(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-07
(45)【発行日】2025-08-18
(54)【発明の名称】田植機
(51)【国際特許分類】
A01C 11/02 20060101AFI20250808BHJP
【FI】
A01C11/02 350H
A01C11/02 350G
(21)【出願番号】P 2022162593
(22)【出願日】2022-10-07
【審査請求日】2024-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 了介
(72)【発明者】
【氏名】尼崎 喬士
(72)【発明者】
【氏名】原野 朱莉
【審査官】小林 直暉
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-073151(JP,A)
【文献】特開平03-083509(JP,A)
【文献】特開平11-266636(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0176914(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103858573(CN,A)
【文献】特開2009-100716(JP,A)
【文献】特開平1-141517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の苗を集めてマット状にした苗マットと育苗箱との少なくとも一つを含む育苗ユニットを植付け条毎に並列する状態で載置可能な苗載台と、
前記植付け条毎に並列する状態で設けられ、前記苗載台に載置された前記育苗ユニットから苗を取り出して圃場に植え付ける複数の苗植付装置と、
前記植付け条毎に並列する状態で設けられ、前記育苗ユニットを前記苗載台へ搬送する複数の苗搬送装置と、
前記複数の苗搬送装置の夫々に駆動制御を実行可能な制御部と、
全ての前記苗搬送装置を同時に駆動させない駆動制御許可部と、が備えられている田植機。
【請求項2】
前記制御部は、前記複数の苗搬送装置のうち左右一方端から左右中央側への予め設定された第一設定条数分に亘る前記苗搬送装置を駆動させる第一駆動制御を実行し、前記第一駆動制御の完了後に前記複数の苗搬送装置のうち左右他方端から前記左右中央側への予め設定された第二設定条数分に亘る前記苗搬送装置を駆動させる第二駆動制御を実行するように構成され、
前記駆動制御許可部は、前記第一駆動制御が実行されているときに前記第一設定条数分に亘る前記苗搬送装置以外の前記苗搬送装置を駆動させず、前記第二駆動制御が実行されているときに前記第二設定条数分に亘る前記苗搬送装置以外の前記苗搬送装置を駆動させない請求項1に記載の田植機。
【請求項3】
前記制御部は、前記第二駆動制御の完了後に、前記左右一方端から前記第一設定条数分に亘る前記苗搬送装置と、前記左右他方端から前記第二設定条数分に亘る前記苗搬送装置と、の間に位置する前記苗搬送装置を駆動させる第三駆動制御を実行するように構成され、
前記駆動制御許可部は、前記第三駆動制御が実行されているときに、前記左右一方端から前記第一設定条数分に亘る前記苗搬送装置と、前記左右他方端から前記第二設定条数分に亘る前記苗搬送装置と、を駆動させない請求項2に記載の田植機。
【請求項4】
前記駆動制御許可部は、前記制御部が前記苗搬送装置の搬送方向における一枚分の前記育苗ユニットを搬送するための前記駆動制御を完了した後に、予め設定された第一設定時間だけ待ってから、次の前記育苗ユニットを搬送するための前記駆動制御の開始を前記制御部へ許可するように構成されている請求項1から3の何れか一項に記載の田植機。
【請求項5】
前記苗載台において前記植付け条毎に並列する状態で設けられるとともに前記育苗ユニットが前記苗載台に載置されている第一載置状態を検出可能な複数の第一検出部が備えられ、
前記駆動制御許可部は、前記複数の第一検出部の少なくとも一つが前記第一載置状態を検出していないとき、前記第一検出部が前記第一載置状態を検出していない前記植付け条に対応する前記苗搬送装置に対する前記駆動制御の実行を前記制御部へ許可するように構成されている請求項1から3の何れか一項に記載の田植機。
【請求項6】
前記複数の苗搬送装置の夫々に、前記育苗ユニットが前記苗搬送装置に載置されている第二載置状態を検出可能な第二検出部が備えられ、
前記駆動制御許可部は、前記複数の苗搬送装置のうち前記第二検出部が前記第二載置状態を検出している前記苗搬送装置において、前記第二検出部が前記第二載置状態を予め設定された第二設定時間に亘って検出すると、前記駆動制御の実行を前記制御部へ許可するように構成されている請求項1から3の何れか一項に記載の田植機。
【請求項7】
前記複数の苗搬送装置における搬送方向上手側端部に、人為操作を受け付ける操作具が備えられ、
前記駆動制御許可部は、前記操作具の操作に基づいて前記駆動制御の実行を前記制御部へ許可するように構成されている請求項1から3の何れか一項に記載の田植機。
【請求項8】
前記苗載台は、左右方向に往復動作可能なように構成され、
前記苗載台が前記往復動作の範囲における左右一方の端部に位置する第一端寄せ状態を検出可能な位置検出部が備えられ、
前記駆動制御許可部は、前記第一端寄せ状態が検出されると前記駆動制御の実行を前記制御部へ許可するように構成されている請求項1から3の何れか一項に記載の田植機。
【請求項9】
前記苗載台は、左右方向に往復動作可能なように構成され、
前記苗載台が前記往復動作の範囲における左右一方の端部に位置する第一端寄せ状態を検出可能な位置検出部と、
前記往復動作のための動力を伝達する駆動軸と、
前記駆動軸の回転数を検出する回転数検出部と、が備えられ、
前記駆動制御許可部は、前記位置検出部が前記第一端寄せ状態を検出した際に前記回転数検出部が検出した前記回転数から前記駆動軸が予め設定された設定回転数だけ回転すると、前記苗載台が前記往復動作の範囲における左右他方の端部に位置する第二端寄せ状態であると判定するように構成され、かつ、前記第一端寄せ状態または前記第二端寄せ状態が検出されると前記駆動制御の実行を前記制御部へ許可するように構成されている請求項1から3の何れか一項に記載の田植機。
【請求項10】
前記苗載台及び前記複数の苗植付装置は、上下昇降動作可能な昇降機構に支持されることによって、苗を圃場に植え付ける作業位置と、前記作業位置よりも上側に位置して苗を圃場に植え付けない非作業位置と、に位置変更可能なように構成され、
前記駆動制御許可部は、前記苗載台及び前記複数の苗植付装置が前記非作業位置に位置する状態で前記駆動制御の実行を前記制御部へ許可するように構成されている請求項1から3の何れか一項に記載の田植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示された田植機では、複数の苗搬送装置(文献では「搬送ユニット」)が備えられ、複数の苗搬送装置の夫々は育苗ユニット(文献では「苗マット」)を苗載台へ搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、育苗ユニットが苗搬送装置から苗載台へ搬送される際に、複数の苗搬送装置が同時に駆動すると、例えば消費電力が大きくなり、田植機における供給電力が不足する可能性が考えられる。このような問題を解決する手段として、バッテリや発電機の容量を大きくすることが考えられるが、この手段であると田植機の重量が増大する虞がある。
【0005】
本発明は、複数の苗搬送装置を適切に制御可能な田植機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の田植機は、複数の苗を集めてマット状にした苗マットと育苗箱との少なくとも一つを含む育苗ユニットを植付け条毎に並列する状態で載置可能な苗載台と、前記植付け条毎に並列する状態で設けられ、前記苗載台に載置された前記育苗ユニットから苗を取り出して圃場に植え付ける複数の苗植付装置と、前記植付け条毎に並列する状態で設けられ、前記育苗ユニットを前記苗載台へ搬送する複数の苗搬送装置と、前記複数の苗搬送装置の夫々に駆動制御を実行可能な制御部と、全ての前記苗搬送装置を同時に駆動させない駆動制御許可部と、が備えられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によると、駆動制御許可部は、制御部に複数の苗搬送装置の全てを同時に駆動させないように構成されている。このため、例えば田植機のバッテリや発電機の容量が小さい場合であっても、制御部は、出来るだけ消費電力が小さくなるように、苗搬送装置を駆動させることが可能となる。これにより、田植機における供給電力が不足する虞が軽減される。この結果、複数の苗搬送装置を適切に制御可能な田植機が実現される。
【0008】
