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特許7724575テンプレートのレベル調整方法、及びテンプレートのレベル調整具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-07
(45)【発行日】2025-08-18
(54)【発明の名称】テンプレートのレベル調整方法、及びテンプレートのレベル調整具
(51)【国際特許分類】
   E04H 9/02 20060101AFI20250808BHJP
   E02D 27/34 20060101ALI20250808BHJP
   E04B 1/41 20060101ALI20250808BHJP
【FI】
E04H9/02 331A
E02D27/34 B
E04B1/41 502B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024022541
(22)【出願日】2024-02-19
【審査請求日】2025-01-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594171492
【氏名又は名称】小川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(72)【発明者】
【氏名】小川 潔
(72)【発明者】
【氏名】辻 英行
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-226066(JP,A)
【文献】特開2014-40715(JP,A)
【文献】特開2016-102586(JP,A)
【文献】特開平9-112067(JP,A)
【文献】特開2014-206003(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 9/02
E02D 27/34
E04B 1/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平にして下部基礎に埋設される板状のテンプレート本体と、前記テンプレート本体を厚み方向に貫通する複数の長ナットと、前記複数の長ナットに螺入された複数のアンカーボルトとを備え、前記複数のアンカーボルトは、テンプレート本体のレベル調整を行うレベル調整ボルトを含むテンプレートのレベル調整方法であって、
前記レベル調整ボルトとして、棒状の雄ねじボルトと、該雄ねじボルトの上端面に設けられ最大外径が雄ねじボルトの雄ねじの谷径よりも小さい非円形状の突起又は凹部からなる螺回用係合受け部を有するボルトを用い、前記下部基礎を載設する床スラブに前記レベル調整ボルトの下端を当接させるようにして前記床スラブ上に前記テンプレートを載置するテンプレート載置工程と、
前記長ナット内で前記螺回用係合受け部に係合する係合部を備える螺回用工具の当該係合部を上側から前記長ナットに挿入するようにして前記螺回用係合受け部に係合させ、当該螺回用工具により螺回することにより前記レベル調整ボルトを上下に進退させて前記テンプレートのレベル調整を行うレベル調整工程と
を備えることを特徴とするテンプレートのレベル調整方法。
【請求項2】
前記レベル調整ボルトの上に連れ回り防止球を載置したのち前記長ナットの上端側開口から加締めボルトを螺入させ、前記加締めボルトにより前記連れ回り防止球を介して前記レベル調整ボルトを押圧して前記レベル調整ボルトを加締めるレベル調整ボルト加締め工程を備える請求項1に記載のテンプレートのレベル調整方法。
【請求項3】
水平にして下部基礎に埋設される板状のテンプレート本体と、前記テンプレート本体を厚み方向に貫通する複数の長ナットと、前記複数の長ナットに螺入された複数のアンカーボルトとを備えるテンプレートのレベル調整に用いるレベル調整具であって、
前記複数のアンカーボルトに含まれ、前記下部基礎を載設する床スラブに下端を当接した状態で螺回することによりテンプレート本体のレベル調整を行う複数のレベル調整ボルトと、
前記レベル調整ボルトを螺回させる螺回用工具と
を備え、
前記レベル調整ボルトは、棒状の雄ねじボルトと、該雄ねじボルトの上端面に設けられ最大外径が雄ねじボルトの雄ねじの谷径よりも小さい非円形状の突起又は凹部からなる螺回用係合受け部を有し、
