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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-05
(45)【発行日】2025-08-14
(54)【発明の名称】センサ
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20250806BHJP
   G01N 27/04 20060101ALI20250806BHJP
【FI】
G01N27/00 L
G01N27/04 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023204233
(22)【出願日】2023-12-01
(62)【分割の表示】P 2019200720の分割
【原出願日】2019-11-05
(65)【公開番号】P2024012713
(43)【公開日】2024-01-30
【審査請求日】2023-12-15
(31)【優先権主張番号】P 2019085668
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 和彦
(72)【発明者】
【氏名】原田 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】赤井 幸輝
(72)【発明者】
【氏名】鎌形 州一
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-163133(JP,A)
【文献】特開2017-111037(JP,A)
【文献】特開2008-261691(JP,A)
【文献】実開昭59-037550(JP,U)
【文献】国際公開第2013/030930(WO,A1)
【文献】特開2019-128311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/00-27/24
G01N 15/00-15/1492
G01N 27/72-27/9093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状の外形を有し
前記円柱の軸方向に見て円形端面の第1の電極と、
前記第1の電極の前記円柱の径方向外側で前記第1の電極の表面に対して面一とされた端部を有する筒状の第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置されて絶縁性を有し、前記第1の電極と前記第2の電極との端部を結ぶ検知面と同一面を有し前記第1の電極と前記第2の電極との間の間隔より小さい導体粒子を吸着することにより前記検知面に沿った前記第1の電極と前記第2の電極との間の電気抵抗を変化させる吸着部と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間の間隔より大きい寸法を有する大径導体片による前記第1の電極と前記第2の電極との短絡を抑制する短絡抑制部と、
を備え、
前記短絡抑制部は、前記第1の電極の周囲に沿って前記検知面から前記軸方向に突出するとともに、前記第1の電極および前記第2の電極の少なくとも一方に設けられた絶縁性を有する凸部であり、
前記第1の電極又は前記第2の電極の前記凸部が配置された端面の法線方向からみて前記吸着部と前記凸部とが前記円柱の径方向に並んで配置される、
ことを特徴とするセンサ。
【請求項2】
前記第1の電極と前記第2の電極との間の電気抵抗の変化を検知する検知部を備える、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記短絡抑制部は、前記円柱の径方向の幅が、前記第1の電極と前記第2の電極との間の間隔と同一である、
請求項1に記載のセンサ。
【請求項4】
前記円柱の軸方向に見て、前記短絡抑制部は環状を呈し、前記第1の電極の全周を囲むように形成されている、
請求項1に記載のセンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
減速機等の機械装置は、歯車等の機械部品の損傷を抑制するために、潤滑油が貯められたハウジング内に収容される。このような機械装置の運転時に機械部品が摩耗すると、摩耗粉(例えば、鉄粉などの導体物質)が潤滑油内に混入する。この摩耗粉は、例えば、鉄粉等の導体物質である。機械部品の摩耗が進んで故障率曲線(バスタブ曲線)における摩耗故障期に入ると、潤滑油内に混入した摩耗粉の量が増加する。このため、潤滑油内の摩耗粉の量を検知するセンサにより、機械部品の予防保全を的確に行うことができる。
【0003】
このようなセンサとして、例えば特許文献1には、自動車のトランスミッション等に装着され、オイル容器内のオイルの劣化や、オイルで潤滑される機械部品の摩耗程度等をチェックするオイルチェックセンサが開示されている。このセンサは、一対の電極と、オイル中に含まれる鉄粉等(導体物質)を吸着する磁石とを備えており、吸着された導体物質によって変化する一対の電極間の抵抗値に基づいて、オイル中の導体物質の量を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-286697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、減速機等において検出する摩耗粉は、初期摩耗によって増加し、その後、ほぼ一定の通常運転を経た後、故障発生前に急激に増加する。本発明のセンサとしては、この故障前の摩耗粉量の増大を検知するが、減速機のサイズが大きい場合など、初期摩耗によって発生する摩耗粉量が多い場合、センサが誤動作して、本来検知すべき故障前の摩耗粉量の増大を検知できない場合がある。
また、センサの誤動作を防止して、故障前における検知により、減速機等を確実に停止・交換したいという要求がある。
【0006】
さらに、減速機等の機械装置の製造時には、切削加工等によって発生した大粒子径の異物(例えば、切粉等)が当該機械装置の構成部材に付着し、潤滑油内に混入する可能性がある。このような大粒子径の異物がセンサに付着すると、摩耗粉がほとんど発生してなくとも一対の電極間が短絡する。このように、摩耗粉の量を検知するセンサにおいては、摩耗粉の量が少なくても、予期せずにセンサが作動する場合がある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、異物の混入や、摩耗粉の発生量と動作設定量との違いによる予期しない作動を抑制することが可能なセンサを提供することであるという目的を達成しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一態様に係るセンサは、
円柱状の外形を有し
前記円柱の軸方向に見て円形端面の第1の電極と、
前記第1の電極の前記円柱の径方向外側で前記第1の電極の表面に対して面一とされた端部を有する筒状の第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置されて絶縁性を有し、前記第1の電極と前記第2の電極との端部を結ぶ検知面と同一面を有し前記第1の電極と前記第2の電極との間の間隔より小さい導体粒子を吸着することにより前記検知面に沿った前記第1の電極と前記第2の電極との間の電気抵抗を変化させる吸着部と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間の間隔より大きい寸法を有する大径導体片による前記第1の電極と前記第2の電極との短絡を抑制する短絡抑制部と、
を備え、
前記短絡抑制部は、前記第1の電極の周囲に沿って前記検知面から前記軸方向に突出するとともに、前記第1の電極および前記第2の電極の少なくとも一方に設けられた絶縁性を有する凸部であり、
前記軸方向からみて前記吸着部と前記凸部とが前記円柱の径方向に並んで配置される。 本発明のセンサは、
前記第1の電極と前記第2の電極との間の電気抵抗の変化を検知する検知部を備える、ことができる
発明のセンサは、
前記短絡抑制部は、前記円柱の径方向の幅が、前記第1の電極と前記第2の電極との間の間隔と同一である、
ことができる。
本発明のセンサは、
前記円柱の軸方向に見て、前記短絡抑制部は環状を呈し、前記第1の電極の全周を囲むように形成されている、
ことができる。

【0009】
本発明の第一態様に係るセンサは、
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置され、前記第1の電極と前記第2の電極との間の間隔より小さい導体粒子を吸着することにより前記第1の電極と前記第2の電極との間の電気抵抗を変化させる吸着部と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間の間隔より大きい寸法を有する大径導体片による前記第1の電極と前記第2の電極との短絡を抑制する短絡抑制部と、
を備える。
