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特許7728275高圧電気分解を用いる二酸化炭素の圧縮方法
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  • 特許-高圧電気分解を用いる二酸化炭素の圧縮方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-14
(45)【発行日】2025-08-22
(54)【発明の名称】高圧電気分解を用いる二酸化炭素の圧縮方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/04 20210101AFI20250815BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20250815BHJP
   C10L 3/08 20060101ALI20250815BHJP
【FI】
C25B1/04
C25B9/00 A
C10L3/08
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022555798
(86)(22)【出願日】2021-03-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-26
(86)【国際出願番号】 EP2021056682
(87)【国際公開番号】W WO2021185836
(87)【国際公開日】2021-09-23
【審査請求日】2024-01-19
(31)【優先権主張番号】20163771.7
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520100103
【氏名又は名称】ハイメット アーペーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ビシュワス, サモン
【審査官】永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-342767(JP,A)
【文献】特開2019-90084(JP,A)
【文献】米国特許第3852180(US,A)
【文献】国際公開第2015/059507(WO,A1)
【文献】国際公開第1999/020713(WO,A1)
【文献】特表2015-530873(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B1/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素、COを圧縮する方法であって、
a)高圧電気分解装置(3)を使用して高圧酸素ガス流(11)及び高圧水素ガス流(9)を生成することと、
b)往復動部材(5d)を備える往復動式容積型ポンプ(5)にCO流(6)を供給し、往復動部材(5d)を作動させ、CO(6)を圧縮して高圧CO流(15)を得るために、高圧酸素ガス流(11)を駆動ガスとして供給することと
を含む方法。
【請求項2】
c)高圧CO(15)を高圧水素ガス(9)と反応させて、合成炭化水素ガス(13)を得ることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第2往復動部材(17d)を備える第2往復動式容積型ポンプ(17)に水流(16)を供給し、第2往復動部材(17d)を作動させ、水を圧縮して圧縮水流(19)を得るために、高圧酸素ガス流(11)を駆動ガスとして供給することを含む、請求項1から2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
第2往復動式容積型ポンプ(17)は、ピストンポンプ又はプランジャポンプである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
高圧酸素ガス流(11)及び高圧水素ガス流(9)を生成するために、圧縮水流(19)を電解質として高圧電気分解装置(3)に供給することを含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
高圧は少なくとも35バールの圧力である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
往復動式容積型ポンプ(5)は、ピストンポンプ又はプランジャポンプである、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
炭酸カルシウム(23)の熱分解によって、工程b)で供給するためのCO流(6)を生成することを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
