(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-04
(45)【発行日】2025-08-13
(54)【発明の名称】折り畳み椅子
(51)【国際特許分類】
A47C 9/00 20060101AFI20250805BHJP
A47C 4/04 20060101ALI20250805BHJP
【FI】
A47C9/00 Z
A47C4/04 Z
(21)【出願番号】P 2021125671
(22)【出願日】2021-07-30
【審査請求日】2024-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000010054
【氏名又は名称】岐阜プラスチック工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】新海 達也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 紘規
【審査官】丸山 裕樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2006/0282945(US,A1)
【文献】実開昭56-064369(JP,U)
【文献】実開昭59-134443(JP,U)
【文献】特開2019-113577(JP,A)
【文献】実開平05-088353(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0165884(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 1/00 - 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面板と、前記背面板に連設された座面板と、前記背面板の幅方向両端部のそれぞれに取り付けられた一対の側面板とを有し、使用状態と折り畳み状態とに形状変化可能な折り畳み椅子であって、
前記座面板は、前記背面板に交差する方向に延び
る連結板を介して前記背面板に連設され、
前記背面板と前記連結板と前記座面板とが一体に形成された本体と、前記本体とは別体に形成された前記側面板を備え、
前記本体及び前記側面板は、内部に複数のセルが並設された熱可塑性樹脂製の中空板材で形成され、
前記座面板の前端部には、幅方向に延びる補強部材が取り付けられ、
前記側面板は
、ヒンジ部材によって前記背面板に対して回動可能に取り付けられ、
前記座面板と前記連結板との間には、中空板材を熱溶融してなる座面ヒンジ部が形成されて、前記座面板は前記連結板に対して回動可能に連設され、
使用状態では、一対の前記側面板が、前記背面板に対して交差するように位置するとともに一対の前記側面板の上部に前記座面板が載置され、
折り畳み状態では、一対の前記側面板が前記連結板の下部で前記背面板に対して対向配置されるとともに、前記座面板が前記背面板に対して対向配置さ
れ、
前記連結板の下面の前後方向の長さは、折り畳み状態の前記側面板の厚みの合計より少し長いことを特徴とする折り畳み椅子。
【請求項2】
使用状態で、前記座面板に対して前記側面板を位置決めする構成が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の折り畳み椅子。
【請求項3】
使用状態で前記背面板に対向配置される前面板をさらに備え、
前記前面板は、前記側面板と一体に形成され、
前記前面板と前記側面板との間には、中空板材を熱溶融してなる前面ヒンジ部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の折り畳み椅子。
【請求項4】
前記側面板には、中空板材を熱溶融してなる側面ヒンジ部が上下方向に延びるように形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の折り畳み椅子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳み椅子に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の出入口で靴を履いたり脱いだりする際に、高齢者、幼児が使用するような折り畳み椅子が知られている。建物の出入口はスペースが限られるため、椅子を折り畳み可能とすることで専有面積の省スペース化を図ることができて有用である。
【0003】
特許文献1には、建物の出入口、風呂場、部屋等の適所において、身体的衰え等によって支えが必要な場合に使用し易い折り畳み可能なエントランスベンチに係る発明が記載されている。このエントランスベンチは、左右一対の側板と、側板に対して水平位置から垂直位置に起伏自在に枢支された座面板と、座面板を水平位置に保持する一対の脚板を備えている。座面板と脚板とはリンク機構で連結されている。座面板を持ち上げて垂直位置とすると、リンク機構を介して一対の脚板が内側に閉じる。これにより、閉じた一対の脚板の上に座面板が垂直状態で位置する折り畳み状態となる。また、座面板を下げて水平位置とすると、リンク機構を介して一対の脚板が外側へ開いて座面板を下支えする。これにより、開いた一対の脚板の上に座面板が水平状態で載置された使用状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるエントランスベンチは、折り畳み状態では、閉じた一対の脚板の上に座面板が垂直状態で位置している。また、座面板と脚板とを連結するリンク機構は、座面板の外側に露出している。そのため、折り畳み状態では、一対の脚板や側面板の間に埃やゴミが入り込み易く、リンク機構にも埃やゴミが付着し易い。そのため、内部に入り込んだ埃やゴミや、リンク機構に付着した埃やゴミ等を取り除いたり拭き取ったりする必要があり、メンテナンスに手間がかかるといった問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の折り畳み椅子は、背面板と、前記背面板に連設された座面板と、前記背面板の幅方向両端部のそれぞれに取り付けられた一対の側面板とを有し、使用状態と折り畳み状態とに形状変化可能な折り畳み椅子である。前記座面板は、前記背面板に交差する方向に延びて該背面板と一体に形成された連結板を介して前記背面板に連設され、前記側面板は前記背面板に対して回動可能に取り付けられ、前記座面板は前記連結板に対して回動可能に連設され、使用状態では、一対の前記側面板が、前記背面板に対して交差するように位置するとともに一対の前記側面板の上部に前記座面板が載置され、折り畳み状態では、一対の前記側面板が前記連結板の下部で前記背面板に対して対向配置されるとともに、前記座面板が前記背面板に対して対向配置される。
