IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-運転支援装置 図1
  • 特許-運転支援装置 図2
  • 特許-運転支援装置 図3
  • 特許-運転支援装置 図4
  • 特許-運転支援装置 図5
  • 特許-運転支援装置 図6
  • 特許-運転支援装置 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-04
(45)【発行日】2025-08-13
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20250805BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20250805BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G06T7/00 650Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022181196
(22)【出願日】2022-11-11
(65)【公開番号】P2024070602
(43)【公開日】2024-05-23
【審査請求日】2024-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100187311
【弁理士】
【氏名又は名称】小飛山 悟史
(74)【代理人】
【識別番号】100161425
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】飯田 大貴
(72)【発明者】
【氏名】立住 優介
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-043784(JP,A)
【文献】特開2018-195301(JP,A)
【文献】特開2004-220348(JP,A)
【文献】特開2008-201311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員への報知を含む運転支援を行う運転支援装置であって、
前記車両に設けられた外部センサの検出結果に基づいて、前記車両の周囲を走行する他車両の揺らぎ量を認識する揺らぎ量認識部と、
前記車両に設けられた外部カメラの撮像画像に基づいて、前記他車両の運転者の異常を認識する運転者異常認識部と、
前記他車両の揺らぎ量と揺らぎ閾値との比較結果に基づいて、前記他車両が揺らぎ異常状態であるか否かを判定する異常状態判定部と、
前記揺らぎ異常状態に関する前記報知を行う報知制御部と、を備え、
前記異常状態判定部は、前記他車両の運転者の異常が認識された場合の前記揺らぎ閾値を、前記他車両の運転者の異常が認識されない場合の前記揺らぎ閾値と比べて小さい絶対値として、前記揺らぎ異常状態であるか否かを判定する、運転支援装置。
【請求項2】
前記他車両の運転者の異常が認識されない場合の前記揺らぎ閾値は、前記他車両の運転者に異常がなく且つ前記他車両の外部環境による前記他車両の揺らぎがある場合の前記他車両の揺らぎ量よりも大きくなるように予め設定されている、請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記揺らぎ量認識部は、前記外部カメラの撮像画像に基づいて、前記車両及び前記他車両の走路の路面状況を認識し、前記路面状況に基づいて前記他車両の揺らぎ量を補正する、請求項1又は2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記揺らぎ量認識部は、前記車両の通信部で受信した気象情報の風速が一定以上となった場合、前記風速に基づいて前記他車両の揺らぎ量を補正する、請求項1又は2に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記運転者異常認識部は、前記車両に設けられたリヤカメラの撮像画像に基づいて、前記他車両の正面視で前記他車両のフロントガラスを介して見える前記他車両の運転席を含む一定範囲内に前記他車両の運転者の頭部が存在していない場合に、前記他車両の運転者に異常があると推定する、請求項1又は2に記載の運転支援装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自車の後方を監視する監視手段を用いて取得した後方車両の挙動及び運転者の状況に基づいて運転パフォーマンスを算出し、自車の運転者に運転パフォーマンスに応じた報知を行う運転支援装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-293531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両に設けられた外部センサの検出結果に基づいて認識される他車両の揺らぎ量には、他車両の運転者の異常に起因する揺らぎ量のほか、例えば風又は路面状況等の外部環境に起因する揺らぎ量が含まれ得る。