(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-01
(45)【発行日】2025-08-12
(54)【発明の名称】厨房機器
(51)【国際特許分類】
B65B 31/02 20060101AFI20250804BHJP
F04B 49/06 20060101ALI20250804BHJP
【FI】
B65B31/02 B
F04B49/06 341J
(21)【出願番号】P 2019163565
(22)【出願日】2019-09-09
【審査請求日】2022-08-10
【審判番号】
【審判請求日】2024-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000194893
【氏名又は名称】ホシザキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155099
【氏名又は名称】永井 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】横山 千穂
(72)【発明者】
【氏名】森部 智久
【合議体】
【審判長】吉田 美彦
【審判官】松崎 孝大
【審判官】脇岡 剛
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-99175(JP,A)
【文献】特開2009-144709号公報(JP,A)
【文献】特開2016-150757号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65B 31/02
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉空間を形成し得る密閉容器と、
前記密閉容器内を脱気して負圧化させる油循環式の油回転真空ポンプと、
前記油回転真空ポンプ内を循環する油の温度を検知して油温度情報を出力する油温度センサと、
前記油温度センサから前記油温度情報を取得する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記油温度情報に基づいて前記油回転真空ポンプの暖機運転の要否を判定し前記暖機運転が必要であると判定した場合には、ユーザに暖機運転の開始操作を促す暖機運転情報を所定の出力装置に出力することを特徴とする厨房機器。
【請求項2】
請求項1に記載の厨房機器において、
前記制御装置は、前記油回転真空ポンプの運転制御が可能であり、前記油温度情報に基づいて前記油の温度が予め定められた所定の暖機完了温度に到達したと判定した場合には、前記暖機運転を終了させることを特徴とする厨房機器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の厨房機器において、
前記油回転真空ポンプを冷却し得ると共に前記制御装置が駆動制御可能な冷却ファンを備えた厨房機器であって、
前記制御装置は、前記油温度情報に基づいた前記冷却ファンの駆動制御を行うことを特徴とする厨房機器。
【請求項4】
請求項3に記載の厨房機器において、
前記油温度情報に基づいた前記冷却ファンの駆動制御は、前記油の温度が予め定められた所定の第1閾値温度よりも高いと判定した場合に冷却能力を上げる高回転駆動に切り替えることを特徴とする厨房機器。
【請求項5】
請求項3または4に記載の厨房機器において、
前記油温度情報に基づいた前記冷却ファンの駆動制御は、前記油の温度が予め定められた所定の第2閾値温度よりも低いと判定した場合に冷却能力を下げる低回転駆動に切り替えることを特徴とする厨房機器。
【請求項6】
請求項5に記載の厨房機器において、
前記油温度情報に基づいた前記冷却ファンの駆動制御は、前記低回転駆動の開始後、前記油の温度が予め定められた所定の水分蒸発温度よりも低いと判定した場合には前記低回転駆動を継続することを特徴とする厨房機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉空間を形成し得る密閉容器と、密閉容器内を脱気して負圧化させる油循環式の油回転真空ポンプと、を備えた厨房機器に関する。
【背景技術】
【0002】
密閉空間を形成し得る密閉容器と、密閉容器内を脱気して負圧化させる油循環式の油回転真空ポンプと、を備えた厨房機器として、例えば、下記の特許文献1に開示された真空包装機がある。この真空包装機では、真空ポンプ(油回転真空ポンプ)の近傍にポンプケースを加熱可能なケースヒータを装着している。ケースヒータは、潤滑及び気密保持等のためにポンプ内を循環するオイルの温度を上昇させてオイルの粘度を低くすることにより低温時における真空ポンプの起動をスムーズにすることを可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-245010号公報
【文献】実開平06-14485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の真空包装機によると、ポンプケースを加熱するケースヒータは、密閉空間を形成する真空チャンバの大気開放動作を利用してオンにされる。即ち、低温時にオイルの粘度が高くロータが回りにくいために真空ポンプの電動モータに過電流が流れたことに起因してケースヒータをオンにして加熱を開始するように構成されている(特許文献1;段落0027)。このような過電流は、真空ポンプの電動モータが過負荷状態になった場合に流れることから、真空ポンプの不具合の発生を抑制するうえでは生じないことが望ましい。
【0005】
また、上記特許文献2に開示された油回転真空ポンプのように、ポンプ機構を駆動するポンプ軸と連動して回転する軸流ファンを内蔵したものでは、ポンプ機構が作動する場合に軸流ファンも回るためオイル温度に関係なくポンプ機構と共に内部のオイルも冷却される。このような軸流ファン付きの真空ポンプを備えた真空包装機では、短期間運転や低温環境下では真空ポンプのオイル温度が上昇しにくいことからオイルの含有水分を蒸発させ得る温度にオイルが到達しにくく、ポンプ内に錆が発生して真空ポンプの不具合の発生に繋がるおそれがある。本発明は、油回転真空ポンプの不具合の発生を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、密閉空間を形成し得る密閉容器と、密閉容器内を脱気して負圧化させる油循環式の油回転真空ポンプと、油回転真空ポンプ内を循環する油の温度を検知して油温度情報を出力する油温度センサと、油温度センサから油温度情報を取得する制御装置と、を備え、制御装置は、油温度情報に基づいて油回転真空ポンプの暖機運転の要否を判定し暖機運転が必要であると判定した場合には、ユーザに暖機運転の開始操作を促す暖機運転情報を所定の出力装置に出力することを特徴とする厨房機器を提供するものである。
【0007】
