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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-04
(45)【発行日】2025-08-13
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/09 20120101AFI20250805BHJP
【FI】
B60W30/09
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022175283
(22)【出願日】2022-11-01
(65)【公開番号】P2024066052
(43)【公開日】2024-05-15
【審査請求日】2024-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 正太郎
【審査官】戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-097687(JP,A)
【文献】特開2021-174014(JP,A)
【文献】特開2017-045367(JP,A)
【文献】特開2018-189462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両が該自車両の前方の物標に衝突するとの衝突条件が成立したときに前記自車両を自律的に減速させることにより前記自車両と前記物標との衝突を回避する衝突回避制御を実行する制御装置を備え、
前記衝突条件は、少なくとも、前記自車両と前記物標とのラップ率がラップ率閾値以上であるとの条件を含んでおり、
前記制御装置は、前記自車両が旋回しているときには、前記自車両が旋回していないときに比べ、前記ラップ率閾値を大きい値に設定するように構成されている、
車両制御装置において、
前記制御装置は、前記自車両の旋回中に前記自車両が前記物標に衝突する可能性があるとの衝突可能性条件が成立し続けている条件成立時間が所定時間以上であるときには、前記条件成立時間が前記所定時間よりも短いときに比べ、前記ラップ率閾値を小さい値に設定するように構成されている、
車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置において、
前記制御装置は、前記条件成立時間が前記所定時間以上である場合、前記ラップ率閾値を前記条件成立時間に応じた値に設定するように構成されている、
車両制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両制御装置において、
前記制御装置は、前記条件成立時間が前記所定時間以上である場合、前記条件成立時間が長いほど前記ラップ率閾値を小さい値に設定するように構成されている、
車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自車両の旋回中に当該自車両が他車両と衝突することを回避するための衝突回避制御を実行する車両制御装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2022-112274号公報
【発明の概要】
【0004】
自車両の旋回中に当該自車両が他車両等の物標と衝突するか否かを判定するために、自車両と物標とのラップ率を利用することが考えられる。ラップ率は、自車両の車幅方向における自車両と物標との重なり度合を表す指標値であり、ラップ率が大きいほど、自車両と物標との重なり度合が大きい。
【0005】
ラップ率を利用する場合、例えば、ラップ率が所定の値(ラップ率閾値)以上であるとの条件が自車両が物標と衝突すると判定される条件の1つとされる。又、この場合、自車両が旋回しているときには、自車両が直進しているときに比べ、ラップ率の推定誤差が大きいことから、自車両が旋回しているときのラップ率閾値を、自車両が直進しているときのラップ率閾値よりも大きい値に設定するようにすると、ラップ率の推定誤差が大きくても、衝突回避制御の不要な実行を抑制しつつ、衝突可能性(自車両が物標に衝突する可能性)が高い高ラップ率の衝突を回避することができる。
【0006】
しかしながら、自車両の旋回中、例えば、旋回の前半と後半とでは、ラップ率の推定誤差が異なるので、自車両が旋回しているときのラップ率閾値を一定の大きい値に維持していると、衝突回避制御の実行が必要であるにもかかわらず、衝突回避制御が実行されない可能性がある。
【0007】
本発明の目的は、自車両が物標に衝突しないにもかかわらず、衝突回避制御が実行されることを適切に抑制することができる車両制御装置を提供することにある。
【0008】
