(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-04
(45)【発行日】2025-08-13
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
E01C 23/01 20060101AFI20250805BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20250805BHJP
【FI】
E01C23/01
G08G1/00 J
(21)【出願番号】P 2022083880
(22)【出願日】2022-05-23
【審査請求日】2024-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 豊和
(72)【発明者】
【氏名】竹本 毅
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-013537(JP,A)
【文献】特開2018-120409(JP,A)
【文献】特開2021-036455(JP,A)
【文献】特開2004-191276(JP,A)
【文献】特開2021-015013(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0160295(US,A1)
【文献】特開2021-025242(JP,A)
【文献】特開2021-152255(JP,A)
【文献】特開2021-086476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 23/01
G08G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両
に搭載された車輪速センサによ
り計測された
車輪速の平均変動率又は前記車両に搭載された加速度センサにより計測された平均加速度である第1値
の変化率を複数の道路区間それぞれについて取得することと、
前記複数の道路区間のうち、取得された前記第1値の変化率の差が所定の値以下である2以上の特定区間が存在するか否かを判定すること、
前記2以上の特定区間が存在する場合、
前記2以上の特定区間それぞれの交通量に関する第2値を取得すること、
取得された前記第2値に基づいて、前記2以上の特定区間の保守の優先順位を決定すること、及び
取得された前記第1値の変化率に基づいて、前記複数の道路区間のうちの前記2以上の特定区間以外の道路区間の保守の優先順位を決定すること、並びに
前記2以上の特定区間が存在しない場合、取得された前記第1値の変化率に基づいて、前記複数の道路区間の保守の優先順位を決定すること
、
を実行する制御部を備える、
情報処理装置。
【請求項2】
コンピュータが実行する情報処理方法であって、
車両
に搭載された車輪速センサによ
り計測された
車輪速の平均変動率又は前記車両に搭載された加速度センサにより計測された平均加速度である第1値
の変化率を複数の道路区間それぞれについて取得することと、
前記複数の道路区間のうち、取得された前記第1値の変化率の差が所定の値以下である2以上の特定区間が存在するか否かを判定すること、
前記2以上の特定区間が存在する場合、
前記2以上の特定区間それぞれの交通量に関する第2値を取得すること、
取得された前記第2値に基づいて、前記2以上の特定区間の保守の優先順位を決定すること、及び
取得された前記第1値の変化率に基づいて、前記複数の道路区間のうちの前記2以上の特定区間以外の道路区間の保守の優先順位を決定すること、並びに
前記2以上の特定区間が存在しない場合、取得された前記第1値の変化率に基づいて、前記複数の道路区間の保守の優先順位を決定すること
、
を含む、
情報処理方法。
【請求項3】
コンピュータが情報処理方法を実行するためのプログラムであって、
前記情報処理方法は、
車両
に搭載された車輪速センサによ
り計測された
車輪速の平均変動率又は前記車両に搭載された加速度センサにより計測された平均加速度である第1値
の変化率を複数の道路区間それぞれについて取得することと、
前記複数の道路区間のうち、取得された前記第1値の変化率の差が所定の値以下である2以上の特定区間が存在するか否かを判定すること、
前記2以上の特定区間が存在する場合、
前記2以上の特定区間それぞれの交通量に関する第2値を取得すること、
取得された前記第2値に基づいて、前記2以上の特定区間の保守の優先順位を決定すること、及び
取得された前記第1値の変化率に基づいて、前記複数の道路区間のうちの前記2以上の特定区間以外の道路区間の保守の優先順位を決定すること、並びに
前記2以上の特定区間が存在しない場合、取得された前記第1値の変化率に基づいて、前記複数の道路区間の保守の優先順位を決定すること