上記のように構成した厨房機器において、制御装置は、油温度情報に基づいて油回転真空ポンプの暖機運転の要否を判定し暖機運転が必要であると判定した場合には、ユーザに暖機運転の開始操作を促す暖機運転情報を所定の出力装置に出力する。これにより、油回転真空ポンプの油温度情報に基づいて暖機運転の要否を判定するため、油回転真空ポンプのポンプ機構やそれを駆動するモータ等のポンプ部品に過剰な負荷をかけることなく暖機運転情報を所定の出力装置に出力して暖機運転が必要である旨をユーザに告知することが可能になる。したがって、油回転真空ポンプを構成するポンプ部品に過負荷がかかりにくくなるため、油回転真空ポンプの不具合の発生を抑制することができた。
【0008】
上記のように構成した厨房機器においては、制御装置は、油回転真空ポンプの運転制御が可能であり、油温度情報に基づいて油の温度が予め定められた所定の暖機完了温度に到達したと判定した場合には、暖機運転を終了させるのが好ましい。これにより、油回転真空ポンプの油の温度が所定の暖機完了温度に到達すると暖機運転が自動的に終わるので、このような自動終了機能がない場合に比べて暖機運転によるユーザの使用待ち時間を最短にすることができ、また電力等の不要なエネルギーの消費を抑制することができた。
【0009】
上記のように構成した厨房機器においては、油回転真空ポンプを冷却し得ると共に制御装置が駆動制御可能な冷却ファンを備えた厨房機器であって、制御装置は、油温度情報に基づいた冷却ファンの駆動制御を行うのが好ましい。これにより、上記特許文献2の油回転真空ポンプのように、ポンプ機構を駆動するポンプ軸と連動して回転する軸流ファンを内蔵したものに比べてポンプの作動とは独立してしかも油温度情報に基づいて冷却ファンの駆動を制御することが可能になり、油回転真空ポンプの油やポンプ部品を適切に冷却することができるようなった。したがって、このような温度に起因した油回転真空ポンプの不具合の発生を抑制することができた。
【0010】
例えば、このような厨房機器において、油温度情報に基づいた冷却ファンの駆動制御は、油の温度が予め定められた所定の第1閾値温度よりも高いと判定した場合に冷却能力を上げる高回転駆動に切り替えるようにする。これにより、油回転真空ポンプの油の温度が所定の第1閾値温度よりも高い場合には、冷却ファンが高回転駆動になって冷却能力が通常回転時よりも上がるため、油回転真空ポンプやその中の油を急速に冷やすことが可能になり、油回転真空ポンプの不具合の発生を抑制することができるようになった。
【0011】
また、このような厨房機器において、油温度情報に基づいた冷却ファンの駆動制御は、油の温度が予め定められた所定の第2閾値温度よりも低いと判定した場合に冷却能力を下げる低回転駆動に切り替えるようにする。これにより、油回転真空ポンプの油の温度が所定の第2閾値温度よりも低い場合には、冷却ファンが低回転駆動になって冷却能力が通常回転時よりも下がるため、油回転真空ポンプやその中の油を過剰でなく適度に冷やすことが可能になり、電力等の不要なエネルギーの消費を抑制することができるようになった。
【0012】
さらに、油温度情報に基づいた冷却ファンの駆動制御は、低回転駆動の開始後、油の温度が予め定められた所定の水分蒸発温度よりも低いと判定した場合には低回転駆動を継続するようにするのが好ましい。これにより、含有水分を蒸発させ得る所定の水分蒸発温度に達するまで油回転真空ポンプの油の温度を高めることができるので、例えば、油に水分が含まれている場合においてはその含有水分を蒸発させることが可能になる。したがって、ポンプ内や油中に錆が生じ難くなるので、そのような錆に起因する油回転真空ポンプの不具合の発生を抑制することができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】
図1のチャンバカバーを開放した状態の斜視図である。
【
図7】真空包装機の制御プログラムのメインルーチンのフローチャートである。
【
図8】
図7のサブルーチン(暖機要否判定処理)のフローチャートである。
【
図9】
図7の機能メニュー表示/選択処理で選択可能な暖機プログラムのフローチャートである。
【
図10】
図7の機能メニュー表示/選択処理で選択可能な包装プログラムのフローチャートである。
【
図11】真空ポンプの作動中に実行される冷却ファン制御プログラムのフローチャートである。
【
図12】含有水分気化プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の真空包装機の一実施形態を添付図面を参照して説明する。
図1~
図4に示したように、真空包装機10は、ケーシング11の上部に設けられたチャンバ20と、チャンバ20内にて包装袋の開口周縁部を密封する封止装置30と、ケーシング11でチャンバ20の下側となる下部にチャンバ20内を脱気して負圧化させる真空ポンプ40とを備えている。以下の説明では、チャンバ20の一方の側部を前部とし、他方の側部を後部とし、前部と後部を結ぶ方向を前後方向とし、前後方向と水平方向に直交する方向を左右方向として説明する。
【0015】
ケーシング11は、略直方体形状をし、ケーシング11の上部にはチャンバ20が設けられている。チャンバ20は、ケーシング11の上部に設けたチャンバベース21とチャンバカバー22とパッキン23とを備え、チャンバベース21の上側をパッキン23が取り付けられたチャンバカバー22により開閉自在に塞ぐことで内部に包装袋を収容し得る密閉空間SSを区画形成可能に構成されている。
【0016】
図2に示したように、チャンバベース21は、上面が開口した略直方体形状をした深さの浅い箱体であり、ステンレス等の板金部材をプレス加工によって形成したものである。
図3に示したように、チャンバベース21の前部には他の部分より浅く形成された段部21aが形成されており、段部21aの上側には封止装置30を構成する下側ブロック31が上下に移動可能に設けられている。
【0017】
図4に示したように、チャンバベース21の段部21aを除く部分は左右方向の中央部が最も低くなるように湾曲しており、チャンバ20内に収容する包装袋は最も低くなっている左右方向の中央部に置かれやすくなっている。包装袋はチャンバ20内で左右方向の中央に置かれることで、包装袋の開口周縁部は下側ブロック31の左右方向の中央部に載せられる。また、包装袋内にブロック肉等の高さの高い被包装物を入れているときには、包装袋の開口周縁部に皺を発生させないようにするために、包装袋内の被包装物はチャンバ20の前部に配置される下側ブロック31から後側に離した位置として前後方向の中間部に置かれる。
【0018】
図1及び
図2に示したように、チャンバカバー22は、チャンバベース21の上面開口を開閉自在に塞ぐ耐圧性のアクリル材、ポリカーボネート材またはポリエチレンテレフタラート等の透明性のある材料を用いた蓋体であり、チャンバベース21との間に包装袋を収容可能な密閉された空間(密閉空間)を形成し得るものである。チャンバカバー22の後端部はケーシング11の後端部に水平軸線回りに回動可能に軸支されており、チャンバカバー22の前部は上下に回動可能となっている。