本発明において、前記制御部は、前記複数の苗搬送装置のうち左右一方端から左右中央側への予め設定された第一設定条数分に亘る前記苗搬送装置を駆動させる第一駆動制御を実行し、前記第一駆動制御の完了後に前記複数の苗搬送装置のうち左右他方端から前記左右中央側への予め設定された第二設定条数分に亘る前記苗搬送装置を駆動させる第二駆動制御を実行するように構成され、前記駆動制御許可部は、前記第一駆動制御が実行されているときに前記第一設定条数分に亘る前記苗搬送装置以外の前記苗搬送装置を駆動させず、前記第二駆動制御が実行されているときに前記第二設定条数分に亘る前記苗搬送装置以外の前記苗搬送装置を駆動させないと好適である。
【0009】
本構成によると、制御部が、全ての苗搬送装置を同時に駆動させることなく、第一駆動制御と第二駆動制御とに分けて複数の苗搬送装置を駆動させる。このため、制御部は、出来るだけ消費電力が小さくなるように、苗搬送装置を駆動させながらも、複数の条数分に亘る苗搬送装置を一括的に駆動させる。これにより、消費電力の低減化と、育苗ユニットの搬送効率と、が両立する。
【0010】
本発明において、前記制御部は、前記第二駆動制御の完了後に、前記左右一方端から前記第一設定条数分に亘る前記苗搬送装置と、前記左右他方端から前記第二設定条数分に亘る前記苗搬送装置と、の間に位置する前記苗搬送装置を駆動させる第三駆動制御を実行するように構成され、前記駆動制御許可部は、前記第三駆動制御が実行されているときに、前記左右一方端から前記第一設定条数分に亘る前記苗搬送装置と、前記左右他方端から前記第二設定条数分に亘る前記苗搬送装置と、を駆動させないと好適である。
【0011】
本構成によると、制御部が、全ての苗搬送装置を同時に駆動させることなく、第一駆動制御と第二駆動制御と第三駆動制御とに分けて複数の苗搬送装置を駆動させる。このため、制御部は、出来るだけ消費電力が小さくなるように、苗搬送装置を駆動させながらも、複数の条数分に亘る苗搬送装置を一括的に駆動させられる。これにより、消費電力の低減化と、育苗ユニットの搬送効率と、が両立する。
【0012】
本発明において、前記駆動制御許可部は、前記制御部が前記苗搬送装置の搬送方向における一枚分の前記育苗ユニットを搬送するための前記駆動制御を完了した後に、予め設定された第一設定時間だけ待ってから、次の前記育苗ユニットを搬送するための前記駆動制御の開始を前記制御部へ許可するように構成されていると好適である。
【0013】
苗搬送装置から苗載台へ育苗ユニットが搬送された際に、苗載台が振動する場合が考えられる。このとき、複数枚分の育苗ユニットが立て続けに搬送されると、苗載台の振動によって育苗ユニットの搬送が失敗する可能性が考えられる。本構成であれば、一枚分の育苗ユニットの搬送後に、第一設定時間だけ待ってから次の育苗ユニットが搬送される。このため、苗載台の振動が収束するまでの十分な時間に第一設定時間が設定されると、苗載台が振動する場合であっても、育苗ユニットが、安定的に苗載台に搬送される。
【0014】
本発明において、前記苗載台において前記植付け条毎に並列する状態で設けられるとともに前記育苗ユニットが前記苗載台に載置されている第一載置状態を検出可能な複数の第一検出部が備えられ、前記駆動制御許可部は、前記複数の第一検出部の少なくとも一つが前記第一載置状態を検出していないとき、前記第一検出部が前記第一載置状態を検出していない前記植付け条に対応する前記苗搬送装置に対する前記駆動制御の実行を前記制御部へ許可するように構成されていると好適である。
【0015】
本構成によると、第一検出部が植付け条毎に並列する状態で苗載台に設けられる。このため、制御部は、苗載台のうち、第一検出部が第一載置状態を検出しない植付け条に対応する箇所に適宜育苗ユニットを補給するように、苗搬送装置を制御できる。
【0016】
本発明において、前記複数の苗搬送装置の夫々に、前記育苗ユニットが前記苗搬送装置に載置されている第二載置状態を検出可能な第二検出部が備えられ、前記駆動制御許可部は、前記複数の苗搬送装置のうち前記第二検出部が前記第二載置状態を検出している前記苗搬送装置において、前記第二検出部が前記第二載置状態を予め設定された第二設定時間に亘って検出すると、前記駆動制御の実行を前記制御部へ許可するように構成されていると好適である。
【0017】
本構成によると、第二検出部が育苗ユニットを検出すると、制御部は、苗搬送装置を駆動するように構成されている。このため、例えば作業者が育苗ユニットを苗搬送装置に補給した際に、制御部は、その育苗ユニットを苗載台へ随時搬送可能となる。
【0018】
本発明において、前記複数の苗搬送装置における搬送方向上手側端部に、人為操作を受け付ける操作具が備えられ、前記駆動制御許可部は、前記操作具の操作に基づいて前記駆動制御の実行を前記制御部へ許可するように構成されていると好適である。
【0019】
本構成であれば、例えば作業者が、育苗ユニットを苗搬送装置に補給して、操作具を操作すると、制御部は、その育苗ユニットを苗載台へ随時搬送可能となる。また、操作具が苗搬送装置における搬送方向上手側端部に設けられている。つまり、操作具が、作業者の手の届き易い位置に配置されている。このため、例えば作業者が苗搬送装置の搬送方向上手側端部へ育苗ユニットを補給するとき、作業者は操作具を容易に操作できる。
【0020】
本発明において、前記苗載台は、左右方向に往復動作可能なように構成され、前記苗載台が前記往復動作の範囲における左右一方の端部に位置する第一端寄せ状態を検出可能な位置検出部が備えられ、前記駆動制御許可部は、前記第一端寄せ状態が検出されると前記駆動制御の実行を前記制御部へ許可するように構成されていると好適である。
【0021】
苗載台が左右方向に往復動作する構成であると、育苗ユニットを苗搬送装置から苗載台へ安定的に搬送するためには、苗搬送装置と苗載台との左右方向における位置合わせを行う必要がある。本構成であれば、苗載台が左右一方の端部に位置する第一端寄せ状態が、苗搬送装置と苗載台との左右方向における位置合わせの基準となる。そして、第一端寄せ状態が位置検出部によって検出される。つまり、位置検出部が第一端寄せ状態を検出するという構成だけで、苗搬送装置と苗載台との左右方向における位置合わせが可能となる。
【0022】
本発明において、前記苗載台は、左右方向に往復動作可能なように構成され、前記苗載台が前記往復動作の範囲における左右一方の端部に位置する第一端寄せ状態を検出可能な位置検出部と、前記往復動作のための動力を伝達する駆動軸と、前記駆動軸の回転数を検出する回転数検出部と、が備えられ、前記駆動制御許可部は、前記位置検出部が前記第一端寄せ状態を検出した際に前記回転数検出部が検出した前記回転数から前記駆動軸が予め設定された設定回転数だけ回転すると、前記苗載台が前記往復動作の範囲における左右他方の端部に位置する第二端寄せ状態であると判定するように構成され、かつ、前記第一端寄せ状態または前記第二端寄せ状態が検出されると前記駆動制御の実行を前記制御部へ許可するように構成されていると好適である。
【0023】
苗載台が左右方向に往復動作する構成であると、育苗ユニットを苗搬送装置から苗載台へ安定的に搬送するためには、苗搬送装置と苗載台との左右方向における位置合わせを行う必要がある。本構成であれば、苗載台が左右他方の端部に位置する第二端寄せ状態が、苗搬送装置と苗載台との左右方向における位置合わせの基準となる。そして、第二端寄せ状態が位置検出部及び回転数検出部の検出結果に基づいて判定される。つまり、位置検出部及び回転数検出部の検出結果に基づいて第二端寄せ状態を判定するという構成だけで、苗搬送装置と苗載台との左右方向における位置合わせが可能となる。
【0024】
本発明において、前記苗載台及び前記複数の苗植付装置は、上下昇降動作可能な昇降機構に支持されることによって、苗を圃場に植え付ける作業位置と、前記作業位置よりも上側に位置して苗を圃場に植え付けない非作業位置と、に位置変更可能なように構成され、前記駆動制御許可部は、前記苗載台及び前記複数の苗植付装置が前記非作業位置に位置する状態で前記駆動制御の実行を前記制御部へ許可するように構成されていると好適である。
【0025】
本構成によると、苗載台及び複数の苗植付装置は、上下昇降動作可能な昇降機構に支持される。このため、苗搬送装置が苗載台及び複数の苗植付装置に対して遠近動作しない構成であっても、苗載台及び複数の苗植付装置が上昇した状態であれば、育苗ユニットが苗搬送装置から苗載台へ安定的に搬送される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図4】第一補給モードにおける搬送装置の駆動制御を示すフローチャートである。
【
図5】育苗ユニットを搬送装置から苗載台へ搬送する様子を示す背面図である。
【
図6】育苗ユニットを搬送装置から苗載台へ搬送する様子を示す背面図である。
【
図7】育苗ユニットを搬送装置から苗載台へ搬送する様子を示す背面図である。
【
図8】育苗ユニットを搬送装置から苗載台へ搬送する様子を示す背面図である。
【
図9】育苗ユニットを搬送装置から苗載台へ搬送する様子を示す背面図である。
【
図10】ベルトの位置検出に関する構成を模式的に示す図である。
【
図11】搬送装置が駆動しているときの制御を示すフローチャートである。
【