そのため、車両の乗員への報知を含む運転支援を他車両の揺らぎ量の原因に応じて行うことが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る運転支援装置は、車両の乗員への報知を含む運転支援を行う運転支援装置であって、車両に設けられた外部センサの検出結果に基づいて、車両の周囲を走行する他車両の揺らぎ量を認識する揺らぎ量認識部と、車両に設けられた外部カメラの撮像画像に基づいて、他車両の運転者の異常を認識する運転者異常認識部と、他車両の揺らぎ量と揺らぎ閾値との比較結果に基づいて、他車両が揺らぎ異常状態であるか否かを判定する異常状態判定部と、揺らぎ異常状態に関する報知を行う報知制御部と、を備え、異常状態判定部は、他車両の運転者の異常が認識された場合の揺らぎ閾値を、他車両の運転者の異常が認識されない場合の揺らぎ閾値と比べて小さい絶対値として、揺らぎ異常状態であるか否かを判定する。
【0006】
本発明の一態様に係る運転支援装置では、他車両の運転者の異常が認識された場合の揺らぎ閾値を、他車両の運転者の異常が認識されない場合の揺らぎ閾値と比べて小さい絶対値として、揺らぎ異常状態であるか否かが判定される。これにより、他車両の運転者の異常が認識されておらず且つ他車両が例えば風又は路面状況等の外部環境に起因して揺らいでいる場合と、他車両の運転者の異常が認識された場合と、で同程度の揺らぎ量であったとしても、他車両の運転者の異常が認識された場合の方が揺らぎ異常状態であると判定されやすくなる。よって、本発明の一態様に係る運転支援装置によれば、車両の乗員への報知を含む運転支援を他車両の揺らぎ量の原因に応じて行うことができる。
【0007】
一実施形態において、揺らぎ量認識部は、外部カメラの撮像画像に基づいて、車両及び他車両の走路の路面状況を認識し、路面状況に基づいて他車両の揺らぎ量を補正してもよい。この場合、路面状況に基づいて補正した揺らぎ量を用いることで、他車両が揺らぎ異常状態であるか否かを路面状況に応じてより適切に判定することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、車両の乗員への報知含む運転支援を他車両の揺らぎ量の原因に応じて適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る運転支援装置の構成を示すブロック図である。
図2】自車両と他車両との関係を例示する平面図である。
図3】他車両の運転者の異常が認識されていない場合の揺らぎ閾値を例示する図である。
図4】他車両の運転者の異常が認識された場合の揺らぎ閾値を例示する図である。
図5図1の運転支援装置の処理の一例を示すフローチャートである。
図6】他車両の運転者の異常が認識された場合において路面状況に応じて補正された揺らぎ閾値を例示する図である。
図7】変形例に係る運転支援装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当要素には同一符号を用い、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、実施形態に係る運転支援装置の構成を示すブロック図である。図1に示す運転支援装置100は、乗用車などの車両に搭載され、車載の各種センサの検出結果に基づいて車両を制御する。車両の制御には、運転支援制御、運転者(乗員)に対する報知等のHMI制御が含まれる。車両の制御には、自動運転制御が含まれてもよい。自動運転制御とは、目標ルートに沿って自動で車両を走行させる車両制御である。自動運転制御では、運転者が運転操作を行う必要が無く、車両が自動で走行する。運転支援制御とは、運転者による車両の運転を支援する車両制御である。運転者に対する報知等のHMI制御については後述する。
【0012】
[運転支援装置の構成]
