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▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-04
(45)【発行日】2025-08-13
(54)【発明の名称】リチウムイオン伝導体
(51)【国際特許分類】
   H01B 1/06 20060101AFI20250805BHJP
   C01B 35/06 20060101ALI20250805BHJP
【FI】
H01B1/06 A
C01B35/06
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2022023369
(22)【出願日】2022-02-18
(65)【公開番号】P2023120474
(43)【公開日】2023-08-30
【審査請求日】2024-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】南 圭一
【審査官】中嶋 久雄
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-161379(JP,A)
【文献】国際公開第2009/139382(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/126416(WO,A1)
【文献】特開2018-090430(JP,A)
【文献】特開2018-045794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 1/06
C01B 35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質として、LiBIを含む、リチウムイオン伝導体を備える全固体電池
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウムイオン伝導体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるパソコン、ビデオカメラおよび携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。また、自動車産業界等においても、電気自動車用あるいはハイブリッド自動車用の高出力かつ高容量の電池の開発が進められている。
【0003】
非特許文献1には、LiI相を含む、リチウムイオン伝導体が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】J.Am.Chem.Soc.2015,137,1384-1387
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に記載のリチウムイオン伝導体は、高温域(80℃以上)でのイオン伝導性が高くない。
【0006】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、高温域(80℃以上)でのイオン伝導性が高いリチウムイオン伝導体を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のリチウムイオン伝導体は、LiBIを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、高温域(80℃以上)でのイオン伝導性が高いリチウムイオン伝導体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示のリチウムイオン伝導体は、LiBIを含む。
【0010】
LiI相を含む、リチウムイオン伝導体は、電池において、固体電解質として高温域で使用する場合、イオン伝導度が低い。
本研究者は、Li-B-Iを含むリチウムイオン伝導体が60℃~80℃で相転移が起こり、高いイオン伝導性を示すことを見出した。また、本研究者は、Li-B-Iを含むリチウムイオン伝導体は、同族のヨウ化物や臭化物、さらにはヨウ素含有硫化物系よりも高いイオン伝導度を示すことを明らかにした。
【0011】
本開示のリチウムイオン伝導体は、LiBIを含むものであればよく、LiBIからなるものであってもよく、LiIとBIをモル比1:1で含むものであってもよい。
【0012】
本開示のリチウムイオン伝導体は、種々の電池の固体電解質として用いてもよい。
電池としては、一次電池であっても良く、二次電池であっても良いが、中でも二次電池であってもよい。二次電池は繰り返し充放電が可能である。二次電池は、例えば車載用電池として有用である。
電池は、水系電池、非水系電池、及び、全固体電池等であってもよい。
また、電池は、リチウム電池、及び、リチウムイオン電池等であってもよい。
さらに、全固体電池は、全固体リチウム二次電池、及び、全固体リチウムイオン二次電池等であってもよい。
電池の用途は、特に限定されないが、例えば、ハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)、電気自動車(BEV)、ガソリン自動車、ディーゼル自動車等の車両の電源が挙げられる。特に、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車または電気自動車の駆動用電源に用いられてもよい。また、本開示における電池は、車両以外の移動体(例えば、鉄道、船舶、航空機)の電源として用いられてもよく、情報処理装置等の電気製品の電源として用いられてもよい。
【実施例
【0013】
(実施例1)
[LiBIの合成]
LiI(高純度化学製)とBI(高純度化学製)をモル比1:1で500mlZrOポットに入れて、5mmφZrOボールを入れた後に、ヘプタンを100g入れた状態で300rpm-1hの条件での撹拌を20セット実施した。これをグローブボックス内で乾燥し、内容物を回収することでLiBIを得た。
【0014】
(比較例1)
[LiAlIの合成]
出発原料をAlI(アルドリッチ製)としたこと以外は、実施例1と同様の方法でLiAlIを得た。
【0015】
(比較例2)
[LiGaIの合成]
出発原料をGaI(アルドリッチ製)としたこと以外は、実施例1と同様の方法でLiGaIを得た。
【0016】
(比較例3)
[LiBBrの合成]
出発原料をLiBr(高純度化学製)、BBr(ナカライテスク製)としたこと以外は、実施例1と同様の方法でLiBBrを得た。
【0017】
(比較例4)
[LiIの合成]
アセトニトリル(アルドリッチ製)中でLiS(アルファ製)とP(アルドリッチ製)を2:1のモル比で混合させ、得られた粉末を80℃で乾燥し、LiPS-2ACNを得た。これをさらにアセトニトリル中で溶解させたLiI中に15分間分散させ、得られたスラリーを200℃-12h真空乾燥させてLiIの固溶体を合成した。
【0018】
[イオン伝導度測定]
実施例1および比較例1~4の固体電解質(リチウムイオン伝導体)について、以下の条件で、イオン伝導度の評価を実施した。
固体電解質100~150mgをシリンダー内に充填し、6tプレスすることで圧粉セルを作製した。これをデシケータに入れた状態で、恒温槽にて25℃、80℃の各温度でインピーダンス測定を実施した。得られた抵抗値とサンプル厚みから各温度でのイオン伝導度を算出した。その結果を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
[評価結果]
表1に示すように、LiBIは室温25℃ではそれほど伝導度が高くないが、60℃~80℃の間で相転移挙動がみられ、80℃ではイオン伝導度が顕著に(4桁)向上することが確認された。これは比較例1のLiAlI、比較例2のLiGaIといった同族のヨウ化物系、比較例3のB-Br系ではみられず、実施例1のB-I系特有の現象である。また、比較例4のヨウ素含有硫化物系の固体電解質と比較しても実施例1のLiBIは、80℃の高温域で高いイオン伝導度を示すことから、LiBIは、80℃以上の高温域での電池の高出力化に期待できる材料である。