(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-08
(45)【発行日】2025-08-19
(54)【発明の名称】3次元粗い離散亀裂ネットワークの構築、評価及び浸透流シミュレーションの方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/20 20200101AFI20250812BHJP
G06F 30/28 20200101ALI20250812BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/28
(21)【出願番号】P 2024207004
(22)【出願日】2024-11-28
【審査請求日】2024-11-28
(31)【優先権主張番号】202311617961.2
(32)【優先日】2023-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523347497
【氏名又は名称】山東科技大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】韓 承豪
(72)【発明者】
【氏名】陳 紹杰
(72)【発明者】
【氏名】汪 鋒
(72)【発明者】
【氏名】張 継成
(72)【発明者】
【氏名】馬 宏▲発▼
(72)【発明者】
【氏名】張 偉杰
(72)【発明者】
【氏名】劉 久潭
(72)【発明者】
【氏名】趙 智超
【審査官】松浦 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-333245(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第115688473(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第115661388(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113536704(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111476900(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114692234(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第116384177(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第112131642(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/00 -30/28
G01N 33/24
G06Q 50/02
G01V 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
具体的に、
野外調査データ、ボーリングデータ、物理探査データ及び他の実測データにより、亀裂ネットワークの幾何学的パラメータの確率分布モデルを取得するステップS1と、
Monte-Carlo法に基づいて亀裂円板の円心Point_c、亀裂傾斜角Dip、亀裂方位Orientation、亀裂円板の半径Radius及び亀裂開口幅Apertureのパラメータをランダムにサンプリングし、亀裂ネットワーク内の各パラメータのデータセットを生成するステップS2と、
ランダム形式のワイエルシュトラス関数により、粗い亀裂の上下壁面の各座標における高さ値を生成し、それに基づいて全ての亀裂の粗い亀裂間開口幅セットを取得するステップS3と、
ステップS2で取得された亀裂ネットワーク内の各パラメータのデータセットを読み取り、バウンディングボックス法により3次元ランダム亀裂ネットワークの連結性の評価を行うステップS4と、
オイラー角と回転行列法により、亀裂円板の座標系の変換及び粗い亀裂開口幅値の割り当てを行い、3次元離散-粗い亀裂ネットワークの数値モデルを作成するステップS5と、
3次元亀裂ネットワークの浸透流のシミュレーションを行い、3次元亀裂ネットワークモデルの透水係数を計算するステップS6と、を含み、
ステップS5は、具体的に、
ステップS2における亀裂ネットワークの幾何学的パラメータセットを読み取り、ロードし、平面グローバル座標系の原点を亀裂円板の円心とし、半径がR
1の亀裂円板を作成するステップS5.1と、
ステップS3で新たに生成された上下の粗い亀裂面間の亀裂開口幅の値b(x
i,y
j)を読み取り
、その値を亀裂円板に割り当て、亀裂円板が粗い亀裂開口幅を有するようにするステップS5.2と、
グローバル座標系の原点を円板の中心点Oに平行移動させ、即ち、グローバル座標系の原点のx、y、zの3つの方向に沿った平行移動方向をそれぞれx
1,y
1,z
1とするステップS5.3と、
オイラー角の定理を導入し、グローバル座標系のx軸が亀裂の方位方向となるように回転するように座標系をz軸周りに(180-α)°回転させ、グローバル座標系のy軸が亀裂の方位線と重なるように座標系をy軸周りにβ回転させ、デカルト座標系において亀裂円板モデルを作成するステップS5.4と、