図12】第二補給モードにおける搬送装置の駆動制御を示すフローチャートである。
【
図13】第二補給モードにおける搬送装置の駆動制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
〔田植機の基本構成〕
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、
図1~
図3において、矢印「F」が機体前方、矢印「B」が機体後方、矢印「U」が機体上方、矢印「D」が機体下方、矢印「L」が機体左方、矢印「R」が機体右方である。
【0028】
図1及び
図2に示すように、乗用型の田植機に、圃場を走行可能な走行機体Cが備えられている。走行機体Cは、左右一対の操舵車輪10,10と、左右一対の後車輪11,11と、を有する。左右一対の操舵車輪10は、走行機体Cの前部に設けられて走行機体Cの向きを変更操作自在なように構成されている。左右一対の後車輪11は、走行機体Cの後部に設けられている。走行機体Cの中央部に、各種の運転操作が行われる搭乗部14が備えられている。搭乗部14は、走行機体Cの横幅に亘って走行機体Cの上に設けられている。搭乗部14は、搭乗者が着座可能な搭乗座席14Aを有する。また、植付部W及び苗載台22が、上下昇降動作可能なように走行機体Cの後部に支持連結されている。植付部Wは、圃場に対する苗を植付け可能に構成されている。
【0029】
走行機体Cの前部に、操舵車輪10及び後車輪11を走行駆動可能なエンジン13と、開閉式のボンネット12と、が備えられている。ボンネット12は後上がりに傾斜する傾斜面を有するとともにエンジン13を収納する。詳述はしないが、操舵車輪10と後車輪11との少なくとも一方に、エンジン13の動力を伝達するための無段変速装置15(
図3)が備えられている。無段変速装置15は、例えば公知のHST(静油圧式無段変速装置)である。エンジン13の動力が、無段変速装置15を介して操舵車輪10及び後車輪11に伝達される。また、エンジン13の動力が、無段変速装置15と、電動モータ駆動式の作業クラッチ26(
図3)と、を介して植付部Wに伝達される。
【0030】
植付部Wに、四個の伝動ケース18と、八個の回転ケース19と、が備えられている。一つの伝動ケース18に二つの回転ケース19が連結されている。作業クラッチ26と植付部Wとに亘ってPTO軸(不図示)が介在する。PTO軸は、無段変速装置15からの変速後の動力によって回転駆動し、当該動力を植付部Wの伝動ケース18へ伝達する。伝動ケース18及び回転ケース19は、本発明の『苗植付装置』に相当し、複数の苗植付装置が備えられている。
【0031】
回転ケース19は、各伝動ケース18の後部の左側部及び右側部に、夫々回転自在に支持されている。夫々の回転ケース19の両端部に、一対のロータリ式の植付アーム20が備えられている。苗は植付アーム20によって圃場面に植付けられる。整地フロート21は、圃場の田面を整地する。
【0032】
植付部Wの上方に苗載台22が備えられている。苗載台22に、植付け用の育苗ユニットが載置される。育苗ユニットとは、複数の苗を集めてマット状にした苗マットを含むものである。なお、育苗ユニットは、苗マットに加えて苗マットを収容する育苗箱も含んでも良い。また、育苗ユニットは、例えばポット苗であっても良い。つまり、苗載台22は、複数の苗を集めてマット状にした育苗ユニットを植付け条毎に並列する状態で載置可能なように構成されている。植付部Wは、一度に八条分の苗を植付け可能である。
【0033】
植付部W及び苗載台22は、昇降機構17を介して走行機体Cの後部に昇降可能に連結されている。昇降機構17は昇降用の油圧シリンダ16の伸縮動作により昇降動作する。植付部W及び苗載台22は、上下昇降動作可能な昇降機構17に支持されることによって、苗を圃場に植え付ける作業位置と、作業位置よりも上側に位置して苗を圃場に植え付けない非作業位置と、に位置変更可能なように構成されている。また、植付部W及び苗載台22は、昇降機構17の後端部において前後方向に沿う軸芯まわりにローリング可能に支持されている。
【0034】
苗載台22は、八個の苗載面22a(
図5~
図9)を有しており、苗載面22aの夫々の間に、縦壁状の仕切り部22b(
図5~
図9)が設けられている。八個の苗載面22aの夫々に、植付け用の育苗ユニットが載置される。苗載台22の苗載面22aの夫々に、接触式の苗センサ25(
図5~
図9)が設けられている。苗センサ25は、苗載台22において植付け条毎に並列する状態で設けられる。また、苗センサ25は、育苗ユニットが苗載台22に載置されている状態(本発明の『第一載置状態』に相当する)を検出可能なように構成されている。支持レール27(
図5~
図9)は、左右方向に沿って伝動ケース18に支持されている。苗載台22は、左右方向に沿ってスライド可能に支持レール27に支持されている。PTO軸から伝達される動力に基づいて、苗載台22の横送り機構(不図示)が駆動する。これにより、苗載台22は、左右に往復横送り駆動される。このように、苗載台22は、左右方向に往復動作可能なように構成されている。PTO軸は、苗載台22の往復動作のための動力を伝達するものであって、本発明の『駆動軸』に相当する。苗センサ25は、本発明の『第一検出部』に相当し、複数の第一検出部が備えられている。
【0035】
苗載台22が左右に往復横送り駆動されるとともに、伝動ケース18から伝達される動力によって各回転ケース19が回転駆動される。一対の植付アーム20は、苗載台22の下部から交互に苗を取り出して圃場の田面に植付ける。伝動ケース18及び回転ケース19は、植付け条毎に並列する状態で設けられている。このように、苗植付装置は、苗載台22に載置された育苗ユニットから苗を取り出して圃場に植え付ける。
【0036】
支持レール27における左端部に、端寄検出部23(
図3)が設けられている。苗載台22の左側部が支持レール27の左端部に位置するときに、苗載台22の左側部は端寄検出部23と接触する。端寄検出部23は、接触式のセンサである。端寄検出部23は、苗載台22と接触することによって、苗載台22が左端部に寄せられていることを検出する。即ち、端寄検出部23は、苗載台22が往復動作の範囲における左端部に位置する状態(本発明の『第一端寄せ状態』に相当する)を検出可能なように構成されている。端寄検出部23は本発明の『位置検出部』に相当する。
【0037】
また、本実施形態の田植機に、回転カウント数検出部24(
図3)が備えられている。回転カウント数検出部24は、本発明の『回転数検出部』に相当する。回転カウント数検出部24は、例えばPTO軸、伝動ケース18、及び、回転ケース19の少なくとも一つの回転カウント数を検出可能に構成されている。換言すると、回転カウント数検出部24は、苗載台22の往復動作のための駆動力を伝達する駆動軸の回転数を検出するように構成されている。例えば、PTO軸が一回転するごとに、苗載台22は一定量だけ左右に横送りされる。このことから、苗載台22が一往復だけ横送り駆動される際のPTO軸の回転カウント数が、予め算出可能である。このため、苗載台22が左端部に寄せられた状態から、回転カウント数検出部24が予め設定されたカウント数の回転を更に検出すると、苗載台22が右端部に寄せられた状態の判定が可能となる。
【0038】
本実施形態の田植機は、自動走行を可能なように構成されている。田植機の自動走行を可能にするため、田植機に、衛星測位ユニット80と、操舵モータ(不図示)と、が備えられている。なお、本実施形態における『自動走行』とは、『田植機が、圃場を自動的に走行しながら、植付部Wによる田植え作業を行う』ということを意味する。
【0039】
衛星測位ユニット80は、搭乗部14の上方に取り付けられている。衛星測位ユニット80は、GNSS(グローバル・サテライト・ナビゲーション・システム、例えばGPS、GLONASS、Galileo、QZSS、BeiDou、等)で用いられる人工衛星からの測位信号を受信する。なお、衛星測位ユニット80による衛星航法を補完するために、慣性測位ユニット81(
図3)が備えられている。慣性測位ユニット81は、ジャイロ加速度センサや磁気方位センサを組み込んだものである。なお、慣性測位ユニット81は、田植機において衛星測位ユニット80と別の箇所に配置されても良いし、衛星測位ユニット80に組み込まれても良い。
【0040】
〔予備苗搬送部について〕
搭乗部14の上方に、予備苗搬送部30が備えられている。予備苗搬送部30は、植付部Wの前方(前上方)に位置する状態で走行機体Cに連結されている。予備苗搬送部30は、植付部Wの植付け条に亘る左右幅を有し、平面視において搭乗部14の搭乗座席14Aと重複する。予備苗搬送部30に、前搬送部31と後搬送部32とが備えられ、前搬送部31は、後端部の機体横向きの揺動支点X1まわりに上下揺動可能に構成されている。
【0041】
後搬送部32は後側ほど下側に位置するように傾斜する。前搬送部31に苗搬送装置40が備えられ、苗搬送装置40は複数の苗を集めてマット状にした育苗ユニットを、後方へ搬送し、後搬送部32へ受け渡す。後搬送部32は、八個のスライド面32a(
