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特許7726797比抵抗測定装置、地盤改良体の管理方法及び比抵抗測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-12
(45)【発行日】2025-08-20
(54)【発明の名称】比抵抗測定装置、地盤改良体の管理方法及び比抵抗測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01V 3/20 20060101AFI20250813BHJP
   E02D 1/02 20060101ALI20250813BHJP
【FI】
G01V3/20
E02D1/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022005760
(22)【出願日】2022-01-18
(65)【公開番号】P2023104638
(43)【公開日】2023-07-28
【審査請求日】2024-07-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100133064
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 新
(72)【発明者】
【氏名】小原 隆志
(72)【発明者】
【氏名】小林 一三
(72)【発明者】
【氏名】岡本 道孝
(72)【発明者】
【氏名】米丸 佳克
(72)【発明者】
【氏名】松本 聡碩
(72)【発明者】
【氏名】福島 陽
(72)【発明者】
【氏名】坂本 諭
【審査官】鴨志田 健太
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-522775(JP,A)
【文献】特開2020-071188(JP,A)
【文献】特開平11-222844(JP,A)
【文献】特開2021-188280(JP,A)
【文献】米国特許第03973181(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0303525(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0279063(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0068024(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01V 3/00- 3/40
E02D 1/00- 1/08
G01N 27/02-27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中の孔の孔壁に対向する誘電体と誘電体に接続される導電体とからなるキャパシタ電極の一対を一対の電流電極として前記孔の延在方向に沿って配置し、一対の前記電流電極の間に交流電圧を印加することにより前記地中に交流電流を流しつつ、前記孔壁に対向する誘電体と誘電体に接続された導電体とからなるキャパシタ電極の一対を一対の電位電極として前記孔の前記延在方向に沿って配置し、一対の前記電位電極の間の電位を測定する、キャパシタ電極装置と、
前記キャパシタ電極装置の前記電流電極により前記地中に流された交流電流と、前記キャパシタ電極装置の前記電位電極により測定された前記電位電極の間の電位とにより、前記地中の比抵抗を測定する測定部と、
を備え、
前記キャパシタ電極装置は、前記孔の中での前記孔の前記延在方向における前記電流電極及び前記電位電極の間隔を変更する電極間隔変更機構を有し、
前記電極間隔変更機構は、
互いに隣接する前記キャパシタ電極同士を連結するケーブルと、前記キャパシタ電極に固定されて前記ケーブルを巻き取るウインチと、を含む、比抵抗測定装置。
【請求項2】
地中の孔の孔壁に対向する誘電体と誘電体に接続される導電体とからなるキャパシタ電極の一対を一対の電流電極として前記孔の延在方向に沿って配置し、一対の前記電流電極の間に交流電圧を印加することにより前記地中に交流電流を流しつつ、前記孔壁に対向する誘電体と誘電体に接続された導電体とからなるキャパシタ電極の一対を一対の電位電極として前記孔の前記延在方向に沿って配置し、一対の前記電位電極の間の電位を測定する、キャパシタ電極装置と、
前記キャパシタ電極装置の前記電流電極により前記地中に流された交流電流と、前記キャパシタ電極装置の前記電位電極により測定された前記電位電極の間の電位とにより、前記地中の比抵抗を測定する測定部と、
を備え、
前記キャパシタ電極装置は、前記孔の中での前記孔の前記延在方向における前記電流電極及び前記電位電極の間隔を変更する電極間隔変更機構を有し、
前記電極間隔変更機構は、
互いに隣接する前記キャパシタ電極同士を連結するロッドと、前記ロッドに設けられたラックと、前記キャパシタ電極に設けられ前記ラックと噛み合うピニオンと、を含む、比抵抗測定装置。
【請求項3】
地中の孔の孔壁に対向する誘電体と誘電体に接続される導電体とからなるキャパシタ電極の一対を一対の電流電極として前記孔の延在方向に沿って配置し、一対の前記電流電極の間に交流電圧を印加することにより前記地中に交流電流を流しつつ、前記孔壁に対向する誘電体と誘電体に接続された導電体とからなるキャパシタ電極の一対を一対の電位電極として前記孔の前記延在方向に沿って配置し、一対の前記電位電極の間の電位を測定する、キャパシタ電極装置と、
前記キャパシタ電極装置の前記電流電極により前記地中に流された交流電流と、前記キャパシタ電極装置の前記電位電極により測定された前記電位電極の間の電位とにより、前記地中の比抵抗を測定する測定部と、
を備え、
前記キャパシタ電極装置は、前記電流電極及び前記電位電極の前記誘電体と前記孔壁との離隔を変更する離隔調整機構を有する、比抵抗測定装置。
【請求項4】
前記離隔調整機構は、管状であり柔軟性を有する前記誘電体を膨張及び収縮させることにより、前記誘電体と前記孔壁との離隔を変更する、請求項3に記載の比抵抗測定装置。
【請求項5】