図1に示すように、運転支援装置100は、システムを統括的に管理するECU[Electronic Control Unit]10を備えている。ECU10は、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]、CAN[Controller Area Network]通信回路などを有する電子制御ユニットである。ECU10では、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。ECU10は、複数の電子ユニットから構成されていてもよい。
【0013】
ECU10は、外部センサ1、内部センサ3、地図データベース4、アクチュエータ6、及び、HMI[Human Machine Interface]6と接続されている。
【0014】
外部センサ1は、自車両(車両)の周辺の状況を検出する検出機器である。外部センサ1は、外部カメラ2を含む。外部センサ1は、レーダセンサを含んでもよい。
【0015】
外部カメラ2は、自車両の外部状況を撮像する撮像機器である。外部カメラ2は、フロントカメラ2a及びリヤカメラ2bを含む。フロントカメラ2aは、自車両のフロントガラスの裏側に設けられている。リヤカメラ2bは、自車両のリヤガラスの裏側に設けられている。リヤカメラ2bは、例えば電子インナーミラー用のカメラであり、駐車用のリヤビューカメラよりも高画質である。外部カメラ2は、自車両の側方の外部状況を撮像するカメラを含んでもよい。外部カメラ2は、自車両の外部状況に関する撮像情報をECU10へ送信する。外部カメラ2は、単眼カメラであってもよく、ステレオカメラであってもよい。ステレオカメラは、両眼視差を再現するように配置された二つの撮像部を有している。ステレオカメラの撮像情報には、奥行き方向の情報も含まれている。
【0016】
レーダセンサは、電波(例えばミリ波)又は光を利用して自車両の周辺の物体を検出する検出機器である。レーダセンサには、例えば、ミリ波レーダ又はライダー[LIDAR:Light Detection and Ranging]が含まれる。レーダセンサは、電波又は光を自車両の周辺に送信し、物体で反射された電波又は光を受信することで物体を検出する。レーダセンサは、検出した物体情報をECU10へ送信する。物体には、ガードレール、建物などの固定障害物の他、歩行者、自転車、他車両などの移動障害物が含まれる。
【0017】
内部センサ3は、自車両の車両状態を検出するための検出機器である。内部センサ3は、車速センサ、加速度センサ、及びヨーレートセンサを含む。車速センサは、自車両の速度を検出する検出器である。車速センサは、検出した車速情報(車輪速情報)をECU10に送信する。加速度センサは、自車両の加速度を検出する検出器である。加速度センサは、自車両の加速度情報をECU10に送信する。ヨーレートセンサは、自車両の重心の鉛直軸周りのヨーレート(回転角速度)を検出する検出器である。ヨーレートセンサとしては、例えばジャイロセンサを用いることができる。ヨーレートセンサは、検出した自車両のヨーレート情報をECU10へ送信する。
【0018】
地図データベース4は、地図情報を記憶するデータベースである。地図データベース4は、例えば、自車両に搭載されたHDD[Hard Disk Drive]内に形成されている。地図情報には、道路の位置情報、道路形状の情報(例えばカーブ、直線部の種別、カーブの曲率など)、交差点及び分岐点の位置情報、及び構造物の位置情報などが含まれる。地図情報には、例えば、横風及び不整路面等で走行する車両が揺らぎやすい場所である旨の情報も含まれていてもよい。なお、地図データベース4は、自車両と通信可能な管理センターなどに設けられていてもよい。
【0019】
通信部5は、自車両の外部との無線通信を制御する通信デバイスである。通信部5は、例えば、通信ネットワークを介してサーバと各種情報の通信を行う。通信部5は、車車間通信を行ってもよい。通信部5としては特に限定されず、種々の公知の通信デバイスを用いることができる。
【0020】
アクチュエータ6は、自車両の制御に用いられる機器である。アクチュエータ6は、駆動アクチュエータ、ブレーキアクチュエータ、及び操舵アクチュエータを少なくとも含む。駆動アクチュエータは、ECU10からの制御信号に応じてエンジン又はモータ等を制御し、自車両の駆動力を制御する。ブレーキアクチュエータは、ECU10からの制御信号に応じてブレーキシステムを制御し、自車両の車輪へ付与する制動力を制御する。ブレーキシステムとしては、例えば、液圧ブレーキシステムを用いることができる。操舵アクチュエータは、電動パワーステアリングシステムのうち操舵トルクを制御するアシストモータの駆動を、ECU10からの制御信号に応じて制御する。これにより、操舵アクチュエータは、自車両の操舵トルクを制御する。
【0021】