合成炭化水素ガス生成システム(1-1、1-2、1-3)であって、
酸素ガス出口(3c)及び水素ガス出口(3b)を有する高圧電気分解装置(3)であって、高圧電気分解装置(3)は、酸素ガス出口(3c)を通って排出された高圧酸素ガス流(11)及び水素ガス出口(3b)を通って排出された高圧水素ガス流(9)を生成するように構成されている、高圧電気分解装置(3)と、
CO流(6)を受け取るように構成されたCO入口(5a)、
CO出口(5c)、
酸素ガス出口(3c)に接続された高圧ガス入口(5b)、及び
高圧酸素ガス(11)によって駆動ガスとして作動され、CO(6)を圧縮してCO出口(5c)を通って排出された高圧CO流(15)を得るように構成された往復動部材(5d)
を備える往復動式容積型ポンプ(5)と
を備える、合成炭化水素ガス生成システム(1-1、1-2、1-3)。
【請求項10】
CO出口(5c)及び水素ガス出口(3b)に接続された反応器(7)を備え、反応器(7)は、高圧CO(15)と高圧水素ガス(9)とを反応させて合成炭化水素ガス(13)を得るように構成されている、請求項9に記載の合成炭化水素ガス生成システム(1-1、1-2、1-3)。
【請求項11】
水流(16)を受け取るように構成された水入口(17a)、
水出口(17c)と、
酸素ガス出口(3c)に接続された第2高圧ガス入口(17b)、及び
高圧酸素ガス(11)によって作動され、水(16)を圧縮して水出口(17c)を通って排出される高圧水流(19)を得るように構成された第2往復動部材(17d)
を含む、第2往復動式容積型ポンプ(17)を備える、請求項9又は10に記載の合成炭化水素ガス生成システム(1-2、1-3)。
【請求項12】
高圧電気分解装置(3)は電解質入口(3a)を有し、水出口(17c)は電解質入口(3a)に接続されて、高圧水(19)を電解質として高圧電気分解装置(3)に供給する、請求項11に記載の合成炭化水素ガス生成システム(1-2、1-3)。
【請求項13】
高圧は少なくとも35バールの圧力である、請求項9から12のいずれかに記載の合成炭化水素ガス生成システム(1-1、1-2、1-3)。
【請求項14】
往復動式容積型ポンプ(5)は、ピストンポンプ又はプランジャポンプである、請求項9から13のいずれか一項に記載の合成炭化水素ガス生成システム(1-1、1-2、1-3)。
【請求項15】
炭酸カルシウムを熱分解するように構成された熱分解反応チャンバ(21)を備え、熱分解反応チャンバ(21)は、往復動式容積型ポンプ(5)のCO入口(5a)に接続された熱分解反応チャンバ出口(21b)を備える、請求項9から14のいずれか一項に記載の合成炭化水素ガス生成システム(1-3)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、電気分解に関する。
【背景技術】
【0002】
水の電気分解は、電気によって水を水素ガスと酸素ガスに変換するプロセスである。このようにして得られた水素ガスを炭素と反応させてメタンガスを得ることができる。国際公開第2019/057764号は、このタイプのシステムを開示している。米国特許出願公開第2019/0210872号明細書に開示されているように、水素ガスと混合するために、二酸化炭素を使用することも知られている。
【発明の概要】
【0003】
メタンガスを生成する際には、水素ガスと二酸化炭素とを高圧下で反応させ、反応をより効率的にすることが望ましい。反応を高圧及び高熱で行う場合、最大98%の効率を得ることができる。
【0004】
効率の向上により、反応器をより小さくすることができるが、それでもより大きな反応器と同じ生産量を提供することができる。
【0005】
電気分解装置から排出される水素ガス流は、高圧電気分解装置によって生成された場合には、既に高圧を有している。したがって、二酸化炭素との反応のために水素ガスをさらに圧縮する必要はない。しかしながら、二酸化炭素を圧縮しなければならない場合があり、これはエネルギーを消費する。
【0006】
上記に鑑みて、本開示の一般的な目的は、上述の問題を解決するか、又は少なくとも軽減する二酸化炭素を圧縮する方法を提供することである。
【0007】
別の目的は、合成炭化水素ガス生成システムを提供することである。
【0008】
したがって、本開示の第1の態様によれば、二酸化炭素COを圧縮する方法であって、a)高圧電気分解装置を使用して高圧酸素ガス流及び高圧水素ガス流を生成することと、b)往復動部材を備える往復動式容積型ポンプにCO流を供給し、往復動部材を作動させ、COを圧縮して高圧CO流を得るために、高圧酸素ガス流を駆動ガスとして供給することとを含む方法が提供される。