前記離隔調整機構は、板状の前記誘電体が重複部を含みつつ前記孔の前記延在方向の周りに巻回されることにより管状となった前記誘電体を拡張及び収縮させることにより、前記誘電体と前記孔壁との離隔を変更する、請求項3に記載の比抵抗測定装置。
【請求項6】
前記離隔調整機構は、管状であり折畳部を含む前記誘電体を拡張及び収縮させることにより、前記誘電体と前記孔壁との離隔を変更する、請求項3に記載の比抵抗測定装置。
【請求項7】
地中の孔の孔壁に対向する誘電体と誘電体に接続される導電体とからなるキャパシタ電極の一対を一対の電流電極として前記孔の延在方向に沿って配置し、一対の前記電流電極の間に交流電圧を印加することにより前記地中に交流電流を流しつつ、前記孔壁に対向する誘電体と誘電体に接続された導電体とからなるキャパシタ電極の一対を一対の電位電極として前記孔の前記延在方向に沿って配置し、一対の前記電位電極の間の電位を測定する、キャパシタ電極装置と、
前記キャパシタ電極装置の前記電流電極により前記地中に流された交流電流と、前記キャパシタ電極装置の前記電位電極により測定された前記電位電極の間の電位とにより、前記地中の比抵抗を測定する測定部と、
を備え、
前記キャパシタ電極装置では、前記電流電極及び前記電位電極の前記誘電体が前記孔壁を支持する管状のケーシングであり、前記電流電極及び前記電位電極の前記導電体が前記ケーシングの内部で前記孔の前記延在方向に沿って配置され、前記ケーシングに接続され、
前記キャパシタ電極装置では、前記ケーシングの内部での前記孔の前記延在方向における前記電流電極及び前記電位電極の前記導電体の間隔を変更する導電体間隔変更機構を有し、
前記導電体間隔変更機構は、
互いに隣接する前記導電体同士を連結するケーブルと、前記導電体に固定されて前記ケーブルを巻き取るウインチと、を含む、比抵抗測定装置。
【請求項8】
前記キャパシタ電極装置は、前記電流電極及び前記電位電極の前記誘電体と前記孔壁との間の水を排水する排水機構を有する、請求項1~のいずれか1項に記載の比抵抗測定装置。
【請求項9】
地盤改良体の管理方法であって、
請求項1~のいずれか1項に記載の比抵抗測定装置の前記キャパシタ電極装置を前記地盤改良体に形成された前記孔に配置し、前記キャパシタ電極装置の一対の前記電流電極の間に交流電圧を印加することにより前記地盤改良体に交流電流を流しつつ、前記キャパシタ電極装置の一対の前記電位電極の間の電位を測定し、前記キャパシタ電極装置の前記測定部により前記地盤改良体の比抵抗を測定する、地盤改良体の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、比抵抗測定装置、地盤改良体の管理方法及び比抵抗測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中の比抵抗測定のための技術が提案されている。例えば、特許文献1には、地中に貫入されるロッドの先端のコーンに設けられた電流電極及び電位電極により、地中の比抵抗を測定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2021-119277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような技術では、ロッドにより形成された地中の孔の孔壁の凹凸、孔壁に露頭した礫及び電極と地山の局所的な接触状態等によって測定される比抵抗が影響を受け易く、高精度の測定が難しい欠点がある。
【0005】
そこで本発明は、地中の比抵抗測定の精度を向上できる比抵抗測定装置、地盤改良体の管理方法及び比抵抗測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、地中の孔の孔壁に対向する誘電体と誘電体に接続される導電体とからなるキャパシタ電極の一対を一対の電流電極として孔の延在方向に沿って配置し、一対の電流電極の間に交流電圧を印加することにより地中に交流電流を流しつつ、孔壁に対向する誘電体と誘電体に接続された導電体とからなるキャパシタ電極の一対を一対の電位電極として孔の延在方向に沿って配置し、一対の電位電極の間の電位を測定するキャパシタ電極装置と、キャパシタ電極装置の電流電極により地中に流された交流電流と、キャパシタ電極装置の電位電極により測定された電位電極の間の電位とにより、地中の比抵抗を測定する測定部とを備えた比抵抗測定装置である。
【0007】
この構成によれば、比抵抗測定装置のキャパシタ電極装置は、地中の孔の孔壁に対向する誘電体と誘電体に接続される導電体とからなるキャパシタ電極の一対を一対の電流電極として孔の延在方向に沿って配置し、一対の電流電極の間に交流電圧を印加することにより地中に交流電流を流しつつ、孔壁に対向する誘電体と誘電体に接続された導電体とからなるキャパシタ電極の一対を一対の電位電極として孔の延在方向に沿って配置し、一対の電位電極の間の電位を測定する。比抵抗測定装置の測定部は、キャパシタ電極装置の電流電極により地中に流された交流電流と、キャパシタ電極装置の電位電極により測定された電位電極の間の電位とにより、地中の比抵抗を測定する。キャパシタ電極である電流電極と電位電極とは、孔壁に近接するだけで測定が可能であるため、孔壁の凹凸、孔壁に露頭した礫及び電極と地山の局所的な接触状態等の影響を低減させつつ、地中の比抵抗を測定することにより、地中の比抵抗測定の精度を向上できる。
【0008】
この場合、キャパシタ電極装置は、孔の中での孔の延在方向における電流電極及び電位電極の間隔を変更する電極間隔変更機構を有することが好適である。
【0009】
この構成によれば、キャパシタ電極装置では、電極間隔変更機構により、孔の中での孔の延在方向における電流電極及び電位電極の間隔が変更されるため、孔の延在方向に直交する方向における比抵抗を測定する地中の位置を任意に変更することができる。
【0010】
また、キャパシタ電極装置は、電流電極及び電位電極の誘電体と孔壁との離隔を変更する離隔調整機構を有することが好適である。
【0011】
この構成によれば、キャパシタ電極装置では、離隔調整機構により、電流電極及び電位電極の誘電体と孔壁との離隔が変更されるため、電流電極及び電位電極が孔の中を移動するときには、電流電極及び電位電極の誘電体と孔壁との離隔を大きくして、孔の中での電流電極及び電位電極の移動を容易にできる。一方、電流電極により地中に交流電流を流しつつ、電位電極の間の電位を測定するときには、電流電極及び電位電極の誘電体と孔壁との離隔を小さくして、地中の比抵抗を精度良く測定できる。