、
を含む、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理装置、情報処理方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、路面状態推定プログラムが開示されている。特許文献1に開示されている路面状態推定プログラムにおいては、車両の走行時に、第1マイクロホンにより集音された第1音データと第2マイクロホンにより集音された第2音データとが取得される。ここで、第1マイクロホンは、車両の前輪の近傍に設定されたマイクロホンである。また、第2マイクロホンは、車両の後輪の近傍に設置されたマイクロホンである。そして、路面状態推定プログラムにおいては、取得した第1音データと第2音データとの差分に基づいて、車両が走行した路面下の空洞が検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、道路の効率的な保守を可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の態様に係る情報処理装置は、
車両が有するセンサによって取得された第1値であって、道路の凹みに関する第1値を複数の道路区間それぞれについて取得することと、
前記複数の道路区間それぞれの前記第1値に基づいて、前記複数の道路区間の保守の優先順位を決定することと、
を実行する制御部を備える。
【0006】
本開示の第2の態様に係る情報処理方法は、
コンピュータが実行する情報処理方法であって、
車両が有するセンサによって取得された第1値であって、道路の凹みに関する第1値を複数の道路区間それぞれについて取得することと、
前記複数の道路区間それぞれの前記第1値に基づいて、前記複数の道路区間の保守の優先順位を決定することと、
を含む。
【0007】
本開示の第3の態様に係るプログラムは、
コンピュータが情報処理方法を実行するためのプログラムであって、
前記情報処理方法は、
車両が有するセンサによって取得された第1値であって、道路の凹みに関する第1値を複数の道路区間それぞれについて取得することと、
前記複数の道路区間それぞれの前記第1値に基づいて、前記複数の道路区間の保守の優先順位を決定することと、
を含む、
プログラム。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、道路の効率的な保守が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る保守システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、保守サーバが管理する道路の構造の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、保守サーバの機能構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図4】
図4は、車両情報データベースに保持されている車両情報のテーブル構成の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、道路情報データベースに保持されている道路情報のテーブル構成の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、平均変動率の時間推移の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示の第1の態様に係る情報処理装置は、道路の管理を行う情報処理装置である。ここで、道路の下に空洞が生じる場合を想定する。この場合において、道路の下の空洞によって道路が陥没してしまうと、車両または歩行者等に危険が生じる虞がある。また、道路の下の空洞によって他の道路よりも危険な状態となっている道路は、該他の道路よりも早期に保守される必要がある。そのため、複数の道路に対して、保守の優先順位を定める必要がある。
【0011】
道路の下に空洞が生じている場合、道路の舗装部分に撓みが生じることが想定される。つまり、道路に凹みが存在することが想定される。そこで、本開示の第1の態様に係る情報処理装置における制御部は、車両が有するセンサによって取得された計測値(以下、「第1値」と称する場合がある。)であって、道路の凹みに関する第1値を複数の道路区間それぞれについて取得する。これにより、情報処理装置における制御部は、複数の道路区間における道路の下の空洞について把握することが可能となる。情報処理装置における制御部は、複数の道路区間のそれぞれに対応する第1値に基づいて、複数の道路区間の保守の優先順位を決定する。
【0012】