前記螺回用工具は、前記長ナット内で前記螺回用係合受け部に係合する係合部を備えるテンプレートのレベル調整具。
【請求項4】
前記レベル調整ボルトの上に載置する連れ回り防止球と前記長ナットの上端側開口から螺入せられて前記連れ回り防止球を介して前記レベル調整ボルトを押圧して前記レベル調整ボルトを加締める加締めボルトとを備える請求項に記載のテンプレートのレベル調整具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、建築・土木用テンプレートのレベル調整を行う方法、及びこれに用いるレベル調整具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、免震建造物における免震部材取付けボルトや一般建造物における鉄骨柱のアンカーボルト、鉄筋コンクリート建造物の柱主筋(鉄筋)等の位置決めには、鋼板にアンカーボルトや主筋を挿通する位置決め用の貫通孔を設けたテンプレートが広く用いられている。かかるテンプレートは、建造物の下部基礎に埋設されるところ、埋設前に精密にレベル調整を行う必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1の図10では、免震装置を基礎に取り付ける取付ボルト用の鋼板製のテンプレート900のレベル調整方法が、従来技術として紹介されている。このテンプレートは、矩形リング状の鋼鈑製テンプレート本体を有し、テンプレート本体を厚み方向に貫通する長ナットの下端にアンカーボルトを螺入し、アンカーボルトを螺回させて上下に進退させることによりテンプレート本体のレベル調整を行うようにしている。また、このテンプレート900は、テンプレート本体の上面が免震装置下部基礎の上面と面一になるようにして基礎部のコンクリートに埋設し、該長ナットに上端側から免震装置を取り付けるための取付ボルトを螺結して、免震装置のフランジを取り付けるよう構成されている。
【0004】
このテンプレート900では、鋼板製のテンプレート本体が、水平に支持した際に重みで撓むため、上端に上下に進退するボルトを設けた仮設アングル架台を基礎部のコンクリートに多数立設し、当該ボルトによりテンプレートをレベル調整している。そのため、テンプレート900では、仮設アングル架台の立設とテンプレート900のレベル調整に過大な工数を要するだけでなく、仮設アングル架台の設置と免震装置の取り付けとで2度の現地作業を要することとなり、作業者の負担が大きいという問題が有った。
【0005】
そこで、本出願人は、特許文献1において、テンプレート本体をプレキャストコンクリート製とすることで、テンプレート本体の自重による撓みをなくして、撓みを持ち上げるための仮設アングル架台の打設を不要としたコンクリート製テンプレートが提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第7378861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のコンクリート製テンプレートにおいても、その下面から下方に延出する長ナットに螺入したアンカーボルを螺回・進退させてテンプレート本体のレベル調整を行うのであるが、テンプレート本体が邪魔になって、あるいは、アンカーボルトが下部基礎の打設用に設けられた配筋の間に配設される場合には、この配筋が邪魔になって、アンカーボルトの回動がやりにくいという問題がある。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、テンプレート本体や下部基礎用の配筋が邪魔にならないようなテンプレートのレベル調整方法、及びレベル調整用治具の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた発明は、水平にして下部基礎に埋設される板状のテンプレート本体と、前記テンプレート本体を厚み方向に貫通する複数の長ナットと、前記複数の長ナットに螺入された複数のアンカーボルトとを備え、前記複数のアンカーボルトは、テンプレート本体のレベル調整を行うレベル調整ボルトを含むテンプレートのレベル調整方法である。