このセンサは、第1の電極と第2の電極との間の間隔より大きい寸法を有する大径導体片(すなわち、異物)による第1の電極と第2の電極との短絡を抑制する短絡抑制部を備えている。これにより、大径導体片による第1の電極と第2の電極との短絡が抑制されるので、予期しないセンサの作動を抑制することが可能である。
【0010】
本発明のセンサは、前記第1の電極と前記第2の電極との間の電気抵抗の変化を検知する検知部を備える、ことができる。
【0011】
本発明のセンサは、前記短絡抑制部は、前記第1の電極および前記第2の電極の少なくとも一方に設けられた絶縁性を有する凸部である、ことができる。
この構成によれば、大径導体片が吸着された場合であっても、第1の電極および第2の電極の少なくとも一方との電気的な接触が凸部によって抑制される。したがって、大径導体片による第1の電極と第2の電極との短絡が抑制され、予期しないセンサの作動を抑制することが可能である。
【0012】
本発明のセンサは、前記吸着部に設けられた凸部である、ことができる。
このように、第1の電極と第2の電極との間に凸部が設けられていることにより、大径導体片が吸着された場合であっても、第1の電極および第2の電極の少なくとも一方との電気的な接触が抑制される。したがって、大径導体片による第1の電極と第2の電極との短絡が抑制され、予期しないセンサの作動を抑制することができる。
【0013】
本発明のセンサは、前記短絡抑制部と前記吸着部とはワンピース構造を有する、ことができる。
【0014】
本発明のセンサは、前記短絡抑制部と前記吸着部とは別部材である、ことができる。
【0015】
本発明のセンサは、前記短絡抑制部は絶縁性を有する、ことができる。
【0016】
本発明のセンサは、前記短絡抑制部は、前記第1の電極と前記第2の電極とが対向する方向に交差する方向に沿って延びるワイヤである、ことができる。
この構成によれば、大径導体片が吸着された場合であっても、第1の電極および第2の電極の少なくとも一方との電気的な接触がワイヤによって抑制される。したがって、大径導体片による第1の電極と第2の電極との短絡が抑制され、予期しないセンサの作動を抑制することが可能である。
【0017】
本発明の第一態様に係るセンサは、一対の電極と、前記一対の電極の間に配置され、導体粒子を吸着することにより前記一対の電極の間の電気抵抗を変化させる吸着部とを含む複数の検知ユニットと、
設定された任意の数の前記検知ユニットにおいて電気抵抗が変化した場合に信号を出力する検知部と、を備える。
【0018】
このセンサは複数の検知ユニットを備えており、検知部は、設定された任意の数の検知ユニットにおいて電気抵抗が低下した場合に信号を出力する。これにより、たとえ大径導体片によって1つの検知ユニットにおいて電気抵抗が変化しても信号を出力しないように検知部を設定することができる。したがって、大径導体片による予期しないセンサの作動を抑制することが可能である。
【0019】
本発明のセンサは、前記導体粒子が吸着されていない状態において、前記複数の検知ユニットのそれぞれにおける電気抵抗は同一である、ことができる。
この構成によれば、複数の検知ユニットのそれぞれに印加する電圧を同一にできるので、センサに印加する電圧を低くすることができる。
【0020】
本発明のセンサは、前記複数の検知ユニットは、互いに並列に接続されている、ことができる。
この構成によれば、複数の検知ユニットが直列に接続された場合に比べて、それぞれの検知ユニットの一対の電極間に印加する電圧を低くすることができる。
【0021】
本発明の第一態様に係るセンサは、第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置され、導体粒子を吸着することにより前記第1の電極と前記第2の電極との間の電気抵抗を変化させる吸着部と、
前記導体摩耗粉が所定量吸着されたことを検知する検知部と、
前記導体摩耗粉の吸着状態を調整して検知感度を変更する感度調整手段と、
を有することにより上記課題を解決した。
【0022】
本発明のセンサによれば、感度調整手段によって導体摩耗粉の吸着状態を調整する。これにより、摩耗粉の吸着量が多かった場合でも、導体摩耗粉の吸着に応じてセンサの検知感度を調整して、確実な検知をおこなうことが可能となる。特に、センサの設置される減速機等のサイズが大きく、初期摩耗粉の発生量が多かった場合に、初期摩耗粉の吸着を制限する、あるいは、吸着量が多い場合の検出状態を変化するように設定して、確実な検知をおこなうことが可能となる。
【0023】
本発明のセンサは、前記感度調整手段が、前記第1の電極と前記第2の電極間の距離を調整する手段である、ことができる。
【0024】
本発明のセンサは、前記感度調整手段が、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された絶縁体の壁であって、前記壁の高さの異なる前記絶縁体の群である、ことができる。
【0025】
本発明のセンサは、前記感度調整手段が、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された絶縁体であって、前記第1の電極と前記第2の電極間の前記絶縁体の厚さの異なる前記絶縁体の群である、ことができる。
【0026】
本発明のセンサは、前記第1の電極が、前記第2の電極と同一面上に端部を有する、ことができる。
【0027】
本発明のセンサは、前記感度調整手段が、少なくとも前記吸着部以外に前記導体摩耗粉を吸着する別吸着部である、ことができる。
【0028】
本発明のセンサは、前記感度調整手段が、前記第1の電極および前記第2の電極の表面処理層を有する、ことができる。
【0029】
本発明の第一態様に係るセンサは、有底筒状の外電極と、
前記外電極に有底内筒として配置される絶縁体と、
前記絶縁体の内部に配置される磁石と、
前記絶縁体の内部に配置されるとともに前記磁石よりも軸方向で前記外電極の開口側に位置する内電極と、
前記磁石により前記外電極および前記内電極を短絡するように導体摩耗粉が所定量吸着されたことを検知する検知部と、
前記導体摩耗粉の吸着状態を調整して検知感度を変更する感度調整手段と、
を有することにより上記課題を解決した。
【0030】
本発明のセンサによれば、感度調整手段によって導体摩耗粉の吸着状態を調整する。これにより、摩耗粉の吸着量が多かった場合でも、導体摩耗粉の吸着に応じてセンサの検知感度を調整して、確実な検知をおこなうことが可能となる。特に、センサの設置される減速機等のサイズが大きく、初期摩耗粉の発生量が多かった場合に、初期摩耗粉の吸着を制限する、あるいは、吸着量が多い場合の検出状態を変化するように設定して、確実な検知をおこなうことが可能となる。
【0031】
本発明のセンサは、前記絶縁体が、筒部と、シート状の底部と、
を有する、ことができる。
【0032】
本発明のセンサは、前記内電極と前記磁石と前記絶縁体の底部と前記外電極の底部とを前記軸方向に貫通する締結部を有する、ことができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、予期しない作動を抑制して、動作確実性を向上可能なセンサを提供することができるという効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の第1実施形態に係るセンサを備える機械装置の一例を示す断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るセンサの上面図および断面図である。
図3】変形例に係る短絡抑制部を有するセンサを示す上面図および断面図である。
図4】変形例に係る短絡抑制部を有するセンサを示す上面図および断面図である。
図5】変形例に係る短絡抑制部を有するセンサを示す上面図および断面図である。
図6】変形例に係る短絡抑制部を有するセンサを示す上面図および断面図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るセンサを説明するための図である。
図8】本発明に係るセンサの第3実施形態を示す断面図である。
図9】本発明に係るセンサの第4実施形態を示す上面図である。
図10】本発明に係るセンサの第5実施形態を示す断面図である。
図11】本発明の第6実施形態に係るセンサを説明するための図である。
図12】本発明の第7実施形態に係るセンサを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係るセンサの第1実施形態を、図面に基づいて説明する。
なお、複数の図面において共通する構成要素には当該複数の図面を通じて同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。
【0036】
図1は、本発明の一実施形態に係るセンサ5を備える機構1の一例を示す断面図である。機構1は、例えばロボットアーム等の可動部等であり、減速機2と、入力側に設けられたフランジ3と、サーボモータ4と、出力側の装置A1と、を備えている。