本開示の第1の態様に係る情報処理装置によって、複数の道路区間の保守の優先順位が決定される。これにより、複数の道路区間のうち、道路の下の空洞によって他の道路区間よりも危険な状態となっている道路区間を、他の道路区間よりも優先的に保守することが可能となる。このようにして、道路の効率的な保守が可能になる。
【0013】
以下、本開示の具体的な実施形態について図面に基づいて説明する。本実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、および、その相対配置等は、特に記載がない限りは本開示の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0014】
<実施形態>
(システムの概要)
本実施形態における保守システム1について、
図1および
図2に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る保守システム1の概略構成を示す図である。保守システム1は、複数の車両10と保守サーバ200とを含んで構成される。保守システム1においては、複数の車両10と保守サーバ200とがネットワークN1によって相互に接続される。ネットワークN1には、例えば、インターネット等の世界規模の公衆通信網であるWAN(Wide Area Network)または、携帯電話等の電話通信網が採用されてもよい。
【0015】
(車両)
車両10は、車輪速センサ100を有する車両である。ここで、車輪速センサ100は、車両10の車輪速を測定するセンサである。車両10は、ネットワークN1を介して、車輪速センサ100が取得した車両10の車輪速と、車両10が有するGPSセンサが取得した車両10の位置と、を含むセンサ情報を保守サーバ200に送信する。このとき、車両10は、所定の周期で繰り返し、センサ情報を保守サーバ200に送信する。
【0016】
(保守サーバ)
保守サーバ200は、複数の道路の管理を行うサーバである。
図2は、保守サーバ200が管理する道路の構造の一例を示す図である。
図2に示す道路は、アスファルトによって舗装されている道路である。
図2に示すように、道路は、土砂の上にアスファルトによって舗装されている。また、
図2に示す道路においては、道路(アスファルト)の下に空洞が発生している。ここで、道路の下の空洞は、道路の下に存在する土砂の一部が流出することによって発生する。
【0017】
図2に示す例においては、アスファルトの下に空洞が存在していることによって、アスファルトに撓みが生じている。そのため、
図2に示す例においては、道路の一部が凹んでいる。また、道路の下の土砂が継続的に流出することによって、道路の下の土砂部分における空洞が大きくなっていくことが想定される。そうすると、道路の下の土砂部分における空洞が大きくなればなるほど、アスファルトの撓みが大きくなる。したがって、道路の下の土砂部分における空洞が大きくなればなるほど、道路の凹み(アスファルトの撓み)が大きくなることが想定される。
【0018】
そこで、保守サーバ200は、道路を走行した車両10から受信したセンサ情報に基づいて道路の凹みの状態を把握する。これにより、保守サーバ200は、道路の下の空洞を把握することができる。なお、保守サーバ200がセンサ情報に基づいて道路の下の空洞の状態を把握する方法の詳細については後述する。
【0019】
保守サーバ200は、プロセッサ210、主記憶部220、補助記憶部230、および通信インタフェース(通信I/F)240を有するコンピュータを含んで構成される。プロセッサ210は、例えば、CPU(Central Processing Unit)またはDSP(Digital Signal Processor)である。主記憶部220は、例えば、RAM(Random Access Memory)である。補助記憶部230は、例えば、ROM(Read Only Memory)である。また、補助記憶部230は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、またはCD-ROM、DVDディスク、もしくはブルーレイディスクのようなディスク記録媒体である。また、補助記憶部230は、リムーバブルメディア(可搬記憶媒体)であってもよい。ここで、リムーバブルメディアとして、例えば、USBメモリまたはSDカードが例示される。通信I/F240は、例えば、LAN(Local Area Network)インターフェースボード、または無線通信のための無線通信回路である。
【0020】