図1に示したように、チャンバカバー22は水平位置にあるときにはチャンバベース21の上面開口を塞ぐ閉塞位置となっている。
図2に示したように、チャンバカバー22の前部を上側に回動させると、チャンバカバー22は傾斜位置になってチャンバベース21の上面を開放する開放位置となる。
【0019】
図2及び
図3に示したように、ケーシング11の後部にはガススプリング12が設けられており、ガススプリング12はチャンバカバー22の前部を上方に付勢しており、チャンバカバー22をチャンバベース21から開放する開放位置に付勢している。
図2~
図4に示したように、チャンバカバー22の下面の周縁の接続部23にはシール部材としてパッキン23が設けられている。
【0020】
図1及び
図4に示したように、チャンバカバー22は、左右方向の両側部に平坦な板状を呈した平坦部22aと、左右方向の中央部に上側に膨らむように突出する突出部22bを備えている。また、平坦部22aと突出部22bとの間には平坦部22aから突出部22bに立ち上がる立ち上がり部22cが形成されている。
【0021】
平坦部22aの下面は、チャンバベース21の上縁部と当接する高さとなっており、チャンバベース21の左右両側部を覆っている。チャンバ20内に収容された包装袋は、チャンバベース21の底壁の湾曲面によって左右方向の中央部に置かれやすくなっており、高さの高い被包装物を入れた包装袋をチャンバベース21の左右方向の中央部に置いたときに、チャンバカバー22の平坦部22aの下側には包装袋内の高さの高い被包装物が配置されにくくなっている。
【0022】
このように、平坦部22aは、包装袋内の高さの高い被包装物が配置されにくい位置にあり、チャンバ20の左右の両側部分に過剰な空間が形成されないようにする機能を有している。
図4に示したように、立ち上がり部22cは平坦部22aから突出部22bに近づきながら上昇する斜めに傾斜する傾斜面となっており、傾斜面よりなる立ち上がり部22cはチャンバベース21に置かれた高さの高い包装袋内の被包装物を左右方向の中央部に配置させる機能を有している。
【0023】
図1及び
図4に示したように、チャンバカバー22の突出部22bは、高さの高い被包装物を入れた包装袋をチャンバベース21の左右方向の中央部に置いたときに、包装袋がチャンバカバー22に当たりにくくする機能を有している。チャンバ20内に収容された包装袋は左右方向の中央部に置かれやすくなっており、高さの高い被包装物を入れた包装袋をチャンバベース21の左右方向の中央部に置いたときに、チャンバカバー22の突出部22bは高さの高い被包装物を入れた包装袋を収容可能としている。
【0024】
図1及び
図3に示したように、突出部22bは、前端から前後方向の中央部より少し後側に近づきながら上昇し、前後方向の中央部より少し後側から後端に近づきながら下降して、前後方向の中間部(前後方向の中央部の少し後側)の高さが最も高くなるように形成されている。高さの高い被包装物を入れた包装袋をチャンバ20内に収容するときには、包装袋の開口周縁部に皺を発生させないようにするために、被包装物は包装袋の開口からできるだけ離すように包装袋の底側に入れられ、高さの高い被包装物は下側ブロック31が配置されるチャンバ20の前部から離して後側に配置されることになる。
【0025】
また、高さの高い被包装物は包装袋の開口よりも底側に収納しても、包装袋は高さ方向に引っ張られるので、包装袋内の被包装物はチャンバ20内の後部に配置されない。このため、高さの高い被包装物を入れた包装袋をチャンバ20内に収容すると、被包装物はチャンバ20内にて前後方向の中間部に配置されることになる。
【0026】
図2及び
図3に示したように、ケーシング11の後端部にはガススプリング12が設けられており、ガススプリング12はケーシングの11の後部に水平軸線回りに回動可能に支持されたチャンバカバー22の前部を上方に付勢している。ケーシング11の右側面の前端部にはストッパ13が水平軸線回りに回動可能に設けられており、ストッパ13は、チャンバカバー22の前部上面に係止して、チャンバカバー22をチャンバベース21の上面開口を塞ぐ位置に保持する機能を有している。
【0027】
図5に示したように、ケーシング11の後部にはチャンバカバー22の閉塞状態を検知するカバー検知器14が設けられている。カバー検知器14はリードスイッチ等の近接スイッチを用いたものであり、チャンバカバー22の後部にはカバー検知器14によりチャンバカバー22の閉塞状態を検知させる磁石15が設けられている。
【0028】
チャンバカバー22がチャンバベース21の上面開口を塞ぐ閉塞位置にあるときには、磁石15はカバー検知器14に近接し、カバー検知器14はオン信号を出力する。チャンバカバー22がチャンバベース21の上面開口を開放する開放位置にあるときには、磁石15はカバー検知器14から離間し、カバー検知器14はオフ信号を出力する。
【0029】
図3及び
図5に示したように、チャンバ20の前部には封止装置30が設けられている。封止装置30はチャンバ20内に収容した包装袋の開口周縁部を熱溶着によって封止して包装袋を密封するものである。封止装置30は包装袋の開口周縁部を挟持する下側及び上側ブロック31,32を備えている。
【0030】
下側ブロック31はアルミニウム製の角パイプ部材よりなり、チャンバベース21の段部21aの上側に着脱可能かつ上下に移動可能に支持されている。下側ブロック31の上面にはニクロム材よりなる帯板状のヒータ33が設けられている。上側ブロック32は弾性変形可能なシリコン製のブロック体よりなり、下側ブロック31の上側に対向する位置にて、チャンバカバー22の下面前部に取り付けられている。
【0031】
図3及び
図5に示したように、チャンバベース21の段部21aの下面には下側ブロック31を上下に昇降させる左右一対の昇降機構34が設けられている。各昇降機構34はチャンバベース21の段部21aの底壁を貫通する支持軸35と、支持軸35を上下動させる昇降シリンダ36とを備えている。
【0032】
図5に示したように、支持軸35の軸方向の中間部には鍔部37が設けられており、鍔部37は昇降シリンダ36内を上部空間36aと下部空間36bとに気密に仕切っている。昇降シリンダ36の上部空間36aには支持軸35の外周にばね部材38が介装されており、ばね部材38は鍔部37を介して支持軸35を下側に付勢している。
【0033】
図5に示したように、ケーシング11内の下部には真空ポンプ40が設けられている。真空ポンプ40は、例えば、容積移送式の真空ポンプ(油回転真空ポンプ)であり、ポンプオイル(油)が満たされた円筒形のステータと、ステータ内に回転可能に収容されるロータと、径方向に移動可能にロータに組み込まれてステータの内周面に摺接する複数の摺動翼板と、ロータを回転させる電動モータ(ポンプモータ)等により構成されている。