【0009】
したがって、高圧酸素ガスは、COを加圧するために使用される。したがって、高圧電気分解装置によって生成されたエネルギーの大部分が利用される。COを圧縮するために追加の外部エネルギーは必要とされない。したがって、よりエネルギー効率の良いプロセスが得られる。
【0010】
COは、COガスであってもよい。
【0011】
一実施形態は、c)高圧COを高圧水素ガスと反応させて合成炭化水素ガスを得ることを含む。したがって、合成炭化水素ガスの生成は、高圧電気分解装置を使用する場合により効率的にすることができる。
【0012】
合成炭化水素ガスは、メタンガスであってもよい。
【0013】
一実施形態は、第2往復動部材を備える第2往復動式容積型ポンプに水流を供給し、第2往復動部材を作動させ、水を圧縮して圧縮水流を得るために、高圧酸素ガス流を駆動ガスとして供給することを含む。
【0014】
一実施形態によれば、第2往復動式容積型ポンプは、ピストンポンプ又はプランジャポンプである。第2往復動部材は、ピストン又はプランジャであってもよい。
【0015】
一実施形態は、高圧酸素ガス流及び高圧水素ガス流を生成するために、圧縮水流を電解質として高圧電気分解装置に供給することを含む。
【0016】
したがって、高圧電気分解装置によって生成された高圧酸素ガスは、電解質として使用される水を加圧するためにフィードバックされ、使用され得る。これはまた、プロセスのエネルギー効率が向上することも確実にする。
【0017】
一実施形態によれば、高圧とは少なくとも35バールの圧力である。高圧とは、例えば、少なくとも50バール、少なくとも100バール、少なくとも200バール、少なくとも300バール、少なくとも350バール、又は少なくとも400バールの圧力であり得る。
【0018】
一実施形態によれば、往復動式容積型ポンプは、ピストンポンプ又はプランジャポンプである。往復動部材は、ピストン又はプランジャであってもよい。
【0019】
一実施形態は、炭酸カルシウムの熱分解によって、工程b)における供給のためのCO流を生成することを含む。
【0020】
これにより、高圧水素ガスと反応させるためのCOを環境に優しい方法で得ることができる。これは、大規模な合成炭化水素ガス生成において特に有益であり得る。
【0021】
熱分解反応は、石灰、すなわち酸化カルシウムを副生成物として残す。酸化カルシウムは、周囲空気と接触すると空気から二酸化炭素を吸収することができる。これにより、サイクルがカーボンニュートラルになる。したがって、合成炭化水素ガス又は合成炭化水素ガスからの燃料を生成するために本方法を使用することにより、ガス/燃料を使用して生成される二酸化炭素が少なくなり、石灰を生成することにより、放出された場合に大気から同じ量の二酸化炭素を吸収するであろう。
【0022】
酸化カルシウムは、セメント生成又は同様の産業用途に使用され得る。この場合、合成炭化水素ガスの生成プロセスはカーボンネガティブとなるであろう。通常、セメント工場では、石灰石から石灰を生成するために化石燃料が使用される。化石燃料及び石灰石の焼成によって、二酸化炭素が空気中に放出される。グリーンライムを使用すると、燃料の燃焼並びに石灰石の燃焼からの二酸化炭素排出を削減することができる。したがって、副生成物の石灰、すなわちグリーンライムを使用すると、ネガティブカーボンフットプリントが生じる。
【0023】
あるいは、副生成物の石灰を海に放出して、酸性海水をよりアルカリ性にすることができる。したがって、水のpH値は再び酸性からアルカリ性に戻る。これは、海水がその後、pH値を正常に戻しながら自然なプロセスとして空気からより多くの二酸化炭素を吸収することができ、それによって海洋環境、特にわずかにアルカリ性の水でしか成長しない海の生物を助けることを意味する。
【0024】
炭酸カルシウムは、石灰石に含有されてもよい。
【0025】
石灰石は、大気からの二酸化炭素を非常によく吸収する。10キログラムの石灰石は、熱分解反応において約9キログラムの二酸化炭素を形成し得る。したがって、石灰石は、非常に優れた二酸化炭素源である。
【0026】
本開示の第2の態様によれば、合成炭化水素ガス生成システムが提供され、この合成炭化水素ガス生成システムは、酸素ガス出口及び水素ガス出口を有する高圧電気分解装置であって、高圧電気分解装置は、酸素ガス出口を通って排出された高圧酸素ガス流及び水素ガス出口を通って排出された高圧水素ガス流を生成するように構成されている、高圧電気分解装置と、CO流を受け取るように構成されたCO入口と、CO出口と、酸素ガス出口に接続された高圧ガス入口と、高圧酸素ガスによって駆動ガスとして作動され、COを圧縮してCO出口を通って排出された高圧CO流を得るように構成された往復動部材を備える往復動式容積型ポンプとを備える。