保守サーバ200において、補助記憶部230には、オペレーティングシステム(OS)、各種プログラム、および各種情報テーブル等が格納されている。また、保守サーバ200において、プロセッサ210が、補助記憶部230に記憶されたプログラムを主記憶部220にロードして実行することによって、後述するような各種の機能を実現することができる。ただし、保守サーバ200における一部または全部の機能はASICまたはFPGAのようなハードウェア回路によって実現されてもよい。なお、保守サーバ200は、必ずしも単一の物理的構成によって実現される必要はなく、互いに連携する複数台のコンピュータによって構成されてもよい。
【0021】
(機能構成)
次に、本実施形態に係る保守システム1を構成する保守サーバ200の機能構成について、
図3から
図6に基づいて説明する。
図3は、保守サーバ200の機能構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【0022】
保守サーバ200は、制御部201、通信部202、車両情報DB203、および道路情報DB204を含んで構成される。制御部201は、保守サーバ200の制御をするための演算処理を行う機能を有する。制御部201は、保守サーバ200におけるプロセッサ210によって実現できる。通信部202は、保守サーバ200をネットワークN1に接続する機能を有する。通信部202は、保守サーバ200における通信I/F240によって実現できる。
【0023】
制御部201は、通信部202によって、センサ情報を車両10から所定の周期で繰り返し受信する。制御部201は、車両10から受信したセンサ情報を車両情報DB203に格納する。車両情報DB203は、車両情報を保持する機能を有する。車両情報DB203は、保守サーバ200における補助記憶部230によって実現できる。
図4は、車両情報DB203に保持されている車両情報のテーブル構成の一例を示す図である。
図4に示すように、車両情報は、車両IDフィールド、日時フィールド、車両位置フィールド、および車輪速フィールドを有する。
【0024】
車両IDフィールドには、車両を特定するための識別子(車両ID)が入力される。日時フィールドには、センサ情報に基づいて、車両10における車輪速センサ100によって車両10の車輪速が取得された日時が入力される。車両位置フィールドには、センサ情報に基づいて、車両10の位置が入力される。車両位置フィールドには、例えば、車両10の位置が緯度および経度によって入力される。車輪速フィールドには、車両位置フィールドに入力される車両10の位置における車両10の車輪速に関する情報が入力される。ここで、車輪速フィールドには、車両10の車輪の回転速度等が入力される。制御部201は、車両情報DB203に格納されている車両情報を取得することによって、車両10が過去に存在した位置と、該位置における車輪速とを把握することができる。
【0025】
道路情報DB204は、道路情報を保持する機能を有する。道路情報DB204は、保守サーバ200における補助記憶部230によって実現できる。
図5は、道路情報DB204に保持されている道路情報のテーブル構成の一例を示す図である。
図5に示すように、道路情報は、区間IDフィールド、想定交通量フィールド、および地図情報フィールドを有する。
【0026】
区間IDフィールドには、道路区間を特定するための識別子(区間ID)が入力される。想定交通量フィールドには、区間IDフィールドに入力されている区間IDに対応する道路区間の想定交通量が入力される。ここで、想定交通量は、車両が道路区間を走行すると想定される単位時間当たりの交通量が入力される。想定交通量フィールドには、道路区間を走行すると想定される単位時間当たりの車両の、台数または重量等が入力される。なお、道路区間は、複数の道路リンクによって定められていてもよいし、一の道路リンクによって定められていてもよい。また、一の道路リンクを複数の区間に分割し、それぞれに区間IDを割り当ててもよい。また、複数の道路区間は、同一の道路における複数の道路区間でもよいし、2つ以上の異なる道路における複数の道路区間であってもよい。
【0027】
地図情報フィールドには、区間IDフィールドに入力されている区間IDに対応する道路区間の地図情報が入力される。地図情報は、道路区間における各地点の位置に関する情報である。地図情報フィールドには、地図情報として、道路区間上の複数の地点の位置が緯度および経度を用いて入力される。制御部201は、道路情報を道路情報DB204から取得することによって、各道路区間の想定交通量と、各道路区間に含まれる地点の位置
とを把握することができる。
【0028】
制御部201は、車両情報および道路情報をそれぞれ車両情報DB203および道路情報DB204から取得することによって、各道路区間上の複数の地点における、車両10の走行時の車輪速の変動率を把握することができる。具体的には、制御部201は、道路情報DB204に保持されている道路情報における地図情報から、各道路区間上の複数の地点の位置に関する情報を取得する。また、制御部201は、車両情報DB203に保持されている車両情報における車両位置フィールドに入力されている車両10が存在した位置を取得する。そして、制御部201は、車両10が存在した位置と、各道路区間上の複数の地点の位置に関する情報とを参照し、車両10が走行した道路を特定する。
