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特許7723746可動コイル形変換器及び音響後部空間を有するイヤピース
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-05
(45)【発行日】2025-08-14
(54)【発明の名称】可動コイル形変換器及び音響後部空間を有するイヤピース
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20250806BHJP
【FI】
H04R1/10 104B
H04R1/10 104Z
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2023535928
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-20
(86)【国際出願番号】 US2021062003
(87)【国際公開番号】W WO2022132482
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】17/120,486
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591009509
【氏名又は名称】ボーズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BOSE CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・ディー・ドミニジャンニ
【審査官】山下 剛史
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3175071(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0064548(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0182576(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0228890(US,A1)
【文献】特開2015-109542(JP,A)
【文献】特開2014-233069(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10,9/00,25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イヤピースであって、
電気音響変換器と、
前記電気音響変換器を支持するハウジングであって、前記ハウジング及び前記電気音響変換器が共同で、第1の音響空間及び第2の音響空間を画定し、前記電気音響変換器は、前記電気音響変換器の第1の放射面が音響エネルギーを出口に連結された前記第1の音響空間内に放射し、前記電気音響変換器の第2の放射面が音響エネルギーを前記第2の音響空間内に放射するように配置される、ハウジングと、を備え、
前記第2の音響空間の少なくとも一部は、前記第1の放射面と前記出口との間で、前記第1の放射面の前方空間の一部に入り込んでいる、イヤピース。
【請求項2】
前記電気音響変換器は、可動コイル形変換器を備える、請求項1に記載のイヤピース。
【請求項3】
前記ハウジングは長手方向軸を有し、前記可動コイル形変換器は、前記ハウジングの前記長手方向軸とほぼ平行な運動軸を有するダイヤフラムを備える、請求項2に記載のイヤピース。
【請求項4】
前記ハウジングはノズルを画定し、前記第1の音響空間が前記ノズル内の音響通路に音響的に連結されて、前記イヤピースが装着されたときに、前記電気音響変換器が使用者の外耳道に音響的に連結される、請求項1に記載のイヤピース。
【請求項5】
前記ノズル上に支持されたイヤチップを更に備え、前記イヤチップは、前記イヤピースが装着されたときに使用者の外耳道と緊密な音響シールを形成するように構成されるか、又は前記イヤチップは、音響エネルギーが前記使用者の外耳道の内外に移動することを可能にする一組の開口部を含む、請求項4に記載のイヤピース。
【請求項6】
前記ハウジングは、第1の長手方向軸を有する本体と、前記第1の長手方向軸と交差する第2の長手方向軸を有するノズルとを画定し、前記電気音響変換器は、前記電気音響変換器の運動軸が前記第1の長手方向軸に実質的に平行であるように前記本体内に支持され、前記第1の長手方向軸及び前記第2の長手方向軸は、互いに対して非ゼロの角度で配置される、請求項1に記載のイヤピース。
【請求項7】
前記出口は、スクリーン、メッシュ材料、薄い発泡体、網状発泡体、連続気泡発泡体、発泡ポリマー、又はドームカバーのうちの少なくとも1つによって少なくとも部分的に覆われている、請求項1に記載のイヤピース。
【請求項8】
前記第2の音響空間を前記ハウジングの外側の空間に連結するリアポートを更に備える、請求項1に記載のイヤピース。
【請求項9】
前記第1の音響空間を前記ハウジングの外側の空間に連結するフロントポートを更に備える、請求項8に記載のイヤピース。
【請求項10】
前記フロントポート及び前記リアポートは、連結された出口空間に音響的に連結される、請求項9に記載のイヤピース。
【請求項11】
前記第2の音響空間は、その長さにわたってほぼ一定の断面幅を有する、請求項1に記載のイヤピース。
【請求項12】
前記第2の音響空間は、少なくとも2つの音響的に連結された副空間を含む、請求項1に記載のイヤピース。
【請求項13】
前記音響的に連結された副空間は、別個の空間を有する、請求項12に記載のイヤピース。