HMI7は、運転支援装置100と自車両の運転者との間で情報の入出力を行うためのインターフェイスである。HMI7は、例えば、運転者から見える位置に設けられたディスプレイと、自車両のドアの車室内側に設けられたスピーカと、を含んでもよい。HMI7は、ECU10からの制御信号に応じて、ディスプレイの画像出力及びスピーカからの音声出力を行う。ディスプレイは、自車両のフロントガラスに投影表示を行うHUD[Head Up Display]であってもよい。ディスプレイは、MID[Multi Information Display]やLED等の光源を出力するデバイスであってもよい。ステアリング、ペダル、シート等を振動させて自車両の運転者に体感的な刺激を与える手段でもよい。
【0022】
次に、ECU10の機能的構成について説明する。ECU10は、外部環境認識部11、揺らぎ量認識部12、運転者異常認識部13、異常状態判定部14、報知制御部15、及び、車両制御部16を有している。以下に説明するECU10の機能の一部は、自車両と通信可能な管理センターなどの施設のサーバにおいて実行される態様であってもよい。
【0023】
外部環境認識部11は、外部センサ1及び外部カメラ2の検出結果に基づいて、自車両の外部環境を認識する。外部環境には、路面状況、自車両に対する他車両の位置、自車両に対する他車両の相対速度、自車両に対する他車両の移動方向などが含まれる。外部環境認識部11は、レーダセンサの物体情報及び外部カメラ2の撮像画像等に基づいて、周知の手法により、自車両の外部環境を認識する。
【0024】
揺らぎ量認識部12は、自車両に設けられた外部センサ1の検出結果に基づいて、自車両の周囲を走行する他車両の揺らぎ量を認識する。他車両の揺らぎ量は、他車両の挙動の大きさを意味し、他車両の異常を有無を判定するために用いられる。他車両の揺らぎ量は、他車両が車幅方向に蛇行する際の車幅方向の振れ幅であってもよい。車幅方向の振れ幅は、例えば、リヤカメラ2bの撮像画像中の他車両の他車両の揺らぎ量は、他車両が進行方向に急加速する際の他車両の前後加速度であってもよい。
【0025】
図2は、自車両と他車両との関係を例示する平面図である。図2では、一例として、自車両20及び他車両30が走路50の同じ車線を走行している状況を想定する。図2に示されるように、自車両20のリヤカメラ2bによって、他車両30が撮像される。リヤカメラ2bの撮像画像には、他車両30が正面視で映っている。揺らぎ量認識部12は、例えば、リヤカメラ2bの撮像画像の時系列データにおいて他車両30の車幅方向への移動量を振れ幅として、他車両30が車幅方向に蛇行する際の揺らぎ量を認識する。揺らぎ量認識部12は、例えば、レーダセンサで検出した物体情報及び自車両20の内部センサ3の検出結果に基づいて、他車両が進行方向に急加速する際の他車両の前後加速度を認識してもよい。
【0026】
揺らぎ量認識部12は、自車両20の外部カメラ2の撮像画像に基づいて、自車両20の前方の轍(路面状況)51を認識し、轍51に基づいて他車両30の揺らぎ量を補正してもよい。例えば、図2に示されるように、自車両20のフロントカメラ2aによって、自車両20の前方の轍51が撮像される。この轍51によって自車両20及び他車両30のタイヤが取られると、轍51によって自車両20が一定の揺らぎ量で車幅方向に移動すると共に、後続の他車両30も轍51によって一定の揺らぎ量で車幅方向に移動する。この場合、自車両20が車幅方向に移動する影響が他車両30の揺らぎ量と同位相となると、自車両20から見た他車両30の揺らぎ量が見かけ上小さくなる可能性がある。
【0027】
そこで、揺らぎ量認識部12は、自車両20のフロントカメラ2aの撮像画像に基づいて自車両20の前方の轍(路面状況)51を認識した場合、轍51に基づいて他車両30の揺らぎ量を補正してもよい。揺らぎ量認識部12は、例えば、認識した轍51上を自車両20が走行している間の他車両30の揺らぎ量に所定の補正量を加算してもよい。所定の補正量は、自車両20の挙動の影響で他車両30の異常を認識しづらくなることを抑制するための他車両30の揺らぎ量の補正値である。所定の補正量は、他車両30の異常を認識しやすくなるように、自車両20の挙動の平均的な揺らぎ量とすることができる。
【0028】
揺らぎ量認識部12は、轍51の例と同様にして、自車両20の揺らぎ量が一定以上となった場合、又は、通信部5で受信した気象情報の風速が一定以上となった場合等においても、他車両30の揺らぎ量を補正してもよい。自車両20の揺らぎ量は、外部カメラ2の撮像画像に基づいて認識されてもよい。
【0029】
