成物の作製を可能にすることがある。治療化合物のエステルはさらに、その化合物が本明細書に開示されたアジュバントと組み合わされる限り、炎症促進性応答をより効果的に阻害する様式で送達されることがある。一実施形態では、治療化合物のエチルエステルを形成するために、治療化合物をエチルエステルと反応させてもよい。
【0080】
別の実施形態では、医薬組成物は、上記のような医薬的に許容可能な溶媒を含まない。この実施形態の一態様では、医薬組成物は、治療化合物および医薬的に許容可能なアジュバントを含むが医薬的に許容可能な溶媒を含まない場合がある。
【0081】
医薬組成物は、個体への習慣的な投与を可能にするのに十分な量で治療化合物を含むことがある。この実施形態の態様において、本明細書に開示される医薬組成物は、例えば、少なくとも5mg、少なくとも10mg、少なくとも15mg、少なくとも20mg、少なくとも25mg、少なくとも30mg、少なくとも35mg、少なくとも40mg、少なくとも45mg、少なくとも50mg、少なくとも55mg、少なくとも60mg、少なくとも65mg、少なくとも70mg、少なくとも75mg、少なくとも80mg、少なくとも85mg、少なくとも90mg、少なくとも95mg、または少なくとも100mgの治療化合物でありうる。この実施形態の他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、例えば、少なくとも5mg、少なくとも10mg、少なくとも20mg、少なくとも25mg、少なくとも50mg、少なくとも75mg、少なくとも100mg、少なくとも200mg、少なくとも300mg、少なくとも400mg、少なくとも500mg、少なくとも600mg、少なくとも700mg、少なくとも800mg、少なくとも900mg、少なくとも1,000mg、少なくとも1,100mg、少なくとも1,200mg、少なくとも1,300mg、少なくとも1,400mg、または少なくとも1,500mgでありうる。この実施形態のさらに他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、例えば、約5mgから約100mg、約10mgから約100mg、約50mgから約150mg、約100mgから約250mg、約150mgから約350mg、約250mgから約500mg、約350mgから約600mg、約500mgから約750mg、約600mgから約900mg、約750mgから約1,000mg、約850mgから約1,200mg、または約1,000mgから約1,500mgの範囲でありうる。この実施形態のさらに他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、例えば、約10mgから約250mg、約10mgから約500mg、約10mgから約750mg、約10mgから約1,000mg、約10mgから約1,500mg、約50mgから約250mg、約50mgから約500mg、約50mgから約750mg、約50mgから約1,000mg、約50mgから約1,500mg、約100mgから約250mg、約100mgから約500mg、約100mgから約750mg、約100mgから約1,000mg、約100mgから約1,500mg、約200mgから約500mg、約200mgから約750mg、約200mgから約1,000mg、約200mgから約1,500mg、約5mgから約1,500mg、約5mgから約1,000mg、または約5mgから約250mgの範囲でありうる。
【0082】
本明細書に記載される医薬組成物は、医薬的に許容可能な溶媒を含みうる。溶媒は、別の固体、液体、または気体を溶解する液体、固体、または気体(溶質)であり、溶体を生じる。医薬組成物に有用な溶媒としては、限定はないが、医薬的に許容可能な極性非プロトン性溶媒、医薬的に許容可能な極性プロトン性溶媒、および医薬的に許容可能な非極性溶媒が挙げられる。医薬的に許容可能な極性非プロトン性溶媒としては、限定はないが、ジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル(MeCN)、ジメチルスルホキシド(DMSO)が挙げられる。医薬的に許容可能な極性プロトン性溶媒としては、限定はないが、酢酸、ギ酸、エタノール、n-ブタノール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、1,2プロパン-ジオール、メタノール、グリセロール、および水が挙げられる。医薬的に許容可能な非極性溶媒としては、限定はないが、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、1,4-ジオキサン、クロロホルム、n-メチル-ピリリドン(pyrrilidone)(NMP)、およびジエチルエーテルが挙げられる。
【0083】
本明細書に開示される医薬組成物は、本明細書に開示される治療化合物を溶解するのに十分な量の溶媒を含みうる。この実施形態の他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、例えば、約90%(v/v)未満、約80%(v/v)未満、約70%(v/v)未満、約65%(v/v)未満、約60%(v/v)未満、約55%(v/v)未満、約50%(v/v)未満、約45%(v/v)未満、約40%(v/v)未満、約35%(v/v)未満、約30%(v/v)未満、約25%(v/v)未満、約20%(v/v)未満、約15%(v/v)未満、約10%(v/v)未満、または約5%(v/v)未満、または約1%(v/v)未満の溶媒を含みうる。この実施形態の他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、例えば約1%(v/v)から90%(v/v)、約1%(v/v)から70%(v/v)、約1%(v/v)から60%(v/v)、約1%(v/v)から50%(v/v)、約1%(v/v)から40%(v/v)、約1%(v/v)から30%(v/v)、約1%(v/v)から20%(v/v)、約1%(v/v)から10%(v/v)、約2%(v/v)から50%(v/v)、約2%(v/v)から40%(v/v)、約2%(v/v)から30%(v/v)、約2%(v/v)から20%(v/v)、約2%(v/v)から10%(v/v)、約4%(v/v)から50%(v/v)、約4%(v/v)から40%(v/v)、約4%(v/v)から30%(v/v)、約4%(v/v)から20%(v/v)、約4%(v/v)から10%(v/v)、約6%(v/v)から50%(v/v)、約6%(v/v)から40%(v/v)、約6%(v/v)から30%(v/v)、約6%(v/v)から20%(v/v)、約6%(v/v)から10%(v/v)、約8%(v/v)から50%(v/v)、約8%(v/v)から40%(v/v)、約8%(v/v)から30%(v/v)、約8%(v/v)から20%(v/v)、約8%(v/v)から15%(v/v)、または約8%(v/v)から12%(v/v)の範囲の量の溶媒を含みうる。
【0084】
一実施形態では、溶媒は、医薬的に許容可能なアルコールを含みうる。本明細書で使用される際に、用語「アルコール」は、炭素原子に結合されたヒドロキシ官能基(-OH)を含む有機分子を指し、ここで炭素原子は飽和している。この実施形態の態様では、アルコールは、例えば、C1~4アルコール、C2~4アルコール、C1~5アルコール、C1~7アルコール、C1~10アルコール、C1~15アルコール、またはC1~20アルコールでありうる。この実施形態の他の態様では、アルコールは、例えば、1級アルコール、2級アルコール、または3級アルコールでありうる。この実施形態の他の態様では、アルコールは、例えば、非環式アルコール、1価アルコール、多価アルコール(ポリオールまたは糖アルコールとしても知られる)、不飽和脂肪族アルコール、脂環式アルコール、またはそれらの組み合わせでありうる。1価アルコールの例としては、限定はないが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、および1-ヘキサデカノールが挙げられる。多価アルコールの例としては、限定はないが、グリコール、グリセロール、アラビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、ソルビトール(グルシトール)、マンニトール、イノシトール、ラクチトール、ガラクチトール(イジトール)、およびイソマルトが挙げられる。不飽和脂肪族アルコールの例としては、限定はないが、プロプ-2-エン-1-オール、3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエン-1-オール、およびプロプ-2-イン-1-オールが挙げられる。脂環式アルコールの例としては、限定はないが、シクロヘキサン-1,2,3,4,5,6-ヘキシルおよび2-(2-プロピル)-5-メチル-シクロヘキサン-1-オールが挙げられる。
【0085】
別の実施形態では、溶媒は、医薬的に許容可能なアルコールと酸とのエステルを含みうる。適した医薬的に許容可能なアルコールとしては、本明細書に開示されるものが挙げられる。適した酸としては、限定はないが、酢酸、酪酸、およびギ酸が挙げられる。アルコールと酸とのエステルとしては、限定はないが、酢酸メチル、酪酸メチル、ギ酸メチル、酢酸エチル、酪酸エチル、ギ酸エチル、酢酸プロピル、酪酸プロピル、ギ酸プロピル、酢酸ブチル、酪酸ブチル、ギ酸ブチル、酢酸イソブチル、酪酸イソブチル、ギ酸イソブチル、酢酸ペンチル、酪酸ペンチル、ギ酸ペンチル、ならびに酢酸1-ヘキサデシル、酪酸1-ヘキサデシル、およびギ酸1-ヘキサデシルが挙げられる。
【0086】
別の実施形態では、溶媒は、医薬的に許容可能なポリエチレングリコール(PEG)ポリマーを含みうる。ポリエチレンオキシド(PEO)ポリマーまたはポリオキシエチレン(POE)ポリマーとしても知られるPEGポリマーは、エチレンオキシドの重合によって調製され、100g/モル~10,000,000g/モルの広範囲の分子量にわたって市販されている。低分子量を有するPEGポリマーは液体または低融点固体であるのに対し、高分子量のPEGポリマーは固体である。PEGポリマーとしては、制限はないが、PEG100、PEG200、PEG300、PEG400、PEG500、PEG600、PEG700、PEG800、PEG900、PEG1000、PEG1100、PEG1200、PEG1300、PEG1400、PEG1500、PEG1600、PEG1700、PEG1800、PEG1900、PEG2000、PEG2100、PEG2200、PEG2300、PEG2400、PEG2500、PEG2600、PEG2700、PEG2800、PEG2900、PEG3000、PEG3250、PEG3350、PEG3500、PEG3750、PEG4000、PEG4250、PEG4500、PEG4750、PEG5000、PEG5500、PEG6000、PEG6500、PEG7000、PEG7500、PEG8000、PEG8500、PEG9000、PEG9500、PEG10,000、PEG11,000、PEG12,000、PEG13,000、PEG14,000、PEG15,000、PEG16,000、PEG17,000、PEG18,000、PEG19,000、またはPEG20,000が挙げられる。