【0037】
減速機2は、フランジ3に取り付けられたケース21と、サーボモータ4の出力軸22に接続された入力軸23と、出力側の装置A1に接続された出力軸24とを備えている。入力軸23および出力軸24は、ケース21に対して軸AXを中心として回転可能に支持されている。サーボモータ4の出力は、入力軸23を介して減速機2に入力され、減速機2によって減速された後、出力軸24を介して出力側の装置A1に伝達される。これにより、出力側の装置A1とフランジ3とは相対回転可能となっている。
【0038】
フランジ3は筒状の部材であり、減速機2の少なくとも一部を収容する。また、フランジ3には、サーボモータ4が取り付けられる。軸AXに沿った方向におけるフランジ3の一端の開口部は減速機2によって塞がれ、他端の開口部はサーボモータ4によって塞がれている。これにより、フランジ3には、密閉された中空部(空間S)が形成されている。空間S内には潤滑油が収容されており、フランジ3はオイルバスとしても機能する。
【0039】
減速機2のケース21内には、例えば歯車機構が収容されている。ケース21内の空間は、フランジ3内の空間Sと連続している。減速機2が作動すると、ケース21内の歯車機構の回転に伴い、ケース21内の空間とフランジ3内の空間Sとの間で潤滑油の循環が生じる。この潤滑油の循環により、減速機2の内部で発生した摩耗粉(導体摩耗粉)等の導体物質がフランジ3内の空間Sに排出される。
【0040】
空間S内には、潤滑油内に含まれる導体物質の量を検知するためのセンサ5が取り付けられている。センサ5は、例えば支持部材25を介してフランジ3に固定される。センサ5は、磁石によって潤滑油内に含まれる導体物質を一対の電極間に集積させ、一対の電極間の電気抵抗の変化に基づいて潤滑油内の導体物質の量を検知する。センサ5が配置される位置は、例えばケース21内でもよく、潤滑油が収容された空間内であれば機構1内の任意の場所に配置することができる。
【0041】
次に、図2を参照して、センサ5の構造について詳細に説明する。図2は、本発明の第1実施形態に係るセンサの構成を概略的に示す図である。図2は、センサ5の上面図、および当該上面図のA-A線に沿った断面を示している。
【0042】
図2に示されるように、センサ5は略円柱状の外形を有しており、第1の電極6と、磁石7と、第2の電極8と、締結部材9と、吸着部10とを備えている。図2に示されるように、センサ5の上面から見て第1の電極6は円形状であり、センサ5の中心部に配置されている。第2の電極8は有底円筒状の部材であり、第1の電極6と略平行に延びる底部8aと、底部8aに連続し、当該底部8aに対して略垂直に延びる壁部(筒部)8bとを含む。
【0043】
磁石7は、略円柱状を呈しており、第1の電極6と第2の電極8の底部8aとの間に配置されている。第1の電極6、磁石7、および第2の電極8の底部8aのそれぞれには、締結部材9(図示の実施形態ではボルト)が挿通される貫通孔がそれぞれ設けられている。この貫通孔に締結部材9が挿通されることにより、第1の電極6、磁石7、および第2の電極8は互いに固定されている。第1の電極6と第2の電極8とは互いに離間した状態で固定される。第1の電極6および第2の電極8は、例えば、鉄やフェライトコア、ケイ素鋼等の導電性を有する磁性材料によって構成される。磁石7は、例えば永久磁石であるが、永久磁石を用いずに、第1の電極6が磁石と電極とを兼ねる構成としてもよい。
【0044】
吸着部10は、第1の電極6と第2の電極8との間の空間を埋めるように設けられており、第1の電極6と第2の電極8との間に介在している。第1の電極6と第2の電極8の壁部8bとの間の間隔X1は、潤滑油内に含まれる導体物質の寸法よりも大きくなっている。一例として、導体物質の寸法は1.0μm~100μm程度であり、間隔X1は初期摩耗鉄粉で短絡しない程度の距離にすることが好ましい。図示の実施形態では、磁石7は第1の電極6に接触し、吸着部10によって囲まれている。吸着部10は、例えば、樹脂等の絶縁性を有する非磁性材料によって構成されている。磁石7により、第1の電極6と第2の電極8との間には磁束線が形成される。これにより、潤滑油内に含まれる導体物質は吸着部10の周辺に集積される。
【0045】
センサ5は、大径導体片による第1の電極6と第2の電極8との短絡を抑制する短絡抑制部10aを備えている。ここで、大径導体片とは、例えば機構1(図1参照)の製造時の切削加工等によって発生した切粉等の異物であり、第1の電極6と第2の電極8との間の間隔X1より大きい寸法を有する導体粒子をいう。一例として、大径導体片の大きさは、2mm~5mm程度である。
【0046】
図2に示される実施形態では、短絡抑制部10aは、吸着部10に設けられた凸部であり、吸着部10と一体に構成されている。すなわち、短絡抑制部10aと吸着部10とはワンピース構造を有している。このため、短絡抑制部10aは、吸着部10と同様に、例えば樹脂等の絶縁性を有する非磁性材料によって構成される。なお、吸着部10と短絡抑制部10aとは別体であってもよい。図2の断面図において、短絡抑制部10aの幅は、第1の電極6と第2の電極8の壁部8bとの間の間隔X1と略同一である。センサ5の上面から見て、短絡抑制部10aは環状を呈しており、第1の電極6の全周を囲むように形成されている。
【0047】
第1の電極6および第2の電極8には、それぞれ出力ライン(不図示)が接続されており、当該出力ラインを介して第1の電極6および第2の電極8は検知部50(図1参照)と電気的に接続されている。
【0048】
検知部50は、第1の電極6と第2の電極8との間の電気抵抗の変化を検知する。検知部50は、例えば、吸着部10の周辺への導体物質の集積による電気抵抗の変化に基づき、機構1の部品の故障予知を行うセンサ駆動回路を含む。潤滑油内に含まれる導体物質が吸着部10の周辺に集積されると、電圧が印加された第1の電極6と第2の電極8との間の電気抵抗が低下(または短絡)し、出力ラインの出力レベルが変化する。検知部50は、この電気抵抗の変化を検出することで、機構1の部品の故障予知を行う。
【0049】
なお、電気抵抗の低下には、非通電と通電によるオン、オフ信号も含まれ、非通電と通電との2つの状態を検知(以下、「デジタル検知」という)してもよい。検知部50は、有線又は無線により、マニピュレータ等の上位制御装置(不図示)に接続されていてもよい。上位制御装置は、検知部50からの信号を受信すると、所定の報知手段(例えば、表示装置や音声出力装置等)により、減速機2等のメンテナンスを促す警告を発するように構成することができる。
【0050】
以上説明したように、センサ5は、第1の電極6と第2の電極8との間の間隔X1より大きい寸法を有する大径導体片による第1の電極6と第2の電極8との短絡を抑制する短絡抑制部10aを備えている。短絡抑制部10aは、吸着部10に設けられた凸部である。このように、第1の電極6と第2の電極8との間に凸部が設けられていることにより、大径導体片が吸着部10の周辺に吸着された場合であっても、第1の電極6および第2の電極8の少なくとも一方と大径導体片との電気的な接触が抑制される。したがって、大径導体片による第1の電極6と第2の電極8との短絡が抑制され、予期しないセンサ5の作動を抑制することができる。
【0051】
また、センサ5の短絡抑制部10aと吸着部10とは、ワンピース構造を有している。これにより、センサ5を構成する部品点数が減少するので、センサ5の製造を容易にすることができる。
【0052】
次に、図3を参照して、センサ5の短絡抑制部の変形例について説明する。
図3に示されるように、変形例に係る短絡抑制部11は、短絡抑制部10aと同様に、吸着部10に設けられた凸部であり、吸着部10と一体に構成されている。短絡抑制部11は、短絡抑制部10aと同様に、例えば樹脂などの絶縁性を有する非磁性材料によって構成される。センサ5の上面から見て、短絡抑制部11は環状を呈しており、第1の電極6の全周を囲むように形成されている。短絡抑制部11が短絡抑制部10aと相違する点は、短絡抑制部11の幅が、第1の電極6と第2の電極8の壁部8bとの間の間隔X1よりも小さい点である。
【0053】
上記のように、間隔X1より小さい幅を有する短絡抑制部11を備えるセンサ5においても、第1の電極6および第2の電極8の少なくとも一方と大径導体片との電気的な接触が抑制される。したがって、大径導体片による第1の電極6と第2の電極8との短絡が抑制され、予期しないセンサ5の作動を抑制することができる。
【0054】
次に、図4を参照して、センサ5の短絡抑制部の他の変形例について説明する。
図4に示されるように、センサ5の短絡抑制部は複数に分割されていてもよい。図4に示される実施形態では、センサ5は3つの短絡抑制部12a,12b、12cを有している。複数の短絡抑制部12a,12b、2cのそれぞれは、吸着部10に設けられた凸部であり、吸着部10と一体に構成されている。短絡抑制部12a,12b,12cは、吸着部10と同様に、例えば樹脂などの絶縁性を有する非磁性材料によって構成される。センサ5の上面から見て、複数の短絡抑制部12a,12b,12cは、第1の電極6の周囲において、等間隔で互いに離間して配置されている。