【0029】
また、制御部201は、車両情報に基づいて、特定された道路区間を車両10が走行した際の、各地点における車両10の車輪速を取得する。そして、制御部201は、車両10が道路区間における各地点を走行した際の、車両10の車輪速の変動率を算出する。具体的には、制御部201は、車両10の車輪速の変動率は、道路区間上のある地点における車輪速と、該ある地点の車両10の進行方向手前の地点における車輪速と、の差によって算出される。
【0030】
ここで、道路の下に空洞が生じることによって、道路に凹みが生じている。このとき、道路の凹みの影響により車両10の車輪速が変動しやすくなり、車輪速の変動率が大きくなることが想定される。また、道路の凹み(アスファルトの撓み)が大きくなればなるほど、車輪速の変動率が大きくなることが想定される。そこで、制御部201は、複数の車両10が道路区間における各地点に対して、複数の車両10が各地点を走行した際の車輪速の変動率の平均値(以下、「平均変動率」と称する場合がある。)を算出する。制御部201は、単位期間中に複数の車両10が各地点を走行した際の車輪速の変動率に基づいて、道路区間における各地点の平均変動率を単位期間ごとに算出する。これにより、制御部201は、平均変動率の時間推移を算出する。ここで、単位期間は、例えば、一か月等の予め定められた期間である。
【0031】
なお、本実施形態においては、各道路区間は、各道路区間に含まれる地点を複数含んでいる。そこで、本実施形態においては、制御部201は、各道路区間における複数の地点の平均変動率の最大値を、各道路区間の平均変動率として算出している。つまり、制御部201は、各道路区間において最も大きい地点の平均変動率を、各道路区間の平均変動率として算出している。これにより、制御部201は、各道路区間の最も凹みの大きい地点の平均変動率を把握することができる。
【0032】
図6は、平均変動率の時間推移の一例を示す図である。
図6おいては、道路区間Aおよび道路区間Bの2つの道路区間の平均変動率が示されている。
図6においては、道路区間Aの平均変動率が白丸印によって示されている。また、
図6においては、道路区間Bの平均変動率が黒丸印によって示されている。
図6に示すように、道路区間Aと道路区間Bとは、時点A以降、平均変動率が上昇している。そのため、道路区間Aと道路区間Bとは、時点A以降、道路の凹みがより大きくなっていることが想定される。つまり、道路区間Aと道路区間Bとは、時点A以降、それぞれの道路の下の空洞がより大きくなっていることが想定される。
【0033】
ここで、
図6に示すように、時点A以降、道路区間Aの平均変動率の傾きは、道路区間Bの平均変動率の傾きよりも大きくなっている。つまり、時点A以降、平均変動率の変化率(以下、「特定変化率」と称する場合がある。)は道路区間Bよりも道路区間Aのほうが大きくなっている。つまり、道路区間Aのほうが道路区間Bよりも道路の凹みが早く大きくなっていることが想定される。つまり、道路区間Aの下の空洞のほうが、道路区間B
の下の空洞よりも早く大きくなっていることが想定される。そのため、道路区間Aのほうが道路区間Bよりも早期に保守を行う必要があると想定される。そこで、制御部201は、特定変化率に基づいて、道路区間Aと道路区間Bとの保守を行う順位に関する優先順位(以下、単に「優先順位」と称する場合がある。)を、道路区間Bよりも道路区間Aのほうが高くなるように決定する。これにより、道路の下の空洞が道路区間Bよりも早く大きくなっている道路区間Aのほうが、道路区間Bよりも早期に保守が行われることになる。このように、制御部201は、特定変化率に基づいて、特定変化率が大きい道路区間の優先順位を特定変化率が小さい道路区間の優先順位よりも高くなるように決定する。
【0034】
ここで、複数の道路区間のうち、特定変化率の差が所定の値以下である少なくとも2つの道路区間(以下、「特定区間」と称する場合がある。)が存在する場合がある。所定の値は、2つの特定区間の特定変化率が異なっていたとしても、特定変化率の差が所定の値以下であれば、2つの特定区間における道路の下の空洞が大きくなっていく早さが微差であると考えられる値として定められている。この場合において、制御部201は、各特定区間の想定交通量に基づいて、該少なくとも2つの特定区間の優先順位を決定する。
【0035】