図5~
図9)を有しており、スライド面32aの夫々の間に、縦壁状の仕切り部32b(
図5~
図9)が設けられている。
【0042】
本実施形態では、植付部Wは、一度に八条分の苗を植付け可能である。このため、植付部Wの植付け条数に対応して八条分の苗搬送装置40が左右に並列配置されている。前搬送部31から後搬送部32へ受け渡された育苗ユニットは、スライド面32aの上をスライドしながら下方の苗載台22へ案内される。このように、複数の苗搬送装置40は、植付け条毎に並列する状態で設けられ、育苗ユニットを苗載台22へ搬送する。
【0043】
予備苗搬送部30は、下降姿勢と上昇姿勢とに姿勢変更可能なように構成されている。下降姿勢では、予備苗搬送部30の前搬送部31が後上がりに傾斜する。下降姿勢では、予備苗搬送部30の前端部が搭乗座席14Aの上端部よりも下側に位置する。また、下降姿勢では、予備苗搬送部30の前端部がボンネット12の上端部よりも下側に位置する。予備苗搬送部30の前端部は、下降姿勢となっている状態で、走行機体Cの前端部よりも前側に位置する。この状態で、作業者は、機体前方から予備苗搬送部30に対して育苗ユニットを供給できる。例えば機体前方に畦が位置する場合、作業者は、畦から予備苗搬送部30に対して育苗ユニットを供給できる。
【0044】
上昇姿勢では、予備苗搬送部30の前搬送部31が下降姿勢よりも上向きに揺動して予備苗搬送部30の前端部が搭乗部14に対して前上方に位置する。予備苗搬送部30は、上昇姿勢となっている状態で、予備苗搬送部30の前端部の高さと揺動支点X1の高さとが同じまたは略同じ状態となるように構成されている。この状態で、搭乗部14の前方は開放される。このため、搭乗部14に搭乗する搭乗者は、前搬送部31に前方の視界を遮られることなく、機体前方の圃場を視認できる。この状態が、予備苗搬送部30の上昇姿勢である。
【0045】
苗搬送装置40に、無端回動ベルト41が備えられている。また、苗搬送装置40の搬送方向下手側端部に電動式のベルト搬送用モータ42(
図1、
図3及び
図10)が備えられている。ベルト搬送用モータ42は、無端回動ベルト41を回動駆動する。無端回動ベルト41は、上側の搬送経路と、下側の戻り経路と、を巡回するように回動駆動される。
【0046】
無端回動ベルト41の上側の搬送経路における表面部分は育苗ユニットの載置面である。上側の搬送経路において、無端回動ベルト41の上に育苗ユニットが載置され、育苗ユニットは無端回動ベルト41の回動によって機体後方へ搬送される。即ち、苗搬送装置40に、育苗ユニットを載置支持しながら搬送する無端回動ベルト41が備えられ、育苗ユニットが苗搬送装置40によって無端回動ベルト41上を搬送される。
【0047】
ベルト搬送用モータ42は、正転方向と逆転方向との夫々に回転可能に構成されている。正転方向とは、
図1及び
図10の紙面における時計回りの方向である。また、逆転方向とは、
図1及び
図10の紙面における反時計回りの方向である。ベルト搬送用モータ42が正転方向に回転すると、無端回動ベルト41に載置された育苗ユニットは後方へ搬送される。また、ベルト搬送用モータ42が逆転方向に回転すると、無端回動ベルト41に載置された育苗ユニットは前方へ戻される。
【0048】
無端回動ベルト41の上側の搬送経路における育苗ユニットの載置面は、搬送方向に沿って育苗ユニットを四枚分載置可能な長さを有する。本実施形態では、四枚の育苗ユニットを、前から順番に一枚目、二枚目、三枚目、四枚目と称する。つまり、予備苗搬送部30は、搬送方向(機体前後方向)に沿って複数の育苗ユニットを載置可能なように構成されている。本実施形態では、八条分の苗搬送装置40が左右に並列配置されている。このため、予備苗搬送部30は32枚分の育苗ユニットを載置可能なように構成されている。苗搬送装置40において、一枚目の育苗ユニットが載置される箇所に、苗補給センサ45が配置されている。また、
図2に示すように、苗搬送装置40において、四枚目の育苗ユニットが載置される箇所に、四枚目検出センサ46が配置されている。
【0049】
上述したように、苗載台22は、左右に往復横送り駆動される。一方、予備苗搬送部30は、左右方向にスライドしない。このため、予備苗搬送部30が苗載台22へ育苗ユニットを搬送する際に、予備苗搬送部30における八条分の苗搬送装置40の左右位置と、苗載台22における八条分の苗載面22aの左右位置と、が一致する必要がある。換言すると、予備苗搬送部30が苗載台22へ育苗ユニットを搬送する際に、後搬送部32における七個の仕切り部22bの左右位置と、苗載台22における七個の仕切り部32bの左右位置と、が一致する必要がある。本実施形態では、苗載台22が左端部に寄せられているときの左右位置、即ち、端寄検出部23が苗載台22と接触するときの苗載台22の左右位置に、予備苗搬送部30の左右位置が一致するように、予備苗搬送部30は配置されている。
【0050】
〔田植機の制御構成について〕
図3に基づいて、本実施形態における田植機の制御構成を説明する。本実施形態における田植機に、走行制御部50と作業制御部51と駆動制御許可部52とが備えられている。走行制御部50と作業制御部51と駆動制御許可部52との各要素は、マイクロコンピュータ等の物理的な装置であっても良いし、ソフトウェアにおけるモジュールであっても良いし、装置とソフトウェアとの組み合わせであっても良い。
【0051】
走行制御部50は、衛星測位ユニット80及び慣性測位ユニット81の検出結果に基づいて、田植機の位置及び進行方位を算出し、田植機が予め設定された目標走行経路に沿って走行するように、無段変速装置15や操舵モータ(不図示)等を制御する。走行制御部50は、無段変速装置15を制御することによって、車速制御を可能なように構成されている。また、走行制御部50は、操舵モータ(不図示)を制御することによって、操舵制御を可能なように構成されている。なお、走行制御部50は、作業制御部51へ制御信号を送信可能に構成されても良い。
【0052】
作業制御部51は、駆動制御許可部52からの制御信号や、
図3に示す各種センサの検出結果等に基づいて、ベルト搬送用モータ42、油圧シリンダ16、及び、作業クラッチ26等を制御する。また、駆動制御許可部52は、
図3に示す各種センサの検出結果等に基づいて、走行制御部50及び作業制御部51へ制御信号やステータス信号等を送信可能に構成されている。作業制御部51は、本発明の『制御部』に相当する。
【0053】
駆動制御許可部52に接続される各種センサに、端寄検出部23と、回転カウント数検出部24と、苗センサ25と、ベルト位置センサ43と、苗補給センサ45と、四枚目検出センサ46と、正転操作具33と、逆転操作具34と、エンジン始動具35と、昇降センサ17Sと、が含まれる。なお、
図3においては、苗センサ25と苗補給センサ45と四枚目検出センサ46とベルト搬送用モータ42とが一つずつ示されている。実際には、八条分の苗搬送装置40に応じて、八組の苗センサ25と、八組のベルト位置センサ43と、八組の苗補給センサ45と、八組の四枚目検出センサ46と、が駆動制御許可部52に接続されている。また、八条分の苗搬送装置40に応じて、八組のベルト搬送用モータ42が作業制御部51に接続されている。駆動制御許可部52は、これらの各種センサの検出結果に基づいて、作業制御部51における駆動制御を実行させることによって、予備苗搬送部30に載置された育苗ユニットを、苗載台22へ自動的に搬送可能なように構成されている。
【0054】
正転操作具33と逆転操作具34とエンジン始動具35との夫々は、予備苗搬送部30の前端部に設けられている。正転操作具33及び逆転操作具34は、本発明の『操作具』に相当する。つまり、複数の苗搬送装置40における搬送方向上手側端部に、人為操作を受け付ける正転操作具33及び逆転操作具34が備えられている。例えば作業者は、正転操作具33を操作することによって、ベルト搬送用モータ42を正転駆動させることができる。また、作業者は、逆転操作具34を操作することによって、ベルト搬送用モータ42を逆転駆動させることができる。正転操作具33は、一つだけ設けられる構成であっても良いし、各条に対応して八個に設けられる構成であっても良い。逆転操作具34は、一つだけ設けられる構成であっても良いし、各条に対応して八個に設けられる構成であっても良い。
【0055】
エンジン13が停止した状態で、作業者がエンジン始動具35を操作すると、エンジン13が始動する。また、エンジン13が作動した状態で、作業者がエンジン始動具35を操作すると、エンジン13が停止する。駆動制御許可部52は、エンジン始動具35の操作と連動して、ベルト搬送用モータ42、油圧シリンダ16、及び、作業クラッチ26等の制御を作業制御部51へ許可するように構成されている。
【0056】
昇降センサ17Sは、昇降機構17が上昇状態であるか下降状態であるかを検出する。このことから、昇降センサ17Sは、植付部W及び苗載台22が作業位置であるか非作業位置であるかを検出するように構成されている。
【0057】
〔予備苗搬送部を制御する構成について〕