【0055】
上記のように、短絡抑制部が複数に分割されていても、短絡抑制部12a,12b,12cが設けられた場所においては、第1の電極6および第2の電極8の少なくとも一方と大径導体片との電気的な接触が抑制される。したがって、第1の電極6と第2の電極8との短絡が抑制され、予期しないセンサ5の作動を抑制することができる。
【0056】
次に、図5を参照して、センサ5の短絡抑制部の更なる変形例について説明する。
図5に示されるように、センサ5の短絡抑制部は、第1の電極6と第2の電極8の壁部8bとが対向する方向に交差する方向に交差する方向に沿って延びるワイヤ14であってもよい。ワイヤ14は、複数の支持部13によって支持されており、吸着部10から離間して、当該吸着部10に設けられている。
【0057】
図5の実施形態では、複数の支持部13のそれぞれは杭状の部材であり、その一端は吸着部10の内部に埋め込まれた状態で固定されている。それぞれの支持部13の他端には、ワイヤ14が挿通される貫通孔が設けられている。この貫通孔にワイヤ14が挿通されることにより、当該ワイヤ14は吸着部10から離間した状態で固定される。センサ5の上面からみて、複数の支持部13は、第1の電極6の周方向において等間隔で互いに離間して配置されており、ワイヤ14は、第1の電極6の全周を囲むように設けられている。ワイヤ14を構成する材料は特に限定されず、金属等の導電性材料であってもよいし、樹脂等の絶縁性材料であってもよい。
【0058】
上記のように、短絡抑制部がワイヤ14である場合においても、ワイヤ14によって第1の電極6および第2の電極8の少なくとも一方と大径導体片との電気的な接触が抑制される。したがって、第1の電極6と第2の電極8との短絡が抑制され、予期しないセンサ5の作動を抑制することができる。
【0059】
次に、図6を参照して、センサ5の短絡抑制部の更なる変形例について説明する。
図6に示されるように、変形例に係る短絡抑制部15は、第1の電極6および第2の電極8の少なくとも一方に設けられた絶縁性を有する凸部であってもよい。図示の実施形態では、短絡抑制部15は、第2の電極8の壁部8bにおいて、壁部8bが吸着部10と接する内縁に沿って設けられている。なお、短絡抑制部15は、第1の電極6に設けられていてもよいし、第1の電極6および第2の電極のそれぞれに設けられていてもよい。
【0060】
上記のように、短絡抑制部15が第1の電極6および第2の電極8の少なくとも一方に設けられている場合であっても、短絡抑制部10aと同様に、第1の電極6および第2の電極8の少なくとも一方と大径導体片との電気的な接触が抑制される。したがって、第1の電極6と第2の電極8との短絡が抑制され、予期しないセンサ5の作動を抑制することができる。
【0061】
以下、本発明に係るセンサの第2実施形態を、図面に基づいて説明する。
図7は、本実施形態におけるセンサを説明する図である。
本実施形態に係るセンサ30は、上述した第1実施形態におけるセンサ5と同様に、潤滑油内に含まれる導体物質の量を検知するためのセンサである。
【0062】
センサ30は略円柱状の外形を有しており、複数の検知ユニットと、当該検知ユニットにおいて電気抵抗が変化した場合に信号を出力する検知部50と、を備えている。
より具体的に、センサ30は、中心電極31と、複数の外側電極32と、中心電極31と外側電極32との間に配置された吸着部33と、磁石34とを有している。複数の外側電極32は、互いに絶縁されており、中心電極31および1つの外側電極32から成る一対の電極と、当該一対の電極の間に配置された吸着部33とによって1つの検知ユニットが構成されている。
【0063】
図示の実施形態では、センサ30は4つの外側電極32A,32B,32C,32Dを有しており、4つの検知ユニットが構成されている。外側電極32の数、および検知ユニットの数は特に限定されない。センサ30の磁石34は、一対の電極の間に磁束線を形成するので、潤滑油内に含まれる導体物質は吸着部33に吸着される。このように、吸着部33の付近に導体物質が集積されると、検知ユニットにおける電気抵抗が変化する。導体粒子が吸着されていない状態において、複数の検知ユニットのそれぞれにおける電気抵抗は同一である。
【0064】
中心電極31および複数の外側電極32のそれぞれには出力ラインが接続されており、当該出力ラインを介して複数の検知ユニットのそれぞれは検知部50と電気的に接続されている。
本実施形態では、複数の検知ユニットは互いに並列に接続されており、中心電極31と各外側電極32との間には、同一の電圧源からの電圧が印加されている。検知部50は、設定された任意の数の検知ユニットにおいて電気抵抗が変化した場合に信号を出力する。例えば、検知部50は、2つ以上の検知ユニットにおいて電気抵抗が低下した場合にマニピュレータ等の上位制御装置に信号を出力するように設定されてもよいし、全ての検知ユニットにおいて電気抵抗が低下した場合に信号を出力するように設定されてもよい。
【0065】
以上説明したように、センサ30は複数の検知ユニットを備えており、検知部50は、設定された任意の数の検知ユニットにおいて電気抵抗が低下した場合に信号を出力する。これにより、たとえ大径導体片によって1つの検知ユニットにおいて電気抵抗が変化しても信号を出力しないように検知部50を設定することができる。したがって、大径導体片による予期しないセンサの作動を抑制することが可能である。また、センサ30によれば、検知部50が信号を出力する条件を設定することができるので、1つのセンサ30において信号が出力されるタイミングを、ユーザごとに要望が異なる最適な故障予知のタイミングに合わせることができる。
【0066】
また、導体粒子が吸着されていない状態において、複数の検知ユニットのそれぞれにおける電気抵抗は同一である。これにより、センサ30に印加する電圧を低くすることができる。
【0067】
また、複数の検知ユニットは、互いに並列に接続されている。これにより、それぞれの検知ユニットの一対の電極間に印加する電圧を低くすることができる。
【0068】
以下、本発明に係るセンサの第3実施形態を、図面に基づいて説明する。
図8は、本実施形態におけるセンサを示す断面図であり、本実施形態において、上述した各実施形態と異なるのは、吸着部に関する点である。なお、図8において、図示を省略した構成がある。
【0069】
本実施形態におけるセンサ60は、図8に示すように、略円柱状の外形を有しており、第1の電極(内電極)61と、磁石64と、第2の電極(外電極)62と、締結部材(締結部)69と、吸着部(絶縁体)63と、ケース65を備えている。
センサ60の上面から見て第1の電極(内電極)61は円形状であり、センサ60の中心部に配置されている。第2の電極(外電極)62は有底円筒形の部材であり、第1の電極(内電極)61と略平行に延びる底部62aと、底部62aに連続して、当該底部62aに対して略垂直に延びる壁部(筒部)62bとを有する。第1の電極(内電極)61は、第2の電極(外電極)62の開口に位置する。
【0070】
磁石64は、略円柱状(略円盤状)を呈しており、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62の底部62aとの間に配置されている。第1の電極(内電極)61、磁石64、および第2の電極(外電極)62の底部62aのそれぞれには、締結部材(締結部)69(図示の実施形態ではボルト)が挿通される貫通孔がそれぞれ設けられている。この貫通孔に締結部材(締結部)69が挿通されることにより、第1の電極(内電極)61、磁石64、および第2の電極(外電極)62が互いに固定されている。
磁石64の外径は、第2の電極(外電極)62の外径よりも小さく形成されている。
【0071】
第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62とは互いに離間した状態で固定される。第1の電極(内電極)61および第2の電極(外電極)62は、例えば、鉄やフェライトコア、ケイ素鋼等の導電性を有する磁性材料によって構成される。磁石64は、例えば永久磁石であるが、永久磁石を用いずに、第1の電極(内電極)61が磁石と電極とを兼ねる構成としてもよい。
【0072】
吸着部(絶縁体)63は、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間の空間を埋めるように設けられており、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間に介在している。
吸着部(絶縁体)63は、第2の電極(外電極)62の底部62aに沿った底部63aと、第2の電極(外電極)62の壁部(筒部)62bに沿った筒部63bと、を有する。底部63aと筒部63bとは別体とされる。底部63aは、シート状とされる。