【0012】
キャパシタ電極装置が離隔調整機構を有する場合、離隔調整機構は、管状であり柔軟性を有する誘電体を膨張及び収縮させることにより、誘電体と孔壁との離隔を変更してもよい。
【0013】
この構成によれば、離隔調整機構は、管状であり柔軟性を有する誘電体を膨張及び収縮させることにより誘電体と孔壁との離隔を変更するため、単純な機構により誘電体と孔壁と孔壁との離隔を変更できる。
【0014】
また、キャパシタ電極装置が離隔調整機構を有する場合、離隔調整機構は、板状の誘電体が重複部を含みつつ孔の延在方向の周りに巻回されることにより管状となった誘電体を拡張及び収縮させることにより、誘電体と孔壁との離隔を変更してもよい。
【0015】
この構成によれば、離隔調整機構は、板状の誘電体が重複部を含みつつ孔の延在方向の周りに巻回されることにより管状となった誘電体を拡張及び収縮させることにより、誘電体と孔壁との離隔を変更するため、単純な機構により誘電体と孔壁との離隔を変更できる。
【0016】
また、キャパシタ電極装置が離隔調整機構を有する場合、離隔調整機構は、管状であり折畳部を含む誘電体を拡張及び収縮させることにより、誘電体と孔壁との離隔を変更してもよい。
【0017】
この構成によれば、離隔調整機構は、管状であり折畳部を含む誘電体を拡張及び収縮させることにより、誘電体と孔壁との離隔を変更するため、単純な機構により誘電体と孔壁との離隔を変更できる。
【0018】
また、キャパシタ電極装置では、電流電極及び電位電極の誘電体が孔壁を支持する管状のケーシングであり、電流電極及び電位電極の導電体がケーシングの内部で孔の延在方向に沿って配置され、ケーシングに接続されてもよい。
【0019】
この構成によれば、キャパシタ電極装置では、電流電極及び電位電極の誘電体が孔壁を支持する管状のケーシングであり、電流電極及び電位電極の導電体がケーシングの内部で孔の延在方向に沿って配置され、ケーシングに接続されるため、孔壁の崩壊を防止できる。また、ケーシング自体が誘電体の役割を果たし、ケーシングの内部に配置された導電体とキャパシタ電極を形成する。そのため、ケーシングの内部で上下動させる導電体には誘電体となる別個の部材は不要であり、キャパシタ電極装置を単純な構成にできる。
【0020】
この場合、キャパシタ電極装置では、ケーシングの内部での孔の延在方向における電流電極及び電位電極の導電体の間隔を変更する導電体間隔変更機構を有することが好適である。
【0021】
この構成によれば、キャパシタ電極装置では、導電体間隔変更機構により、ケーシングの内部での孔の延在方向における電流電極及び電位電極の導電体の間隔が変更されるため、孔の延在方向に直交する方向における比抵抗を測定する地中の位置を任意に変更することができる。
【0022】
また、キャパシタ電極装置は、電流電極及び電位電極の誘電体と孔壁との間の水を排水する排水機構を有することが好適である。
【0023】
この構成によれば、キャパシタ電極装置では、排水機構により、電流電極及び電位電極の誘電体と孔壁との間の水が排水されるため、孔の中の水の影響を低減することができる。
【0024】
一方、本発明は、地盤改良体の管理方法であって、上記本発明の比抵抗測定装置のキャパシタ電極装置を地盤改良体に形成された孔に配置し、キャパシタ電極装置の一対の電流電極の間に交流電圧を印加することにより地盤改良体に交流電流を流しつつ、キャパシタ電極装置の一対の電位電極の間の電位を測定し、キャパシタ電極装置の測定部により地盤改良体の比抵抗を測定する地盤改良体の管理方法である。
【0025】
この構成によれば、地盤改良体の管理方法において、上記本発明の比抵抗測定装置のキャパシタ電極装置が地盤改良体に形成された孔に配置され、キャパシタ電極装置の一対の電流電極の間に交流電圧を印加することにより地盤改良体に交流電流が流され、キャパシタ電極装置の一対の電位電極の間の電位が測定され、キャパシタ電極装置の測定部により地盤改良体の比抵抗が測定される。キャパシタ電極である電流電極と電位電極とは、孔壁に近接させられるだけで測定が可能であるため、地盤改良体に形成された孔の孔壁の凹凸、孔壁に露頭した礫及び電極と地山の局所的な接触状態等の影響を低減させつつ、地盤改良体の比抵抗を測定することにより、地盤改良体の管理の精度を向上できる。
【0026】
また、本発明は、地中の孔の孔壁に対向する誘電体と誘電体に接続された導電体とからなるキャパシタ電極の一対を一対の電流電極として孔の延在方向に沿って配置し、孔壁に対向する誘電体と誘電体に接続された導電体とからなるキャパシタ電極の一対を一対の電位電極として孔の延在方向に沿って配置する電極配置工程と、電極配置工程で配置された一対の電流電極の間に交流電圧を印加することにより地中に交流電流を流しつつ、電極配置工程で配置された一対の電位電極の間の電位を測定し、電流電極により地中に流された交流電流と、電位電極により測定された電位電極の間の電位とにより、地中の比抵抗を測定する測定工程とを備えた比抵抗測定方法である。
【発明の効果】
【0027】
本発明の比抵抗測定装置、地盤改良体の管理方法及び比抵抗測定方法によれば、地中の比抵抗測定の精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1実施形態の比抵抗測定装置及び比抵抗測定方法の概要を示す図である。
図2図1の比抵抗測定装置の詳細を示す図である。
図3】(A)は第1実施形態の比抵抗測定装置の離隔調整機構の誘電体と孔壁との離隔が大きい状態を示す図であり、(B)は(A)の離隔調整機構の誘電体と孔壁との離隔が小さい状態を示す図であり、(C)は第2実施形態の比抵抗測定装置の離隔調整機構の誘電体と孔壁との離隔が大きい状態を示す図であり、(D)は(C)の離隔調整機構の誘電体と孔壁との離隔が小さい状態を示す図であり、(E)は第3実施形態の比抵抗測定装置の離隔調整機構の誘電体と孔壁との離隔が大きい状態を示す図であり、(F)は(E)の離隔調整機構の誘電体と孔壁との離隔が小さい状態を示す図である。