以下、作業制御部51が育苗ユニットを予備苗搬送部30から苗載台22へ自動的に搬送する構成を説明する。本実施形態における作業制御部51は、複数の苗搬送装置40の夫々に駆動制御を実行可能なように構成されている。
図3に示すように、駆動制御許可部52は、苗センサ25と苗補給センサ45と四枚目検出センサ46との検出結果に基づいて、ベルト搬送用モータ42の駆動制御の実行を作業制御部51へ許可する。これにより、作業制御部51は育苗ユニットを自動的に搬送可能に構成されている。作業制御部51は、複数の苗搬送装置40の夫々におけるベルト搬送用モータ42に対して各別に駆動制御を実行するように構成されている。この構成であれば、苗載台22に載置された育苗ユニットの量は植付け条ごとにバラつく場合であっても、作業制御部51は、苗載台22のうち補給の必要な苗載面22aのみに対して苗補給を行える。これにより、苗載台22において補給の不要な苗載面22aに対して過剰な苗補給が行われる虞が回避される。
【0058】
本実施形態において、作業制御部51は、複数の制御モードを有する。複数の制御モードに、第一補給モードと、第二補給モードと、が含まれる。作業制御部51は、制御モードを、第一補給モードと、第二補給モードと、に切替可能に構成されている。第一補給モードは、田植機が自動走行を行っている途中で、育苗ユニットを予備苗搬送部30から苗載台22へ補給するモードである。第二補給モードは、例えば田植機が畦際に停車した状態で、予備苗搬送部30に育苗ユニットを補給するモードである。
【0059】
〔第一補給モードにおける予備苗搬送部の搬送制御〕
図4~
図11に基づいて、第一補給モードにおける苗の補給のための処理を説明する。
図4のフローチャートに示すように、田植機が自動走行を行っているとき、駆動制御許可部52は、八個の苗センサ25の夫々の検出結果に基づいて、八個の苗載面22aの少なくとも一つにおいて苗の残量が少なくなっているか否かを判定する(ステップ#01)。換言すると、育苗ユニットが苗載台22に載置されている状態(第一載置状態)を、複数の苗センサ25の夫々が検出しているか否かを、駆動制御許可部52は判定する。
【0060】
八個の苗載面22aの少なくとも一つにおいて苗の残量が少なくなっていると(ステップ#01:Yes)、駆動制御許可部52は、端寄検出部23の検出結果に基づいて、苗載台22が左端部に寄せられているか否かを判定する(ステップ#02)。苗載台22が左端部に寄せられていなければ(ステップ#02:No)、田植機の自動走行は継続する。
【0061】
苗載台22が左端部に寄せられていることを、駆動制御許可部52が判定すると(ステップ#02:Yes)、駆動制御許可部52は、走行制御部50による田植機の自動走行を禁止する。そして走行制御部50は、無段変速装置15の斜板(不図示)の角度を中立角度へ操作する。斜板の中立角度とは、無段変速装置15が操舵車輪10及び後車輪11へ動力伝達しない角度である。これにより、田植機の自動走行は停止する(ステップ#03)。
【0062】
また、苗載台22が左端部に寄せられていることを、駆動制御許可部52が判定すると(ステップ#02:Yes)、駆動制御許可部52は、作業制御部51による植付部Wの制御を禁止する。そして作業制御部51は、油圧シリンダ16を制御して植付部W及び苗載台22を上昇させる(ステップ#04)。これにより、植付部W及び苗載台22が、苗を圃場に植え付ける作業位置から、苗を圃場に植え付けない非作業位置へ、位置変更される。苗載台22が上昇すると、後搬送部32の下端部と、苗載台22の上端部と、が接触または近接し、後搬送部32における八条分のスライド面32aと、苗載台22における八条分の苗載面22aと、が連通接続される。駆動制御許可部52は、植付部W及び苗載台22が非作業位置に位置する状態で、ベルト搬送用モータ42の駆動制御の実行を作業制御部51へ許可するように構成されている。
【0063】
なお、例えば一つの苗センサ25だけが育苗ユニットを検出していない状態であって、その都度、田植機の自動走行が停止して一条分の育苗ユニットが苗搬送装置40から苗載台22へ搬送される構成であると、田植機の自動走行が頻繁に停止しがちとなる。このため、駆動制御許可部52は、ステップ#01の処理において、複数の苗センサ25(例えば四条分の苗センサ25)が育苗ユニットを検出していない状態を判定してから、ステップ#02の処理に移行する構成であっても良い。
【0064】
ステップ#04において植付部W及び苗載台22の上昇が完了すると、駆動制御許可部52は、苗搬送装置40における夫々のベルト搬送用モータ42を正転方向に駆動させる駆動制御の実行を作業制御部51へ許可する。駆動制御許可部52は、苗載台22が往復動作の範囲における左端部に位置する状態(第一端寄せ状態)が検出されると、ベルト搬送用モータ42の駆動制御の実行を作業制御部51へ許可するように構成されている。換言すると、作業制御部51は、苗載台22が往復動作の範囲における左端部に位置する状態(第一端寄せ状態)になると、ベルト搬送用モータ42の駆動制御を実行可能となる。
【0065】
ところで、自動走行が行われているとき、バッテリは種々の機器に対して電力を供給している。このため、全てのベルト搬送用モータ42が同時に駆動すると、バッテリの放電量が過大になり、オルタネータによるバッテリの充電が追い付かなくなったり、バッテリに接続された電力線のヒューズが溶融したりする虞がある。このような不都合を回避するため、本実施形態では、全てのベルト搬送用モータ42を同時に駆動させない駆動制御許可部52が備えられている。換言すると、駆動制御許可部52は、全ての苗搬送装置40を同時に駆動させない。
【0066】
まず、駆動制御許可部52は、複数の苗搬送装置40のうち左端から五条分に亘る苗搬送装置40のベルト搬送用モータ42を駆動禁止にする。このため、作業制御部51は、複数の苗搬送装置40のうち右端から左右中央側への三条分(本発明の『第一設定条数分』に相当する)に亘る苗搬送装置40のベルト搬送用モータ42を正転方向に駆動させる駆動制御を実行する(ステップ#05)。このステップ#05における駆動制御は、本発明の『第一駆動制御』である。
図5は、第一駆動制御が行われる前の状態を示す。
図6は、第一駆動制御が行われた後の状態を示す。
【0067】
なお、苗センサ25が育苗ユニットを検出している場合、その苗載面22aに十分な育苗ユニットが載置されている。その場合、駆動制御許可部52は、育苗ユニットが十分に載置されている苗載面22aに対応する苗搬送装置40のベルト搬送用モータ42を駆動させない。つまり、苗センサ25が既に育苗ユニットを検出している苗載面22aに対応する苗搬送装置40に対して、駆動制御許可部52は、第一駆動制御を実行しないように構成されている。後述の第二駆動制御及び第三駆動制御においても、同様である。これにより、苗補給の不要な苗載面22aに対して過剰な苗補給が行われる虞が回避される。
【0068】
作業制御部51が第一駆動制御を実行することによって、右側三条分の苗搬送装置40の無端回動ベルト41に載置された育苗ユニットが、後搬送部32を経由して、苗載台22における右側三条分の苗載面22aに案内される。そして、右側三条分の苗載面22aにおける夫々の苗センサ25が、育苗ユニットと接触することによって、育苗ユニットを検出する。
【0069】
上述したように、植付部W及び苗載台22は、昇降機構17の後端部において前後方向に沿う軸芯まわりにローリング可能に支持されている。このため、作業制御部51が第一駆動制御を実行して、右側三条分の苗載面22aに育苗ユニットが補給された直後においては、苗載台22が当該前後方向に沿う軸芯まわりに揺動し、後搬送部32の位置と苗載台22の位置とがずれる可能性が考えられる。この状態で、無端回動ベルト41に載置された育苗ユニットが、引き続き苗載台22へ供給されると、育苗ユニットは、仕切り部22bに乗り上げる虞がある。このような不都合を回避するため、駆動制御許可部52は、作業制御部51が第一駆動制御を実行して右側三条分の苗載面22aに育苗ユニットを補給した後、予め設定された所定時間だけ待ってから、次の駆動制御(第二駆動制御)の実行を許可するように構成されている(ステップ#06)。所定時間は、苗載台22の揺動が収束するまでの時間に設定される。この所定時間は、本発明の『第一設定時間』に相当する。
【0070】
ステップ#06において所定時間が経過した後、駆動制御許可部52は、複数の苗搬送装置40のうち右端から五条分に亘る苗搬送装置40のベルト搬送用モータ42を駆動禁止にする。このため、作業制御部51は、複数の苗搬送装置40のうち左端から左右中央側への三条分(本発明の『第二設定条数分』に相当する)に亘る苗搬送装置40のベルト搬送用モータ42を正転方向に駆動させる駆動制御を実行する(ステップ#07)。このステップ#07におけるベルト搬送用モータ42の駆動制御は、本発明の『第二駆動制御』である。
図6は、第二駆動制御が行われる前の状態を示す。