【請求項14】
前記音響的に連結された副空間における第1の副空間と、前記音響的に連結された副空間における第2の副空間との間の比は、約1:1~約4:1に等しい、請求項13に記載のイヤピース。
【請求項15】
前記音響的に連結された副空間は、
第1の空間を有する第1の副空間と、
第2の空間を有する第2の副空間と、
第3の空間を有する第3の副空間と、を含む少なくとも3つの音響的に連結された副空間を含み、
前記第2の副空間は、前記第1の副空間及び前記第3の副空間の各々よりも小さく、前記第1の副空間と前記第3の副空間との間のポートとして機能する、請求項13に記載のイヤピース。
【請求項16】
前記音響的に連結された副空間は、
第1の空間を有する第1の副空間と、
第2の空間を有する第2の副空間と、
第3の空間を有する第3の副空間と、を含む少なくとも3つの音響的に連結された副空間を含み、
前記第2の副空間は、前記第1の副空間と前記第3の副空間とを音響的に連結する導波路として機能する、請求項13に記載のイヤピース。
【請求項17】
前記ハウジングは、使用者の外耳道形状を補完するように構成された輪郭を備える、請求項1に記載のイヤピース。
【請求項18】
前記第1の音響空間及び前記第2の音響空間は壁によって分離され、前記壁の少なくとも一部は前記第1の放射面と前記出口との間に位置する、請求項1に記載のイヤピース。
【請求項19】
前記第1の放射面と前記出口との間に位置する前記壁の前記一部にマイクロホンを更に備える、請求項18に記載のイヤピース。
【請求項20】
前記第2の音響空間は、少なくとも約75立方ミリメートル(mm)である、請求項1に記載のイヤピース。
【請求項21】
請求項1に記載のイヤピースを備える補聴器であって、
着用時に使用者の耳介の後ろに位置するように構成されたケーシングと、
前記ケーシングを前記イヤピースに連結する配線と、
を更に備える、補聴器。
【請求項22】
前記ケーシング内に収容された電池と、マイクロホンと、サウンドプロセッサと、
を更に備える、請求項21に記載の補聴器。
【請求項23】
請求項1に記載のイヤピースを備えるインイヤオーディオデバイス。
【請求項24】
請求項1に記載のイヤピースを備える、オンイヤオーディオデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、2020年12月14日に出願された米国特許出願第17/120,486号に対する優先権を主張し、この特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して音響イヤピースに関する。より詳細には、本開示は、ウェアラブルオーディオデバイス内の電気音響変換器を有するイヤピースに関する。
【背景技術】
【0003】
インイヤ、オンイヤ、又はニアイヤオーディオデバイスなどのウェアラブルオーディオデバイスの設計及び製造は、いくつかの課題を提示し得る。特定の場合には、所与のデバイスにおいて所望のサイジング及び音響性能の制約の両方を達成することは困難である。すなわち、いくつかの従来のオーディオデバイスは、所望の形態因子内で適切な音響性能を提供することができない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
下記で言及される全ての実施例及び特徴は、任意の技術的に可能な方式で組み合わせることができる。
【0005】
本開示の様々な実装形態は、オーディオデバイス及び関連するイヤピースを含む。いくつかの実装形態では、イヤピースは、電気音響変換器(例えば、可動コイル形変換器)と、所望の音響性能とともに所望のフィット性を提供するように構成された音響後部空間とを含む。場合によっては、イヤピースは、補聴器、オンイヤオーディオデバイス、及び/又はインイヤオーディオデバイスの一部である。
【0006】
いくつかの特定の態様では、イヤピースは、電気音響変換器と、電気音響変換器を支持するハウジングであって、ハウジング及び電気音響変換器が共同で、第1の音響空間及び第2の音響空間を画定し、電気音響変換器は、変換器の第1の放射面が音響エネルギーを出口に連結された第1の音響空間内に放射し、変換器の第2の放射面が音響エネルギーを第2の音響空間内に放射するように配置される、ハウジングと、を備え、第2の音響空間の少なくとも一部は、第1の放射面と出口との間に位置する。
【0007】
実装形態は、以下の特徴のうちの1つ、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0008】
特定の態様では、電気音響変換器は、可動コイル形変換器を含む。
【0009】
特定の場合には、ハウジングは長手方向軸を有し、可動コイル形変換器は、ハウジングの長手方向軸とほぼ平行な運動軸を有するダイヤフラムを含む。
【0010】
いくつかの実装形態では、ハウジングはノズルを画定し、第1の音響空間がノズル内の音響通路に音響的に連結されて、イヤピースが装着されたときに、電気音響変換器が使用者の外耳道に音響的に連結される。
【0011】
ある場合には、イヤピースは、ノズル上に支持されたイヤチップを更に含み、イヤチップは、イヤピースが装着されたときに使用者の外耳道と緊密な音響シールを形成するように構成されるか、又はイヤチップは、音響エネルギーが使用者の外耳道の内外に移動することを可能にする一組の開口部を含む。
【0012】
特定の態様では、ハウジングは、第1の長手方向軸を有する本体と、第1の長手方向軸と交差する第2の長手方向軸を有するノズルとを画定し、電気音響変換器は、電気音響変換器の運動軸が第1の長手方向軸に実質的に平行であるように本体内に支持され、第1の長手方向軸及び第2の長手方向軸は、互いに対して非ゼロの角度で配置される。
