(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-04
(45)【発行日】2025-08-13
(54)【発明の名称】搬送システム、搬送制御方法、学習済みモデル、学習システム、学習方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05D 1/43 20240101AFI20250805BHJP
G06Q 50/10 20120101ALI20250805BHJP
【FI】
G05D1/43
G06Q50/10
(21)【出願番号】P 2022108329
(22)【出願日】2022-07-05
【審査請求日】2024-05-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】谷合 理
(72)【発明者】
【氏名】松井 毅
【審査官】牧 初
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-098660(JP,A)
【文献】特開2022-027226(JP,A)
【文献】特開2022-085379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00- 1/87
G06Q 10/00-10/30
G06Q 50/00-50/20
G06Q 50/26-99/00
B65G 1/00- 1/133
B65G 1/14- 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器貸出システムで貸出対象となる機器を移動ロボットで搬送する搬送システムであって、
前記機器を貸し出した後、前記機器の使用が終了した使用終了時期と返却品として回収した回収完了時期とを含む回収実績を示す回収実績データと、前記機器を前記移動ロボットで回収した回収ルートを示す回収ルートデータと、を含む学習データを用いて、貸出中の前記機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して、貸出中の前記機器を返却品として前記移動ロボットで回収する回収ルートを出力するように機械学習された学習済みモデルを記憶し、
前記学習済みモデルに、貸出中の前記機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して、貸出中の前記機器を返却品として前記移動ロボットで回収する回収ルートを取得し、
取得した前記回収ルートで回収を行う前記移動ロボットを決定する、
搬送システム。
【請求項2】
前記学習済みモデルは、複数の前記機器を回収できるような前記回収ルートを出力するように機械学習されたモデルである、
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記回収実績データは、前記移動ロボットが回収に要した時間、前記移動ロボットの移動距離、及び前記移動ロボットの消費電力の少なくとも1つである第1情報を含み、
前記学習済みモデルは、前記第1情報を最小化するような前記回収ルートを出力するように機械学習させたモデルである、
請求項1又は2に記載の搬送システム。
【請求項4】
前記回収実績データは、前記移動ロボットが回収に要した時間、前記移動ロボットの移動距離、及び前記移動ロボットの消費電力の少なくとも1つである第1情報を含み、
前記学習済みモデルは、複数の前記機器についての回収地点での回収可能時刻が所定時間以内の場合に、前記第1情報を最小化するように複数の前記機器を回収する前記回収ルートを出力するように機械学習させたモデルである、
請求項1又は2に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記機器は医療機器である、
請求項1又は2に記載の搬送システム。
【請求項6】
コンピュータが、機器貸出システムで貸出対象となる機器を移動ロボットで搬送する搬送制御を行う搬送制御方法であって、
前記コンピュータが、前記機器を貸し出した後、前記機器の使用が終了した使用終了時期と返却品として回収した回収完了時期とを含む回収実績を示す回収実績データと、前記機器を前記移動ロボットで回収した回収ルートを示す回収ルートデータと、を含む学習データを用いて、貸出中の前記機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して、貸出中の前記機器を返却品として前記移動ロボットで回収する回収ルートを出力するように機械学習された学習済みモデルを記憶し、
前記コンピュータが、前記学習済みモデルに、貸出中の前記機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して、貸出中の前記機器を返却品として前記移動ロボットで回収する回収ルートを取得し、
前記コンピュータが、取得した前記回収ルートで回収を行う前記移動ロボットを決定する、
搬送制御方法。
【請求項7】
前記学習済みモデルは、複数の前記機器を回収できるような前記回収ルートを出力するように機械学習されたモデルである、
請求項6に記載の搬送制御方法。
【請求項8】
前記回収実績データは、前記移動ロボットが回収に要した時間、前記移動ロボットの移動距離、及び前記移動ロボットの消費電力の少なくとも1つである第1情報を含み、
前記学習済みモデルは、前記第1情報を最小化するような前記回収ルートを出力するように機械学習させたモデルである、
請求項6又は7に記載の搬送制御方法。
【請求項9】
前記回収実績データは、前記移動ロボットが回収に要した時間、前記移動ロボットの移動距離、及び前記移動ロボットの消費電力の少なくとも1つである第1情報を含み、
前記学習済みモデルは、複数の前記機器についての回収地点での回収可能時刻が所定時間以内の場合に、前記第1情報を最小化するように複数の前記機器を回収する前記回収ルートを出力するように機械学習させたモデルである、
請求項6又は7に記載の搬送制御方法。
【請求項10】
前記機器は医療機器である、
請求項6又は7に記載の搬送制御方法。
【請求項11】
機器貸出システムで貸出対象となる機器を移動ロボットで搬送する搬送制御を、コンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記搬送制御は、
前記機器を貸し出した後、前記機器の使用が終了した使用終了時期と返却品として回収した回収完了時期とを含む回収実績を示す回収実績データと、前記機器を前記移動ロボットで回収した回収ルートを示す回収ルートデータと、を含む学習データを用いて、貸出中の前記機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して、貸出中の前記機器を返却品として前記移動ロボットで回収する回収ルートを出力するように機械学習された学習済みモデルに、
貸出中の前記機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して、貸出中の前記機器を返却品として前記移動ロボットで回収する回収ルートを取得し、
取得した前記回収ルートで回収を行う前記移動ロボットを決定する、
プログラム。
【請求項12】
前記学習済みモデルは、複数の前記機器を回収できるような前記回収ルートを出力するように機械学習されたモデルである、
請求項11に記載のプログラム。
【請求項13】
前記回収実績データは、前記移動ロボットが回収に要した時間、前記移動ロボットの移動距離、及び前記移動ロボットの消費電力の少なくとも1つである第1情報を含み、
前記学習済みモデルは、前記第1情報を最小化するような前記回収ルートを出力するように機械学習させたモデルである、
請求項11又は12に記載のプログラム。
【請求項14】
前記回収実績データは、前記移動ロボットが回収に要した時間、前記移動ロボットの移動距離、及び前記移動ロボットの消費電力の少なくとも1つである第1情報を含み、
前記学習済みモデルは、複数の前記機器についての回収地点での回収可能時刻が所定時間以内の場合に、前記第1情報を最小化するように複数の前記機器を回収する前記回収ルートを出力するように機械学習させたモデルである、
請求項11又は12に記載のプログラム。
【請求項15】
前記機器は医療機器である、
請求項11又は12に記載のプログラム。
【請求項16】
機器貸出システムで貸出対象となる機器を貸し出した後、前記機器の使用が終了した使用終了時期と返却品として移動ロボットで回収した回収完了時期とを含む回収実績を示す回収実績データと、前記機器を前記移動ロボットで回収した回収ルートを示す回収ルートデータと、を含む学習データを用いて
機械学習された学習済みモデルであって、貸出中の前記機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して、貸出中の前記機器を返却品として前記移動ロボットで回収する回収ルートを出力するよう
、コンピュータを機能させるための学習済みモデル。
【請求項17】
機器貸出システムで貸出対象となる機器を貸し出した後、前記機器の使用が終了した使用終了時期と返却品として移動ロボットで回収した回収完了時期とを含む回収実績を示す回収実績データと、前記機器を前記移動ロボットで回収した回収ルートを示す回収ルートデータと、を含む学習データを、未学習の学習モデルに入力して、機械学習を実行することで、
貸出中の前記機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して、貸出中の前記機器を返却品として前記移動ロボットで回収する回収ルートを出力する学習済みモデルを生成する、
学習システム。
【請求項18】
機器貸出システムで貸出対象となる機器を貸し出した後、前記機器の使用が終了した使用終了時期と返却品として移動ロボットで回収した回収完了時期とを含む回収実績を示す回収実績データと、前記機器を前記移動ロボットで回収した回収ルートを示す回収ルートデータと、を含む学習データを、未学習の学習モデルに入力して、機械学習を実行することで、
貸出中の前記機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して、貸出中の前記機器を返却品として前記移動ロボットで回収する回収ルートを出力する学習済みモデルを生成する、
学習方法。
【請求項19】
コンピュータに、
機器貸出システムで貸出対象となる機器を貸し出した後、前記機器の使用が終了した使用終了時期と返却品として移動ロボットで回収した回収完了時期とを含む回収実績を示す回収実績データと、前記機器を前記移動ロボットで回収した回収ルートを示す回収ルートデータと、を含む学習データを、未学習の学習モデルに入力して、機械学習を実行することで、
貸出中の前記機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して、貸出中の前記機器を返却品として前記移動ロボットで回収する回収ルートを出力する学習済みモデルを生成する、
学習処理を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、搬送システム、搬送制御方法、学習済みモデル、学習システム、学習方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、需要予測に応じて物流拠点を調整する情報処理装置が開示されている。この情報処理装置は、商品に関連する各利用者の行動が行われた場所と、場所で行われた行動の件数とに基づいて、地域ごとの商品の需要の動向を示す商品需要情報を作成し、商品需要情報に基づいて、商品の物流拠点を決定する。さらに、この情報処理装置は、商品需要情報に基づいて、商品の物流拠点に前もって商品を輸送する輸送計画を作成する。また、この情報処理装置は、商品需要情報に基づいて、商品の在庫がある他の物流拠点から、商品の物流拠点へ、前もって商品の在庫を移し替える在庫搬送計画を作成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、機器を貸し出す機器貸出システムにおいては、機器の貸出需要が急増した場合などに在庫が不足する事態が発生する。貸出機器が在庫不足となる一つの要因として、あるいは貸出機器の管理上の問題として、貸出先で機器の使用が終了したが返却搬送の実施を貸出先のスタッフが判断しているために滞留時間が発生することが挙げられる。貸出先のスタッフによる判断がなされる理由としては、機器が医療機器である場合を例に挙げると、病棟によっては人手不足や急患の存在などにより直ぐに積み込みを実施できる場面と実施できない場面とがあることによる。
【0005】
よって、このような滞留時間をできる限り短縮することが望まれる。特に、返却品を回収するために移動ロボットを使用する場合、できる限り移動ロボットの劣化を抑制することや省電力化を図ることが望まれる。なお、特許文献1に記載の技術では、仮に商品の代わりに貸出機器を適用した場合であってもこれらの問題を解決できない。
【0006】
本開示は、このような問題を解決するためになされたものであり、機器貸出システムで貸出対象となる機器について、使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を、効率的に抑制することが可能な搬送システム、搬送制御方法、学習済みモデル、及びプログラム、並びにそのような学習済みモデルを生成することが可能な学習システム、学習方法、及びプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示にかかる搬送システムは、機器貸出システムで貸出対象となる機器を移動ロボットで搬送する搬送システムであって、前記機器を貸し出した後、前記機器の使用が終了した使用終了時期と返却品として回収した回収完了時期とを含む回収実績を示す回収実績データと、前記機器を前記移動ロボットで回収した回収ルートを示す回収ルートデータと、を含む学習データを用いて、貸出中の前記機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して、貸出中の前記機器を返却品として前記移動ロボットで回収する回収ルートを出力するように機械学習された学習済みモデルを記憶し、前記学習済みモデルに、貸出中の前記機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して、貸出中の前記機器を返却品として前記移動ロボットで回収する回収ルートを取得し、取得した前記回収ルートで回収を行う前記移動ロボットを決定する。上記搬送システムでは、このような構成により、貸し出した機器について、使用終了時期の予測結果から過去の回収実績データを考慮した回収ルートを取得し、回収主体となる移動ロボットを決定している。よって、上記搬送システムでは、効率的な回収ルートで機器を回収することができ、結果として、機器の使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を効率的に抑制することができる。
【0008】
前記学習済みモデルは、複数の前記機器を回収できるような前記回収ルートを出力するように機械学習されたモデルであるようにしてもよい。これにより、上記搬送システムでは、複数の機器を回収する効率的な回収ルートを取得することができるため、複数の機器の使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を、より効率的に抑制することができる。
【0009】
前記回収実績データは、前記移動ロボットが回収に要した時間、前記移動ロボットの移動距離、及び前記移動ロボットの消費電力の少なくとも1つである第1情報を含み、前記学習済みモデルは、前記第1情報を最小化するような前記回収ルートを出力するように機械学習させたモデルであるようにしてもよい。上記搬送システムでは、このような構成により、貸し出した機器について、使用終了時期の予測結果から上記第1情報を含む過去の回収実績データを考慮した回収ルートを取得し、回収主体となる移動ロボットを決定している。よって、上記搬送システムでは、時間、移動距離、及び消費電力の少なくとも1つの観点から効率的と言える回収ルートで機器を回収することができ、結果として、機器の使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を上記観点で効率的に抑制することができる。
【0010】
前記回収実績データは、前記移動ロボットが回収に要した時間、前記移動ロボットの移動距離、及び前記移動ロボットの消費電力の少なくとも1つである第1情報を含み、前記学習済みモデルは、複数の前記機器についての回収地点での回収可能時刻が所定時間以内の場合に、前記第1情報を最小化するように複数の前記機器を回収する前記回収ルートを出力するように機械学習させたモデルであるようにしてもよい。上記搬送システムでは、このような構成により、貸し出した機器について、使用終了時期の予測結果から上記第1情報を含む過去の回収実績データを考慮した、複数の機器を回収可能な回収ルートを取得し、回収主体となる移動ロボットを決定している。よって、上記搬送システムでは、時間、移動距離、及び消費電力の少なくとも1つの観点から効率的と言える回収ルートで複数の機器を回収することができ、結果として、複数の機器の使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を上記観点で効率的に抑制することができる。
【0011】
前記機器は医療機器であるようにしてもよい。これにより、上記搬送システムでは、医療機器の使用形態を考慮して、医療機器の使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を効率的に抑制することができる。
【0012】
本開示にかかる搬送制御方法は、コンピュータが、機器貸出システムで貸出対象となる機器を移動ロボットで搬送する搬送制御を行う搬送制御方法であって、前記コンピュータが、前記機器を貸し出した後、前記機器の使用が終了した使用終了時期と返却品として回収した回収完了時期とを含む回収実績を示す回収実績データと、前記機器を前記移動ロボットで回収した回収ルートを示す回収ルートデータと、を含む学習データを用いて、貸出中の前記機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して、貸出中の前記機器を返却品として前記移動ロボットで回収する回収ルートを出力するように機械学習された学習済みモデルを記憶し、前記コンピュータが、前記学習済みモデルに、貸出中の前記機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して、貸出中の前記機器を返却品として前記移動ロボットで回収する回収ルートを取得し、前記コンピュータが、取得した前記回収ルートで回収を行う前記移動ロボットを決定する。上記搬送制御方法では、このような処理により、貸し出した機器について、使用終了時期の予測結果から過去の回収実績データを考慮した回収ルートを取得し、回収主体となる移動ロボットを決定している。よって、上記搬送制御方法では、効率的な回収ルートで機器を回収するように制御することができ、結果として、機器の使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を効率的に抑制することができる。
