(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-04
(45)【発行日】2025-08-13
(54)【発明の名称】タンクの搭載構造
(51)【国際特許分類】
B60K 15/03 20060101AFI20250805BHJP
F17C 13/08 20060101ALI20250805BHJP
【FI】
B60K15/03 E
F17C13/08 301Z
(21)【出願番号】P 2022089356
(22)【出願日】2022-06-01
【審査請求日】2024-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】大場 明彦
(72)【発明者】
【氏名】酒向 慎之介
(72)【発明者】
【氏名】稲木 秀介
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110077225(CN,A)
【文献】特開2022-49006(JP,A)
【文献】中国実用新案第203957855(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第113665351(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0022778(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-2006330(KR,B1)
【文献】特開2003-25858(JP,A)
【文献】特開2021-126974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00- 15/10
F17C 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に直接タンクが置かれたタンクの搭載構造であって、
一部が欠けた部位を有する枠状である第1フレームと、第2フレームと、有し、
前記第1フレームは、前記欠けた部位に前記床面が配置され、前記床面と前記第1フレームとで囲まれる空間を形成し、
前記第1フレームは前記タンクの長手方向に所定の間隔で2つ配置されており、2つの前記第1フレームの前記空間の内側を通すように、前記タンクの長手方向一端側及び他端側がそれぞれ配置されており、
前記第2フレームは、2つの前記第1フレームの間に配置されるとともに、前記床面から立設された2つの柱状の部材が前記タンクを挟んで一方側と他方側とに配置されている、
タンクの搭載構造。
【請求項2】
前記第2フレームは、2つの前記柱状の部材の端部のうち前記床面とは反対側の端部を渡すように部材が配置され、前記床面と前記第2フレームとで囲まれる空間を形成し、該空間の内側を通すように前記タンクが配置されている、請求項1に記載のタンクの搭載構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タンクの搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には荷室に隣接したスペースにタンクが搭載された構造が開示されている(
図1、0032段落)。
特許文献2にはタンクの両側面にフレームを備えた圧力容器が開示されている(
図1)。
特許文献3にはタンクの両端を囲うフレームを備えたタンクのマウント構造が開示されている(
図3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-211982号公報
【文献】特開2022-049006号公報
【文献】特開2009-012741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のタンク搭載構造では、車両の荷室内にタンクが搭載される場合、急ブレーキ等で荷物が滑り、タンクにぶつかるおそれがある。
【0005】
本開示は、これらの実情に鑑みてなされたものであり、タンクに荷物等がぶつかることを回避することができるタンク搭載構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、タンクを保持するタンクの搭載構造であって、タンクの両端を保持し、タンクを囲む2つの第1フレームと、2つの第1フレームの間に配置される第2フレームと、を有する、タンクの搭載構造を開示する。
【0007】
第2フレームは、タンクを囲む形状としてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、タンクへの荷物の衝突を回避することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は高圧タンク10の外観を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は高圧タンク10の断面を模式的に表した図である。
【
図3】
図3はタンクの搭載構造20の斜視図である。
【
図4】
図4はタンクの搭載構造20の平面図である。
【
図5】
図5はタンクの搭載構造20の正面図である。
【
図6】
図6はタンクの搭載構造20の側面図である。
【
図7】
図7はタンク10を搭載したタンクの搭載構造20の斜視図である。
【
図8】
図8はタンク10を搭載したタンクの搭載構造20の平面図である。
【
図9】
図9はタンクの搭載構造20’の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.高圧タンクの構造
図1には1つの形態にかかる高圧タンク10の外観を模式的に表し、
図2には高圧タンク10の軸線に沿った断面を模式的に表した。これらの図からわかるように、本形態で高圧タンク10はライナ11、補強層12、保護層13、及び、口金14を有している。以下に各構成について説明する。
【0011】
1.1.ライナ
ライナ11は、高圧タンク10の内部空間を区画する中空の部材である。ライナ11はその内部空間に収容されたもの(例えば水素)を漏らすことなく保持することができる材料で構成されていればよく、材料は公知のものを用いることができるが、例えばナイロン樹脂、ポリエチレン系の合成樹脂や、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属等からなるものである。
ライナ11の厚さは特に限定されることはないが、0.5mm~1.0mmであることが好ましい。
【0012】
1.2.補強層