【0013】
いくつかの場合には、出口は、スクリーン、メッシュ材料、薄い発泡体、網状発泡体、連続気泡発泡体、発泡ポリマー、又はドームカバーのうちの少なくとも1つによって少なくとも部分的に覆われている。
【0014】
特定の態様では、イヤピースは、第2の音響空間をハウジングの外側の空間に連結するリアポートを更に含む。
【0015】
特定の実装形態では、イヤピースは、第1の音響空間をハウジングの外側の空間に連結するフロントポートを更に含む。
【0016】
いくつかの態様では、フロントポート及びリアポートは、組み合わされた出口空間に音響的に連結される。
【0017】
いくつかの場合には、第2の音響空間は、その長さにわたってほぼ一定の断面幅を有する。
【0018】
特定の実装形態では、第2の音響空間は、少なくとも2つの音響的に連結された副空間を含む。
【0019】
特定の態様では、音響的に連結された副空間は、別個の空間を有する。
【0020】
特定の実装形態では、音響的に連結された副空間における第1の副空間と、音響的に連結された副空間における第2の副空間との間の比は、約1:1~約4:1に等しい。
【0021】
特定の態様では、音響的に連結された副空間における第1の副空間と、音響的に連結された副空間における第2の副空間との間の比は、約2:1~約4:1に等しい。
【0022】
いくつかの態様では、音響的に連結された副空間における第1の副空間と、音響的に連結された副空間における第2の副空間との間の比は、約3:1に等しい。
【0023】
特定の場合において、音響的に連結された副空間は、第1の空間を有する第1の副空間と、第2の空間を有する第2の副空間と、第3の空間を有する第3の副空間と、を含む少なくとも3つの音響的に連結された副空間を含み、第2の副空間は、第1の副空間及び第3の副空間の各々よりも小さく、第1の副空間と第3の副空間との間のポートとして機能する。
【0024】
いくつかの実装形態では、音響的に連結された副空間は、第1の空間を有する第1の副空間と、第2の空間を有する第2の副空間と、第3の空間を有する第3の副空間と、を含む少なくとも3つの音響的に連結された副空間を含み、第1の副空間と第3の副空間とを音響的に連結する導波路として機能する。
【0025】
特定の態様では、ハウジングは、使用者の外耳道形状を補完するように構成された輪郭を含む。
【0026】
特定の実装形態では、第1の音響空間及び第2の音響空間は壁によって分離され、壁の少なくとも一部は第1の放射面と出口との間に位置する。
【0027】
いくつかの場合には、イヤピースは、第1の放射面と出口との間に位置する壁の部分にマイクロホンを更に含む。
【0028】
特定の実装形態では、第2の音響空間は、少なくとも約75立方ミリメートル(mm)である。
【0029】
特定の態様では、イヤピースは補聴器の一部であり、補聴器は、着用時に使用者の耳介の後ろに位置するように構成されたケーシングと、ケーシングをイヤピースに連結する配線と、を更に含む。
【0030】
特定の場合には、補聴器は、ケーシング内に収容された、電池と、マイクロホンと、サウンドプロセッサとを更に含む。
【0031】
いくつかの実装形態では、イヤピースは、インイヤオーディオデバイスの一部である。
【0032】
特定の場合には、イヤピースは、オンイヤオーディオデバイスの一部である。
【0033】
本概要の項に記載される特徴を含む、本開示に記載される2つ以上の特徴は、本明細書に具体的に記載されていない実装形態を形成するために組み合わされ得る。
【0034】
1つ以上の実装形態の詳細が、添付図面及び以下の説明において記載される。他の特徴、目的、及び利点は、本説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】様々な実装形態による外耳道内レシーバ(RIC)補聴器を含むオーディオデバイスの概略図である。
図2】様々な実装形態による他のオーディオデバイスの概略図である。
図3】様々な実装形態によるオーディオデバイスにおけるイヤピースの断面図である。
図4】様々な実装形態によるオーディオデバイスにおける追加のイヤピースの断面図である。
図5】様々な実装形態によるオーディオデバイスにおける別のイヤピースの断面図である。
図6】様々な実装形態によるオーディオデバイス内のイヤピースの部分透過斜視図である。
図7】様々な実装形態によるオーディオデバイス内のイヤピースの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
様々な実装形態の図面は、必ずしも縮尺どおりではないことに留意されたい。図面は、本開示の典型的な態様のみを示すことを意図するものであり、したがって、発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。図面において、同様の番号付けは、図面間の同様の要素を表す。
【0037】
本明細書で言及されるように、本開示の様々な態様は、概して、電気音響変換器(例えば、可動コイル形変換器)と、音響性能とともに望ましいフィット性を提供するように構成された音響後部空間と、を有するイヤピースを備えたインイヤ、オンイヤ及び/又はニアイヤオーディオデバイスなどのウェアラブルオーディオデバイスに関する。特定の場合には、オーディオデバイスは、外耳道内レシーバ(receiver-in-canal:RIC)補聴器、又は変換器が外耳道内部分内に取り付けられた別の形態の補聴器を含む。
【0038】
