(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-14
(45)【発行日】2025-08-22
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/56 20060101AFI20250815BHJP
A61F 13/514 20060101ALI20250815BHJP
【FI】
A61F13/56 110
A61F13/514 320
(21)【出願番号】P 2021148590
(22)【出願日】2021-09-13
【審査請求日】2024-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000110044
【氏名又は名称】株式会社リブドゥコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 嶺
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-012058(JP,A)
【文献】特開2005-118533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体を有し、
前記バックシートは、外側シートと、前記外側シートのトップシート側に配置された内側シートとを有し、
前記外側シートは、伸び率が5%~130%である不織布であり、
前記バックシートの外面側に固定部材が設けられており、
前記外側シートと前記内側シートとの層間は、前記外側シートと前記内側シートとが接合された接合領域の面積率が40%以上であり、
前記層間には、前記固定部材と厚さ方向で重なる領域の少なくとも一部に、前記外側シートと内側シートとが接合されていないずれ代領域が設けられていることを特徴とする吸収性物品。
【請求項2】
前記層間には、前記固定部材と厚さ方向で重なる領域の50面積%以上に、前記ずれ代領域が設けられている請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記ずれ代領域が、前記層間において、前記固定部材と厚さ方向で重なる領域の外方へと延設されている請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記層間には、前記固定部材と厚さ方向で重なる領域の全体に、前記ずれ代領域が設けられている請求項1~3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記ずれ代領域が、前記層間において、前記固定部材と厚さ方向で重なる領域の周囲全体にわたり外方へと延設されている請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記固定部材と厚さ方向で重なる領域の前後方向の外方へと延設されるずれ代領域の長さが、前後方向における固定部材の長さを100%としたとき、10%以上、100%以下であり、
前記固定部材と厚さ方向で重なる領域の幅方向の外方へと延設されるずれ代領域の長さが、幅方向における固定部材の長さを100%としたとき、10%以上、100%以下である請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記層間において、前記ずれ代領域以外の領域における前記接合領域の面積率が、70%以上である
請求項1~6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記外側シートの目付が、前記内側シートの目付よりも低い請求項1~7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記ずれ代領域は、前記固定部材と厚さ方向で重なる領域に設けられた部分と、前記固定部材と厚さ方向で重なる領域の外方へと延設されている部分との合計面積が、前記固定部材の面積の2倍~16倍である請求項1~8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関し、特に装着時の肌擦れを低減する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品は、装着時に装着位置からのズレを抑制するために、バックシートの外面側に固定手段が設けられている。このような吸収性物品が、例えば、特許文献1~3に記載されている。
【0003】