【0007】
ここで、背面板とは、折り畳み椅子を使用状態としたときに、使用者の背中側に位置する板材である。座面板とは、座面を構成する板材である。側面板とは、使用者の両側に位置する板材である。また、背面板の幅方向両端部とは、背面板の幅方向両端縁のみならず、幅方向両端縁近傍の位置を含む。
【0008】
上記の構成によれば、折り畳み状態では、連結板の下部であって、対向配置された座面板と背面板との間に一対の側面板が収納された状態となる。そのため、折り畳み状態で対向配置された一対の側面板と背面板の間の上部、対向配置された座面板と背面板の間の上部が連結板で覆われることになる。座面板と背面板で囲まれた内部空間への埃やゴミの侵入が抑制される。また、背面板、連結板、座面板で囲まれた外面の拭き掃除等をすることで、折り畳み状態の折り畳み椅子を清潔に保持することができる。メンテナンス性に優れた折り畳み椅子が得られる。
【0009】
上記の構成において、前記背面板、前記連結板、前記座面板、及び前記側面板は、内部に複数のセルが並設された熱可塑性樹脂製の中空板材で形成され、前記座面板は前記連結板と一体に形成され、前記座面板と前記連結板との間には、中空板材を熱溶融してなる座面ヒンジ部が形成されていることが好ましい。
【0010】
上記の構成によれば、折り畳み椅子を構成する各板材が、熱可塑性樹脂製の中空板材で形成されている。そのため、軽量でありながら高強度である。使用状態と折り畳み状態との形状変化が容易であり、耐久性にも優れている。また、連結板に対して回動可能に連設された座面板は、中空板材が熱溶融されて形成された座面ヒンジ部を介して連結板と一体に形成されている。連結板と座面板とが一枚の中空板材で形成されているため、その構造が簡略化される。さらに、座面ヒンジ部は、連結板に対する座面板の回動軸として機能する。回動軸としての座面ヒンジ部が、中空板材の熱溶融により形成されていることにより、座面ヒンジ部での熱可塑性樹脂の密度が他の部分に比べて高くなっている。そのため、座面板が回動する際の強度を保持することができる。
【0011】
上記の構成において、使用状態で前記背面板に対向配置される前面板をさらに備え、前記前面板は、前記側面板と一体に形成され、前記前面板と前記側面板との間には、中空板材を熱溶融してなる前面ヒンジ部が形成されていることが好ましい。
【0012】
上記の構成によれば、使用状態では、前面板が座面板の前面側で座面板を下支えする。そのため、使用状態での折り畳み椅子の強度が向上する。また、前面板は側面板と一体に形成されているため、その構造が簡略化される。さらに、前面ヒンジ部では、熱可塑性樹脂の密度が他の部分に比べて高くなり、前面板が回動する際の強度を保持することができる。
【0013】
上記の構成において、前記側面板には、中空板材を熱溶融してなる側面ヒンジ部が上下方向に延びるように形成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、側面板を側面ヒンジ部で折り曲げて折り畳み状態とすることができる。そのため、折り畳み状態としたとき、一対の側面板同士が重なり合わないような状態とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、メンテナンス性に優れた折り畳み椅子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2】折り畳み椅子の折り畳み状態の斜視図である。
【
図8】(a)は吸音構造体の部分斜視図である。(b)は(a)におけるβ-β線断面である。(c)は(a)におけるγ-γ線断面図である。
【
図9】(a)~(c)は中空板材の製造方法について説明する図である。
【
図10】(a)~(c)は折り畳み椅子の使用例について説明する図である。
【
図11】変更例の折り畳み椅子の使用状態の斜視図である。
【
図13】変更例の折り畳み椅子の折り畳み状態の断面斜視図である。
【
図14】変更例の座面ヒンジ部について説明する図である。
【
図15】変更例の折り畳み椅子の水平方向断面図である。
【
図16】変更例の折り畳み椅子の上下方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の折り畳み椅子の一実施形態について説明する。本実施形態の折り畳み椅子10は、室内の壁面に取り付けられて使用される。折り畳み椅子10は、
図1に示す使用状態と
図2に示す折り畳み状態とに形状変化可能に形成されている。以下、折り畳み椅子10を、単に、「椅子10」として説明する。また、壁面に取り付けられた状態で、椅子10の上下方向を規定し、壁面側を後側、その反対側を前側として前後方向を規定し、上下方向及び前後方向に直交する方向を幅方向として規定する。
【0017】
図1及び
図3に示すように、椅子10は、本体20及び一対の側面板31を備えている。本体20は、背面板21、連結板22、及び座面板23が一体に連結された形状をなしている。本体20及び一対の側面板31は、内部に複数のセルSが並設された熱可塑性樹脂製の中空板材1によって形成されている。中空板材1については後に説明する。
【0018】
図1及び
図2に示すように、背面板21は長方形状に形成されている。椅子10は、背面板21の外面が室内の壁面に当接する状態で壁面に固定されている。背面板21の幅方向両端部には、上下方向に延びる固定部材41が取り付けられている。椅子10は、固定部材41が室内の壁面に取り付けられることによって壁面に固定されている。
【0019】
図4及び
図5に示すように、固定部材41は、金属製の長尺部材である。固定部材41は、平面状の固定部42と、固定部42に連設された断面コ字状の被挿入部43を備えている。固定部材41は、被挿入部43内に背面板21の端部を挿入した状態で取り付けられている。背面板21は、固定部42に形成された図示しない孔内に、図示しない固定治具を挿入することによって室内の壁面に固定されている。