図中の共通にラベル付けされた構成要素は、例示目的のために実質的に同等の構成要素であるとみなされ、それらの構成要素の重複する説明は、明確化のために省略する。
【0039】
本明細書で開示される態様及び実装形態は、多種多様なウェアラブルオーディオデバイスに適用可能であり得る。いくつかの場合では、ウェアラブルオーディオデバイスは、ヘッドホン(オンイヤかオフイヤを問わず)、ヘッドセット、腕時計、眼鏡、オーディオアクセサリ又は衣類(例えば、オーディオ帽子、オーディオバイザー、オーディオジュエリー)、ヘルメット(例えば、軍事、産業、又はオートバイ用途向け)、首装着型スピーカ、肩装着型スピーカ、身体装着型スピーカなど、様々な形態因子をとることができる。開示されるいくつかの態様は、オーバーイヤヘッドホン、オンイヤヘッドホン、インイヤヘッドホン(イヤホンとも呼ばれる)、オーディオ眼鏡又は他の頭部装着型オーディオデバイスなどのパーソナル(ウェアラブル)オーディオデバイスに特に適用可能であり得る。本明細書で言及されるように、いくつかの開示された態様は、インイヤ又はオンイヤヘッドホン、及びそのようなヘッドホンにおけるイヤピースに特に適用可能であり得る。
【0040】
様々な実装形態に従って説明されるウェアラブルオーディオデバイスは、スマートグラス、スマートウォッチなど、1つ以上の他のウェアラブル電子デバイスにおいて見られる特徴を含むことができる。これらのウェアラブルオーディオデバイスは、1つ以上のカメラ、位置追跡デバイス、マイクロホンなど、追加のハードウェア構成要素を含むことができ、音声認識、視覚認識、及び他のスマートデバイス機能が可能であり得る。本明細書に含まれるウェアラブルオーディオデバイスの説明は、そのようなデバイスにおけるこれらの追加的な能力を除外することを意図するものではない。
【0041】
本明細書で言及されるように、従来のウェアラブルオーディオデバイス、特に、使用者の外耳道内又はその近くに置かれるように設計されたものは、所望のフィット性と音響性能との効果的なバランスをとることができない可能性がある。例えば、RIC補聴器又はインイヤオーディオデバイスでは、フィードバックノイズキャンセルを支援するために、変換器(又はドライバ)を使用者の外耳道内に可能な限り遠くに(例えば、音響出口に向かって)配置することが望ましい場合がある。すなわち、フィードバックノイズキャンセルを強化するために、変換器及びフィードバックマイクロホンを鼓膜の近くに位置付けることが有益であり得る。しかしながら、変換器を音響出口のより近くに位置付けることは、デバイスのインイヤ部分(いくつかの場合、外耳道内部分と称される)の外側寸法を増加させ、使用者の耳内のフィット性に影響を及ぼし得る。
【0042】
従来のデバイスとは対照的に、様々な実装形態に従って開示されるウェアラブルオーディオデバイスは、電気音響変換器と、変換器の後ろの領域から変換器の少なくとも部分的に前の領域に及ぶ音響空間(例えば、後部空間)とを有する少なくとも1つのイヤピースを含む。これらの実装形態では、変換器は、音響出口に対して後退させることができる。変換器が出口から後退した状態で、オーディオデバイスの外耳道内、インイヤ、オンイヤ、又はニアイヤ部分の外側寸法は、例えば、その部分の外側寸法を狭くすることによって、フィット性を高めるようなサイズにすることができる。オーディオデバイスが、イヤピースから分離されたケーシングを有するRIC補聴器である場合など、特定の場合には、イヤピースは、使用者の外耳道内に快適で一貫してフィットする電気音響(例えば、可動コイル)変換器の使用を可能にする。場合によっては、様々な実装形態に従って開示されるRIC補聴器は、使用者の外耳道形状を補完するように構成された輪郭を有するイヤピースを有する。
【0043】
図1は、例示的なウェアラブルオーディオデバイス10を示し、これは、この例では、外耳道内レシーバ(RIC)補聴器100の形態をとる。RIC補聴器100は、使用者の耳(耳介)の後ろに位置するように設計されたケーシング104内に収容された電池、マイクロホン、及びサウンドプロセッサを含む耳掛け部102を含む。補聴器100のこの耳掛け部102は、小さなワイヤ106を有し、この小さなワイヤ106は、使用者の外耳道内に位置するように設計されたイヤピース108に、使用者の耳の周りを通って入るように設計されている。イヤピース108は、「レシーバ」又は「ドライバ」としても知られるスピーカを担持する。様々な実装形態において、従来のRIC補聴器とは対照的に、スピーカは、可動コイル形変換器などの電気音響変換器を含む。従来、RIC補聴器は、米国特許第10,674,246号(2018年4月27日出願、その完全な開示は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているような平衡電機子型スピーカを使用する。これらの平衡電機子デバイスは、スピーカの音響出力を平衡させるためにわずかな又は名目上の後部空間しか必要とせず、スピーカの運動軸がイヤピースの出口に対して垂直になるように配向されることが多い。しかしながら、平衡電機子デバイスは、低周波数で音圧を生成する際の感度の欠如などの欠点を有する。加えて、平衡電機子デバイスは、それらの最大変位において制限され、それによって、歪みなしに生成され得るピーク低周波数音圧を制限する。したがって、平衡電機子デバイスは、大きな発話、ドアをバタンと閉める音、使用者自身の声などの大きな低周波数事象に応答しようとする際に、許容できない歪みを示す可能性がある。
【0044】