【0087】
別の実施形態では、溶媒は、医薬的に許容可能なグリセリドを含みうる。グリセリドは、置換グリセロールを含み、ここでグリセロールの一つ、二つ、または三つ全てのヒドロキシ基は、脂肪酸を用いてそれぞれエステル化されて、モノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドをそれぞれ生成する。これらの化合物では、グリセロールの各ヒドロキシ基は、異なる脂肪酸によってエステル化されうる。さらに、グリセリドは、アセチル化されてアセチル化モノグリセリド、アセチル化ジグリセリド、およびアセチル化トリグリセリドを生成しうる。
【0088】
一実施形態では、溶媒は、医薬的に許容可能な固体溶媒を含みうる。固体溶媒は、本明細書に開示される医薬組成物の固体投与製剤の製造において有用となりうる。典型的には、固体溶媒は、治療化合物を溶解するために融解される。医薬的に許容可能な固体溶媒としては、限定はないが、上記のメントールおよびPEGポリマーが挙げられる。
【0089】
本明細書の態様は、部分的には、医薬的に許容可能なアジュバントを開示する。アジュバントは、本明細書に開示される一つまたは複数の治療化合物などの他の薬剤の効果を改変する薬理学的薬剤である。さらに、本明細書に開示されるアジュバントは、本明細書に開示される治療化合物を溶解する溶媒として使用されてもよく、アジュバント溶液を形成する。アジュバントは、炎症促進性応答をより効果的に阻害する様式で治療化合物の送達を促進しうる。一実施形態では、アジュバントは、マクロファージ内への治療化合物の送達を促進する。
【0090】
医薬組成物は、溶液またはエマルションと混合するのに十分な量で医薬的に許容可能なアジュバントを含んでもよい。この実施形態の他の態様では、医薬組成物は、例えば、少なくとも10%(v/v)、少なくとも20%(v/v)、少なくとも30%(v/v)、少なくとも35%(v/v)、少なくとも40%(v/v)、少なくとも45%(v/v)、少なくとも50%(v/v)、少なくとも55%(v/v)、少なくとも60%(v/v)、少なくとも65%(v/v)、少なくとも70%(v/v)、少なくとも75%(v/v)、または少なくとも80%(v/v)、少なくとも85%(v/v)、または少なくとも90%(v/v)、少なくとも95%(v/v)、または少なくとも99%(v/v)の量でアジュバントを含みうる。この実施形態の他の態様では、医薬組成物は、例えば、約30%(v/v)から約99%(v/v)、約35%(v/v)から約99%(v/v)、約40%(v/v)から約99%(v/v)、約45%(v/v)から約99%(v/v)、約50%(v/v)から約99%(v/v)、約30%(v/v)から約98%(v/v)、約35%(v/v)から約98%(v/v)、約40%(v/v)から約98%(v/v)、約45%(v/v)から約98%(v/v)、約50%(v/v)から約98%(v/v)、約30%(v/v)から約95%(v/v)、約35%(v/v)から約95%(v/v)、約40%(v/v)から約95%(v/v)、約45%(v/v)から約95%(v/v)、または約50%(v/v)から約95%(v/v)の範囲の量でアジュバントを含みうる。この実施形態のさらに他の態様において、医薬組成物は、例えば、約70%(v/v)から約97%(v/v)、約75%(v/v)から約97%(v/v)、約80%(v/v)から約97%(v/v)、約85%(v/v)から約97%(v/v)、約88%(v/v)から約97%(v/v)、約89%(v/v)から約97%(v/v)、約90%(v/v)から約97%(v/v)、約75%(v/v)から約96%(v/v)、約80%(v/v)から約96%(v/v)、約85%(v/v)から約96%(v/v)、約88%(v/v)から約96%(v/v)、約89%(v/v)から約96%(v/v)、約90%(v/v)から約96%(v/v)、約75%(v/v)から約93%(v/v)、約80%(v/v)から約93%(v/v)、約85%(v/v)から約93%(v/v)、約88%(v/v)から約93%(v/v)、約89%(v/v)から約93%(v/v)、または約90%(v/v)から約93%(v/v)の範囲の量でアジュバントをを含みうる。
【0091】
一実施形態では、アジュバントは、医薬的に許容可能な脂質であってもよい。脂質は、疎水性または両親媒性の小分子として広く定義されうる。一部の脂質の両親媒性により、水性環境中の小胞、リポソーム、または膜などの構造を形成することが可能になる。脂質の非限定的な例としては、脂肪酸、グリセロ脂質(モノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドなど)、リン脂質、スフィンゴ脂質、ステロール脂質、プレノール脂質、サッカロ脂質、およびポリケタイドが挙げられる。本明細書に開示される医薬組成物は、例えば、油、油性液体、脂肪、脂肪酸、ろう、脂肪酸エステル、脂肪酸塩、脂肪アルコール、グリセリド(モノグリセリド、ジグリセリド、またはトリグリセリド)、リン脂質、グリコールエステル、スクロースエステル、グリセロールオレエート誘導体、中鎖トリグリセリド、またはそれらの混合物などを含みうる。
【0092】
医薬組成物に有用な脂質は、医薬的に許容可能な脂肪酸でありうる。脂肪酸は、飽和または不飽和のどちらかでありうる長い非分枝状の炭化水素鎖を有するカルボン酸を含む。従って、配置は、極性の親水性端と水に不溶性の非極性の疎水性端とを有する脂肪酸をもたらす。天然に生じた脂肪酸のほとんどは、偶数の、典型的には4個から24個の間の炭素原子の炭化水素鎖を有し、酸素、ハロゲン、窒素、および硫黄を含有する官能基に付加されうる。合成または非天然の脂肪酸は、3個から40個の間から得られる任意の数の炭素原子の炭化水素鎖を有しうる。二重結合が存在する場合、シスまたはトランスのどちらかの幾何異性が存在する可能性があり、それは、その分子の分子的立体配置に著しい影響を及ぼす。シス二重結合は、脂肪酸鎖に屈曲を生じ、その効果は、鎖中にある二重結合が多くなるほどさらに顕著となる。天然に生じる殆どの脂肪酸はシス立体配置のものであるが、一部の天然および部分的に水素化された脂肪および油にはトランス体が存在する。脂肪酸の例としては、限定はないが、カプリル酸(8:0)、ペラルゴン酸(9:0)、カプリン酸(10:0)、ウンデシル酸(11:0)、ラウリン酸(12:0)、トリデシル酸(13:0)、ミリスチン酸(14:0)、ミリストレイン酸(14:1)、ペンタデカン酸(15:0)、パルミチン酸(16:0)、パルミトレイン酸(16:1)、サピエン酸(16:1)、マルガリン酸(17:0)、ステアリン酸(18:0)、オレイン酸(18:1)、エライジン酸(18:1)、バクセン酸(18:1)、リノール酸(18:2)、リノエライジン酸(18:2)、α-リノレン酸(18:3)、γ-リノレン酸(18:3)、ステアリドン酸(18:4)、ノナデシル酸(19:0)、アラキジン酸(20:0)、エイコセン酸(20:1)、ジホモ-γ-リノレン酸(20:3)、ミード酸(20:3)、アラキドン酸(20:4)、エイコサペンタエン酸(20:5)、ヘンイコシル酸(21:0)、ベヘン酸(22:0)、エルカ酸(22:1)、ドコサヘキサエン酸(22:6)、トリコシル酸(23:0)、リグノセリン酸(24:0)、ネルボン酸(24:1)、ペンタコシル酸(25:0)、セロチン酸(26:0)、ヘプタコシル酸(27:0)、モンタン酸(28:0)、ノナコシル酸(29:0)、メリシン酸(30:0)、ヘンアトリアコンチル酸(henatriacontylic acid)(31:0)、ラクセロ酸(32:0)、プシル酸(33:0)、ゲダ酸(34:0)、セロプラスチック酸(35:0)、およびヘキサトリアコンチル酸(36:0)が挙げられる。
【0093】
一実施形態では、アジュバントは、医薬的に許容可能な飽和脂肪酸でも不飽和脂肪酸でもありうる。飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸は、例えば、少なくとも8個、少なくとも10個、少なくとも12個、少なくとも14個、少なくとも16個、少なくとも18個、少なくとも20個、少なくとも22個、少なくとも24個、少なくとも26個、少なくとも28個、または少なくとも30個の炭素原子を含みうる。一部の実例では、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸は、例えば、4個から24個の間の炭素原子、6個から24個の間の炭素原子、8個から24個の間の炭素原子、10個から24個の間の炭素原子、12個から24個の間の炭素原子、14個から24個の間の炭素原子、または16個から24個の間の炭素原子、4個から22個の間の炭素原子、6個から22個の間の炭素原子、8個から22個の間の炭素原子、10個から22個の間の炭素原子、12個から22個の間の炭素原子、14個から22個の間の炭素原子、または16個から22個の間の炭素原子、4個から20個の間の炭素原子、6個から20個の間の炭素原子、8個から20個の間の炭素原子、10個から20個の間の炭素原子、12個から20個の間の炭素原子、14個から20個の間の炭素原子、または16個から20個の間の炭素原子を含む。不飽和である場合、脂肪酸は、例えば、1つ以上、2つ以上、3つ以上、4つ以上、5つ以上、または6つ以上の二重結合を有しうる。
【0094】
医薬的に許容可能な飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸は、室温で液体であってもよい。脂肪酸の融点は、主に炭化水素鎖の飽和度/不飽和度によって大部分が決定される。この実施形態の態様では、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸は、例えば、20℃以下、15℃以下、10℃以下、5℃以下、0℃以下、-5℃以下、-10℃以下、-15℃以下、または-20℃以下の融点温度を有する。この実施形態の他の態様では、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸は、例えば、約-20℃から約20℃、約-20℃から約18℃、約-20℃から約16℃、約-20℃から約12℃、約-20℃から約8℃、約-20℃から約4℃、約-20℃から約0℃、約-15℃から約20℃、約-15℃から約18℃、約-15℃から約16℃、約-15℃から約12℃、約-15℃から約8℃、約-15℃から約4℃、または約-15℃から約0℃の範囲の融点温度を有する。
【0095】