【0013】
前記学習済みモデルは、複数の前記機器を回収できるような前記回収ルートを出力するように機械学習されたモデルであるようにしてもよい。これにより、上記搬送制御方法では、複数の機器を回収する効率的な回収ルートを取得することができるため、複数の機器の使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を、より効率的に抑制することができる。
【0014】
前記回収実績データは、前記移動ロボットが回収に要した時間、前記移動ロボットの移動距離、及び前記移動ロボットの消費電力の少なくとも1つである第1情報を含み、前記学習済みモデルは、前記第1情報を最小化するような前記回収ルートを出力するように機械学習させたモデルであるようにしてもよい。上記搬送制御方法では、このような処理により、貸し出した機器について、使用終了時期の予測結果から上記第1情報を含む過去の回収実績データを考慮した回収ルートを取得し、回収主体となる移動ロボットを決定している。よって、上記搬送制御方法では、時間、移動距離、及び消費電力の少なくとも1つの観点から効率的と言える回収ルートで機器を回収するように制御することができ、結果として、機器の使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を上記観点で効率的に抑制することができる。
【0015】
前記回収実績データは、前記移動ロボットが回収に要した時間、前記移動ロボットの移動距離、及び前記移動ロボットの消費電力の少なくとも1つである第1情報を含み、前記学習済みモデルは、複数の前記機器についての回収地点での回収可能時刻が所定時間以内の場合に、前記第1情報を最小化するように複数の前記機器を回収する前記回収ルートを出力するように機械学習させたモデルであるようにしてもよい。上記搬送制御方法では、このような処理により、貸し出した機器について、使用終了時期の予測結果から上記第1情報を含む過去の回収実績データを考慮した、複数の機器を回収可能な回収ルートを取得し、回収主体となる移動ロボットを決定している。よって、上記搬送制御方法では、時間、移動距離、及び消費電力の少なくとも1つの観点から効率的と言える回収ルートで複数の機器を回収するように制御することができ、結果として、複数の機器の使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を上記観点で効率的に抑制することができる。
【0016】
前記機器は医療機器であるようにしてもよい。これにより、上記搬送制御方法では、医療機器の使用形態を考慮して、医療機器の使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を効率的に抑制することができる。
【0017】
本開示にかかるプログラムは、機器貸出システムで貸出対象となる機器を移動ロボットで搬送する搬送制御を、コンピュータに実行させるためのプログラムであって、前記搬送制御は、前記機器を貸し出した後、前記機器の使用が終了した使用終了時期と返却品として回収した回収完了時期とを含む回収実績を示す回収実績データと、前記機器を前記移動ロボットで回収した回収ルートを示す回収ルートデータと、を含む学習データを用いて、貸出中の前記機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して、貸出中の前記機器を返却品として前記移動ロボットで回収する回収ルートを出力するように機械学習された学習済みモデルに、貸出中の前記機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して、貸出中の前記機器を返却品として前記移動ロボットで回収する回収ルートを取得し、取得した前記回収ルートで回収を行う前記移動ロボットを決定する。上記プログラムは、このような処理により、貸し出した機器について、使用終了時期の予測結果から過去の回収実績データを考慮した回収ルートを取得し、回収主体となる移動ロボットを決定している。よって、上記プログラムでは、効率的な回収ルートで機器を回収するように制御することができ、結果として、機器の使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を効率的に抑制することができる。
【0018】
前記学習済みモデルは、複数の前記機器を回収できるような前記回収ルートを出力するように機械学習されたモデルであるようにしてもよい。これにより、上記プログラムでは、複数の機器を回収する効率的な回収ルートを取得することができるため、複数の機器の使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を、より効率的に抑制することができる。
【0019】
前記回収実績データは、前記移動ロボットが回収に要した時間、前記移動ロボットの移動距離、及び前記移動ロボットの消費電力の少なくとも1つである第1情報を含み、前記学習済みモデルは、前記第1情報を最小化するような前記回収ルートを出力するように機械学習させたモデルであるようにしてもよい。上記プログラムでは、このような処理により、貸し出した機器について、使用終了時期の予測結果から上記第1情報を含む過去の回収実績データを考慮した回収ルートを取得し、回収主体となる移動ロボットを決定している。よって、上記プログラムでは、時間、移動距離、及び消費電力の少なくとも1つの観点から効率的と言える回収ルートで機器を回収するように制御することができ、結果として、機器の使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を上記観点で効率的に抑制することができる。
【0020】
前記回収実績データは、前記移動ロボットが回収に要した時間、前記移動ロボットの移動距離、及び前記移動ロボットの消費電力の少なくとも1つである第1情報を含み、前記学習済みモデルは、複数の前記機器についての回収地点での回収可能時刻が所定時間以内の場合に、前記第1情報を最小化するように複数の前記機器を回収する前記回収ルートを出力するように機械学習させたモデルであるようにしてもよい。上記プログラムでは、このような処理により、貸し出した機器について、使用終了時期の予測結果から上記第1情報を含む過去の回収実績データを考慮した、複数の機器を回収可能な回収ルートを取得し、回収主体となる移動ロボットを決定している。よって、上記プログラムでは、時間、移動距離、及び消費電力の少なくとも1つの観点から効率的と言える回収ルートで複数の機器を回収するように制御することができ、結果として、複数の機器の使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を上記観点で効率的に抑制することができる。
【0021】
前記機器は医療機器であるようにしてもよい。これにより、上記プログラムでは、医療機器の使用形態を考慮して、医療機器の使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を効率的に抑制することができる。
【0022】
本開示にかかる学習済みモデルは、機器貸出システムで貸出対象となる機器を貸し出した後、前記機器の使用が終了した使用終了時期と返却品として移動ロボットで回収した回収完了時期とを含む回収実績を示す回収実績データと、前記機器を前記移動ロボットで回収した回収ルートを示す回収ルートデータと、を含む学習データを用いて、貸出中の前記機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して、貸出中の前記機器を返却品として前記移動ロボットで回収する回収ルートを出力するように機械学習された学習済みモデルである。上記学習済みモデルは、このような構成により、貸し出した機器について、使用終了時期の予測結果から過去の回収実績データを考慮した回収ルートを取得している。よって、上記学習済みモデルでは、機器の使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を効率的に抑制するような回収ルートを取得することができる。
【0023】
本開示にかかる学習システムは、機器貸出システムで貸出対象となる機器を貸し出した後、前記機器の使用が終了した使用終了時期と返却品として移動ロボットで回収した回収完了時期とを含む回収実績を示す回収実績データと、前記機器を前記移動ロボットで回収した回収ルートを示す回収ルートデータと、を含む学習データを、未学習の学習モデルに入力して、機械学習を実行することで、貸出中の前記機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して、貸出中の前記機器を返却品として前記移動ロボットで回収する回収ルートを出力する学習済みモデルを生成する。上記学習システムは、上述のような構成により、機器の使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を効率的に抑制するような回収ルートを取得することが可能な学習済みモデルを生成することができる。
【0024】
本開示にかかる学習方法は、機器貸出システムで貸出対象となる機器を貸し出した後、前記機器の使用が終了した使用終了時期と返却品として移動ロボットで回収した回収完了時期とを含む回収実績を示す回収実績データと、前記機器を前記移動ロボットで回収した回収ルートを示す回収ルートデータと、を含む学習データを、未学習の学習モデルに入力して、機械学習を実行することで、貸出中の前記機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して、貸出中の前記機器を返却品として前記移動ロボットで回収する回収ルートを出力する学習済みモデルを生成する。上記学習方法は、上述のような処理により、機器の使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を効率的に抑制するような回収ルートを取得することが可能な学習済みモデルを生成することができる。
【0025】
本開示にかかるプログラムは、コンピュータに、機器貸出システムで貸出対象となる機器を貸し出した後、前記機器の使用が終了した使用終了時期と返却品として移動ロボットで回収した回収完了時期とを含む回収実績を示す回収実績データと、前記機器を前記移動ロボットで回収した回収ルートを示す回収ルートデータと、を含む学習データを、未学習の学習モデルに入力して、機械学習を実行することで、貸出中の前記機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して、貸出中の前記機器を返却品として前記移動ロボットで回収する回収ルートを出力する学習済みモデルを生成する、学習処理を実行させるためのプログラムである。上記プログラムでは、このような処理により、機器の使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を効率的に抑制するような回収ルートを取得することが可能な学習済みモデルを生成することができる。
【発明の効果】
【0026】
本開示によれば、機器貸出システムで貸出対象となる機器について、使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を、効率的に抑制することが可能な搬送システム、搬送制御方法、学習済みモデル、及びプログラムを提供すること、並びにそのような学習済みモデルを生成することが可能な学習システム、学習方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本実施の形態に係る搬送システムの全体構成例を説明するための概念図である。
【
図2】本実施の形態に係る搬送システムの一例を示す制御ブロック図である。
【
図3】
図2の機器貸出システムの一例を示す制御ブロック図である。
【
図4】
図2の電子カルテシステムの一例を示す制御ブロック図である。
【
図5】
図4の電子カルテシステムに記憶される電子カルテ情報の一例を示すテーブルである。
【
図6】
図3の機器貸出システムに記憶される機器貸出情報及び仮予約情報の一例を示すテーブルである。
【
図7】
図2の上位管理装置に記憶される搬送物情報の一例を示すテーブルである。
【
図8】移動ロボットの移動経路の一例を示す図である。
【
図9】移動ロボットの移動経路の他の例を示す図である。
【
図10】
図2の上位管理装置における搬送処理の一例を説明するための模式図である。
【
図11】
図10の搬送処理で取得される回収ルートの一例を示す図である。
【
図12】本実施の形態に係る搬送方法の一例を示すフローチャートである。
【
図13】
図2の上位管理装置で利用される学習済みモデルを生成する学習システムの一構成例を示すブロック図である。
【
図14】
図13の学習システムで生成される学習済みモデルの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施の形態に限定するものではない。また、実施の形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0029】
<実施の形態>
(概略構成)
本実施の形態に係る搬送システムは、機器貸出システムで貸出対象となる機器を移動ロボットで搬送するシステムであり、学習済みモデルを用いて、貸し出した機器の回収ルートを取得する。この学習済みモデルは、その詳細は後述するが、回収実績データと回収ルートデータとを含む学習データを用いて、終了時期予測結果を入力して回収ルートを出力するように機械学習されたモデルである。
【0030】
そして、この搬送システムでは、取得した回収ルートで回収を行う移動ロボットを決定する。その後、この搬送システムは、決定した移動ロボットを制御し、その回収ルートで機器の回収を行わせることができる。
【0031】
この搬送システムでは、貸し出した機器について、使用終了時期の予測結果から過去の回収実績データを考慮した回収ルートを取得し、回収主体となる移動ロボットを決定している。よって、この搬送システムでは、効率的な回収ルートで機器を回収することができ、結果として、機器の使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を効率的に抑制することができる。
【0032】
まず、本実施の形態に係る搬送システムの一例について説明する。
図1は、本実施の形態に係る搬送システム1の全体構成例を説明するための概念図である。本実施の形態にかかる搬送システム1は、自律移動可能な移動ロボットを用いて、搬送物を搬送するシステムである。移動ロボットとして、ここでは
図1に示すような移動ロボット20を例に挙げて説明するが、移動ロボット20の構成や形状はこれに限ったものではない。
【0033】
搬送システム1は、移動ロボット20のほか、上位管理装置10、医療機器貸出システム(以下、機器貸出システム)30、電子カルテシステム40、ネットワーク600、通信ユニット610、及びユーザ端末400を備えている。
【0034】
移動ロボット20は、搬送物の搬送をタスクとして実行する搬送ロボットである。移動ロボット20は、病院、リハビリセンタ、介護施設、高齢者入居施設などの医療福祉施設内において、搬送物を搬送するために自律走行する。移動ロボット20は、マップを参照して自律移動する移動ロボットとすることができる。また、移動ロボット20は、上述したマップの一部又は全部の領域あるいは緯度経度で示される領域などとして、予め設定された領域を、自律移動する移動ロボットとすることができる。但し、移動ロボット20は、例えば予め設定された領域の外であっても、あるいはそもそもマップに含まれる全領域の外であっても、あるいは移動範囲の設定がなされない形態においても、周辺をセンシングしながら自律移動可能なように構成されることができる。
【0035】
搬送物の使用者又は使用補助者、搬送物の管理者などのユーザU1は、移動ロボット20に搬送物の搬送を依頼する。ユーザU1は、搬送依頼時に依頼場所で、あるいは搬送依頼の情報に含めた受取先(搬送元)で、搬送物を移動ロボット20に収容する。無論、搬送物の収容は収容用のロボットなどで実施されることもできる。なお、搬送物を露出させた状態で搭載し搬送するような移動ロボットを採用することもできるが、説明の簡略化のため移動ロボット20に搬送物が収容された状態で搬送されることを前提とする。
【0036】
本実施の形態では、搬送物として貸出対象となる機器(以下、貸出機器)を搬送することが可能であればよい。但し、移動ロボット20では、薬剤、包袋などの消耗品、検体、病院食、文房具などの備品といった、貸出機器以外の機器や機器以外の搬送物も搬送してもよい。
【0037】
ユーザU1は、貸出機器の搬送をその貸し出しのスケジュール(貸出スケジュール)に従って依頼することができる。後述するが、この貸出スケジュールは機器貸出システム30で管理されることができ、ユーザU1によってユーザ端末400から搬送依頼のために参照されることができ、上位管理装置10からも参照されることができる。
【0038】
移動ロボット20は、設定された目的地まで自律的に移動して、貸出機器を搬送する。つまり、移動ロボット20は荷物の搬送タスク(以下、単にタスクともいう)を実行する。以下の説明では、貸出機器を搭載する場所を搬送元とし、貸出機器を届ける場所を搬送先とする。
【0039】
例えば、移動ロボット20が複数の診療科がある総合病院内を移動するものとする。移動ロボット20は、複数の診療科間で貸出機器を搬送する。例えば、移動ロボット20は、貸出機器をある診療科のナースステーションから別の診療科へのナースステーションに届ける。あるいは、移動ロボット20は、貸出機器をその保管庫から診療科のナースステーションまで届ける。また、搬送先が異なる階にある場合、移動ロボット20はエレベータなどを利用して移動してもよい。また、移動ロボット20は、保管庫等への貸出機器の返却も担う。
【0040】
貸出機器の例としては、検査器具、医療器具等の医療機器が挙げられる。医療機器としては、床ずれ防止装置、血圧計、輸血ポンプ、シリンジポンプ等の点滴機具、フットポンプ、ナースコール、離床センサ、フットポンプ、低圧持続吸入器、心電図モニタ、医薬品注入コントローラ、経腸栄養ポンプ、人工呼吸器、カフ圧計、タッチセンサ、吸引器、ネブライザ、パルスオキシメータ、血圧計、人工蘇生器、無菌装置、エコー装置などが挙げられる。その他、これら以外にも、医療機器としては各種の点滴機具、各種のバイタルモニタなども挙げられる。なお、例えば輸血ポンプも異なる流量のポンプが貸し出しの対象となるなど、各種類の医療機器のそれぞれにも複数の機種が貸し出しの対象とされることがある。