運転者異常認識部13は、自車両20に設けられた外部カメラ2の撮像画像に基づいて、他車両30の運転者31の異常を認識する。運転者異常認識部13は、例えば、自車両20に設けられたリヤカメラ2bの撮像画像における他車両30の運転者31の頭部の位置に基づいて、他車両30の運転者31の異常を認識する。図2に示されるように、自車両20のリヤカメラ2bによって、他車両30の運転者31が撮像される。運転者31が正常に他車両30を運転している場合には、運転者31の頭部は、他車両30の正面視で他車両30のフロントガラスを介して見える運転席を含む一定範囲内に存在する。そのため、例えば運転者31の上体が倒れている等、運転者31の頭部が当該一定範囲内に存在していない場合には、他車両30の運転者31に異常があると推定することができる。
【0030】
なお、例えばリヤカメラ2bが電子インナーミラー用のカメラよりも高解像度となり、他車両30の運転者31の視線情報を認識可能となった場合には、運転者異常認識部13は、リヤカメラ2bの撮像画像における他車両30の運転者31の視線方向等に基づいて、他車両30の運転者31の異常を認識してもよい。他車両30の運転者31の視線情報は、例えば自車両20におけるドライバモニタカメラを用いた視線認識と同様の手法を用いて認識されてもよい。
【0031】
運転者異常認識部13は、外部カメラ2の撮像画像に加えて、通信部5を介して取得した他車両30の情報に基づいて、他車両30の運転者31の異常を認識してもよい。通信部5は、他車両30の運転者情報を含む信号を、他車両30から車車間通信によって受信する。他車両30の運転者情報は、他車両30のドライバモニタカメラの撮像画像に基づく運転者31の姿勢並びに視線等の情報、運転者31のステアリングの把持力、運転者31のステアリング操作の時系列データ、及び、運転者31のペダル操作の時系列データ等が含まれてもよい。
【0032】
異常状態判定部14は、他車両30の揺らぎ量と揺らぎ閾値との比較結果に基づいて、他車両30が揺らぎ異常状態であるか否かを判定する。揺らぎ異常状態は、他車両30が一定以上のふらつき又は急加速を伴う異常な走行をしている状態である。揺らぎ閾値は、揺らぎ異常状態であるか否かを判定するための他車両30の揺らぎ量の閾値である。異常状態判定部14は、例えば、他車両30の揺らぎ量が揺らぎ閾値よりも大きい場合に、他車両30が揺らぎ異常状態であると判定する。異常状態判定部14は、例えば、他車両30の揺らぎ量が揺らぎ閾値以下である場合に、他車両30が揺らぎ異常状態ではないと判定する。
【0033】
揺らぎ異常状態は、主に他車両30の運転者31の異常に起因するが、風又は路面状況等の外部環境によっても生じ得る。そこで、異常状態判定部14は、他車両30の揺らぎ量の原因に応じて揺らぎ閾値を変更することで、揺らぎ異常状態であるか否かを当該原因に応じて判定する。
【0034】
図3は、他車両の運転者の異常が認識されていない場合の揺らぎ閾値を例示する図である。図3において、横軸は時間であり、縦軸は他車両の揺らぎ量である。図3には、複数の模式的な揺らぎ量の例が示されている。図3の揺らぎ量の描画は、説明を単純化するための一例であり、例えば所定時間の期間中に認識された揺らぎ量の最大値を描いた結果、原点から揺らぎ量が増加してそれぞれある値で一定になっている。本段落の説明は、図4及び図6についても同様である。
【0035】
図3において、揺らぎ量FL0は、他車両30が一定以上のふらつきも急加速もしていない正常な走行をしている状態での他車両30の揺らぎ量である。揺らぎ量FL1は、他車両30が一定以上のふらつき又は急加速を伴う異常な走行をしている状態での他車両30の揺らぎ量である。揺らぎ量FL9は、他車両30の運転者31に異常がなく他車両30が一定以上のふらつきも急加速もしていない正常な走行をしているものの、風又は路面状況等の外部環境によってふらついている状態での他車両30の揺らぎ量である。
【0036】
他車両30が風又は路面状況等の外部環境のみによってふらついている状態では、揺らぎ異常状態が判定されると、後述の報知制御部15によって自車両20の乗員にとって不要な報知がなされる可能性がある。そこで、揺らぎ閾値Th1は、他車両30の運転者31に異常がなく他車両30が一定以上のふらつきも急加速もしていない正常な走行をしているものの、風又は路面状況等の外部環境によってふらついている状態での他車両30の揺らぎ量よりも大きく設定されている。揺らぎ閾値Th1は、予め設定された値であり、例えば、他車両30の運転者31の異常が認識されたか否かに応じて異常状態判定部14によって他の閾値(後述)と切り替えられる。これにより、異常状態判定部14は、揺らぎ閾値Th1よりも大きい揺らぎ量FL1について、他車両30が揺らぎ異常状態であると判定する。異常状態判定部14は、揺らぎ閾値Th1以下である揺らぎ量FL9,FL0について、他車両30が揺らぎ異常状態ではないと判定する。