【0034】
このように構成される真空ポンプ40は、作動時にはポンプモータの回転駆動によってステータの内周面に摺接する摺動翼板がロータと共に高速に回転することから、発熱したステータや摺動翼板等をポンプオイル(潤滑油)が冷却するものの、ポンプオイルを含めて真空ポンプ40全体が発熱する。
【0035】
このため、この実施形態では、真空ポンプ40自体には軸流ファン等は設けられていないが、その代わりに、真空ポンプ40とは独立して駆動制御可能な冷却ファン70が真空ポンプ40に近傍の空間SPに設けられている。また真空ポンプ40には、真空ポンプ40内を循環するポンプオイルの温度を検知可能な温度センサ81が取り付けられている。
【0036】
冷却ファン70は、例えば、主に、DCブラシレスモータ(以下「ファンモータ」という)と、モータの回転軸に取り付けられたファンブレードと、ファンモータを中心に固定してファンブレードの周囲を囲むフレームと、により構成されている。この実施形態では、ファンモータは、例えば、PWM制御により回転速度(単位時間当たり回転数)を制御可能に構成されており、冷却ファン70にはPWM制御用のドライバ回路(図示省略)が設けられている。
【0037】
温度センサ81は、例えば、サーミスタ、測温抵抗体や熱電対等であり真空ポンプ40内のポンプオイルの温度を、間接的に検知可能に真空ポンプ40のケーシングに設けられたり、直接的に検知可能に真空ポンプ40内に組み込まれたりするものである。この実施形態では、真空ポンプ40内を循環するポンプオイルの温度を検知して制御装置60にポンプオイルの温度情報を出力する。
【0038】
なお、温度センサ81が真空ポンプ40のケーシングに設けられてポンプオイルの温度を間接的に検知する場合には、制御装置60のCPUが実行する情報処理において温度センサ81から温度情報が取得された後、その温度情報に基づいて直ちにオイル温度Toが推定される。このような推定は、例えば、予めROMに記憶されている所定のオイル温度推定マップや演算式が用いられる。
【0039】
真空包装機10では、真空ポンプ40は、主としてチャンバ20内を吸引し、チャンバ20内の密閉空間SSの空気を排気して、チャンバ20内を負圧吸引する機能を有する。ケーシング11内には真空ポンプ40とチャンバ20とを接続する吸引管41が設けられており、吸引管41には真空弁42が介装されている。チャンバ20内の空気は真空弁42の開放によって真空ポンプ40に吸引可能となる。
【0040】
吸引管41にはチャンバ20と真空弁42との間に外気を導入する外気導入管43が接続されており、外気導入管43は第1管部43aと、第1管部43aから分岐した第2管部43bとを備えている。第1及び第2管部43a,43bにはこれらを開閉する第1及び第2外気導入弁44,45が介装されている。第1外気導入弁44は第2外気導入弁45より弁口径が大きく形成されており、第1外気導入弁44を開放したときにはチャンバ20内に速く外気が導入され、第2外気導入弁45を開放したときには、チャンバ20内にゆっくりと外気が導入される。
【0041】
吸引管41には外気導入管43の第1管部43aを介して圧力検出管46が接続されており、圧力検出管46にはチャンバ20の圧力を検出する真空計47が設けられている。チャンバ20内を脱気していないときには、真空計47により検出されるチャンバ20内の圧力は大気圧と同じ100kPa(abs)であり、真空度は0%である。チャンバ20内を真空ポンプ40により脱気して負圧化させ、真空計47により検出されるチャンバ内の圧力が0kPa(abs)であるときには、真空度は100%である。なお、真空計47によって直接検出されるのはチャンバ20内の圧力であるが、以後、真空計47によって検出された圧力をチャンバ20内の真空度Pに置き換えて説明をする。
【0042】
吸引管41には真空ポンプ40と真空弁42との間からシリンダ管48が分岐しており、シリンダ管48は昇降シリンダ36の上部空間36aに接続されている。シリンダ管48には三方弁49が介装されており、三方弁49の2つのポートはシリンダ管48の真空ポンプ40側と昇降シリンダ36側に接続され、三方弁49の残る1つのポートは外気側に開放されている(以下、「真空ポンプ側ポート」、「昇降シリンダ側ポート」、「外気ポート」という)。
【0043】
三方弁49の真空ポンプ40側と昇降シリンダ36側を連通状態で真空ポンプ40を作動させると、昇降シリンダ36の上部空間36aは負圧化され、支持軸35はばね部材38の付勢力に抗して上昇する。三方弁49の昇降シリンダ36側と外気側とを連通状態にすると、昇降シリンダ36の上部空間36aは負圧化されないようになり、支持軸35はばね部材38の付勢力によって下降する。
【0044】
図3及び
図5に示したように、チャンバ20内には収容した包装袋の膨らみを検知する膨らみ検知部50が設けられている。膨らみ検知部50はチャンバカバー22の下面前部に水平軸線回りに回動可能に支持された検知プレート51と、検知プレート51の後端に固定した磁石52と、検知プレート51の位置を検出するリードスイッチ等の近接スイッチよりなる膨らみ検知器53とを備えている。
【0045】
検知プレート51は下側及び上側ブロック31,32と同様に左右方向に延びる帯板形状をしている。検知プレート51は、チャンバカバー22の下面の上側ブロック32の直ぐ後側に配置され、後側が上下動するように水平軸線回りに回動可能に支持されている。検知プレート51の左端部の後端には磁石52が固定されており、磁石52は検知プレート51の回動によって上下動する。チャンバ20内に収容した包装袋が膨らんでいないときには、検知プレート51は斜め下方に傾斜しており、検知プレート51の後端の磁石52はチャンバ20内の下部に位置(下位置)する(
図3及び
図5の実線にて示した)。チャンバ20内に収容した包装袋が膨らんだときには、検知プレート51は膨らんだ包装袋によって持ち上げられて回動し、検知プレート51の後端の磁石52はチャンバ20内の上部に位置(上位置)する(
図3及び
図5の二点鎖線で示した)。
【0046】
膨らみ検知器53は、包装袋が膨らんだときに上側に回動する検知プレート51の後端の磁石52の位置を検知することで包装袋の膨らみを検知するものである。膨らみ検知器53はチャンバベース21の外側にて上位置となった検知プレート51の磁石52に対向する位置に配置されている。包装袋が膨らんでなくて検知プレート51の磁石52が下位置にあるときには、膨らみ検知器53は下位置にある磁石52が離間していることでオフ信号を出力する。包装袋が膨らんで検知プレート51の磁石52が上位置にあるときには、膨らみ検知器53は上位置にある磁石52が近接することでオン信号を出力する。
【0047】
真空包装機10は制御装置60を備えており、