【0041】
また、貸出機器には、それ自体にスタンドが設けられている機器もある。例えば、このようなスタンド付き貸出機器としては、例えば低圧持続吸引器、エコー装置、心電図モニタ(送信機)、心電図モニタ(セントラルモニタ)、心電図モニタ(ベッドサイドモニタ)、人工呼吸器、ネブライザなどが挙げられる。スタンド付き貸出機器は、バッテリではなく商用電源に接続して動作させる機器が多く、スタンド無し貸出機器と比べ、貸出倉庫を保管場所として保管されていることが多い。
【0042】
なお、上述のような貸出機器は、本体の滅菌まで必要とされないこと、あるいは機器の一部のみの消毒で済む場合が多く、貸出機器には使い捨ての用具が取り付けられる機器もある。滅菌が必要なカテーテル、ナイフメス、ハサミ等も保管場所と滅菌を行う場所とが一致又は近い場合には、本実施の形態での貸出機器として取り扱うこともできる。
【0043】
本実施の形態においては、
図1に示すように、機器貸出システム30と電子カルテシステム40と移動ロボット20とユーザ端末400は、ネットワーク600を介して上位管理装置10に接続されている。移動ロボット20及びユーザ端末400は、通信ユニット610を介して、ネットワーク600と接続される。ネットワーク600は有線又は無線のLAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)である。さらに、上位管理装置10は、ネットワーク600と有線又は無線で接続されている。通信ユニット610はそれぞれの環境に設置された例えば無線LANユニットである。通信ユニット610は、例えばWiFiルータなどの汎用通信デバイスであってもよい。
【0044】
ユーザ端末400は、例えば、タブレットコンピュータやスマートフォンなどであるが、設置型のコンピュータであってもよい。ユーザ端末400は、無線又は有線で通信可能な情報処理装置であればよい。
【0045】
ユーザU1又はユーザU2は、ユーザ端末400を用いて搬送依頼を行うことができる。例えば、ユーザU1は、ユーザ端末400から搬送依頼のためにそのスケジュールを機器貸出システム30にアクセスして(上位管理装置10を介してもよい)参照することができ、参照した結果に基づき上位管理装置10に貸出機器の搬送依頼を行うことができる。この搬送依頼を受けた上位管理装置10が移動ロボット20に搬送依頼を行うことができる。
【0046】
このように、ユーザU1、U2のユーザ端末400から発信された各種信号は、ネットワーク600を介して一旦、上位管理装置10へ送られ、上位管理装置10から対象となる移動ロボット20へ転送されることができる。同様に、移動ロボット20から発信される各種信号は、ネットワーク600を介して一旦、上位管理装置10へ送られ、上位管理装置10から対象となるユーザ端末400へ転送される。
【0047】
上位管理装置10は各機器と接続されたサーバであり、各機器からのデータを収集する。また、上位管理装置10は、物理的に単一な装置に限られるものではなく、分散処理を行う複数の装置を備えていてもよい。また、上位管理装置10は、移動ロボット20等のエッジデバイスに分散して配置されていてもよい。例えば、搬送システム1の一部又は全部が移動ロボット20に搭載されていてもよい。
【0048】
機器貸出システム30は、貸出機器のそれぞれについて貸し出す日時や貸出先(使用場所、使用者等)を示す貸出スケジュール(管理情報)を管理するシステムである。機器貸出システム30は、上位管理装置10と接続されたサーバとすることができ、上位管理装置10とのデータのやりとりを行う。これにより、上位管理装置10は機器貸出システム30で管理された貸出機器の貸出スケジュールを得ることができる。機器貸出システム30は、上位管理装置10に分散して配置されていてもよく、また上位管理装置10に組み込んで配置されることもできる。
【0049】
電子カルテシステム40は、患者に関する情報(患者情報ともいう)を含む電子カルテデータを格納し、管理するシステムである。例えば、医師や看護師などの医療関係者がユーザ端末400を用いて、患者情報を入力すると、電子カルテシステム40のメモリなどに患者情報が格納される。さらに、医療関係者は、ユーザ端末400を通じて、電子カルテシステム40に格納されている患者情報を閲覧、更新することができる。
【0050】
電子カルテシステム40は、上位管理装置10と接続されたサーバとすることができ、上位管理装置10とのデータのやりとりを行う。これにより、上位管理装置10は電子カルテシステム40で管理された電子カルテデータを得ることができる。電子カルテシステム40は、上位管理装置10に分散して配置されていてもよく、また上位管理装置10に組み込んで配置されることもできる。
【0051】
上位管理装置10は、電子カルテシステム40に登録された電子カルテデータから病状や手術予定などを読み出して、それらに必要な機器等を決定し、機器貸出システム30に貸出機器やその他の付属品等の貸し出しを登録するように構成することもできる。
【0052】
ユーザ端末400と移動ロボット20は、上位管理装置10を介さずに、信号を送受信してもよい。例えば、ユーザ端末400と移動ロボット20は、無線通信により直接信号を送受信してもよい。あるいは、ユーザ端末400と移動ロボット20は、通信ユニット610を介して、信号を送受信してもよい。
【0053】
ユーザU1又はユーザU2は、ユーザ端末400を用いて貸出機器の搬送を依頼する。以下、ユーザU1が搬送元にいる搬送依頼者であり、ユーザU2が搬送先(目的地)にいる受領予定者であるとして説明を行う。もちろん、搬送先にいるユーザU2が搬送依頼を行うことも可能である。また、搬送元又は搬送先以外の場所にいるユーザが搬送依頼を行ってもよい。
【0054】
ユーザU1が搬送依頼を行う場合、ユーザ端末400を用いて、貸出機器の内容、貸出機器の受取先(以下、搬送元ともいう)、貸出機器の届け先(以下、搬送先ともいう)、搬送元への到着予定時刻(貸出機器の受取時刻)、搬送先への到着予定時間(搬送期限)等を入力する。以下、これらの情報を搬送依頼情報ともいう。本実施の形態で搬送の対象としている貸出機器の場合、搬送元はその貸出機器の保管場所(機器管理場所)となることがある。搬送元は、ユーザU1がいる場所でもよい。搬送先は、使用予定のユーザU2や患者がいる場所である。ユーザU1は、ユーザ端末400のタッチパネルを操作することで、搬送依頼情報を入力することができる。
【0055】
搬送依頼情報のうち貸出機器については、機器貸出システム30に登録済みの貸出スケジュールを利用して指定されることができる。例えば、ユーザU1がユーザ端末400から貸出機器を指定して、必要に応じて移動ロボット20に搭載し、上位管理装置10に搬送依頼を行う。その搬送依頼を受けた上位管理装置10が機器貸出システム30を参照し、その貸出機器の貸出スケジュールが示す使用開始時間に間に合うように搬送スケジュールを決定し、移動ロボット20に搬送依頼を行うことで、その搬送スケジュールにて搬送がなされる。
【0056】
あるいは、ユーザU1がユーザ端末400から貸出スケジュールを参照しながら搬送依頼を行い、上位管理装置10が貸出スケジュールを参照して搬送スケジュールを決定し、移動ロボット20に搬送依頼を行うことで、その搬送スケジュールにて搬送がなされる。これら以外にも様々な搬送依頼の方法が採用できる。
【0057】
これらの例は、貸出依頼(貸出登録の依頼)に基づき貸出スケジュールが登録された後に搬送依頼がなされることを前提としている。一方で、貸出機器は急に必要となることもあり、その場合には、その貸出機器についての必要な時間での貸出スケジュールが登録されていない。そのような場合も、ユーザU1は、ユーザ端末400から搬送依頼を上位管理装置10に送信することもできる。上位管理装置10は、この搬送依頼に基づき機器貸出システム30を参照して貸出期間に重複がないかをチェックしたうえで、問題なければ貸出スケジュールに登録するとともに移動ロボット20に搬送依頼を行う。この場合における貸出機器の移動ロボット20への積み込みは、例えば、ユーザ端末400からの搬送依頼を送信する前後のタイミングで実施することができる。
【0058】
いずれの場合でも、上述したように、ユーザ端末400はユーザU1によって入力された搬送依頼情報を上位管理装置10に送信することができる。上位管理装置10は、複数の移動ロボット20を管理する管理システムであり、各移動ロボット20に搬送タスクを実行するための動作指令を送信する。この際、上位管理装置10は搬送依頼毎に、搬送タスクを実行する移動ロボット20を決定する。そして、上位管理装置10は、その移動ロボット20に対して動作指令を含む制御信号を送信する。移動ロボット20が、動作指令に従って、搬送元から搬送先に到着するように移動する。
【0059】
例えば、上位管理装置10は、搬送元又はその近傍の移動ロボット20に搬送タスクを割り当てる。あるいは、上位管理装置10は、搬送元又はその近傍に向かっている移動ロボット20に搬送タスクを割り当てる。タスクを割り当てられた移動ロボット20が搬送元まで貸出機器を取りに行く。搬送元は、例えば、保管場所やタスクを依頼したユーザU1がいる場所が挙げられる。
【0060】
移動ロボット20が搬送元に到着すると、ユーザU1又はその他の職員が移動ロボット20に貸出機器を載せる。貸出機器を搭載した移動ロボット20が搬送先を目的地として自律移動する。上位管理装置10は、搬送先のユーザU2のユーザ端末400に対して信号を送信する。これにより、ユーザU2は、貸出機器が搬送中であることや、その到着予定時間を知ることができる。設定された搬送先に移動ロボット20が到着すると、ユーザU2は、移動ロボット20に収容されている貸出機器を受領することができる。このようにして、移動ロボット20が搬送タスクを実行する。
【0061】
また、上述したような全体構成においては、搬送システムの各要素を、移動ロボット20、ユーザ端末400、機器貸出システム30、電子カルテシステム40、及び上位管理装置10に分散して全体として搬送システムを構築することができる。また、貸出機器の搬送を実現するための実質的な要素を一つの装置に集めて構築することもできる。上位管理装置10は、1又は複数の移動ロボット20を制御する。
【0062】
(搬送システム1の制御系)
図2は、搬送システム1の制御系の一例を示す制御ブロック図である。
図2に示すように、搬送システム1は、上位管理装置10、移動ロボット20、機器貸出システム30、電子カルテシステム40、及び環境カメラ300を備えることができる。
【0063】
搬送システム1は、所定の施設内において移動ロボット20を自律的に移動させながら、複数の移動ロボット20を効率的に制御する。そのため、施設内には、複数個の環境カメラ300が設置されている。例えば、環境カメラ300は、施設内の通路、ホール、エレベータ、出入り口等に設置されている。
【0064】
環境カメラ300は、移動ロボット20が移動する範囲の画像を取得する。なお、搬送システム1では、環境カメラ300で取得された画像やそれに基づく情報は、上位管理装置10が収集する。あるいは、環境カメラ300で取得された画像等が直接移動ロボットに送信されてもよい。環境カメラ300は、施設内の通路や出入り口に設けられた監視カメラなどであってもよい。環境カメラ300は、施設内の混雑状況の分布を求めるために使用されていてもよい。
【0065】
搬送システム1では、上位管理装置10が、例えば搬送依頼情報に基づいて、ルート計画を行い、ルート計画情報を生成することができる。ルート計画情報は上述した搬送スケジュールに対応する搬送ルートを計画した情報として生成されることができる。上位管理装置10は、生成したルート計画情報に基づいて、それぞれの移動ロボット20に行き先を指示する。そして、移動ロボット20は、上位管理装置10から指定された行き先に向かって自律移動する。移動ロボット20は、自機に設けられたセンサ、フロアマップ、位置情報等を用いて行き先(目的地)に向かって自律移動する。
【0066】
例えば、移動ロボット20は、その周辺の機器、物体、壁、人(以下、まとめて周辺物体とする)に接触しないように、走行する。具体的には、移動ロボット20は、周辺物体までの距離を検知し、周辺物体から一定の距離(距離閾値とする)以上離れた状態で走行する。周辺物体までの距離が距離閾値以下になると、移動ロボット20が減速又は停止する。このようにすることで、移動ロボット20が、周辺物体に接触せずに走行可能となる。接触を回避することができるため、安全かつ効率的な搬送が可能となる。
【0067】
上位管理装置10は、演算処理部11、記憶部12、バッファメモリ13、及び通信部14を備えることができる。演算処理部11は、移動ロボット20を制御及び管理するための演算を行う。演算処理部11は、例えば、コンピュータの中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)等のプログラムを実行可能な装置として実装可能である。そして、各種機能はプログラムにより実現することもできる。
図2では、演算処理部11において特徴的な終了時期予測処理部110、ロボット制御部111、及びルート計画部115のみを示したが、その他の処理ブロックも備えられる。
【0068】
終了時期予測処理部110は、記憶部12に記憶された学習済みモデル120に、貸出中の医療機器を示す貸出中機器データと、医療機器の使用の必要性を示す情報が記述された電子カルテデータと、を入力して、学習済みモデル120から貸出中の医療機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を取得する。終了時期予測処理部110は、取得された終了時期予測結果を、ルート計画部115に渡す。なお、終了時期予測処理部110は、終了時期予測結果を、通信部14を介して機器貸出システム30に通知するように構成することもできる。
【0069】
ここで、医療機器の使用の必要性を示す情報とは、医療機器そのものを示す情報、患者に必要な手術を示す情報、患者の症状を示す情報、患者への処置を示す情報など、あるいはこれらのうちの複数の情報を組み合わせた情報を指すことができる。
【0070】
ロボット制御部111は、移動ロボット20を遠隔で制御するための演算を行い、制御信号を生成する。ロボット制御部111は、後述するルート計画情報125などに基づいて制御信号を生成する。さらに、環境カメラ300や移動ロボット20から得られた各種情報に基づいて、制御信号を生成する。制御信号は、後述するフロアマップ121、ロボット情報123及びロボット制御パラメータ122等の更新情報を含んでいてもよい。つまり、ロボット制御部111は、各種情報が更新された場合、その更新情報に応じた制御信号を生成する。
【0071】
ルート計画部115は、各移動ロボット20のルート計画を行う。搬送タスクが入力されると、ルート計画部115は、搬送依頼情報に基づいて、当該貸出機器を搬送先(目的地)までの搬送するためのルート計画を行う。具体的には、ルート計画部115は、記憶部12に既に記憶されているルート計画情報125やロボット情報123等を参照して、新たな搬送タスクを実行する移動ロボット20を決定する。
【0072】
出発地は、移動ロボット20の現在位置や、直前の搬送タスクの搬送先、貸出機器の受取先などである。目的地は、貸出機器の搬送先であるが、待機場所、充電場所、保管場所などであってもよい。ここでは、ルート計画部115は、移動ロボット20の出発地から目的地までの通過ポイントを設定している。ルート計画部115は、移動ロボット20毎に、その通過ポイントの通過順を設定する。通過ポイントは、例えば、分岐点、交差点、エレベータ前のロビーやこれらの周辺に設定されている。また、幅の狭い通路では、移動ロボット20のすれ違いが困難となることもある。このような場合、幅の狭い通路の手前を通過ポイントして設定してもよい。通過ポイントの候補は、予めフロアマップ121に登録されていてもよい。
【0073】
ルート計画部115は、システム全体として効率良くタスクを実行できるように、複数の移動ロボット20の中から、各搬送タスクを行う移動ロボット20を決定する。ルート計画部115は、例えば、待機中の移動ロボット20や搬送元に近い移動ロボット20に搬送タスクを優先的に割り当てることができる。また、ルート計画部115は、このような優先的な割り当ての代わりに、あるいはこのような優先的な割り当てとともに、後述するように移動ロボット20の劣化度合いを均一化するなどの他の条件に従い割り当てを行うこともできる。
【0074】
ルート計画部115は、搬送タスクが割り当てられた移動ロボット20について、出発地及び目的地を含む通過ポイントを設定する。例えば、搬送元から搬送先までの2以上の移動経路がある場合、より短時間で移動できるように通過ポイントを設定する。そのため、上位管理装置10は、カメラの画像等に基づいて、通路の混雑状況を示す情報を更新する。具体的には、他の移動ロボット20が通過している場所、人が多い場所は混雑度が高い。したがって、ルート計画部115は、混雑度が高い場所を避けるように、通過ポイントを設定する。
【0075】
移動ロボット20は、左回りの移動経路又は右回りの移動経路のいずれでも目的地まで移動できるような場合がある。このような場合、ルート計画部115は、混雑していないほうの移動経路を通過するように通過ポイントを設定する。ルート計画部115が、目的地までの間に、1又は複数の通過ポイントを設定することで、移動ロボット20が混雑していない移動経路で移動することができる。例えば、分岐点、交差点で通路が分かれている場合、ルート計画部115は、適宜、分岐点、交差点、曲がり角及びその周辺に通過ポイントを設定する。これにより、搬送効率を向上することができる。
【0076】
ルート計画部115は、エレベータの混雑状況や、移動距離などを考慮して、通過ポイントを設定してもよい。さらに、上位管理装置10は、移動ロボット20がある場所を通過する予定時刻における、移動ロボット20の数や人の数を推定してもよい。そして、推定された混雑状況に応じて、ルート計画部115が通過ポイントを設定してもよい。また、ルート計画部115は、混雑状況の変化に応じて、通過ポイントを動的に変えてもよい。ルート計画部115は、搬送タスクを割り当てた移動ロボット20について、通過ポイントを順番に設定する。通過ポイントは、搬送元や搬送先を含んでいてもよい。後述するように、移動ロボット20が、ルート計画部115により設定された通過ポイントを順番に通過するように自律移動する。
【0077】
ルート計画部115は、上述のようにして移動ロボット20の決定及び通過ポイントの設定を行うことができる。貸出中の貸出機器の返却時(回収時)に関しても、ルート計画部115は同様の処理を行うことができる。
【0078】