ステップS5.1~S5.4を繰り返し、逐次反復し、3次元空間内の離散-粗い亀裂ネットワークのモデリングを完成するステップS5.5と、を含み、
ステップS6は、具体的に、
ソフトプラットフォームの支配方程式とソルバーを呼び出すステップであって、3次元亀裂ネットワークの浸透流シミュレーション中の定常流がDarcy方程式によって支配され、具体的に、
【数27】
(式中、d
fは亀裂開口幅、ρは亀裂密度、μは動粘度、Q
mは亀裂流量、uは速度、pは圧力、k
fは透水率であり、
【数28】
は微積分の勾配演算子であり、異なる方向における微分を表す)であるステップS6.1と、
境界条件を設定し、x方向を流体の流れ方向とし、モデルの入口境界と出口境界でそれぞれ圧力境界条件として設定するステップS6.2と、
モデルをメッシュ化し、流れ場及び圧力場を求解するステップS6.3と、
亀裂ネットワークモデルの入口での浸透流速度を計算し、入口での流速を積分することで異なる亀裂開口幅分布の下での定常状態の体積流速Qを取得し、具体的に、
Q=Au (14)
(式中、A=∫dhであり、流体の流れ方向に垂直な断面積、uは断面積を通過する流体の速度である)であるステップS6.4と、
ダルシー方程式に従ってモデルの亀裂ネットワークモデルの透水係数Kを計算し、具体的に、
【数29】
(式中、Aは流体の流れ方向に垂直な断面積、Lは亀裂ネットワークの流れ方向における長さ、Δpはモデルの入口境界と出口境界の圧力差である)であるステップS6.5と、を含む、ことを特徴とする3次元粗い離散亀裂ネットワークの構築、評価及び浸透流シミュレーションの方法。
【請求項2】
ステップS1における亀裂ネットワークの幾何学的パラメータの確率分布モデルは、亀裂円板円心モデル、亀裂傾斜角モデル、亀裂方位モデル、亀裂円板半径モデル、及び亀裂開口幅モデルを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の3次元粗い離散亀裂ネットワークの構築、評価及び浸透流シミュレーションの方法。
【請求項3】
ステップS2における亀裂ネットワーク内の各データセットは、具体的に、
Point_c={x
1,y
1,z
1;x
2,y
2,z
2;x
3,y
3,z
3;・・・;x
n,y
n,z
n}
Dip={α
1;α
2;α
3;・・・;α
n}
Orientation={β
1;β
2;β
3;・・・;β
n}
Radius={r
1;r
2;r
3;・・・;r
n}
Aperture={b
1;b
2;b
3;・・・;b
n}
n=L
長さ・L
幅・L
高さ・ρ
(式中、nは亀裂モデル内の亀裂数であり、L
長さ、L
幅及びL
高さはそれぞれ亀裂モデルの長さ、幅、高さを表し、x
n,y
n,z
nはn番目の亀裂の中心点のデカルト座標系における座標を表し、α
nはn番目の亀裂の傾斜角であり、β
nはn番目の亀裂の方位であり、r
nはn番目の亀裂円板の半径であり、b
nはn番目の亀裂の開口幅であり、ρは亀裂モデルの亀裂密度である)である、ことを特徴とする請求項1に記載の3次元粗い離散亀裂ネットワークの構築、評価及び浸透流シミュレーションの方法。
【請求項4】
ステップS3は、具体的に、
ランダム形式のワイエルシュトラス関数により、粗い亀裂の上下壁面の各座標における高さ値を生成し、上亀裂壁面の高さが
【数30】
(式中、Zupper
i、j(x
i,y
j)は上粗い亀裂壁面内の(x
i,y
j)における平面座標の高さ、C
Nは標準正規分布を持つ独立乱数、Nは乱数の数、Dとλはフラクタル変数、A
NとB
Nは[0,2π]の一様分布を持つ独立乱数、i、jは生成される亀裂ネットワークの空間周波数解像度である)であり、C
Nの乱数シードを変更して差異のある粗い亀裂の上下壁面のデータセットZupper(x
i,y
j)とZlower(x
i,y
j)を生成するステップS3.1と、
ステップS2における亀裂ネットワーク内の亀裂開口幅セットAperture={b
1;b
2;b
3;・・・;b
n}を読み取り、Zupper(x
i,y
j)’=Zupper(x
i,y
j)+b
1とし、即ち、生成される亀裂のデータセットZupper(x
i,y
j)’に初期開口幅b
1を割り当て、Zupper(x
i,y
j)は初期開口幅が割り当てられない亀裂のデータセットであるステップS3.2と、
地殻応力作用を考慮し、応力、法線剛性を入力することで亀裂閉合の変形量を取得し、実際の粗い亀裂開口幅の変形量及び上下壁面の接触具合を取得するステップS3.3と、
【数31】
(式中、Δb
fは亀裂閉合の変形量、V
mは初期亀裂閉合の変形量、σ
nは垂直応力、K
niは初期法線剛性である)
上下の亀裂が変位し、部分的に閉合した後の粗い亀裂の平均亀裂開口幅を式(3)により計算するステップS3.4と、
【数32】
(ただし、M及びNはそれぞれx方向及びy方向のノードの数を表す)
全ての亀裂の粗い亀裂間開口幅セットを取得するように、ステップS3.1~S3.4を繰り返すステップS3.5と、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の3次元粗い離散亀裂ネットワークの構築、評価及び浸透流シミュレーションの方法。
【請求項5】
ステップS4は、具体的に、
バウンディングボックス法により、第1亀裂と第2亀裂の空間的関係を初期的に判断し、2つの境界球の球心間の直線距離L