【0073】
吸着部(絶縁体)63の底部63aは、例えば、絶縁紙として、その厚さを0.05~1mmとすることができる。吸着部(絶縁体)63の底部63aは、筒部63bの内径と略同一の外径である円形紙とすることができる。
さらに、底部63aは、筒部63bの内径よりも大きい外径である円形紙とすることができる。このとき、底部63aは、筒部63bの外径よりも小さい外径である円形紙とすることができる。さらに、底部63aは、筒部63bの外径と同じ外径である円形紙とすることができる。
【0074】
吸着部(絶縁体)63の筒部63bには、その内面に、段差63cが形成される。吸着部(絶縁体)63の筒部63bは、段差63cよりも第1の電極(内電極)61側は、第1の電極(内電極)61の外径と等しい内径寸法を有する。吸着部(絶縁体)63の筒部63bは、段差63cよりも磁石64側は、磁石64の外径と等しい内径寸法を有する。
【0075】
吸着部(絶縁体)63の筒部63bにおける端部の厚さ、つまり、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62の壁部62bとの間の間隔X1は、潤滑油内に含まれる導体物質の寸法よりも大きくなっている。一例として、導体物質の寸法は1.0μm~100μm程度であり、間隔X1は初期摩耗鉄粉で短絡しない程度の距離にすることが好ましい。図示の実施形態では、磁石64は第1の電極(内電極)61に接触し、吸着部(絶縁体)63によって囲まれている。
【0076】
吸着部(絶縁体)63は、例えば、樹脂等の絶縁性を有する非磁性材料によって構成されている。磁石64により、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間には磁束線が形成される。これにより、潤滑油内に含まれる導体物質は吸着部(絶縁体)63の周辺に集積される。なお、潤滑油の循環する範囲が検出領域とされる。
【0077】
本実施形態のセンサ60は、第1の電極(内電極)61の表面に対して略面一とされる第2の電極(外電極)62の端部を結ぶ平面が、検知面60aとされる。すなわち、検知面60aにおいて、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間に、磁束線に対応して導体摩耗粉が吸着されて、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間を電気的に接続することで、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間の抵抗値が変化することを検知するためである。
なお、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62の開口とが、面一でなくてもよい。
【0078】
第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間の沿面距離が長くなることによって、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間の抵抗値が閾値まで低減するか短絡する状態まで吸着する導体摩耗粉の量が大きくなる。
また、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間の沿面距離が短くなることによって、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間の抵抗値が閾値まで低減するか短絡する状態まで吸着する導体摩耗粉の量が小さくなる。
【0079】
本実施形態のセンサ60は、導体摩耗粉の吸着状態を調整して検知感度を変更する感度調整手段を有する。
本実施形態において、感度調整手段は、吸着部(絶縁体)63とされる。さらに、本実施形態において、感度調整手段は、吸着部(絶縁体)63の筒部63bとされる。
【0080】
本実施形態の吸着部(絶縁体)63は、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との沿面距離を調節して、吸着部(絶縁体)63で吸着する導体摩耗粉の量を調節することが可能である。
具体的には、図8に示すように、吸着部(絶縁体)63の筒部63bが、検知面60aから突出する高さが変化した群を有する。
図8のセンサ60Aは、検知面60aと吸着部(絶縁体)63Aの筒部63bの端部との高さHAが同じ、つまり、検知面60aと吸着部(絶縁体)63Aの筒部63bが面一である。
【0081】
図8のセンサ60Bは、検知面60aに比べて、吸着部(絶縁体)63Bの筒部63bの端部が、高さHBだけ高い、つまり、検知面60aから吸着部(絶縁体)63Bの筒部63bが高さHBだけ突出している。
図8のセンサ60Cは、検知面60aに比べて、吸着部(絶縁体)63Cの筒部63bの端部が、高さHCだけ高い、つまり、検知面60aから吸着部(絶縁体)63Cの筒部63bが高さHCだけ突出している。
図8のセンサ60Dは、検知面60aに比べて、吸着部(絶縁体)63Dの筒部63bの端部が、高さHDだけ高い、つまり、検知面60aから吸着部(絶縁体)63Dの筒部63bが高さHDだけ突出している。
【0082】
ここで、高さHA,HB,HC,HDの間の関係は、
HA(=0)<HB<HC<HD
として設定されている。
【0083】
本実施形態のセンサ60は、このような異なる値に設定された吸着部(絶縁体)63の筒部63bの群を有し、この中から選択して組み立てることができる。
つまり、高さ(軸方向寸法)の異なる複数の吸着部(絶縁体)63の筒部63bの群は、感度調整手段を構成する。
これにより、感度調整手段を選択することで、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間の沿面距離を複数の値から選択することができる。
【0084】
ここで、図8のセンサ60Aにおいて、吸着部(絶縁体)63Aの筒部63bの端部で設定される第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間の沿面距離を基準とする。
【0085】
これに対して、図8のセンサ60Bにおいて、吸着部(絶縁体)63Bの筒部63bの端部で設定される第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間の沿面距離は、基準よりも長くなる。したがって、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間の抵抗値が閾値まで低減するか短絡する状態まで吸着する導体摩耗粉の量を大きくすることができる。これにより、例えば、減速機2のサイズが大きい場合でも、減速機2における初期摩耗粉量の増大に影響されることなく、減速機2の故障検知を確実におこなうことができる。
【0086】
さらに、図8のセンサ60Cにおいて、吸着部(絶縁体)63Cの筒部63bの端部で設定される第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間の沿面距離は、センサ60Bよりも長くなる。したがって、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間の抵抗値が閾値まで低減するか短絡する状態まで吸着する導体摩耗粉の量を大きくすることができる。これにより、減速機2のサイズがさらに大きい場合でも、減速機2における初期摩耗粉量の増大に影響されることなく、減速機2の故障検知を確実におこなうことができる。
【0087】
さらに、図8のセンサ60Dにおいて、吸着部(絶縁体)63Dの筒部63bの端部で設定される第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間の沿面距離は、センサ60Cよりも長くなる。したがって、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間の抵抗値が閾値まで低減するか短絡する状態まで吸着する導体摩耗粉の量を大きくすることができる。これにより、減速機2のサイズがより一層大きい場合でも、減速機2における初期摩耗粉量の増大に影響されることなく、減速機2の故障検知を確実におこなうことができる。
【0088】
このように、吸着部(絶縁体)63の群から適宜選択することで、センサ60のサイズを大きくすることなく、また、他の構成部品に影響を及ぼすことなく、減速機2の故障検知を確実におこなうことができる。
つまり、中心電極(内電極)61、外側電極(外電極)62、磁石64、ケース65、締結部材(締結部)69をいずれも共通として、吸着部(絶縁体)63のみを交換することで、異なる感度のセンサ60とすることができる。
【0089】
なお、上記の本実施形態においては、感度調整手段としての吸着部(絶縁体)63の群を4種類としたが、これに限るものではなく、適宜設定することができる。
【0090】