本発明に係るテンプレートのレベル調整方法は、前記レベル調整ボルトとして、棒状の雄ねじボルトと、該雄ねじボルトの上端面に設けられ最大外径が雄ねじボルトの雄ねじの谷径よりも小さい非円形状の突起又は凹部からなる螺回用係合受け部を有するボルトを用い、前記下部基礎を打設する床スラブに前記レベル調整ボルトの下端を当接させるようにして前記床スラブ上に前記テンプレートを載置するテンプレート載置工程と、前記長ナット内で前記螺回用係合受け部に係合する係合部を備える螺回用工具の当該係合部を上側から前記長ナットに挿入するようにして前記螺回用係合受け部に係合させ、当該螺回用工具により螺回することにより前記レベル調整ボルトを上下に進退させて前記テンプレートのレベル調整を行うレベル調整工程とを備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のレベル調整方法が対象とするテンプレートは、長ナットの上側から取付ボルトを固定することにより免震装置等の被取付物を固定するため、アンカーボルトやレベル調整ボルトは、長ナットの雌螺子孔の上側に取付ボルトを螺入するスペースを残した状態で長ナットに螺入されている必要がある。
本発明のレベル調整方法では、このレベル調整ボルトの上端面に最大外径が雄ねじの谷径よりも小さい非円形状の突起又は凹部からなる螺回用係合受け部を設けたので、レベル調整ボルトの上端まで長ナットの雌螺子孔に収容できる。そして、レベル調整ボルトを螺回する螺回用工具の螺回用係合受け部も長ナット内に上側から挿入してレベル調整ボルトの係合受け部に係合するよう構成したので、テンプレート本体の上側からレベル調整ボルトを螺回でき、テンプレート本体や下部基礎から突出する配筋等に妨げられることなくテンプレートのレベル調節を行える。
【0010】
本発明のレベル調整方法は、前記レベル調整ボルトの上に連れ回り防止球を載置したのち前記長ナットの上端側開口から加締めボルトを螺入させ、前記加締めボルトにより前記連れ回り防止球を介して前記レベル調整ボルトを押圧して前記レベル調整ボルトを加締めるレベル調整ボルト加締め工程を備えることが好ましい。
レベル調整ボルトは、レベル調整後もテンプレート本体の水平を維持するために、長ナットを介してテンプレート本体に対し固定される必要がある。このようにレベル調整ボルトの上に連れ回り防止球を載置し、これに上側から当接する加締めボルトを螺回させて当該連れ回り防止球を下方へ押圧することにより、レベル調整ボルトを螺回させることなく上から押圧できるので、レベル調整ボルトを長ナットに加締めることができる。この加締め工程も、テンプレート本体の上側から行うので、テンプレート本体や下部基礎から突出する配筋等に妨げられることがない。
【0011】
本発明は、水平にして下部基礎に埋設される板状のテンプレート本体と、前記テンプレート本体を厚み方向に貫通する複数の長ナットと、前記複数の長ナットに螺入された複数のアンカーボルトとを備えるテンプレートのレベル調整に用いるレベル調整具を含む。
本発明のレベル調整具は、前記複数のアンカーボルトに含まれ、前記下部基礎を載設する床スラブに下端を当接した状態で螺回することによりテンプレート本体のレベル調整を行う複数のレベル調整ボルトと、前記レベル調整ボルトを螺回させる螺回用工具とを備え、前記レベル調整ボルトは、棒状の雄ねじボルトと、該雄ねじボルトの上端面に設けられ最大外径が雄ねじボルトの雄ねじの谷径よりも小さい非円形状の突起又は凹部からなる螺回用係合受け部を有し、前記螺回用工具は、前記長ナット内で前記螺回用係合受け部に係合する係合部を備える。
【0012】
本発明のレベル調節具セットは、前記レベル調整ボルトの上に載置する連れ回り防止球と前記長ナットの上端側開口から螺入せられて前記連れ回り防止球を介して前記レベル調整ボルトを押圧して前記レベル調整ボルトを加締める加締めボルトとを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明のレベル調整方法及びレベル調整具によれば、テンプレート本体や下部基礎から突出する配筋等に作業を妨げられることを抑制できるので、テンプレート本体のレベル調整を効率よく行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係るレベル調整具を用いてテンプレートのレベル調整を行う様子を示す平面図である。
図2図1におけるX-X線断面図である。