vb及び球の半径を比較し、2つの亀裂の境界球の
重なりを分析し、幾何学的特徴が式(4)を満たすステップS4.1と、
【数33】
(式中、L
vbは第1亀裂と第2亀裂の境界球の間の距離、O
1(x
1,y
1,z
1)、O
2(x
2,y
2,z
2)はそれぞれ第1亀裂円板、第2亀裂円板の円心のグローバル座標であり、a
1、a
2はそれぞれ第1亀裂円板、第2亀裂円板の半径を表す)
L
vb>(a
1+a
2)の場合、
【数34】
(l、m、nは方向ベクトル、βは方位、αは傾斜角である)で亀裂円板の法線ベクトルn
1=(l,m,n)を表すステップS4.2と、
l
1(x-x
1)+m
1(y-y
1)+n
1(z-z
1)=0 (6)
(ただし、l
1、m
1、n
1は1番目の亀裂円板の方向ベクトルである)で1番目の亀裂円板の位置する平面を表し、
【数35】
で1番目の亀裂円板の境界輪郭線を表し、
同様に、
l
2(x-x
2)+m
2(y-y
2)+n
2(z-z
2)=0 (8)
(ただし、l
2、m
2、n
2は2番目の亀裂円板の方向ベクトルである)、及び
【数36】
で2番目の亀裂円板の位置する平面及び境界輪郭線をそれぞれ表すことができるステップS4.3と、
2つの境界球が部分的に重なると、式(10)により2つの亀裂円板の位置する平面の夾角θを計算するステップS4.4と、
【数37】
夾角θ=0の場合、2つの亀裂円板の位置する平面が平行になり、亀裂円板の交線が存在しないことを示し、そうでない場合、2つの亀裂円板が交線と交差するか否かをそれぞれ計算するステップS4.5と、を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の3次元粗い離散亀裂ネットワークの構築、評価及び浸透流シミュレーションの方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亀裂岩盤の浸透流計算の技術分野に関し、具体的に、3次元粗い離散亀裂ネットワークの構築、評価及び浸透流シミュレーションの方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然岩盤は、長期間にわたる続成作用と複雑な地質構造の変化を経て多数の節理、亀裂を形成し、岩盤の力学的性質と浸透流特性を大きく変化させ、地下工事の施工安全性に影響を与える。そのため、野外での亀裂の産状に基づいて実の3次元離散-粗い亀裂ネットワークを作成することは、地下工事の防災・減災研究の重点となった。
【0003】
近年、コンピュータ技術と数値計算方法の発展に伴い、岩石力学、岩石工学の課題への数値計算の適用が増えてきている。岩盤の構造と形態の点から、大量の野外での岩盤の亀裂の実測データの統計に基づき、確率論と数理統計理論により離散亀裂ネットワークモデリング(DFN)を行う方法は、多くの実際の工事において適用・検証され、2次元離散亀裂ネットワークモデルの生成、可視化及び透水係数の求解などの方法とプロセスは、広く検討されている。しかし、実世界では、亀裂ネットワークは3次元亀裂として存在するので、2次元離散亀裂ネットワークモデルには誤差がある。このため、Priest、王恩志、張国強、謝静らが3次元亀裂ネットワークのモデリングを行い、亀裂パラメータ(密度、長さ、方位、傾斜角、亀裂開口幅)を生成させることで、円板モデル、スクエアモデルにより3次元亀裂ネットワークを生成させる。また、3次元亀裂ネットワークの浸透流特性に関する数値計算研究が発展している。学者たちは、Ansys Fluent、OpenFOAM、Comsol Multiphysicsなどの、CFD法に基づく主流となった数値シミュレーションソフトにより浸透流特性の研究を行い、このようなビジネスソフトは、高度に開発されており、理論が完全であり、基本的にほとんどのシミュレーションのニーズを満たすことができる。一方では、C++、Java、Matlabなどのプログラミングプラットフォームにより、利用可能な3次元浸透流シミュレーションソフトを独自に開発し、研究を行い、現在、ガレルキン法、3D Unified pipe-network Method(UPM)及びVOF法が広く使われている。
【0004】
しかし、現在の研究には次の3つの問題がある。(1)3次元亀裂は、滑らかな平板亀裂と仮定されることが多いが、実際の亀裂は粗いものであり、亀裂の粗さは、単一のネットワーク亀裂の透水性を大きく変化させ、現在の研究では、亀裂面の粗さについて考慮できない。(2)亀裂は3次元亀裂岩盤にランダムに分布しており、分布の変動性が大きく、数が多いという特徴を持つ傾向がある。2つの亀裂シミュレーション方法を比較すると、亀裂の数が多すぎると、ビジネスソフトは、直接モデリングできないことが多く、亀裂の属性値の割り当て、境界条件の設定に多くの困難があり、所望の二次開発が必要となる。独自に開発された模擬プログラムは、計算速度が速く、収束性が高いが、開発レベルが低く、適用範囲が狭いなどの問題があることが多い。(3)亀裂ネットワークの浸透流特性のプロセスの研究には、亀裂ネットワークの生成、連結性の計算、及び透水係数の求解が含まれ、複雑な実の亀裂ネットワークの世界に対して、一度に単一の亀裂ネットワークモデルを求解するだけでは効率が悪く、大規模な自動求解の方法に欠けている。
【0005】