本実施形態におけるセンサ60の組み立ては、次のようにおこなうことができる。
【0091】
まず、ケース65の内部に外側電極(外電極)62をセットする。次いで、外側電極(外電極)62の底部62aに吸着部(絶縁体)63の底部63aを配置する。次いで、外側電極(外電極)62に、選択した高さ寸法を有する吸着部(絶縁体)63の筒部63bを挿入する。次いで、筒部63bに、磁石64を挿入し、さらに、中心電極(内電極)61を挿入する。この状態で、締結部材(締結部)69を貫通して締結・固定することで、センサ60を組み立てる。
【0092】
本実施形態におけるセンサ60は、感度調整手段を有することで、検知感度を所定の状態に設定することが可能となる。
具体的には、想定される導体摩耗粉の発生量が多い場合に対応して、感度調整手段を選択して、電極61,62間で摩耗粉が吸着される沿面距離を増大し、センサ60の検知感度を所定の状態に設定することが可能となる。また、想定される導体摩耗粉の発生量が少ない場合に対応して、感度調整手段を選択して、電極61,62間で摩耗粉が吸着される長さを減らし、センサ60の検知感度を所定の状態に設定することが可能となる。
これにより、減速機2における初期摩耗粉量の増大に影響されることなく、減速機2の故障検知を確実におこなうことができる。
【0093】
減速機の型式(大きさ)の違いによって、初期摩耗で発生する鉄粉(摩耗粉)量には差があり、大型減速機の場合は初期摩耗鉄粉の量が多く、初期摩耗鉄粉によって、電極61,62間のセンサ電気ギャップが埋まって反応してしまい、誤動作する可能性がある。そのため、減速機型式に応じたセンサの雷気ギャップ設計を行う必要があるが、センサの直径方向の大型化を招くという問題がある。
これに対し、本実施形態におけるセンサ60は、高さの異なる吸着部(絶縁体)63からなる感度調整手段を有することで、直径方向への延伸と同じ効果が得られるため、センサ60が大型化することがない。
【0094】
以下、本発明に係るセンサの第4実施形態を、図面に基づいて説明する。
図9は、本実施形態におけるセンサを示す上面図であり、本実施形態において、上述した第3実施形態と異なるのは、吸着部および外電極に関する点である。なお、図9において、図示を省略した構成がある。
【0095】
本実施形態におけるセンサ60は、図9に示すように、略円柱状の外形を有しており、第1の電極(内電極)61と、磁石64と、第2の電極(外電極)62と、締結部材(締結部)69と、吸着部(絶縁体)63と、ケース65を備えている。
センサ60の上面から見て第1の電極(内電極)61は円形状であり、センサ60の中心部に配置されている。第2の電極(外電極)62は有底円筒形の部材であり、(内電極)61と略平行に延びる底部62aと、底部62aに連続して、当該底部62aに対して略垂直に延びる壁部(筒部)62bとを有する。
【0096】
磁石64は、略円柱状(略円盤状)を呈しており、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62の底部62aとの間に配置されている。第1の電極(内電極)61、磁石64、および第2の電極(外電極)62の底部628aのそれぞれには、締結部材(締結部)69(図示の実施形態ではボルト)が挿通される貫通孔がそれぞれ設けられている。この貫通孔に締結部材(締結部)69が挿通されることにより、第1の電極(内電極)61、磁石64、および第2の電極(外電極)62が互いに固定されている。
磁石64の外径は、第2の電極(外電極)62の外径よりも小さく形成されている。
【0097】
第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62とは互いに離間した状態で固定される。第1の電極(内電極)61および第2の電極(外電極)62は、例えば、鉄やフェライトコア、ケイ素鋼等の導電性を有する磁性材料によって構成される。磁石64は、例えば永久磁石であるが、永久磁石を用いずに、第1の電極(内電極)61が磁石と電極とを兼ねる構成としてもよい。
【0098】
吸着部(絶縁体)63は、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間の空間を埋めるように設けられており、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間に介在している。
吸着部(絶縁体)63は、第2の電極(外電極)62の底部62aに沿った底部63aと、第2の電極(外電極)62の壁部(筒部)62bに沿った筒部63bと、を有する。底部63aと筒部63bとは別体とされる。底部63aは、シート状とされる。
【0099】
吸着部(絶縁体)63の底部63aは、例えば、絶縁紙として、その厚さを0.05~1mmとすることができる。吸着部(絶縁体)63の底部63aは、筒部63bの内径と略同一の外径である円形紙とすることができる。
さらに、底部63aは、筒部63bの内径よりも大きい外径である円形紙とすることができる。このとき、底部63aは、筒部63bの外径よりも小さい外径である円形紙とすることができる。さらに、底部63aは、筒部63bの外径と同じ外径である円形紙とすることができる。
【0100】
吸着部(絶縁体)63の筒部63bには、その内面に、段差63cが形成される。吸着部(絶縁体)63の筒部63bは、段差63cよりも第1の電極(内電極)61側は、第1の電極(内電極)61の外径と等しい内径寸法を有する。吸着部(絶縁体)63の筒部63bは、段差63cよりも磁石64側は、磁石64の外径と等しい内径寸法を有する。
【0101】
吸着部(絶縁体)63の筒部63bにおける端部の厚さ、つまり、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62の壁部62bとの間の間隔X1は、潤滑油内に含まれる導体物質の寸法よりも大きくなっている。一例として、導体物質の寸法は1.0μm~100μm程度であり、間隔X1は初期摩耗鉄粉で短絡しない程度の距離にすることが好ましい。図示の実施形態では、磁石64は第1の電極(内電極)61に接触し、吸着部(絶縁体)63によって囲まれている。
【0102】
吸着部(絶縁体)63は、例えば、樹脂等の絶縁性を有する非磁性材料によって構成されている。磁石64により、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間には磁束線が形成される。これにより、潤滑油内に含まれる導体物質は吸着部(絶縁体)63の周辺に集積される。
【0103】
本実施形態のセンサ60は、第1の電極(内電極)61の表面に対して略面一とされる第2の電極(外電極)62の端部を結ぶ平面が、検知面60aとされる。すなわち、検知面60aにおいて、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間に、磁束線に対応して導体摩耗粉が吸着されて、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間を電気的に接続することで、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間の抵抗値が変化することを検知するためである。
【0104】
第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間の沿面距離が長くなることによって、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間の抵抗値が閾値まで低減するか短絡する状態まで吸着する導体摩耗粉の量が大きくなる。
また、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間の沿面距離が短くなることによって、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間の抵抗値が閾値まで低減するか短絡する状態まで吸着する導体摩耗粉の量が小さくなる。
【0105】
本実施形態のセンサ60は、導体摩耗粉の吸着状態を調整して検知感度を変更する感度調整手段を有する。
本実施形態において、感度調整手段は、吸着部(絶縁体)63とされる。さらに、本実施形態において、感度調整手段は、吸着部(絶縁体)63の筒部63b、外側電極(外電極)62、および、ケース65とされる。
【0106】
本実施形態の吸着部(絶縁体)63は、大径導体片による第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との沿面距離を調節して、吸着する導体摩耗粉の量を調節することが可能である。
具体的には、図9に示すように、吸着部(絶縁体)63の筒部63bの径方向厚さが変化した群を有する。
図9のセンサ60Eは、検知面60aにおける第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62の壁部62bとの間の間隔X1、つまり、検知面60aにおける筒部63bの端部の厚さX1となる吸着部(絶縁体)63Eを有する。