別の実施形態では、アジュバントは、一種類の医薬的に許容可能な脂肪酸を含みうる。アジュバントは、例えば、パルミチン酸のみ、ステアリン酸のみ、オレイン酸のみ、リノール酸のみ、またはリノレン酸のみを含みうる。あるいは、アジュバントは、複数の異なる医薬的に許容可能な脂肪酸を含むことがある。アジュバントは、例えば、二つ以上の異なる脂肪酸、三つ以上の異なる脂肪酸、四つ以上の異なる脂肪酸、五つ以上の異なる脂肪酸、または六つ以上の異なる脂肪酸を含みうる。
【0096】
この実施形態の他の態様では、アジュバントは、少なくともパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、および/またはリノレン酸、ならびにそれらの任意の組み合わせを含む二つ以上の異なる医薬的に許容可能な脂肪酸を含みうる。アジュバントは、例えば、少なくとも2:1、少なくとも3:1、少なくとも4:1、少なくとも5:1、少なくとも6:1、少なくとも7:1、少なくとも8:1、少なくとも9:1、少なくとも10:1、少なくとも15:1、または少なくとも20:1のパルミチン酸および/またはステアリン酸および/またはオレイン酸:リノレン酸および/またはリノール酸の比率を含みうる。一部の実施例では、アジュバントは、例えば、約1:1から約20:1、約2:1から約15:1、約4:1から約12:1、または約6:1から約10:1の範囲のパルミチン酸および/またはステアリン酸および/またはオレイン酸:リノレン酸および/またはリノール酸の比率を含みうる。
【0097】
この実施形態の他の態様では、アジュバントは、少なくともパルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸および/またはリノレン酸、ならびにそれらの任意の組み合わせを含む、四つ以上の異なる医薬的に許容可能な脂肪酸を含みうる。この実施形態の他の態様では、アジュバントは、例えば、10:10:1:1、9:9:1:1、8:8:1:1、7:7:1:1、6:6:1:1、5:5:1:1、4:4:1:1、3:3:1:1、2:2:1:1、または1:1:1:1のパルミチン酸:ステアリン酸:リノレン酸:リノール酸の比率を含みうる。この実施形態の他の態様では、アジュバントは、例えば、約10:10:1:1から約6:6:1:1、約8:8:1:1から約4:4:1:1、または約5:5:1:1から約1:1:1:1の範囲のパルミチン酸:ステアリン酸:リノレン酸:リノール酸の比率を含みうる。
【0098】
医薬組成物に有用な脂質は、医薬的に許容可能なオメガ脂肪酸であることがある。オメガ脂肪酸の非限定的な例としては、オメガ-3、オメガ-6、およびオメガ-9が挙げられる。オメガ-3脂肪酸(n-3脂肪酸またはω-3脂肪酸としても知られる)は、n-3位に最後の炭素-炭素二重結合を、すなわち脂肪酸のメチル末端から数えて3番目の結合を、共通して有する必須な不飽和脂肪酸のファミリーである。オメガ-3脂肪酸は、通常の代謝に不可欠であり人体によって合成できないため、「必須」脂肪酸である。オメガ-3脂肪酸としては、限定はないが、ヘキサデカトリエン酸(16:3)、α-リノレン酸(18:3)、ステアリドン酸(18:4)、エイコサトリエン酸(20:3)、エイコサテトラエン酸(20:4)、エイコサペンタエン酸(20:5)、ヘンエイコサペンタエン酸(21:5)、ドコササペンタエン酸(22:5)、クルパノドン酸(22:5)、ドコサヘキサエン酸(22:6)、テトラコサペンタエン酸(24:5)、およびテトラコサヘキサエン酸(ニシン酸)が挙げられる(24:6)。
【0099】
オメガ-6脂肪酸(n-6脂肪酸またはω-6脂肪酸としても知られる)は、n-6位に最後の炭素-炭素二重結合を、すなわち脂肪酸のメチル末端から数えて6番目の結合を、共通して有する不飽和脂肪酸のファミリーである。オメガ-6脂肪酸としては、限定はないが、リノール酸(18:2)、ガンマ-リノレン酸(18:3)、カレンジン酸(18:3)、エイコサジエン酸(20:2)、ジホモ-ガンマ-リノレン酸(20:3)、アラキドン酸(20:4)、ドコサジエン酸(22:2)、アドレン酸(22:4)、ドコサペンタエン酸(22:5)、テトラコサテトラエン酸(24:4)、およびテトラコサペンタエン酸(24:5)が挙げられる。オメガ-9脂肪酸(n-9脂肪酸またはω-9脂肪酸としても知られる)は、n-9位に最後の炭素-炭素二重結合を、すなわち、脂肪酸のメチル末端から数えて9番目の結合を、共通して有する不飽和脂肪酸のファミリーである。オメガ-9脂肪酸としては、限定はないが、オレイン酸(18:1)、エライジン酸(18:1)、エイコセン酸(20:1)、ミード酸(20:3)、エルカ酸(22:1)、およびネルボン酸(24:1)が挙げられる。
【0100】
本明細書に開示される医薬組成物に有用な脂質は、医薬的に許容可能な油であることがある。油としては、通常の室温で、例えば約20℃で液体である任意の脂肪酸が挙げられる。これに対して、脂肪としては、通常の室温で、例えば20℃で固体である任意の脂肪酸が挙げられる。本明細書に開示される医薬組成物に有用な脂質として適した油は、天然油または植物油でありうる。適した天然油の例としては、限定はないが、鉱油、トリアセチン、オレイン酸エチル、水素化天然油、またはそれらの混合物が挙げられる。適した植物油の例としては、限定はないが、アーモンド油、落花生油、アボカド油、キャノーラ油、ヒマシ油、ココナッツ油、コーン油、綿実油、グレープシード油、ヘーゼルナッツ油、ヘンプ油、アマニ油(亜麻仁油)、オリーブ油、パーム油、ピーナッツ油、菜種油、米糠油、紅花油、胡麻油、大豆油、ダイズ油、ヒマワリ油、ウォルナッツ油、小麦胚芽油、またはそれらの混合物が挙げられる。これらの各油は、当業者によってよく認識されている多数の供給元から市販されている。
【0101】
油は、典型的には様々な脂肪酸の混合物である。例えば、セイヨウアブラナの種子から得られる菜種油は、約2:1の比でオメガ-6脂肪酸とオメガ-3脂肪酸の両方を含む。別の例として、亜麻の種子から得られるアマニ油は、約7%のパルミチン酸、約3.4~4.6%のステアリン酸、約18.5~22.6%のオレイン酸、約14.2~17%のリノール酸、および約51.9~55.2%のα-リノレン酸を含む。一部の実例では、医薬組成物は、少なくとも二つの異なる脂肪酸、少なくとも三つの異なる脂肪酸、少なくとも四つの異なる脂肪酸、少なくとも五つの異なる脂肪酸、または少なくとも六つの異なる脂肪酸を含む油を含む。
【0102】
医薬組成物に有用な脂質は、医薬的に許容可能なグリセロ脂質であることがある。グリセロ脂質は、主にモノ置換グリセロール、ジ置換グリセロール、およびトリ置換グリセロールから構成される。グリセロ脂質のグループの一つは、グリセリドであり、そこでは、グリセロールの一つ、二つまたは三つ全てのヒドロキシ基は、脂肪酸を用いてそれぞれエステル化され、それぞれモノグリセリド、ジグリセリド、およびトリグリセリドを生成する。これらの化合物では、グリセロールの各ヒドロキシ基は、異なる脂肪酸によってエステル化されうる。さらに、グリセリドは、アセチル化されてアセチル化モノグリセリド、アセチル化ジグリセリド、およびアセチル化トリグリセリドを生成しうる。グリセロ脂質のグループの一つは、グリセリドであり、そこでは、グリセロールの一つ、二つ、または三つ全てのヒドロキシ基は、グリコシド結合を介して付加された糖残基を有する。
【0103】
一部の実例では、組成物は、一つまたは複数の医薬的に許容可能な安定化剤を含みうる。安定化剤は、使用される特定の溶媒との望ましくない反応として結果的に生じうる治療化合物のエステルの形成を、低減または排除する。安定化剤としては、限定はないが、水、脂肪酸成分と酢酸とを含む犠牲酸(sacrificial acid)、酢酸エチル、酢酸ナトリウム/酢酸(E262)、モノグリセリド、アセチル化モノグリセリド、ジグリセリド、アセチル化モノグリセリド、アセチル化ジグリセリド、脂肪酸、および脂肪酸塩が挙げられる。
【0104】
一実施形態では、医薬的に許容可能な安定化剤は、医薬的に許容可能な乳化剤を含みうる。乳化剤(エマルジョントとしても知られる)は、その動力学的安定性を増加させることによって、液体分散相と液体連続相とを含む乳濁液を安定化させる物質である。そのため、本明細書に開示される医薬組成物を作製するために使用される溶媒およびアジュバントが通常は非混和性である状況では、本明細書に開示される乳化剤は、均一で安定した乳濁液を作り出すために使用される。乳化剤としては、限定はないが、界面活性剤、多糖、レクチン、およびリン脂質が挙げられる。
【0105】
この実施形態の一態様では、乳化剤は界面活性剤を含みうる。本明細書に使用される際に、用語「界面活性剤」は、天然または合成の両親媒性化合物を指す。界面活性剤は、非イオン性、双性イオン性、またはイオン性とすることができる。界面活性剤の非限定的な例としては、ポリソルベート20(TWEEN(登録商標)20)、ポリソルベート40(TWEEN(登録商標)40)、ポリソルベート60(TWEEN(登録商標)60)、ポリソルベート61(TWEEN(登録商標)61)、ポリソルベート65(TWEEN(登録商標)65)、ポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)、ポリソルベート81(TWEEN(登録商標)81)などのポリソルベート;ポロキサマー(ポリエチレン-ポリプロピレンコポリマー)、例えばポロキサマー124(PLURONIC(登録商標)L44)、ポロキサマー181(PLURONIC(登録商標)L61)、ポロキサマー182(PLURONIC(登録商標)L62)、ポロキサマー184(PLURONIC(登録商標)L64)、ポロキサマー188(PLURONIC(登録商標)F68)、ポロキサマー 237(PLURONIC(登録商標)F87)、ポロキサマー338(PLURONIC(登録商標)L108)、ポロキサマー407(PLURONIC(登録商標)F127)など、ポリオキシエチレングリコールドデシルエーテル、例えばBRIJ(登録商標)30およびBRIJ(登録商標)35など;2-ドデコキシエタノール(LUBROL(登録商標)-PX);ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル(TRITON(登録商標)X-100);ドデシル硫酸ナトリウム(SDS);3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-1-プロパンスルホナート(CHAPS);3-[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホナート(CHAPSO);ラウリン酸スクロース;およびコール酸ナトリウムが挙げられる。界面活性賦形剤の他の非限定的な例は、例えば、Ansel,supra,(1999);Gennaro,supra,(2000);Hardman,supra,(2001);およびRowe,supra,(2003)に見出すことができ、そのそれぞれは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0106】