そこで、現在、3次元粗い亀裂ネットワークのモデリング、評価及びシミュレーションを容易にし、実際の水関連プロジェクトに寄与するために、岩層の産状に基づく3次元離散粗い亀裂岩盤のモデリング、亀裂の連結性の評価、浸透流シミュレーションの完全な技術方法が必要である。
【発明の概要】
【0006】
本発明の主な目的は、従来技術における3次元粗い亀裂ネットワークのモデリング方法、亀裂の連結性の評価及び浸透流シミュレーションのための方法に欠けているという問題を解決するために、3次元粗い離散亀裂ネットワークの構築、評価及び浸透流シミュレーションの方法を提供することにある。
【0007】
上記の目的を実現するために、本発明は、具体的に以下のステップを含む3次元粗い離散亀裂ネットワークの構築、評価及び浸透流シミュレーションの方法を提供する。
【0008】
ステップS1:野外調査データ、ボーリングデータ、物理探査データ及び他の実測データにより、亀裂ネットワークの幾何学的パラメータの確率分布モデルを取得する。
【0009】
ステップS2:プログラミングソフトであるMatlabにより、Monte-Carlo法に基づいて亀裂円板の円心Point_c、亀裂傾斜角Dip、亀裂方位Orientation、亀裂円板の半径Radius及び亀裂開口幅Apertureのパラメータをランダムにサンプリングし、亀裂ネットワーク内の各パラメータのデータセットを生成する。
【0010】
ステップS3:ランダム形式のワイエルシュトラス関数により、粗い亀裂の上下壁面の各座標における高さ値を生成し、それに基づいて全ての亀裂の粗い亀裂間開口幅セットを取得する。
【0011】
ステップS4:ステップS2で取得された亀裂ネットワーク内の各パラメータのデータセットを読み取り、バウンディングボックス法により3次元ランダム亀裂ネットワークの連結性の評価を行う。
【0012】
ステップS5:開発プラットフォームであるComsol with Matlabに基づき、オイラー角と回転行列法により、亀裂円板の座標系の変換及び粗い亀裂開口幅値の割り当てを行い、3次元離散-粗い亀裂ネットワークの数値モデルを作成する。
【0013】
ステップS6:3次元亀裂ネットワークの浸透流のシミュレーションを行い、3次元亀裂ネットワークモデルの透水係数を計算する。
【0014】
さらには、ステップS1における亀裂ネットワークの幾何学的パラメータの確率分布モデルは、亀裂円板円心モデル、亀裂傾斜角モデル、亀裂方位モデル、亀裂円板半径モデル、及び亀裂開口幅モデルを含む。
【0015】
さらには、ステップS2における亀裂ネットワーク内の各データセットは、具体的に次のとおりである。
Point_c={x1,y1,z1;x2,y2,z2;x3,y3,z3;・・・;xn,yn,zn}
Dip={α1;α2;α3;・・・;αn}
Orientation={β1;β2;β3;・・・;βn}
Radius={r1;r2;r3;・・・;rn}
Aperture={b1;b2;b3;・・・;bn}
n=L長さ・L幅・L高さ・ρ
式中、nは亀裂モデル内の亀裂数であり、L長さ、L幅及びL高さはそれぞれ亀裂モデルの長さ、幅、高さを表し、xn,yn,znはn番目の亀裂の中心点のデカルト座標系における座標を表し、αnはn番目の亀裂の傾斜角であり、βnはn番目の亀裂の方位であり、rnはn番目の亀裂円板の半径であり、bnはn番目の亀裂の開口幅であり、ρは亀裂モデルの亀裂密度である。
【0016】
さらには、ステップS3は、具体的に以下のステップを含む。
【0017】
ステップS3.1:ランダム形式のワイエルシュトラス関数により、粗い亀裂の上下壁面の各座標における高さ値を生成し、上亀裂壁面の高さが次のとおりである。
【数1】
式中、Zupper
i、j(x
i,y
j)は上粗い亀裂壁面内の(x
i,y
j)における平面座標の高さ、C
Nは標準正規分布を持つ独立乱数、Nは乱数の数、Dとλはフラクタル変数、A
NとB
Nは[0,2π]の一様分布を持つ独立乱数、i、jは生成される亀裂ネットワークの空間周波数解像度であり、C
Nの乱数シードを変更して差異のある粗い亀裂の上下壁面のデータセットZupper(x
i,y
j)とZlower(x
i,y
j)を生成する。
【0018】
ステップS3.2:ステップS2における亀裂ネットワーク内の亀裂開口幅セットAperture={b1;b2;b3;・・・;bn}を読み取り、Zupper(xi,yj)’=Zupper(xi,yj)+b1とし、即ち、生成される亀裂のデータセットZupper(xi,yj)’に初期開口幅b1を割り当て、Zupper(xi,yj)は初期開口幅が割り当てられない亀裂のデータセットである。
【0019】
ステップS3.3:地殻応力作用を考慮し、応力、法線剛性を入力することで亀裂閉合の変形量を取得し、実際の粗い亀裂開口幅の変形量及び上下壁面の接触具合を取得する。
【数2】
式中、Δb
fは亀裂閉合の変形量、V
mは初期亀裂閉合の変形量、σ
nは垂直応力、K
niは初期法線剛性である。
【0020】
ステップS3.4:上下の亀裂が変位し、部分的に閉合した後の粗い亀裂の平均亀裂開口幅を式(3)により計算する。
【数3】
ただし、M及びNはそれぞれx方向及びy方向のノードの数を表す。
【0021】
ステップS3.5:全ての亀裂の粗い亀裂間開口幅セットを取得するように、ステップS3.1~S3.4を繰り返す。
【0022】