また、センサ60Eは、吸着部(絶縁体)63Eに対応する径寸法を有する外側電極(外電極)62Eおよびケース65Eを有する。
【0107】
図9のセンサ60Fは、検知面60aにおける第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62の壁部62bとの間の間隔X2、つまり、検知面60aにおける筒部63bの端部の厚さX2となる吸着部(絶縁体)63Fを有する。
また、センサ60Fは、吸着部(絶縁体)63Fに対応する径寸法を有する外側電極(外電極)62Fおよびケース65Fを有する。
図9のセンサ60Gは、検知面60aにおける第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62の壁部62bとの間の間隔X3、つまり、検知面60aにおける筒部63bの端部の厚さX2となる吸着部(絶縁体)63Gを有する。
また、センサ60Gは、吸着部(絶縁体)63Gに対応する径寸法を有する外側電極(外電極)62Gおよびケース65Gを有する。
【0108】
ここで、厚さX1,X2,X3の間の関係は、
X1<X2<X3
として設定されている。
【0109】
本実施形態のセンサ60は、このような異なる値に設定された吸着部(絶縁体)63の筒部63bの群を有し、この中から選択して組み立てることができる。
つまり、厚さ(径方向寸法)の異なる複数の吸着部(絶縁体)63の筒部63bの群は、感度調整手段を構成する。
これにより、感度調整手段を選択することで、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間の沿面距離を複数の値から選択することができる。
【0110】
ここで、図9のセンサ60Eにおいて、吸着部(絶縁体)63Eの筒部63bの端部で設定される第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62Eとの間の沿面距離を基準とする。
【0111】
これに対して、図9のセンサ60Fにおいて、吸着部(絶縁体)63Fの筒部63bの端部で設定される第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62Fとの間の沿面距離は、基準よりも長くなる。したがって、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62Fとの間の抵抗値が閾値まで低減するか短絡する状態まで吸着する導体摩耗粉の量を大きくすることができる。これにより、例えば、減速機2のサイズが大きい場合でも、減速機2における初期摩耗粉量の増大に影響されることなく、減速機2の故障検知を確実におこなうことができる。
【0112】
さらに、図9のセンサ60Gにおいて、吸着部(絶縁体)63Gの筒部63bの端部で設定される第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62Gとの間の沿面距離は、センサ60Fよりも長くなる。したがって、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62Gとの間の抵抗値が閾値まで低減するか短絡する状態まで吸着する導体摩耗粉の量を大きくすることができる。これにより、減速機2のサイズがさらに大きい場合でも、減速機2における初期摩耗粉量の増大に影響されることなく、減速機2の故障検知を確実におこなうことができる。
【0113】
このように、吸着部(絶縁体)63の群から適宜選択することで、センサ60の軸方向の大きさを大きくすることなく、また、中心電極(内電極)61、磁石64、締結部材(締結部)69に影響を及ぼすことなく、減速機2の故障検知を確実におこなうことができる。
つまり、これらをいずれも共通として、吸着部(絶縁体)63、外側電極(外電極)62、ケース65を交換することで、異なる感度のセンサ60とすることができる。
【0114】
なお、上記の本実施形態においては、感度調整手段としての吸着部(絶縁体)63の群を3種類としたが、これに限るものではなく、適宜設定することができる。
【0115】
本実施形態におけるセンサ60の組み立ては、次のようにおこなうことができる。
【0116】
まず、選択した径寸法を有するケース65の内部に外側電極(外電極)62をセットする。次いで、外側電極(外電極)62の底部62aに、対応する径寸法の吸着部(絶縁体)63の底部63aを配置する。次いで、外側電極(外電極)62に、選択した径寸法を有する吸着部(絶縁体)63の筒部63bを挿入する。次いで、筒部63bに、磁石64を挿入し、さらに、中心電極(内電極)61を挿入する。この状態で、締結部材(締結部)69を貫通して締結・固定することで、センサ60を組み立てる。
なお、選択した径寸法を有するケース65、外側電極(外電極)62、吸着部(絶縁体)63の組は、あらかじめセットしておくこともできる。
【0117】
本実施形態におけるセンサ60は、感度調整手段を有することで、検知感度を所定の状態に設定することが可能となる。
具体的には、想定される導体摩耗粉の発生量が多い場合に対応して、感度調整手段を選択して、電極61,62間で摩耗粉が吸着される沿面距離を増大し、センサ60の検知感度を所定の状態に設定することが可能となる。また、想定される導体摩耗粉の発生量が少ない場合に対応して、感度調整手段を選択して、電極61,62間で摩耗粉が吸着される長さを減らし、センサ60の検知感度を所定の状態に設定することが可能となる。
これにより、減速機2における初期摩耗粉量の増大に影響されることなく、減速機2の故障検知を確実におこなうことができる。
【0118】
以下、本発明に係るセンサの第5実施形態を、図面に基づいて説明する。
図10は、本実施形態におけるセンサを示す断面図であり、本実施形態において、上述した第3および第4実施形態と異なるのは、電極に関する点である。なお、図10において、図示を省略した構成がある。
【0119】
本実施形態におけるセンサ60は、図10に示すように、第3および第4実施形態のセンサ60とほぼ同じ構成とされる。
本実施形態におけるセンサ60は、導体摩耗粉の吸着状態を調整して検知感度を変更する感度調整手段を有する。
【0120】
本実施形態において、感度調整手段は、第1の電極(内電極)61と、第2の電極(外電極)62とされる。
本実施形態の第1の電極(内電極)61には、表面処理層61hが形成されている。本実施形態の第2の電極(外電極)62には、表面処理層62hが形成されている。
【0121】
表面処理層61h,62hは、いずれも、滑り性・非粘着性が良好で、かつ、導線性を有し、低付着性、平滑性、潤滑性を有している。
表面処理層61h,62hは、例えば、フッ素樹脂複合無電解ニッケルめっき等によって、形成することができる。ここで、フッ素樹脂はポリテトラフルオロエチレン粒子等とすることができる。
【0122】
表面処理層61h,62hにより、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62とで吸着可能な摩耗粉の量を低減する可能性のあるスラッジが、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62と検知面60aに付着して、第1の電極(内電極)61と第2の電極(外電極)62との間で摩耗粉が吸着される量を減らしてしまうことを防止できる。
これにより、センサ60の検知感度を所定の状態に設定することが可能となる。なお、図10において、スラッジが付着した状態を破線で示す。
【0123】
表面処理層61h,62hを設けない場合には、潤滑剤によって発生するスラッジが、センサの電極に堆積して絶縁皮膜が形成され、これが誤動作を発生する可能性がある。これに対して、本実施形態においては、表面処理層61h,62hを形成したことで、表面処理層61h,62hによる滑り性の向上と、これによる潤滑剤の流れの良好さと、によってスラッジの堆積が防止されて、安定したセンサ60の故障予知の動作を期待できる。
【0124】
以下、本発明に係るセンサの第6実施形態を、図面に基づいて説明する。
図11は、本実施形態におけるセンサを説明する図である。
本実施形態に係るセンサ60は、上述した第2実施形態におけるセンサ30と同様に、潤滑油内に含まれる導体物質の量を検知するためのセンサである。
【0125】
センサ60は略円柱状の外形を有しており、複数の検知ユニットと、当該検知ユニットにおいて電気抵抗が変化した場合に信号を出力するとともに漏電を防止する検知部70と、を備えている。
より具体的に、センサ60は、中心電極61と、複数の外側電極62と、中心電極61と外側電極62との間に配置された吸着部63と、磁石64とを有している。複数の外側電極62は、互いに絶縁されており、中心電極61および1つの外側電極62から成る一対の電極と、当該一対の電極の間に配置された吸着部63とによって1つの検知ユニットが構成されている。