【0020】
図3に示すように、連結板22は長方形状に形成されている。連結板22は、背面板21に対して直交するように前後方向に延びている。連結板22と背面板21の間には、幅方向に延びる熱罫線24が形成されている。熱罫線24は、幅方向全長に延びている。熱罫線24は、本体20の一部を直線状に延びる凹条に熱圧縮して熱溶融することにより形成されている。具体的には、熱溶融した背面板21の上端部と連結板22の後端部とを冷却固化して接合することにより形成されている。
【0021】
図3に示すように、座面板23は長方形状に形成されている。連結板22と座面板23との間には、幅方向に延びる座面ヒンジ部25が形成されている。
図6に示すように、座面ヒンジ部25は、本体20の厚みが薄くされた断面三角形状の凹条として形成されている。座面板23は、座面ヒンジ部25のうち最も厚みが薄くされた部分を回動軸25aとして、連結板22に対して回動可能とされている。
【0022】
図7に示すように、座面板23の前端部及び幅方向両端部は帯状の板材23aによって封止されている。座面板23の前端部及び幅方向両端部では、板材23aによって、中空板材1の内部に形成されたセルSが外部に露出しないようになっている。板材23aは、後に説明するプレス成型工程において、中空板材1の端部を圧縮して溶着させる端面処理によって形成されている。図示は略すが、連結板22の幅方向両端部、背面板21の幅方向両端部及び下端部も、同様の板材によって封止されている。また、後に説明する側面板31の前後両端部、上下両端部も、同様の板材によって封止されている。
【0023】
図1及び
図3に示すように、座面板23の前端部には、幅方向に延びる補強部材44が取り付けられている。補強部材44は、金属製の長尺部材である。補強部材44は、断面コ字状に形成されて、その内部に座面板23の前端部を挿入した状態で取り付けられている。また、座面板23の下面の幅方向両端部には、前後方向に延びる帯状の面ファスナーとしての雄ファスナーが取り付けられている(図示略)。雄ファスナーの幅は、側面板31の厚みにほぼ等しい。
【0024】
図1及び
図3に示すように、側面板31は長方形状の板材である。一対の側面板31は、背面板21の幅方向の両端部に固定されている。一対の側面板31の外面は、背面板21の幅方向両端面とほぼ面一となっている。側面板31は、金属製のヒンジ部材45によって背面板21に固定されている。ヒンジ部材45は、背面板21の内面の上端部及び下端部と、その中間部の3箇所に取り付けられている。側面板31は、ヒンジ部材45を回動軸として、背面板21に対して回動可能に構成されている。
【0025】
図3及び
図4に示すように、側面板31の前後方向のほぼ中間部には、上下方向に延びる側面ヒンジ部32が形成されている。側面ヒンジ部32は、側面板31の厚みが薄くされた断面三角形状の凹部として形成されている。側面ヒンジ部32の形状は、座面ヒンジ部25の形状と同じである。側面板31は、側面ヒンジ部32のうち最も厚みが薄くされた部分を回動軸32aとして、その前半部31aと後半部31bとが回動可能に構成されている。側面板31の上端面には、帯状の面ファスナーとしての雌ファスナーが取り付けられている(図示略)。
【0026】
図1及び
図2に示すように、使用状態での座面板23の下面の前後方向の長さL1は、背面板21の内面の上下方向の長さL2とほぼ等しい。連結板22の下面の前後方向の長さL3は、側面板31の厚みの2倍より少し長い。具体的には、連結板22の下面の前後方向の長さL3は、折り畳み状態での背面板21と座面板23の内面同士の間隔に等しく、
図5に示すように、折り畳んだ状態の側面板31の厚みの合計よりも少し長い。
【0027】
また、使用状態での側面板31の前後方向の長さL4は、使用状態での座面板23の下面の前後方向の長さL1と連結板22の下面の前後方向の長さL3の合計より少し短い。側面板31の上下方向の長さL5は、背面板21の内面の上下方向の長さL2とほぼ等しい。
【0028】
次に、本体20及び側面板31を形成する中空板材1の構造について説明する。
図8(a)に示すように、中空板材1は、内部に複数のセルSが並設された熱可塑性樹脂製のコア層2と、コア層2の両主面でコア層2全体を覆うように接合された熱可塑性樹脂製のスキン層3、4とで構成されている。
【0029】
コア層2は、所定形状に成形された1枚の熱可塑性樹脂製のシート材100を折り畳んで形成されている。そして、コア層2は、上壁部2aと、下壁部2bと、上壁部2a及び下壁部2bの間に立設されてセルSを六角柱形状に区画する側壁部2cとで構成されている。以下で説明するように、コア層2の上壁部2a及び下壁部2bは、1層構造と2層構造とが混在した構造とされているが、
図8(a)では、コア層2の上壁部2a及び下壁部2bを1層構造で示している。
【0030】
図8(b)及び(c)に示すように、コア層2の内部に区画形成されるセルSには、構成の異なる第1セルS1及び第2セルS2が存在する。
図8(b)に示すように、第1セルS1においては、側壁部2cの上部に2層構造の上壁部2aが設けられている。この2層構造の上壁部2aの各層は互いに接合されている。また、2層構造の上壁部2aには、コア層2の成形時に熱可塑性樹脂が熱収縮することにより、図示しない開口部が形成されている。第1セルS1においては、側壁部2cの下部に1層構造の下壁部2bが設けられている。
【0031】
一方、
図8(c)に示すように、第2セルS2においては、側壁部2cの上部に1層構造の上壁部2aが設けられている。また、第2セルS2においては、側壁部2cの下部に2層構造の下壁部2bが設けられている。この2層構造の下壁部2bの各層は互いに接合されている。2層構造の下壁部2bには、コア層2成形時の熱可塑性樹脂の熱収縮により、図示しない開口部が形成されている。
【0032】
また、
図8(b)及び(c)に示すように、隣接する第1セルS1同士の間、及び隣接する第2セルS2同士の間は、それぞれ2層構造の側壁部2cによって区画されている。この2層構造の側壁部2cは、コア層2の厚み方向中央部に互いに熱溶着されていない部分を有する。したがって、コア層2の各セルSの内部空間は、2層構造の側壁部2cの間を介して他のセルSの内部空間に連通している。