さらには、ステップS4は、具体的に以下のステップを含む。
【0023】
ステップS4.1:バウンディングボックス法により、第1亀裂と第2亀裂の空間的関係を初期的に判断し、2つの境界球の球心間の直線距離L
vb及び球の半径を比較し、2つの亀裂の境界球の重なりを分析し、幾何学的特徴が式(4)を満たす。
【数4】
式中、L
vbは第1亀裂と第2亀裂の境界球の間の距離、O
1(x
1,y
1,z
1)、O
2(x
2,y
2,z
2)はそれぞれ第1亀裂円板、第2亀裂円板の円心のグローバル座標であり、a
1、a
2はそれぞれ第1亀裂円板、第2亀裂円板の半径を表す。
【0024】
ステップS4.2:L
vb>(a
1+a
2)の場合、亀裂円板の法線ベクトルn
1=(l,m,n)を次のように表す。
【数5】
l、m、nは方向ベクトル、βは方位、αは傾斜角である。
【0025】
ステップS4.3:1番目の亀裂円板の位置する平面を次のように表す。
l1(x-x1)+m1(y-y1)+n1(z-z1)=0 (6)
ただし、l1、m1、n1は1番目の亀裂円板の方向ベクトルである。
【0026】
1番目の亀裂円板の境界輪郭線を次のように表す。
【数6】
【0027】
同様に、2番目の亀裂円板の位置する平面及び境界輪郭線をそれぞれ次のように表すことができる。
l
2(x-x
2)+m
2(y-y
2)+n
2(z-z
2)=0 (8)
(ただし、l
2、m
2、n
2は2番目の亀裂円板の方向ベクトルである)
【数7】
【0028】
ステップS4.4:2つの境界球が部分的に重なると、式(10)により2つの亀裂円板の位置する平面の夾角θを計算する。
【数8】
【0029】
ステップS4.5:夾角θ=0°の場合、2つの亀裂円板の位置する平面が平行になり、亀裂円板の交線が存在しないことを示し、そうでない場合、2つの亀裂円板が交線と交差するか否かをそれぞれ計算する。
【0030】
さらには、ステップS5は、具体的に以下のステップを含む。
【0031】
ステップS5.1:MatlabでステップS2における亀裂ネットワークの幾何学的パラメータセットを読み取り、ロードし、平面グローバル座標系の原点を亀裂円板の円心とし、半径がR1の亀裂円板を作成する。
【0032】
ステップS5.2:ステップS3で新たに生成された上下の粗い亀裂面間の亀裂開口幅の値b(xi,yj)を読み取り、開発プラットフォームであるComsol with Matlabにコマンドを入力し、その値を亀裂円板に割り当て、亀裂円板が粗い亀裂開口幅を有するようにする。
【0033】
ステップS5.3:グローバル座標系の原点を円板の中心点Oに平行移動させ、即ち、グローバル座標系の原点のx、y、zの3つの方向に沿った平行移動方向をそれぞれx1、y1、z1とする。
【0034】
ステップS5.4:オイラー角の定理を導入し、グローバル座標系のx軸が亀裂の方位方向となるように回転するように座標系をz軸周りに(180-α)°回転させ、グローバル座標系のy軸が亀裂の方位線と重なるように座標系をy軸周りにβ回転させ、デカルト座標系において亀裂円板モデルを作成する。
【0035】
ステップS5.5:ステップS5.1~S5.4を繰り返し、逐次反復し、3次元空間内の離散-粗い亀裂ネットワークのモデリングを完成する。
【0036】
さらには、ステップS6は、具体的に以下のステップを含む。
【0037】
ステップS6.1:ソフトプラットフォームであるComsol with Matlabに基づき、ソフトプラットフォームの支配方程式とソルバーを呼び出し、3次元亀裂ネットワークの浸透流シミュレーション中の定常流がDarcy方程式によって支配され、具体的に次のとおりである。
【0038】
【数9】
式中、d
fは亀裂開口幅、ρは亀裂密度、μは動粘度、Q
mは亀裂流量、uは速度、pは圧力、k
fは透水率であり、
【数10】
は微積分の勾配演算子であり、異なる方向における微分を表す。
【0039】
ステップS6.2:境界条件を設定し、x方向を流体の流れ方向とし、モデルの入口境界と出口境界でそれぞれ圧力境界条件として設定する。
【0040】
ステップS6.3:シミュレーションソフトであるComsolにより、モデルをメッシュ化し、流れ場及び圧力場を求解する。
【0041】
ステップS6.4:亀裂ネットワークモデルの入口での浸透流速度を計算し、入口での流速を積分することで異なる亀裂開口幅分布の下での定常状態の体積流速Qを取得し、具体的に次のとおりである。
Q=Au (14)
式中、A=∫dhであり、流体の流れ方向に垂直な断面積、uは断面積を通過する流体の速度である。
【0042】
ステップS6.5:ダルシー方程式に従ってモデルの亀裂ネットワークモデルの透水係数Kを計算し、具体的に次のとおりである。
【数11】
式中、Aは流体の流れ方向に垂直な断面積、Lは亀裂ネットワークの流れ方向における長さ、Δpはモデルの入口境界と出口境界の圧力差である。
【0043】
本発明は、以下の有益な効果がある。
【0044】
岩石亀裂の産状に基づいて亀裂ネットワークのパラメータを生成し、オイラー角と回転行列により、ビジネスソフトプラットフォームであるComsolにおける亀裂円板の座標系の変換の問題を解決する。
【0045】
3次元「離散-粗い」亀裂ネットワークのモデリングと可視化を実現する。
【0046】