特許文献1には、裏面シートの非肌当接面に設けた粘着部を介して下着に取り付けられる縦長の吸収性物品であって、前記粘着部は、前記吸収性物品の長手方向前後端部及び長手方向両側部それぞれに設けられており、前記吸収性物品の中央部から前記吸収性物品の長手方向前方の両角及び後方の両角に向かって延びる所定幅の帯域及び該中央部は、前記粘着部が存在しない非粘着部となっている吸収性物品が記載されている(特許文献1(請求項1)参照)。
【0004】
特許文献2には、着衣に接する液不透過性の防漏層と、この防漏層上に配置された液保持性の吸収層とで縦長状に形成された吸収性物品であって、前記防漏層には、着衣と着脱可能な止着手段が裏面側に設けられ、前記防漏層の外周縁は前記吸収層の外周縁と外周縁接合部で全域にわたり接合され、前記吸収層の前端側の少なくとも着用者の膣口当接領域は前記防漏層に固定部で固定され、前記吸収層の前記防漏層に固定されていない後端側の非固定部の前記防漏層と前記吸収層との間に前記防漏層の後端部を前記吸収層に対して接離可能とする弛み部を設けた吸収性物品が記載されている(特許文献2(請求項1)参照)。
【0005】
特許文献3には、裏面に、フック状突起を多数有するフックテープ又は粘着剤層からなるズレ止め部を備えた吸収パッドにおいて、吸収パッドの裏面に、ズレ止めシートが設けられており、このズレ止めシートは、吸収パッドに非固定又は剥離可能に固定された前後方向中間部と、この中間部の前側に位置し、吸収パッドに連結された前側連結部と、前記中間部の後側に位置し、吸収パッドに連結された後側連結部とを有しており、前記中間部に前記ズレ止め部が設けられるとともに、前記ズレ止め部と前記前側連結部との間の部分を切り離すための前側ミシン目、及び前記ズレ止め部と前記後側連結部との間の部分を切り離すための後側ミシン目が設けられている吸収パッドが記載されている(特許文献3(請求項1)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-115337号公報
【文献】特開2009-213584号公報
【文献】特開2011-182930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
生理用ナプキン、失禁パッドなどの吸収性物品は、着用者の下着や使い捨ておむつに固定部によって固定して使用する。しかし、下着等への固定力を高めると、下着等の動きがそのまま吸収性物品に伝わることとなり、吸収性物品による肌擦れを生じるおそれがある。また、下着等への固定力を低くすると、固定が外れてしまい、吸収性物品がずれるおそれがある。
【0008】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、下着等へ固定することができ、かつ、肌擦れを抑制できる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の吸収性物品は、透液性のトップシートと不透液性のバックシートと前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体を有し、前記バックシートは外側シートと、前記外側シートのトップシート側に配置された内側シートとを有し、前記バックシートの外面側に固定部材が設けられており、前記外側シートと前記内側シートとの層間は、前記外側シートと前記内側シートとが接合された接合領域の面積率が40%以上であり、前記層間には、前記固定部材と厚さ方向で重なる領域の少なくとも一部に、前記外側シートと内側シートとが接合されていないずれ代領域が設けられていることを特徴とする。
【0010】
前記吸収性物品は、固定部材によって下着等に固定することができ、かつ、バックシートを構成する外側シートと内側シートとのズレが接合領域によって抑制される。そのため、装着時に吸収体が所定の位置からずれることが抑制される。
また、前記吸収性物品は、吸収性物品が固定された下着等が動いた場合でも、この動きの量がずれ代領域の外側シートが変形することによって低減される。そのため、吸収性物品の動きが低減され、肌擦れが抑制される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、下着等へ固定することができ、かつ、肌擦れを抑制できる吸収性物品が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図5】本発明の吸収性物品の装着時を示す模式的断面図。
【