図7は、第二駆動制御が行われた後の状態を示す。作業制御部51が第二駆動制御を実行することによって、左側三条分の苗搬送装置40の無端回動ベルト41に載置された育苗ユニットが、後搬送部32を経由して、苗載台22における左側三条分の苗載面22aに案内される。そして、左側三条分の苗載面22aにおける夫々の苗センサ25が、育苗ユニットと接触することによって、育苗ユニットを検出する。
【0071】
上述のステップ#06の場合と同様に、駆動制御許可部52は、作業制御部51が第二駆動制御を実行して左側三条分の苗載面22aに育苗ユニットを補給した後、予め設定された所定時間だけ待ってから、次の駆動制御の実行を許可するように構成されている(ステップ#08)。上述のステップ#06の場合と同様に、所定時間は、苗載台22の揺動が収束するまでの時間に設定される。この所定時間は、本発明の『第一設定時間』に相当する。
【0072】
つまり、作業制御部51は、苗搬送装置40の搬送方向における一枚分の育苗ユニットを搬送するための駆動制御の完了後に、予め設定された第一設定時間だけ待ってから、次の育苗ユニットを搬送するための駆動制御を開始するように構成されている。この構成は、ステップ#06及びステップ#08の両方に共通する。
【0073】
ステップ#08において所定時間が経過した後、駆動制御許可部52は、複数の苗搬送装置40のうち、左端から三条分に亘る苗搬送装置40のベルト搬送用モータ42と、右端から三条分に亘る苗搬送装置40のベルト搬送用モータ42と、を駆動禁止にする。このため、作業制御部51は、
図8及び
図9に示すように、苗載台22における左右中央における二条分の苗載面22aに対して一条分ずつ育苗ユニットを供給する(ステップ#09)。このとき、作業制御部51は、苗載台22における左右中央における二条分の苗搬送装置40のベルト搬送用モータ42を正転方向に一つずつ駆動させる駆動制御を実行する。このステップ#09におけるベルト搬送用モータ42の駆動制御は、本発明の『第三駆動制御』である。
図7は、第三駆動制御が行われる前の状態を示す。
図8は、最初の第三駆動制御が行われた後の状態を示す。
図9は、第三駆動制御が完了した状態を示す。つまり、作業制御部51は、第二駆動制御の完了後に、上述の第一設定条数分に亘る苗搬送装置40と、上述の第二設定条数分に亘る苗搬送装置40と、の間に位置する苗搬送装置40を駆動させる第三駆動制御を実行するように構成されている。
【0074】
作業制御部51が第三駆動制御を実行することによって、左右中央における二条分の苗搬送装置40の無端回動ベルト41に載置された育苗ユニットが、一つずつ苗載面22aへ案内される。そして、苗載台22の左右中央における二条分の苗載面22aにおける夫々の苗センサ25が、育苗ユニットと接触することによって、育苗ユニットを検出する。なお、
図8及び
図9に示す例では、予備苗搬送部30の左右中央における二条分の苗搬送装置40に載置された育苗ユニットのうち、左側の育苗ユニットが先に苗載台22へ搬送されても良いし、右側の育苗ユニットが先に苗載台22へ搬送されても良い。
【0075】
このように、駆動制御許可部52は、複数の苗センサ25の少なくとも一つが、『第一載置状態』(育苗ユニットが苗載台22に載置されている状態)を検出していないとき、苗センサ25が『第一載置状態』を検出していない植付け条に対応する苗搬送装置40に駆動制御の実行を作業制御部51へ許可するように構成されている。換言すると、駆動制御許可部52は、苗センサ25が『第一載置状態』を検出している植付け条に対応する苗搬送装置40の駆動を禁止する。
【0076】
ステップ#09の処理が完了した後、駆動制御許可部52は、各苗載面22aにおける苗センサ25が育苗ユニットを検出しているか否かを判定する(ステップ#10)。苗載面22aに一枚の育苗ユニットを補給した場合であっても、育苗ユニットが苗センサ25よりも下側にスライドしていった場合、その苗載面22aに育苗ユニットを更に一枚補給できる。このため、作業制御部51及び駆動制御許可部52は、八条分の苗センサ25のうち、一つでも育苗ユニットを検出していない苗センサ25が存在すると(ステップ#10:No)、上述のステップ#05~ステップ#08を繰り返し、苗センサ25が育苗ユニットを検出していない苗載面22aに対して育苗ユニットを更に補給する。なお、通常であれば、上述のステップ#05~ステップ#08が二度繰り返されると、各苗載面22aに育苗ユニットが十分に補給され、各苗センサ25が育苗ユニットと接触する。このため、作業制御部51及び駆動制御許可部52は、ステップ#05~ステップ#08を二度繰り返しても、育苗ユニットを検出していない苗センサ25が存在する場合、その苗センサ25の故障を判定する構成であっても良い。
【0077】
駆動制御許可部52が、全ての苗センサ25が育苗ユニットを検出していることを判定すると(ステップ#10:Yes)、作業制御部51は、油圧シリンダ16を制御して植付部W及び苗載台22を下降させる(ステップ#11)。そして、走行制御部50は、無段変速装置15の斜板(不図示)の角度を制御して、田植機の自動走行を再開させる(ステップ#12)。
【0078】
このように、駆動制御許可部52は、苗載台22に載置された育苗ユニットの残量が少なくなると、各苗搬送装置40を駆動制御を作業制御部51へ許可して、無端回動ベルト41に載置された育苗ユニットを苗載台22へ搬送するように構成されている。
【0079】
ステップ#05、ステップ#07、及び、ステップ#09に示す苗搬送装置40の駆動制御について、
図10及び
図11に基づいて説明する。
図10に模式的に示すように、無端回動ベルト41に複数の検出対象物44が取り付けられている。検出対象物44は、無端回動ベルト41が巡回する軌道に沿って等間隔に並ぶ。隣り合う二つの検出対象物44の距離は、一つの育苗ユニットの長さと同等の距離、または、一つの育苗ユニットの長さよりも長い距離に設定されている。ベルト位置センサ43と検出対象物44とが所定の距離以下に接近することによって、ベルト位置センサ43は、検出対象物44を検出可能に構成されている。ベルト位置センサ43は、例えば磁気センサである。検出対象物44は、例えば磁性体である。
図10に示す例では、ベルト位置センサ43は、苗搬送装置40の搬送方向上手側端部に設けられているが、ベルト位置センサ43の位置は、適宜変更可能である。
【0080】
図11に示すように、駆動制御許可部52は、ベルト搬送用モータ42の駆動制御の実行を作業制御部51へ許可するとき、最初にタイマ(監視タイマ)のカウントを開始する(ステップ#21)。このとき、タイマのカウント値は初期化される。そして、作業制御部51は、ベルト搬送用モータ42で無端回動ベルト41を、正転方向または逆転方向に駆動させ(ステップ#22)、ベルト位置センサ43が検出対象物44を検出したか否かを判定する(ステップ#23)。ベルト位置センサ43が検出対象物44を検出すると(ステップ#23:Yes)、無端回動ベルト41は育苗ユニット一枚分だけ回動したことになる。このときに、作業制御部51は、ベルト搬送用モータ42を停止させ、無端回動ベルト41の駆動は停止する(ステップ#25)。なお、ステップ#25において、タイマのカウントも停止する。
【0081】
なお、ステップ#21のタイミングで、ベルト位置センサ43が、前回停止時に検出した検出対象物44と接近したままになっている可能性が考えられる。この場合、無端回動ベルト41の駆動の開始直後に、ベルト位置センサ43が検出対象物44を誤検出して、無端回動ベルト41の駆動が停止する可能性が考えられる。この不都合を回避するため、作業制御部51は、無端回動ベルト41の駆動が開始するタイミングから予め設定された時間(例えば0.5~1.0秒)に亘って、ベルト位置センサ43による検出を無効化する構成であっても良い。
【0082】
無端回動ベルト41の駆動中にベルト位置センサ43が検出対象物44を検出しない場合(ステップ#23:No)、駆動制御許可部52は、タイマが予め設定された所定の時間に亘ってカウントしたか否かを判定する(ステップ#24)。当該所定の時間は、無端回動ベルト41が育苗ユニット一枚分だけ回動するのに十分な時間に設定される。タイマが当該所定の時間に亘ってカウントした場合(ステップ#24:Yes)、駆動制御許可部52は、ベルト搬送用モータ42またはベルト位置センサ43の故障を判定して作業制御部51の駆動制御を禁止し、作業制御部51は、ベルト搬送用モータ42を停止させる(ステップ#25)。ステップ#24においてYesの判定となった場合、駆動制御許可部52はアラーム出力を実行しても良い。タイマのカウントが当該所定の時間を経過していない場合(ステップ#24:No)、作業制御部51及び駆動制御許可部52の処理がステップ#22から繰り返される。
【0083】
〔第二補給モードにおける予備苗搬送部の搬送制御〕