この実施形態の一態様では、乳化剤は多糖を含みうる。多糖類の非限定的な例としては、グアーガム、アガー、アルギン酸、カルギーン(calgene)、デキストラン(例えばデキストラン1K、デキストラン4K、デキストラン40K、デキストラン60K、およびデキストラン70K)、デキストリン、グリコーゲン、イヌリン、デンプン、デンプン誘導体(例えばヒドロキシメチルデンプン、ヒドロキシエチルデンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシブチルデンプン、およびヒドロキシペンチルデンプン)、ヘタスターチ、セルロース、FICOLL、メチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(NEMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC);ポリ酢酸ビニル(PVA);ポビドンとしても知られ、K値18以下、K値18超もしくは95以下、またはK値95超を有するポリビニルピロリドン(PVP)、例えばPVP 12(KOLLIDON(登録商標)12)、PVP 17(KOLLIDON(登録商標)17)、PVP 25(KOLLIDON(登録商標)25)、PVP 30(KOLLIDON(登録商標)30)、PVP 90(KOLLIDON(登録商標)90);ならびにポリエチレンイミン(PEI)が挙げられる。
【0107】
この実施形態の一態様では、乳化剤はレクチンを含みうる。レクチンは、糖部分に高い特異性がある糖結合タンパク質である。レクチンは、それらが結合する糖部分に従って分類されることがあり、マンノース結合レクチン、ガラクトース/N-アセチルガラクトサミン結合レクチン、N-アセチルグルキソサミン(N-acetylgluxosamine)結合レクチン、N-アセチルノイラミン結合レクチン、N-アセチルノイラミン酸結合レクチン、ならびにフコース結合レクチンを含むが限定はない。界面活性剤の非限定的な例としては、コンカナバリンA、レンズマメレクチン、スノードロップレクチン、ロイン、ピーナッツ凝集素、ジャカイン(jacain)、へアリベッチレクチン、コムギ胚芽凝集素、エルダーベリーレクチン、イヌエンジュ白血球凝集素、イヌエンジュ赤血球凝集素、ハリエニシダ凝集素、およびヒイロチャワンタケレクチンが挙げられる。
【0108】
この実施形態の一態様では、乳化剤はリン脂質を含みうる。リン脂質の構造は、一般的に、疎水性尾部と親水性頭部とを含み、天然では両親媒性である。ほとんどのリン脂質は、ジグリセリドと、リン酸基と、コリンなどの単純な有機分子とを含有するが、このルールの例外の一つはスフィンゴミエリンであり、これはグリセロールの代わりにスフィンゴシンから誘導される。リン脂質としては、限定はないが、ジアシルグリセリドおよびリンスフィンゴ脂質が挙げられる。ジアシルグリセリドの非限定的な例としては、ホスファチジン酸(ホスファチデート)(PA)、ホスファチジルエタノールアミン(セファリン)(PE)、ホスファチジルコリン(レシチン)(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、ならびにホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルイノシトールリン酸(PIP)、ホスファチジルイノシトール2リン酸(PIP2)、およびホスファチジルイノシトール3リン酸(PIP3)を含むホスホイノシチドが挙げられる。リンスフィンゴ脂質の非限定的な例としては、セラミドホスホリルコリン(スフィンゴミエリン)(SPH)、セラミドホスホリルエタノールアミン(スフィンゴミエリン)(Cer-PE)、およびセラミドホスホリルグリセロールが挙げられる。
【0109】
一実施形態では、医薬的に許容可能な安定化剤は、医薬的に許容可能な乳化剤を含まない。
【0110】
別の実施形態では、医薬組成物は、医薬的に許容可能な乳化剤を含まない。
【0111】
医薬組成物は、炎症促進性応答をより効果的に阻害する様式で、身体の細胞型、組織、器官または領域に対して治療化合物をより効果的に送達または標的化することを可能にする、送達システムとして作用しうる。この阻害は、慢性炎症の治療の改善をもたらす。例えば、医薬組成物は、本明細書に開示される治療化合物のマクロファージ内への送達を促進しうる。この選択的な生体内分布を達成する可能な機構の一つは、本明細書に開示される医薬組成物がカイロミクロンの活性を利用するように設計されることである。カイロミクロンは、75nmから1,200nmの直径を有する比較的大きなリポタンパク質粒子である。トリグリセリド(85~92%)、リン脂質(6~12%)、コレステロール(1~3%)、およびアポリポタンパク質(1~2%)を含み、カイロミクロンは、食物性脂質を腸から体内の他の場所へと輸送する。カイロミクロンは、リポタンパク質の五つの主要なグループのうちの一つであるが、その他はVLDL、IDL、低密度リポタンパク質(LDL)、高密度リポタンパク質(HDL)であり、それらは脂肪およびコレステロールが血流の水性溶液内で移動することを可能にする。
【0112】
消化中、脂肪酸およびコレステロールは、リパーゼを含む膵液の作用と胆汁酸塩による乳化によって、胃腸管内で処理を受け、ミセルを生成する。これらのミセルは、腸細胞として知られる小腸の吸収細胞による、遊離脂肪酸としての脂質の吸収を可能にする。腸細胞に入ると、トリグリセリドおよびコレステロールは、新生のカイロミクロンに組み立てられる。新生のカイロミクロンは、主にトリグリセリド(85%)から構成され、いくつかのコレステロールおよびコレステリルエステルを含有する。主要なアポリポタンパク質の構成成分は、アポリポタンパク質B-48(APOB48)である。これらの新生のカイロミクロンは、エキソサイトーシスによって腸細胞から乳び管内、すなわち小腸の絨毛に由来するリンパ管内に放出され、次いで、胸管の左鎖骨下静脈との接合点で血流内に分泌される。
【0113】
リンパ液および血液中で循環する間、カイロミクロンは、HDLと構成成分を交換する。HDLは、アポリポタンパク質C-II(APOC2)およびアポリポタンパク質E(APOE)を新生のカイロミクロンに供与し、それゆえにそれを成熟カイロミクロン(多くの場合に単に「カイロミクロン」と称する)に変換する。APOC2は、リポタンパク質リパーゼ(LPL)活性のための補因子である。トリグリセリド貯蔵が分配されると、カイロミクロンは、APOC2をHDLに戻し(しかしAPOEを保ち)、ゆえにカイロミクロンのレムナントとなり、そのため30~50nmに過ぎないものとなる。APOB48およびAPOEは、肝臓のカイロミクロンのレムナントを特定し、リポタンパク質(VLDL、LDL、およびHDL)に分解するために重要である。これらのリポタンパク質は、例えば、肝細胞、脂肪細胞、およびマクロファージを含む担当細胞によって処理され、保存される。そのため、いかなる理論にも制限されることは望むものではないが、経口投与されると、本明細書に開示される医薬組成物は、ミセルに処理され、一方で胃腸管内では、腸細胞によって吸収されて新生のカイロミクロンに組み立てられ、肝臓によって取り込まれたカイロミクロンのレムナントに結びつけられたままとなり、最終的にはマクロファージにロードされる。
【0114】
本明細書の態様は、部分的に、本明細書に開示される医薬組成物を調製する方法を開示する。本明細書に開示される方法は、治療的に許容可能なアジュバントに治療化合物が溶解することを可能にする条件下で、本明細書に開示される医薬的に許容可能なアジュバントを本明細書に開示される治療化合物に接触させ、それによって本明細書に開示される医薬組成物を形成するステップを含む。
【0115】
本明細書の他の態様としては、医薬組成物を調製する方法が挙げられる。方法は、a)医薬的に許容可能な溶媒に治療化合物を溶解することを可能にする条件下で、医薬的に許容可能な溶媒を治療化合物に接触させ、それによって溶液を形成するステップ、およびb)医薬組成物の形成を可能にする条件下で、ステップ(a)で形成された溶液を、本明細書に開示される医薬的に許容可能なアジュバントに接触させるステップを含みうる。調製方法は、医薬組成物から医薬的に許容可能な溶媒を除去するステップ(c)をさらに含みうる。
【0116】
本方法のステップ(a)で医薬的に許容可能な溶媒と接触する治療化合物の量は、広く変化しうる。使用される治療用化合物の量に影響を与える可能性のある要因としては、特に、医薬組成物中の所望の治療化合物の最終的な量、溶液中の治療化合物の所望の濃度、治療化合物の疎水性、治療化合物の疎油性、接触するステップ(a)が実施される温度、および接触するステップ(a)が実施される時間が挙げられる。
【0117】
本方法のステップ(a)で使用される医薬的に許容可能な溶媒の体積は、広範囲にわたって変化しうる。使用される医薬的に許容可能な溶媒の体積に影響を与える可能性のある要因としては、特に、所望の医薬組成物の最終的な量、溶液中の治療化合物の所望の濃度、治療化合物の疎水性、および治療化合物の疎油性が挙げられる。
【0118】
この実施形態の態様では、ステップ(a)で溶媒と接触する治療化合物の量は、例えば、少なくとも10mg、少なくとも20mg、少なくとも30mg、少なくとも40mg、少なくとも50mg、少なくとも60mg、少なくとも70mg、少なくとも80mg、少なくとも90mg、少なくとも100mg、少なくとも200mg、少なくとも300mg、少なくとも400mg、少なくとも500mg、少なくとも600mg、少なくとも700mg、少なくとも800mg、少なくとも900mg、少なくとも1,000mg、少なくとも1,100mg、少なくとも1,200mg、少なくとも1,300mg、少なくとも1,400mg、または少なくとも1,500mgでありうる。この実施形態の他の態様では、ステップ(a)で溶媒と接触する治療化合物の量は、例えば、約10mgから約100mg、約50mgから約150mg、約100mgから約250mg、約150mgから約350mg、約250mgから約500mg、約350mgから約600mg、約500mgから約750mg、約600mgから約900mg、約750mgから約1,000mg、約850mgから約1,200mg、または約1,000mgから約1,500mgの範囲でありうる。この実施形態の他の態様では、ステップ(a)で溶媒中に溶解される治療化合物の量は、例えば、約10mgから約250mg、約10mgから約500mg、約10mgから約750mg、約10mgから約1,000mg、約10mgから約1,500mg、約50mgから約250mg、約50mgから約500mg、約50mgから約750mg、約50mgから約1,000mg、約50mgから約1,500mg、約100mgから約250mg、約100mgから約500mg、約100mgから約750mg、約100mgから約1,000mg、約100mgから約1,500mg、約200mgから約500mg、約200mgから約750mg、約200mgから約1,000mg、または約200mgから約1,500mgの範囲でありうる。