平衡電機子スピーカを使用するイヤピースとは対照的に、様々な実装形態は、所望のフィット性と音響性能の両方を可能にするように配置された電気音響変換器を有するイヤピースを含む。いくつかの実装形態では、電気音響変換器は、大きな変位が可能な低い剛性を有する可動コイル形変換器を含み、低周波数における有効なアクティブノイズ低減を可能にする。しかしながら、本明細書で言及されるように、可動コイル形変換器は、平衡電機子スピーカと比較したときに、比較的大きい後部空間から利益を得る。様々な実装形態に従って開示されるイヤピースは、コンパクトな離散形態因子において、対応する後部空間とともに、電気音響変換器の音響的利点を提供する。
【0045】
図2は、別の例示的なウェアラブルオーディオデバイス10の概略図であり、この場合、ウェアラブルオーディオデバイス10は、少なくとも1つのイヤホン(又はインイヤヘッドホン)202を有するオーディオヘッドセット200などのインイヤ又はオンイヤオーディオデバイスの形態をとる。この例では、2つのイヤホン202が示されている。イヤホン202は、「真の」無線構成(すなわち、イヤホン202間のテザリングなし)で示されているが、オーディオヘッドセット200は、テザリングされた無線構成(それによって、イヤホン202は、再生デバイスへの無線接続で有線を介して接続される)又は有線構成(それによって、イヤホン202の少なくとも1つは、再生デバイスへの有線接続を有する)を含むこともできる。図示される各イヤホン202は、1つ以上のプラスチック又は複合材料で形成されたハウジングを含むことができるイヤピース204を含む。イヤピース204は、使用者の外耳道入口に挿入するためのノズル206と、使用者の耳内の静止位置にノズル206を保持するための支持部材208とを含むことができる。特定の場合には、ノズル206及び/又は支持部材208は、使用者の耳内での適合性を向上させるように、洗浄、再位置付け、及び/又は交換されることができる、取り外し可能ケーシングの一部である。他の場合には、ノズル206及び/又は支持部材208は、イヤピース204と一体である。いくつかの実装形態によれば、イヤピース204は、電池、マイクロホン、及びサウンドプロセッサなどの構成要素を含む電子機器212を収容するための外側ケーシング210を更に含む。いくつかの場合では、電子機器212の別個のセット又は重複セットがイヤホン202の一部、例えば、それぞれのイヤホン202の各々に収容される。しかしながら、本明細書に記載されるある構成要素は、単一の形態で存在し得る。
【0046】
図3は、様々な実装形態による、RIC補聴器100(図1)及び/又はオーディオヘッドセット200などのオーディオデバイス内のイヤピース300の一部分の概略断面図である。イヤピース300はまた、様々な形態因子のいくつかの他のオンイヤ、インイヤ、アラウンドイヤ及び/又はニアイヤオーディオデバイスの一部であり得、それらの例は、2020年6月25日に出願された米国特許出願第63/044,078号に記載されており、その完全な開示は参照により本明細書に組み込まれることが理解される。
【0047】
特定の実装形態では、イヤピース300は、電気音響変換器306(又はスピーカ若しくはドライバ)を支持するハウジング304を含むイヤホン302を含む。ある実装形態では、電気音響変換器306は、可動コイル形変換器である。電気音響変換器306は、例えば、直径6mm未満、例えば、直径3mm~5.5mm、例えば、直径4.3mm~5.4mmのダイヤフラムを有する、フルレンジマイクロドライバであってもよく、例えば、2018年4月10日に発行された「Electro-acoustic driver having compliant diaphragm with stiffening element」と題された米国特許第9,942,662号、及び/又は2020年3月31日に発行された「Fabricating an integrated loudspeaker piston and suspension」と題された米国特許第10,609,489号に説明されるものなどであってもよく、それらの開示全体は、参照することによって本明細書に組み込まれる。本明細書で使用される場合、「フルレンジ」とは、約20Hz~約20kHzの周波数を生成することができることを意味するように意図される。
【0048】
ハウジング304及び電気音響変換器306は共同で、第1の(フロント)音響空間308及び第2の(リア)音響空間310を画定する。第2の音響空間310の一部は、本明細書で説明されるように、電気音響変換器306の後又はその近くに位置するが、第2の音響空間310の一部はまた、電気音響変換器(又は単に変換器)306の前又は周辺に位置することができる。すなわち、変換器306は、様々な実装形態において、変換器306の第1の放射面312が第1の音響空間308内に音響エネルギーを放射するように配置され、第1の音響空間は出口314に連結される。変換器306はまた、変換器306の第2の放射面316が第2の音響空間310内に音響エネルギーを放射するように配置される。いくつかの実装形態では、ハウジング304は、第1の長手方向軸(AL1)を有し、変換器306は、ハウジング304の長手方向軸とほぼ平行な運動軸(AmT)を有するダイヤフラム318を有する。
【0049】