【0027】
一実施形態は、CO出口及び水素ガス出口に接続された反応器を備え、この反応器は、高圧COと高圧水素ガスとを反応させて合成炭化水素ガスを得るように構成されている。
【0028】
一実施形態は、水流を受け取るように構成された水入口と、水出口と、酸素ガス出口に接続された第2高圧ガス入口と、高圧酸素ガスによって作動され、水を圧縮して水出口を通って排出される高圧水流を得るように構成された第2往復動部材を含む、第2往復動式容積型ポンプを備える。
【0029】
一実施形態によれば、高圧電気分解装置は電気分解水入口を有し、水出口は電気分解水入口に接続されて、電解質として高圧水を高圧電気分解装置に供給する。
【0030】
一実施形態によれば、高圧とは少なくとも35バールの圧力である。
【0031】
一実施形態によれば、往復動式容積型ポンプは、ピストンポンプ又はプランジャポンプである。
【0032】
一実施形態は、炭酸カルシウムを熱分解するように構成された熱分解反応チャンバを備え、この熱分解反応チャンバは、往復動式容積型ポンプのCO入口に接続された熱分解チャンバ出口を備える。熱分解反応チャンバは、炭酸カルシウムをCOと酸化カルシウムとに熱分解するように構成されている。
【0033】
一実施形態は、炭酸カルシウム又は石灰石の熱分解温度以上の温度まで熱分解反応チャンバを加熱するように構成された加熱装置を備える。
【0034】
一般に、特許請求の範囲で使用される全ての用語は、本明細書で特に明示的に定義されない限り、技術分野におけるそれらの通常の意味に従って解釈されるべきである。「1つの(a、an、the)要素、装置、構成要素、手段、工程など」への全ての言及は、特に明記しない限り、要素、装置、構成要素、手段、工程などの少なくとも1つの例を指すものとして広く解釈されるべきである。本明細書に開示される任意の方法の工程は、明示的に述べられていない限り、開示された正確な順序で実行される必要はない。
【0035】
ここで、本発明の概念の例を、添付の図面を参照して例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1図1は、合成炭化水素ガス生成システムの一例を模式的に示す図である。
図2図2は、合成炭化水素ガス生成システムの別の例を模式的に示す図である。
図3図3は、合成炭化水素ガス生成システムの別の例を模式的に示す図である。
図4図4は、COの圧縮方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に、本発明の特定の実施形態が示されている添付の図面を参照して、本発明を以下により完全に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化されてよく、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全であり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように、例として提供される。明細書全体を通して、同様の番号は同様の構成要素を指す。
【0038】
図1は、合成炭化水素ガス生成システム1-1の一例を示す。合成炭化水素ガス生成システム1-1は、高圧電気分解装置3と、往復動式容積型ポンプ5と、反応器7とを備える。高圧電気分解装置3は、アルカリ水高圧電気分解装置であってもよい。
【0039】
高圧電気分解装置3は、電解質入口3aと、水素ガス出口3bと、酸素ガス出口3cとを有する。電気分解装置3は、積層構造に配置された複数の電解槽を備えてもよい。電解質入口3aは、電解質入口3aを介して受け取った電解質が電解槽に流入することができるように、電解槽と流体連通している。各電解槽は、電解質から高圧水素ガス及び高圧酸素ガスを生成するためのカソード及びアノードを含む。全ての電解槽からの高圧水素ガスは、高圧水素ガス流として高圧電気分解装置3の内部に回収される。水素ガス出口3bは、高圧電気分解装置3から高圧水素ガス流9を排出するように構成されている。全ての電解槽からの高圧酸素ガスは、高圧酸素ガス流として高圧電気分解装置3の内部に回収される。酸素ガス出口3cは、高圧電気分解装置3から高圧酸素ガス流11を排出するように構成されている。
【0040】
高圧電気分解装置3は、欧州特許第3543375号に記載されているもののような圧力補償装置を備えてもよい。圧力補償装置は、高圧水素ガス流9及び高圧酸素ガス流11の生成によって生じる高圧電気分解装置3内の圧力差を等しくするように構成されている。
【0041】
高圧電気分解装置3には、電解質として高圧水流19が供給されてもよい。水は、アルカリ水であり得る。高圧電気分解装置3は、電解質入口3aを介して高圧水流を供給する電解質源に接続されるように構成されている。この例では、高圧水は、例えば、ポンプ又は圧縮機によって生成され得る。