上述したように、第二補給モードは、例えば田植機が畦際に停車した状態で、予備苗搬送部30に育苗ユニットを補給するモードである。例えば、田植機が自動走行しているときに、苗センサ25と四枚目検出センサ46との両方が育苗ユニットを検出しない状態となる場合が考えられる。この場合、駆動制御許可部52は、田植えを継続できないことを示す制御信号またはステータス信号を、走行制御部50へ送信する。そして走行制御部50は、走行機体Cを圃場の畦際へ移動させ、自動走行を中止する。これにより、例えば作業者は、畦際に用意された育苗ユニットを予備苗搬送部30へ補給できる。また、このときに、作業制御部51は、制御モードを第一補給モードから第二補給モードへ切替える。
【0084】
作業制御部51の制御モードが第二補給モードである状態で、無端回動ベルト41及びベルト搬送用モータ42が正転方向に駆動する場合について、
図12のフローチャートに基づいて説明する。作業制御部51の制御モードが第二補給モードであるとき、駆動制御許可部52は、正転操作具33が操作されたとき、または、苗補給センサ45が育苗ユニットを検出したときに、ベルト搬送用モータ42の駆動制御の実行を作業制御部51へ許可するように構成されている。このとき、ベルト搬送用モータ42は、正転方向に駆動制御される。このため、育苗ユニットが、後方、即ち苗載台22の位置する側へ搬送される。
【0085】
なお、
図12に示すフローチャートは、一つの条に対応する苗補給センサ45、四枚目検出センサ46、及び、苗センサ25の検出結果に基づいて、同一の条に対応するベルト搬送用モータ42の駆動制御を示すものである。したがって、
図12に示すフローチャートは、八条分の苗搬送装置40において各別に実行される。例えば、作業制御部51及び駆動制御許可部52は、
図12のフローチャートに基づく八条分の各別のタスク制御を実行する構成であっても良い。
【0086】
苗補給センサ45は、本発明の『第二検出部』に相当する。苗補給センサ45は、育苗ユニットが苗搬送装置40に載置されている状態(本発明の『第二載置状態』に相当する)を検出可能なように構成されている。
【0087】
育苗ユニットは、前搬送部31から後搬送部32を経由して苗載台22へ搬送される。このとき、後搬送部32の下端部と、苗載台22の上端部と、が接触または近接し、後搬送部32における八条分のスライド面32aと、苗載台22における八条分の苗載面22aと、が連通接続している必要がある。駆動制御許可部52は、苗載台22及び植付部Wが非作業位置に位置する状態でベルト搬送用モータ42の駆動制御の実行を作業制御部51へ許可するように構成されている。このため、駆動制御許可部52は、昇降センサ17Sが苗載台22の上昇状態を検出しているか否か、即ち植付部W及び苗載台22が非作業位置に位置しているか否かを判定する(ステップ#31)。昇降センサ17Sが苗載台22の上昇状態を検出していれば(ステップ#31:Yes)、後述のステップ#32へ進む。昇降センサ17Sが苗載台22の上昇状態を検出していなければ(ステップ#31:No)、
図12のフローチャートに基づく処理が終了する。
【0088】
なお、作業制御部51の制御モードが第二補給モードに切り替わったとき、例えば苗載台22及び植付部Wが自動的に非作業位置へ位置変更される構成であっても良い。例えば、エンジン始動具35が操作されてエンジン13が始動したとき、そのタイミングまたはその直後に、苗載台22及び植付部Wが自動的に非作業位置へ位置変更される構成であっても良い。このとき、苗載台22及び植付部Wが自動的に非作業位置へ位置変更されることが、報知手段(ブザー、音声案内、画面表示等)によって報知される構成が採用されても良い。
【0089】
駆動制御許可部52は、正転操作具33の操作に基づいて、ベルト搬送用モータ42の駆動制御の実行を作業制御部51へ許可するように構成されている。
図12のフローチャートに示すように、駆動制御許可部52は、正転操作具33が操作されたか否かを判定する(ステップ#32)。正転操作具33が操作されていれば(ステップ#32:Yes)、後述のステップ#34へ進む。
【0090】
正転操作具33が操作されていなければ(ステップ#32:No)、駆動制御許可部52は、苗補給センサ45が育苗ユニットを所定の時間以上に亘って検出したか否かを判定する(ステップ#33)。所定の時間は、本発明の『第二設定時間』に相当する。第二設定時間は、例えば一秒である。
【0091】
苗補給センサ45が育苗ユニットを所定の時間以上に亘って検出していれば(ステップ#33:Yes)、後述のステップ#34へ進む。つまり、駆動制御許可部52は、複数の苗搬送装置40のうち、苗補給センサ45が育苗ユニットを検出している状態(第二載置状態)の苗搬送装置40において、第二載置状態が予め設定された第二設定時間に亘って検出されると、ベルト搬送用モータ42の駆動制御の実行を作業制御部51へ許可するように構成されている。これにより、作業制御部51はベルト搬送用モータ42の駆動制御を実行可能となる。また、苗補給センサ45が育苗ユニットを検出していなければ(ステップ#33:No)、
図12のフローチャートに基づく処理が終了する。
【0092】
正転操作具33が操作されている場合(ステップ#32:Yes)、または、苗補給センサ45が育苗ユニットを検出している場合(ステップ#33:Yes)、駆動制御許可部52は、四枚目検出センサ46が育苗ユニットを検出しているか否かを判定する(ステップ#34)。四枚目検出センサ46が育苗ユニットを検出していなければ(ステップ#34:No)、駆動制御許可部52は、ベルト搬送用モータ42を正転方向に駆動させる駆動制御の実行を作業制御部51へ許可する(ステップ#36)。そして、
図11に基づいて上述したシーケンス制御によって、無端回動ベルト41が正転方向に回動する。その結果、無端回動ベルト41に載置された育苗ユニットが、育苗ユニット一枚分の距離だけ後方へ搬送される。
【0093】
四枚目検出センサ46が育苗ユニットを検出していれば(ステップ#34:Yes)、駆動制御許可部52は、苗センサ25が育苗ユニットを検出しているか否かを判定する(ステップ#35)。苗センサ25が育苗ユニットを検出している状態であれば(ステップ#35:Yes)、無端回動ベルト41が正転方向に回動すると、その苗センサ25に対応する苗載面22aに過剰に育苗ユニットが供給され、育苗ユニットが苗載面22aから溢れ出して地面に落下する虞がある。この不都合を回避するため、苗センサ25が育苗ユニットを検出しているとき(ステップ#35:Yes)、駆動制御許可部52は、ベルト搬送用モータ42を駆動させない。その結果、
図12のフローチャートに基づく処理は終了する。苗センサ25が育苗ユニットを検出していないとき(ステップ#35:No)、駆動制御許可部52はベルト搬送用モータ42の正転駆動を作業制御部51へ許可する。そして、作業制御部51は、ベルト搬送用モータ42を正転駆動する(ステップ#36)。そして、
図11に基づいて上述したシーケンス制御によって、無端回動ベルト41が正転方向に回動する。その結果、無端回動ベルト41に載置された育苗ユニットのうち、最後列に載置された育苗ユニットが、苗載台22へ搬送される。また、無端回動ベルト41に載置された育苗ユニットのうち、最後列よりも搬送方向上手側に載置された育苗ユニットが、育苗ユニット一枚分の距離だけ後方へ搬送される。
【0094】
作業制御部51の制御モードが第二補給モードである状態で、無端回動ベルト41及びベルト搬送用モータ42が逆転方向に駆動する場合について、
図13のフローチャートに基づいて説明する。作業制御部51の制御モードが第二補給モードであるとき、駆動制御許可部52は、逆転操作具34が操作されたときに、ベルト搬送用モータ42の駆動制御の実行を作業制御部51へ許可するように構成されている。これにより、作業者は、無端回動ベルト41に載置された育苗ユニットを、予備苗搬送部30の前端部へ手を延ばすことによって回収できる。
【0095】
なお、
図13に示すフローチャートは、一つの条に対応する苗補給センサ45の検出結果に基づいて、同一の条に対応するベルト搬送用モータ42の駆動制御を示すものである。したがって、
図13に示すフローチャートは、八条分の苗搬送装置40において各別に実行される。例えば、作業制御部51及び駆動制御許可部52は、
図13のフローチャートに基づく八条分の各別のタスク制御を実行する構成であっても良い。
【0096】
駆動制御許可部52は、逆転操作具34の操作に基づいて、ベルト搬送用モータ42の駆動制御の実行を作業制御部51へ許可するように構成されている。
図13のフローチャートに示すように、駆動制御許可部52は、逆転操作具34が操作されたか否かを判定する(ステップ#41)。逆転操作具34が操作されていなければ(ステップ#41:No)、
図13のフローチャートに基づく処理が終了する。
【0097】
逆転操作具34が操作されている場合(ステップ#41:Yes)、駆動制御許可部52は、苗補給センサ45が育苗ユニットを検出しているか否かを判定する(ステップ#42)。苗補給センサ45が育苗ユニットを検出していなければ(ステップ#42:No)、駆動制御許可部52は、ベルト搬送用モータ42を逆転方向に駆動させる駆動制御の実行を作業制御部51へ許可する(ステップ#43)。ステップ#43では、