亀裂ネットワークのモデリングから亀裂ネットワークの連結性の評価、さらに浸透流シミュレーションまでのプロセスを一括に自動で実現し、手作業のコストを削減し、計算効率を高め、大規模な数値シミュレーションの研究が可能となる。
【0047】
本発明を実施するための形態又は従来技術における技術的解決手段をより明らかに説明するために、以下、発明を実施するための形態又は従来技術の記述に使用される必要がある図面を簡単に説明するが、明らかに、下記の図面は、本発明の一部の実施形態であり、当業者であれば、創造的な労力をせずに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】本発明に係る3次元粗い離散亀裂ネットワークの構築、評価及び浸透流シミュレーションの方法のフローチャートを示す。
【
図2】2つの境界球が分離している状態の模式図を示す。
【
図3】2つの境界球が交差している状態の模式図を示す。
【
図4】亀裂が互いに含まれている状態の模式図を示す。
【
図7】ステップS5.1により作成された3次元離散亀裂ネットワークモデルの図を示す。
【
図8】ステップS5.2により得られた粗い亀裂の亀裂開口幅値の割り当ての模式図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下、図面を参照しながら、本発明の技術的解決手段を明確に、完全に説明し、当然ながら、説明される実施例は本発明の実施例の一部であり、全ての実施例ではない。本発明における実施例に基づき、当業者が創造的な労力を要することなく得られる他の実施例は、全て本発明の保護範囲に属するものとする。
【0050】
図1に示す3次元粗い離散亀裂ネットワークの構築、評価及び浸透流シミュレーションの方法は、具体的に以下のステップを含む。
【0051】
ステップS1:野外調査データ、ボーリングデータ、物理探査データ及び他の実測データにより、表1に示すような亀裂ネットワークの幾何学的パラメータの確率分布モデルを取得する。
【0052】
【0053】
ステップS2:プログラミングソフトであるMatlabにより、Monte-Carlo法に基づいて亀裂円板の円心Point_c、亀裂傾斜角Dip、亀裂方位Orientation、亀裂円板の半径Radius及び亀裂開口幅Apertureのパラメータをランダムにサンプリングし、表2に示すような亀裂ネットワーク内の各パラメータのデータセットを生成する。
【0054】
【0055】
ステップS3:ランダム形式のワイエルシュトラス関数により、粗い亀裂の上下壁面の各座標における高さ値を生成し、それに基づいて全ての亀裂の粗い亀裂間開口幅セットを取得する。
【0056】
ステップS4:ステップS2で取得された亀裂ネットワーク内の各パラメータのデータセットを読み取り、バウンディングボックス法により3次元ランダム亀裂ネットワークの連結性の評価を行う。
【0057】
ステップS5:開発プラットフォームであるComsol with Matlabに基づき、オイラー角と回転行列法により、亀裂円板の座標系の変換及び粗い亀裂開口幅値の割り当てを行い、3次元離散-粗い亀裂ネットワークの数値モデルを作成する。
【0058】
ステップS6:3次元亀裂ネットワークの浸透流のシミュレーションを行い、3次元亀裂ネットワークモデルの透水係数を計算する。
【0059】
具体的には、実地調査研究を行い、野外調査データ、ボーリングデータ、物理探査データなどの実測データにより、亀裂ネットワークのパラメータの確率分布モデルを取得し、各確率分布モデルのパラメータ値を決定する。本発明では、Baecher亀裂円板モデルを採用し、ステップS1における亀裂ネットワークの幾何学的パラメータの確率分布モデルは、亀裂円板円心モデル、亀裂傾斜角モデル、亀裂方位モデル、亀裂円板半径モデル、及び亀裂開口幅モデルを含む。
【0060】
亀裂円板円心モデルは、ポアソン分布に合致し、その式は次のとおりである。
【数12】
【0061】
亀裂傾斜角モデル、亀裂方位モデルは、Fisher分布に合致し、その式は次のとおりである。
【数13】
【0062】
亀裂円板半径モデルは、べき乗分布に合致し、その式は次のとおりである。
f(x)=x-α-1
【0063】
亀裂開口幅モデルは、一様分布関数に合致し、その式は次のとおりである。
【数14】
【0064】
具体的には、ステップS2における亀裂ネットワーク内の各データセットは、具体的に次のとおりである。
Point_c={x1,y1,z1;x2,y2,z2;x3,y3,z3;・・・;xn,yn,zn}
Dip={α1;α2;α3;・・・;αn}
Orientation={β1;β2;β3;・・・;βn}
Radius={r1;r2;r3;・・・;rn}
Aperture={b1;b2;b3;・・・;bn}
=L長さ・L幅・L高さ・ρ
式中、nは亀裂モデル内の亀裂数であり、L長さ、L幅及びL高さはそれぞれ亀裂モデルの長さ、幅、高さを表し、xn,yn,znはn番目の亀裂の中心点のデカルト座標系における座標を表し、αnはn番目の亀裂の傾斜角であり、βnはn番目の亀裂の方位であり、rnはn番目の亀裂円板の半径であり、bnはn番目の亀裂の開口幅であり、ρは亀裂モデルの亀裂密度である。
【0065】