【0033】
図8(a)に示すように、第1セルS1はX方向に沿って列を成すように並設されている。同様に、第2セルS2はX方向に沿って列を成すように並設されている。第1セルS1の列及び第2セルS2の列は、X方向に直交するY方向において交互に配列されている。そして、これら第1セルS1及び第2セルS2により、コア層2は、全体としてハニカム構造をなしている。
【0034】
コア層2及びスキン層3、4を構成する熱可塑性樹脂は、従来周知の熱可塑性樹脂であればよく、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレン共重合体樹脂、アクリル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。本実施形態のコア層2及びスキン層3、4は、ポリプロピレン樹脂製とされている。コア層2を構成する熱可塑性樹脂と、スキン層3、4を構成する熱可塑性樹脂は、同じ材質であることが好ましい。本実施形態では、スキン層3とスキン層4の厚みは同一とされている。
【0035】
次に、中空板材1を製造する方法について説明する。
図9に示すように、中空板材1は、一枚のシート材100からコア層2を形成するとともに、コア層2にスキン層3、4を接合して製造される。
【0036】
図9(a)に示すように、シート材100は、1枚の熱可塑性樹脂製のシートを所定の形状に成形することにより形成されている。シート材100には、帯状をなす平面領域110及び膨出領域120が、シート材100の長手方向(X方向)に交互に配置されている。膨出領域120には、上面と一対の側面とからなる断面下向溝状をなす第1膨出部121が膨出領域120の延びる方向(Y方向)の全体にわたって形成されている。なお、第1膨出部121の上面と側面とのなす角は90度であることが好ましく、その結果として、第1膨出部121の断面形状は下向コ字状となる。また、第1膨出部121の幅(上面の短手方向の長さ)は平面領域110の幅と等しく、かつ第1膨出部121の膨出高さ(側面の短手方向の長さ)の2倍の長さとなるように設定されている。
【0037】
また、膨出領域120には、その断面形状が正六角形を最も長い対角線で二分して得られる台形状をなす複数の第2膨出部122が、第1膨出部121に直交するように形成されている。第2膨出部122の膨出高さは第1膨出部121の膨出高さと等しくなるように設定されている。また、隣り合う第2膨出部122間の間隔は、第2膨出部122の上面の幅と等しくなっている。
【0038】
なお、こうした第1膨出部121及び第2膨出部122は、シートの塑性を利用してシートを部分的に上方に膨出させることにより形成されている。また、シート材100は、真空成形法や圧縮成形法等の周知の成形方法によって1枚のシートから成形することができる。
【0039】
図9(a)及び(b)に示すように、上述のように構成されたシート材100を、境界線P、Qに沿って折り畳むことでコア層2が形成される。具体的には、シート材100を、平面領域110と膨出領域120との境界線Pにて谷折りするとともに、第1膨出部121の上面と側面との境界線Qにて山折りしてX方向に圧縮する。そして、
図9(b)及び(c)に示すように、第1膨出部121の上面と側面とが折り重なるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なることによって、一つの膨出領域120に対して一つのY方向に延びる角柱状の区画体130が形成される。こうした区画体130がX方向に連続して形成されていくことにより中空板状のコア層2が形成される。
【0040】
上記のようにシート材100を圧縮するとき、第1膨出部121の上面と側面とによってコア層2の上壁部2aが形成されるとともに、第2膨出部122の端面と平面領域110とによってコア層2の下壁部2bが形成される。なお、
図9(c)に示すように、上壁部2aにおける第1膨出部121の上面と側面とが折り重なって2層構造を形成する部分、及び下壁部2bにおける第2膨出部122の端面と平面領域110とが折り重なって2層構造を形成する部分がそれぞれ重ね合わせ部131となる。
【0041】
また、第2膨出部122が折り畳まれて区画形成される六角柱形状の領域が第2セルS2となるとともに、隣り合う一対の区画体130間に区画形成される六角柱形状の領域が第1セルS1となる。本実施形態では、第2膨出部122の上面及び側面が第2セルS2の側壁部2cを構成するとともに、第2膨出部122の側面と、膨出領域120における第2膨出部122間に位置する平面部分とが第1セルS1の側壁部2cを構成する。そして、第2膨出部122の上面同士の当接部位、及び膨出領域120における上記平面部分同士の当接部位が2層構造をなす側壁部2cとなる。なお、こうした折り畳み工程を実施するに際して、シート材100を加熱処理して軟化させた状態としておくことが好ましい。
【0042】
続いて、コア層2の上面にスキン層3を重ね合わせ、コア層2の下面にスキン層4を重ね合わせる。スキン層3、4は、加熱処理して軟化させた状態にしておくことが好ましい。スキン層3、4が加熱処理されることで、スキン層3、4にコーティングされた熱可塑性樹脂の接着層は、一部熱溶融された状態となっている。そのため、コア層2に重ね合わされたスキン層3、4は、コア層2に仮接合された状態で位置決めされる。コア層2及びスキン層3、4の温度低下により接着層が固化し、コア層2にスキン層3、4が接合されて中空板材1が形成される。
【0043】
次に、中空板材1を使用して、椅子10を製造する方法について説明する。
椅子10は、中空板材1を所定の大きさに切断したものを加工することによって製造する。椅子10を製造する方法は、加熱工程、プレス成型工程、後加工工程を備えている。加熱工程は、中空板材1を加熱する工程である。プレス成型工程は、金型内で中空板材1を成形して中間体を得る工程である。後加工工程は、中間体を加工して椅子10を得る工程である。
【0044】
椅子10の本体20に使用する中空板材1として、本体20より少し大きな長方形状に切断するとともに、側面板31に使用する中空板材1として、側面板31より少し大きな長方形状に切断する。