【0119】
ステップ(a)は、治療用化合物が医薬的に許容可能な溶媒に完全に溶解することを可能にするために、室温で実施されることがある。しかしながら、本方法のその他の実施形態では、ステップ(a)は、室温よりも高い、例えば21℃よりも高い、25℃よりも高い、30℃よりも高い、35℃よりも高い、または37℃よりも高い温度で実施されることがある。ある特定の場合には、治療化合物が完全に溶媒に溶解することを可能にするために、ステップ(a)は、室温を下回る温度で実施されることがある。しかし、本方法の他の実施形態では、ステップ(a)は、室温よりも低い、例えば10℃より低い、5℃より高い、0℃より高い、-10℃より高い、または-20℃より高い温度で実施されることがある。ステップ(a)の接触は、治療化合物と医薬的に許容可能な溶媒とを、例えば撹拌、反転、超音波処理、またはボルテックス処理によって混合することを含むことがある。この混合は、治療化合物が溶媒に完全に溶解されるまで、例えば、少なくとも1秒、少なくとも5秒、少なくとも10秒、少なくとも20秒、少なくとも30秒、少なくとも45秒、少なくとも60秒、またはそれより長く実施されうる。
【0120】
溶液中の治療化合物の濃度は、広範囲にわたって変化しうる。一例として、治療化合物の濃度は、少なくとも0.00001mg/mL、少なくとも0.0001mg/mL、少なくとも0.001mg/mL、少なくとも0.01mg/mL、少なくとも0.1mg/mL、少なくとも1mg/mL、少なくとも10mg/mL、少なくとも25mg/mL、少なくとも50mg/mL、少なくとも100mg/mL、少なくとも200mg/mL、少なくとも500mg/mL、少なくとも700mg/mL、少なくとも1,000mg/mL、または少なくとも1,200mg/mLでありうる。治療化合物の濃度は、例えば、最大1,000mg/mL、最大1,100mg/mL、最大1,200mg/mL、最大1,300mg/mL、最大1,400mg/mL、最大1,500mg/mL、最大2,000mg/mL、最大2,000mg/mL、または最大3,000mg/mLであることがある。一部の実例では、治療化合物の濃度は、例えば、約0.00001mg/mLから約3,000mg/mL、約0.0001mg/mLから約3,000mg/mL、約0.01mg/mLから約3,000mg/mL、約0.1mg/mLから約3,000mg/mL、約1mg/mLから約3,000mg/mL、約250mg/mLから約3,000mg/mL、約500mg/mLから約3,000mg/mL、約750mg/mLから約3,000mg/mL、約1,000mg/mLから約3,000mg/mL、約100mg/mLから約2,000mg/mL、約250mg/mLから約2,000mg/mL、約500mg/mLから約2,000mg/mL、約750mg/mLから約2,000mg/mL、約1,000mg/mLから約2,000mg/mL、約100mg/mLから約1,500mg/mL、約250mg/mLから約1,500mg/mL、約500mg/mLから約1,500mg/mL、約750mg/mLから約1,500mg/mL、約1,000mg/mLから約1,500mg/mL、約100mg/mLから約1,200mg/mL、約250mg/mLから約1,200mg/mL、約500mg/mLから約1,200mg/mL、約750mg/mLから約1,200mg/mL、約1,000mg/mLから約1,200mg/mL、約100mg/mLから約1,000mg/mL、約250mg/mLから約1,000mg/mL、約500mg/mLから約1,000mg/mL、約750mg/mLから約1,000mg/mL、約100mg/mLから約750mg/mL、約250mg/mLから約750mg/mL、約500mg/mLから約750mg/mL、約100mg/mLから約500mg/mL、約250mg/mLから約500mg/mL、約0.00001mg/mLから約0.0001mg/mL、約0.00001mg/mLから約0.001mg/mL、約0.00001mg/mLから約0.01mg/mL、約0.00001mg/mLから約0.1mg/mL、約0.00001mg/mLから約1mg/mL、約0.001mg/mLから約0.01mg/mL、約0.001mg/mLから約0.1mg/mL、約0.001mg/mLから約1mg/mL、約0.001mg/mLから約10mg/mL、または約0.001mg/mLから約100mg/mLの範囲にありうる。
【0121】
本方法のステップ(b)で使用される医薬的に許容可能なアジュバントの体積は、任意の所望の体積であってよい。使用される医薬的に許容可能なアジュバントの体積を決定するために用いられる因子としては、限定はないが、所望の医薬組成物の最終量、医薬組成物中の治療化合物の所望の濃度、使用される溶媒:アジュバントの比率、および溶媒とアジュバントとの混和性が挙げられる。
【0122】
この実施形態の態様では、溶液:アジュバントの比率は、例えば、少なくとも5:1、少なくとも4:1、少なくとも3:1、少なくとも2:1、少なくとも0:1、少なくとも1:1、少なくとも1:2、少なくとも1:3、少なくとも1:4、少なくとも1:5、少なくとも1:6、少なくとも1:7、少なくとも1:8、少なくとも1:9、少なくとも1:10、少なくとも1:15、少なくとも1:20、または少なくとも1:25でありうる。この実施形態の他の態様では、溶液:アジュバントの比率は、例えば、約5:1から約1:25、約4:1から約1:25、約3:1から約1:25、約2:1から約1:25、約0:1から約1:25、約1:1から約1:25、約1:2から約1:25、約1:3から約1:25、約1:4から約1:25、約1:5から約1:25、約5:1から約1:20、約4:1から約1:20、約3:1から約1:20、約2:1から約1:20、約0:1から約1:20、約1:1から約1:20、約1:2から約1:20、約1:3から約1:20、約1:4から約1:20、約1:5から約1:20、約5:1から約1:15、約4:1から約1:15、約3:1から約1:15、約0:1から約1:15、約2:1から約1:15、約1:1から約1:15、約1:2から約1:15、約1:3から約1:15、約1:4から約1:15、約1:5から約1:15、約5:1から約1:12、約4:1から約1:12、約3:1から約1:12、約2:1から約1:12、約0:1から約1:12、約1:1から約1:12、約1:2から約1:12、約1:3から約1:12、約1:4から約1:12、約1:5から約1:12、約1:6から約1:12、約1:7から約1:12、約1:8から約1:12、約5:1から約1:10、約4:1から約1:10、約3:1から約1:10、約2:1から約1:10、約0:1から約1:10、約1:1から約1:10、約1:2から約1:10、約1:3から約1:10、約1:4から約1:10、約1:5から約1:10、約1:6から約1:10、約1:7から約1:10、または約1:8から約1:10の範囲にありうる。
【0123】
ステップ(b)は、治療化合物を含む溶液が医薬組成物を形成することを可能にするように、室温で実施されてもよい。しかし、本方法の他の実施形態では、ステップ(b)は、室温より高い、例えば21℃より高い、25℃より高い、30℃より高い、35℃より高い、または37℃より高い温度で実施されてもよい。ある特定の場合には、治療化合物が医薬的に許容可能な溶媒に完全に溶解することを可能にするために、ステップ(b)は、室温を下回る温度で実施されてもよい。しかしながら、本方法の他の実施形態では、ステップ(b)は、室温より低い、例えば10℃よりも低い、5℃より高い、0℃より高い、-10℃より高い、または-20℃より高い温度で実施されてもよい。ステップ(b)の接触は、溶液と医薬的に許容可能なアジュバントとを、例えば撹拌、反転、超音波処理、またはボルテックス処理によって混合することを含むことがある。混合は、医薬組成物が形成されるまで、例えば、少なくとも1秒、少なくとも5秒、少なくとも10秒、少なくとも20秒、少なくとも30秒、少なくとも45秒、少なくとも60秒、またはそれより長く実施されうる。
【0124】
ステップ(c)では、医薬組成物からの溶媒の除去は、当技術分野で公知の様々な手順のうちの一つを用いて達成されるが、そのようなものとしては、限定はないが、蒸発、透析、蒸留、凍結乾燥、および濾過が挙げられる。これらの除去手順は、周囲雰囲気下、低圧下、または真空下で行われることがある。
【0125】
一実施形態では、ステップ(c)は、結果として、本明細書に開示される医薬組成物から医薬的に許容可能な溶媒を完全に除去しうる。この実施形態の態様では、ステップ(c)は、結果として、本明細書に開示される医薬組成物から医薬的に許容可能な溶媒の例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも93%、少なくとも95%、少なくとも97%、または少なくとも99%を除去しうる。
【0126】
ステップ(c)は、本明細書に開示される医薬的に許容可能な溶媒の蒸発を可能にする温度で実施され、その場合、蒸発温度は溶媒に依存的である。本明細書に開示される溶媒の蒸発温度に影響を与える要因としては、限定はないが、使用される特定の溶媒、存在する溶媒の量、存在する特定の治療化合物、存在する特定のアジュバント、存在する治療化合物の安定性、存在する治療化合物の反応性、使用される特定の大気圧、完全な蒸発に望ましい時間が挙げられる。一般的に、医薬組成物は、蒸発工程が周囲圧力、例えば1atmで行われる場合に、加熱を必要とするものとなる。ただし、高真空条件下では、蒸発工程は、周囲温度を下回る温度、例えば22℃未満で行われうる。
【0127】
一実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物からの溶媒の除去は、周囲大気圧で、および周囲温度を超える温度で実施されうる。この実施形態の態様では、医薬組成物からの溶媒の除去は、周囲大気圧および例えば、25℃超、30℃超、35℃超、40℃超、45℃超、50℃超、55℃超、60℃超、65℃超、70℃超、80℃超、または85℃超の温度でありうる。この実施形態の他の態様では、医薬組成物からの溶媒の除去は、周囲大気圧および例えば、約25℃から約100℃、約25℃から約95℃、約25℃から約90℃、約25℃から約85℃、約25℃から約80℃、約25℃から約75℃、約25℃から約70℃、約25℃から約65℃、または約25℃から約60℃の範囲の温度で実施されうる。
【0128】