様々な実装形態では、ハウジング304は出口314に近接したノズル320を画定し、第1の音響空間308がノズル320内の音響通路322に音響的に連結されて、イヤピース300が装着されたときに、変換器306が使用者の外耳道に音響的に連結される。特定の場合には、イヤピース300は、ノズル320上に支持され、イヤピースが装着されたときに使用者の外耳道と連結するように構成されたイヤチップ324を含む。イヤチップ324は、任意選択として仮想線で示されており、場合によっては、図2のイヤチップ206に類似している(例えば、ドームカバー)。いくつかの場合において、イヤチップ324は、イヤピース300が装着されたときに、使用者の外耳道との緊密な音響シールを提供する。他の場合には、イヤチップ324は、音響エネルギーがほとんど抵抗なく使用者の外耳道の内外に移動することを可能にする1つ以上の開口部のセットを含んでもよい。いくつかの例では、例えば所望のインピーダンス応答を提供するために、抵抗スクリーンなどの抵抗要素が、開口部のうちの1つ以上の中に又はその上に設けられてもよい。イヤチップを含む特定の場合において、ノズル320は、リップ、リム、突出部、又はイヤチップと連結するための他の嵌合特徴部を含むことができる。実装形態によるイヤピース300とともに使用することができるイヤチップの例示的な変形形態は、2019年11月21日に出願された米国特許出願第16/690,586号に記載されており、その完全な開示は参照により本明細書に組み込まれる。そのような場合、(任意の種類の)イヤチップが出口314と連結され、特定の場合には、ノズル320と連結するようなサイズにされる。特定の態様では、イヤチップは、イヤピース300内のノズル320上に嵌合し、使用者の外耳道との音響連結を強化する。しかしながら、本明細書に記載されるように、イヤピース300は、出口が使用者の外耳道への入口に近接して、又は使用者の耳の上に位置付けられるように、(例えば、図4の例示的イヤピース400に描写されるように)イヤチップなしで使用されることができる。これらの場合、出口314は、音を使用者の外耳道に向けて方向付けるように配置されるが、必ずしも外耳道に緊密にシールされる必要はない。特定の場合には、支持部材(例えば、図2の支持部材208、又はオーバーイヤ、オーバーヘッド、若しくはオンイヤ支持部材など)は、イヤピース300と連結され、イヤピース300を使用者の耳の上又は近くに位置決めするように構成される。
【0050】
特定の実装形態では、出口314は、保護材料326によって少なくとも部分的に覆われる。ある場合には、保護材料326は、イヤチップ(例えば、イヤチップ324)の一部であるが、他の場合には、保護材料326は、出口314に近接してハウジング304に連結される。保護材料326の例としては、スクリーン、メッシュ材料、ワックスガード、薄い発泡体、網状発泡体、連続気泡発泡体、又は発泡ポリマー(例えば、ePTFE)のうちの1つ以上を挙げることができる。イヤピース300に適合する他の保護材料326(例えば、スクリーン)の例は、先に参照により本明細書に組み込まれた米国特許出願第16/690,586号に詳細に記載されている。保護材料326は、出口314又はイヤピース300内の任意の音響開口部と連結及び/又は一体化することができ、場合によっては、2020年3月23日3月23日に出願された米国特許出願第16/828,327号に記載されているものなどの座ぐりポート特徴を使用して固定することができ、その完全な開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
図3の例示的な実装形態に示すように、第2の音響空間310の少なくとも一部は、変換器306の第1の放射面312と出口314との間に位置する。すなわち、第2の音響空間310は、変換器306の後ろ(出口314に対して「後ろ」)の空間から、少なくとも部分的に変換器306の前の空間に及ぶ。特定の場合には、第2の音響空間310の一部分は、変換器306に対して周辺に、例えば、変換器306の側壁328に沿って軸方向に(変換器306の運動軸(AmT)に沿って)広がる。言い換えれば、第2の音響空間310の一部は、変換器306の後ろの空間から、変換器306の第1の放射面312の少なくとも部分的に前の空間まで軸方向に広がる。
【0052】
いくつかの例示的な実装形態では、第1の音響空間308及び第2の音響空間310は、壁330によって分離される。様々な実装形態において、壁330の少なくとも一部332は、第1の放射面312と出口314との間に位置する。特定の場合には、図3に示す例示的な構成に示すように、マイクロホン(例えば、フィードバックマイクロホン)334は、第1の放射面312と出口314との間に位置する壁330の部分332に位置する。他の場合には、マイクロホン334は、ハウジング304内の別個の壁、例えば、第1の放射面312と出口314との間にあるハウジング304の側壁に配置される。更に別の場合には、マイクロホン334は、マイクロホン334の入口が第1の音響空間308にアクセスすることを可能にするハウジング304内の任意の壁に取り付けられる。いくつかの特定の場合において、マイクロホン334は、第1の音響空間308内の音響信号を検出するためにマイクロホン334を定位置に保持するように構成された支持部材に取り付けられる。いくつかの実装形態では、支持部材は、ハウジング内の壁及び/又はイヤピース300内の別の支持部材から延びることができる。更なる実装形態では、マイクロホン334の向きは、例えば、少なくとも部分的に第1の放射面312に向かって、又は出口314に向かって方向付けられた角度で変更され得る。
【0053】
壁330は、例えば、1つ以上の屈曲部、角部、及び/又は輪郭を含む、いくつかの断面形状のうちのいずれかをとることができ、第1の音響空間308と第2の音響空間310とを分離するように構成される。ある場合には、壁330は、第2の音響空間310の1つ以上の部分(又は副空間)を第1の音響空間308から分離する。特定の場合において、第2の音響空間310は、その長さにわたってほぼ一定の断面幅を有する。例えば、第2の音響空間310の1つ以上の部分は、所与の長さにわたってほぼ一定の断面幅を有する。図3は、第2の音響空間310の部分の断面幅が、例えば、運動軸(A)に沿って測定される変換器306の側壁328に沿って、ほぼ一定である一例を示す。