図4】キャパシタ電極装置における電流電極及び電位電極の間隔と、孔の延在方向に直交する方向における比抵抗を測定する地中の位置との関係を示す図である。
図5】第4実施形態の比抵抗測定装置を示す図である。
図6】第5実施形態の比抵抗測定装置及び比抵抗測定方法の概要を示す図である。
図7図6の比抵抗測定装置の詳細を示す図である。
図8】第6実施形態の地盤改良体の管理方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。図1及び図2に示されるように、本実施形態の比抵抗測定装置1Aは、キャパシタ電極装置10Aと測定部20とを備える。本実施形態の比抵抗測定装置1Aは、例えば、地中Eの横方向及び深さ方向の比抵抗の分布を測定する。地中Eの比抵抗と地中Eの乾燥密度とは相関関係があることが知られている。また、地中Eの比抵抗と地中Eの湿潤密度とは相関関係があることが知られている。したがって、地中Eの比抵抗の分布に基づいて地中Eの横方向及び深さ方向の乾燥密度及び湿潤密度の分布を導出することができる。本実施形態の比抵抗測定装置1Aは、地中Eの横方向及び深さ方向の乾燥密度又は湿潤密度の分布により、地中Eの比抵抗を測定できる。
【0030】
本実施形態では、地中Eには、ボーリング削孔等により上下方向に延在する孔Hが形成されている。本実施形態では、図3(A)及び図3(B)に示されるように、孔Hの横断面の形状は円形である。孔Hの内径は、例えば、数百mmにできる。なお、孔Hは、必ずしもボーリング削孔等により人工的に形成されたものではなく、比抵抗測定装置1Aによる比抵抗の測定の前から自然に存在していたものでもよい。また、孔Hの横断面の形状は、楕円又は多角形でもよい。また、孔Hは、必ずしも鉛直方向に延在していなくてもよく、鉛直方向から90°未満に傾斜した方向に延在していてもよい。また、孔Hは、必ずしも直線状に延在していなくてもよく、屈曲しつつ延在していてもよい。また、孔Hの内径は、孔Hの延在方向の各位置において、必ずしも一定でなくてもよい。
【0031】
図2図3(A)及び図3(B)に示されるように、キャパシタ電極装置10Aでは、地中Eの孔Hの孔壁Wに対向する誘電体13と誘電体13に接続される導電体14とからなるキャパシタ電極10の一対が一対の電流電極11として孔Hの延在方向に沿って配置されている。キャパシタ電極装置10Aでは、一対の電流電極11の間に交流電圧を印加することにより地中Eに交流電流を流す。誘電体13は、例えば、一般的な合成樹脂からなる円管状部材である。導電体14は、導電性を有する金属からなる円管状の電極である。キャパシタ電極10は防水処理がなされている。
【0032】
キャパシタ電極装置10Aでは、一対の電流電極11により地中Eに交流電流を流しつつ、孔壁Wに対向する誘電体13と誘電体13に接続された導電体14とからなるキャパシタ電極10の一対が一対の電位電極12として孔Hの延在方向に沿って配置される。キャパシタ電極装置10Aでは、一対の電流電極11により地中Eに交流電流を流しつつ、一対の電位電極12の間の電位が測定される。
【0033】
キャパシタ電極装置10Aのキャパシタ電極10のそれぞれは、孔Hの孔壁Wの形状に沿った円管状の形状を有する。互いに隣接するキャパシタ電極10のそれぞれは、ケーブル15cを介して孔Hの延在方向に沿って互いに連結されている。地表面Sから最も近いキャパシタ電極10は、ケーブル15cを介して地表面Sの孔Hの近傍に設置された測定部20と連結されている。キャパシタ電極装置10Aのキャパシタ電極10のそれぞれは、ケーブル15cにより、地表面Sに設置された測定部20から孔Hの中に吊り下げられている。地表面Sから最も近いキャパシタ電極10と測定部20とを連結するケーブル15cは、測定部20のウインチ20wに巻き取られている。ウインチ20wにより、比抵抗測定装置1Aは、地表面Sからのキャパシタ電極装置10Aの深度を変更自在である。
【0034】
測定部20は、ケーブル15cを介してキャパシタ電極装置10Aのキャパシタ電極10のそれぞれと電気的に接続されている。測定部20は、キャパシタ電極装置10Aの電流電極11により地中Eに流された交流電流と、キャパシタ電極装置10Aの電位電極12により測定された電位電極12の間の電位とにより、地中Eの比抵抗を測定する。なお、測定部20とキャパシタ電極装置10Aとの間の連結及び互いに隣接するキャパシタ電極10のそれぞれの間の物理的な連結はケーブル15c以外のロープ、チェーン及びロッド等により行われ、測定部20とキャパシタ電極装置10Aとの間の電気的な接続及び互いに隣接するキャパシタ電極10のそれぞれの間の電気的な接続がケーブル15cにより行われてもよい。
【0035】
孔Hの孔壁Wに接触していない一対の電流電極11の導電体14に電圧が印加されると、導電体14と孔壁Wの地中Eとの間に電荷が溜まり電流電極11はキャパシタとなる。キャパシタとなった電流電極11が充電又は放電しきる前に電圧の極性が切り替えられれば、連続的に地中Eに交流電流を流すことができる。その結果、地中Eには電界が形成される。地中Eに電界が形成された状態で、電流電極11から少し離れた位置で一対の電位電極12によって電位が測定されると、電流電極11と電位電極12との間のみ地中Eのみかけの比抵抗を測定することができる。
【0036】
本実施形態のキャパシタ電極装置10Aでは、地表面Sに近い側に孔Hの延在方向に沿って一対の電流電極11が配置され、地表面Sから遠い側に孔Hの延在方向に沿って一対の電位電極12が配置されている。しかし、キャパシタ電極装置10Aでは、ウェンナー配置により電流電極11及び電位電極12が配置されていてもよい。ウェンナー配置では、孔Hの延在方向に沿って一対の電流電極11が配置され、一対の電流電極11の間に孔Hの延在方向に沿って一対の電位電極12が配置される。
【0037】
キャパシタ電極装置10Aは、孔Hの中での孔Hの延在方向における電流電極11及び電位電極12の間隔を変更する電極間隔変更機構15Aを有する。電極間隔変更機構15Aは、互いに隣接するキャパシタ電極10を連結するケーブル15cと、キャパシタ電極10のそれぞれに固定されてケーブル15cを巻き取るウインチ15wとを含む。ウインチ15wにより、キャパシタ電極装置10Aは、孔Hの中での孔Hの延在方向における電流電極11及び電位電極12の間隔を変更自在である。