図11に基づいて上述したシーケンス制御によって、無端回動ベルト41が逆転方向に回動する。その結果、無端回動ベルト41に載置された育苗ユニットが、育苗ユニット一枚分の距離だけ前方へ搬送される。
【0098】
苗補給センサ45が育苗ユニットを検出している状態であれば(ステップ#42:Yes)、無端回動ベルト41が逆転方向に回動すると、育苗ユニットが苗搬送装置40の前端部から地面に落下する虞がある。この不都合を回避するため、苗補給センサ45が育苗ユニットを検出しているとき(ステップ#42:Yes)、駆動制御許可部52は、ベルト搬送用モータ42を駆動させない。その結果、
図13のフローチャートに基づく処理は終了する。
【0099】
正転操作具33と逆転操作具34との夫々は、八条分の苗搬送装置40に対応して八個設けられる構成であっても良い。また、正転操作具33と逆転操作具34との夫々は、一つだけ設けられる構成であっても良い。
【0100】
正転操作具33が一つだけ設けられる構成である場合、駆動制御許可部52は、八条分の苗搬送装置40における夫々のベルト搬送用モータ42の一括的な正転制御を作業制御部51へ許可する構成であっても良い。換言すると、作業制御部51は、一つの正転操作具33の操作及び駆動制御許可部52の許可に基づいて、八条分の苗搬送装置40における夫々のベルト搬送用モータ42を一括的に正転制御する構成であっても良い。
【0101】
逆転操作具34が一つだけ設けられる構成である場合、駆動制御許可部52は、八条分の苗搬送装置40における夫々のベルト搬送用モータ42の一括的な逆転制御を作業制御部51へ許可する構成であっても良い。換言すると、作業制御部51は、一つの逆転操作具34の操作及び駆動制御許可部52の許可に基づいて、八条分の苗搬送装置40における夫々のベルト搬送用モータ42を一括的に逆転制御する構成であっても良い。
【0102】
〔別実施形態〕
本発明は、上述の実施形態に例示された構成に限定されるものではなく、以下、本発明の代表的な別実施形態を例示する。
【0103】
(1)上述の実施形態において、作業制御部51は、複数の苗搬送装置40のうち右端から左右中央側への三条分(第一設定条数分)に亘る苗搬送装置40を駆動させる第一駆動制御を実行するが、この実施形態に限定されない。例えば、作業制御部51は、第一駆動制御として、左端から左右中央側への三条分(第一設定条数分)に亘る苗搬送装置40を駆動させる構成であっても良い。要するに、作業制御部51は、複数の苗搬送装置40のうち左右一方端から左右中央側への予め設定された第一設定条数分に亘る苗搬送装置40を駆動させる第一駆動制御を実行するように構成されても良い。また、第一設定条数は三条に設定されているが、二条であっても良いし、四条であっても良い。
【0104】
また、作業制御部51は、第一駆動制御の完了後に左端から左右中央側への三条分(第二設定条数分)に亘る苗搬送装置40を駆動させる第二駆動制御を実行するように構成されているが、この実施形態に限定されない。例えば、作業制御部51は、第二駆動制御として、右端から左右中央側への三条分(第二設定条数分)に亘る苗搬送装置40を駆動させる構成であっても良い。要するに、作業制御部51は、第一駆動制御の完了後に複数の苗搬送装置40のうち左右他方端から左右中央側への予め設定された第二設定条数分に亘る苗搬送装置40を駆動させる第二駆動制御を実行するように構成されても良い。また、第二設定条数は三条に設定されているが、二条であっても良いし、四条であっても良い。
【0105】
なお、八条分の苗植付装置が備えられている構成において、第一設定条数と第二設定条数との夫々が四条に設定されている場合、
図4のステップ#09、
図8、及び、
図9に示す第三駆動制御は行われない構成であっても良い。
【0106】
(2)
図4のステップ#06及びステップ#08に基づいて上述した実施形態において、駆動制御許可部52は、一枚分の育苗ユニットを搬送するための駆動制御の完了後に、所定時間(第一設定時間)だけ待ってから、次の育苗ユニットを搬送するための駆動制御の開始を作業制御部51へ許可するように構成されている。この実施形態に限定されず、駆動制御許可部52は、一枚分の育苗ユニットを搬送するための駆動制御の完了後、直ちに次の育苗ユニットを搬送するための駆動制御の開始を作業制御部51へ許可するように構成されても良い。上述の実施形態において、植付部W及び苗載台22は、昇降機構17の後端部において前後方向に沿う軸芯まわりにローリング可能に支持されている。例えば、植付部W及び苗載台22における左右夫々の高さ位置が、いわゆるリジッド式の支持機構によって各別に調整可能な構成であれば、駆動制御許可部52は、所定時間(第一設定時間)待たずに、次の育苗ユニットを搬送するための駆動制御の開始を作業制御部51へ許可する構成であっても良い。この場合、
図4のステップ#06及びステップ#08が無くても良い。
【0107】
(3)上述の実施形態において、正転操作具33と逆転操作具34とエンジン始動具35との夫々は、予備苗搬送部30の前端部に設けられているが、この実施形態に限定されない。例えば、正転操作具33と逆転操作具34とエンジン始動具35との夫々は、予備苗搬送部30の左右側部に設けられても良いし、走行機体Cの前部に設けられても良いし、走行機体Cの左右側部に設けられても良い。
【0108】
(4)上述の実施形態において、駆動制御許可部52は、苗載台22が往復動作の範囲における左端部に位置する状態(第一端寄せ状態)が検出されると、ベルト搬送用モータ42の駆動制御の実行を作業制御部51へ許可するように構成されている。この実施形態に限定されず、例えば、駆動制御許可部52は、苗載台22が往復動作の範囲における右端部に位置する状態(第二端寄せ状態)が検出されると、ベルト搬送用モータ42の駆動制御の実行を作業制御部51へ許可するように構成されても良い。上述したように、苗載台22が左端部に寄せられた状態から、回転カウント数検出部24が予め設定されたカウント数の回転を更に検出すると、苗載台22が右端部に寄せられた状態の判定が可能となる。このことから、駆動制御許可部52は、端寄検出部23が第一端寄せ状態を検出した際に回転カウント数検出部24が検出した回転数から駆動軸が予め設定された設定回転数だけ回転すると、苗載台22が往復動作の範囲における右端部に位置する第二端寄せ状態であると判定するように構成されても良い。そして駆動制御許可部52は、第一端寄せ状態または第二端寄せ状態が検出されると、ベルト搬送用モータ42の駆動制御の実行を作業制御部51へ許可するように構成されても良い。
【0109】
なお、端寄検出部23が機体右端部に設けられている構成であっても良い。端寄検出部23が、苗載台22が往復動作の範囲における右端部に位置する状態を『第一端寄せ状態』として検出する構成であっても良い。つまり、端寄検出部23は、苗載台22が往復動作の範囲における左右一方の端部に位置する第一端寄せ状態を検出可能なように構成されていれば良い。また、駆動制御許可部52は、苗載台22が往復動作の範囲における左端部に位置する第二端寄せ状態を判定する構成であっても良い。つまり、駆動制御許可部52は、端寄検出部23が第一端寄せ状態を検出した際に回転カウント数検出部24が検出した回転数から駆動軸が予め設定された設定回転数だけ回転すると、苗載台22が往復動作の範囲における左右他方の端部に位置する第二端寄せ状態であると判定するように構成されても良い。
【0110】
(5)
図12に基づいて上述した実施形態では、苗補給センサ45が育苗ユニットを所定の時間以上に亘って検出すると(ステップ#33:Yes)、駆動制御許可部52がベルト搬送用モータ42の駆動制御の実行を作業制御部51へ許可するように構成されている。この実施形態に限定されず、例えば、四枚目検出センサ46が本発明の『第二検出部』であっても良く、苗補給センサ45が備えられない構成であっても良い。この場合、四枚目検出センサ46が育苗ユニットを所定の時間以上に亘って検出すると、駆動制御許可部52がベルト搬送用モータ42の駆動制御の実行を作業制御部51へ許可するように構成されても良い。
【0111】
(6)上述の田植機は、自動走行を可能な構成となっているが、自動走行を不能な田植機であっても良い。
【0112】
(7)上述の田植機に、搭乗座席14Aを含む搭乗部14が備えられない構成であっても良い。搭乗部14が備えられない構成であれば、予備苗搬送部30の上端部の高さを低減し易くなる。
【0113】
なお、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明は、田植機に適用可能である。
【符号の説明】
【0115】
17 :昇降機構
18 :伝動ケース(苗植付装置)
19 :回転ケース(苗植付装置)
22 :苗載台
23 :端寄検出部(位置検出部)
24 :回転カウント数検出部(回転数検出部)
25 :苗センサ(第一検出部)
33 :正転操作具(操作具)
34 :逆転操作具(操作具)
40 :苗搬送装置
45 :苗補給センサ(第二検出部)
51 :作業制御部(制御部)
52 :駆動制御許可部