図6に示したように、この制御装置60は、カバー検知器14と、ヒータ33と、真空ポンプ40と、真空弁42と、第1及び第2外気導入弁44,45と、真空計47と、三方弁49と、膨らみ検知器53と、ケーシング11の前面に設けた操作パネル61と、真空ポンプ40を冷却する冷却ファン70と、真空ポンプ40内のポンプオイルの温度を検知可能な温度センサ81と、に接続されている。
【0048】
操作パネル61は、電源投入時に押下される運転ボタン(電源スイッチ)、プログラムボタン、水抜きボタン、暖機運転ボタン等の入力装置と、プログラム番号表示、真空度ゲージ、残り時間表示等が可能な液晶表示器またはLED表示器等の出力装置と、を備えている。これら入力装置と出力装置を兼ねた液晶タッチパネル等の入出力装置でもよい。
【0049】
制御装置60はマイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続されたCPU、RAM、ROM、タイマ及び時計機能(いずれも図示省略)を備えている。ROMには、後述する制御プログラム、暖機要否判定プログラム、暖機プログラムや包装プログラム等が予め記憶されているため、CPUがこれらのプログラムを、適宜、ROMから読み出してRAMに展開して実行する。この実施形態では、真空包装機10の電源スイッチがオンされると、まず
図7に示した制御プログラムのメインルーチンをCPUが読み出して実行する。つまり、真空包装機10の電源が投入されると制御装置60は
図7のメイン制御処理を行う。
【0050】
まず、ステップ100では所定の初期化処理が行われる。例えば、RAMに設けられる所定のワーク領域や各種のフラグ等が初期値に設定されたり、真空ポンプ40、真空弁42、第1外気導入弁44、第2外気導入弁45、三方弁49等が初期状態に設定される。この実施形態では、例えば、真空ポンプ40は停止状態、真空弁42は閉止状態、第1外気導入弁44は開放状態、第2外気導入弁45は閉止状態、三方弁49は昇降シリンダ側ポートと外気ポートを連通状態に、真空ポンプ側ポートを遮断状態に制御する。
【0051】
次のステップ200では暖機要否判定処理が行われる。この処理は、真空ポンプ40が比較的低い温度環境下にあるか否かを判定して暖機運転の必要がある場合にはその情報を出力するものであり、制御装置60のROMには暖機要否判定プログラムとして記憶されている。この判定処理は、サブルーチンとして
図8に処理の流れが図示されているため、ここからは
図8を参照しながら説明する。
【0052】
暖機要否判定処理では、まずステップ201によりポンプオイルの温度情報を取得する処理が行われる。この実施形態では、温度センサ81が真空ポンプ40内のポンプオイルの温度情報を出力するのでこれを制御装置60が取得する。そして、続くステップ202により、この温度情報から真空ポンプ40内のオイル温度Toが予め定められている所定の暖機完了温度Tx未満であるか否かが判定される。暖機完了温度Txは、例えば、後述の冷却ファン制御処理において用いられる第2閾値温度Tbよりも低い温度に設定されている。
【0053】
ステップ202によりオイル温度Toが暖機完了温度Tx未満であると判定された場合には(S202;YES)、続くステップ203によりユーザに暖機運転の開始操作を促す暖機運転情報(暖機運転必要情報)を操作パネル61に出力する。例えば、操作パネル61の暖機運転ボタンのLED表示を点滅させたり、確認音や警告音を発するブザー(図示省略)を所定の音階で鳴動させたりして、真空包装機10のユーザに暖機運転が必要である旨を報知する。
【0054】
これに対して、オイル温度Toが暖機完了温度Tx未満であると判定されない場合、つまりオイル温度Toが暖機完了温度Tx以上であると判定された場合には(S202;NO)、真空ポンプ40の暖機運転は必要ない。そのため、本暖機要否判定処理を終了して
図7のメイン制御処理に戻る。ステップ203による暖機運転必要情報の出力後も本暖機要否判定処理を終了してメイン制御処理に戻る。
【0055】
図7に示したメイン制御処理に戻ると、次はステップ300により機能メニュー表示/選択処理が行われる。この処理は、真空包装機10が次に行うことが可能な機能を操作パネル61に表示すると共に操作パネル61により選択可能にするものである。例えば、後述するように食材や調理物等の被包装物を真空パックする包装プログラム(包装機能)が選択可能に操作パネル61に表示される。また、前述の暖機運転必要情報が操作パネル61に表示されて暖機運転の必要がある場合には暖機プログラム(暖機機能)が選択可能に操作パネル61に表示される。
【0056】
ステップ300により選択された機能に対応するプログラムは、続くステップ400の選択機能実行処理により実行され、その処理が完了するとステップ200の暖機要否判定処理に戻り、再び真空ポンプ40の暖機運転の要否を判定する。本メイン制御処理では、このような各ステップによる情報処理を、例えば運転ボタンが長押しされて電源オフの割り込み信号が入力されるまで繰り返し行うことにより、待機状態における暖機運転要否判定(S200)を可能にしている。
【0057】
次に、暖機プログラムによる暖機処理について説明する。この処理は前述の暖機運転必要情報が操作パネル61に表示されて真空ポンプ40の暖機運転の必要がある場合に実行することが可能なものであり、真空ポンプ40を低負荷で作動させてポンプオイルの温度を暖機完了温度Txまで上昇させるために行われるものである。
【0058】
図9に示したように、暖機処理では、まずステップ401により真空ポンプ40の暖機運転を開始する。即ち、真空弁42を開放状態、第1外気導入弁44を開放状態にそれぞれ制御したうえで真空ポンプ40を作動させる。これにより、真空ポンプ40は低負荷状態で作動することが可能になるため、真空ポンプ40内のオイル温度Toが低くポンプオイルの粘度が高めであっても過電流が流れることなくポンプモータを駆動することができる。
【0059】
そして、次のステップ402によりポンプオイルの温度情報を取得し、さらにステップ403によりこの温度情報から真空ポンプ40内のオイル温度Toが予め定められている所定の暖機完了温度Tx以上であるか否かが判定され、暖機完了温度Tx以上であると判定されるまでポンプオイルの温度情報の取得が繰り返される(S403;NO)。暖機完了温度Txは、前述の暖機要否判定処理において用いた暖機完了温度Txと同温度であるが、異なる温度に設定してもよい。
【0060】
そして、ステップ403によりオイル温度Toが暖機完了温度Tx以上であると判定された場合には(S403;YES)、暖機運転を終了するため、続くステップ404により真空ポンプ40の作動を停止させて真空弁42を閉止状態に制御する。また、第1外気導入弁44も必要に応じて閉止状態に制御する。本暖機処理が終了すると
図7のメイン制御処理に戻る。これにより、真空ポンプ40のポンプオイルは粘度が低くなっているので、包装プログラム等による真空引きを行っても真空ポンプ40のポンプモータに過剰な負担がかかることなく過電流も流れない。
【0061】