【0038】
図3(A)及び図3(B)に示されるように、キャパシタ電極装置10Aは、電流電極11及び電位電極12の誘電体13と孔壁Wとの離隔を変更する離隔調整機構16Aを有する。本実施形態では、離隔調整機構16Aは、管状であり柔軟性を有する誘電体13を膨張及び収縮させることにより、誘電体13と孔壁Wとの離隔を変更する。離隔調整機構16Aは、例えば、互いの間が気密性を有するように封止された外管16oと外管16oの内側の内管16iとを有する誘電体13からなる。誘電体13の外管16oの内面に沿うように導電体14が取り付けられている。
【0039】
図3(A)に示されるように、離隔調整機構16Aは、例えば、外管16oと内管16iとの間から気体を排出することにより、誘電体13を収縮させ、電流電極11及び電位電極12の誘電体13と孔壁Wとの離隔を増大させる。図3(B)に示されるように、離隔調整機構16Aは、例えば、外管16oと内管16iとの間に気体を導入することにより、誘電体13を膨張させ、電流電極11及び電位電極12の誘電体13と孔壁Wとの離隔を減少させる。なお、離隔調整機構16Aの動力源は、気体の排出及び導入以外にも、電動機等を適用できる。
【0040】
図2に示されるように、キャパシタ電極装置10Aは、電流電極11及び電位電極12の誘電体13と孔壁Wとの間の水を排水する排水機構19を有する。排水機構19は、例えば、地表面Sから最も遠くに位置するキャパシタ電極10のさらに下方に先端が位置する管状部材を含む。排水機構19は、管状部材の先端から水を吸引して、地表面S等の外部に排水する。排水機構19は、排水のための動力源となる不図示のポンプを地中E及び地表面S上のいずれかに含む。
【0041】
なお、排水機構19は、孔Hの全体ではなく、孔Hのキャパシタ電極10が存在する部位のみに存在する水を排水するものであればよい。つまり、排水機構19は、必ずしも地表面Sまで地中Eの水を排水しなくてもよい。また、キャパシタ電極装置10Aの浮き上がりを防止するために、地表面Sから最も遠くに位置するキャパシタ電極10又はキャパシタ電極10のそれぞれに重錘が設置されていてもよい。
【0042】
上記説明した本実施形態の比抵抗測定装置1Aを用いた比抵抗測定方法では、地中Eの孔Hの孔壁Wに対向する誘電体13と誘電体13に接続された導電体14とからなるキャパシタ電極10の一対が一対の電流電極11として孔Hの延在方向に沿って配置され、孔壁Wに対向する誘電体13と誘電体13に接続された導電体14とからなるキャパシタ電極10の一対が一対の電位電極12として孔Hの延在方向に沿って配置される電極配置工程が行われる。
【0043】
電極配置工程では、孔Hにキャパシタ電極装置10Aの全てのキャパシタ電極10を降下させた後、測定部20のウインチ20wからキャパシタ電極装置10Aを吊り下げつつ、キャパシタ電極装置10Aを孔Hの下方に降下させる。電極配置工程では、孔Hにおけるキャパシタ電極10のそれぞれの位置(深度)が測定されつつ、キャパシタ電極10が配置される。
【0044】
本実施形態の比抵抗測定装置1Aを用いた比抵抗測定方法では、電極配置工程で配置された一対の電流電極11の間に交流電圧を印加することにより地中Eに交流電流を流しつつ、電極配置工程で配置された一対の電位電極12の間の電位を測定し、電流電極11により地中Eに流された交流電流と、電位電極12により測定された電位電極12の間の電位とにより、地中Eの比抵抗が測定される測定工程が行われる。測定工程では、例えば、孔Hにおける計測範囲の下端から測定が行われ、キャパシタ電極10が引き上げられながら、測定が行われる。測定工程では、地中Eの比抵抗と、地中Eにおけるキャパシタ電極10のそれぞれの位置(深度)とが関連付けられて記録されつつ、測定が行われる。
【0045】
地中Eが自然地盤ではなく盛土等の材料が分かっている場合は、事前のキャリブレーションで比抵抗と乾燥密度との関係又は比抵抗と湿潤密度との関係を求めておけば、絶対的な乾燥密度分布及び湿潤密度分布の測定も可能である。測定の終了後に、キャパシタ電極装置10A及び測定部20が撤去される。
【0046】
従来の地中の密度の測定方法では、突砂法(JGS1611)及び砂置換法(JIS A 1214)による土の密度試験がある。突砂法及び砂置換法では、地表面に試験孔が掘削され、既知の基準砂と置き換えられる。掘削土の質量と、置き換えた基準砂の量の比率から、土の密度が得られる。突砂法及び砂置換法では、直接的に対象地盤の密度が評価可能であるが、評価対象深度は地表面から数十cmまでの表層部であり、深さ方向の密度分布は計測できない欠点がある。
【0047】
また、従来の地中の密度の測定方法では、RI計器による土の密度試験(JGS1614)がある。RI計器による土の密度試験では、地表面からγ線を発する線源棒が地中に差し込まれる。線源棒から発されたγ線のγ線到達量が地表面に設置した検出管で検出される。RI計器による土の密度試験は、地中で吸収されるγ線の割合は、土の湿潤密度と一定に関係にあることを用いた手法である。RI計器による土の密度試験は、短時間で測定できるため、多点測定が可能である。また、RI計器による土の密度試験は、測定者による誤差が小さい。しかし、RI計器による土の密度試験の評価対象深度は、砂置換法と同程度である欠点がある。
【0048】
また、従来の地中の密度の測定方法では、密度検層がある。密度検層では、ボーリング削孔による孔を利用して、孔の中にγ線を発する線源が配置され、線源から発されたγ線のγ線到達量が地表面に設置した検出管で検出される。密度検層は、原理はRI法と同じであるが、深さ方向に連続して湿潤密度を計測することができる。また、密度検層では、ボーリング削孔による孔を用いないRIコーンも実用化されている。密度検層は、深さ方向の密度分布が精度よく計測できる。しかし、RIコーンによる密度検層は、N値が20程度以下の貫入抵抗の小さい地盤に適用可能だが、それより硬い地盤には適用できない欠点がある。また、密度検層は、計測範囲がボーリング削孔による孔の近傍であるため、ケーシングの有無、孔壁のゆるみなどが、計測値に影響する欠点がある。