本発明に係る車両制御装置は、自車両が該自車両の前方の物標に衝突するとの衝突条件が成立したときに前記自車両を自律的に減速させることにより前記自車両と前記物標との衝突を回避する衝突回避制御を実行する制御装置を備えている。前記衝突条件は、少なくとも、前記自車両と前記物標とのラップ率がラップ率閾値以上であるとの条件を含んでいる。又、前記制御装置は、前記自車両が旋回しているときには、前記自車両が旋回していないときに比べ、前記ラップ率閾値を大きい値に設定するように構成されている。更に、前記制御装置は、前記自車両の旋回中に前記自車両が前記物標に衝突する可能性があるとの衝突可能性条件が成立し続けている条件成立時間が所定時間以上であるときには、前記条件成立時間が前記所定時間よりも短いときに比べ、前記ラップ率閾値を小さい値に設定するように構成されている。
【0009】
自車両が旋回を始めたときに自車両の前方に物標が存在する場合において、自車両の旋回開始から一定時間が経過するまでの間は、自車両の挙動が安定せず、自車両の軌跡推定の精度が上がらない。このため、自車両が物標に衝突せずに物標の横を通過することができる場合であっても、推定されるラップ率が大きくなることがある。従って、ラップ率閾値が小さい値に設定されていると、自車両が物標の横を通過しようとして物標に近づいたときに推定されるラップ率がラップ率閾値以上となって衝突回避制御が実行されてしまう可能性がある
【0010】
本発明によれば、自車両が旋回を始めたときに自車両の前方に物標が存在する場合において、衝突可能性条件が初めて成立してから所定時間が経過するまでの間、ラップ率閾値が大きい値に設定される。このため、自車両の挙動が安定していない自車両の旋回初期において、自車両が物標に衝突しないにもかかわらず、衝突回避制御が実行されることを適切に抑制することができる
【0011】
一方、自車両の旋回開始から一定時間が経過すれば、自車両の挙動が安定するので、自車両の軌跡推定の精度が上がり、ラップ率の推定がしやすくなる。このため、衝突回避制御の不要な実行を抑制するために、ラップ率閾値が大きい値に設定されたままであると、自車両が物標に衝突するにもかかわらず、衝突回避制御が実行されない可能性がある
【0012】
本発明によれば、自車両の旋回開始から所定時間が経過した後は、ラップ率閾値が小さい値に設定されるので、自車両が物標に衝突する可能性が高い場合に衝突回避制御を確実に実行させることができる
【0013】
尚、本発明に係る車両制御装置において、前記制御装置は、前記条件成立時間が前記所定時間以上である場合、前記ラップ率閾値を前記条件成立時間に応じた値に設定するように構成されてもよい。
【0014】
旋回中の自車両の挙動は、旋回開始から経過した時間が長くなるほど安定し、その結果、ラップ率の推定誤差は、旋回開始から経過した時間が長くなるほど小さくなる。従って、衝突回避制御を適切に実行するためには、ラップ率閾値が旋回開始から経過した時間に応じた値に設定されることが好ましい。本発明によれば、条件成立時間が所定時間以上である場合、ラップ率閾値が条件成立時間に応じた値に設定される。このため、衝突回避制御を適切に実行することができる。
【0015】
又、本発明に係る車両制御装置において、前記制御装置は、前記条件成立時間が前記所定時間以上である場合、前記条件成立時間が長いほど前記ラップ率閾値を小さい値に設定するように構成されてもよい。
【0016】
先に述べたように、ラップ率の推定誤差は、旋回開始から経過した時間が長くなるほど小さくなる。本発明によれば、条件成立時間が所定時間以上である場合、条件成立時間が長いほどラップ率閾値が小さい値に設定される。このため、衝突回避制御をより適切に実行することができる。
【0017】
本発明の構成要素は、図面を参照しつつ後述する本発明の実施形態に限定されるものではない。本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、本発明の実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の実施形態に係る車両制御装置を示した図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係る車両制御装置が実行するルーチンを示したフローチャートである。
図3図3は、自車両の旋回中、自車両の前方に先行車が存在する場面を示した図である。
図4図4は、ラップ率を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る車両制御装置について説明する。以下、自車両100の操作者が自車両100に乗車して当該自車両100の運転を行う者(即ち、自車両100の運転者)である場合を例にして、車両制御装置10について説明する。従って、本例において、車両制御装置10は、図1に示したように、自車両100に搭載されている。
【0020】