但し、ルート計画部115は、回収時においては、学習済みモデル124を用いて、この場合の搬送ルートである回収ルートを設定することが可能に構成しておく。この場合にも、設定される回収ルートには出発地及び目的地を含む通過ポイントを含むことができる。ここでの出発地は貸出先であり、目的地は保管場所、あるいは整備場所、あるいは次の貸出先となる。
【0079】
ルート計画部115は、学習済みモデル124に、貸出中の貸出機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して、貸出中の貸出機器を返却品として移動ロボット20で回収する回収ルートを取得する。入力される終了時期予測結果は、終了時期予測処理部110が学習済みモデル120を用いて取得し、ルート計画部115に渡した終了時期予測結果とすることができる。このように、回収ルートについて、ルート計画部115は自動的にルート計画を作成することができる。但し、学習済みモデル124は回収ルートそのものを出力しなくても、回収ルートの一部の情報のみを出力し、ルート計画部115がその他の情報を補うこともできる。
【0080】
そして、ルート計画部115は、取得した回収ルートで貸出機器を回収する移動ロボット20、つまり貸出機器を回収するために制御の対象とする移動ロボット20を決定する処理を実行することができる。この決定については後述するが、ルート計画部115は所定条件に基づき移動ロボット20を決定することができる。なお、移動ロボット20の決定は、ロボット制御部111が実行することもできる。
【0081】
記憶部12は、移動ロボット20等の管理及び制御に必要な情報を格納する記憶部である。
図2の例では、学習済みモデル120、フロアマップ121、ロボット情報123、ロボット制御パラメータ122、学習済みモデル124、ルート計画情報125、搬送物情報126を示したが、記憶部12に格納される情報はこれ以外にあっても構わない。演算処理部11では、各種処理を行う際に記憶部12に格納されている情報を用いた演算を行う。また、記憶部12に記憶されている各種情報は最新の情報に更新可能である。
【0082】
学習済みモデル120は、貸出機器としての医療機器を貸し出した実績であって医療機器の使用が終了した実績を含む貸出実績データと、貸し出した医療機器の使用の必要性を示す情報が記述された電子カルテデータ、とを含む学習データ(以下、第1学習データ)を用いて、機械学習された学習モデルである。そして、学習済みモデル120は、医療機器の使用の必要性を示す情報が記述された電子カルテデータと貸出中の医療機器を示す貸出中機器データとを入力して、医療機器の使用終了時期を予測した予測結果である終了時期予測結果を出力するように機械学習されたものとする。つまり、学習済みモデル120は、電子カルテデータ及び貸出中機器データから終了時期予測結果を予測するアルゴリズムでなるモデルである。このアルゴリズム等は問わず、このような予測が可能であればよい。なお、学習済みモデル120や後述の学習済みモデル124は、運用が進みデータが蓄積された所定のタイミングで更新されることができる。
【0083】
ここで、貸出実績データは、機器貸出システム30で管理対象となる医療機器について、医療機器の使用が終了した実績を含む貸出の実績を示したデータであり、機器貸出システム30の記憶部(後述の記憶部32)で管理されることができる。医療機器の使用が終了したことは、例えば、ユーザU2等がユーザ端末400からの入力に基づき得ることができ、医療機器の使用の開始についても同様である。使用終了、使用開始のいずれの場合でも、ユーザ端末400が、ネットワーク600を介し、入力結果を機器貸出システム30に直接又は上位管理装置10を介して送信し、日時とともに貸出実績データとして記録しておくことができる。但し、医療機器の使用が開始したことや終了したことは、これ以外の方法でも得ることができる。例えば、医療機器がコンセントから電力供給を受ける機器であった場合には、貸出場所(使用場所)のコンセントに装着されたセンサ等で検知した消費電力からその医療機器の使用開始と使用終了を判定し、ネットワーク600を介し、判定結果を機器貸出システム30に直接又は上位管理装置10を介して送信し、日時とともに貸出実績データとして記録しておくことができる。あるいは、医療機器側と貸出場所としての所定の場所とで通信を行うことで、医療機器と所定の場所とが近接、離間することでそれぞれ医療機器の使用が開始、終了したことを判定し、ネットワーク600を介し、判定結果を機器貸出システム30に直接又は上位管理装置10を介して送信し、日時とともに貸出実績データとして記録しておくこともできる。ここでの通信は、例えば、Bluetooth(登録商標)、Bluetooth Low Energy(登録商標)等の電波を発するビーコンとその電波を検知する装置を用いることや、NFC(Near field communication)タグ等のRFID(Radio Frequency IDentification)タグとそのタグリーダとを用いることなどにより、実現できる。なお、医療機器と所定の場所といずれを発信側、受信側としてもよく、また医療機器はこのような通信機能を内蔵するかこのような通信機能を備えた機器を外付けしておくことができる。
【0084】
学習済みモデル124は、貸出機器を貸し出した後、貸出機器の使用が終了した使用終了時期と返却品として回収した回収完了時期とを含む回収実績を示す回収実績データと、貸出機器を移動ロボット20で回収した回収ルートを示す回収ルートデータと、を含む学習データ(以下、第2学習データ)を用いて、機械学習された学習モデルである。
【0085】
ここで、使用終了時期は貸出実績データの使用終了について説明した通り取得されることができる。回収完了時期も同様に、ユーザ端末400での入力結果として取得されることができ、あるいは、医療機器と所定の場所との通信によっても取得されることができる。但し、回収完了時期は、回収完了日時であればよく、貸出機器を保管場所又は次の貸出場所へ搬送した日時(搬送完了日時)とすることや、例えばこのような搬送を開始した搬送開始日時とすることもできる。よって、回収完了時期を医療機器と所定の場所との通信によって取得する場合、所定の場所は回収を終えた場所(保管場所又は次の貸出場所など)となる。
【0086】
そして、学習済みモデル124は、貸出中の貸出機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して、貸出中の貸出機器を返却品として移動ロボット20で回収する回収ルートを出力するように機械学習されたものとする。つまり、学習済みモデル124は、終了時期予測結果から回収ルートを予測するアルゴリズムでなるモデルである。このアルゴリズム等は問わず、このような予測が可能であればよい。ここでも、学習済みモデル124で学習、予測の対象とする機器が医療機器である場合について説明している。よって、学習済みモデル124へ入力される終了時期予測結果は、上述したように学習済みモデル120からの出力結果とすることができる。
【0087】
フロアマップ121は、移動ロボット20を移動させる施設の地図情報である。このフロアマップ121は、予め作成されるものでもよいし、移動ロボット20から得た情報から生成されるものでもよく、また、予め作成された基本地図に移動ロボット20から得た情報から生成された地図修正情報を加えたものであってもよい。
【0088】
ロボット情報123は、上位管理装置10が管理する移動ロボット20のID、型番、仕様等が記述される。ロボット情報123は、移動ロボット20の現在位置を示す位置情報を含んでいてもよい。ロボット情報123は、移動ロボット20がタスクを実行中か、待機中かの情報を含んでいてもよい。また、ロボット情報123は、移動ロボット20が動作中か、故障中か等を示す情報を含んでいてもよい。また、ロボット情報123は、搬送可能な貸出機器、搬送不可能な貸出機器の情報を含んでいてもよい。
【0089】
ロボット制御パラメータ122は、上位管理装置10が管理する移動ロボット20についての周辺物体との閾値距離等の制御パラメータが記述される。閾値距離は、人を含む周辺物体との接触を回避するためのマージン距離となる。さらに、ロボット制御パラメータ122は、移動ロボット20の移動速度の速度上限値などの動作強度に関する情報を含んでいてもよい。
【0090】
ロボット制御パラメータ122は、状況に応じて更新されてもよい。ロボット制御パラメータ122は、移動ロボット20における収容スペースの空き状況や使用状況を示す情報を含んでいてもよい。ロボット制御パラメータ122は、搬送可能な貸出機器や、搬送不可能な貸出機器の情報を含んでいてもよい。無論、ロボット制御パラメータ122は、貸出機器以外の搬送物についての搬送の可能/不可能を示す情報も含むことができる。ロボット制御パラメータ122は、それぞれの移動ロボット20に対して、上記の各種情報が対応付けられている。
【0091】
ルート計画情報125は、ルート計画部115で計画されたルート計画情報を含んでいる。ルート計画情報125は、例えば、搬送タスクを示す情報を含んでいる。ルート計画情報125は、タスクが割り当てられた移動ロボット20のID、出発地、貸出機器の内容、搬送先、搬送元、搬送先への到着予定時間、搬送元への到着予定時間、到着期限などの情報を含んでいてもよい。ルート計画情報125では、搬送タスク毎に、上述した各種情報が対応付けられていてもよい。ルート計画情報125は、貸出搬送及び返却搬送の双方に関し、ユーザU1等から入力された搬送依頼情報の少なくとも一部を含んでいてもよく、返却搬送に関しては学習済みモデル124から出力された回収ルートに含まれる情報の少なくとも一部を含んでよい。
【0092】
ここで、ルート計画情報125は、それぞれの移動ロボット20や搬送タスクについて、通過ポイントに関する情報を含んでいてもよい。例えば、ルート計画情報125は、それぞれの移動ロボット20についての通過ポイントの通過順を示す情報を含んでいる。ルート計画情報125は、フロアマップ121における各通過ポイントの座標や、通過ポイントを通過したか否かの情報を含んでいてもよい。
【0093】
搬送物情報126は、搬送依頼が行われた貸出機器に関する情報である。例えば、貸出機器の内容(種別)、搬送元、搬送先等の情報を含んでいる。無論、搬送物情報126は、貸出機器以外の搬送物についての情報を含んでもよく、以下、搬送物情報126以外についても同様である。搬送物情報126は、搬送を担当する移動ロボット20のIDを含んでいてもよい。さらに、搬送物情報126は、搬送中、搬送前(搭載前)、搬送済みなどのステータスを示す情報を含むことができ、またこのステータスには貸出のための搬送であること又は返却のための搬送であることのいずれであるかを示す情報も含めておくこともできる。搬送物情報126は貸出機器毎にこれらの情報が対応付けられている。搬送物情報126については後述する。
【0094】
なお、ルート計画部115は、記憶部12に記憶されている各種情報を参照して、ルート計画を策定することができる。ルート計画部115は、例えば、フロアマップ121、ロボット情報123、ロボット制御パラメータ122、ルート計画情報125に基づいて、タスクを実行する移動ロボット20を決定することができる。そして、ルート計画部115は、フロアマップ121等を参照して、搬送先までの通過ポイントとその通過順を設定することができる。フロアマップ121には、予め通過ポイントの候補が登録されている。そして、ルート計画部115が混雑状況等に応じて、通過ポイントを設定することができる。また、タスクを連続処理する場合などは、ルート計画部115が搬送元及び搬送先を通過ポイントして設定してもよい。
【0095】
また、1つの搬送タスクについて、2つ以上の移動ロボット20が割り当てられていてもよい。例えば、貸出機器が移動ロボット20の搬送可能容量よりも大きい場合、1つの貸出機器を2つに分けて、2つの移動ロボット20に搭載する。あるいは、貸出機器が移動ロボット20の搬送可能重量よりも重い場合、1つの貸出機器を2つに分けて、2つの移動ロボット20に搭載する。このようにすることで、1つの搬送タスクを2つ以上の移動ロボット20が分担して実行することができる。もちろん、異なるサイズの移動ロボット20を制御する場合、貸出機器を搬送可能な移動ロボット20が貸出機器を受け取るようにルート計画を行ってもよい。
【0096】
さらには、1つの移動ロボット20が、2つ以上の搬送タスクを並行して行ってもよい。例えば、1つの移動ロボット20が2つ以上の貸出機器を同時に搭載して、異なる搬送先に順次搬送してもよい。あるいは、1つ移動ロボット20が1つの貸出機器を搬送中に、他の貸出機器を搭載してもよい。また、異なる場所で搭載された貸出機器の搬送先は同じであってもよく、異なっていてもよい。このようにすることで、タスクを効率よく実行することができる。
【0097】
このような場合、移動ロボット20の収容スペースについて、使用状況又は空き状況を示す収容情報を更新するようにしてもよい。つまり、上位管理装置10が空き状況を示す収容情報を管理して、移動ロボット20を制御してもよい。例えば、貸出機器の搭載又は受取が完了すると、収容情報が更新される。搬送タスクが入力されると、上位管理装置10は、収容情報を参照して、貸出機器を搭載可能な空きがある移動ロボット20を受け取りに向かわせる。このようにすることで、1つの移動ロボット20が、同時に複数の搬送タスクを実行することや、2つ以上の移動ロボット20が搬送タスクを分担して実行することが可能になる。例えば、移動ロボット20の収容スペースにセンサを設置して空き状況を検出してもよい。また、貸出機器毎にその容量や重さが予め登録されていてもよい。
【0098】
バッファメモリ13は、演算処理部11における処理において生成される中間情報を蓄積するメモリである。通信部14は、搬送システム1が運用される施設に設けられる複数の環境カメラ300及び少なくとも1台の移動ロボット20などと通信するための通信インタフェースである。通信部14は、有線通信と無線通信の両方の通信を行うことができる。例えば、通信部14は、演算処理部11による指示に基づきそれぞれの移動ロボット20に対して、その移動ロボット20の制御に必要な制御信号を送信する。また、通信部14は、移動ロボット20や環境カメラ300で収集された情報を受信し、演算処理部11に渡すことができる。また、通信部14は、機器貸出システム30から貸出スケジュール等の情報を受信して演算処理部11に渡すことや演算処理部11による指示に基づき機器貸出システム30に貸出スケジュール等の情報を登録のために送信することができる。また、通信部14は、電子カルテシステム40から電子カルテ情報を受信して演算処理部11に渡すことができる。
【0099】
移動ロボット20は、演算処理部21、記憶部22、通信部23、近接センサ(例えば、距離センサ群24)、カメラ25、駆動部26、表示部27、及び操作受付部28を備えることができる。なお、
図2では、移動ロボット20に備えられている代表的な処理ブロックのみを示したが、移動ロボット20には図示していない他の処理ブロックも多く含まれる。
【0100】
通信部23は、上位管理装置10の通信部14と通信を行うための通信インタフェースである。通信部23は、例えば、無線信号を用いて通信部14と通信を行う。距離センサ群24は、例えば、近接センサであり、移動ロボット20の周囲に存在する物又は人との距離を示す近接物距離情報を出力する。距離センサ群24は、例えば前後距離センサ及び左右距離センサを含むことができ、移動ロボット20の前後方向の周辺物体の距離、左右方向の周辺物体の距離を計測することができる。
【0101】
カメラ25は、例えば、移動ロボット20の周囲の状況を把握するための画像を撮影する。カメラ25は、例えば移動ロボット20の進行方向前方を撮像する。また、カメラ25は、例えば、施設の天井等に設けられる位置マーカーを撮影することもできる。この位置マーカーを用いて移動ロボット20に自機の位置を把握させてもよい。
【0102】
駆動部26は、移動ロボット20に備え付けられている駆動輪を駆動する。なお、駆動部26は、駆動輪やその駆動モータの回転回数を検出するエンコーダなどを備えていてもよい。エンコーダの出力に応じて、自機位置(現在位置)が推定されていてもよい。移動ロボット20は、自身の現在位置を検出して、上位管理装置10に送信する。
【0103】
表示部27及び操作受付部28はタッチパネルディスプレイにより実現される。表示部27は、操作受付部28となるユーザーインタフェース画面を表示する。また、表示部27には、移動ロボット20の行き先や移動ロボット20の状態を示す情報を表示させても構わない。操作受付部28は、ユーザからの操作を受け付ける。操作受付部28は、表示部27に表示されるユーザーインタフェース画面に加えて、移動ロボット20に設けられる各種スイッチを含む。
【0104】
演算処理部21は、移動ロボット20の制御に用いる演算を行う。演算処理部21は、例えば、コンピュータの中央演算処理装置(CPU)等のプログラムを実行可能な装置として実装可能である。そして、各種機能はプログラムにより実現することもできる。演算処理部21は、移動命令抽出部211及び駆動制御部212を備える。なお、
図2では、演算処理部21が備える代表的な処理ブロックのみを示したが、図示しない処理ブロックも含まれる。演算処理部21は、通過ポイント間の経路を探索してもよい。
【0105】
移動命令抽出部211は、上位管理装置10から与えられた制御信号から移動命令を抽出する。例えば、移動命令は、次の通過ポイントに関する情報を含んでいる。例えば、制御信号は、通過ポイントの座標や、通過ポイントの通過順に関する情報を含んでいてもよい。そして、移動命令抽出部211が、これらの情報を移動命令として抽出する。
【0106】
さらに、移動命令は、次の通過ポイントへの移動が可能になったことを示す情報を含んでいてもよい。通路幅が狭いと、移動ロボット20がすれ違うことできない場合がある。また、一時的に通路を通行できない場合がある。このような場合、制御信号は、停止すべき場所の手前の通過ポイントで、移動ロボット20を停止させる命令を含んでいる。そして、他の移動ロボット20が通過した後や通行可能となった後に、上位管理装置10が移動ロボット20に移動可能なことになったことを知らせる制御信号を出力する。これにより、一時的に停止していた移動ロボット20が移動を再開する。
【0107】
駆動制御部212は、移動命令抽出部211から与えられた移動命令に基づいて、移動ロボット20を移動させるように、駆動部26を制御する。例えば、駆動部26は、駆動制御部212からの制御指令値に応じて回転する駆動輪を備えている。移動命令抽出部211は、上位管理装置10から受信した通過ポイントに向かって移動ロボット20が移動するように、移動命令を抽出する。そして、駆動部26が駆動輪を回転駆動する。移動ロボット20は、次の通過ポイントに向かって自律移動する。このようにすることで、通過ポイントを順番に通過して、搬送先に到着する。また、移動ロボット20は、自機位置を推定して、通過ポイントを通過したことを示す信号を上位管理装置10に送信してもよい。これにより、上位管理装置10が、各移動ロボット20の現在位置や搬送状況を管理することができる。