ここで、想定交通量が多い道路区間は、想定交通量が少ない道路区間よりも、道路が陥没した際の影響が大きくなることが想定される。そこで、本変形例における保守サーバ200は、少なくとも2つの特定区間のうち、想定交通量が大きい道路区間の優先順位を想定交通量が小さい道路区間の優先順位よりも高く決定する。その結果、道路が陥没した際の影響が大きくなることが想定される道路区間の保守がより早期に行われる。
【0036】
(決定処理)
次に、保守システム1において、保守サーバ200における制御部201によって実行される決定処理について、
図7に基づいて説明する。
図7は、決定処理のフローチャートである。決定処理は、複数の道路区間の優先順位を決定するための処理である。決定処理は、所定の間隔で繰り返し実行される。
【0037】
決定処理においては、まずS101において、道路情報が道路情報DB204から取得される。これにより、制御部201は、複数の道路区間における各地点を把握することができる。次に、S102において、車両情報が車両情報DB203から取得される。次に、S103において、取得された道路情報と車両情報とに基づいて、複数の道路区間の各地点における複数の車両10の車輪速が取得される。次に、S104において、複数の道路区間の各地点における複数の車両10の車輪速に基づいて、複数の道路区間の平均変動率の時間推移が算出される。次に、S105において、各道路区間の特定変化率が算出される。
【0038】
次に、S106において、算出された特定変化率に基づいて、特定区間が少なくとも2つ存在するか否かが判別される。S106において否定判定がされた場合、各道路区間の特定変化率の差は所定の値よりも大きくなっているため、各道路区間における道路の下の空洞が大きくなっていく早さが微差ではないことが想定される。そのため、S107において、複数の道路区間の特定変化率に基づいて、複数の道路区間の優先順位が決定される。そして、決定処理は一旦終了される。
【0039】
また、S106において肯定判定がされた場合、S108において、各特定区間の想定交通量が道路情報DB204から取得される。次に、S109において、各特定区間の想定交通量に基づいて、各道路区間の優先順位が決定される。具体的には、少なくとも2つの特定区間を含む複数の道路の優先順位は、道路区間の特定変化率が大きければ大きいほど高く決定される。また、少なくとも2つの特定区間の優先順位は、特定区間の想定交通量が大きければ大きいほど高く決定される。このようにして、特定区間と、特定区間以外
の道路区間とを含む複数の道路区間に、優先順位が決定される。
【0040】
以上説明した通り、保守システム1によって、複数の道路区間の保守の優先順位が決定される。これにより、複数の道路区間のうち、他の道路区間よりも道路の下の空洞によって危険な状態となっている道路区間を、他の道路区間よりも優先的に保守することが可能となる。このようにして、道路の効率的な保守が可能になる。
【0041】
(変形例1)
本実施形態においては、保守サーバ200は、車両10から受信した車両10の車輪速と車両10の位置とを含むセンサ情報に基づいて優先順位を決定する。一方、車両10が道路の凹み部分を走行している際に、道路の凹みによって車両10に衝撃が生じることが想定される。そのため、車両10が道路の凹み部分を走行している際に、道路の凹みによって車両10に加速度がかかることが想定できる。そこで、車両10は、車輪速センサ100に代わって加速度センサによって車両10にかかる加速度を取得してもよい。具体的には、車両10における加速度センサは、車両10にかかる上下方向の加速度を取得する。車両10は、ネットワークN1を介して、加速度センサが取得した車両10にかかった加速度と、車両10の位置を含む情報をセンサ情報として保守サーバ200に送信する。
【0042】
ここで、道路の下の空洞が大きくなることによって、アスファルトの撓み量が大きくなることが想定される。そのため、道路の下の空洞が大きくなることによって、道路の凹みが大きくなることが想定される。そうすると、道路の下の空洞が大きくなればなるほど、車両10が道路の凹み部分を通過する際に車両10に生じる衝撃が大きくなることが想定される。したがって、道路の下の空洞が大きくなればなるほど、車両10にかかる上下方向の加速度は大きくなることが想定される。そのため、保守サーバ200は、車両10の加速度に基づいて、道路の凹みの状況を把握することができる。そこで、保守サーバ200は、車両10から受信した車両10の加速度に基づいて、複数の道路区間の優先順位を決定してもよい。
【0043】