【0126】
図示の実施形態では、センサ60は4つの外側電極62A,62B,62C,62Dを有しており、4つの検知ユニットが構成されている。外側電極62の数、および検知ユニットの数は特に限定されない。センサ60の磁石64は、一対の電極の間に磁束線を形成するので、潤滑油内に含まれる導体物質は吸着部63に吸着される。このように、吸着部63の付近に導体物質が集積されると、検知ユニットにおける電気抵抗が変化する。導体摩耗粒子が吸着されていない状態において、複数の検知ユニットのそれぞれにおける電気抵抗は同一である。
【0127】
中心電極61および複数の外側電極62のそれぞれには出力ラインが接続されており、当該出力ラインを介して複数の検知ユニットのそれぞれは検知部70と電気的に接続されている。
【0128】
本実施形態では、複数の検知ユニットは互いに並列に接続されており、中心電極61と各外側電極62との間には、同一の電圧源からの電圧が印加されている。検知部70は、設定された任意の数の検知ユニットにおいて電気抵抗が変化した場合に信号を出力する。例えば、検知部70は、2つ以上の検知ユニットにおいて電気抵抗が低下した場合にマニピュレータ等の上位制御装置に信号を出力するように設定されてもよいし、全ての検知ユニットにおいて電気抵抗が低下した場合に信号を出力するように設定されてもよい。
【0129】
あるいは、検知部70は、設定された任意の検知ユニットを順番に切り替えて、当該検知ユニットにおいて電気抵抗が変化した場合に信号を出力する。
また、検知部70は、上記のように、検知ユニットにおいて電気抵抗が低下した場合に信号を出力し、その後、センサ60への検知電力をオフにするように設定されている。
【0130】
具体的には、検知部70は、上記のように、検知ユニットにおいて電気抵抗が低下した場合に故障表示を点灯する信号を出力し、その後、スイッチ71を切断してセンサ60への検知電力をオフにするように設定されている。つまり、センサ60が鉄粉増加(ギャップ部抵抗値低下)を検知して減速機2を故障と判断した後は通電しない。
【0131】
これにより、摩耗粉が堆積し続けて、センサ60と減速機2あるいは、機構1が接触したとしても、漏電、感電を防ぐことができる。
したがって、センサ60が減速機2の故障を伝達した後も、そのまま減速機2を使用し続けた場合であっても、減速機2内部では運転とともに鉄粉が発生し続け、センサ60にも導体摩耗粉が堆積し続けることになり、センサ60の寸法が鉄粉の堆によって拡大してゆく結果、センサ60と機構1内の部品とが摩耗粉によって接触・通電し、漏電、感電を招く恐れを防止することができる。
【0132】
以下、本発明に係るセンサの第7実施形態を、図面に基づいて説明する。
図12は、本実施形態におけるセンサを説明する図である。
本実施形態に係るセンサ60は、上述した各実施形態におけるセンサ5,30,60と同様に、潤滑油内に含まれる導体物質の量を検知するためのセンサである。
本実施形態においては、図12に示すように、空間S内において、センサ60を覆うカバー66が設けられる。カバー66は、その内部にセンサ60が収納されるとともに、センサ60の検知面60aに対向する位置に、多数の貫通孔67が形成されている。
【0133】
貫通孔67は、カバー66の内部であるセンサ60に対向する面側となる内側開口67bに比べて、カバー66の外部である空間S側となる外側開口67aのほうが拡径されている。つまり、貫通孔67は、空間Sからカバー66の内側に、導体摩耗粉が侵入する際に、縮径された貫通孔67を通って、センサ60へと到達する。カバー66は、貫通孔67の内側開口67bと、センサ60の検知面60aと、が離間するように配置される。カバー66は、貫通孔67以外は、その内部を密閉している。
【0134】
これにより、機構1、減速機2の運転が激しく潤滑剤の流れが激しい場合でも、カバー66によって、センサ60を保護することができる。これにより、カバー66内部に入った導体摩耗粉が外部の空間Sに再度放出されることを防止して、正確な吸着量を維持し、確実な故障予知をおこなうことができる。また、カバー66から導体摩耗粉が再放出されることを防止して、機構1、減速機2への影響を低減することもできる。
なお、カバー66はセンサ60の軸方向視して、センサ60の外径とほぼ等しい内径とすることもできる。
【0135】
さらに、本実施形態によれば、摩耗粉の少ない減速機2の運転初期においては、カバー66によって、センサ60に一度に大量の摩耗粉が吸着されることなどを防止して、センサ60の誤動作を防止することができる。さらに、摩耗粉の少ない減速機2の運転初期に比べて、減速機2の故障直前において、摩耗粉が大量に発生した場合には、貫通孔67を通って充分な摩耗粉がセンサ60に吸着されることで検知することができる。
【0136】
なお、本発明においては、上記の各実施形態における個々の構成を適宜組み合わせて対応することも可能である。
【0137】
さらに、本発明のセンサは、前記感度調整手段が、前記外電極の前記開口に対して前記軸方向高さの異なる前記絶縁体の群を有する、ことができる。
これにより、複数の軸方向高さを有する絶縁体から選択して、想定される導体摩耗粉の発生量に対応して、センサの検知感度を所定の状態に設定することが可能となる。
具体的には、想定される導体摩耗粉の発生量が多い場合に対応して、軸方向高さの高い絶縁体を選択して、電極間で摩耗粉が吸着される長さを増大し、センサの検知感度を所定の状態に設定することが可能となる。また、想定される導体摩耗粉の発生量が少ない場合に対応して、軸方向高さが低いか電極と面一の絶縁体を選択して、電極間で摩耗粉が吸着される長さを減らし、センサの検知感度を所定の状態に設定することが可能となる。
【0138】
本発明のセンサは、前記感度調整手段が、前記内電極の外径に対して前記外電極の前記開口に隣接する径方向厚さの異なる前記絶縁体および前記絶縁体の外径に対応する前記外電極の組からなる群を有する、ことができる。
これにより、複数の径方向厚さを有する絶縁体から選択して、想定される導体摩耗粉の発生量に対応して、センサの検知感度を所定の状態に設定することが可能となる。
具体的には、想定される導体摩耗粉の発生量が多い場合に対応して、径方向厚さの大きい絶縁体を選択して、電極間で摩耗粉が吸着される長さを増大し、センサの検知感度を所定の状態に設定することが可能となる。また、想定される導体摩耗粉の発生量が少ない場合に対応して、径方向厚さが小さい絶縁体を選択して、電極間で摩耗粉が吸着される長さを減らし、センサの検知感度を所定の状態に設定することが可能となる。
【0139】
本発明のセンサは、前記外電極が、前記内電極と面一である開口端部を有する、ことができる。
【0140】
本発明のセンサは、前記感度調整手段が、前記磁石以外に設けられた別磁石を有する、ことができる。
この場合でも、複数の吸着量を有する別磁石の群から選択すること、あるいは、別磁石を設けないことができる。
これにより、想定される導体摩耗粉の発生量に対応して、別磁石により摩耗粉を吸着することで、電極間で摩耗粉が吸着される量を減らし、センサの検知感度を所定の状態に設定することが可能となる。
具体的には、想定される導体摩耗粉の発生量が多い場合に対応して、強磁力または大きな別磁石を選択して、電極間で吸着される摩耗粉の量を削減し、センサの検知感度を所定の状態に設定することが可能となる。また、想定される導体摩耗粉の発生量が少ない場合に対応して、磁力の弱いまたは小さな別磁石を選択するか、別磁石を設けないことで、電極間で吸着される摩耗粉が所定量となるように設定して、センサの検知感度を所定の状態に設定することが可能となる。
【0141】
本発明のセンサは、前記感度調整手段が、前記外電極および前記内電極の表面処理層を有する、ことができる。
これにより、吸着可能な摩耗粉の量を低減する可能性のあるスラッジが電極の吸着面に付着して、電極間で摩耗粉が吸着される量を減らし、必要な検知感度を呈しないことを防止できる。
具体的には、表面処理層は、導電性を有し、低付着性、平滑性、潤滑性を有していればよい。
【0142】
本発明のセンサは、前記感度調整手段が、少なくとも一対の電極と、前記一対の電極の間に配置される前記吸着部とを覆うカバーである、ことができる。
【符号の説明】
【0143】
2…減速機
5,30,60…センサ
6,61…第1の電極(内電極)
8,62…第2の電極(外電極)
9,69…締結部材(締結部)
10,63…吸着部(絶縁体)
7,64…磁石
10a,11,12a,12b,12c,15…短絡抑制部
14…ワイヤ
31…中心電極
32(32A,32B,32C)…外側電極
50,70…検知部
60a…検知面
61h,62h…表面処理層
66…カバー
図1
図2
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図4
図5
図6
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図11
図12