図6】本発明の吸収性物品の装着時を示す模式的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の吸収性物品は、透液性のトップシートと、不透液性のバックシートと、前記トップシートと前記バックシートとの間に配置された吸収体を有する。吸収性物品は、前後方向yと幅方向xを有する。前後方向yとは、吸収性物品を装着した際に使用者の股間の前後方向に延びる方向に相当する。幅方向xとは、吸収性物品と同一面上にあり前後方向yと直交する方向を意味し、吸収性物品を装着した際の使用者の左右方向に相当する。また、幅方向xと前後方向yにより形成される面に対して垂直方向が厚み方向zである。吸収性物品を使用者が装着した際に、使用者の肌に向かう側を肌面側とし、その反対側を外面側とする。
【0014】
(トップシート)
前記トップシートは、吸収性物品を装着した際に使用者側に位置するシートである。前記トップシートは、透液性であればその材料は特に限定されない。前記トップシートの平面視形状は特に限定されず、吸収体の形状や、立ち上がりフラップ(サイドシート)の有無に応じて調整すればよい。
【0015】
前記トップシートとしては、親水性の不織布、織布、編布が挙げられる。前記親水性の不織布としては、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維から形成された不織布;ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル、ポリアミド等の疎水性繊維から形成された不織布であって、疎水性繊維の表面が界面活性剤により親水化された不織布が挙げられる。
【0016】
(バックシート)
前記バックシートは、吸収性物品を装着した際に使用者とは反対側、すなわち外側に位置するシートである。前記バックシートは、外側シートと、前記外側シートのトップシート側に配置された内側シートとを有する。前記バックシートの平面視形状は特に限定されず、吸収体の形状に応じて調整すればよい。
【0017】
前記外側シートおよび内側シートは、単層でもよいし、複層でもよい。前記外側シートおよび内側シートとしては、不織布、織布、編布が挙げられる。前記外側シートおよび内側シートは、親水性でも疎水性でもよいが、通気性を有することが好ましい。前記不織布としては、セルロース、レーヨン、コットン等の親水性繊維から形成された不織布;ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル、ポリアミド等の疎水性繊維から形成された不織布等が挙げられる。
【0018】
前記外側シートおよび内側シートは、少なくとも一層が不透液シートである。つまり、前記外側シートおよび内側シートがそれぞれ単層である場合、外側シートと内側シートのいずれかは不透液シートである。
【0019】
前記不透液シートは、疎水性の不織布、プラスチックフィルムが挙げられる。前記疎水性の不織布としては、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル、ポリアミド等の疎水性繊維から形成された不織布が挙げられる。前記プラスチックフィルムとしては、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル、ポリアミド等の樹脂から形成されたフィルムが挙げられる。
【0020】
前記外側シートおよび内側シートは、それぞれ単層でもよいし、多層でもよい。前記バックシートの構造としては、単層の外側シートと単層の内側シート(不透液シート)からなる2層構造、単層の外側シートと2層の内側シートからなる3層構造、2層の外側シートと単層の内側シートからなる3層構造等が挙げられる。
【0021】
前記外側シートの伸び率は、5%以上が好ましく、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは20%以上であり、130%以下が好ましく、より好ましくは120%以下、さらに好ましくは110%以下である。前記伸び率は、JIS L 1913(2010)に準拠し、25℃で測定する。
【0022】
前記外側シートの目付は、前記内側シートの目付よりも低いことが好ましい。外側シートの目付が低いほど、外側シートが柔軟となりずれ代領域における外側シートの変形量が大きくなるため、肌擦れがより抑制できる。外側シートおよび/または内側シートが複層である場合は、最も肌面側に配置される外側シートの目付と最も外面側に配置される内側シートの目付を比較する。
【0023】
前記外側シートの目付、5g/m2以上が好ましく、より好ましくは10g/m2以上であり、25g/m2以下が好ましく、より好ましくは20g/m2以下である。前記内側シートの目付は、8g/m2以上が好ましく、より好ましくは13g/m2以上であり、28g/m2以下が好ましく、より好ましくは23g/m2以下である。