【0037】
図4は、他車両の運転者の異常が認識された場合の揺らぎ閾値を例示する図である。図4において、揺らぎ量FL0及び揺らぎ量FL1は、図3に示される揺らぎ量と同じである。揺らぎ量FL2は、他車両30が一定以上のふらつきも急加速もしていない走行をしているものの、他車両30の運転者31に異常が生じている状態での他車両30の揺らぎ量である。揺らぎ量FL2に対応する状況としては、例えば、他車両30にて運転支援制御又は自動運転制御を実行中であるものの、他車両30の運転者31に異常があることにより、他車両30の揺らぎ量が揺らぎ量FL2のレベルにまで大きくなっている状況が挙げられる。揺らぎ量FL2は、風又は路面状況等の外部環境による揺らぎ量を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0038】
揺らぎ量FL2では、他車両30の運転者31に異常が生じているため、今後、他車両30の揺らぎ量が揺らぎ量FL1のレベルにまで大きくなる可能性がある。そこで、ECU10は、他車両30が揺らぎ異常状態であると判定しやすくなるように、揺らぎ閾値を変更する。すなわち、異常状態判定部14は、他車両30の運転者31の異常が認識された場合の揺らぎ閾値Th2を、他車両30の運転者31の異常が認識されない場合の揺らぎ閾値Th1と比べて小さい絶対値として、揺らぎ異常状態であるか否かを判定する。揺らぎ閾値Th2は、予め設定された揺らぎ閾値Th1よりも小さい値であり、事前のテスト走行等の結果に基づいて設定することができる。
【0039】
これにより、図4の例では、揺らぎ量FL2は、図3の揺らぎ量FL9と同等のレベルである。他車両30の運転者31の異常が認識されたか否かに基づいて揺らぎ閾値が変更されることで、図3の例では揺らぎ異常状態ではないと判定され、図4の例では揺らぎ異常状態であると判定されることとなる。
【0040】
報知制御部15は、自車両20の乗員への報知を行う。報知制御部15は、例えば、HMI7に制御信号を送信することで、ディスプレイの画像表示及びスピーカからの音声出力の少なくとも一方によって運転者に対する報知を行う。報知制御部15は、自車両20のステアリングホイールの振動、シートの振動、シートベルトの振動、ペダルの振動または反力等も組み合わせて運転者に対する報知を行ってもよい。
【0041】
報知制御部15は、異常状態判定部14によって他車両30が揺らぎ異常状態であると判定された場合、自車両20の乗員への揺らぎ異常状態に関する報知を行う。報知制御部15は、他車両30の揺らぎ量が揺らぎ閾値よりも大きい場合に、自車両20の乗員への揺らぎ異常状態に関する報知を行う。
【0042】
車両制御部16は、自車両20の運転支援制御及び自動運転制御を含む車両制御を実行することができる。車両制御部16は、アクチュエータ6に制御信号を送信することで自車両20を制御する。運転支援制御では、自車両20が目標走行軌跡に沿って走行するように運転支援(操舵量の付与や操舵反力及び車速・加減速の変更)が行われる。自動運転制御では、自車両20が目標走行軌跡に沿って走行するように車両が制御される。
【0043】
車両制御には、自車両20の回避制御が含まれる。回避制御は、自車両20に対する危険を自動で回避するための制御である。回避制御には、車線変更、障害物回避制御、加速制御、路肩への停止制御(退避)が含まれる。車両制御部16は、異常状態判定部14によって他車両30が揺らぎ異常状態であると判定された場合、自車両20の乗員に回避制御の提案をしてもよい。車両制御部16は、危険の回避に緊急を要する場合、提案を省いて自車両20の回避制御を実行してもよい。
【0044】
[ECUによる演算処理の一例]
次に、ECU10による演算処理の一例について説明する。図5は、図1の運転支援装置の処理の一例を示すフローチャートである。図5に示される処理は、例えば自車両20の走行中の走行中に、所定周期で繰り返し行われる。
【0045】
図5に示されるように、ECU10は、ステップS11において、揺らぎ量認識部12により、他車両の揺らぎ量の認識を行う。揺らぎ量認識部12は、自車両20に設けられた外部センサ1又は外部カメラ2の検出結果に基づいて、自車両20の周囲を走行する他車両30の揺らぎ量を認識する。
【0046】