別の実施形態では、医薬組成物からの溶媒の除去は、真空下で、および周囲温度を下回る温度で実施されうる。この実施形態の態様では、医薬組成物からの溶媒の除去は、真空下で、および例えば、20℃よりも低い、18℃よりも低い、16℃よりも低い、14℃よりも低い、12℃よりも低い、10℃よりも低い、8℃よりも低い、6℃よりも低い、4℃よりも低い、2℃よりも低い、または0℃よりも低い温度で実施されうる。この実施形態の他の態様では、医薬組成物からの溶媒の除去は、真空下で、約-20℃から約20℃、約-20℃から約18℃、約-20℃から約16℃、約-20℃から約14℃、約-20℃から約12℃、約-20℃から約10℃、約-20℃から約8℃、約-20℃から約6℃、約-20℃から約4℃、約-20℃から約2℃、約-20℃から約0℃、約-15℃から約20℃、約-10℃から約20℃、約-5℃から約20℃、約0℃から約20℃、約-10℃から約20℃、約-10℃から約18℃、約-10℃から約16℃、約-10℃から約14℃、約-10℃から約12℃、約-10℃から約10℃、約-10℃から約8℃、約-10℃から約6℃、約-10℃から約4℃、約-10℃から約2℃、または約-10℃から約0℃の範囲の温度で実施されうる。
【0129】
本明細書に開示される医薬組成物中の治療化合物の最終濃度は、広範囲にわたって変化し得、概して治療有効量として特徴付けられうる。一部の態様では、医薬組成物中の治療化合物の最終濃度は、例えば、少なくとも0.00001mg/mL、少なくとも0.0001mg/mL、少なくとも0.001mg/mL、少なくとも0.01mg/mL、少なくとも0.1mg/mL、少なくとも1mg/mL、少なくとも10mg/mL、少なくとも25mg/mL、少なくとも50mg/mL、少なくとも100mg/mL、少なくとも200mg/mL、少なくとも500mg/mL、少なくとも700mg/mL、少なくとも1,000mg/mL、または少なくとも1,200mg/mLでありうる。この実施形態の他の態様では、溶液中の本明細書に開示される治療化合物の濃度は、例えば、最大で1,000mg/mL、最大で1,100mg/mL、最大で1,200mg/mL、最大で1,300mg/mL、最大で1,400mg/mL、最大で1,500mg/mL、最大で2,000mg/mL、最大で2,000mg/mL、または最大で3,000mg/mLでありうる。この実施形態の他の態様では、医薬組成物中の治療化合物の最終濃度は、例えば、約0.00001mg/mLから約3,000mg/mL、約0.0001mg/mLから約3,000mg/mL、約0.01mg/mLから約3,000mg/mL、約0.1mg/mLから約3,000mg/mL、約1mg/mLから約3,000mg/mL、約250mg/mLから約3,000mg/mL、約500mg/mLから約3,000mg/mL、約750mg/mLから約3,000mg/mL、約1,000mg/mLから約3,000mg/mL、約100mg/mLから約2,000mg/mL、約250mg/mLから約2,000mg/mL、約500mg/mLから約2,000mg/mL、約750mg/mLから約2,000mg/mL、約1,000mg/mLから約2,000mg/mL、約100mg/mLから約1,500mg/mL、約250mg/mLから約1,500mg/mL、約500mg/mLから約1,500mg/mL、約750mg/mLから約1,500mg/mL、約1,000mg/mLから約1,500mg/mL、約100mg/mLから約1,200mg/mL、約250mg/mLから約1,200mg/mL、約500mg/mLから約1,200mg/mL、約750mg/mLから約1,200mg/mL、約1,000mg/mLから約1,200mg/mL、約100mg/mLから約1,000mg/mL、約250mg/mLから約1,000mg/mL、約500mg/mLから約1,000mg/mL、約750mg/mLから約1,000mg/mL、約100mg/mLから約750mg/mL、約250mg/mLから約750mg/mL、約500mg/mLから約750mg/mL、約100mg/mLから約500mg/mL、約250mg/mLから約500mg/mL、約0.00001mg/mLから約0.0001mg/mL、約0.00001mg/mLから約0.001mg/mL、約0.00001mg/mLから約0.01mg/mL、約0.00001mg/mLから約0.1mg/mL、約0.00001mg/mLから約1mg/mL、約0.001mg/mLから約0.01mg/mL、約0.001mg/mLから約0.1mg/mL、約0.001mg/mLから約1mg/mL、約0.001mg/mLから約10mg/mL、または約0.001mg/mLから約100mg/mLの範囲にありうる。
【0130】
本明細書に開示される方法を用いて生産される医薬組成物は、液体製剤、または固体製剤もしくは半固体製剤であることがある。液体製剤は、所望の温度範囲で液体として残留する他の脂肪酸の油類のような様々な脂質を使用することによって、形成することができる。一実施形態では、本明細書に開示される医薬組成物は、室温で液体である。この実施形態の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、例えば約25℃以上、約23℃以上、約21℃以上、約19℃以上、約17℃以上、約15℃以上、約12℃以上、約10℃以上、約8℃以上、約6℃以上、約4℃以上、または約0℃以上の温度で液体であるように製剤化されることがある。
【0131】
固体または半固体の製剤は、脂肪酸などの様々なアジュバントの異なる融点温度を利用する場合がある。固体または半固体の剤形の形成は、本明細書に開示される医薬組成物を含む脂肪酸のそれぞれの濃度を改変することによるものとすることができる。例えば、リノレン酸は約-11℃の融点温度(T)を有し、リノール酸は約-5℃のTを有し、オレイン酸は約16℃のTを有し、パルミチン酸は約61~62℃のTを有し、ステアリン酸は約67~72℃のTを有する。パルミチン酸、ステアリン酸、またはオレイン酸の割合を増加させることにより、組成物の全体的な融解温度が増加するものとなる一方で、逆に、リノール酸およびリノレン酸の割合を増加させることにより、組成物の融解温度が減少するものとなる。そのため、追加されたアジュバント構成成分のタイプおよび量を制御することによって、室温で実質的に固体または半固体であるが摂取されると融解して体温に達するという医薬組成物を作製することができる。結果として得られる融解組成物は、容易にミセルを形成するが、このミセルは、腸により吸収され、カイロミクロンに組み立てられ、最終的にはマクロファージにより吸収される。固体剤形は、粉末、顆粒、タブレット、カプセル、または座薬でありうる。
【0132】
本明細書の態様は、慢性炎症を有する個体を治療する方法を開示する。一実施形態では、本方法は、それを必要とする個体に、本明細書に記載される医薬組成物を投与するステップを含み、ここで投与は、慢性炎症と関連する症状を低減し、それによって個体を治療する。
【0133】
本明細書の態様は、部分的に、慢性炎症に罹患している個体を治療することを開示する。本明細書で使用される際に、用語「治療する」は、個体における慢性炎症の臨床症状の低減もしくは排除、または個体における慢性炎症の臨床症状の発症の遅延もしくは防止を指す。例えば、用語「治療する」は、慢性炎症によって特徴付けられる状態の症状を、例えば、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%に低減することを意味しうる。慢性炎症に関連する実際の症状は周知であり、慢性炎症の場所、慢性炎症の原因、慢性炎症の重症度、および/または慢性炎症によって影響を受ける組織もしくは器官の原因を含めた限定のない要因を考慮して、当業者によって決定することができる。当業者は、特定のタイプの慢性炎症に関連する適切な症状または指標を知るものとなり、ある個体が本明細書に開示される治療の候補となるか否かをどのように決定するかを知るものとなる。
【0134】
慢性炎症症状としては、限定はないが、浮腫、充血、紅斑、内出血、圧痛、硬直、疼痛、腫脹、発熱、悪寒、鼻閉、頭重、呼吸障害、体液貯留、血餅、食欲不振、心拍の増加、肉芽腫の形成、線維素性、膿、非粘性漿液、または潰瘍および痛みが挙げられる。慢性炎症に関連する実際の症状は周知であり、炎症の場所、炎症の原因、炎症の重症度、影響を受ける組織または器官、および関連する障害を含めた、限定のない要因を考慮することによって、当業者によって決定することができる。
【0135】
慢性炎症の特定のパターンは、上皮表面で炎症が発生する場合や化膿性細菌が関与する場合など、身体で起こる特定の状況の間に見られる。例えば、肉芽腫性炎症は、限定的であるが多様な疾患から起こる肉芽腫の形成から生じる炎症であり、そのようなものとしては、限定はないが、結核、ハンセン病、サルコイドーシス、および梅毒が挙げられる。化膿性炎症は、大量の膿を生じる炎症であり、好中球、死細胞、および体液から成る。ブドウ球菌などの化膿性細菌による感染は、この種の炎症の特徴である。漿液性炎症は、大量の非粘性の漿液の滲出から生じる炎症であり、この漿液は、通常は漿膜の中皮細胞によって生成されるが、血漿由来であることがある。皮膚の疱疹は、この炎症のパターンを例示する。潰瘍性炎症は、上皮表面由来の組織の壊死性損失から生じ、下層を露出させ、潰瘍を形成する炎症である。
【0136】
慢性炎症症状は、種々の疾患および障害の下にある大きな無関係の障害群と関連付けられることがある。免疫系は、アレルギー反応と一部のミオパチーの両方において表出される慢性炎症性疾患にしばしば関与し、それらの疾患は、異常な炎症をもたらす数多くの免疫系障害を伴う。治療され得る慢性炎症性疾患の非限定的な例としては、妊娠中毒症、冠動脈疾患、鎌状赤血球性貧血、特発性肺線維症、および子宮内膜症が挙げられる。
【0137】
一実施形態では、慢性炎症は組織炎症を含む。組織炎症は、特定の組織または器官に限定される慢性炎症である。この実施形態の態様において、組織炎症は、例えば、皮膚炎症、筋肉炎症、腱炎症、靭帯炎症、骨炎症、軟骨炎症、肺炎症、心臓炎症、肝臓炎症、膵臓炎症、腎臓炎症、膀胱炎症、胃炎症、腸炎症、神経炎症、および脳炎症を含む。
【0138】
別の実施形態では、慢性炎症は全身性炎症を含む。関与するプロセスが組織炎症と同一であるにも関わらず、全身性炎症は、特定の組織に限定されないが、実際には内皮および他の器官系を含めて身体を制圧する。感染に起因するときに、敗血症という用語が適用されるが、細菌血症という用語は特に細菌性敗血症に、そしてウイルス性血症という用語は特にウイルス性敗血症に適用される。血管拡張および器官機能不全は、敗血症性ショックおよび死亡につながりうる広範な感染に関連する重大な問題である。
【0139】