【0024】
(吸収体)
前記吸収体は、体液を吸収し、保持する。前記吸収体は、少なくとも一層の吸水層から構成される。前記吸水層は、吸水性材料として、吸水性樹脂粉末を含有するものが好ましい。前記吸水性樹脂粉末としては、従来吸収性物品に使用されているものが使用できる。
【0025】
前記吸水層は、繊維基材を含有することが好ましい。繊維基材を含有することで、吸水層の保形性が高くなり、また、繊維基材により体液の通り道が確保され、吸収速度がより向上する。繊維基材としては、吸水性繊維、熱融着性繊維が挙げられる。前記吸水性繊維としては、例えば、パルプ繊維、セルロース繊維、レーヨン、アセテート繊維が挙げられる。前記熱融着繊維としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル系繊維や複合繊維等が用いられる。
【0026】
前記吸収体は、吸水層のみから形成されていてもよいし、基材を有していてもよい。前記基材としては、ティッシュペーパー等の紙シート、透液性の不織布シート等が挙げられる。前記基材を有する吸収体としては、基材に吸水性材料が固定されている態様、吸水性材料を基材で包み、所望とする形状に成形した態様が挙げられる。
【0027】
(固定部材)
前記吸収性物品は、前記バックシートの外面側に、固定部材が設けられている。前記固定部材は、吸収性物品を使用者の下着や、使い捨ておむつの内側に固定するための部材である。前記固定部材としては、粘着材、フック部材を有する面ファスナーなどを挙げることができる。
【0028】
前記固定部材の平面視形状は特に限定されないが、円形、楕円形、矩形状、多角形状、帯状、ストライプ状などが挙げられる。固定部材が円形、楕円形、矩形状などの場合、固定部材の前後方向の長さは10mm~50mm以下が好ましく、幅は10mm~150mmが好ましい。固定部材を前後方向に延在する帯状に配置する場合、固定部材の幅は20mm~60mmが好ましい。固定部材の厚さは、5μm以上が好ましく、4000μm以下が好ましい。
【0029】
前記固定部材の個数は特に限定されず、1個でもよいし、複数個でもよい。また、前記固定部材の位置は特に限定されず適宜調節すればよい。前記固定部材は、バックシートの幅方向中央部を跨ぐように設置することが好ましい。
【0030】
前記固定部材の総面積は、前記バックシートの面積に対する面積率は、0.3%以上が好ましく、より好ましくは0.6%以上、さらに好ましくは0.9%以上であり、32%以下が好ましく、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは28%以下である。面積率が0.3%以上であれば下着等への固定が十分に発揮され、32%以下であれば下着等への固定時に意図しない付着を抑制できる。
【0031】
(接合領域)
前記バックシートの前記外側シートと前記内側シートとの層間は、前記外側シートと前記内側シートとが接合された接合領域の面積率が40%以上である。層間の40%以上が接合領域であることにより、バックシートを構成する外側シートと内側シートとのズレが抑制される。そのため、装着時に内側シートよりも肌面側に配置される吸収体が、所望とする位置からずれることが抑制される。
【0032】
前記接合領域における外側シートと内側シートとの接合方法としては、接着剤による接合、融着による接合等が挙げられる。前記接着剤としては、前記外側シートと内側シートとを接合できるものであれば特に限定されず、例えば、ホットメルト接着剤が挙げられる。
【0033】
前記接合領域は、前記層間において後述するずれ代領域以外の領域全てに設けてもよいし、前記層間のずれ代領域以外の領域に断続的に配置してもよい。この場合、前記層間のずれ代領域以外の領域における前記接合領域の面積率は、70%以上が好ましく、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。前記接合領域を断続的に配置する場合、接合領域の平面視形状としては、円形状、楕円形状、矩形状、多角形状、ストライプ状、スパイラル状等が挙げられる。なお、接合領域を断続的に設けた場合、接合領域の周囲に、前記外側シートと内側シートとが接合されていない非接合領域が存在する。しかし、断続的に設けられた接合領域によって、外側シートと内側シートとのずれが防止されるため、このような非接合領域はずれ代領域には含まれない。
【0034】