【0108】
ここで、駆動制御部212は、カメラ25が出力する画像データや、距離センサ群24が出力する検出信号を解析することにより、自機の位置の同定や周辺物体の認識を実行することができる。そして、駆動制御部212は、その結果と上記移動命令とに基づき、移動ロボット20を移動させるように、駆動部26を制御することができる。この際、駆動制御部212は、フロアマップ221とロボット制御パラメータ222を参照して、周辺物体の認識や自機の位置の同定を行うことができる。
【0109】
記憶部22には、フロアマップ221とロボット制御パラメータ222と搬送物情報226が格納される。
図2では記憶部22に格納される情報の一部のみ示しているが、
図2に示したフロアマップ221とロボット制御パラメータ222と搬送物情報226以外の情報も含まれる。フロアマップ221は、移動ロボット20を移動させる施設の地図情報である。このフロアマップ221は、例えば、上位管理装置10のフロアマップ121の一部又は全部をダウンロードしたデータである。なお、フロアマップ221は、予め作成されたものであってもよい。また、フロアマップ221は、施設全体の地図情報ではなく、移動予定の領域を部分的に含む地図情報であってもよい。
【0110】
ロボット制御パラメータ222は、移動ロボット20を動作させるためのパラメータである。ロボット制御パラメータ222には、例えば、周辺物体との距離閾値が含まれる。さらに、ロボット制御パラメータ222には、移動ロボット20の速度上限値が含まれている。
【0111】
搬送物情報226は、搬送物情報126と同様に貸出機器に関する情報を含んでいる。貸出機器の内容(種別、つまり機種)、搬送元、搬送先等の情報を含むことができる。搬送物情報226は、搬送中、搬送前(搭載前)、搬送済みなどのステータスを示す情報を含むことができ、またこのステータスには貸出のための搬送であること又は返却のための搬送であることのいずれであるかを示す情報も含めておくこともできる。搬送物情報226は貸出機器毎にこれらの情報が対応付けられている。搬送物情報226は、移動ロボット20が搬送する貸出機器に関する情報を含んでいればよい。したがって、搬送物情報226は搬送物情報126の一部となる。つまり、搬送物情報226は、他の移動ロボット20が搬送する情報を含んでいなくてもよい。なお、搬送物情報126については後述する。
【0112】
駆動制御部212は、ロボット制御パラメータ222を参照して、距離センサ群24から得られた距離情報が示す距離が距離閾値を下回ったことに応じて動作を停止或いは減速をする。駆動制御部212は、速度上限値以下の速度で走行するように、駆動部26を制御する。駆動制御部212は、速度上限値以上の速度で移動ロボット20が移動しないように、駆動輪の回転速度を制限する。
【0113】
図3は、
図2の搬送システム1における機器貸出システム30の一例を示す制御ブロック図である。
図3に示すように、機器貸出システム30は、演算処理部31、記憶部32、バッファメモリ33、及び通信部34を備えることができる。演算処理部31は、貸出機器のスケジュールを生成及び管理するための演算を行う。演算処理部31は、例えば、コンピュータの中央演算処理装置(CPU)等のプログラムを実行可能な装置として実装可能である。そして、各種機能はプログラムにより実現することもできる。
図3では、演算処理部31において特徴的な登録部311及び貸出計画部312のみを示したが、その他の処理ブロックも備えられる。
【0114】
登録部311は、例えばユーザU1による操作に従いユーザ端末400から送信される、貸出機器のID、使用開始時間、使用終了時間、及び使用場所を含む貸出依頼情報を、通信部34を介して受信して、登録を受け付ける。
【0115】
また、登録部311は、仮予約を行う貸出機器について、例えばユーザU1による操作に従いユーザ端末400から送信される、貸出機器のID、使用開始時間、使用終了時間、及び使用場所を含む貸出仮予約情報を、通信部34を介して受信して、仮登録を受け付ける。また、登録部311は、例えばユーザU1による操作に従いユーザ端末400から送信される、受け付けた仮登録に対する正式貸出依頼や取消依頼を、通信部34を介して受信することで受け付ける。但し、この仮予約を行う機能は必須ではない。
【0116】
貸出計画部312は、登録部311で受け付けた貸出依頼情報に基づき、既に計画されている貸出スケジュールを示す機器貸出情報324、既に仮予約されている貸出スケジュールを示す仮予約情報325、及び同時に依頼された他の貸出依頼情報や貸出仮予約情報を参照して、同時に依頼された取消依頼も考慮し、重複がないことを確認する。無論、重複の判定においては、同種の医療機器であっても別の個体が貸出対象となっていない場合においては、重複していないとして処理される。重複がない場合、貸出計画部312は、受け付けた貸出依頼情報に基づく貸出機器の貸出スケジュールを生成し、機器貸出情報324を更新する。なお、登録部311で受け付けた貸出依頼情報が既存の貸出スケジュールなどと時間的に重複する(搬送時間も考慮して重複する)情報である場合、貸出計画部312は次の返信を行う。すなわち、貸出計画部312は、重複する旨の通知を、通信部34を介して貸出依頼情報の送信元(ユーザ端末400又は上位管理装置10)に返信する。
【0117】
貸出計画部312は、登録部311で受け付けた貸出仮予約情報に対しても貸出依頼情報と同様に、貸出仮予約情報に基づき、既に計画されている貸出スケジュール等を参照して重複がないことを確認する。重複がない場合、貸出計画部312は、受け付けた貸出仮予約情報に基づく貸出機器の貸出スケジュールを生成し、仮予約情報325を更新する。なお、機器貸出情報324及び仮予約情報325は正式な貸出か仮の予約かを示すフラグを用いる、あるいは仮の予約である場合にその旨を示すステータスを追加すれば、情報の共通化が可能である。
【0118】
また、貸出計画部312は、登録部311で受け付けた、仮登録に対する正式依頼に対し、対象の情報を仮予約情報325から機器貸出情報324へ移動させることで、正式な登録を行う。また、貸出計画部312は、登録部311で受け付けた、仮登録に対する取消依頼に対し、対象の情報を仮予約情報325から削除することで、仮予約の削除を行う。以上において登録部311及び貸出計画部312で例示したように、機器貸出システム30は、医療機器の貸し出しを仮予約する予約システムを備えることができる。
【0119】
記憶部32は、貸出機器の貸し出し管理及び機器貸出システム30の制御に必要な情報を格納する記憶部である。
図3の例では、フロアマップ321、整備者情報322、機器情報323、機器貸出情報324、及び仮予約情報325を示したが、記憶部32に格納される情報はこれ以外にあっても構わない。演算処理部31では、各種処理を行う際に記憶部32に格納されている情報を用いた演算を行う。また、記憶部32に記憶されている各種情報は最新の情報に更新可能である。
【0120】
機器情報323は、貸出機器のID、機種(型番)、サイズ、及び重量などを示す情報であり、貸出中か否かを示す情報(つまり在庫状況を示す在庫情報)や、整備に要する時間や保管場所を示す情報を含むこともできる。機器情報323の少なくとも搬送に必要な一部又は機器情報323の全部は搬送物情報126の一部として上位管理装置10で登録されることができる。このうち在庫情報は、機器情報323の一部として含めないこともでき、代わりにあるいは機器情報323の一部として含めるとともに、機器貸出情報324の一部として含むことができる。
【0121】
整備者情報322は、機器情報323が示す各貸出機器に関連付けられた情報であり、各貸出機器を整備する整備者を示す情報(整備者自身のID、あるいは整備者の種類を示す情報等)と各整備者への通知先を示す情報とを含むことができる。貸し出し終了後に次の貸し出しの前に整備を行う場合があるが、この整備のための通知を整備者に行うために、整備者情報322は記憶されることができる。整備のための通知は、演算処理部11が、整備者情報322を参照し、整備が必要である医療機器について、使用後に保管場所に搬送された時点で、通信部14を介して行うことができる。但し、この通知は、移動ロボット20が実行することもできる。このような通知により、貸し出した医療機器の搬送先となる保管場所に整備者が必要に応じて整備に向かうことができる。そして、保管場所では、例えばユーザU2等の整備者が、次の使用に備えて点検や清掃、消耗品の交換などの整備を、必要に応じて実施する。なお、整備者としては、臨床検査技師、診療放射線技師、作業療法士、理学療法士、臨床工学技士、医師、看護師、準看護師などのほか、貸出機器のメーカーの技術者なども挙げられる。
【0122】
フロアマップ321は、フロアマップ121の一部又は全部とすることができる。上述したように、機器貸出情報324は、貸出計画部312で生成された貸出機器毎の貸出スケジュールを示す情報であり、仮予約情報325は、貸出機器についての仮予約を示す情報である。機器貸出情報324及び仮予約情報325については後述する。
【0123】
バッファメモリ33は、演算処理部31における処理において生成される中間情報を蓄積するメモリである。通信部34は、上位管理装置10と通信するための通信インタフェースであり、この通信インタフェースはユーザ端末400や移動ロボット20や電子カルテシステム40との通信も行うように構成しておくこともできる。通信部34は、有線通信と無線通信の両方の通信を行うことができる。通信部34は、例えば、上位管理装置10又はユーザ端末400から貸出依頼情報、貸出仮予約情報等の情報を受信して演算処理部31に渡すことや、演算処理部31による指示に基づき上位管理装置10へ貸出スケジュール等の情報を送信することができる。
【0124】
また、通信部34は、電子カルテシステム40から電子カルテ情報を受信し、演算処理部31に渡すこともできる。この場合、演算処理部31の登録部311は、受信した電子カルテ情報に基づき手術や他の処置に医療機器の貸し出しが必要となるか否かを判定し、必要となる場合において、医療機器の貸出依頼情報又は貸出仮予約情報を生成し、貸出計画部312に渡すこともできる。
【0125】
ここで、登録部311は、この生成に際し、電子カルテ情報に貸し出しが必要となる医療機器を直接的に示す情報を含む場合、電子カルテ情報から機器貸出情報324を生成するための貸出依頼情報又は貸出仮予約情報を生成することができる。一方で、登録部311は、このような医療機器を直接的に示す情報を含まない場合、予め定められたルールに従い、症状名等に対応する医療機器を選択し、貸出依頼情報又は貸出仮予約情報を生成することができる。また、貸出依頼情報、貸出仮予約情報のいずれを生成するかについても、登録部311は、予め定められたルールに従い、決定して生成することができ、例えば処置までの期間が1ヶ月先、1週間先など所定期間以上先である場合には、貸出仮予約情報を生成し、それ以外の場合には貸出依頼情報を生成することができる。あるいは、登録部311は、確定している処置に関する医療機器については貸出依頼情報を生成し、それ以外の場合には貸出仮予約情報を生成することができる。
【0126】
貸出計画部312は、このようにして受け付けた貸出依頼情報又は貸出仮予約情報に基づき機器貸出情報324の登録又は仮予約情報325の登録を行うことになる。
【0127】
あるいは、通信部34は、電子カルテシステム40から電子カルテ情報に基づいた医療機器の貸出依頼情報、貸出仮予約情報などを受信し、演算処理部31に渡すこともできる。この場合、演算処理部31の登録部311は、受信した貸出依頼情報又は貸出仮予約情報を受け付け、貸出計画部312が受け付けた情報に基づき機器貸出情報324の登録又は仮予約情報325の登録を行うことになる。
【0128】
但し、ユーザU1による操作に従う例を挙げたように、登録部311による登録は、医師や看護師等が必要性の判断を行い、操作を行うことで実行されることができる。
【0129】
図4は、
図2の電子カルテシステム40の一例を示す制御ブロック図である。
図4に示すように、電子カルテシステム40は、演算処理部41、記憶部42、バッファメモリ43、及び通信部44を備えることができる。演算処理部41は、電子カルテデータの生成及び管理するための演算を行う。演算処理部41は、例えば、コンピュータの中央演算処理装置(CPU)等のプログラムを実行可能な装置として実装可能である。そして、各種機能はプログラムにより実現することもできる。
図4では、演算処理部41において特徴的な登録部411のみを示したが、その他の処理ブロックも備えられる。
【0130】
登録部411は、例えばユーザU1による操作に従いユーザ端末400から送信される、患者のID、症状、処置(手術も含む)、処置の日程、処置の場所等を含むカルテ登録依頼情報を、通信部44を介して受信して、登録を受け付け、記憶部42の電子カルテ情報420として記憶させる。カルテ登録依頼情報には、患者の氏名、カルテID、入院の要否や日程、手術の場合の執刀医等のスタッフ又はスタッフのチーム等を含むこともできる。
【0131】
記憶部42は、電子カルテシステム40で管理対象となる電子カルテ情報420や電子カルテシステム40の制御に必要な他の情報を格納する記憶部である。
図4の例では、電子カルテ情報420を示したが、記憶部42に格納される情報はこれ以外にあっても構わない。演算処理部41では、各種処理を行う際に記憶部42に格納されている上記他の情報を用いた演算を行う。また、記憶部42に記憶されている各種情報は最新の情報に更新可能である。
【0132】
電子カルテ情報420は、カルテ登録依頼情報として登録を依頼された情報を含むことができる。なお、電子カルテ情報420のうち、例えばカルテIDや患者IDなどは、連番等の予め定められたルールに従って自動的に付されることができる。電子カルテ情報420については後述する。
【0133】
バッファメモリ43は、演算処理部41における処理において生成される中間情報を蓄積するメモリである。通信部44は、上位管理装置10と通信するための通信インタフェースであり、この通信インタフェースはユーザ端末400や移動ロボット20や機器貸出システム30との通信も行うように構成しておくこともできる。通信部44は、有線通信と無線通信の両方の通信を行うことができる。通信部44は、上位管理装置10又はユーザ端末400からカルテ登録依頼情報を受信して演算処理部41に渡すことや、演算処理部41による指示に基づき上位管理装置10へ電子カルテ情報420を送信することができる。
【0134】
また、通信部44は、演算処理部41による指示に基づき、例えば、機器貸出システム30に電子カルテ情報420、あるいは電子カルテ情報420に基づいた医療機器の貸出依頼情報、貸出仮予約情報などを送信することもできる。後者の場合、演算処理部41は、電子カルテ情報420を参照し、手術や他の処置に医療機器の貸し出しが必要となるか否かを判定し、必要となる場合において、医療機器の貸出依頼情報又は貸出仮予約情報を送信する指示を、通信部44に渡す。ここで、演算処理部41は、この指示に際し、電子カルテ情報420に貸し出しが必要となる医療機器を直接的に示す情報を含む場合、電子カルテ情報420から機器貸出情報324を生成するための貸出依頼情報又は貸出仮予約情報を生成することができる。一方で、演算処理部41は、このような医療機器を直接的に示す情報を含まない場合、予め定められたルールに従い、症状名等に対応する医療機器を選択し、貸出依頼情報又は貸出仮予約情報を生成することができる。
【0135】
また、貸出依頼情報、貸出仮予約情報のいずれを生成するかについても、演算処理部41は、予め定められたルールに従い、決定して生成することができ、例えば処置までの期間が1ヶ月先、1週間先など所定期間以上先である場合には、貸出仮予約情報を生成し、それ以外の場合には貸出依頼情報を生成することができる。あるいは、演算処理部41は、確定している処置に関する医療機器については貸出依頼情報を生成し、それ以外の場合には貸出仮予約情報を生成することができる。
【0136】
(電子カルテ情報420)
図5は、
図4の電子カルテシステム40に記憶される電子カルテ情報420の一例を示すテーブルである。電子カルテ情報420は、上述したように、カルテ登録依頼情報として登録を依頼された情報を含むことができる。例えば、電子カルテ情報420は、カルテID、患者ID、患者氏名、症状、処置(手術、投薬等も含む)、処置の日程、処置の場所、入院の要否や日程、処置予定者などを含むことができる。また、電子カルテ情報420は、予後を示す情報、つまり処置後の症状の経過を示す情報を含むことができる。
【0137】
ここで、症状には疾患名(病名)、疾患の位置を示す画像などを含むことができる。
図5のテーブルの例では、この画像を示すファイルの保存場所を示すリンクが記述されている。また、処置予定者は、手術の場合、執刀医等のスタッフ又はスタッフのチームなどとすることができる。なお、
図5において、処置予定者を電子カルテ情報420の登録操作を行うユーザU1,U2として例示している、つまり搬送の手配や回収を行う使用予定者として例示している。但し、説明を簡潔にするために過ぎず、処置予定者は使用予定者とは異なる者であってもよいし、また電子カルテ情報420の登録操作を行う者が使用予定者や処置予定者でなくてもよい。ここで、処置予定者や使用予定者は、医療機器を使用する担当スタッフ及び担当スタッフが所属するグループ(例えば病棟等で分類されたグループ)の少なくとも一方を示すスタッフ情報の一例である。
【0138】
図5の例に限らず、電子カルテ情報420には、通常のカルテに含まれるべき情報を含むことができる。さらに、電子カルテ情報420は、手術や他の処置に医療機器が必要となる場合において、その医療機器を直接的に示す情報を含むこともできる。
【0139】
(機器貸出情報324、仮予約情報325、及び搬送物情報126)
機器貸出情報324及び仮予約情報325として
図6で例示する情報が記憶されている場合を例に挙げて、本実施の形態にかかる搬送システム1の処理例について説明する。
図6は機器貸出情報324及び仮予約情報325の一例を示すテーブルで、
図7は搬送物情報126の一例を示すテーブルである。また、
図8及び
図9は、移動ロボットの移動経路の例を示す図である。
【0140】
機器貸出情報324及び仮予約情報325は、
図6で例示するように、貸出機器のID(機器管理番号)、名称、整備の要否、整備者種別(又は整備者)、搬送先(使用場所)、使用予定者、使用開始時間、及び使用終了時間を含むとともに、正式な貸出か仮の予約かを示す情報を含むことができる。これらの情報は、