【0049】
また、従来の地中の密度の測定方法では、電気探査がある。電気探査では、地表面に配置された複数の電極により土の比抵抗を計測し、比抵抗から土の物性を推定する。電気探査では、二次元計測が可能であるが、地表から比抵抗を計測しているため、深部ほど深さ方向の分解能が低い欠点がある。
【0050】
以上のように、従来の地中の密度の測定方法において、突砂法では、評価対象深度は地表面から0.3m程度の深さまでである。RI法では、評価対象深度は地表面から0.2~0.5m程度の深さまでである。密度検層では、評価対象深度はボーリング削孔による孔の深さだけ可能であるが、半径方向は孔壁から0.3m程度である。電気探査では、評価対象深度は、浅い探査では2~5m程度であり、一般的な探査では5~100m程度の深さまで可能であるが、深さ方向の分解能は低い。以上のように、従来の地中の密度の測定方法では、評価対象深度は、浅い範囲か、深くても横方向の範囲と測定精度とが限定されている。
【0051】
一方、本実施形態によれば、比抵抗測定装置1Aのキャパシタ電極装置10Aは、地中Eの孔Hの孔壁Wに対向する誘電体13と誘電体13に接続される導電体14とからなるキャパシタ電極10の一対を一対の電流電極11として孔Hの延在方向に沿って配置し、一対の電流電極11の間に交流電圧を印加することにより地中Eに交流電流を流しつつ、孔壁Wに対向する誘電体13と誘電体13に接続された導電体14とからなるキャパシタ電極10の一対を一対の電位電極12として孔Hの延在方向に沿って配置し、一対の電位電極12の間の電位を測定する。比抵抗測定装置1Aの測定部20は、キャパシタ電極装置10Aの電流電極11により地中Eに流された交流電流と、キャパシタ電極装置10Aの電位電極12により測定された電位電極12の間の電位とにより、地中Eの比抵抗を測定する。キャパシタ電極10である電流電極11と電位電極12とは、孔壁Wに近接するだけで測定が可能であるため、孔壁Wの凹凸、孔壁Wに露頭した礫及び電極と地山の局所的な接触状態等の影響を低減させつつ、地中Eの比抵抗を測定することにより、地中Eの比抵抗測定の精度を向上できる。
【0052】
つまり、本実施形態では、孔壁Wと接触していないキャパシタ電極10が地中Eに電流を流す電極の役割を果たすため、局所的な接触状態には比較的鈍感なキャパシタ電極10により、孔壁Wの凹凸、孔壁Wに露頭した礫及び電極と地山の局所的な接触状態等の影響を低減させつつ、地中Eの比抵抗の測定が可能となる。また、地中Eの深度方向の物性の変化が連続的に精度良く把握できる。
【0053】
また、本実施形態によれば、キャパシタ電極装置10Aでは、電極間隔変更機構15Aにより、孔Hの中での孔Hの延在方向における電流電極11及び電位電極12の間隔が変更されるため、孔Hの延在方向に直交する方向における比抵抗を測定する地中Eの位置を任意に変更することができる。つまり、本実施形態では、電流電極11及び電位電極12の間隔を任意に変更することにより、任意の測定半径における地中Eの比抵抗、乾燥密度及び湿潤密度の測定が可能である。
【0054】
図4に示されるように、例えば、キャパシタ電極装置10Aにおいて、キャパシタ電極10のそれぞれの長さlであり、キャパシタ電極10のそれぞれの幅wである場合を仮定する。一対の電流電極11及び一対の電位電極12のそれぞれを繋ぐケーブル15cの長さc1であり、互いに隣接する電流電極11と電位電極12とを繋ぐケーブル15cの長さc2であると仮定する。
【0055】
一対の電流電極11及び一対の電位電極12の間隔aと仮定する。互いに隣接する電流電極11と電位電極12との間隔は、間隔aの整数倍naと仮定する。なお、キャパシタ電極10のそれぞれの間隔は、キャパシタ電極10の長さlの中点を基準とする。この場合、キャパシタ電極装置10Aの延在方向、つまり、孔の延在方向に直交する方向における比抵抗を測定可能な範囲の目安は、a(n+1)/2、a(n+1)/3及びa(n+1)/4のいずれかにより決定できる。なお、分母の2~4については諸説がある。
【0056】
例えば、図4において、長さlが0.3mであり、幅wが0.1mであり、長さc1が0.4mであり、c2が1.1mであるとすると、間隔aは0.7mであり、間隔aの整数倍naは1.4mである。孔の延在方向に直交する方向における比抵抗を測定可能な範囲の目安は、a(n+1)/2=1.05m、a(n+1)/3=0.7m及びa(n+1)/4=0.525mのいずれかとできる。
【0057】
また、本実施形態によれば、キャパシタ電極装置10Aでは、離隔調整機構16Aにより、電流電極11及び電位電極12の誘電体13と孔壁Wとの離隔が変更されるため、電流電極11及び電位電極12が孔Hの中を移動するときには、電流電極11及び電位電極12の誘電体13と孔壁Wとの離隔を大きくして、孔Hの中での電流電極11及び電位電極12の移動を容易にできる。一方、電流電極11により地中Eに交流電流を流しつつ、電位電極12の間の電位を測定するときには、電流電極11及び電位電極12の誘電体13と孔壁Wとの離隔を小さくして、地中Eの比抵抗を精度良く測定できる。
【0058】
また、本実施形態によれば、離隔調整機構16Aは、管状であり柔軟性を有する誘電体13を膨張及び収縮させることにより誘電体13と孔壁Wとの離隔を変更するため、単純な機構により誘電体13と孔壁Wとの離隔を変更できる。
【0059】
また、本実施形態によれば、キャパシタ電極装置10Aでは、排水機構19により、電流電極11及び電位電極12の誘電体13と孔壁Wとの間の水が排水されるため、孔Hの中の水の影響を低減することができる。
【0060】
以下、本発明の第2実施形態について説明する。図3(C)及び図3(D)に示されるように、本実施形態の比抵抗測定装置1Bでは、キャパシタ電極装置10Bの離隔調整機構16Bは、板状の誘電体13が重複部16lを含みつつ孔Hの延在方向の周りに巻回されることにより管状となった誘電体13を拡張及び収縮させることにより、誘電体13と孔壁Wとの離隔を変更する。導電体14は、誘電体13の内面に沿うように導電体14が取り付けられている。