補強層12は、繊維が複数層に亘って積層されるとともに、その繊維に含浸され硬化した樹脂を有している。繊維による層は、ライナ11の外表面に繊維束が所定の厚さにまで何層にも亘って巻き付けられて構成されている。
補強層12の厚さは必要な強度により決められるため特に限定されることはないが、10mm~30mm程度である。
【0013】
補強層12の繊維束には炭素繊維が用いられおり、繊維束は炭素繊維が束となって所定の断面形状(例えば長方形断面)を有する帯状である。具体的には特に限定されることはないが、断面形状が、幅6mm~10mm、厚さが0.1mm~0.15mm程度の長方形であることが挙げられる。繊維束に含まれる炭素繊維の量も特に限定されることはないが、例えば36000本程度の炭素繊維からなることが挙げられる。
【0014】
補強層12において繊維に含浸して硬化した樹脂は、これにより繊維の強度を高めることができるものであれば特に限定されることはない。これには例えば熱により硬化する熱硬化樹脂を挙げることができ、例えばアミン系又は無水物系の硬化促進剤、及び、ゴム系の強化剤を含むエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等がある。その他、エポキシ樹脂を主剤とし、これに硬化剤を混ぜることにより硬化する樹脂組成物も挙げることができる。これによれば、主剤と硬化剤とを混ぜてから硬化するまでの間にこの混合物である樹脂組成物を繊維層に到達及び浸透させることで、自動的に硬化する。
【0015】
1.3.保護層
保護層13は必要に応じて補強層12の外周に配置される層であり、設けられた際には例えばガラス繊維が巻かれ、ここに樹脂が含浸されてなる。含浸される樹脂は補強層12と同様に考えることができる。これにより高圧タンク10に対して耐衝撃性を付与することができる。
保護層13の厚さは特に限定されることはないが、1.0mm~2.0mm程度とすることができる。
【0016】
1.4.口金
口金14は、ライナ11の2つの開口端にそれぞれ取り付けられている部材であり、その一方は、高圧タンク10の内外を連通する開口として機能すると共に、高圧タンク10に配管やバルブを取り付けるための取付部として機能する。
【0017】
2.タンク搭載構造
図面を参照しつつ1つの例にかかるタンク搭載構造20について説明する。
図3はタンク搭載構造20の斜視図、
図4はタンク搭載構造20の平面図、
図5はタンク搭載構造20の正面図、
図6はタンク搭載構造20の側面図である。また、
図7は高圧タンク10を搭載した場面のタンク搭載構造20、
図8は高圧タンク10を搭載した場面のタンク搭載構造20の平面図である。
これら図からわかるように、タンク搭載構造20は、第1フレーム21、及び、第2フレーム22を有している。
【0018】
2.1.第1フレーム
第1フレーム21は一部を欠いた枠状の部材であり、欠けた部位の2つの端部21aが床面Fに固定されている。従って第1フレーム21及び床面Fで囲まれる空間S1が形成される。本形態では第1フレームは四角形の枠状であり、1つの辺がない(欠けた部位)形態とされている。ここで床面Fは例えば車両の荷台が挙げられ、タンク搭載構造20が車両に具備されている。
【0019】
タンク搭載構造20で第1フレーム21は間隔を有して2つ設けられている。そして、
図7、
図8よりわかるように、第1フレーム21の空間S1内に高圧タンク10の端部(口金14に近い部位)が配置され、当該高圧タンク10の両端が2つの第1フレーム21で囲まれるように保持される。
【0020】
第1フレーム21をなす材料は特に限定されることはないが、強度を確保する観点から金属であることが好ましい。また、枠状である第1フレーム21の枠材の形状は特に限定されることはなく四角形断面、円形断面等が挙げられる。その太さも特に限定されることはなく、強度を確保することができればよい。
【0021】
2.2.第2フレーム
本形態の第2フレーム22は第1フレーム21と同様、一部を欠いた枠状の部材であり、欠けた部位の2つの端部22aが床面Fに固定されている。従って第2フレーム22及び床面Fで囲まれる空間S2が形成される。本形態では第2フレーム22は四角形の枠状であり、1つの辺がない(欠けた部位)形状とされている。
【0022】
タンク搭載構造20で第2フレーム22は第1フレーム21の間に2つ設けられている。そして、
図7、
図8よりわかるように、第2フレーム22の空間S2内に高圧タンク10の胴部(口金14より長手方向中央に近い部位)が配置され、当該高圧タンク10の胴部が第2フレーム22で囲まれるように保持される。
【0023】
第2フレーム22をなす材料は特に限定されることはないが、強度を確保する観点から金属であることが好ましい。また、枠状である第2フレーム22の枠材の形状は特に限定されることはなく四角形断面、円形断面等が挙げられる。その太さも特に限定されることはなく、強度を確保することができればよい。
【0024】
本形態では2つの第2フレーム22を具備する例を説明したが、第2フレームは必ずしも2つである必要はなく、1つであっても良いし、3つ以上であってもよい。
【0025】
また、
図9に変形例のタンク搭載構造20’を示したように、第2フレーム22’は必ずしも高圧タンク10を囲む必要はなく、第1フレーム21の間に立つように設けられた柱状の部材であってもよい。このとき第2フレーム22’は2つの第1フレーム21の端部21aを具備する枠材の間に配置される。これにより後述するように作用することができる。
【0026】
3.効果等
本開示のタンク搭載構造によれば、第1フレーム21の間に第2フレーム22が配置されているため、
図7に示したように床面Fに置かれた荷物Nが何らかの理由で高圧タンク10側に移動した場合であっても第2フレーム22により荷物が高圧タンク10に衝突することを回避することができる。
例えばタンク搭載構造が燃料電池車両に配置され、高圧タンクが燃料である水素を貯蔵したタンクであった場合、その性質上荷物の衝突の回避は重要であることから、本開示のタンク搭載構造が特に有用となる。なお、この場合タンクは不図示のタンク固定手段(バンド等)により床に対して移動できないように固定されている。
また、
図3、
図7の例(タンク搭載構造20)のように第2フレーム22が高圧タンク10を囲むような形状である場合、タンク搭載構造としての強度を高めることもできる。
【符号の説明】
【0027】
10 高圧タンク
11 ライナ
12 補強層
13 保護層
14 口金
20 タンク搭載構造
21 第1フレーム
22 第2フレーム