【0054】
特定の実装形態によれば、第2の音響空間は、少なくとも2つの音響的に連結された副空間310A、310Bを含む。これらの場合のいくつかにおいて、第2の音響空間は、少なくとも3つの音響的に連結された副空間、例えば副空間310A、310B、310Cを含む。特定の場合には、音響的に連結された副空間310A、310B、310Cなどは、別個の空間を有し、例えば、変換器306(AmTに対して)の軸方向後方にある空間310は、他の副空間(例えば、310B、310Cなど)のうちの少なくとも1つよりも大きい。これらの副空間は、実際には互いに流体的に連結されており、場合によっては、副空間間の線引きは、所与の副空間の断面積の有意な差によって画定され得ることが理解される。例えば、より大きな副空間間の狭い通路は、副空間として適格であり、より大きな副空間間のポートとして機能することができる。
【0055】
特定の実装形態では、副空間(例えば、副空間310A、310B、又は310C)のうちの1つにおける空間と、副空間のうちの別の1つ(例えば、副空間310A、310B、又は310Cのうちの別個の1つ)における空間との間の比は、約1:1~約4:1に等しい。特定の例では、別個の副空間間の比は、約2:1~約4:1に等しい。より特定の場合には、別個の副空間間の比は、約3:1に等しい。少なくとも3つの別個の副空間(例えば、副空間310A、310B、310C)を有するいくつかの実装形態では、副空間310Aと副空間310Cとの間の比は、約1:1~約4:1に等しく、より特定の場合には、約2:1~約4:1に等しく、更により特定の場合には、約3:1に等しい。本明細書において値に関して使用される「約」という用語は、例えば数パーセント以下の、絶対値からの公称変動を割り当てることができる。ある場合には、第2の音響空間310は、少なくとも約75立方ミリメートル(mm)である。特定の態様では、変換器306の第1の放射面312と出口314との間に位置する第2の音響空間310の部分は、少なくとも約25mmである。
【0056】
図3に示す特定の例では、音響的に連結された副空間は、少なくとも3つの音響的に連結された副空間310A、310B、310Cを含み、第1の副空間310は第1の空間を有し、第2の副空間310Bは第2の空間を有し、第3の副空間310Cは第3の空間を有する。場合によっては、第2の副空間310Bは、第1の副空間310A及び第3の副空間310Cの各々よりも小さい。特定の例では、第3の副空間310Cは、第1の副空間310Aよりも小さい。いくつかの実装形態によれば、第2の副空間310Bは、第1の副空間310Aと第3の副空間310Cとの間のポートとして機能する。追加の実装形態では、第2の副空間310Bは、第1の副空間310Aと第3の副空間310Cとを音響的に連結する導波路として機能する。特定の例示的な実装形態では、副空間310A、310B、310Cは各々、別個の空間を有する。
【0057】
様々な実装形態によれば、例えば、第2の音響空間310が、ポート及び/又は導波路を画定する別個の副空間310A、310B(及び場合によっては310C)を含む場合、ポート及び/又は導波路は、イヤピース(例えば、イヤピース300)に音響共振を導入する。例えば、第2の音響空間310内のポート又は導波路は、変換器306の機械的アドミタンスに有効なピークを導入することができ、それによって、局所周波数範囲にわたって、入力された力ごとにより多くの変位を生成する。
【0058】
図4は、図3のイヤピース300と比較して異なる比率の副空間310A、310B、310Cを有するイヤピース400の変形例を示す。図4はまた、第2の副空間310Bを画定する壁330の一部にあるマイクロホン334を示す。この例では、副空間310Bは、副空間310Aと310Cとの間のポートとして機能することができる。これらの場合のいくつかにおいて、副空間310Bは、副空間310A及び310Cよりも狭い断面幅(例えば、内壁330からハウジング304まで測定したとき)を有し、特定の場合には、より小さい体積を有する。図5は、イヤピース300(図3)及びイヤピース400(図4)と比較して異なる比率の副空間310A、310B、310Cを有するイヤピース500の追加の変形例を示す。この例では、副空間310A、310B、及び310Cは、第2の放射面316から第2の空間310内に放射される音響エネルギーのための導波路として機能することができる。これらの場合のいくつかにおいて、副空間310B及び310Cは、同様の断面幅(例えば、内壁330からハウジング304まで測定)を有し、特定の場合において、同様の容積(例えば、断面幅又は容積の約5~10パーセント未満の変動)を有する。壁(複数可)330の位置、副空間310A、310B、310Cなどのサイズ、及び本明細書に必ずしも示されていないマイクロホン(複数可)334の位置に関するいくつかの変形が、様々な実装形態において可能である。
【0059】