図3】(a)図1のレベル調整具を用いてレベル調整工程を行う様子を示すレベル調整ボルト周辺の部分透過図である。(b)は、別の例のレベル調整ボルトである。
図4図1のレベル調整具を用いて加締め工程を行う様子を示すレベル調整ボルト周辺の部分透過図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る下部基礎外周縦配筋設置工程を示す(a)側面図、(b)平面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る配筋完成工程、及び型枠設置工程を併せて示す(a)側面図、(b)平面図である。
図7】本発明の第1実施形態に係るテンプレート設置工程を示す(a)側面図、(b)平面図である。
図8】本発明の別の実施形態に係るテンプレート本体の平面図である。
図9】本発明のレベル調整方法の対象となるテンプレートを免震ゴムに使用する例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を用いながら本発明の実施形態について詳述する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0016】
(第1実施形態)
図1、及び図2は、本発明の第1実施形態に係るレベル調整具100(図3図4参照、図1図2には表れず。)によりレベル調整を施すテンプレートA1を示している。
【0017】
(テンプレートA)
まず、本実施形態に係るレベル調整具100の説明に先立ち、レベル調整具100によりレベル調整を行うテンプレートA1の説明を行う。
テンプレートA1は、図9の右側に示すように、免震対象となるビルディング等の建造物に取り付けられる積層ゴム式の免震装置のアイソレータE1を支持する免震装置の下部基礎(以下、単に「下部基礎」ともいう)B1に埋設され、アイソレータE1を下部基礎B1に固定する取付ボルト10の鉛直・位置精度を高めるために用いられる。下部基礎B1は、床スラブB2上に載設される。
【0018】
テンプレートA1は、図2に示すように、水平にして下部基礎B1に埋設される板状のテンプレート本体1と、テンプレート本体1を厚み方向に貫通する12本の長ナット2,…と、12本の長ナット2にそれぞれ螺入された12本のアンカーボルト3,…とを備えている。12本のアンカーボルト3,…のうち4本はレベル調整ボルト31,…(図1の例では、前後左右(図1では、上下左右)の取付ボルト10の位置に配設され、図2には、うち3本が表れる。)であり、残り8本がレベル調整ボルト31でないアンカーボルト32,…である。アンカーボルト32は、レベル調整具100の構成には含まれない。ただし、長ナット2は12本に限らず、3本以上であればよく、レベル調整ボルト31も4本に限らず、3本以上であればよい。
【0019】
図1のテンプレート本体1は、コンクリートをプレキャストして形成され、平面視における円形の領域を概ね被覆する円盤状をなしている。
ただし、本実施形態のレベル調整具100が対象とするテンプレート本体1は、コンクリート製に限らずモルタル製であってもよいし、鋼板その他の金属製であってもよい。
【0020】
テンプレート本体1は、下面側近傍に下端筋11が埋設されている。下端筋11は、長ナット2をかわしながら、縦横に交差している。ただし、テンプレート本体1には、繊維補強コンクリートを用いてもよい。補強繊維としては、鋼繊維等の金属繊維や炭素繊維の他、アラミド繊維、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、ビニロン繊維等の樹脂繊維を用いることができる。
【0021】
テンプレート本体1は、平面視における中央に設けられる、テンプレート本体1の下に下部基礎用のコンクリートを打設するための円形の開口部12と、開口部12の周りに等角度間隔で2列に配設される多数の空気孔13,…とを有している。空気孔13,…は、テンプレート本体1の下にコンクリートを打設する際に、テンプレート本体1の下から空気を逃すために用いられる。
【0022】