具体的には、実世界では、亀裂は粗いものであり、亀裂の上下の粗い壁面間の亀裂空間(即ち、亀裂開口幅)は亀裂内の浸透流特性に影響を与える。現在、粗い亀裂の研究のほとんどは単一の亀裂に対して行われ、3次元離散亀裂ネットワーク内の粗い亀裂のモデリングと浸透流特徴に関する研究は比較的に少ない。3次元離散粗い亀裂ネットワークを生成するには、まず、亀裂ごとにそれぞれの粗い亀裂間開口幅データセットを生成する必要がある。単一の粗い亀裂の生成プロセスを例として、ステップS3は、具体的に以下のステップを含む。
【0066】
ステップS3.1:生成された亀裂開口幅をより実状に合わせるために、まず単一の亀裂の上下の粗い亀裂壁面を生成する必要がある。亀裂面の粗さは、フラクタル次元で表されることができ、ランダム形式のワイエルシュトラス関数により、粗い亀裂の上下壁面の各座標における高さ値を生成し、上亀裂壁面の高さが次のとおりである。
【0067】
【数15】
式中、Zupper
i、j(x
i,y
j)は上粗い亀裂壁面内の(x
i,y
j)における平面座標の高さ、C
Nは標準正規分布を持つ独立乱数、Nは乱数の数、Dとλはフラクタル変数、A
NとB
Nは[0,2π]の一様分布を持つ独立乱数、i、jは生成される亀裂ネットワークの空間周波数解像度であり、通常、64、128、256、512、1024などとされる。
【0068】
粗い亀裂の上下壁面の生成プロセスにおいて、他のパラメータを一定にしながら、CNの乱数シードを変更して差異のある粗い亀裂の上下壁面のデータセットZupper(xi,yj)とZlower(xi,yj)を生成することができる。
【0069】
ステップS3.2:ステップS2における亀裂ネットワーク内の亀裂開口幅セットAperture={b1;b2;b3;・・・;bn}を読み取り、Zupper(xi,yj)’=Zupper(xi,yj)+b1とし、即ち、生成される亀裂のデータセットZupper(xi,yj)’に初期開口幅b1を割り当て、Zupper(xi,yj)は初期開口幅が割り当てられない亀裂のデータセットである。
【0070】
ステップS3.3:地殻応力作用を考慮し、応力、法線剛性を入力することで亀裂閉合の変形量を取得し、実際の粗い亀裂開口幅の変形量及び上下壁面の接触具合を取得する。
【数16】
式中、Δb
fは亀裂閉合の変形量、V
mは初期亀裂閉合の変形量、σ
nは垂直応力、K
niは初期法線剛性である。
【0071】
ステップS3.4:Zupper(x
i,y
j)をΔb
fだけ下げる(下に移動させる)。即ち、Zupper(x
i,y
j)=Zupper(x
i,y
j)-Δb
fである。b(x
i,y
j)を改めて計算し、即ち、b(x
i,y
j)=Zupper(x
i,y
j)-Zlower(x
i,y
j)であり、b(x
i,y
j)=Zupper(x
i,y
j)-Zupper(x
i,y
j)≦0の場合、このとき上下の亀裂壁面が接触し、亀裂がこの位置で閉合し、流体が通過できないことを示し、b(x
i,y
j)=0とする。データを更新し、単一の粗い亀裂間開口幅データセットを得ることができる。上下の亀裂が変位し、部分的に閉合した後の粗い亀裂の平均亀裂開口幅を式(3)により計算する。
【数17】
ただし、M及びNはそれぞれx方向及びy方向のノードの数を表す。
【0072】
ステップS3.5:全ての亀裂の粗い亀裂間開口幅セットを取得するように、ステップS3.1~S3.4を繰り返す。
【0073】
具体的には、各亀裂ネットワークのパラメータセットを読み取り、3次元ランダム亀裂ネットワークの連結性の評価を行う。亀裂岩盤の浸透流プロセスにおいて、孤立した亀裂が流体の移動過程に実質的な影響を与えることができないため、亀裂ネットワークにおける流体の流れは、主に岩盤亀裂ネットワークの連結性に依存する。亀裂の連結性は、亀裂の交差点と線の数で表され、連結性指数CIは次のように定義できる。
【数18】
式中、研究領域が3次元オブジェクトである場合、Qは領域内の亀裂円板間の交差する線分の数、Pは領域内の亀裂円板の数である。
【0074】
ステップS4は、具体的に以下のステップを含む。
【0075】
ステップS4.1:亀裂円板の交差頻度を計算するために、バウンディングボックス法により、第1亀裂と第2亀裂の空間的関係を初期的に判断し、2つの境界球の球心間の直線距離L
vb及び球の半径を比較し、2つの亀裂の境界球の重なりを分析し、
図2及び
図3に示すように、幾何学的特徴が式(4)を満たす。
【数19】
式中、L
vbは第1亀裂と第2亀裂の境界球の間の距離、O
1(x
1,y
1,z
1)、O
2(x
2,y
2,z
2)はそれぞれ第1亀裂円板、第2亀裂円板の円心のグローバル座標であり、a
1、a
2はそれぞれ第1亀裂円板、第2亀裂円板の半径を表す。
【0076】
ステップS4.2:L
vb>(a
1+a
2)の場合、2つの亀裂の位置関係をさらに計算し、判断する必要がある。亀裂円板の産状(傾斜角αと方位β、傾斜角のラジアン値、方位のラジアン値に応じて変換できる)に応じて、亀裂円板の法線ベクトルn
1=(l,m,n)を次のように表す。
【数20】
l、m、nは方向ベクトル、βは方位、αは傾斜角である。
【0077】
ステップS4.3:1番目の亀裂円板の位置する平面を次のように表す。
l1(x-x1)+m1(y-y1)+n1(z-z1)=0 (6)
ただし、l1、m1、n1は1番目の亀裂円板の方向ベクトルである。
【0078】
1番目の亀裂円板の境界輪郭線を次のように表す。