前記接合領域を断続的に配置する場合、最も近い接合領域間の距離は0.9cm以下が好ましく、より好ましくは0.7cm以下、さらに好ましくは0.5cm以下である。接合領域間の距離が0.9cm以下であれば、外側シートと内側シートとのズレがより抑制され、装着時に吸収体が所定の位置からずれることが一層抑制される。
【0035】
前記バックシートの層間における接合領域の面積率は、50%以上が好ましく、より好ましくは60%以上、さらに好ましくは70%以上である。前記層間における接合領域の面積率が大きいほど、不透液シートと外側シートとのズレを抑制でき、吸収性物品のズレを抑制できる。
【0036】
(ずれ代領域)
前記吸収性物品は、前記バックシートの外側シートと内側シートとの層間には、前記固定部材と厚さ方向で重なる領域(以下、「固定部材領域」と称する場合がある。)の少なくとも一部に、前記外側シートと内側シートとが接合されていないずれ代領域が設けられている。ずれ代領域内には、前記外側シートと内側シートとが接合された接合領域が存在しない。つまり、ずれ代領域では前記外側シートと内側シートとが接合されていないため、外側シートが内側シートに対して自由に変形できる。このような構成とすることで、ずれ代領域では、外側シートの動きが内側シートに伝達されなくなる。そのため、吸収性物品が固定された下着等が動いた際に、この動きが固定部材を介して外側シートに伝達されても、外側シートから内側シートに伝達される動きの量が低減される。よって、吸収性物品の動きが低減され、肌擦れが抑制される。
【0037】
前記層間には、前記固定部材と厚さ方向で重なる領域の50面積%以上に、前記ずれ代領域が設けられていることが好ましい。このような構成とすることで、外側シートから内側シートに伝達される動きの量をより低減でき、肌擦れが一層抑制される。前記ずれ代領域は、前記固定部材領域の70面積%以上に設けられていることが好ましく、90面積%以上に設けられていることがより好ましい。前記バックシートの層間においては、前記固定部材領域の全体に、前記ずれ代領域が設けられていることが特に好ましい。
【0038】
前記ずれ代領域は、前記層間において、前記固定部材と厚さ方向で重なる領域の外方へと延設されていることが好ましい。このような構成とすることで、ずれ代領域が延設された方向への外側シートの変形し得る領域が大きくなるため、肌擦れがより抑制できる。前記ずれ代領域は、前記層間において、前記固定部材領域の周囲の50%以上の範囲で外方へと延設されていることがより好ましく、周囲の80%以上の範囲で外方へと延設されていることがさらに好ましく、周囲の全体にわたり外方へと延設されていることがより好ましい。
【0039】
前記ずれ代領域が、固定部材領域の前後方向の外方へと延設される場合、延設されるずれ代領域の長さ(固定部材領域の前端から延設部分の前端までの距離、または、固定部材領域の後端から延設部分の後端までの距離)は、前後方向における固定部材の長さを100%としたとき、10%以上が好ましく、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上である。このような構成とすることで、前後方向への外側シートの変形し得る領域が大きくなるため、肌擦れがより抑制できる。なお、前記長さの上限は適宜設計すればよいが、100%が好ましい。
【0040】
前記ずれ代領域が、固定部材領域の幅方向の外方へと延設される場合、延設されるずれ代領域の長さ(固定部材領域の右側端から延設部分の右側端までの距離、または、固定部材領域の左側端から延設部分の左側端までの距離)は、幅方向における固定部材の長さを100%としたとき、10%以上が好ましく、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上である。このような構成とすることで、幅方向への外側シートの変形し得る領域が大きくなるため、肌擦れがより抑制できる。なお、前記長さの上限は適宜設計すればよいが、100%が好ましい。
【0041】
前記ずれ代領域は、前記固定部材領域に設けられた部分と、前記固定部材領域の外方へと延設されている部分との合計面積が、前記固定部材の面積の2倍以上であることが好ましく、より好ましくは4倍以上であり、16倍以下が好ましく、より好ましくは12倍以下、さらに好ましくは6倍以下である。固定部材を複数配置する場合は、各固定部材について固定部材の面積とずれ代領域の面積との比を求める。
【0042】
前記バックシートの層間は、前記外側シートと前記内側シートとが接合されていないずれ代領域の面積率が、60%以下が好ましく、より好ましくは50%以下、さらに好ましくは40%以下である。
【0043】
(サイドシート)