しかしながら、自車両100の操作者は、自車両100に乗車せずに当該自車両100の運転を遠隔で行う者(即ち、自車両100の遠隔操作者)であってもよい。自車両100の操作者が遠隔操作者である場合、車両制御装置10は、自車両100と、自車両100の運転を遠隔で行うために自車両100の外に設置された遠隔操作設備とにそれぞれ搭載され、以下で説明する車両制御装置10の機能は、自車両100に搭載された車両制御装置10と、遠隔操作設備に搭載された車両制御装置10とでそれぞれ分担して行われることになる。
【0021】
車両制御装置10は、制御装置としてのECU90を備える。ECU90は、エレクトロニックコントロールユニット(電子制御装置)である。ECU90は、マイクロコンピュータを主要部として備える。マイクロコンピュータは、CPU、ROM、RAM、不揮発性メモリ及びインターフェース等を含む。CPUは、ROMに格納されたインストラクション又はプログラム又はルーチンを実行することにより、各種機能を実現するようになっている。本例において、車両制御装置10は、1つのECUを備えたものであるが、後述するように、複数のECUを備え、後述する各種処理をそれらECUにそれぞれ分担して実行させるように構成されてもよい。
【0022】
又、図1に示したように、自車両100には、駆動装置21、制動装置22及び操舵装置23が搭載されている。
【0023】
駆動装置21は、自車両100に加えられる駆動力を出力する装置であり、例えば、内燃機関及び/又は少なくとも1つのモータ等を備えている。駆動装置21は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、駆動装置21から出力される駆動力を制御することができる。
【0024】
制動装置22は、自車両100に制動力を加える装置であり、例えば、油圧ブレーキ装置である。制動装置22は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、制動装置22により自車両100に加えられる制動力を制御することができる。
【0025】
操舵装置23は、自車両100に操舵力を加える装置であり、例えば、パワーステアリング装置である。操舵装置23は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、操舵装置23により自車両100に加えられる操舵力を制御することができる。
【0026】
更に、自車両100には、アクセルペダル41、アクセルペダル操作量センサ42、ブレーキペダル43、ブレーキペダル操作量センサ44、ハンドル45、ステアリングシャフト46、操舵角センサ47、操舵トルクセンサ48、車速検出装置51、ヨーレートセンサ52、加速度センサ53、周辺情報検出装置60、自車両位置検出装置70、及び、車両間通信装置80が搭載されている。
【0027】
アクセルペダル41は、自車両100を加速するために運転者により操作される機器である。アクセルペダル操作量センサ42は、アクセルペダル41の操作量を検出する機器である。尚、自車両100の操作者が自車両100の遠隔操作者である場合、アクセルペダル41及びアクセルペダル操作量センサ42は、遠隔操作設備に搭載されている。
【0028】
アクセルペダル操作量センサ42は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、アクセルペダル操作量センサ42によりアクセルペダル41の操作量をアクセルペダル操作量APとして取得する。ECU90は、アクセルペダル操作量APに基づいて運転者の要求する自車両100の加速度をドライバー要求加速度Ga_driverとして演算により取得する。ECU90は、ドライバー要求加速度Ga_driverがゼロよりも大きいときには、後述する衝突回避制御を実行する場合を除き、ドライバー要求加速度Ga_driverが達成されるように駆動装置21から出力される駆動力を制御する通常走行制御を実行する。
【0029】
ブレーキペダル43は、自車両100を減速させるために運転者により操作される機器である。ブレーキペダル操作量センサ44は、ブレーキペダル43の操作量を検出する機器である。尚、自車両100の操作者が自車両100の遠隔操作者である場合、ブレーキペダル43及びブレーキペダル操作量センサ44は、遠隔操作設備に搭載されている。
【0030】
ブレーキペダル操作量センサ44は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、ブレーキペダル操作量センサ44によりブレーキペダル43の操作量をブレーキペダル操作量BPとして取得する。ECU90は、ブレーキペダル操作量BPに基づいて運転者の要求する自車両100の減速度をドライバー要求減速度Gd_driverとして演算により取得する。ECU90は、ドライバー要求減速度Gd_driverがゼロよりも大きいときには、後述する衝突回避制御を実行する場合を除き、ドライバー要求減速度Gd_driverが達成されるように制動装置22から自車両100に加えられる制動力を制御する通常走行制御を実行する。
【0031】