【0061】
図3(C)に示されるように、離隔調整機構16Bは、重複部16lの範囲を増大させることにより、誘電体13を収縮させ、電流電極11及び電位電極12の誘電体13と孔壁Wとの離隔を増大させる。図3(D)に示されるように、離隔調整機構16Bは、重複部16lの範囲を減少させることにより、誘電体13を拡張させ、電流電極11及び電位電極12の誘電体13と孔壁Wとの離隔を減少させる。離隔調整機構16Bの動力源は、導電体14の内側からの気体の排出及び導入を適用できる。また、離隔調整機構16Bの動力源は、電動機等を適用できる。
【0062】
本実施形態では、離隔調整機構16Cは、板状の誘電体13が重複部16lを含みつつ孔Hの延在方向の周りに巻回されることにより管状となった誘電体13を拡張及び収縮させることにより、誘電体13と孔壁Wとの離隔を変更するため、単純な機構により誘電体13と孔壁Wとの離隔を変更できる。
【0063】
以下、本発明の第3実施形態について説明する。図3(E)及び図3(F)に示されるように、本実施形態の比抵抗測定装置1Cでは、キャパシタ電極装置10Cの離隔調整機構16Cは、管状であり折畳部16hを含む誘電体13を拡張及び収縮させることにより、誘電体13と孔壁Wとの離隔を変更する。導電体14は、誘電体13の内面に沿うように導電体14が取り付けられている。
【0064】
図3(E)に示されるように、離隔調整機構16Cは、折畳部16hを折り畳むことにより、誘電体13を収縮させ、電流電極11及び電位電極12の誘電体13と孔壁Wとの離隔を増大させる。図3(F)に示されるように、離隔調整機構16Cは、折畳部16hを展張することにより、誘電体13を拡張させ、電流電極11及び電位電極12の誘電体13と孔壁Wとの離隔を減少させる。離隔調整機構16Cの動力源は、導電体14の内側からの気体の排出及び導入を適用できる。また、離隔調整機構16Cの動力源は、電動機等を適用できる。
【0065】
本実施形態では、離隔調整機構16Cは、管状であり折畳部16hを含む誘電体13を拡張及び収縮させることにより、誘電体13と孔壁Wとの離隔を変更するため、単純な機構により誘電体13と孔壁Wとの離隔を変更できる。
【0066】
以下、本発明の第4実施形態について説明する。図5に示されるように、本実施形態の比抵抗測定装置1Dのキャパシタ電極装置10Dでは、電流電極11及び電位電極12の誘電体13が孔壁Wを支持する管状のケーシング17であり、電流電極11及び電位電極12の導電体14がケーシング17の内部で孔Hの延在方向に沿って配置され、ケーシング17に接続される。つまり、本実施形態では、ケーシング17自体が誘電体13の役割を果たし、ケーシング17の内部に配置された導電体14とキャパシタ電極10を形成する。ケーシング17は、誘電体13であるため、例えば、一般的なポリ塩化ビニル(PVC:polyvinyl chloride)等の絶縁性の合成樹脂からなる円管状部材である。
【0067】
キャパシタ電極装置10Dでは、ケーシング17の内部での孔Hの延在方向における電流電極11及び電位電極12の導電体14の間隔を変更する導電体間隔変更機構18を有する。キャパシタ電極装置10Dのキャパシタ電極10の導電体14のそれぞれは、ケーシング17の内面の形状に沿った円管状の形状を有し、ケーシング17の内面に沿って摺動可能である。互いに隣接するキャパシタ電極10の導電体14のそれぞれは、ケーブル18cを介して孔Hの延在方向に沿って互いに連結されている。地表面Sから最も近いキャパシタ電極10の導電体14と測定部20とを連結するケーブル18cは、測定部20のウインチ20wに巻き取られている。ウインチ20wにより、比抵抗測定装置1Dは、地表面Sからのキャパシタ電極装置10Dの深度を変更自在である。
【0068】
測定部20は、ケーブル18cを介してキャパシタ電極装置10Dのキャパシタ電極10のそれぞれと電気的に接続されている。なお、測定部20とキャパシタ電極装置10Dとの間の連結及び互いに隣接するキャパシタ電極10の導電体14のそれぞれの間の物理的な連結はケーブル18c以外のロープ、チェーン及びロッド等により行われ、測定部20とキャパシタ電極装置10Dとの間の電気的な接続及び互いに隣接するキャパシタ電極10の導電体14のそれぞれの間の電気的な接続がケーブル18cにより行われてもよい。
【0069】
導電体間隔変更機構18は、互いに隣接するキャパシタ電極10の導電体14を連結するケーブル18cと、導電体14のそれぞれに固定されてケーブル18cを巻き取るウインチ18wとを含む。ウインチ18wにより、キャパシタ電極装置10Dは、ケーシング17の内部での孔Hの延在方向における電流電極11及び電位電極12の導電体14の間隔を変更自在である。
【0070】
本実施形態では、キャパシタ電極装置10Dでは、電流電極11及び電位電極12の誘電体13が孔壁Wを支持する管状のケーシング17であり、電流電極11及び電位電極12の導電体14がケーシング17の内部で孔Hの延在方向に沿って配置され、ケーシング17に接続されるため、孔壁Wの崩壊を防止できる。また、ケーシング17自体が誘電体13の役割を果たし、ケーシング17の内部に配置された導電体14とキャパシタ電極10を形成する。そのため、ケーシング17の内部で上下動させる導電体14には誘電体13となる別個の部材は不要であり、キャパシタ電極装置10Dを単純な構成にできる。
【0071】
また、本実施形態では、キャパシタ電極装置10Dでは、導電体間隔変更機構18により、ケーシング17の内部での孔Hの延在方向における電流電極11及び電位電極12の導電体14の間隔が変更されるため、孔Hの延在方向に直交する方向における比抵抗を測定する地中Eの位置を任意に変更することができる。
【0072】
以下、本発明の第5実施形態について説明する。図6及び図7に示されるように、本実施形態の比抵抗測定装置1Eでは、本実施形態では、上記実施形態のようなボーリング削孔による上下方向に延在する孔Hを利用した測定と同様に、水平方向を含む横方向に延在する孔Hを利用した測定が行われる。孔Hは、地中に埋設されたパイプライン等である。本実施形態では、地中Eに埋設されたパイプライン等を含む横方向に延在する孔Hにキャパシタ電極装置10Eのキャパシタ電極10が配置される。孔Hへのキャパシタ電極10の配置の前にパイプライン等の孔Hの内部から水が排水される。なお、比抵抗測定装置1Eは、上記実施形態と同様の排水機構19を備える。