前記吸収性物品は、トップシートの肌面側の幅方向両側部に、立ち上がり可能に構成されたサイドシートが配置されていることが好ましい。前記サイドシートは、立ち上がり基部を基点に内側縁が立ち上がり可能に構成される。そして、装着時には、サイドシートの内側縁が使用者の肌に向かって立ち上がることで、横漏れが防止される。前記サイドシートは、不透液性のプラスチックフィルムや、撥水性不織布等から構成される。前記サイドシートは、幅方向内方端に起立用弾性部材が設けられており、この起立用弾性部材の収縮力によって立ち上がるように構成される。また、前記サイドシートは、前記立ち上がり基部において、トップシートと接合される。サイドシートとトップシートとの接合方法は特に限定されず、接着剤、融着などが挙げられる。
【0044】
(吸収性物品)
前記吸収性物品としては、失禁パッド、生理用ナプキン、使い捨ておむつ本体や生理用ナプキンに取り付けてしようする使い捨て補助パッドなどが挙げられる。失禁パッド、生理用ナプキンまたは使い捨て補助パッドの形状としては、砂時計型、ひょうたん型などが挙げられる。
【実施例】
【0045】
本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0046】
以下、本発明の吸収性物品について、使い捨て補助パッドを例に挙げ、
図1~9を参照して説明する。なお、図では、矢印xを幅方向とし、矢印yを前後方向と定義付ける。また、矢印x,yにより形成される面上の方向を、平面方向と定義付ける。また、矢印x,yにより形成される面に対して垂直方向が上下方向zを表す。
【0047】
(実施態様)
図1は、吸収性物品(使い捨て補助パッド)の平面図を表す。
図2は、
図1の吸収性物品の裏面図を表す。
図3は、
図1の吸収性物品のA-A線の模式的断面図を表す。
図4は、
図1の吸収性物品のB-B線の模式的断面図を表す。
【0048】
補助パッド1は、液透過性のトップシート2と、不透液性のバックシート3と、これらの間に配置された吸収体4とを有している。補助パッド1は、前記トップシート2の幅方向xの両側縁には、補助パッド1の前後方向yに延在するサイドシート5が接合している。サイドシート5は、液不透過性のプラスチックフィルムや撥水性不織布等により構成される。サイドシート5は、立ち上がり基部51においてトップシート2と接合されており、この立ち上がり基部51よりも内方側が立ち上がり可能な自由端となっている。サイドシート5の自由端には、フラップ用弾性部材6が設けられており、フラップ用弾性部材の収縮力によって立ち上がりフラップが形成される。前記バックシート3の外面側には、固定部材7が設けられている。この固定部材7と厚さ方向で重なる領域が固定部材領域71である。
【0049】
前記バックシート3は、外側シート31と前記外側シートのトップシート側に配置された内側シート32とを有する。前記外側シート31と内側シート32との層間は、接着剤33により接合されている。そして、前記層間は、前記外側シート31と前記内側シート32とが接合された接合領域の面積率が40%である。
【0050】
また、前記層間は、前記外側シート31と前記内側シート32とが接合されていないずれ代領域N(
図1中の斜線を付した領域)を有する。そして、前記固定部材領域71の全体にずれ代領域Nが設けられており、かつ、前記ずれ代領域Nが前記固定部材領域71の周囲全体にわたり外方へと延設されている。
【0051】
前記ずれ代領域Nは、前記固定部材領域71に設けられた部分と、前記固定部材領域71の外方へと延設されている部分との合計面積が、前記固定部材7の面積の4倍である。固定部材領域71の前後方向の両端縁において、延設されるずれ代領域の長さは、前後方向における固定部材の長さを100%としたとき、前端外方に50%、後端外方に50%である。固定部材領域71の幅方向の両端縁において、延設されるずれ代領域の長さは、幅方向における固定部材の長さを100%としたとき、右側端外方に50%、左側端外方に50%である。
【0052】
図5、6を参照して、前記吸収性物品の装着時の作用を説明する。
図5、6は吸収性物品の装着時を示す模式的断面図を表す。
吸収性物品1を使用する場合は、固定部材7を用いて下着8に固定する。ここで、下着8が移動した場合(
図6では吸収性物品1に対して下着8が右側に移動している。)、固定部材7は下着8に追随して移動する。しかし、固定部材領域71にずれ代領域Nが設けられているため、このずれ代領域Nの外側シート31は、自由に変形することができる。具体的には、