操舵角センサ47は、中立位置に対するステアリングシャフト46の回転角度を検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、操舵角センサ47によりステアリングシャフト46の回転角度を操舵角θとして取得する。
【0032】
操舵トルクセンサ48は、運転者がハンドル45を介してステアリングシャフト46に入力したトルクを検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、操舵トルクセンサ48により運転者がハンドル45を介してステアリングシャフト46に入力したトルクをドライバー入力トルクTQ_driverとして取得する。
【0033】
車速検出装置51は、自車両100の走行速度を検出する装置であり、例えば、自車両100の各車輪に設けられた車輪速センサを含んでいる。車速検出装置51は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、車速検出装置51により自車両100の走行速度を自車速Vとして取得する。
【0034】
ECU90は、操舵角θ、ドライバー入力トルクTQ_driver及び自車速Vに基づいて運転者の要求する操舵力(操舵トルク)を要求操舵力(要求操舵トルク)として演算により取得する。ECU90は、要求操舵力に相当する操舵力が操舵装置23から自車両100に加えられるように操舵装置23の作動を制御する。
【0035】
ヨーレートセンサ52は、自車両100のヨーレートを検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、ヨーレートセンサ52により自車両100のヨーレートをヨーレートYRとして取得する。
【0036】
加速度センサ53は、自車両100の縦方向(前後方向)の加速度及び横方向(幅方向)の加速度を検出するセンサであり、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、加速度センサ53により自車両100の縦方向の加速度を縦加速度Gxとして取得するとともに、自車両100の横方向の加速度を横加速度Gyとして取得する。
【0037】
周辺情報検出装置60は、自車両100の周辺の状況に関する情報を取得する装置であり、本例においては、電磁波センサ61及び画像センサ62を含んでいる。
【0038】
電磁波センサ61は、自車両100の周辺の物標に関するデータ(物標データ)を取得するセンサであり、例えば、レーダセンサ(ミリ波レーダ)等の電波センサ、超音波センサ(クリアランスソナー)等の音波センサ、及び、レーザーレーダ(LiDAR)等の光センサである。電磁波センサ61は、電磁波を発信し、その電磁波が物標により反射された場合、その電磁波(反射波)を受信する。物標データは、それら発信された電磁波及び反射波に関する情報である。電磁波センサ61は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、電磁波センサ61から物標データを周辺検出情報ISとして取得する。
【0039】
画像センサ62は、自車両100の周辺を撮影して画像データを取得するセンサであり、例えば、カメラセンサである。画像センサ62は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、画像センサ62から画像データを周辺検出情報ISとして取得する。
【0040】
車両間通信装置80は、他車両のECUと無線通信(車両間通信)を行う装置である。車両間通信装置80は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、車両間通信装置80を介して自車両100付近の他車両のECUが発信する周辺検出情報(物標データ及び画像データ等)を周辺検出情報ISとして取得することができる。
【0041】
自車両位置検出装置70は、自車両100の位置を検出する装置であり、特に、本例においては、GPS信号を受信して自車両100の現在位置を取得する装置である。本例において、自車両位置検出装置70は、GPS受信機71を備えている。GPS受信機71は、GPS信号を受信する。GPS受信機71は、ECU90に電気的に接続されている。ECU90は、GPS受信機71が受信したGPS信号に基づいて自車両100の現在位置(自車両位置)を周辺検出情報ISとして取得する。
【0042】
尚、周辺情報検出装置60は、道路脇に設けられた設備から無線で発信される情報を受信する装置を含んでいてもよく、この場合、その情報を周辺検出情報ISとして取得するように構成されていてもよい。
【0043】
<車両制御装置の作動>