この場合において、保守サーバ200における車両情報DB203に保持されている車両情報は、車輪速フィールドに代わって、加速度フィールドを有している。そして、保守サーバ200は、車両情報と道路情報とに基づいて、各道路区間を車両10が走行した際の車両10の加速度を取得する。そして、保守サーバ200は、複数の車両10が道路区間を走行した際の、複数の車両10の加速度の平均値(以下、「平均加速度」と称する場合がある。)を単位期間ごとに算出する。このようにして、保守サーバ200は、平均加速度の時間推移を算出する。そして、保守サーバ200は、平均加速度の変化率に基づいて、優先順位を決定する。
【0044】
(変形例2)
本実施形態においては、保守サーバ200は、平均変動率の時間推移に基づいて算出した特定変化率に基づいて優先順位を決定する。しかしながら、保守サーバ200は、必ずしも、特定変化率に基づいて優先順位を決定しなくてもよい。例えば、各道路区間の平均変動率が大きければ大きいほど、該道路区間における道路の凹みが大きくなっていることが想定される。そこで、保守サーバ200は、例えば、各道路区間の平均変動率が高い順に優先順位を決定してもよい。
【0045】
(変形例3)
本実施形態においては、保守サーバ200は、特定変動率を算出することによって、複数の道路区間の優先順位を決定する。また、変形例1においては、保守サーバ200は、平均加速度の変化率に基づいて、優先順位を決定する。しかしながら、保守サーバ200は、必ずしも、特定変動率または平均加速度の変化率に基づいて、複数の道路区間の優先
順位を決定しなくてもよい。保守サーバ200は、平均変動率の時間推移または平均加速度の時間推移に基づいて、道路の凹みの進行状況を把握することができる。そこで、保守サーバ200は、公知の方法によって、複数の道路区間における道路の凹みの進行状況に基づいて、複数の道路区間の優先順位を決定してもよい。
【0046】
(変形例4)
本実施形態においては、保守サーバ200は、単位期間ごとの複数の車両10の車輪速に基づいて、平均変動率を単位期間ごとに算出することで、平均変動率の時間推移を算出する。一方、気温等の影響によって、道路における舗装(アスファルト)の物性が変化することによって、道路の凹みの大きさが異なることが想定される。そこで、本変形例においては、保守サーバ200は、所定の時期における複数の車両10の車輪速に基づいて、所定の時期における平均変動率を算出する。ここで、所定の時期は、例えば、季節によって定められた時期である。そして、保守サーバ200は、所定の時期における平均変動率の時間推移に基づいて、複数の道路区間の優先順位を決定する。つまり、保守サーバ200は、特定の季節の平均変動率の一年ごとの時間推移に基づいて、複数の道路区間の優先順位を決定する。これにより、季節等の時期によって変化する車輪速の平均変動率を考慮して、複数の道路区間の効率的な保守が可能となる。なお、所定の時期は、例えば、平均気温等によって定められた時期でもよい。
【0047】
<その他の実施形態>
上述の実施形態はあくまでも一例であって、本開示はその要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施し得る。また、本開示において説明した処理および手段は、技術的な矛盾が生じない限りにおいて、自由に組み合わせて実施することができる。
【0048】
また、1つの装置が行うものとして説明した処理が、複数の装置によって分担して実行されてもよい。あるいは、異なる装置が行うものとして説明した処理が、1つの装置によって実行されても構わない。コンピュータシステムにおいて、各機能をどのようなハードウェア構成(サーバ構成)によって実現するかは柔軟に変更可能である。
【0049】
本開示は、上記の実施形態で説明した機能を実装したコンピュータプログラムをコンピュータに供給し、当該コンピュータが有する1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出して実行することによっても実現可能である。このようなコンピュータプログラムは、コンピュータのシステムバスに接続可能な非一時的なコンピュータ可読記憶媒体によってコンピュータに提供されてもよいし、ネットワークを介してコンピュータに提供されてもよい。非一時的なコンピュータ可読記憶媒体は、例えば、磁気ディスク(フロッピー(登録商標)ディスク、またはハードディスクドライブ(HDD)等)、光ディスク(CD-ROM、DVDディスク、またはブルーレイディスク等)など任意のタイプのディスク、読み込み専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、EPROM、EEPROM、磁気カード、フラッシュメモリ、または光学式カードのような、電子的命令を格納するために適した任意のタイプの媒体を含む。
【符号の説明】
【0050】
1・・保守システム
10・・車両
100・・車輪速センサ
200・・保守サーバ
201・・制御部
202・・通信部
203・・車両情報DB
204・・道路情報DB