ECU10は、ステップS12において、揺らぎ量認識部12により、自車両20の外部環境の認識及び他車両30の揺らぎ量の補正を行う。揺らぎ量認識部12は、例えば、外部カメラ2の撮像画像に基づいて、自車両20及び他車両30の走路50の路面状況を認識し、路面状況に基づいて他車両30の揺らぎ量を補正する。
【0047】
ECU10は、ステップS13において、異常状態判定部14により、他車両30の揺らぎ量と揺らぎ閾値との比較を行う。異常状態判定部14は、例えば、他車両30の揺らぎ量が揺らぎ閾値Th1よりも大きいか否かを判定する。
【0048】
ECU10は、異常状態判定部14により他車両30の揺らぎ量が揺らぎ閾値Th1よりも大きいと判定された場合(ステップS13:YES)、ステップS14に移行する。ECU10は、ステップS14において、異常状態判定部14により、他車両30が揺らぎ異常状態であるとの判定を行う。つまり、異常状態判定部14は、他車両30の揺らぎ量と揺らぎ閾値との比較結果に基づいて、他車両30が揺らぎ異常状態であるか否かを判定する。
【0049】
ECU10は、ステップS15において、報知制御部15により、揺らぎ異常状態に関する報知を実行する。報知制御部15は、例えば、自車両20に設けられたHMI7を用いて、自車両20の乗員に対して揺らぎ異常状態に関する画像の表示又は音声の出力等を行う。その後、ECU10は、図5の処理を終了する。
【0050】
他方、ECU10は、異常状態判定部14により他車両30の揺らぎ量が揺らぎ閾値Th1以下であると判定された場合(ステップS13:NO)、ステップS16に移行する。ECU10は、ステップS16において、運転者異常認識部13により、他車両30の運転者の異常の認識を行う。運転者異常認識部13は、自車両20に設けられた外部カメラ2の撮像画像に基づいて、他車両30の運転者の異常を認識する。
【0051】
ECU10は、ステップS17において、異常状態判定部14により、他車両30の運転者31の異常を認識したか否かの判定を行う。ECU10は、異常状態判定部14により他車両30の運転者31の異常を認識したと判定された場合(ステップS17:YES)、ステップS18に移行する。一方、ECU10は、異常状態判定部14により他車両30の運転者31の異常を認識していないと判定された場合(ステップS17:NO)、ステップS19に移行する。
【0052】
ECU10は、ステップS18において、異常状態判定部14により、他車両30の揺らぎ量と揺らぎ閾値との比較を行う。異常状態判定部14は、例えば、他車両30の揺らぎ量が揺らぎ閾値Th2よりも大きいか否かを判定する。
【0053】
ECU10は、異常状態判定部14により他車両30の揺らぎ量が揺らぎ閾値Th2よりも大きいと判定された場合(ステップS18:YES)、上述のステップS14に移行する。ECU10は、上述のステップS14において、異常状態判定部14により、他車両30が揺らぎ異常状態であるとの判定を行う。つまり、異常状態判定部14は、他車両30の揺らぎ量と揺らぎ閾値との比較結果に基づいて、他車両30が揺らぎ異常状態であるか否かを判定する。
【0054】
一方、ECU10は、異常状態判定部14により他車両30の揺らぎ量が揺らぎ閾値Th2以下であると判定された場合(ステップS18:NO)、ステップS19に移行する。ECU10は、ステップS19において、異常状態判定部14により、他車両30が揺らぎ異常状態ではないとの判定を行う。その後、ECU10は、図5の処理を終了する。
【0055】
以上説明した運転支援装置100によれば、他車両30の運転者31の異常が認識された場合の揺らぎ閾値Th2を、他車両30の運転者31の異常が認識されない場合の揺らぎ閾値Th1と比べて小さい絶対値として、揺らぎ異常状態であるか否かが判定される。これにより、他車両30の運転者31の異常が認識されておらず且つ他車両30が例えば風又は路面状況等の外部環境に起因して揺らいでいる場合の揺らぎ量FL9と、他車両30の運転者31の異常が認識された場合の揺らぎ量FL2と、が同程度であったとしても、他車両30の運転者31の異常が認識された場合の方が揺らぎ異常状態であると判定されやすくなる。よって、運転支援装置100によれば、自車両20の乗員への報知を含む運転支援を他車両30の揺らぎ量の原因に応じて行うことができる。
【0056】
揺らぎ量認識部12は、外部カメラ2の撮像画像に基づいて、自車両20及び他車両30の走路50の路面状況を認識し、路面状況に基づいて他車両30の揺らぎ量を補正する。これにより、路面状況に基づいて補正した揺らぎ量FL2を用いることで、他車両30が揺らぎ異常状態であるか否かを路面状況に応じてより適切に判定することができる。