アンカーボルト32は、図2に示すように、雄ねじボルト321と、円板状の定着板33とを備えている。雄ねじボルト321は、下端面321aが、軸垂直な平面に設けられ、定着板33は、雄ねじボルト321の下端近傍に溶接等により固設されている。アンカーボルト32は、雄ねじボルト321の上端が長ナット2の雌螺子孔2aの下側から途中まで螺入するようにして、長ナット2から下方へ延出している。アンカーボルト32は、テンプレートAを床スラブB2に載置する際に、床スラブB2に当接しない。定着板33は、アンカーボルト32が下部基礎B1から抜けることを防止する。長ナット2の雌螺子孔2aには、アイソレータE1を取り付ける直前まで、上側から取付ボルト10が螺入されている。
【0023】
(レベル調整具100)
本実施形態に係るレベル調整具100は、図4に示すように、レベル調整ボルト31と、螺回用工具8とを主に備える他、レベル調整ボルト31の加締めに用いる加締め具5を備えている。
【0024】
レベル調整ボルト31は、図3に示すように、頭のない棒状の雄ねじボルト311と、雄ねじボルト311の上端面311aに載置固定される螺回用係合受け部312と、雄ねじボルト311の下端面311bに固定される接地爪34とを備えている。接地爪34は、先端(下方)に向けて次第に細くなり、点状の先端34aを備えている。図示の例では、螺回用係合受け部312は、六角ナットを雄ねじボルト311の上端面311aに溶接した突起状をなしている。螺回用係合受け部312は、突起でなく上端面311aに設けた六角穴のような凹部でもよく、突起や凹部の平面視形状も六角形以外の他の多角形状でもよいし、星形や、十字型、楕円形などの非円形状をなし、これに後述する螺回用工具8の係合部を係合させて十分なトルクで回動できれば、その形状は特に限定されない。
【0025】
螺回用係合受け部312の最大外径は、雄ねじボルト311の谷径よりも小さく、長ナット2の雌螺子孔2a内に収容可能である。レベル調整ボルト31は、下端近傍に孔の開いた円板板状の定着板33が溶接等により固設されている。定着板33は、レベル調整ボルト31が下部基礎B1から抜けることを防止する。
【0026】
図3(a)の例の接地爪34は倒立した円錐状をなしているが、その形状は特に限定されず、図3(b)のような球状の他、倒立した多角錘状でも、先端が平面状のものでもよく、床スラブB2に合わせて、適宜の形状を採用できるが、下端が点状に尖ってることが好ましい。螺回用係合受け部312、接地爪34は、雄ねじボルト311に全周隅肉溶接されているが、螺子固定してもよいし、雄ねじボルト311と一体に機械加工により削り出してもよい。ただし、接地爪34は、設けなくてもよい。
【0027】
加締め具5は、加締めボルト6と連れ回り防止球7とを備えている。
加締めボルト6は、レベル調整ボルト31よりも短尺のボルト本体61と、ボルト本体61の上端面61aに溶接された螺回用係合受け部62とを備えている。螺回用係合受け部62は、レベル調整ボルト31の螺回用係合受け部312と同形状であることが好ましい。こうすることで、レベル調整ボルト31を螺回させる螺回用工具8を、加締めボルト6の螺回にも使用できる。ボルト本体61の下端面61bは、軸垂直な平面に設けられている。
【0028】
連れ回り防止球7は、螺回用係合受け部312を構成する六角ナットの雌螺子孔312aより大径に設けられ、雌螺子孔312aの上端開口に下側の一部を収容されて、螺回用係合受け部312に対し回動可能に支持されている。加締めボルト6を回動させることにより、連れ回り防止球7を下方へ押圧し、連れ回り防止球7によりレベル調整ボルト31を下方へ押圧する。このように、連れ回り防止球7を介してレベル調整ボルト31を押圧することで、レベル調整ボルト31が加締めボルト6に連れ回りすることを防止しながらレベル調整ボルト31を押圧できるので、レベル調整ボルト31が螺回してテンプレート本体1の水平が損なわれることを防止できる。連れ回り防止球7は、本実施形態では、加締めボルト6に対し連結されていないが、例えば加締めボルト6の下端に設けた球面ソケットに収容する等して加締めボルト6に連結してもよい。連れ回り防止球7の材質は、レベル調整ボルト31の加締めに必要な剛性を有していれば特に限定されず、鉄、ステンレス、セラミックス等公知の材料を好適に用いることが出来る。
【0029】