【0045】
加熱工程では、所定温度に設定された加熱炉内に切断した中空板材1を入れて、所定時間保持する。加熱炉内の温度は、中空板材1を構成する熱可塑性樹脂が溶融する程度に設定されている。
【0046】
プレス成型工程では、本体20と同じ形状であって、本体20より少し大きい内部空間を有する金型、及び、側面板31と同じ形状であって、側面板31より少し大きい内部空間を有する金型内で、中空板材1を型締めする。
【0047】
以下では、本体20を形成する場合について説明する。本体20を形成するための金型には、型締めによって、幅方向に延びる2本の凸条を有する長方形板状の内部空間が形成される。一方の凸条は、座面ヒンジ部25を形成するための部分であり、他方の凸条は、背面板21と連結板22の境界部分を形成するための部分である。2本の凸条は、断面視三角形状に形成されている。凸条以外の部分での内部空間の高さは、中空板材1の厚みよりやや低い程度である。
【0048】
加熱工程で加熱された中空板材1を金型内に入れて型締めして中間体を形成する。プレス時の圧力、プレス時間は、適宜設定すればよい。中空板材1は、キャビティの形状に成形されて中間体が得られる。金型の凸条以外の部分でのキャビティの高さは、中空板材1の厚みよりやや低い程度である。そのため、中間体において、金型の凸条に対応する以外の部分では、中空板材1は厚み方向にほとんど圧縮されることなく、中空構造を保持している。また、中空板材1を構成する熱可塑性樹脂はほとんど溶融しない。そのため、この部分では、ハニカム構造体としての強度が保持されている。
【0049】
一方、金型の2本の凸条の部分には、幅方向に延びる断面三角形状の凹条がそれぞれ形成される。一方の凹条は、背面板21と連結板22の境界部分、すなわち、熱罫線24を形成する。他方の凹条は、連結板22と座面板23の境界部分、すなわち、座面ヒンジ部25を形成する。凹条では、加熱された中空板材1が熱溶融するとともに、金型の凸条によって中空板材1が厚み方向に圧縮されている。
【0050】
中間体は、凹条が形成された部分で中空板材1が熱溶融している状態のまま金型から取り出す。まず、背面板21と連結板22の境界部分を形成する凹条の部分で、背面板21に対して連結板22が直角となるように折り曲げる。これにより、凹条の一方の斜面と他方の斜面とが接触し、その後の冷却によって互いに接合する。背面板21と連結板22とが直角となるように接合されて熱罫線24が形成される。
【0051】
図6に示すように、座面板23と連結板22の境界部分を形成する凹条の部分では、折り曲げることなくそのまま保持することで、座面ヒンジ部25が形成される。座面ヒンジ部25では、中空板材1を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されるとともに厚み方向に圧縮される。これにより、熱可塑性樹脂の密度が中空板材1での密度より高くなる。厚み方向に最も圧縮された部分は、座面ヒンジ部25の回動軸25aとなる。回動軸25aでは、コア層2の上壁部2a、下壁部2b、及び側壁部2cを構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されるとともに、スキン層3、4を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されて一体化して、隙間のない状態となっている。熱可塑性樹脂が一体化した状態の回動軸25aでは、連結板22に対して座面板23を回動可能に連結する曲げ剛性を有しているとともに、回動軸25aとしての強度が保持される。
【0052】
また、中間体の端部全周に亘って各辺ずつ、図示しない加熱棒を押し当てる。加熱棒によって中間体を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融するとともに押し潰される。これにより、中間体の端部全周には、中空板材1を構成するコア層2及びスキン層3、4が一体となった薄肉部が形成される。続いて、薄肉部をコア層2側に起立させて溶着させる。これにより、中間体の端部全周が帯状の板材である薄肉部によって封止される。薄肉部は、
図7に示す座面板23の板材23aとなる。
【0053】
側面板31についても同様にしてプレス成型する。プレス成型によって、側面板31には、回動軸32aを有する側面ヒンジ部32が形成される。側面ヒンジ部32及び回動軸32aでの熱可塑性樹脂の状態は、座面ヒンジ部25及び回動軸25aと同様である。側面板31の前半部31aと後半部31bとが回動する際の回動軸32aとしての曲げ剛性と強度が保持される。また、側面板31の端部全周を加熱刃によって熱溶融することで、側面板31の端部は、帯状の板材によって封止される。
【0054】
以上の工程を経て、本体20及び側面板31が形成される。
次に、本体20及び側面板31を加工して椅子10を得る後加工工程について説明する。後加工工程では、本体20の背面板21の幅方向両端部に固定部材41を取り付けるとともに、座面板23の前端部に補強部材44を取り付ける。また、座面板23の下面に、面ファスナーとしての雄ファスナーを取り付ける。
【0055】
続いて、側面板31の上端面に面ファスナーとしての雌ファスナーを取り付ける。そして、側面板31の後端部の3箇所にヒンジ部材45を取り付けて、側面板31と背面板21とをヒンジ部材45により固定する。以上の工程を経て、椅子10が得られる。
【0056】
次に、椅子10の使用方法についてその作用とともに説明する。
まず、
図2に示す折り畳み状態から
図1に示す使用状態とする場合について説明する。
椅子10は、固定部材41によって室内の壁面に固定されている。折り畳み状態では、前側に座面板23が室内の壁面に対向配置されている。この状態で、座面板23の下端部を前方に向かって持ち上げる。座面板23と連結板22との間には座面ヒンジ部25が形成されているため、座面板23は、座面ヒンジ部25の回動軸25aを中心に回動する。座面板23は、連結板22と水平となる位置より少し上方まで持ち上げる。
【0057】
続いて、折り畳まれた状態の一対の側面板31のそれぞれを前方に引き出す。側面板31はヒンジ部材45により背面板21に取り付けられ、側面板31の前半部31aと後半部31bとの間には側面ヒンジ部32が形成されている。そのため、側面板31は、ヒンジ部材45及び側面ヒンジ部32の回動軸32aを中心に回動する。側面板31を、背面板21と直角となる位置まで引き出す。