【0073】
本実施形態では、横方向にキャパシタ電極10を移動させる牽引力及び推進力が別途必要である。そこで、図7に示されるように、本実施形態では、互いに隣接するキャパシタ電極10のそれぞれは、ロッド15rを介して孔Hの延在方向に沿って互いに連結され、孔Hの手前側にキャパシタ電極10を引き抜く方向への牽引力及び孔Hの奥側にキャパシタ電極10を押し込む方向への推進力を互いに付与可能である。測定部20から最も近いキャパシタ電極10と測定部20の基部21とは、ロッド15rを介して互いに連結されている。ロッド15rに設けられたラック15kと基部21のピニオン20nとが互いに噛み合う。ピニオン20nが回転することにより、キャパシタ電極装置10Eは、孔Hの水平方向における位置を変更自在である。
【0074】
また、互いに隣接するキャパシタ電極10を連結するロッド15r及びキャパシタ電極10と測定部20とを連結するロッド15rは、牽引力及び推進力を伝達しつつ屈曲可能なジョイント15jを含む。ジョイント15jによりロッド15rが屈曲することによって、キャパシタ電極装置10Eは、孔Hの屈曲に対応できる。測定部20は、ロッド15rを介してキャパシタ電極装置10Eのキャパシタ電極10のそれぞれと電気的に接続されている。なお、測定部20とキャパシタ電極装置10Eとの間の連結及び互いに隣接するキャパシタ電極10のそれぞれの間の物理的な連結はロッド15rにより行われ、測定部20とキャパシタ電極装置10Eとの間の電気的な接続及び互いに隣接するキャパシタ電極10のそれぞれの間の電気的な接続は、上記実施形態と同様にケーブル等により行われてもよい。
【0075】
キャパシタ電極装置10Eは、孔Hの中での孔Hの延在方向における電流電極11及び電位電極12の間隔を変更する電極間隔変更機構15Bを有する。電極間隔変更機構15Bは、互いに隣接するキャパシタ電極10を連結するロッド15rと、ロッド15rに設けられたラック15kと、ラック15kと噛み合うピニオン15nとを含む。ピニオン15nが回転することにより、キャパシタ電極装置10Eは、孔Hの中での孔Hの延在方向における電流電極11及び電位電極12の間隔を変更自在である。
【0076】
本実施形態の比抵抗測定装置1Eは、線形構造のトンネル、シールド及びパイプライン等の先行調査に有効と考えられる。また、上下水道やガス・電機などのライフラインの多くは地中Eにパイプラインとして埋設されいるが、老朽化による破損又は漏水による外周地盤の洗堀等の可能性がある。洗堀のいくつかは地表面Sまで影響を与え、結果として道路冠水や陥没等の可能性がある。これらを防ぐには、これらの事象の事前予測・調査が必須である。そこで、本実施形態では、地中Eに埋設されたパイプライン等を含む横方向に延在する孔Hにキャパシタ電極10を通過させ、地中Eの比抵抗、乾燥密度及び湿潤密度を測定することで、孔Hの外周の地中Eの状態が把握でき、空洞箇所及び異常個所の早期発見が可能となる。
【0077】
以下、本発明の第6実施形態について説明する。図8に示されるように、本実施形態では、地盤改良体Bの出来形の管理方法が行われる。地盤改良体Bは柱状であり、例えば、地中Eの粘性土s1、軟砂s2及び硬砂s3の各層の改質のために地中Eに打設されている。事前に地盤改良体Bにボーリング削孔等により上下方向に延在する孔Hが形成される。
【0078】
上記実施形態における比抵抗測定装置1A,1B,1C,1D,1Eのキャパシタ電極装置10A,10B,10C,10D,10Eが地盤改良体Bに形成された孔Hに配置される。キャパシタ電極装置10A等の一対の電流電極11の間に交流電圧を印加することにより地盤改良体Bに交流電流が流され、キャパシタ電極装置10A等の一対の電位電極12の間の電位が測定され、キャパシタ電極装置10A等の測定部20により地盤改良体Bの比抵抗が測定される。
【0079】
従来、地中Eの地盤改良体Bの出来形管理は、地表面Sでの地盤改良体Bの寸法把握をし、地盤改良体Bの中央部付近でサンプリングボーリングを実施し、改良体強度の確認を行う。しかし、この方法では、地中Eで不足なく柱状改良が実施できているかが確認できない。
【0080】
一方、本実施形態では、キャパシタ電極10である電流電極11と電位電極12とは、孔壁Wに近接させられるだけで測定が可能であるため、地盤改良体Bに形成された孔Hの孔壁Wの凹凸及び孔壁Wに露頭した礫等の影響を低減させつつ、地盤改良体Bの比抵抗を測定することにより、地盤改良体Bの管理の精度を向上できる。キャパシタ電極10の間隔を任意に変更することにより、横方向における地盤改良体Bの乾燥密度の違いが確認でき、地盤改良体Bの改良有効径dの確認が可能である。本実施形態では、地盤改良体Bの改良有効径dの確認のような乾燥密度が不連続になる部分の測定が可能である。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく様々な形態で実施される。
【符号の説明】
【0082】
1A,1B,1C,1D,1E…比抵抗測定装置、10…キャパシタ電極、10A,10B,10C,10D,10E…キャパシタ電極装置、11…電流電極、12…電位電極、13…誘電体、14…導電体、15A,15B…電極間隔変更機構、15c…ケーブル、15w…ウインチ、15r…ロッド、15k…ラック、15n…ピニオン、15j…ジョイント、16A,16B,16C…離隔調整機構、16o…外管、16i…内管、16l…重複部、16h…折畳部、17…ケーシング、18…導電体間隔変更機構、18c…ケーブル、18w…ウインチ、19…排水機構、20…測定部、20w…ウインチ、20n…ピニオン、21…基部、S…地表面、E…地中、H…孔、W…孔壁、a…間隔、na…整数倍、l…長さ、w…幅、c1,c2…長さ、B…地盤改良体、d…改良有効径、s1…粘性土、s2…軟砂、s3…硬砂。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8