図6の固定部材7よりも右側の領域では外側シート31が収縮し、固定部材7よりも左側の領域では外側シート31が伸長している。そのため、下着8の移動が外側シート31の変形により吸収され、内側シート32の移動が抑制され、トップシート2や吸収体4の移動も抑制される。よって、下着8が移動した場合でもトップシート2の移動が抑制されるため、吸収性物品1による肌擦れが抑制される。
【0053】
図1、2では、補助パッド1および吸収体4の平面視形状を長方形状としているが、砂時計型、ひょうたん型でもよい。
図1、2では、前記固定部材7の平面視形状を矩形状としているが、円形状、楕円形状、多角形状でもよい。
図1、2では、前記固定部材7の個数を1つとしているが、2つ以上配置してもよい。
図1、2では、外側シート31と内側シート32はそれぞれ単層としているが、これらはそれぞれ複層であってもよい。
図1、2では、外側シート31と内側シート32は前記ずれ代領域N以外の領域には全て接着剤33が配置されているが、この接着剤33は断続的に配置してもよい。
【0054】
(他の実施態様)
図7~9を参照して、他の実施形態を説明する。
図7~9は、吸収性物品の他の実施形態を示す裏面図である。なお、他の実施形態において、固定部材7およびずれ代領域N以外の部材については
図1~4と同様であるため、図および説明を省略する。
【0055】
図7の態様では、矩形状の固定部材7が1つ配置されている。前記固定部材領域71の全体にずれ代領域Nが設けられており、かつ、前記ずれ代領域Nが前記固定部材領域71の周囲全体にわたり外方へと延設されている。また、ずれ代領域Nはバックシート3の幅方向全体に延設されている。
【0056】
図7の態様では、前記ずれ代領域Nは、前記固定部材領域71に設けられた部分と、前記固定部材領域71の外方へと延設されている部分との合計面積が、前記固定部材7の面積の16倍である。固定部材領域71の前後方向の両端縁において、延設されるずれ代領域の長さは、前後方向における固定部材の長さを100%としたとき、前端外方に100%、後端外方に100%である。固定部材領域71の幅方向の両端縁において、延設されるずれ代領域の長さは、幅方向における固定部材の長さを100%としたとき、右側端外方に215%、左側端外方に215%である。
【0057】
図8の態様では、帯状の固定部材7が1つ配置されている。この固定部材7は、バックシート3の前後方向の全体に連続的に配置されている。前記固定部材領域71の全体にずれ代領域Nが設けられており、かつ、前記ずれ代領域Nが前記固定部材領域71の幅方向両側にて外方へと延設されている。
【0058】
図8の態様では、前記ずれ代領域Nは、前記固定部材領域71に設けられた部分と、前記固定部材領域71の外方へと延設されている部分との合計面積が、前記固定部材7の面積の2倍である。固定部材領域71の幅方向の両端縁において、延設されるずれ代領域の長さは、幅方向における固定部材の長さを100%としたとき、右側端外方に50%、左側端外方に50%である。
【0059】
図9の態様では、矩形状の固定部材7が1つ配置されている。前記固定部材領域71は、前後方向に2等分され、前後方向の外方側が接合領域となっており、前後方向の内方側(中央側)がずれ代領域Nとなっている。そのため、前記固定部材領域71の50面積%にずれ代領域Nが設けられており、固定部材領域71の50面積%は接合領域となっている。
【0060】
また、前記固定部材領域71におけるずれ代領域Nが、前記固定部材領域71の外方に延設されている。具体的には、固定部材領域71の前後方向の端縁のうち、内方側の端縁でずれ代領域Nが外方へと延設されている。また、固定部材領域71の幅方向の両端縁では、前後方向の内方側が、全長の50%にわたり、ずれ代領域Nが外方へと延設されている。
【0061】
図9の態様では、前記ずれ代領域Nは、前記固定部材領域71に設けられた部分と、前記固定部材領域71の外方へと延設されている部分との合計面積が、前記固定部材7の面積の4倍である。固定部材領域71の前後方向において、延設されるずれ代領域の長さは、前後方向における固定部材の長さを100%としたとき、後端外方に150%である。固定部材領域71の幅方向の両端縁において、延設されるずれ代領域の長さは、幅方向における固定部材の長さを100%としたとき、右側端外方に50%、左側端外方に50%である。
【符号の説明】
【0062】
1:吸収性物品(補助パッド)、2:トップシート、3:バックシート、31:外側シート、32:内側シート、33:接着剤、4:吸収体、5:サイドシート、6:フラップ用弾性部材、7:固定部材、71:固定部材領域、8:下着、N:ずれ代領域