【0058】
引き出された側面板31の上部に、座面板23を載置する。側面板31の上下方向の長さL5は、背面板21の内面の上下方向の長さL2とほぼ等しいことから、側面板31の上部に載置された座面板23は、連結板22とともに水平方向に延びた状態となる。このとき、側面板31の上端面の雌ファスナーと座面板23の下面の雄ファスナーとを接合する。これにより、側面板31が位置決めされるとともに、その位置が安定する。
【0059】
次に、
図1に示す使用状態から
図2に示す折り畳み状態とする場合について説明する。
まず、座面板23を連結板22と水平となる位置より少し上方に持ち上げる。これにより、側面板31の上端面の雌ファスナーと座面板23の下面の雄ファスナーとの接合が解除される。この状態で、側面板31を後方へ折り畳む。側面板31は、ヒンジ部材45及び側面ヒンジ部32の回動軸32aを中心に回動して、前半部31a及び後半部31bが背面板21に平行となるように対向配置される。そして、上方に持ち上げていた座面板23を下ろす。座面板23は、座面ヒンジ部25の回動軸25aを中心に回動して、背面板21に平行となるように対向配置される。
【0060】
座面ヒンジ部25、側面ヒンジ部32では、中空板材1を構成する熱可塑性樹脂が熱溶融されるとともに厚み方向に圧縮されていて、熱可塑性樹脂の密度が中空板材1での密度より高くなっている。また、回動軸25a、32aは、厚み方向に最も圧縮されて、熱可塑性樹脂が一体化した状態となっている。そのため、座面板23を回動する際、側面板31を回動する際にスムーズな回動操作が可能であるとともに、回動操作に対する十分な強度を備えている。
【0061】
連結板22の下面の前後方向の長さL3は、折り畳んだ状態の側面板31の厚みの合計(本実施形態では側面板31の厚みの2倍)よりも少し長い。そのため、折り畳み状態では、折り畳まれた側面板31が背面板21と座面板23の間の内部空間に収納されて、その上部が連結板22で覆われた状態となる。また、座面板23の下面の前後方向の長さL1は、背面板21の内面の上下方向の長さL2とほぼ等しい。そのため、折り畳み状態では、折り畳まれた側面板31の前面は、座面板23によって覆われた状態となる。
【0062】
図10に示すように、このような椅子10が、室内の壁面に3個隣り合うように固定されている場合について説明する。
図10(a)は、3個とも折り畳み状態とした場合の図である。この場合は、室内のスペースを広く使用することができる。また、
図10(b)は、両側の2個を使用状態にした場合の図である。この場合は、使用状態の椅子10を座席として使用したり、椅子10の下部を荷物の収納空間として利用したりすることができる。折り畳み状態の椅子10の前側には、例えば、机を置いたりすることができる。さらに、
図10(c)は、すべてを使用状態にした場合の図である。この場合は、すべての椅子10を座席として使用することもできるし、また、ベッドのようにして使用することもできる。さらに、すべての椅子10の下部を荷物の収納空間として利用することもできる。
【0063】
本実施形態の椅子10によれば、次のような効果を得ることができる。
(1)椅子10の本体20は、背面板21と連結板22と座面板23とが一体に連結された形状をなしている。そして、折り畳み状態では、一対の側面板31が連結板22の下部で背面板21に対して対向配置されるとともに、座面板23が背面板21に対して対向配置される。
【0064】
そのため、折り畳み状態では、連結板22の下部であって、対向配置された座面板23と背面板21との間に一対の側面板31が収納された状態となる。対向配置された座面板23と背面板21の間が一対の側面板31の収納する空間となり、この空間の上部が連結板22で覆われることになる。側面板31の収納空間への埃やゴミの侵入が抑制される。また、折り畳み状態では、本体20の外面を拭き掃除等をすれば、椅子10を清潔に保持することができる。椅子10のメンテナンス性が良好である。
【0065】
さらに、折り畳み状態とすることによって省スペース化することができる。室内の空間を有効に利用することができる。
(2)本体20及び側面板31は、内部に複数のセルSが並設された熱可塑性樹脂製の中空板材1で形成されている。
【0066】
そのため、軽量でありながら高強度である。
(3)背面板21、連結板22、及び座面板23が一体に連結された形状をなしている本体20は、一枚の中空板材1を金型内でプレスすることによって形成されている。
【0067】
そのため、本体20の製造工程を簡略化することができる。
(4)座面ヒンジ部25、側面ヒンジ部32は、中空板材1を熱溶融して形成されている。回動軸25a、32aでは、熱可塑性樹脂の密度が高くなっている。
【0068】
そのため、回動操作に対する十分な曲げ弾性と強度を備えている。耐久性に優れた椅子10が得られる。
(5)側面板31は、側面ヒンジ部32により前半部31aと後半部31bが重なった状態で折り畳み可能である。
【0069】
そのため、折り畳み状態としたとき、一対の側面板31同士が重なり合わないような状態とすることができる。
(6)座面板23の前端部には、幅方向に延びる金属製の補強部材44が取り付けられている。
【0070】
そのため、座面板23に着座したときの強度を保持することができる。
(7)使用状態では、側面板31と座面板23とは面ファスナーによって接合される。
そのため、側面板31が位置決めされ、使用状態が安定する。
【0071】
(8)連結板22の下面の前後方向の長さL3は、折り畳んだ状態の側面板31の厚みの合計よりも少し長い。
そのため、折り畳み状態では、折り畳まれた側面板31が背面板21と座面板23の間の内部空間に収納されて、その上部が連結板22で覆われた状態となる。また、折り畳まれた側面板31と背面板21との間、折り畳まれた側面板31と座面板23との間の間隔がほぼない状態とすることができる。折り畳み状態での椅子10の厚みを薄くすることができて、省スペース化に貢献する。
【0072】
(9)座面板23の下面の前後方向の長さL1は、背面板21の内面の上下方向の長さL2とほぼ等しい。