図6で例示したように、貸出管理番号で紐付けられてテーブルとして管理されることができる。無論、ここで含まれる使用開始時間、使用終了時間は、それぞれ使用開始予定時間、使用終了予定時間を指すが、使用が開始された機器、返却がなされた機器については、それぞれ実際の使用開始時間、使用終了時間に更新されることができる。このような更新を行うことで、学習の結果を利用する予測の精度の向上が図れる。なお、機器貸出情報324及び仮予約情報325の区別は正式な貸出か仮の予約かを示す情報によって可能となる。
【0141】
搬送先は、貸出機器の届け先(使用場所)を示しており、使用開始時間及び使用終了時間とともに、貸出依頼情報から抽出されることができる。使用予定者は、貸出機器を使用する人を示している。例えば、使用予定者は、患者の氏名やIDとすること、あるいは、看護師、医師などの職員の氏名、IDとすることができる。無論、使用予定者は、患者、及び職員の両方の情報を含んでいてもよい。整備の要否、整備者種別(又は整備者)の情報は、それぞれその貸出機器に整備が必要か否か等(この例では必須又は任意)を示す情報、整備を行う場合の整備者の種別を示す情報(又は整備者のID、氏名を示す情報)とすることができる。
【0142】
機器貸出情報324、仮予約情報325は、上述したように、それぞれ貸出依頼情報、貸出仮予約情報に基づいて生成されるが、この際、機器情報323、整備者情報322も参照して生成されることになる。なお、整備者情報322や機器貸出情報324における整備者種別又は整備者等の情報は、整備者に通知を行う際に必要になるため、通知を行わない例では不要となる。
【0143】
搬送物情報126は、
図7で例示するように、機器管理番号、名称、整備の要否、通知先を示す整備者種別(又は整備者)、搬送元、搬送先、使用予定者、搬送担当のロボットID、ステータス、使用開始時間、及び使用終了時間を含むことができる。搬送物情報126には、仮予約情報325に相当する情報は含めない。これらの情報は、
図7で例示したように、搬送管理番号で紐付けられてテーブルとして管理されることができる。無論、ここで含まれる使用開始時間、使用終了時間は、それぞれ使用開始予定時間、使用終了予定時間を指すが、ステータスが搬送済である使用が開始された機器、返却がなされた機器については、それぞれ実際の使用開始時間、使用終了時間に更新されることができる。このような更新を行うことで、学習の結果を利用する予測の精度の向上が図れる。また、上述したように、ステータスには貸出のための搬送であること又は返却のための搬送であることのいずれであるかを示す情報も含めておくこともできる。
【0144】
搬送元は、移動ロボット20が貸出機器を搭載する場所を示している。搬送先は、貸出機器の届け先(使用場所)を示している。なお、搬送元となる保管場所が1箇所である例を挙げるが、保管場所は1箇所に限らず、搬送先も2箇所に限らないことは言及するまでもない。但し、搬送物情報126の搬送元、搬送先は、機器の返却時においてはそれぞれ貸出先、返却先となる。使用予定者は、貸出機器を使用する人を示している。例えば、使用予定者は、患者の氏名やIDとなっている。あるいは、使用予定者は、看護師、医師などの職員の氏名、IDであってもよい。もちろん、使用予定者は、患者、及び職員の両方の情報を含んでいてもよい。
【0145】
搬送物情報126は、上述したように搬送依頼情報に基づいて生成されることができる。よって、搬送物情報126は、機器貸出情報324(及び他の搬送物についての情報)と、それに基づきタスクの実行効率を考慮して決定された移動ロボット20と、を含む情報に基づき生成されることができる。また、搬送物情報126は、返却される貸出機器についてルート計画部115で得られる情報に基づいてルート計画部115で生成されることができる。具体的には、返却される貸出機器についての搬送物情報126は、ルート計画部115で学習済みモデル124へ入力される終了時期予測結果に係わる返却される貸出機器と、取得された回収ルートに基づきタスクの実行効率を考慮して決定された移動ロボット20と、を含む情報に基づき生成されることもできる。
【0146】
搬送物情報126において、ロボットIDは、貸出機器の搬送を担当する移動ロボット20のIDとなる。ロボットIDは、タスクの実行効率を考慮したルート計画に基づいて設定される。ステータスは、貸出機器が搬送前、搬送中、搬送済のいずれであるかを示す情報である。ステータスは、移動ロボット20が貸出機器を搭載した時点、及び貸出機器の受取が完了した時点で更新される。
【0147】
そして、搬送物情報126は、貸出機器の搬送を担当する移動ロボット20にそれぞれ送信される。例えば、移動ロボット20の搬送物情報226は、その移動ロボット20が搬送を担当する貸出機器に関する情報を含んでいる。つまり、ロボットIDが“AAA”の移動ロボット20には、ロボットIDが“BBB”の貸出機器の搬送物情報が送信されなくてもよい。
【0148】
図6及び
図7の貸出機器E001の搬送について、
図8及び
図9を参照しながら説明する。なお、
図6及び
図7において、便宜上、時刻表示は当日としているが、実際には日時(年月日及び時刻)で管理されている。例えば、数日や数ヶ月にわたり貸し出される機器もあるためである。通常、保管場所800(S001)から搬送を開始するため、
図7ではそのようなルート設定がなされた例を挙げている。また、ルート自体は、上述したようにルート計画部115によって決定され、対応する移動ロボット20に設定されることになる。
【0149】
搬送管理番号001について、移動ロボット20(ロボットID:AAA)は、
図8で示すように、現時点を示す通過ポイントM1から、まず貸出機器E001の保管場所800である通過ポイントM2を目指して移動する。その後、その移動ロボット20は、保管場所800で貸出機器E001を受け取った後、通過ポイントM3,M4を順に移動し、搬送先G001(M5)まで向かうルートRとなる。搬送先G001では使用予定者U001が貸出機器E001を受け取ることになる。なお、その後、その移動ロボット20は、他のタスクのために必要に応じて移動することができる。
【0150】
貸出機器E001は、搬送先G001で使用終了時間15:30まで使用されることになる。但し、ここで記述された使用終了時間は予定であり、学習済みモデル120からの出力結果に従い、更新されることができる。あるいは、この使用終了時間は、記述される段階で学習済みモデル120によって予測、出力された出力結果としておくこともできる。その後、貸出機器E001は返却されることになるが、貸出機器E001は整備が必要な機器であるため返却先は例えば保管場所800とすることができる。
【0151】
この場合、ルート計画部115は、搬送元G001から保管場所800へと返却搬送される貸出機器E001について予測された使用終了時間を、学習済みモデル124へ入力して回収ルートを取得する。さらに、ルート計画部115は、例えば搬送先G001の近くにある移動ロボット20などを、回収を行う移動ロボット20を決定する。貸出機器E001の返却時には、別の移動ロボット20(例えばロボットID:BBB)が使用されることができる。なお、貸出機器E001の返却の判断は医療スタッフ等のスタッフが行い、保管場所800への搬送依頼を行うこともできる。一方で、整備が不要又は任意である貸出機器については、次の搬送先に搬送されて使用されることができ、この場合、医療スタッフ等のスタッフが次の搬送先を判断して、次の搬送先への搬送依頼を行うことになる。
【0152】
このようにして貸出機器E001の返却を行う移動ロボット20及び回収ルートが決定される。この場合、
図9のルートRで例示するように、移動ロボット20は現時点を示す通過ポイントM1から貸出機器E001の使用場所G001を目指して移動し使用場所G001で貸出機器E001を受け取ることになる。使用場所G001では使用予定者U001等の使用者が貸出機器E001を移動ロボット20に搭載することになる。移動ロボット20は、貸出機器E001を受け取った後は、保管場所800へ返却することになり、
図9のルートRとその後の返却完了までのルートがルート計画部115において回収ルートとして取得、決定されることができる。なお、その後、その移動ロボット20は、他のタスクのために必要に応じて移動することができる。また、
図6及び
図7の貸出機器E002や他の貸出機器の搬送や返却についても同様である。
【0153】
(本実施の形態の搬送処理)
上述のような搬送システム1における本実施の形態の搬送処理の例について、
図10及び
図11を参照しながら説明する。
図10は、
図2の上位管理装置10における搬送処理の一例を説明するための模式図で、
図11は、
図10の搬送処理で取得される回収ルートの一例を示す図である。
【0154】
本実施の形態にかかる搬送システム1では、上述したように、電子カルテ情報420が電子カルテシステム40に記憶(登録)されており、電子カルテ情報420は、その一部又は全部の項目の情報が、上位管理装置10へ送信されることあるいは上位管理装置10から取得されることができる。
【0155】
また、本実施の形態にかかる搬送システム1では、上述したように、移動ロボット20で搬送物として搬送される貸出機器のそれぞれについて、貸出スケジュール(使用開始時間、使用終了時間を含む)、使用場所、及び在庫状況を含む管理情報を記憶(登録)しておく。この管理情報は、機器貸出システム30の記憶部32に機器貸出情報324及び仮予約情報325の一部又は全部として記憶しておくことができ、また、上位管理装置10の記憶部12に搬送物情報126の一部又は全部として記憶しておくことができる。
【0156】
図10に示すように、終了時期予測処理部110は、記憶部12に記憶された学習済みモデル120に、搬送物情報126等の貸出中機器データと電子カルテ情報420等の電子カルテデータとを入力して、学習済みモデル120から各医療機器の使用終了時期を予測した予測結果(予測値)である終了時期予測結果を取得する。
【0157】
ここで、終了時期予測時に入力される貸出中機器データとして搬送物情報126を例示しているが、これは、搬送物情報126には搬送中の機器があればそれに関する情報が、搬送済の機器があればそれに関する情報が含まれるためである。但し、この場合、搬送物情報126において返却が終了した医療機器の情報が更新により削除されているか、あるいは終了時期予測処理部110が返却された医療機器の情報を取り除いてから学習済みモデル120へ入力する。なお、ここで返却された医療機器とは、移動ロボット20へ搭載されるなどにより返却が開始された医療機器を含むことができる。さらに、終了時期予測処理部110は、搬送物情報126において貸出対象ではない搬送物が含まれる場合にはその情報を取り除いてから学習済みモデル120へ入力する。
【0158】
あるいは、終了時期予測時に入力される貸出中機器データは、例えば、機器貸出システム30における機器貸出情報324とすることもできる。終了時期予測処理部110は、例えば、
図6のテーブルのデータを受信し、そのうち、仮予約に関する情報を取り除いてから学習済みモデル120へ入力する。
【0159】
また、終了時期予測時に入力される貸出中機器データは、上述したように現存する未返却又は返却未開始の医療機器を示すデータ、つまり貸出機器のリストを示すデータに限ったものではない。例えば、予測時に入力される貸出中機器データは、ユーザ端末400から、機器貸出システム30における機器貸出情報324、あるいは記憶部12の搬送物情報126を参照し、スタッフにより1又は複数が指定されたものであってもよい。この場合、終了時期予測処理部110は、ユーザ端末400で指定された貸出中の医療機器に関する情報を学習済みモデル120へ入力する。
【0160】
いずれの入力例の場合であっても、学習済みモデル120へ入力される貸出中の医療機器に関する情報には、使用開始時間を含めることができ、特にこの使用開始時間は使用開始予定時間であってもよいが、使用が開始された時点で更新された情報である方が正確な予測が可能となる。
【0161】
また、入力される電子カルテデータは、医療機器の使用の必要性を示す情報が記述されているものとし、この情報は、患者に必要な手術を示す情報、患者の症状を示す情報、患者への処置を示す情報、医療機器そのものを示す情報など、あるいはこれらのうちの複数の情報を組み合わせた情報を指すことができる。よって、入力される電子カルテデータは、
図5の処置で例示したように電子カルテ情報420に医療機器の使用の必要性を示す情報が暗喩的又は直接的に記述されている場合には、電子カルテ情報420そのもののデータ、あるいは電子カルテ情報420のうちその記述を含むデータが該当する。
【0162】
但し、終了時期予測のために終了時期予測処理部110に入力される電子カルテデータは、現在の電子カルテデータとすること、つまり、電子カルテ情報420のうち貸出が終了して返却されている医療機器についての情報を除いたデータとすることができる。
【0163】
そして、終了時期予測処理部110が或る医療機器についてその使用終了時期を予測した情報は、例えば、医療機器を示す情報と使用場所を示す情報とその使用終了予測日時とを含むことができる。例えば、終了時期予測処理部110は、輸液ポンプE002と使用場所G001とその使用終了予測日時としての「2021/10/5 14:00」とを出力することができる。なお、例示した使用終了予測日時は、
図6又は
図7のテーブルで使用終了の予定時間として記述された「2021/10/5 14:00」と同じとしているが、当然、予測結果であるためこれらのテーブルの予定時間と異なる予測結果が得られることもある。また、ここでは1つの医療機器についてのみ例示したが、予測時に入力される貸出中機器データについて説明したように、終了時期予測処理部110は、他の貸出中の医療機器についての使用終了時期も同時に予測してその結果を出力することができる。
【0164】
また、終了時期予測結果として予測される情報の種類は、学習済みモデル120を生成する際の出力パラメータ等の設定を変えるなどの所定の処理を施すことで、変更することができる。例えば、学習済みモデル120に入力されるデータに、実際の使用開始時間が含まれる場合には、出力される値をその使用開始時間からの経過時間として、終了時期予測処理部110が最終的にそれらを加算することで、使用終了予測日時を取得することもできる。
【0165】
ここで、学習済みモデル120について説明する。学習済みモデル120は、
図10で例示したように、過去のデータである第1学習データを未学習モデル120aに入力して機械学習されたモデルである。具体的には、学習済みモデル120は、終了時期予測処理部110での処理として説明したように、第1学習データを用いて、貸出中の医療機器を示す貸出中機器データと医療機器の使用の必要性を示す情報が記述された電子カルテデータを入力して終了時期予測結果を出力するように機械学習されたモデルである。学習済みモデル120は、適時、再学習により更新されることができる。
【0166】
第1学習データは、機器貸出情報324、電子カルテ情報420でそれぞれ例示されるように、貸出実績データと電子カルテデータとを含む教師データとする。但し、第1学習データとして例示される機器貸出情報324及び電子カルテ情報420は、以下に説明するようにいずれも過去のデータとして別途格納されたものとすることができる。
【0167】
第1学習データに含まれる貸出実績データは、医療機器を貸し出した実績であってその使用が終了した実績を含む貸出実績を示すデータであればよい。医療機器の使用が終了した実績としては、その医療機器の使用の終了時期を示す情報を含むことができ、代わりの情報としてその医療機器の返却時期を示す情報を採用することもできる。貸出実績データにおけるこの情報は、例えば、電子カルテデータにおける処置の終了時間を示す情報に対応することになる。
【0168】
よって、貸出実績データは、例えば、機器貸出情報324における搬送済であり且つ搬送先が保管場所(
図8における保管場所800(S001))である医療機器についての情報を含み、搬送先が保管場所であれば搬送中である医療機器についての情報も含んでもよい。このように、貸出実績データは、あくまで貸し出して返却された実績又は返却された実績及び返却が開始された実績を示す情報を含むデータである。例えば、貸出実績データは、例えば機器貸出情報324のうち返却完了(及び返却開始)がなされた医療機器についてのデータとすることができ、実際にはこのデータは機器貸出情報324とは別に過去の履歴として格納しておくことができる。ここで、学習済みモデル120は、終了時期予測結果として返却準備を行う時間も考慮した予測結果を出力するように構成することができ、その場合、貸出実績データが示す使用終了時間は例えば返却準備が終わった時間としておけばよい。
【0169】
図6を参照して貸出実績データについて例示する。貸出実績データとしては、例えば、
図6に示す機器貸出情報324及び仮予約情報325のうち、仮予約情報325に該当するレコード(この例では貸出管理番号003のレコード)はなくてもよく、また整備者種別(又は整備者)も不要である。また、貸出実績データとしては、さらに、使用予定者又は処置予定者に対応して実際に使用又は処置した者である使用者又は処置者(処置担当者)も含めなくてよく、また整備の要否も含めなくてもよい。但し、使用者又は処置者、整備の要否を含めておくことで、それぞれ使用者又は処置者に起因する回収等の進み又は遅れなどを考慮した予測、整備が必要であった場合の貸出不能時間などを考慮した予測が可能になる。なお、貸出実績データは、搬送物情報126から返却終了した情報を、別途蓄積していくことでも得ることができる。
【0170】
但し、貸出実績データは仮予約情報325を含むこともできる。具体的に説明すると、上述したように機器貸出システム30は医療機器の貸し出しを仮予約する予約システムを備えることができ、このような構成において、貸出実績データは、仮予約情報325の一部又は全部で例示されるこの予約システムで仮予約された医療機器を示す情報と、その仮予約に基づき実際に貸し出しを行った実績(少なくとも返却開始がなされた医療機器についての貸出の実績)を示す情報(機器貸出情報324の一部)とが関連付けられたデータを含むことができる。これにより、学習済みモデル120が、機器貸出システム30における仮予約にも対応して、医療機器の使用終了時期を事前に予測することができる。
【0171】
また、機器貸出システム30は、仮予約情報325で例示される現在未貸出状態である仮予約された医療機器を示す情報と、取得された終了時期予測結果とに基づき、仮予約された医療機器について、あるいは別途新規で貸出依頼がなされた医療機器について、貸し出しを決定するようにしてもよい。ここで、貸し出しの決定とは、貸出の重複がないような貸出スケジュールの決定を指すことができる。また、学習済みモデル120は、上述したように終了時期予測結果として返却準備を行う時間も考慮した予測結果を出力するように構成することや、さらに返却に要する時間も予測して出力するように構成することもできる。いずれの構成においても、特に貸出スケジュールを決定する構成と併用することで、より効率的なスケジュールで貸し出しを行うことができるようになる。