次に、車両制御装置10の作動について説明する。以下に述べるように、車両制御装置10は、自車両100がその前方の物標に衝突するとの衝突条件が成立したときに自車両100を自律的に減速させることにより自車両100と物標との衝突を回避する衝突回避制御を自動運転制御として実行する。そして、当該衝突回避制御により衝突を回避する対象としての物標は、例えば、自車両100の前方の先行車、歩行者又はガードレール等の構造物等であるが、以下では、当該衝突回避制御により衝突を回避する対象としての物標が先行車である場合における車両制御装置10の作動について説明する。
【0044】
尚、車両制御装置10は、自車両100の前方の先行車、歩行者又は構造物等の物標を周辺検出情報ISに基づいて検出する。又、先行車は、自車両100の前方を走行している他車両であって、自車両100から所定の距離以内で走行している他車両である。
【0045】
車両制御装置10は、図2に示したルーチンを所定演算周期で実行するようになっている。従って、所定のタイミングになると、車両制御装置10は、図2に示したルーチンのステップS200から処理を開始し、その処理をステップS205に進め、先行車200が存在するか否かを判定する。
【0046】
車両制御装置10は、ステップS205にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS210に進め、自車両100がカーブ路等を旋回中であり且つ交差条件が成立しているか否かを判定する。言い換えれば、車両制御装置10は、自車両100が旋回中であり且つ自車両100が先行車200と衝突する可能性があるとの衝突可能性条件が成立しているか否かを判定する。
【0047】
尚、車両制御装置10は、操舵角θ、ヨーレートYR及び横加速度Gy等に基づいて自車両100が旋回中か否かを判定する。
【0048】
又、交差条件は、自車両100の予測走行経路R100と先行車200の予測走行経路R200とが交差するとの条件である。図3に示したように、自車両100の予測走行経路R100は、自車両100が今後走行するものと予測される経路であり、先行車200の予測走行経路R200は、先行車200が今後走行するものと予測される経路である。車両制御装置10は、自車両100の操舵角θ、ヨーレートYR及び横加速度Gy並びに周辺検出情報IS等に基づいて自車両100の予測走行経路R100を取得し、周辺検出情報ISに基づいて先行車200の予測走行経路R200を取得する。
【0049】
車両制御装置10は、ステップS210にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS215に進め、条件成立時間Tが所定の時間(所定条件成立時間Tth)以上であるか否かを判定する。
【0050】
条件成立時間Tは、或る先行車200について、ステップS210にて「Yes」と初めて判定されてから、当該先行車200について、ステップS210にて「Yes」と判定され続けている時間である。即ち、条件成立時間Tは、衝突可能性条件が成立し続けている時間であり、衝突可能性条件が成立していると判定された回数を示す指標値でもある。
【0051】
車両制御装置10は、ステップS215にて「No」と判定した場合、処理をステップS220に進め、ラップ率閾値LAPthを所定の値(旋回初期閾値LAPu)に設定し、その後、処理をステップS235に進める。旋回初期閾値LAPuは、100%に近い比較的大きい値に設定され、或いは、100%に設定されている。
【0052】
ラップ率閾値LAPthは、ラップ率LAPに係る閾値であり、後述するステップS235にて用いられる。ラップ率LAPは、図4に示したように、自車両100の全幅Wに対する重なり幅dWの割合である(LAP=dW/W)。重なり幅dWは、自車両100の全幅Wの範囲内に存在する先行車200の部分の自車幅方向Yの長さである。自車幅方向Yは、自車両100の前後方向Xに対して垂直な方向である。
【0053】
図4の(A)に示した例においては、ラップ率LAPは、100%であり、図4の(B)に示した例においては、ラップ率LAPは、50%である。又、図4の(C)に示した例においては、ラップ率LAPは、100%であり、図4の(D)に示した例においては、ラップ率LAPは、50%である。
【0054】
車両制御装置10は、ステップS215にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS225に進め、ラップ率閾値LAPthを所定の値(旋回安定閾値LAPs)に設定し、その後、処理をステップS235に進める。旋回安定閾値LAPsは、比較的大きい値に設定されているが、旋回初期閾値LAPuよりは小さい値に設定されている。尚、旋回安定閾値LAPsは、条件成立時間Tの長短にかかわらず、一定の値に設定されてもよいが、条件成立時間Tに応じた値に設定されてもよい。この場合、例えば、旋回安定閾値LAPsは、条件成立時間Tが長いほど小さい値に設定される。
【0055】