そのため、折り畳み状態では、折り畳まれた側面板31の前面は、座面板23によって覆われた状態となる。側面板31が外部に露出することが抑制される。側面板31に埃やゴミが付着し難くなり、メンテナンス性が良好になる。
【0073】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態の椅子10は、使用状態では、側面板31が幅方向両端部で前後方向に延びる形状になっている。椅子10の形状はこれに限定されない。
【0074】
図11及び
図12に示すように、側面板31と一体に形成された前面板51が設けられていてもよい。前面板51は、側面板31に対して、前面ヒンジ部52を介して回動可能とされている。前面ヒンジ部52の形状は、座面ヒンジ部25や側面ヒンジ部32の形状と同様である。つまり、前面ヒンジ部52は、中空板材1の厚みが最も薄くされた部分を回動軸52aとして、前面板51を側面板31に対して回動可能としている。
【0075】
図12に示すように、前面板51を回動させて側面板31に沿って延びるように配置した場合、前面ヒンジ部52が形成された面は、側面ヒンジ部32が形成された面とは反対となっている。そのため、
図13に示すように、折り畳み状態では、前面板51を、側面板31の前に重なるように折り畳むことができる。その結果、側面板31の後半部31b、前半部31a、前面板51は上面視N字状をなすように折り畳まれることになる。
【0076】
・座面板23は、座面ヒンジ部25を介して連結板22と一体に形成されているが、連結板22と別体に形成されていてもよい。例えば、別部材としてのヒンジ部材を介して連結されていてもよい。
【0077】
・側面板31は、側面ヒンジ部32を介して前半部31aと後半部31bが一体に形成されているが、前半部31aと後半部31bが別体に形成されていてもよい。前半部31aと後半部31bが、別部材のヒンジ部材を介して連結されていてもよい。
【0078】
・
図11の前面板51は、前面ヒンジ部52を介して側面板31と一体に形成されているが、側面板31と別体に形成されていてもよい。別部材のヒンジ部材を介して連結されていてもよい。
【0079】
・使用状態の椅子10では、側面板31は、背面板21に直交するように延びていなくてもよい。例えば、一対の側面板31間の距離が、前側ほど広くてもよく、前側ほど狭くてもよい。
【0080】
・側面板31及び座面板23に設けられた面ファスナーを省略することができる。
・面ファスナーに代えて、他の固定手段で側面板31を座面板23に固定するようにしてもよい。例えば、磁石やリベット部材で止めるようにしてもよい。
【0081】
・面ファスナーは帯状に形成されていなくてもよい。また、側面板31及び座面板23の前後方向の複数箇所に設けられていてもよい。
・一対の側面板31は、一対の側面板31の外面が背面板21の両端面とほぼ面一となるように、背面板21の幅方向の両端部に固定されているが、その固定位置はこれに限定されない。背面板21の幅方向両端部であれば、背面板21の幅方向両端面より幅方向中央寄りに変位した位置であってもよい。
【0082】
・連結板22は、平板状でなく湾曲した板状であってもよい。背面板21と一体に形成されていて、上部から側面板31を覆うことができれば、その形状は特に限定されない。
・連結板22は、背面板21に対して直交していなくてもよい。背面板21に対して交差する方向に延びて、折り畳み状態でその下部に側面板31を収納可能であればよい。
【0083】
・本体20及び側面板31は中空板材1によって形成されているが、これに限定されない。中実状の板材によって形成されていてもよい。
・連結板22と背面板21の間には熱罫線24が形成されているが、熱罫線24が形成されていなくてもよい。例えば、中実状の板材が直角に曲げられた形状に形成されていてもよい。
【0084】
・本体20及び側面板31は、上記実施形態で説明した製造方法によって製造するものでなくてもよい。例えば、中空板材1を長方形状に切断後、加熱棒によって本体20及び側面板31の全周に薄肉部を形成して端面封止する。また、座面ヒンジ部25、側面ヒンジ部32の部分は、
図14に示すようにして形成する。
図14を座面板23及び連結板22として説明すると、例えば、切断刃Tを、中空板材1のスキン層4側から押し当てる。このとき、切断刃Tは、スキン層3に到達しない程度の深さまで押し当てる。これにより、中空板材1が、その厚みの途中まで切断されてハーフカット26が形成される。座面板23は、ハーフカット26を回動軸として連結板22に対して回動可能となる。
【0085】
・上記実施形態では、座面ヒンジ部25を、断面三角形状の凸条が形成された金型の型締めによって形成しているが、凸条は断面三角形状でなくてもよい。
図14に示すような切断刃T形状の凸条が形成されていてもよい。
【0086】
・側面板31は、金属製のヒンジ部材45によって背面板21に固定されているが、これに限定されない。例えば、
図15には、変更例の椅子10の水平方向断面図を示している。
図15に示す側面板31は、熱罫線24を挟んで直角に曲がった形状をしており、その一部が背面板21に沿うように延びている。この場合、背面板21と側面板31を金属製のヒンジ部材45によって固定せず、背面板21に沿う側面板31の部分と背面板21とに跨るように面ファスナー46を取り付けることによって固定してもよい。金属製のヒンジ部材45を使用しないことで、リサイクルし易くなる。
【0087】
・側面板31の折り畳み方法は上記実施形態のものに限定されない。例えば、
図15に示すように、側面板31にそれぞれ2箇所の側面ヒンジ部321、322を形成してもよい。この場合、一方の側面板31は、側面ヒンジ部321で折り曲げ、他方の側面板31は、側面ヒンジ部322で折り曲げて、一対の側面板31が重なった状態で折り畳むこともできる。なお、一方の側面板31を側面ヒンジ部322で折り曲げ、他方の側面板31を側面ヒンジ部321で折り曲げてもよい。
【0088】
・
図16に示すように、面ファスナーに代えて、或いは、面ファスナーとともに、座面板23に対して側面板31を位置決めする構成を設けてもよい。