螺回用工具8は、図3に示すように、レベル調整ボルト31の螺回用係合受け部312や加締めボルト6の螺回用係合受け部62と雄雌で係合する凹部からなる係合部81を備えている。螺回用工具8は、螺回用係合受け部312,62を構成する六角ナットに係合する係合部81を有する六角ソケットレンチからなり、係合部81は、円柱状をなし先端に六角柱状の凹部81aを備えている。係合部81の、最大外径は、長ナット2の雌螺子孔2aの山径よりも小さく設けられて、雌螺子孔2a内に収容可能に構成されている。これにより、長ナット2の雌螺子孔2a内で、螺回用工具8の係合部81をレベル調整ボルト31の螺回用係合受け部312や加締めボルト6の螺回用係合受け部62に係合して雌螺子孔2a内でこれらを回動できる。ただし、螺回用工具8の係合部81は、レベル調整ボルト31の螺回用係合受け部312が六角穴のような凹部の場合は、これと係合する係合部81は六角レンチのような突起により構成する。係合部81の凹部や突起の断面形状も、六角形に限らず、レベル調整ボルト31の螺回用係合受け部312の断面形状に合わせて、適宜に変更される。
【0030】
図1図2における符号96は、下部基礎B1を打設するための外周型枠を示している。
【0031】
<テンプレートのレベル・平面視位置調整>
次に、本発明の一の実施形態に係るレベル調整具100を用いて、免震ゴムの取付けに用いられるテンプレートAのレベル調整、及び平面視位置の調整を行う方法について詳述する。
【0032】
(外周縦配筋設置工程S1)
外周縦配筋設置工程S1(以下、単に「工程」S1のように言うことがある)はテンプレートAを埋設する下部基礎B1内に埋設される配筋B3のうち、配筋B3の外周部を構成する外周縦配筋B31を設置する工程である。
【0033】
外周縦配筋B31は、図5(a)に示すように下部基礎B1が載置される床スラブB2内に鉛直方向に延びるように、かつ床スラブB2の上面B21から上方へ上端が突出した状態で、床スラブB2を打設することで形成する。外周縦配筋B31は、図5(b)に示すように、平面視における下部基礎B1の周縁に沿って多数が並ぶよう設けられる。
【0034】
(配筋完成工程S2)
配筋完成工程S2は、図6に示すように、基礎下部内に設ける配筋B3を完成させる工程である。外周縦配筋設置工程S1を終了したら、番線を用い、図6に示すように、外周縦配筋B31の上端部の水平に折れ曲がった部分に水平配筋B32,…を格子状に連結するとともに、外周縦配筋B31の外側、又は内側(図6の例では外側)から外周枠配筋B33,…を連結する。
【0035】
(外周型枠設置工程S3)
外周型枠設置工程S3は、下部基礎にコンクリートを打設するための外周型枠96を設置する工程である。配筋完成工程S2の完了後、又は併行して、配筋B3を囲繞するように、コンクリート打設用の外周型枠96を設置する。
【0036】
(テンプレート設置工程S4)
テンプレート設置工程S4は、床スラブB2上にテンプレートA1を載置する工程である。配筋完成工程S3、及び外周型枠設置工程S4を完了したら、図7に示すように、テンプレートA1から一部の取付ボルト10を取り外し、長ナット2に上からアイボルト97を螺結し、これにロープ等を引き掛けてクレーン等で吊るして、床スラブB2に載置する。この際、床スラブB2上に墨付けやレーザーにより表示されたセンターマーク(不図示)に、テンプレート本体1に墨付けされたセンターマーク(不図示)を合わせるようにする。4本のレベル調整ボルト31、及びアンカーボルト32を、配筋B3に当たらない所に配設するように、テンプレート本体1を配設する。
【0037】
(レベル調整工程S5)
レベル調整工程S5は、テンプレート本体1を水平に、つまり、長ナットの軸方向を鉛直方向に合わせる工程である。テンプレート設置工程S4を完了したら、図3に示すように、レベル調整ボルト31を取り付けた長ナット2の上方から雌螺子孔2a内に螺回用工具(図示の例では、六角ソケットレンチ)8の係合部81を挿入し、係合部81の凹部81aをレベル調整ボルト31の螺回用係合受け部(図示の例では六角ナット)312に被嵌する。この位置でテンプレート本体1を持ち上げたい場合は、レベル調整ボルト31を長ナット2から下方へ進出させるべく螺回用工具8を回動し、この位置でのテンプレート本体1を下げたい場合は、レベル調整ボルト31を長ナット2から上方へ退入させるべく螺回用工具8を回動する。
【0038】
(レベル確認工程S6)
レベル調整工程S5が一旦完了したら、テンプレート本体1のレベル(長ナット2の鉛直)を確認する。レベルが水平でない場合は、再度工程S5から工程S6を実施する。