又、車両制御装置10は、ステップS210にて「No」と判定した場合、処理をステップS230に進め、ラップ率閾値LAPthを所定の値(通常閾値LAPn)に設定し、その後、処理をステップS235に進める。通常閾値LAPnは、0%に近い比較的小さい値であって、旋回安定閾値LAPsよりも小さい値に設定され、特に、0%に設定されている。
【0056】
車両制御装置10は、処理をステップS235に進めると、ラップ率LAPがラップ率閾値LAPth以上であるか否かを判定する。車両制御装置10は、ステップS235にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS240に進め、車間距離Dが所定の距離(所定車間距離閾値Dth)以下となったか否かを判定する。
【0057】
車間距離Dは、図3に示したように、自車両100と先行車200との間の距離である。又、所定車間距離閾値Dthは、車間距離Dに係る閾値であって、本例においては、自車両100が先行車200に到達すると予測される時間(予測到達時間TTC)に基づいて設定される。即ち、予測到達時間TTCは、車間距離Dを先行車200に対する自車両100の相対速度ΔVで除して得られる値(TTC=D/ΔV)であり、自車両100と先行車200との衝突を回避するために最小限必要な予測到達時間TTCが所定予測到達時間TTCthとして設定されている。そして、車両制御装置10は、所定予測到達時間TTCthに相対速度ΔVを乗じて得られる値を所定車間距離閾値Dthとして設定するようになっている(Dth=TTCth・ΔV)。
【0058】
車両制御装置10は、ステップS240にて「Yes」と判定した場合、処理をステップS245に進め、衝突回避制御を実行し、その後、処理をステップS295に進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0059】
衝突回避制御は、当該衝突回避制御の開始時点における車間距離D及び自車速Vに基づいて自車両100が先行車200に衝突しないように自車両100を減速させる制御である。尚、先行車200が停止している場合には、自車両100は、衝突回避制御により先行車200に到達する前に停止される。
【0060】
一方、車両制御装置10は、ステップS235又はステップS240にて「No」と判定した場合、処理をステップS295に直接進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0061】
又、車両制御装置10は、ステップS205にて「No」と判定した場合も、処理をステップS295に直接進め、本ルーチンの処理を一旦終了する。
【0062】
以上が車両制御装置10の作動である。
【0063】
<効果>
自車両100が旋回を始めたときに自車両100の前方に先行車200が存在する場合において、自車両100の旋回開始から一定時間が経過するまでの間は、自車両100の挙動が安定していないため、ラップ率LAPの推定誤差が比較的大きく変化する。このため、自車両100が先行車200に衝突せずに先行車200の横を通過することができる場合であっても、ラップ率LAPが大きく見えてしまうことがある。従って、ラップ率閾値LAPthが小さい値に設定されていると、自車両100が先行車200の横を通過しようとして先行車200に近づいたときにラップ率LAPがラップ率閾値LAPth以上となって衝突回避制御が実行されてしまう可能性がある
【0064】
車両制御装置10によれば、自車両100が旋回を始めたときに自車両100の前方に先行車200が存在する場合において、衝突可能性条件が初めて成立してから所定時間(所定条件成立時間Tth)が経過するまでの間、ラップ率閾値LAPthが100%に近い比較的大きい値に設定され或いは100%に設定される。このため、自車両100の挙動が安定していない自車両100の旋回初期において、自車両100が先行車200に衝突しないにもかかわらず、衝突回避制御が実行されることを抑制することができる
【0065】
一方、自車両100の旋回開始から一定時間が経過すれば、自車両100の挙動が安定するので、ラップ率LAPの推定誤差が小さくなる。このため、ラップ率閾値LAPthが比較的大きい値に設定され或いは100%に設定されたままであると、自車両100が先行車200に衝突するにもかかわらず、衝突回避制御が実行されない可能性がある
【0066】
車両制御装置10によれば、自車両100の旋回開始から所定時間(所定条件成立時間Tth)が経過した後は、ラップ率閾値LAPthが小さい値に設定されるので、自車両100が先行車200に衝突する可能性が高い場合に衝突回避制御を確実に実行させることができる
【0067】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
【符号の説明】
【0068】
10…車両制御装置、20…駆動装置、30…制動装置、60…周辺情報検出装置、70…自車両位置検出装置、80…車両間通信装置、90…ECU、100…自車両、200…先行車

図1
図2
図3
図4