一態様では、イソミオスミンは、肺気腫などの呼吸障害を治療するために個体に投与されるが、肺気腫については、ジョンズ・ホプキンス大学での最近の研究により、根本的な原因として遺伝子レベルで機能不全が特定された。肺幹細胞の染色体が適切に機能しない限り、肺が酸素を体内に運び込む能力は沈滞する。この結果、息切れおよび生命を脅かすほどに低いレベルの血中酸素がもたされる。肺細胞のテロメアは、損傷から染色体を防御しそれらを正しく機能させることを可能とする際に、重要な役割を果たす。酸素吸収に必要な肺幹細胞が短すぎるテロメアを有すると、呼吸が中断される。これらのテロメアの破壊により、肺幹細胞は早くに老化し、分裂および再生を止める。このプロセスは、血液が酸素を吸収する肺の小さな嚢である肺胞を通じた酸素の移動を妨げる。状況がこじれると、幹細胞のテロメアが誤作動しているのと時を同じくして、免疫系は有害な炎症を引き起こす物質を肺に送り、この炎症は肺気腫の間にも発生する。以前は、肺気腫は炎症性の問題に過ぎないと考えられた。しかし今では、研究者らは、それがまずは炎症につながるテロメアの問題であることを特定している。これらの機構を考慮すると、血中酸素飽和度を増加させる能力に連動した、テロメアの短縮を防止するためのイソミオスミンの能力は、肺気腫および他の呼吸障害を治療するために、血中酸素飽和度を増加させる能力を特に有効なものとする。
【0140】
本明細書に記載される組成物または化合物は、個体に投与されてもよい。個体は典型的にはヒトである。典型的には、従来の慢性炎症治療の候補であるいかなる個体も、本明細書に開示される慢性炎症治療の候補である。作業前の評価には、典型的には、手順の関連するリスクおよびベネフィットを全て開示する徹底したインフォームドコンセントに加えて、通例の病歴および理学的検査が含まれる。
【0141】
本明細書に開示される医薬組成物は、治療有効量における治療化合物を含みうる。本明細書で使用される際に、用語「有効量」は、「治療有効量」、「有効用量」、または「治療有効用量」と同義であり、慢性炎症の治療に関連して使用される際には、所望の治療効果を達成するのに必要な本明細書に開示される治療化合物の最小用量を指し、慢性炎症に関連する症状を低減するのに十分な用量を含む。慢性炎症を治療する際の本明細書に開示される治療化合物の有効性は、一つ以上の臨床症状、および/または状態に関連する生理学的指標に基づいて、個体の改善を観察することによって決定することができる。慢性炎症の改善はまた、併用療法の必要性の低減によって標示することもできる。
【0142】
特定の慢性炎症に対し個体に投与される本明細書に開示される治療化合物の適切な有効量は、慢性炎症のタイプ、慢性炎症の場所、慢性炎症の原因、慢性炎症の重症度、所望の緩和の程度、所望の緩和の期間、使用された特定の治療化合物、使用された治療化合物の排出率、使用された治療化合物の薬力学、化合物中に含まれるものとなる他の化合物の性質、特定の投与経路、特定の特徴、患者の病歴およびリスク要因、例えば年齢、体重、全身の健康状態など、またはそれらの任意の組合せを含めた限定のない要因を考慮することによって、当業者により決定することができる。さらに、治療化合物の繰り返し投与が使用される場合、有効量の治療化合物は、投与頻度、治療化合物の半減期、またはそれらの任意の組み合わせを含めた限定のない要因にさらに依存する。本明細書に開示される治療化合物の有効量は、ヒトへの投与前にインビトロアッセイおよび動物モデルを用いたインビボ投与研究から外挿できることが、当業者に知られている。
【0143】
この実施形態の態様では、治療有効量の本明細書に開示される治療化合物は、慢性炎症に関連する症状を、例えば、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%低減する。この実施形態の他の態様では、治療有効量の本明細書に開示される治療化合物は、慢性炎症に関連する症状を、例えば、最大で10%、最大で15%、最大で20%、最大で25%、最大で30%、最大で35%、最大で40%、最大で45%、最大で50%、最大で55%、最大で60%、最大で65%、最大で70%、最大で75%、最大で80%、最大で85%、最大で90%、最大で95%、または最大で100%低減する。この実施形態のさらに他の態様では、治療有効量の本明細書に開示される治療化合物は、慢性炎症に関連する症状を、例えば、約10%から約100%、約10%から約90%、約10%から約80%、約10%から約70%、約10%から約60%、約10%から約50%、約10%から約40%、約20%から約100%、約20%から約90%、約20%から約80%、約20%から約20%、約20%から約60%、約20%から約50%、約20%から約40%、約30%から約100%、約30%から約90%、約30%から約80%、約30%から約70%、約30%から約60%、または約30%から約50%低減する。
【0144】
この実施形態のさらに他の態様では、治療有効量の本明細書に開示される治療化合物は、概して、約0.001mg/kg/日から約100mg/kg/日の範囲にある。本実施形態の態様では、本明細書に開示される治療化合物の有効量は、例えば、少なくとも0.001mg/kg/日、少なくとも0.01mg/kg/日、少なくとも0.1mg/kg/日、少なくとも1.0mg/kg/日、少なくとも5.0mg/kg/日、少なくとも10mg/kg/日、少なくとも15mg/kg/日、少なくとも20mg/kg/日、少なくとも25mg/kg/日、少なくとも30mg/kg/日、少なくとも35mg/kg/日、少なくとも40mg/kg/日、少なくとも45mg/kg/日、または少なくとも50mg/kg/日でありうる。この実施形態の他の態様では、本明細書に開示される治療化合物の有効量は、例えば、約0.001mg/kg/日から約10mg/kg/日、約0.001mg/kg/日から約15mg/kg/日、約0.001mg/kg/日から約20mg/kg/日、約0.001mg/kg/日から約25mg/kg/日、約0.001mg/kg/日から約30mg/kg/日、約0.001mg/kg/日から約35mg/kg/日、約0.001mg/kg/日から約40mg/kg/日、約0.001mg/kg/日から約45mg/kg/日、約0.001mg/kg/日から約50mg/kg/日、約0.001mg/kg/日から約75mg/kg/日、または約0.001mg/kg/日から約100mg/kg/日の範囲にありうる。この実施形態のさらに他の態様では、本明細書に開示される治療化合物の有効量は、例えば、約0.01mg/kg/日から約10mg/kg/日、約0.01mg/kg/日から約15mg/kg/日、約0.01mg/kg/日から約20mg/kg/日、約0.01mg/kg/日から約25mg/kg/日、約0.01mg/kg/日から約30mg/kg/日、約0.01mg/kg/日から約35mg/kg/日、約0.01mg/kg/日から約40mg/kg/日、約0.01mg/kg/日から約45mg/kg/日、約0.01mg/kg/日から約50mg/kg/日、約0.01mg/kg/日から約75mg/kg/日、または約0.01mg/kg/日から約100mg/kg/日の範囲にありうる。この実施形態のさらに他の態様では、本明細書に開示される治療化合物の有効量は、例えば、約0.1mg/kg/日から約10mg/kg/日、約0.1mg/kg/日から約15mg/kg/日、約0.1mg/kg/日から約20mg/kg/日、約0.1mg/kg/日から約25mg/kg/日、約0.1mg/kg/日から約30mg/kg/日、約0.1mg/kg/日から約35mg/kg/日、約0.1mg/kg/日から約40mg/kg/日、約0.1mg/kg/日から約45mg/kg/日、約0.1mg/kg/日から約50mg/kg/日、約0.1mg/kg/日から約75mg/kg/日、または約0.1mg/kg/日から約100mg/kg/日の範囲にありうる。
【0145】
この実施形態の他の態様では、本明細書に開示される治療化合物の有効量は、例えば、約1mg/kg/日から約10mg/kg/日、約1mg/kg/日から約15mg/kg/日、約1mg/kg/日から約20mg/kg/日、約1mg/kg/日から約25mg/kg/日、約1mg/kg/日から約30mg/kg/日、約1mg/kg/日から約35mg/kg/日、約1mg/kg/日から約40mg/kg/日、約1mg/kg/日から約45mg/kg/日、約1mg/kg/日から約50mg/kg/日、約1mg/kg/日から約75mg/kg/日、または約1mg/kg/日から約100mg/kg/日の範囲にありうる。この実施形態のさらに他の態様では、本明細書に開示される治療化合物の有効量は、例えば、約5mg/kg/日から約10mg/kg/日、約5mg/kg/日から約15mg/kg/日、約5mg/kg/日から約20mg/kg/日、約5mg/kg/日から約25mg/kg/日、約5mg/kg/日から約30mg/kg/日、約5mg/kg/日から約35mg/kg/日、約5mg/kg/日から約40mg/kg/日、約5mg/kg/日から約45mg/kg/日、約5mg/kg/日から約50mg/kg/日、約5mg/kg/日から約75mg/kg/日、または約5mg/kg/日から約100mg/kg/日の範囲にありうる。
【0146】
用量は、単回投薬量または累積(連続用量投与)とすることができ、当業者によって容易に決定することができる。例えば、慢性炎症の治療は、本明細書に開示される医薬組成物の有効用量の1回限りの投与を含むことがある。あるいは、慢性炎症の治療は、ある範囲の期間にわたって、例えば毎日1回、毎日2回、毎日一瞬、数日に1回、または週に1回などで実施される有効用量の医薬組成物の複数回投与を含みうる。投与のタイミングは、個体の症状の重症度などの要因に応じて、個体によって変えることができる。例えば、有効用量の本明細書に開示される医薬組成物は、無期限に、または個体が療法をもはや必要としなくなるまで、毎日1回、その個体に投与することができる。治療過程全体を通じて個体の状態をモニタリングできること、およびそれに応じて、投与される本明細書に開示される医薬組成物の有効量を調節できることを、当業者は認識するものとなる。
【0147】
一実施形態では、個体に投与されると、本明細書に開示される治療化合物を含む医薬組成物は、本明細書に開示されるアジュバントがないことを除いて同じ医薬組成物中に含まれる治療化合物の生体内分布とは異なる、治療化合物の生体内分布をもたらす。
【0148】