【0172】
第1学習データに含まれる電子カルテデータは、終了時期予測時に入力される電子カルテデータと比べ、含まれる情報の項目を同じとするが、あくまで現在の電子カルテデータではなく、貸し出した医療機器の使用の必要性を示す情報が記述された過去の電子カルテデータである。ここでも、貸し出した医療機器には返却済の医療機器だけでなく返却を開始した医療機器(返却のための搬送中である医療機器)も含めてもよい。
【0173】
終了時期予測処理部110による予測処理の説明に戻る。
終了時期予測処理部110は、取得された終了時期予測結果を、通信部14を介して機器貸出システム30に通知するように構成することもできる。この通知は、終了時期予測処理部110に具備した通知処理部(図示せず)により、通信部14を介して実行されることができる。通知内容は、対象の医療機器と使用終了予測日時とを含み、予測が複数の医療機器についてなされた場合にはそのいずれについての情報も含めておけばよい。
【0174】
この通知を受けた機器貸出システム30は、例えば管理者、貸出スタッフ、及び返却の作業を担うスタッフ等の担当スタッフのうちの少なくとも1人に対し、通知を行う。通知先は、予め記憶部32に電子メールアドレス、ショートメッセージの番号などとして登録しておけばよい。なお、これらの通知先も含めて機器貸出システムを構築しておくことができ、この場合、これらの通知先が終了時期予測処理部110による通知先となる。
【0175】
上位管理装置10では、このような構成により、機器貸出システム30における医療機器の使用終了時期を、貸出先のスタッフ等が判断するのではなく、事前に予測してその予測結果を得ることができる。実際、病院において医療機器を保管場所から各使用場所へ貸し出す運用を行う際に、医療機器の貸出需要が事前に予測できないため、需要が急増した際に在庫不足が発生する。貸し出す医療機器が在庫不足となる一つの要因として、貸出先で医療機器の使用が終了したが返却搬送の実施を貸出先のスタッフが判断しているため、滞留時間が発生することが挙げられる。
【0176】
しかし、本実施の形態における上位管理装置10では、過去の貸出実績データ及び電子カルテデータに基づいて、医療機器の使用終了時期を事前に予測することができる。例えば、医療機器の使用期間については、実際、医師又は看護師等のスタッフが患者の症状や治療の経過に応じて判断しているため、過去の電子カルテデータ及び過去の使用実績である貸出実績データに基づいて使用終了時期を、事前に予測することができる。特に、例えば点滴など、使用期間が液量や注入速度によって或る程度想像できる処置について、その処置に用いられる医療機器の使用終了時期を正確に事前予測することができる。一方で、処置に要する時間が想像しにくい処置に用いられる医療機器についても、事例を多く学習させた学習済みモデル120を用いることで、正確に事前予測を行うことができる。また、予測精度を随時向上させるためには、蓄積されたデータを再学習し、学習済みモデル120を更新するとよい。
【0177】
これにより、機器貸出システム30では、使用終了から返却が完了するまでの滞留時間をできる限り短縮するための対策を講じることができ、結果として滞留時間を抑制すること、つまりできる限り短縮することができ、在庫不足の低減につなげることができる。この対策としては、例えば上述のような通知先のスタッフがユーザ端末400を用いて即座に返却のための搬送を手配すること、あるいは自動的に上位管理装置10が即座に返却のための搬送を設定することなどが挙げられる。
【0178】
また、上述したように、貸出実績データ及び貸出中機器データ、あるいは、電子カルテデータは、医療機器を使用する担当スタッフ及び担当スタッフが所属するグループの少なくとも一方を示すスタッフ情報を含むようにしてもよい。実際に担当スタッフやグループによって処置に要する時間が異なることが想定されるが、このようにスタッフ情報を用いることで、上位管理装置10では、担当スタッフの行動を考慮して予測を行うことになり、より正確に医療機器の使用終了時期を事前に予測することができる。
【0179】
さらに、終了時期予測処理部110は、取得された終了時期予測結果をルート計画部115に渡し、上記の滞留時間の抑制のために、医療機器を返却品として回収する回収ルートの生成に用いる。この回収ルートについて説明する。
【0180】
本実施の形態にかかる搬送システム1では、上述したように、終了時期予測結果を得ることができる。そして、回収時の搬送ルートである回収ルートを生成するために、
図10に示すように、ルート計画部115がこの終了時期予測結果を学習済みモデル124へ入力して、その終了時期予測結果における回収対象の医療機器を返却品として回収する回収ルートを取得する。入力される終了時期予測結果は、例えば回収地点を示す貸出先、回収の開始日時、移動ロボット20に貸出機器を搭載する作業を行うなどの回収作業を行う担当スタッフなどを示す情報を含むことができ、無論、回収対象の機器を示す情報も含むことができる。
【0181】
ここで、学習済みモデル124について説明する。学習済みモデル124は、
図10で例示したように、過去のデータである第2学習データを未学習モデル124aに入力して機械学習されたモデルである。具体的には、学習済みモデル124は、ルート計画部115での処理として説明したように、第2学習データを用いて、貸出中の貸出機器の使用終了時期を予測した結果である終了時期予測結果を入力して貸出中の貸出機器を返却品として移動ロボット20で回収する回収ルートを出力するように機械学習されたモデルである。学習済みモデル120は、適時、再学習により更新されることができる。
【0182】
第2学習データは、搬送物情報126、ルート計画情報125でそれぞれ例示されるように、回収実績データと回収ルートデータとを含む教師データとする。但し、第2学習データとして例示されるルート計画情報125及び搬送物情報126は、以下に説明するようにいずれも過去のデータとして別途格納されたものとすることができる。
【0183】
第2学習データに含まれる回収実績データは、貸出機器を貸し出した後、貸出機器の使用が終了した使用終了時期と返却品として回収した回収完了時期とを含む回収実績を示すデータであればよい。ここで、使用終了時期は使用終了日時であればよい。また、回収完了時期は、回収完了日時であればよく、貸出機器を保管場所又は次の貸出場所へ搬送した日時(搬送完了日時)とすることができるが、例えばこのような搬送を開始した搬送開始日時とすることもできる。
【0184】
よって、回収実績データは、例えば、搬送物情報126で示される医療機器のうち、搬送済であり且つ搬送先が保管場所(
図8における保管場所800(S001))である医療機器と、搬送済のレコードであり、且つ、そのレコードの搬送先が搬送元となっている他のレコードが存在する医療機器とについての情報を含むことができる。このように、回収実績データは、あくまで貸し出して返却された実績を示す情報を含むデータである。例えば、回収実績データは、例えば搬送物情報126のうちこのような条件に合致した医療機器についてのデータとすることができ、実際にはこのデータは搬送物情報126とは別に過去の履歴として格納しておくことができる。
【0185】
図7を参照して回収実績データについて例示する。回収実績データとしては、例えば、
図7に示す搬送物情報126のうち、整備者種別(又は整備者)は不要である。また、回収実績データとしては、さらに、使用予定者に対応して実際に使用した者である使用者も含めなくてよいが、使用者を含めておくことで、使用者に起因する回収等の進み又は遅れなどを考慮した予測が可能になる。この場合には、入力される終了時期予測結果に、担当スタッフを示す情報を含め、予測が実行可能となる。
【0186】
第2学習データに含まれ回収ルートデータは、貸出機器を移動ロボット20で回収した回収ルートを示すデータであればよい。この回収ルートは、ルート計画情報125で例示され、出発地及び目的地を含む通過ポイントを含むことができる。ここでの出発地は貸出先であり、目的地は保管場所、あるいは整備場所、あるいは次の貸出先となる。
【0187】
ルート計画部115による処理の説明に戻る。
ルート計画部115は、上述のように学習済みモデル124に終了時期予測結果を入力して回収ルートを取得し、その回収ルートで貸出機器を回収する移動ロボット20を決定する。つまり、ルート計画部115は、貸出機器を回収するために制御の対象とする移動ロボット20を決定する処理を実行する。この決定は、ルート計画部115に設けられたロボット決定部115aが実行することができる。
【0188】
例えば、ロボット決定部115aは、所定条件に基づき移動ロボット20を決定することができる。この所定条件としては、例えば、搬送元又はその近傍に存在すること、移動ロボット20の劣化度合いを均一化することなど、システム全体として効率良くタスクを実行できるような条件とすることができる。
【0189】
上位管理装置10では、このような構成により、機器貸出システム30で貸出対象となる機器について、使用終了から移動ロボット20による返却が完了するまでの滞留時間を、効率的に抑制することができる。
【0190】
具体的にこの効果について説明する。病院において医療機器を保管場所から各使用場所へ貸し出す運用を行う際に、医療機器の貸出需要が事前に予測できないため、需要が急増した際に在庫不足が発生する。貸出機器が在庫不足となる一つの要因として、あるいは貸出機器の管理上の問題として、貸出先で機器の使用が終了したが返却搬送の実施を貸出先のスタッフが判断しているために滞留時間が発生することが挙げられる。貸出先のスタッフによる判断がなされる理由としては、ここで例示している機器が医療機器である場合を例に挙げると、病棟によっては人手不足や急患の存在などにより直ぐに積み込みを実施できる場面と実施できない場面とがあることによる。しかし、上位管理装置10では、このような状況を機械学習した学習済みモデル124を利用して回収ルートを決定しているため、上記滞留時間をできる限り短縮することができる。
【0191】
また、返却品を回収する手段に移動ロボットを使う場合、移動ロボットは一般患者が存在するルートを通過する場合があるため、ルートの混雑状況は時間帯によって変化する。例えば、検査待ちの人が多く居るところを走行するルートでは、検査待ちの人が少ない又は居ないルートに比べ走行に時間を要するため、回収に時間がかかる。さらに、回収を行う拠点の業務負荷も時間帯によって変化するため、通過ルートや回収を行う地点の順序により回収の所要時間が変化する。また、返却品を回収する手段に移動ロボットを使う場合、できる限り劣化抑制や省電力化を実現することが望まれる。
【0192】
これに対し、上位管理装置10では、返却品を回収するために移動ロボット20を使用しているものの、機器の使用終了予測に基づいて回収ルートを適切に選択して自動的に回収を行うことで回収の所要時間を最小化するなど、このような回収時間の差を考慮して回収ルートを算出することができる。また、上位管理装置10では、移動ロボット20の劣化度合いや消費電力を考慮して、回収ルートを適切に選択すること、及び回収を行う移動ロボット20を適切に選択すること、の少なくとも一方を実現できる。前者については、回収ルートの設定において、移動ロボット20の劣化度合いや消費電力を考慮した結果の回収実績データを用いれば実現できる。
【0193】
このように、上位管理装置10では、回収時間や移動ロボット20の消費電力や消耗などの点で効率的な使用移動ロボット及び回収ルートで滞留時間を抑制することができる。つまり、上位管理装置10では、できる限り、回収時間を短縮することや移動ロボット20の劣化を抑制することや省電力化を図ることができ、効率的に滞留時間を抑制することができる。
【0194】
また、医療機器の使用終了判断は医師又は看護師等のスタッフが行うため使用終了予測から外れる可能性があり、実際に回収できる時刻も移動ロボット20が配車された時刻から前後することがある。しかし、上位管理装置10では、過去の回収実績データに基づいて、回収ルート計画のアルゴリズムである学習済みモデル124を更新しておくことで、このような使用終了予測の予測誤差を低減させ、それにより適切な回収ルートの設定が可能となる。
【0195】
ここで、貸出対象の機器は例示したように医療機器とすることができるが、これに限らない。但し、貸出機器を医療機器とすることで、上位管理装置10では、医療機器の使用形態を考慮して、医療機器の使用終了から移動ロボットによる返却が完了するまでの滞留時間を効率的に抑制することができる。なお、貸出対象の機器が医療機器以外である場合には、電子カルテシステム40の代わりに対象の機器に係わる何らかの情報を管理するシステム、例えばその機器の貸出需要を調べたアンケートを集計して管理するシステムなどが終了時期予測結果を得るために設けられることができる。
【0196】
また、学習済みモデル124は、複数の機器を回収できるような回収ルートを出力するように機械学習されたモデルであるようにしてもよい。
図11を参照しながら、回収ルートの予測時に学習済みモデル124に入力される終了時期予測結果が、回収地点を示す貸出先、回収の開始日時、移動ロボット20に貸出機器を搭載する作業を行うなどの回収作業を行う担当スタッフを示す情報を含む場合について、学習済みモデル124の出力結果の一例を挙げる。より具体的には、病棟Aで使用されている第1機器の終了時期予測結果、病棟Bで使用されている第2機器の終了時期予測結果がいずれも2021/10/5の16:00であった場合を例にして、学習済みモデル124の出力結果の一例を挙げる。
【0197】
この場合、
図11で例示する回収ルートが学習済みモデル124から出力されることができる。
図11の回収ルートは、移動ロボット20の一つである移動ロボットαがその現在地から出発時刻2021/10/5の16:00に出発して病棟Aへ向かい、病棟Aで第1機器を回収し、回収後に病棟Bへ移動し、病棟Bで第2機器を回収し、返却場所(例えば保管場所)へ向かうルートである。
図11の例では、各タイミングでの開始時刻の推定値や所要時間の推定値を示す情報も回収ルートに含まれる。
【0198】
但し、学習済みモデル124から出力される値は、例えば所要時間の推定値だけであってもよい。
図11で例示した回収ルートにおいて、先頭の病棟の回収開始時刻は、移動ロボット20の発車時刻と先頭病棟への移動時間との和として算出し、以降の病棟の回収開始時刻は、前病棟の回収開始時刻と予測結果である回収所要時間と病棟間の移動時間との和として算出することができる。いずれの場合でも移動時間は、移動距離及び移動ロボット20の移動速度に基づき算出されることができ、より詳細にはルートの各区間についての移動距離及び移動速度に基づき算出されることができる。
【0199】
これにより、上位管理装置10では、複数の機器を回収する効率的な回収ルートを取得することができるため、複数の機器の使用終了から移動ロボット20による返却が完了するまでの滞留時間を、より効率的に抑制することができる。つまり、このような構成により、上位管理装置10では、医療機関内の複数の地点から、移動ロボット20により貸出機器を回収する場合に、回収ルートを適切に選択することで回収の所要時間を最小化することができる。
【0200】
また、上述の回収実績データは、移動ロボット20が回収に要した時間、移動ロボット20の移動距離、及び移動ロボット20の消費電力の少なくとも1つである第1情報を含むこともできる。この場合、学習済みモデル124は、上記第1情報で示される値を最小化するような回収ルートを出力するように機械学習させたモデルとして生成しておけばよい。例えば、学習済みモデル124は、上記第1情報について、回収ルートの計画と回収実績との差分が所定以下のデータセットを教師データとして生成されることができる。さらに、この場合に出力される回収ルートには、
図11で所要時間として例示したように(但し
図11では個別の所要時間で例示)、第1情報の予測値も含まれることができる。
【0201】
この例の場合、上位管理装置10では、貸し出した機器について、使用終了時期の予測結果から上記第1情報を含む過去の回収実績データを考慮した回収ルートを取得し、回収主体となる移動ロボット20を決定する。よって、このような構成における上位管理装置10では、時間、移動距離、及び消費電力の少なくとも1つの観点から効率的と言える回収ルートで機器を回収することができ、結果として、機器の使用終了から移動ロボット20による返却が完了するまでの滞留時間を上記観点で効率的に抑制することができる。
【0202】
あるいは、学習済みモデル124は、複数の機器についての回収地点での回収可能時刻が所定時間以内の場合に、上記第1情報を最小化するように複数の機器を回収する回収ルートを出力するように機械学習させたモデルとして生成しておくこともできる。例えば、学習済みモデル124は、複数の地点の返却予測時刻が所定期間以内の場合に、上記第1情報で示される値を最小化するような回収ルートを出力するモデルとして生成しておくことができる。さらに、この場合にも、出力される回収ルートには第1情報の予測値も含まれることができる。
【0203】
この例の場合、上位管理装置10では、貸し出した機器について、使用終了時期の予測結果から第1情報を含む過去の回収実績データを考慮した、複数の機器を回収可能な回収ルートを取得し、回収主体となる移動ロボット20を決定する。よって、このような構成における上位管理装置10では、時間、移動距離、及び消費電力の少なくとも1つの観点から効率的と言える回収ルートで複数の機器を回収することができ、結果として、複数の機器の使用終了から移動ロボット20による返却が完了するまでの滞留時間を上記観点で効率的に抑制することができる。
【0204】
また、所定時間以内の場合といった条件を採用するか否かに拘わらず、上記第1情報は、ユーザ設定により、例えば移動距離から消費電力へなど適宜変更可能にしておくこともでき、これによりユーザが望む条件での回収ルートを設定することができる。この場合、上記第1情報の組み合わせ毎に学習済みモデル124を生成しておくこと、あるいは学習済みモデル124への入力パラメータの一つとして上記第1情報を指定する情報を含めておくことなどにより、このような変更が可能となる。また、出力される回収ルートには第1情報の予測値を含む場合には、このような変更は、出力値の変更に該当することになる。
【0205】