【0057】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。本発明は、上述した実施形態を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した様々な形態で実施することができる。
【0058】
上記実施形態では、揺らぎ量認識部12は、例えば、路面状況に基づいて他車両30の揺らぎ量を補正したが、揺らぎ閾値を補正してもよい。図6は、他車両の運転者の異常が認識された場合において路面状況に応じて補正された揺らぎ閾値を例示する図である。図6において、揺らぎ量FL0及び揺らぎ量FL1は、図3及び図4に示される揺らぎ量と同じである。揺らぎ量FL3は、例えば、図2の轍51の影響により、自車両20が車幅方向に移動する影響が他車両30の揺らぎ量と同位相となった結果、自車両20から見た他車両30の揺らぎ量が揺らぎ量FL2よりも見かけ上小さくなった揺らぎ量である。そこで、ECU10は、見かけ上小さくなった揺らぎ量FL3でも他車両30が揺らぎ異常状態であると判定しやすくなるように、揺らぎ閾値を揺らぎ閾値Th2から揺らぎ閾値Th3に変更してもよい。すなわち、異常状態判定部14は、外部カメラ2の撮像画像に基づいて、自車両20及び他車両30の走路50の路面状況を認識し、路面状況に基づいて揺らぎ閾値を補正してもよい。揺らぎ閾値Th3は、例えば、事前のテスト走行等の結果に基づいて予め設定することができる。
【0059】
図7は、変形例に係る運転支援装置100の処理を示すフローチャートである。図7に示される処理は、例えば自車両20の走行中に、所定周期で繰り返し行われる。図7のフローチャートにおいて、ステップS12A及びS18Aが、図5のフローチャートと異なっており、その他の処理は同じである。
【0060】
ECU10は、ステップS12Aにおいて、揺らぎ量認識部12により、自車両20の外部環境の認識及び揺らぎ閾値の補正を行う。揺らぎ量認識部12は、例えば、外部カメラ2の撮像画像に基づいて、自車両20及び他車両30の走路50の路面状況を認識し、路面状況に基づいて揺らぎ閾値を補正する。図6の例では、揺らぎ量認識部12は、路面状況に基づいて、図4の揺らぎ閾値Th2を揺らぎ閾値Th3に補正している。
【0061】
ECU10は、ステップS18Aにおいて、異常状態判定部14により、他車両30の揺らぎ量と揺らぎ閾値との比較を行う。異常状態判定部14は、例えば、他車両30の揺らぎ量が揺らぎ閾値Th3よりも大きいか否かを判定する。
【0062】
ECU10は、異常状態判定部14により他車両30の揺らぎ量が揺らぎ閾値Th3よりも大きいと判定された場合(ステップS18A:YES)、上述のステップS14に移行する。一方、ECU10は、異常状態判定部14により他車両30の揺らぎ量が揺らぎ閾値Th3以下であると判定された場合(ステップS18A:NO)、ステップS19に移行する。
【0063】
以上説明した変形例に係る運転支援装置100によれば、揺らぎ量認識部12は、外部カメラ2の撮像画像に基づいて、自車両20及び他車両30の走路50の路面状況を認識し、路面状況に基づいて他車両30の揺らぎ閾値を補正する。これにより、路面状況に基づいて補正した揺らぎ閾値Th3を用いることで、他車両30が揺らぎ異常状態であるか否かを路面状況に応じてより適切に判定することができる。
【0064】
上記実施形態では、運転支援装置100は、自動運転制御を実行可能であったが必須ではなく、少なくとも自車両20の乗員への報知のみを実行可能であればよい。
【0065】
上記実施形態では、異常状態判定部14は、例えば、他車両30の揺らぎ量が揺らぎ閾値よりも大きい場合に、他車両30が揺らぎ異常状態であると判定したが、これに限定されない。揺らぎ量は、例えば、他車両30の揺らぎ量が揺らぎ閾値よりも小さい場合に他車両30が揺らぎ異常状態であると判定されるように、符号付き等の定義がされてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…外部センサ、2…外部カメラ、12…揺らぎ量認識部、13…運転者異常認識部、14…異常状態判定部、15…報知制御部、20…自車両(車両)、30…他車両、31…運転者、50…走路、51…轍(路面状況)、100…運転支援装置、FL0,FL1,FL2,FL3,FL9…揺らぎ量、Th1,Th2,Th3…揺らぎ閾値。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7