続いて、包装プログラムによる包装処理について説明する。この処理は、真空包装機10のチャンバ20内を真空ポンプ40により所定圧力まで負圧化させ、チャンバ20内に収容した包装袋を脱気した後で包装袋の開口周縁部を封止装置30によって封止して、包装袋を脱気した状態で密封する、つまり被包装物を真空パックするものである。
【0062】
包装プログラムは包装袋に入れる調理物の温度等に応じてチャンバ20内の真空度及び第1及び第2外気導入弁44,45の開放の仕方等の異なる複数のプログラムが設定されている。ここでは包装プログラムの一例として、調理物が常温(温度が低い)であるときの包装プログラムを具体的に説明する。
【0063】
なお、この包装処理の開始前には、チャンバ20内に、予め食材や調理物等の被包装物が入れられた包装袋が収容されている必要があり、封止装置30の下側ブロック31の上側には包装袋の開口周縁部が載置された状態でチャンバカバー22が閉じられている。また、真空弁42及び第2外気導入弁45が閉止状態、三方弁49の昇降シリンダ側ポートと外気ポートが連通状態に、真空ポンプ側ポートが閉止状態にそれぞれ制御されている。
【0064】
図10に示したように、包装処理では、まずステップ411によりカバー検知器14がオン状態であるか否か、つまりチャンバカバー22が閉じられているか否かの判定処理が行われる。チャンバカバー22が閉じられていない場合には(S411;NO)、チャンバカバー22が閉じられるまでカバー検知器14がオン状態であるか否かが繰り返し判定される。例えば、一定時間(例えば3分間)経過してもカバー検知器14がオン状態にならない場合には、本包装処理を終了して
図7のメイン制御処理に戻るように処理の流れを構成してもよい。
【0065】
チャンバカバー22が閉じられていると判定された場合には(S411;YES)、次のステップ412により真空ポンプ40による真空引きを開始する。即ち、真空弁42を開放状態、第1外気導入弁44を閉止状態にそれぞれ制御したうえで真空ポンプ40を作動させる。これにより、チャンバ20内は真空ポンプ40によって脱気が開始されて負圧化していくため、続くステップ413により、真空計47によって検出されるチャンバ20内の真空度Pが予め設定された真空度Px以上(所定圧力以下)となったか否かを繰り返し判定する。
【0066】
そして、チャンバ20内の圧力が徐々に低下して真空計47によって検出されるチャンバ20内の真空度Pが真空度Px以上となったとステップ413により判定された場合には(S413;YES)、脱気を中止して包装袋の開口周縁部をシールする。つまり、ステップ414により真空弁42を閉止状態に制御した後、ステップ415により、三方弁49の昇降シリンダ側ポートと真空ポンプ側ポートを連通状態に、外気ポートを閉止状態に制御する。
【0067】
これにより、昇降シリンダ36の上部空間36aは真空ポンプ40によって負圧化され、支持軸35はばね部材38の付勢力に抗して上昇し、下側ブロック31は上昇する支持軸35によって上昇する。そのため、下側ブロック31は上昇する支持軸35によって上側ブロック32に押しつけられて、包装袋の開口周縁部は下側ブロック31と上側ブロック32とによって挟持される。
【0068】
この状態でステップ416によりヒータ33を通電して発熱させることで包装袋の開口周縁部は熱溶着により閉じられて(シールされて)、包装袋が脱気された状態(真空状態)で密封、つまり被包装物が真空にパックされる。次のステップ417では、真空ポンプ40の作動を停止させると共に第1外気導入弁44を開放状態に制御し、さらにステップ418により、三方弁49の昇降シリンダ側ポートと外気ポートを連通状態に、また真空ポンプ側ポートを閉止状態に制御する。本包装処理が終了すると
図7のメイン制御処理に戻る。
【0069】
これにより、チャンバ20内は第1外気導入弁44から導入される外気によって大気圧に戻され、チャンバカバー22は負圧吸引されずにガススプリング12の付勢力によって開放される。また、三方弁49の昇降シリンダ側ポートが外気ポートに連通したことで、昇降シリンダ36の上部空間36aに外気が導入されて負圧状態が解除される。そのため、支持軸35は、ばね部材38の付勢力によって下降し、下側ブロック31は上側ブロック32から離間して、包装袋の開口周縁部は、下側及び上側ブロック31,32による挟持が解かれる。このようにして、包装袋は脱気された状態(真空状態)で密封されて被包装物の真空パックが出来上がる。
【0070】
このような真空包装機10の動作は真空ポンプ40が不具合なく機能してチャンバ20内が正常に負圧化されることを前提にしたものであるため、真空ポンプ40に不具合が生じた場合には被包装物の真空パックが上手くできない可能性がある。
【0071】
例えば、真空ポンプ40内のオイル温度Toが適正な温度範囲を高温側または低温側に逸脱した場合にはポンプオイルの粘度が低すぎたり高すぎたりしてポンプの摺動翼板とステータの間における潤滑効果が良好に得られなくなり機械的な破損を招くおそれがある。また、真空ポンプ40内やオイル中に含まれる水分によって生じた錆が摺動翼板とステータの間に噛み込んだ場合にも機械的な破損に繋がり得る。
【0072】
そこで、この実施形態の真空包装機10では、前述したように、真空ポンプ40とは独立して駆動制御可能な冷却ファン70を真空ポンプ40の近傍に設けると共に、その駆動制御を制御装置60が真空ポンプ40内のオイル温度Toに基づいて行い得るように構成した。真空ポンプ40内のオイル温度Toは、温度センサ81が検知して制御装置60にポンプオイルの温度情報を出力する。
【0073】
例えば、
図11に示した冷却ファン制御処理を真空ポンプ40の作動期間中に行う。具体的には、例えば、包装プログラムによる真空ポンプ40の作動期間中(S412~S416)において所定間隔(例えば100ミリ秒)ごとに冷却ファン制御処理を繰り返し行い得るように制御装置60によるタイマー割り込み処理によって冷却ファン制御プログラムを実行する。なお、この冷却ファン制御プログラムは、制御装置60のROMに予め記憶されている。
【0074】
図11に示したように、冷却ファン制御処理では、まずステップ501によって真空ポンプ40のポンプオイルの温度情報を取得し、さらにステップ502によりこの温度情報に基づいて真空ポンプ40内のオイル温度Toが予め定められている所定の第1閾値温度Taや所定の第2閾値温度Tbと比較される。第1閾値温度Taは、真空ポンプ40内のオイル温度として許容される範囲内の最高温度であり、第2閾値温度Tbは、同範囲内の最低温度である(Tb<<Ta)。なお、第2閾値温度Tbは、前述した暖機要否判定処理で用いた暖機完了温度Txよりも高い温度に設定されている(Tx<Tb)。
【0075】