【0039】
(加締め工程S7)
加締め工程S7は、レベル調整ボルト31を長ナット2に対し加締め固定してテンプレートA1の姿勢と位置を正しい状態で固定する工程である。レベル確認工程S6が完了したら、レベル調整ボルト31が連結された長ナット2の上方からその雌螺子孔2a内に連れ回り防止球7を投入し、レベル調整ボルト31の螺回用係合受け部312の雌螺子孔312aの上端側開口に一部収容するようにして載置する。この状態で、さらに上側から加締めボルト6を螺入し、螺回用工具8により加締めボルト6を螺回させて連れ回り防止球7を介してレベル調整ボルト31を下方へ押圧して加締め固定する。
【0040】
(免震装置取付工程S8)
工程S1から工程S7により、テンプレートAの設置とレベルの調整を完了したら、テンプレート本体1の開口部12から外周型枠96内にコンクリートを打設してテンプレートA1を下部基礎B1内に埋設する。下部基礎B1が固化したら、取付ボルト10をいったん取り外し、アイソレータE1の下部フランジのボルト穴と長ナット2の雌螺子孔2aを合わせ、取付ボルト10を長ナット2に螺結する。こうして、アイソレータE1をテンプレートA1に連結する。
【0041】
(効果)
以上、第1実施形態に係るレベル調整具、及びレベル調整方法では、上述した構成により、次のような効果を奏する。
(1)テンプレートA1の上方からレベル調整ボルト31を螺回できるので、周囲の配筋Bに妨げられることなくテンプレートAのレベル調整を行える。
(2)レベル調整ボルト31の下端に設けた接地爪34の下端に点状の先端34aを設けたので、床スラブB2の上面に凹凸がある場合も、精度よくテンプレートA1のレベル・位置調整を行うことができる。
(3)レベル調整ボルト31を加締める加締めボルト6も、テンプレートA1の上方から回動できるので、周囲の配筋Bに妨げられることなくレベル調整ボルト31の加締めを行える。
(4)加締めボルト6とレベル調整ボルト31の間に連れ回り防止球7を介在させたので、加締めの際にレベル調整ボルト31が回動することによりテンプレート本体の水平が壊れることを抑制できる。
【0042】
(その他の実施形態)
以上、本発明は、上述した実施形態に限らず、例えば、本発明にかかるレベル調整方法が対象とするテンプレート本体は、板状をなしていれば特に平面視形状は限定されず、図8(a)に示した矩形平盤状、同図(b)に示したような中央に大きな開口14を有する矩形リング状、又は同図(c)に示した開口15を有する円形リング状その他の公知の形状を適宜に用いることが出来る。
【0043】
また、本発明のレベル調整具は、加締めナットや連れ回り防止球を備えなくともよい。レベル調整ボルトは、加締めボルトを用いない方法で加締めてもよい。本発明のレベル調整具、及びレベル調整方法は、免震装置を取り付ける場合に限らず、コンクリート面にボルトを螺入するあらゆる場合に用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
A(A1,A2,A3,A4) テンプレート
1,201,301,401 テンプレート本体
2 長ナット
3(31,32) アンカーボルト
31 レベル調整ボルト
312 螺回用係合受け部
6 加締めボルト
8 螺回用工具
7 連れ回り防止球
81 係合部
B1 下部基礎
B21 スラブ面
【要約】      (修正有)
【課題】建築・土木用のテンプレートを設置する際のレベル調整を周囲の配筋に妨げられないようにする。
【解決手段】本発明は、水平にして下部基礎B1に埋設される板状のテンプレート本体1と、テンプレート本体1の厚み方向に貫通する複数の長ナット2と、長ナット2に螺入された複数のレベル調整ボルト31とを有するテンプレートA1のレベル調整方法である。
下部基礎B1を打設する床スラブB2にレベル調整ボルト31の下端を当接させるようにして床スラブB2にテンプレートA1を載置し、螺回用工具の係合部を長ナット2の上側から挿入するようにして、長ナット2内で係合部をレベル調整ボルト31の螺回用係合受け部312に係合させ、螺回用工具8を回すことによりレベル調整ボルト31を回動・進退させてテンプレートA1のレベル調整を行う。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9