図16には、座面板23の幅方向両端部に、熱曲げによって下方に突出する支持部23bが前後方向に延びるように形成された状態を示している。この場合、支持部23bの内面に側面板31の外面を当接させることによって位置決めすることができる。
【0089】
或いは、座面板23の両端部下面に前後方向に延びるL字状フレームを取り付けるようにしてもよい。この場合、L字状フレームの内面側に側面板31を当接させることによって位置決めすることができる。
【0090】
・椅子10の本体20の製造方法では、プレス成型工程の金型内で座面ヒンジ部25となる凹条と、熱罫線24となる凹条とを形成したが、これら凹条を別工程で形成するようにしてもよい。例えば、金型内では座面ヒンジ部25となる凹条を形成し、金型から取り出した後に、加熱棒で押圧することによって凹条を形成する。加熱棒で形成された凹条の部分で折り曲げて冷却固化させることにより熱罫線24を形成する。また、加熱棒で形成された凹条の部分を折り曲げることなく冷却固化させることによって座面ヒンジ部25を形成する。側面板31についても同様である。
【0091】
・コア層2は、一枚のシート材100を折り畳み成形して構成するのに限らない。例えば、複数の帯状のシートを所定間隔毎に屈曲させて配置してセルの側壁を構成し、これら帯状のシートの上下両側にシート層を配置してセルの上壁及び下壁を構成するようにしてもよい。
【0092】
・上記実施形態では、コア層2の内部に六角柱状のセルSが区画形成されているが、セルSの形状は、特に限定されるものでない。例えば、四角柱状、八角柱状等の多角形状や円柱状としてもよい。また、セルSの形状は、接頭円錐形状であってもよい。その際、異なる形状のセルが混在していてもよい。また、各セルは隣接していなくともよく、セルとセルとの間に隙間(空間)が存在していてもよい。
【0093】
・コア層2は、柱形状のセルSが区画されたものに限らない。例えば、所定の凹凸形状を有するコア層の上下両面にシート層を接合したものであってもよい。このような構成のコア層としては、例えば特開2014-205341号公報に記載のものが挙げられる。また、断面がハーモニカ状のプラスチックダンボール等であってもよい。
【0094】
・上記実施形態では、一枚のシート材100を折り畳み成形して、コア層2の内部に六角形状のセルSが区画形成されたハニカム構造体としてのコア層2を形成したが、成形方法はこれに限定されない。例えば、特許第4368399号に記載されるように、断面台形状の凸部が複数列設された三次元構造体を順次折り畳んでいくことにより、ハニカム構造体としてのコア層2を形成してもよい。
【0095】
・コア層2及びスキン層3、4を構成する熱可塑性樹脂として、各種機能性樹脂を添加したものを使用してもよい。例えば、熱可塑性樹脂に難燃性の樹脂を添加することにより、難燃性を高めることが可能である。コア層2及びスキン層3、4のすべてに対して各種機能性樹脂を添加したものを使用することも可能であり、また、コア層2及びスキン層3、4の少なくともいずれかに対して使用することも可能である。
【0096】
・スキン層3、4は一層構造としたが、多層構造であってもよい。
・中空板材1のスキン層3、4は、熱可塑樹脂製のシート材で構成したが、少なくともいずれか一方を不織布とすることもできる。スキン層3、4を不織布とする場合、一方の面に熱可塑性樹脂(例えば、ポリプロピレン樹脂)製の接着層をコーティングし、接着層を介してコア層2に接合することができる。スキン層3、4を構成する不織布は、例えばポリアミド繊維、アラミド繊維、セルロース繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、レーヨン繊維、ガラス繊維などの従来公知の各種繊維で成形することができる。スキン層3、4をいずれも不織布とする場合、スキン層3とスキン層4とは同一の構成であってもよく、異なる構成であってもよい。
【0097】
・少なくともいずれか一方のスキン層3、4の上に、上記不織布を貼り合わせるようにしてもよい。
・スキン層3、4は、樹脂フィルムに印刷されたものであってもよい。椅子10の意匠性を向上させることができる。
【0098】
上記実施形態及び変更例から把握される技術思想について記載する。
(イ)背面板と、前記背面板に連設された座面板と、前記背面板の幅方向両端部のそれぞれに取り付けられた一対の側面板と、前記側面板の前端部に連設された前面板を有し、使用状態と折り畳み状態とに形状変化可能な折り畳み椅子であって、前記座面板は、前記背面板に交差する方向に延びて該背面板と一体に形成された連結板を介して背面板に連設され、前記座面板は前記連結板に対して回動可能に連設され、前記側面板は前記背面板に対して回動可能に取り付けられ、前記前面板は前記側面板に対して回動可能に連設され、使用状態では、一対の前記側面板が、前記背面板に対して交差するように位置するとともに前記前面板が前記背面板と対向配置され、一対の前記側面板及び前記前面板の上部に前記座面板が載置され、折り畳み状態では、一対の前記側面板及び前記前面板が前記連結板の下部で前記背面板に対して対向配置されるとともに、前記座面板が前記背面板に対して対向配置されることを特徴とする折り畳み椅子。
【0099】
(ロ)前記背面板、前記連結板、前記座面板、前記側面板、及び前記前面板は、内部に複数のセルが並設された熱可塑性樹脂製の中空板材で形成され、前記座面板は前記連結板と一体に形成され、前記前面板は前記側面板と一体に形成され、前記座面板と前記連結板との間には、中空板材を熱溶融してなる座面ヒンジ部が形成されているとともに、前記前面板と前記側面板との間には、中空板材を熱溶融してなる前面ヒンジ部が上下方向に延びるように形成されていることを特徴とする上記(イ)に記載の折り畳み椅子。
【0100】
(ハ)前記側面板には、中空板材を熱溶融してなる側面ヒンジ部が上下方向に延びるように形成されていることを特徴とする上記(ロ)に記載の折り畳み椅子。
(ニ)前記側面板及び前記前面板において、前記側面ヒンジ部は、前記前面ヒンジ部が形成された面とは反対側の面に形成されていることを特徴とする上記(ハ)に記載の折り畳み椅子。
【符号の説明】
【0101】
S…セル
1…中空板材
10…椅子(折り畳み椅子)
21…背面板
22…連結板
23…座面板
25…座面ヒンジ部
31…側面板
32…側面ヒンジ部
51…前面板
52…前面ヒンジ部