そして、オイル温度Toが所定の第2閾値温度Tbよりも低いと判定された場合には(S502;To<Tb)、続くステップ503により低回転制御が行われる。即ち、例えば、通常回転時の20%~50%の回転数(rpm)でファンブレードを回転させる駆動コマンドが制御装置60から冷却ファン70のドライバ回路に送出されてそれに従ったPWM制御が冷却ファン70のファンモータに対して行われる。
【0076】
また、オイル温度Toが所定の第1閾値温度Taよりも高い場合には(S502;Ta<To)、続くステップ505により高回転制御が行われる。即ち、例えば、通常回転時の150%~300%の回転数(rpm)でファンブレードを回転させる駆動コマンドが制御装置60から冷却ファン70のドライバ回路に送出されてそれに従ったPWM制御が冷却ファン70のファンモータに対して行われる。
【0077】
オイル温度Toが、所定の第2閾値温度Tb以上かつ所定の第1閾値温度Ta以下であると判定された場合には(S502;Tb≦To≦Ta)、続くステップ504により通常回転制御が行われる。例えば、毎分500回転(rpm)でファンブレードを回転させる駆動コマンドが制御装置60から冷却ファン70のドライバ回路に送出されてそれに従ったPWM制御が冷却ファン70のファンモータに対して行われる。
【0078】
このように真空ポンプ40内のオイル温度Toが所定の第1閾値温度Taよりも高いと判定された場合には(S502;Ta<To)、冷却ファン70の回転数を増加させて(S505)、通常回転時よりも冷却能力を上げる。これにより、真空ポンプ40のポンプ機構、ポンプモータやポンプオイルを急速に冷やすことが可能になるので、例えば、真空ポンプ40内のオイル温度Toを適正な温度範囲内に管理することが可能になる。したがって、真空ポンプ40の不具合の発生を抑制することができるようになった。
【0079】
また、真空ポンプ40内のオイル温度Toが所定の第2閾値温度Tbよりも低いと判定された場合には(S502;To<Tb)、冷却ファン70の回転数を減少させて(S503)、通常回転時よりも冷却能力を下げる。これにより、真空ポンプ40のポンプオイルの冷却が弱めることが可能になるので、例えば、真空ポンプ40内のオイル温度Toを適正な温度範囲内に管理することが可能になる。また、過剰でなく適度にポンプオイルを冷やすことが可能になるので、電力等の不要なエネルギーの消費を抑制することができるようになった。
【0080】
なお、この冷却ファン制御処理では、低回転制御(S503)が連続して実行された積算回数をカウントしている。即ち、制御装置60は、図示しないカウント処理により、電源投入後からそれまでの間において、低回転制御(S503)による制御処理が連続して実行された回数(連続実行回数)を制御装置60のRAMのワーク領域に記憶している。「連続実行回数」とは、真空ポンプ40の作動期間中に所定間隔ごとに繰り返し実行される冷却ファン制御処理の判定処理(S502)において、オイル温度Toが第2閾値温度Tb未満であると続けて判定されるその積算回数のことである。
【0081】
またこの実施形態の真空包装機10では、前述の冷却ファン制御処理に加えて、例えば、
図12に示した含有水分気化処理を真空ポンプ40の作動期間中に行ってもよい。具体的には、例えば、包装プログラムによる真空ポンプ40の作動期間中(S412~S416)において所定間隔(例えば1秒)ごとに含有水分気化処理を繰り返し行い得るように制御装置60によるタイマー割り込み処理によって含有水分気化プログラムを実行する。この含有水分気化プログラムは、制御装置60のROMに予め記憶されている。
【0082】
なお、この含有水分気化プログラムが実行している期間中は、前述の冷却ファン制御プログラムを起動させる割り込み処理が阻止(割り込みのマスク)される。つまり、
図11の冷却ファン制御処理と
図12の含有水分気化処理とが同時期に行われることはなく、冷却ファン制御処理よりも含有水分気化処理の方が優先される。これにより、後述する冷却ファン70の低回転制御(S604)の維持を可能にしている。
【0083】
図12に示したように、含有水分気化処理では、まずステップ601により、前述した冷却ファン制御処理による低回転制御(S503)の連続実行回数をRAMのワーク領域から読み出してそれが所定の回数N以上であるか否かを判定する。この連続実行回数は、前述した冷却ファン制御処理で低回転制御(S503)が連続して行われた回数であり、オイル温度Toが第2閾値温度Tbよりも低い状態で運転された期間を表す。この期間が長いほど、真空包装機10が低温環境下で使用され続けてポンプオイルに水分が含まれている蓋然性が高い。そのため、所定の回数Nは、例えば、冷却ファン制御処理が100ミリ秒ごとに実行される場合においては、例えば1800~3000回(3~5分間連続して低回転制御が行われていた回数)に設定される。
【0084】
ステップ601により低回転制御の連続実行回数がN回以上でないと判定された場合には(S601;NO)、真空ポンプ40のポンプオイルには水分が含まれている蓋然性が低いため、今回は本含有水分気化処理を終了する。これに対して低回転制御の連続実行回数がN回以上であると判定された場合には(S601;YES)、ポンプオイルには水分が含まれている蓋然性が高いことから、次のステップ602に処理を移す。
【0085】
ステップ602では真空ポンプ40のポンプオイルの温度情報を取得し、さらにステップ603によりこの温度情報に基づいて真空ポンプ40内のオイル温度Toが予め定められている所定の水分蒸発温度Tcと比較される。水分蒸発温度Tcは、ポンプオイルに含まれる水が気化して水蒸気になりポンプオイルから抜け出ることが可能な温度である。例えば、水分蒸発温度Tcは水の沸点である100℃に設定される(Ta<Tc)。
【0086】
そして、オイル温度Toが所定の水分蒸発温度Tcよりも低いと判定された場合には(S603;To<Tc)、続くステップ604により低回転制御が行われる。例えば、通常回転時の20%~50%の回転数(rpm)でファンブレードを回転させる駆動コマンドが制御装置60から冷却ファン70のドライバ回路に送出されてそれに従ったPWM制御が冷却ファン70のファンモータに対して行われる。なお、冷却ファン70を停止させてもよい。
【0087】
ステップ604の低回転制御により、冷却ファン70の冷却能力が低下するため、真空ポンプ40は、ステータや摺動翼板等の発熱により真空ポンプ40内のオイル温度Toが上昇する。そのため、ステップ602に戻ってポンプオイルの温度情報の取得、オイル温度Toの判定(S603)、低回転制御(S604)を何度か繰り返すうちに、やがてオイル温度Toは水分蒸発温度Tcに達する。なお、前述したように本含有水分気化処理が行われている期間中は、冷却ファン制御処理(
図11)は行われないため、オイル温度Toが上昇してもこの低回転制御(S604)によって冷却ファン70の回転数は低回転を維持し続ける。
【0088】