なお、終了時期予測処理部110からルート計画部115へ終了時期予測結果が入力される例を挙げたが、これに限らず、学習済みモデル124へは、他の手段で得られた終了時期予測結果が入力されるような構成であってもよい。つまり、終了時期予測結果の予測は別のシステムで実行した結果を入力することもでき、より単純な例では、医療スタッフ等のスタッフが予想した終了時期をユーザ端末400などから入力することもできる。
【0206】
次に、
図12を参照しながら本実施の形態にかかる搬送方法の流れの一例について簡単に説明を行う。
図12は、本実施の形態に係る搬送方法の一例を示すフローチャートである。
【0207】
まず、上位管理装置10が、搬送物情報126を記憶部12から読み出すことで取得し(S1001)、電子カルテ情報420を電子カルテシステム40から受信することで取得する(S1002)。なお、ステップS1001,S1002の順序は問わない。また、双方のステップにおいて取得する情報は、上述したように少なくとも未返却又は返却未開始の医療機器に関連する情報である。
【0208】
次に、上位管理装置10は、取得した機器貸出情報324及び電子カルテ情報420を学習済みモデル120に入力し、終了時期予測結果を取得する(S1003)。また、ステップS1001では、上位管理装置10が、機器貸出情報324を機器貸出システム30から受信することで取得して、ステップS1003で搬送物情報126の代わりに学習済みモデル120へ入力することで終了時期予測結果を取得することもできる。
【0209】
ステップS1003に次いで、上位管理装置10が、終了時期予測結果を学習済みモデル124に入力し、回収ルートを取得する(S1004)。なお、ここで取得される回収ルートは複数の機器についてのものであってもよい。そして、上位管理装置10がこの回収ルートで回収を行う移動ロボット20を決定し(S1005)、処理を終了する。このような処理は、貸出中の機器全てについて実行されることができるが、例えば貸出中の機器毎に実行されることもできる。ステップS1005の後は、上位管理装置10が決定された移動ロボット20を制御して回収を実行させることになる。
【0210】
(学習システム)
図13及び
図14を参照しながら、上述した学習済みモデル124を生成する学習システムの構成例、並びに学習システムでの処理例(学習方法の例)について説明する。
図13は、
図2の上位管理装置10で利用される学習済みモデル124を生成する学習システムの一構成例を示すブロック図である。
図14は、
図13の学習システム80で生成される学習済みモデル124の一例を示す模式図である。なお、未学習モデル124aも
図14で示す構成と同様となるが、重み係数が定まっていないモデルとなる。
【0211】
図13に示す学習システム80は、制御部81、入力部82、及び記憶部83を備えることができる。学習システム80は、例えば、AI(Artificial Intelligence)学習用のPC等のコンピュータを利用して構築することができる。但し、学習システム80は、単体の装置で構成しても複数の装置に機能を分散して構成してもよい。
【0212】
制御部81は、学習システム80の全体を制御する。制御部81は、例えば、集積回路によって実現されることができ、例えばプロセッサ、作業用メモリ、及び不揮発性の記憶装置などによって実現されることができる。この記憶装置にプロセッサによって実行される制御用のプログラムを格納しておき、プロセッサがそのプログラムを作業用メモリに読み出して実行することで、制御部81の機能を果たすことができる。この制御用のプログラムには、学習を実行する学習プログラムを含む。なお、この記憶装置は、記憶部83を利用することもできる。
【0213】
入力部82は、データの入力操作を行うインタフェース、及び、外部の装置から通信によりデータを入力する通信インタフェースの少なくとも一方などで構成することができる。入力部82は、学習に必要な学習データ(教師データ)84のデータセットを入力し、学習時に参照できるように記憶部83に記憶する。記憶部83は、この教師データ84を格納しておくことができ、未学習モデルとしての学習モデル85を格納しておくことができる。
【0214】
学習システム80による処理は、制御部81が、未学習モデルとしての学習モデル85に教師データ84を入力し、教師データ84に基づき機械学習を実行し、学習モデル85を学習済みモデル124とすればよい。教師データ84は、上述したように、過去の搬送物情報126、過去のルート計画情報125でそれぞれ例示されるように、回収実績データ、回収ルートデータを含む。学習済みモデル124は、上述したように終了時期予測結果を入力して、回収ルートを出力するように機械学習されたモデルとして生成される。学習済みモデル124は、このような構成により、機器の使用終了から移動ロボット20による返却が完了するまでの滞留時間を効率的に抑制するような回収ルートを取得することが可能になる。
【0215】
学習モデル85は、例えば
図14で示すようなニューラルネットワーク124nを使用することができる。
図14に示すニューラルネットワーク124nは、入力層124na、隠れ層(中間層)124nb、及び出力層124ncを備えるとともに、正解データ124ndとして出力層124ncに対応する値を備えることができる。説明の簡略化のため、中間層124nbを1層として説明するが、中間層124nbは2層以上あってもよい。
【0216】
入力層124naは、説明変数x1,x2,x3,...のそれぞれを入力パラメータとする入力ノードを備える。中間層124nbのうち値y1で示すノードでは、入力パラメータx1に重み係数w1
11を掛けた値、入力パラメータx2に重み係数w1
21を掛けた値、入力パラメータx3に重み係数w1
31を掛けた値などを入力し、それらの総和を算出する。中間層124nbのうち値y2で示すノードでは、入力パラメータx1に重み係数w1
12を掛けた値、入力パラメータx2に重み係数w1
22を掛けた値、入力パラメータx3に重み係数w1
32を掛けた値などを入力し、それらの総和を算出する。中間層124nbの他のノードについても同様である。
【0217】
出力層124ncは、目的変数z1を出力パラメータとする出力ノードを備える。出力層124ncにおいて値z1で示す出力ノードでは、値y1に重み係数w2
11を掛けた値、値y2に重み係数w2
21を掛けた値などを入力し、それらの総和を算出し、対応する正解データ124ndの値t1と比較される。
【0218】
このような比較に従い、比較結果が小さくなるように、各重み係数が算出されることで、未学習のニューラルネットワーク124nが学習済みモデル124として生成される。つまり、正解データ124ndとして実績が与えられると、制御部81は、出力層124ncの出力ノードz1の値と対応する正解データ124ndの値t1とについて誤差を最小化するよう、各重み係数を調整し、その結果として学習済みモデル124を生成する。
【0219】
学習済みモデル124を生成する場合に用いる教師データ84は、搬送物情報126、ルート計画情報125でそれぞれ例示されるように、回収実績データと回収ルートデータとを含むデータセットとすることができる。例えば、このデータセットに含まれる各項目の情報の一部が入力パラメータx1,x2,x3,...として入力され、残りの項目の情報が正解データ124ndの値t1として設定されることができる。より具体例を挙げると、説明変数として、上述したように、例えば回収地点を示す貸出先、回収の開始日時、移動ロボット20に貸出機器を搭載する作業を行うなどの回収作業を行う担当スタッフなどが入力パラメータとして入力され、目的変数として所要時間の情報が正解データ124ndの値t1として設定されることができる。
【0220】
このようにして生成された学習済みモデル124は、実績が更新され、その更新された実績を正解データ124ndとして設定することで、出力層124ncの出力ノードの値を対応する実績との誤差を最小化するよう、各重み係数が調整されることで、更新される。つまり、学習済みモデル124としての学習モデル85は、再学習が必要な場合には新たに用意されたデータセットに基づき再学習させることができる。
【0221】
上述の例のデータセットを用いる場合、上位管理装置10は、次のようにして回収ルートの取得及び学習モデル124の更新を実行することができる。
【0222】
まず、上位管理装置10は、学習済みモデル120を用いるなどして各機器の使用終了時期を予測して、その終了時期予測結果を取得する。次いで、上位管理装置10は、取得した終了時期予測結果に基づき、複数の地点にある機器の予測日時が所定時間以内(例えば15分以内)であるか否かを判定し、所定時間以内である場合に、1台の移動ロボット20が複数地点の回収に向かうことを決定する。そして、上位管理装置10は、順列の考え方により、複数地点の回収順のパターンを算出する。
【0223】
次いで、上位管理装置10は、算出したパターン毎に次の処理を実行する。即ち、パターンに含まれる回収地点について、ニューラルネットワーク124nを用い、回収地点、回収の開始日時、担当スタッフを入力して出力層124ncにおける値z1としてその地点での回収動作の所要時間を得ることで、この所要時間を事前に推定する。そして、上位管理装置10は、推定した所要時間が最短になる回収順のパターンを選択することで、回収ルートを決定する。そして、回収後は、推定した値z1に対する実績値t1に基づき、各重み係数を更新することで、学習済みモデル124を更新する。
【0224】
ここで、入力パラメータは、疑似相関等による予測精度の低下を抑制するため、モデル構築を行う者などの判断により適宜追加/削除することができる。また、初回のルート計画時などでは、ニューラルネットワーク124nの出力を得るためにデータが不足していることが想定され、そのようにデータが不足している場合には、例えばダイクストラ法を用いて最短経路を求めて、計画を行うことができる。
【0225】
また、学習済みモデル120についての学習処理もそのアルゴリズム、教師データ等が異なるだけで、同様の学習システムが利用可能である。
【0226】
この場合、学習システム80による処理は、制御部81が、未学習モデルとしての学習モデル85に教師データ84を入力し、教師データ84に基づき機械学習を実行し、学習モデル85を学習済みモデル120とすればよい。教師データ84は、上述したように、過去の機器貸出情報324、過去の電子カルテ情報420でそれぞれ例示されるように、貸出実績データ、電子カルテデータを含む。学習済みモデル120は、上述したように貸出中機器データと電子カルテデータを入力して、医療機器の使用終了時期を予測した終了時期予測結果を出力するように機械学習されたモデルとして生成される。学習済みモデル120は、このような構成により、機器貸出システム30における医療機器の使用終了時期を事前に予測することが可能になる。
【0227】
学習モデル85は、例えば
図14で示すようなニューラルネットワーク124nを使用することができる。以下、便宜上、学習済みモデル120については、符号124等を符号120等に置き換えて説明する。この場合、ニューラルネットワーク120nは、1つ機種又は型番(管理番号)の医療機器についての学習モデル85の例となる。このように、対象となる医療機器は、同一種の医療機器をまとめて取り扱っても、個別に取り扱ってもよい。この場合、ニューラルネットワーク120nが医療機器の種類毎又は医療機器の型番毎に、用意され、機械学習がなされることができる。そして、予測時には、機械学習後の複数のニューラルネットワーク120nのうちのどれを使用するかを決定する情報として貸出中機器データが使用されることができる。
【0228】
このように、学習済みモデル120は、医療機器の種類又は型番毎に、異なる学習済みモデルとして生成され、一群の学習済みモデルのセットとして記憶されることができる。この場合、終了時期予測処理部110は、どの種類又は型番の医療機器についての予測を行うかを決定する情報として貸出中機器データが使用され、その情報が示す種類又は型番に対応する学習済みモデルを用いて、終了時期予測結果を取得する。これにより、上位管理装置10では、医療機器毎の搬送、使用終了、返却準備などに要する時間を考慮することで、より正確に医療機器の使用終了時期を事前に予測することができる。終了時期が医療機器毎に異なるため、このような構成は有益であり、また終了時期の予測精度も医療機器毎に異なることが想定されることからもこのような構成は有益であると言える。
【0229】
ニューラルネットワーク120nでは、出力層120ncにおいて値z1で示す出力ノードと対応する正解データ120ndの値t1とが比較され、このような比較に従い、比較結果が小さくなるように、各重み係数が算出されることで、未学習のニューラルネットワーク120nが学習済みモデル120として生成される。つまり、正解データ120ndとして実績が与えられると、制御部81は、出力層120ncの出力ノードz1の値と対応する正解データ120ndの値t1とについて誤差を最小化するよう、各重み係数を調整し、その結果として学習済みモデル120を生成する。
【0230】
学習済みモデル120を生成する場合に用いる教師データ84は、上述したように電子カルテデータと貸出実績データとを含むデータセットとすることができる。例えば、この電子カルテデータに含まれる各項目の情報が入力パラメータx1,x2,x3,...として入力され、この貸出実績データに含まれる各項目の情報が正解データ120ndの値t1として設定されることができる。例えば、正解データ120ndの値には、使用終了日時を示す期間情報を示す値を含むことができ、予測時(運用時)には出力層120cにおけるそれぞれに対応したノードの値が、終了時期予測結果を示すことになる。また、上述したように、入力パラメータには医療機器を直接的に示す情報を含むこともできるが、含まなくても、症状や処置など、医療機器を暗喩的に示す情報が含まれていればよい。
【0231】
電子カルテデータは、
図5で簡単な例を挙げたが、より詳細には次に例示するような項目を含むことができる。例えば、電子カルテデータは、患者情報として、例えば患者個人を特定する患者ID及び/又は氏名、年齢、性別などを含むこともできるが、一部を含まないこともできる。また、電子カルテデータは、処置に関する情報のうち入院に関する情報として、入院日時、入院時診療科、入院病棟、主治医、担当看護師、病名(疾患名)、入院目的、検査日、検査名、手術名、手術日などを含むことができる。また、電子カルテデータは、例えば、医療区分(ADL:Activities of Daily Living)、看護計画及び看護経過表の少なくとも一方、クリニカルパス及びパス状態の少なくとも一方を含むことができる。また、電子カルテデータは、上述したように医療機器の使用を直接的に示す情報を含むことができ、また手術等の処理から何日後であるかを示す情報、重篤度を示す情報、医師等の判断を示す情報などを含むことができる。但し、電子カルテデータは、上述した項目を全て含むことに限らず、一部のみを含むことができ、またさらに項目を追加することもできる。特に、疑似相関等による予測精度の低下を抑制するため、電子カルテデータとして含める情報の項目はモデル構築を行う者などの判断により適宜追加/削除することができる。
【0232】
また、上述したように、第1学習データに含める電子カルテデータ及び予測時に入力する電子カルテデータは、医師又は看護師等の医療スタッフがその医療機器の使用を判断したことを示す情報を含むこともできる。これにより、上位管理装置10は、医療スタッフによる医療機器の使用の判断の実績を考慮して、より正確に医療機器の使用終了時期を事前に予測することができる。
【0233】
(その他)
上述した予測システム、上位管理装置10、移動ロボット20、機器貸出システム30、電子カルテシステム40、学習システム80等における処理の一部又は全部は、コンピュータプログラムとして実現可能である。このようなプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施の形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disk(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【0234】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。また、本開示は、上記実施の形態におけるそれぞれの例を適宜組み合わせて実施されることを含む。
【0235】
例えば、上記実施の形態では主に病院内を移動ロボットが自律移動するシステムについて説明したが、上述の搬送システムは、医療機器に限らず、ホテル、レストラン、オフィスビル、イベント会場又は複合施設において貸出対象の機器を含む物品を荷物として搬送できる。つまり、上記実施の形態にかかる搬送システムは、医療機器以外の貸出機器の回収に利用することができる。また、1施設内での機器を搬送することを前提として説明したが、移動ロボットが複数の施設間で移動可能な移動ロボットであれば複数の施設間での搬送にも同様に適用できる。
【0236】
また、上述の搬送システムは、例示した移動ロボット20を用いる場合に限らず、その代わりに又はそれに加えて、様々な構成の移動ロボットを用いることができる。また、上述の搬送システムは、自律移動可能な移動ロボットを用いた例を挙げているが、操作者による遠隔操作で制御される移動ロボットを用いて、搬送物を搬送するシステムとして構築することもでき、この場合には操作者を示す情報も学習データに含めておくとともに、移動ロボットを決定する際に操作者も決定するとよい。
【符号の説明】
【0237】
1 搬送システム
10 上位管理装置
11 演算処理部
12 記憶部
13 バッファメモリ
14 通信部
20 移動ロボット
21 演算処理部
22 記憶部
23 通信部
24 距離センサ群
25 カメラ
26 駆動部
27 表示部
28 操作受付部
30 機器貸出システム
31 演算処理部
32 記憶部
33 バッファメモリ
34 通信部
40 電子カルテシステム
41 演算処理部
42 記憶部
43 バッファメモリ
44 通信部
110 終了時期予測処理部
111 ロボット制御部
115 ルート計画部
120、124 学習済みモデル
120a、124a 未学習モデル
121 フロアマップ
122 ロボット制御パラメータ
123 ロボット情報
124n ニューラルネットワーク
124na 入力層
124nb、隠れ層(中間層)
124nc 出力層
124nd 正解データ
125 ルート計画情報
126 搬送物情報
211 移動命令抽出部
212 駆動制御部
221 フロアマップ
222 ロボット制御パラメータ
226 搬送物情報
311 登録部
312 貸出計画部
321 フロアマップ
322 整備者情報
323 機器情報
324 機器貸出情報
325 仮予約情報
400 ユーザ端末
411 登録部
420 電子カルテ情報
600 ネットワーク
610 通信ユニット