別の実施形態では、個体に投与されると、本明細書に開示される医薬組成物の治療化合物は、マクロファージに送達される。マクロファージは、炎症応答の制御に関与すると考えられている主要な細胞型の一つである。抗炎症活性を有する治療化合物が結果的に高いレベルでマクロファージに存在することにより、慢性炎症の臨床的に有効が治療をもたらされる。この実施形態の一態様では、個体へ投与されると、本明細書に開示される医薬組成物の治療有効量の治療化合物は、マクロファージに優先的に送達される。この実施形態の他の態様では、個体へ投与されると、本明細書に開示される医薬組成物の治療化合物は、マクロファージに実質的に送達される。この実施形態のさらに他の態様では、個体へ投与されると、マクロファージに送達される本明細書に開示される医薬組成物の治療化合物の量は、投与された医薬組成物中に含まれる治療化合物の総量の例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%となる。この実施形態のさらに他の態様では、個体へ投与されると、マクロファージに送達される本明細書に開示される医薬組成物の治療用化合物の量は、投与された医薬組成物中に含まれる治療化合物の総量の例えば、約5%から約100%、約10%から約100%、約15%から約100%、約20%から約100%、約25%から約100%、約30%から約100%、約35%から約100%、約40%から約100%、約45%から約100%、約50%から約100%、約5%から約90%、約10%から約90%、約15%から約90%、約20%から約90%、約25%から約90%、約30%から約90%、約35%から約90%、約40%から約90%、約45%から約90%、約50%から約90%、約5%から約80%、約10%から約80%、約15%から約80%、約20%から約80%、約25%から約80%、約30%から約80%、約35%から約80%、約40%から約80%、約45%から約80%、約50%から約80%、約5%から約70%、約10%から約70%、約15%から約70%、約20%から約70%、約25%から約70%、約30%から約70%、約35%から約70%、約40%から約70%、約45%から約70%、または約50%から約70%の範囲にある。
【0149】
別の実施形態では、個体に投与されると、本明細書に開示される医薬組成物は、胃の過敏性を低減する。この実施形態の一態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、胃の過敏性を実質的に低減する。さらに別の実施形態では、個体に投与されると、本明細書に開示される医薬組成物は、医薬的に許容可能なアジュバントを含まないことを除いて本明細書に開示される同じ医薬組成物と比較して、胃の過敏性を低減する。本実施形態の一態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、医薬的に許容可能なアジュバントを含まないことを除いて本明細書に開示される同じ医薬組成物と比較して、胃の過敏性を実質的に低減する。この実施形態の他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、胃の過敏性を例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも100%低減する。この実施形態のさらに別の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、胃の過敏性を例えば、約5%から約100%、約10%から約100%、約15%から約100%、約20%から約100%、約25%から約100%、約30%から約100%、約35%から約100%、約40%から約100%、約45%から約100%、約50%から約100%、約5%から約90%、約10%から約90%、約15%から約90%、約20%から約90%、約25%から約90%、約30%から約90%、約35%から約90%、約40%から約90%、約45%から約90%、約50%から約90%、約5%から約80%、約10%から約80%、約15%から約80%、約20%から約80%、約25%から約80%、約30%から約80%、約35%から約80%、約40%から約80%、約45%から約80%、約50%から約80%、約5%から約70%、約10%から約70%、約15%から約70%、約20%から約70%、約25%から約70%、約30%から約70%、約35%から約70%、約40%から約70%、約45%から約70%、または約50%から約70%低減する。
【0150】
別の実施形態では、個体へ投与されると、医薬組成物は、腸の過敏性を低減する。この実施形態の一態様では、医薬組成物は、腸の過敏性を実質的に低減する。さらに別の実施形態では、個体へ投与されると、本明細書に開示される医薬組成物は、医薬的に許容可能なアジュバントを含まないことを除いて本明細書に開示される同じ医薬組成物と比較して、腸の過敏性を低減する。この実施形態の一態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、医薬的に許容可能なアジュバントを含まないことを除いて本明細書に開示される同じ医薬組成物と比較して、腸の過敏性を実質的に低減する。この実施形態の他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、医薬的に許容可能なアジュバントを含まないことを除いて本明細書に開示される同じ医薬組成物と比較して、腸の過敏性を例えば、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、または少なくとも100%低減する。この実施形態のさらに他の態様では、本明細書に開示される医薬組成物は、医薬的に許容可能なアジュバントを含まないことを除いて本明細書に開示される同じ医薬組成物と比較して、腸の過敏性を例えば、約5%から約100%、約10%から約100%、約15%から約100%、約20%から約100%、約25%から約100%、約30%から約100%、約35%から約100%、約40%から約100%、約45%から約100%、約50%から約100%、約5%から約90%、約10%から約90%、約15%から約90%、約20%から約90%、約25%から約90%、約30%から約90%、約35%から約90%、約40%から約90%、約45%から約90%、約50%から約90%、約5%から約80%、約10%から約80%、約15%から約80%、約20%から約80%、約25%から約80%、約30%から約80%、約35%から約80%、約40%から約80%、約45%から約80%、約50%から約80%、約5%から約70%、約10%から約70%、約15%から約70%、約20%から約70%、約25%から約70%、約30%から約70%、約35%から約70%、約40%から約70%、約45%から約70%、または約50%から約70%低減する。
【0151】
本明細書に開示される医薬組成物は、処置の全体的な治療効果を増加させるために、他の治療化合物と組み合わせて個体に投与することもできる。適応症を治療するための複数の化合物の使用により、副作用の存在を低減させながら、有益な効果を増加させることができる。
【0152】
以下の例は、上記に定められた本開示の範囲を説明するが限定するものではない。
【0153】
実施例1
この実施例は、イソミオスミンおよび他のアルカロイドに対するモノアミンオキシダーゼ(MAO)の阻害を決定するための実験を記載している。MAOは、ミトコンドリアの外膜上に位置する酵素であり、モノアミン神経伝達物質の異化に関与する。特徴がよく明らかにされた二つのイソ酵素がある:セロトニンおよびノルエピネフリンを異化するMAO-Aと、ベンジルアミンおよびフェニルエチルアミンを優先的に異化するMAO-Bである。ドーパミンおよびチラミンは、両方のアイソフォームによって代謝される。
【0154】
MAOの活性を検出するために、発光法(MAO-GloアッセイキットPromegaから入手、カタログ番号V1401)を使用した。この方法では、MAO基質(キット中に提供されるカブトムシルシフェリンの誘導体)を、供試する化合物(この場合、ミオスミンおよび対照化合物)と混合する。次いで、MAO酵素(AまたはBのいずれか、別々に購入)を混合物に添加し、反応物と共に室温で1時間インキュベートする。MAO酵素は、試験化合物によって阻害されない場合、基質をルシフェリンメチルエステルに変換する。最後に、ルシフェリン検出試薬(キットによって提供される)を添加して(室温で20分)MAO反応を停止させ、ルシフェリンメチルエステルをD-ルシフェリンに変換する。D-ルシフェリンは、ルシフェラーゼと反応して発光シグナルを生成するが、このシグナルはD-ルシフェリン濃度に、それゆえMAO活性に直接的に比例する。すなわち、生成された光の量が多いほどMAOの活性が高い。発光シグナルを測定し、光度計を使用して記録する。
【0155】
トロント・リサーチ・ケミカルズ、ノースヨーク、オンタリオ州から以下の材料を入手した:イソミオスミン、カタログ番号I821350;ミオスミン、カタログ番号M835000;アナバシン、カタログ番号A637175;およびノルニコチン、カタログ番号N756995。アナタビンは、エマーソン・リソーシズ、ノリスタウン、ペンシルベニア州から入手した。
【0156】
実験に対する陽性対照として、クロルジリン(MAO-Aのよく特徴の明らかにされた強力な阻害剤)およびデプレニル(MAO-Bのよく特徴の明らかにされた強力な阻害剤)を使用した。
【0157】
MAO-A活性の結果
純粋アルカロイドのイソミオスミン、ミオスミン、アナタビン、アナバシン、およびノルニコチンを比較すると、イソミオスミンは、MAO-Aの酵素活性の阻害において五つのうち最も強力であった(図3)。この線グラフを読み取る方法は以下の通りである:100%の活性は試験化合物が酵素に効果がないことを意味し;0%の活性は試験化合物が酵素を完全に不活化することを意味する。曲線が左側にシフトするほど、試験化合物は酵素に大きな阻害を発揮する。図3にみられるように、イソミオスミンの曲線は、供試した五つのアルカロイドの中でもより左側にシフトしている。2mMの濃度(2,000マイクロモル)は約50%の阻害をもたらす。実験の陽性対照であるクロルジリンの曲線は、大きく左側にシフトしている。
【0158】
MAO-B活性の結果
同様の結果は、MAO-Bの阻害についてイソミオスミン、ミオスミン、アナタビン、アナバシン、およびノルニコチンの五つの純粋アルカロイドを供試した際に得られた。イソミオスミンは、MAO-Bの活性の阻害で供試した五つのアルカロイドのうち最も強力であった(図4)。
【0159】
実施例2
この実施例は、通常の血中酸素飽和度(SpO2)に及ぼされるイソホスミンの効果が説明されている。SpO2は、末梢毛細管の酸素飽和を指し、血液中の酸素量の推定値である。より具体的には、血中のヘモグロビンの総量(酸素化ヘモグロビンおよび非酸素化ヘモグロビン)と比較した酸素化ヘモグロビン(酸素を含有するヘモグロビン)のパーセンテージである。SpO2は、パルスオキシメトリにより測定することができ、間接的かつ非侵襲的な方法である。これは、指先の血管(または毛細管)を通過する光波を発光させ次に吸収することによって機能する。酸素飽和の程度が血液の色の変動を引き起こすことから、指を通過する光波の変動は、SpO2測定の値を与えるものとなる。SpO2レベルを、7個体で、単回投与(50~100mgのイソミオスミン)の投与の(1)前および(2)1時間後に測定した。表1は、測定された値をまとめたものである。表1から分かるように、イソミオスミンは、供試した個体において血中酸素負荷の著しい増加を誘発することが見出された。
表1
【表1】
【0160】
特定の実施形態が説明され例示されてきたが、当業者によって変更が行われることから、本発明はそれに限定されないことが理解されるべきである。本出願は、本明細書に開示され特許請求される根本的な本発明の趣旨および範囲内にあるいずれかおよび全ての改変を想定している。
図1
図2
図3
図4