【0042】
往復動式容積型ポンプ5は、CO入口5aと、高圧ガス入口5bと、CO出口5cとを備える。CO入口5aは、CO源に接続されるように構成されている。これにより、往復動式容積型ポンプ5は、CO流6を受け取ることができる。高圧ガス入口5bは、高圧電気分解装置3の酸素ガス出口3cに接続されている。したがって、往復動式容積型ポンプ5は、高圧電気分解装置3から高圧酸素ガス流11を受け取るように構成されている。
【0043】
CO出口5cは、反応器7に接続されている。特に、反応器7はC0反応器入口7bを有し、CO出口5cはCO反応器入口7bに接続されている。
【0044】
往復動式容積型ポンプ5は、往復動式容積型ポンプ5の内部を往復動するように構成されたピストン又はプランジャなどの往復動部材5dを備える。高圧酸素ガス流11は、往復動部材5dを作動させて、CO入口5aを介して往復動式容積型ポンプ5に入るCO流6を圧縮するための駆動ガスとして作用するように構成されている。CO出口5cは、高圧CO流15を反応器7に排出するように構成されている。この目的のために、高圧酸素ガス流11は、CO流6を圧縮して高圧CO流15を得るために使用される。
【0045】
高圧CO流15は、高圧COガス流であってもよい。
【0046】
反応器7は、高圧電気分解装置3の水素ガス出口3bに接続された水素ガス入口7aを有する。反応器7は、高圧CO流15を高圧水素流9と反応させて、メタンなどの合成炭化水素ガス13を得るように構成されている。反応器7は、合成炭化水素ガス流13を排出するように構成された反応器出口7cを有する。
【0047】
反応器7は、高温下で高圧水素ガス9が高圧CO 15と反応するように、電気ヒータを備え得るか、及び/又は発電プラント又は製造プラントからの廃熱を利用するように構成され得る反応器ヒータを備えてもよい。反応器ヒータは、少なくとも150℃の温度まで、180~240℃の範囲の温度など、例えば150~250℃の範囲の温度まで、反応器7を加熱するように構成されてもよい。
【0048】
反応器7は、酸化鉄系触媒などの触媒を含んでもよい。
【0049】
高圧加熱下で水素ガスとCOとを反応させることにより、約98%の合成炭化水素ガスの生成効率を得ることができる。さらに、合成炭化水素ガスの生成は、特に炭酸カルシウムをCO源として使用することと組み合わせて、費用効率を25~35%向上することができる。
【0050】
図2は、合成炭化水素ガス生成システム1-2の別の例を示す。合成炭化水素ガス生成システム1-2は、合成炭化水素ガス生成システム1-1と同様である。しかしながら、合成炭化水素ガス生成システム1-2は、第2往復動式容積型ポンプ17を備える。第2往復動式容積型ポンプ17は、水入口17aと、第2高圧ガス入口17bと、水出口17cとを備える。
【0051】
第2往復動式容積型ポンプ17は、第2往復動式容積型ポンプ17の内部を往復動するように構成された、ピストン又はプランジャなどの第2往復動部材17dを備える。高圧酸素ガス流11は、第2往復動部材17dを作動させて、水入口17aを介して第2往復動式容積型ポンプ17に入る水流16を圧縮するための駆動ガスとして作用し、高圧水流19を得るように構成されている。水出口17cは、高圧電気分解装置3の電解質入口3aに接続されている。水出口17cは、高圧電気分解装置3に高圧水流19を排出するように構成されている。したがって、高圧酸素ガス流11は、水流16を圧縮して高圧水流19を得るために使用される。この例では、高圧酸素流11は、上述したように、水流16を圧縮し、CO流6を圧縮するために使用される。
【0052】
図3は、合成炭化水素ガス生成システム1-3の別の例を示す。合成炭化水素ガス生成システム1-3は、合成炭化水素ガス生成システム1-1又は合成炭化水素ガス生成システム1-2として構成され得る。しかしながら、合成炭化水素ガス生成システム1-3は、熱分解反応チャンバ21も備える。熱分解反応チャンバ21は、真空チャンバであってもよい。熱分解反応チャンバ21は、炭酸カルシウム23を受け取るように構成されている。炭酸カルシウム23は、石灰石に含有されてもよい。したがって、熱分解反応チャンバ21は、石灰石を受け取るように構成されてもよい。
【0053】
合成炭化水素ガス生成システム1-3は、加熱装置21aを備える。加熱装置21aは、熱分解反応チャンバ21を加熱するように構成されている。加熱装置21aは、熱分解反応チャンバ21内に配置された炭酸カルシウム23又は石灰石を、炭酸カルシウム23又は石灰石の熱分解温度以上の温度に加熱するように構成されてもよい。
【0054】