図3図5を参照すると、本明細書に開示されるイヤピース(例えば、図3のイヤピース300、図4のイヤピース400、図5のイヤピース500)はまた、第2の音響空間310をハウジング304の外側の空間404と連結するリアポート402を含むことができる。特定の場合には、イヤピース(例えば、イヤピース300、イヤピース400、イヤピース500)はまた、第1の音響空間308をハウジング304の外側の空間408と連結するフロントポート406を含むことができる。場合によっては、リアポート402及びフロントポート406は、ハウジング304の外側の別個の空間404、408に連結するが、他の実装形態では、空間404及び408は接続される(例えば、周囲空気)。特定の場合には、リアポート402及びフロントポート406は、ハウジング304内で、例えば、ハウジング内の壁内で、又は第1及び第2の音響空間308、310とは別個の追加の空間内で、互いに連結される。いくつかの例では、リアポート402及びフロントポート406は、2020年8月11日に出願された米国特許出願第16/990,358号に記載されているように、組み合わされた出口空間内に音響的に連結され、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。そのような場合、1つ以上のポートは、後部空間の前方部分、後部空間の前方部分、又は後部空間の接続部分のうちのいずれか1つ、全て、又は任意の組み合わせに含まれ得る。場合によっては、ポートは、約少なくとも1ミリメートル(mm)の長さであり、断面積が約少なくとも1~2mmである(例えば、場合によっては約1.5~2mm、より特定の場合では約1.8mm)。
【0060】
本明細書で説明するオーディオデバイスの様々な実装形態によれば、ハウジングは、使用者の耳内でのフィット性を高めるように成形され得る。例えば、図5(部分的に透明な図)及び特に図6(外観図)のハウジング304の概略図に示すように、ハウジング304は、使用者の外耳道形状を補完するように構成された輪郭410を含む。これらの場合、ハウジング304は、第1の長手方向軸(AL1)を有する本体412と、第1の長手方向軸(AL1)と交差する第2の長手方向軸(AL2)を有するノズル320とを画定する。本明細書に記載され、図3及び図4に示されるように、変換器306は、運動軸(AmT)が第1の長手方向軸(AL1)に実質的に平行であり、第1及び第2の長手方向軸(AL1、AL2)が互いに対して0でない角度αで配置されるように、本体412内に支持される。この非ゼロの角度(α)は、例えば、図6に示されている。換言すれば、この輪郭410は、図6に示す軸(AL1、AL2)間の180度未満である余角(θ)によって測定することができる。
【0061】
従来のオーディオデバイス、特に従来のRIC補聴器と比較して、本明細書に開示されるイヤピースを含むオーディオデバイスは、いくつかの利点を提供することができる。例えば、様々な実装形態は、音響性能を犠牲にすることなく、様々な使用者(及び対応する外耳道形状)にわたって信頼できる快適なフィットを可能にするように位置決めされた電気音響変換器(例えば、可動コイル形変換器)を有するイヤピースを含む。すなわち、様々な実装形態に従って開示されるイヤピースは、広範囲の使用者にフィットし、所望の音響性能(例えば、出力、ノイズキャンセルなど)を提供するように構成される。様々な実装形態に従って開示されるイヤピースは、様々なウェアラブルオーディオデバイスに有益に組み込むことができ、使用者によってインイヤ又はオンイヤで装着されるように設計されたデバイスにおいて特定の利益を提供することができる。更に、補聴器又は他のインイヤデバイスの例では、様々な実装形態に従って開示されるイヤピースは、外耳道内での改善されたフィット性により、従来のイヤピースよりも目立たないように装着され得る。本明細書に開示されるイヤピースの横方向寸法及びテーパは、それらのイヤピースが、従来のインイヤデバイスよりも外耳道内により深く快適に位置付けられることを可能にする。更に、実装形態に従って開示される変換器、マイクロホン、及び音響空間の構成は、RIC補聴器などの従来のインイヤデバイスと比較して、アクティブノイズ低減のための強化された出力能力、並びにより広い帯域幅のオーディオを提供する可動コイル形変換器の使用を可能にする。
【0062】
様々な実装形態では、互いに「連結」されているとして説明される構成要素は、1つ以上のインターフェースに沿って接合することができる。いくつかの実装形態では、これらのインターフェースは、別個の構成要素間の接合部を含むことができ、他の場合には、これらのインターフェースは、強固に及び/又は一体的に形成された相互接続部を含み得る。すなわち、いくつかの場合では、互いに「連結された」構成要素は同時に形成されて、単一の連続部材を画定することができる。しかしながら、他の実装形態では、これらの連結された構成要素は、別個の部材として形成され得、その後、既知のプロセス(例えば、はんだ付け、締結、超音波溶接、接合)によって接合され得る。様々な実装形態では、「連結された」と記載されるアクセサリ(例えば、電子構成要素)は、これらのアクセサリが互いにデータを通信することができるように、従来の有線及び/又は無線手段を介してリンクさせることができる。更に、所与の構成要素内の下位構成要素は、従来の経路を介してリンクされていると考えることができるが、必ずしも図示されない。
【0063】
本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態もまた、以下の特許請求の範囲内にある。本明細書に記載される異なる実装形態の要素は、上記に具体的に記載されていない他の実施形態を形成するために組み合わされ得る。要素は、本明細書に記載される構造の動作に悪影響を及ぼすことなく、本明細書に記載される構造から除かれ得る。更にまた、様々な別個の要素は、本明細書に記載される機能を実施するために、1つ以上の個々の要素へと組み合わされ得る。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7