【数21】
【0079】
同様に、2番目の亀裂円板の位置する平面及び境界輪郭線をそれぞれ次のように表すことができる。
l
2(x-x
2)+m
2(y-y
2)+n
2(z-z
2)=0 (8)
(ただし、l
2、m
2、n
2は2番目の亀裂円板の方向ベクトルである)
【数22】
【0080】
ステップS4.4:2つの境界球が部分的に重なると、式(10)により2つの亀裂円板の位置する平面の夾角θを計算する。
【数23】
【0081】
ステップS4.5:夾角θ=0の場合、2つの亀裂円板の位置する平面が平行になり、亀裂円板の交線が存在しないことを示し、そうでない場合、式(5)~式(10)により2つの亀裂円板が交線と交差するか否かをそれぞれ計算する。2つの亀裂円板がいずれも交線と交差する場合、2つの亀裂円板と交線との4つの空間交点により亀裂の位置関係を分析し、判断する必要がある。
図4及び
図5に示すように、2番目の亀裂が1番目の亀裂に含まれるか又は1番目の亀裂と交差することは、2つの亀裂円板が交差関係にあることを意味する。それと同時に、4つの座標を用いて交線の空間方程式と交差長さを求めることができる。
図6には、2つの亀裂が分離しており、2つの亀裂円板が同一の交線を有するが、交差していないことを示す。ここで、A
11とA
12は、それぞれ亀裂Aと交線との1番目、2番目の交点であり、B
11とB
12は、それぞれ亀裂Bと交線との1番目、2番目の交点である。
【0082】
具体的には、1番目の亀裂円板の生成プロセスを例として、1番目の亀裂円板のパラメータをそれぞれO(x1,y1,z1)、傾斜角α1と方位β1、円板半径R1として仮定する。
【0083】
ステップS5は、具体的に以下のステップを含む。
【0084】
ステップS5.1:MatlabでステップS2における亀裂ネットワークの幾何学的パラメータセットを読み取り、ロードし、平面グローバル座標系の原点を亀裂円板の円心とし、半径がR
1の亀裂円板を作成し、
図7に示すように、3次元離散亀裂ネットワークモデルの可視化を実現する。
【0085】
ステップS5.2:
図8に示すように、ステップS3で新たに生成された上下の粗い亀裂面間の亀裂開口幅の値b(x
i,y
j)を読み取り、開発プラットフォームであるComsol with Matlabにコマンドを入力し、その値を亀裂円板に割り当て、亀裂円板が粗い亀裂開口幅を有するようにし、粗い亀裂の亀裂開口幅値の割り当てと可視化を実現できる。
【0086】
ステップS5.3:グローバル座標系の原点を円板の中心点Oに平行移動させ、即ち、グローバル座標系の原点のx、y、zの3つの方向に沿った平行移動方向をそれぞれx1、y1、z1とする。
【0087】
ステップS5.4:オイラー角の定理を導入し、グローバル座標系のx軸が亀裂の方位方向となるように回転するように座標系をz軸周りに(180-α)°回転させ、グローバル座標系のy軸が亀裂の方位線と重なるように座標系をy軸周りにβ回転させ、デカルト座標系において亀裂円板モデルを作成する。
【0088】
ステップS5.5:ステップS5.1~S5.4を繰り返し、逐次反復し、3次元空間内の離散-粗い亀裂ネットワークのモデリングを完成する。
【0089】
具体的には、ステップS6は、具体的に以下のステップを含む。
ステップS6.1:ソフトプラットフォームであるComsol with Matlabに基づき、ソフトプラットフォームの支配方程式とソルバーを呼び出し、3次元亀裂ネットワークの浸透流シミュレーション中の定常流がDarcy方程式によって支配され、具体的に次のとおりである。
【0090】
【数24】
式中、d
fは亀裂開口幅、ρは亀裂密度、μは動粘度、Q
mは亀裂流量、uは速度、pは圧力、k
fは透水率であり、
【数25】
は微積分の勾配演算子であり、異なる方向における微分を表す。
【0091】
ステップS6.2:境界条件を設定し、x方向を流体の流れ方向とし、モデルの入口境界と出口境界でそれぞれ圧力境界条件として設定する。
【0092】
ステップS6.3:シミュレーションソフトであるComsolにより、モデルをメッシュ化し、流れ場及び圧力場を求解する。
【0093】
ステップS6.4:亀裂ネットワークモデルの入口での浸透流速度を計算し、入口での流速を積分することで異なる亀裂開口幅分布の下での定常状態の体積流速Qを取得し、具体的に次のとおりである。
Q=Au (14)
式中、A=∫dhであり、流体の流れ方向に垂直な断面積、uは断面積を通過する流体の速度である。
【0094】
ステップS6.5:ダルシー方程式に従ってモデルの亀裂ネットワークモデルの透水係数Kを計算し、具体的に次のとおりである。
【数26】
式中、Aは流体の流れ方向に垂直な断面積、Lは亀裂ネットワークの流れ方向における長さ、Δpはモデルの入口境界と出口境界の圧力差である。
【0095】
上記は、単一の3次元粗い亀裂ネットワークのモデリング、連結性の評価及び浸透流の求解プロセスである。スクリプトプログラムを作成し、試験方案を引き続き読み取ることにより、亀裂ネットワークのパラメータセットを生成し、プログラムループを行う。
【0096】
当然ながら、上記の説明は、本発明を制限するものではなく、本発明は、上記の例に限定されず、本発明の実質的な範囲で当業者が行う変形、修正、追加又は置換も、本発明の保護範囲に属するものとすべきである。