加熱装置21aは、例えば、電極を含む電気加熱装置であり得る。合成炭化水素ガス生成システム1-3は、電気加熱装置に電力を供給するように構成された太陽電池及び/又は風力タービン及び/又は波エネルギー変換器などの1つ以上の再生可能エネルギー源を含み得る。あるいは、加熱装置21aは、燃料ベースの加熱装置であり得る。
【0055】
熱分解反応チャンバ21は、熱分解反応チャンバ21で発生したCOを排出するように構成されている熱分解反応チャンバ出口21bを備える。この例では、熱分解反応チャンバ出口21bは、CO入口5aに接続されている。CO流6は、熱分解反応チャンバ21から往復動式容積型ポンプ5のCO入口5aに導かれる。CO流6は、上述のように往復動式容積型ポンプ5によって圧縮される。
【0056】
図4は、合成炭化水素ガス生成システム1-1、1-2、1-3による合成炭化水素ガスを生成する方法を示す。
【0057】
熱分解反応チャンバ21が使用される場合、例えば、石灰石の形態の炭酸カルシウム23は、最初に熱分解反応器チャンバ21に配置される。次いで、真空又は周囲圧力より低い圧力が、熱分解反応器チャンバ21内に生成され得る。
【0058】
炭酸カルシウム23は、少なくとも炭酸カルシウムの熱分解温度に相当する温度まで加熱される。この温度は、800℃超、例えば少なくとも840℃など、600℃以上であってもよい。これにより、熱分解反応器チャンバ21内の炭酸カルシウム23は、熱分解反応又は焼成においてCOを放出する。熱分解反応器チャンバ21内では、熱分解反応の副生成物として、酸化カルシウム又は生石灰が形成される。
【0059】
熱分解反応で形成されたCOは、熱分解反応チャンバ出口21bを介して熱分解反応器チャンバ21から排出又は流出し、往復動式容積型ポンプ5に流入する。
【0060】
全ての炭酸カルシウム23が熱分解反応で反応すると、炭酸カルシウム23の約90%が二酸化炭素となり、残りが固体の酸化カルシウムとなる。副生成物の酸化カルシウムは、この時点で熱分解反応チャンバ21内に配置されており、全ての炭酸カルシウム23が反応したときに除去することができる。酸化カルシウムは、例えばセメントを製造するために使用されてもよく、又は海の酸性を中和するために海に放出されてもよい。ここで、二酸化炭素と唯一の副生成物である酸化カルシウムの両方を十分に利用することができる。
【0061】
上述の熱分解反応チャンバ21及び炭酸カルシウム23以外の別のCO源が使用される場合、CO流6は、CO源からCO入口5aを介して往復動式容積型ポンプ5に流入する。
【0062】
工程a)において、高圧酸素ガス流11及び高圧水素ガス流9は、高圧電気分解装置3によって生成される。高圧酸素ガス流11及び高圧水素流9は、電解質入口3aを介して高圧電気分解装置3に入る高圧水流19の電気分解によって生成される。
【0063】
工程b)において、高圧酸素ガス流11は、往復動式容積型ポンプ5に供給される。高圧酸素流11は、往復動式容積型ポンプ5の高圧ガス入口5bに供給される。CO流6もまた、往復動式容積型ポンプ5に供給される。高圧酸素ガス11は、往復動部材5dを作動させるための駆動ガスとして用いられる。これにより、往復動式容積型ポンプ5内のCO 6は、往復動式容積型ポンプ5によって圧縮され、排出される。
【0064】
高圧水素ガス流9は、反応器7に供給される。
【0065】
工程c)において、高圧CO 15は、反応器7中で高圧水素ガス9と反応する。これにより、合成炭化水素ガス13が得られる。
【0066】
工程c)は、高圧COを少なくとも150℃の温度、例えば150~250℃の範囲の温度、又は180~240℃の範囲の温度で高圧水素ガス9と反応させることを含み得る。
【0067】
合成炭化水素ガス13、すなわちメタンガスは、そのまま使用されてもよく、例えばメタノール、ディーゼル又はガソリンなどの液体燃料を得るために加工されてもよい。
【0068】
合成炭化水素ガス生成システム1-3を利用する例では、高圧酸素ガス11はまた、水流16を圧縮して高圧水流19を得るために第2往復動式容積型ポンプ17にフィードバックされる。
【0069】
高圧酸素ガスを駆動ガスとして使用する代わりに、特許請求の範囲の範囲外であるが、高圧空気などの任意の他の高圧ガスを、往復動式容積型ポンプ及び/又は第2往復動式容積型ポンプの往復動部材を作動させるために使用してもよい。
【0070】
本発明の概念は、主にいくつかの例を参照して上述されている。しかしながら、当業者によって容易に理解されるように、上記で開示されたもの以外の他の実施形態が、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の概念の範囲内で等しく可能である。
図1
図2
図3
図4