ステップ603によりオイル温度Toが所定の水分蒸発温度Tcよりも高いと判定された場合には(S603;NO)、ステップ605によりさらに所定時間の経過(例えば、60~120秒間)を待った後、本含有水分気化処理を終える。これにより、真空ポンプ40内のオイル温度Toは、少なくとも所定時間中、水分蒸発温度Tc以上に維持されるため、ポンプオイルに含まれる水分の蒸発が促進されてポンプオイル中の含有水分の気化が可能になる。したがって、真空ポンプ40内やポンプオイル中に錆が生じ難くなるので、そのような錆に起因する真空ポンプ40の不具合の発生を抑制することができるようになった。
【0089】
上記のように構成した真空包装機10においては、制御装置60は、温度センサ81が検知したポンプオイルの温度情報に基づいて真空ポンプ40の暖機運転の要否を判定し(S202)、暖機運転が必要であると判定した場合には(S202;YES)、ユーザに暖機運転の開始操作を促す暖機運転情報を操作パネル61に出力する(S203)。これにより、真空ポンプ40のポンプオイルの温度情報に基づいて暖機運転の要否を判定するため、真空ポンプ40のロータ、摺動翼板、ステータ等のポンプ機構部品やモータ等のポンプ部品に過剰な負荷をかけることなく暖機運転情報を操作パネル61に出力して暖機運転が必要である旨をユーザに告知することが可能になる。したがって、真空ポンプ40を構成するポンプ部品に過負荷がかかりにくくなるため、真空ポンプ40の不具合の発生を抑制することができた。
【0090】
また、この真空包装機10においては、制御装置60は、真空ポンプ40のポンプオイルの温度情報に基づいてオイル温度Toが予め定められた所定の暖機完了温度Txに到達したと判定した場合には(S403;YES)、暖機運転を終了させるように構成した(S404)。これにより、真空ポンプ40のオイル温度Toが所定の暖機完了温度Txに到達すると暖機運転が自動的に終わるので、このような自動終了機能がない場合に比べて暖機運転によるユーザの使用待ち時間を最短にすることができ、また電力等の不要なエネルギーの消費を抑制することができた。
【0091】
さらに、この真空包装機10においては、真空ポンプ40を冷却し得ると共に制御装置60が駆動制御可能な冷却ファン70を備え、制御装置60は、真空ポンプ40のポンプオイルの温度情報に基づいた冷却ファン70の駆動制御を行うように構成した。これにより、上記特許文献2(実開平06-14485号公報)の油回転真空ポンプのように、ポンプ機構を駆動するポンプ軸と連動して回転する軸流ファンを内蔵したものに比べて、真空ポンプ40の作動とは独立しながらも、真空ポンプ40のポンプオイルの温度情報に基づいて冷却ファン70の駆動を制御することが可能になり、真空ポンプ40のポンプオイルやポンプ部品を適切に冷却することができるようなった。例えば、真空ポンプ40内のオイル温度Toを適正な温度範囲内に管理することが可能になるので、ポンプオイルの粘度を適度に維持することができ、ポンプの摺動翼板とステータの間等における良好な潤滑効果を得ることができる。したがって、このような温度に起因した真空ポンプ40の不具合の発生を抑制することができた。
【0092】
なお、上記の真空包装機10では、暖機要否判定処理(
図8)において、ステップ202による判定処理の結果、オイル温度Toが暖機完了温度Tx未満であると判定された場合(S202;YES)、続くステップ203により暖機運転情報を操作パネル61に出力する処理を行うように構成したが、暖機運転必要情報の出力に代えて、例えば、
図9に示した暖機処理を続けて行うように処理の流れを構成してもよい。この場合には、ステップ202による判定処理でオイル温度Toが暖機完了温度Tx未満でないと判定されたときには(S202;NO)、暖機処理(
図9)を行う必要がないため、本暖機要否判定処理(
図8)を終えて
図7のメイン制御処理に戻る。
【0093】
これにより、ユーザの手動操作による暖機処理(
図9)の起動操作を待つことなく、自動的に暖機処理が実行されるので、暖機処理(
図9)をスキップ(省略)して、例えば、包装処理(
図10)が実行されることを防ぐことができるようになる。なお、暖機処理では真空ポンプ40の作動に伴う騒音が所定時間継続するため、時間帯(例えば、深夜帯)によっては暖機運転が望ましくない場合がある。そのため、制御装置60が有する時計機能により予め設定された時間帯を除いて、前述のように自動的に暖機処理を実行するように構成してもよい。この場合には、時計機能により予め設定された時間帯は、暖機要否判定処理(
図8)に留まる。
【0094】
なお、この実施形態の真空包装機10では、
図12に示した含有水分気化処理においては、低回転制御の連続実行回数を判定して(S601)、オイル温度Toが第2閾値温度Tbよりも低い状態で運転された期間が一定時間以上である場合(S601;YES)にそれ以降の各処理(S602~S605)を行うように構成したが、他の条件を用いてもよい。例えば、真空包装機10が有する時計機能やタイマー機能を用いて、電源投入後の期間が長い(例えば6時間)にもかかわらず、真空ポンプ40の運転時間の積算時間が短い(例えば5分以下)場合に含有水分気化処理の各処理(S602~S605)を実行するようなアルゴリズムにしてもよい。
【0095】
また、この実施形態の真空包装機10では、
図11に示した冷却ファン制御処理が何度か行われたことを前提に、含有水分気化処理(
図12)を行う場合を例示して説明したが、本発明はこれに限られることはない。例えば、温度センサ81から継続的に温度情報を取得して真空ポンプ40内のオイル温度Toが一定期間(例えば3~5分間)連続して第2閾値温度Tbを下回っている場合には、含有水分気化処理の各処理(S602~S605)を実行するようなアルゴリズムにしてもよい。
【0096】
さらに、この実施形態では、厨房機器の一例として、真空包装機10に適用する場合を例示して説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、厨房機器であれば、例えば、「密閉空間を形成し得る密閉容器と、前記密閉容器内を冷却する冷却器と、前記冷却器に冷却された前記密閉容器内を脱気して負圧化させる油循環式の油回転真空ポンプと、前記油回転真空ポンプ内を循環する油の温度を検知して油温度情報を出力する油温度センサと、前記油温度センサから前記油温度情報を取得する制御装置と、を備えた真空冷却機」にも適用することが可能である。また、真空包装機10において述べた数々の技術的な作用及び効果は、いずれについてもこのような真空冷却機において同様に得られる。
【符号の説明】
【0097】
10…真空包装機(厨房機器)、11…ケーシング、20…チャンバ(密閉容器)、21…チャンバベース(密閉容器)、22…チャンバカバー(密閉容器)、40…真空ポンプ(油回転真空ポンプ)、60…制御装置(制御装置)、61…操作パネル(出力装置)、70…冷却ファン、81…温度センサ(油温度センサ)、SP…空間、SS…密閉空間、Ta…第1閾値温度、Tb…第2閾値温度、Tc…水分蒸発温度、Tx…暖機完了温度。