(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-15
(45)【発行日】2025-08-25
(54)【発明の名称】水素輸送システムの管理装置
(51)【国際特許分類】
F17D 1/04 20060101AFI20250818BHJP
【FI】
F17D1/04
(21)【出願番号】P 2025106138
(22)【出願日】2025-06-24
(62)【分割の表示】P 2025075421の分割
【原出願日】2025-04-30
【審査請求日】2025-06-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524149780
【氏名又は名称】水素柱上パイプライン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161827
【氏名又は名称】竹田 淳
(72)【発明者】
【氏名】久野 博史
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-244544(JP,A)
【文献】特開2024-124808(JP,A)
【文献】特許第7420272(JP,B2)
【文献】特開2022-129264(JP,A)
【文献】特開2011-208528(JP,A)
【文献】特開2023-102205(JP,A)
【文献】特開2024-062165(JP,A)
【文献】特開2023-044745(JP,A)
【文献】「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集 保存事業」,[online],[text],[取得日 2025 年 6 月 5 日],2025年03月23日,取得先 <https://web.archive.org/web/20250322013516/https://www.hitachihyoron.com/jp/papers/2024/10/01/index.html>
【文献】「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集 保存事業」,[online],[text],[取得日 2025 年 6 月 5 日],2024年07月30日,取得先 <https://web.archive.org/web/20240729023030/https://overhead-hydropipe.co.jp/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散型エネルギー源の余剰電力を利用して水素を製造する水素製造装置と、
複数の送電鉄塔に架設され、前記水素製造装置により製造された水素を輸送する基幹水素パイプラインと、
前記基幹水素パイプラインで輸送された水素を貯蔵し、ローカル水素パイプラインを介して少なくとも1つの需要地に水素を輸送する水素貯蔵装置と、
を備えた水素輸送システムを管理する管理装置であって、
前記水素輸送システムにより水素の輸送を受けた水素ガスタービンによる発電量を検出する水素発電量検出部と、
前記水素発電量検出部により検出された発電量と前記需要地に輸送された水素の量に基づいた発電量との合計を火力発電で発電したと仮定した際の二酸化炭素排出量を二酸化炭素排出削減量として計算する二酸化炭素排出削減量計算部と、
を備えた水素輸送システムの管理装置。
【請求項2】
前記二酸化炭素排出削減量計算部は、火力発電の種類に応じた単位発電量当たりの二酸化炭素排出量を選択し、選択された単位発電量当たりの二酸化炭素排出量に基づいて、二酸化炭素排出削減量を計算する請求項1に記載の水素輸送システムの管理装置。
【請求項3】
前記二酸化炭素排出削減量計算部は、火力発電の過去の運転実績データに基づいて、単位発電量当たりの二酸化炭素排出量を補正し、補正後の単位発電量当たりの二酸化炭素排出量に基づいて、二酸化炭素排出削減量を計算する請求項1に記載の水素輸送システムの管理装置。
【請求項4】
前記二酸化炭素排出削減量計算部により計算された二酸化炭素排出削減量を外部システムに通知する通知部、
を備えた請求項1に記載の水素輸送システムの管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水素輸送システムの管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電力管理装置を開示する。当該電力管理装置によれば、分散型エネルギー源から系統に逆潮流させる電力を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、分散型エネルギー源から逆潮流させる電力が抑制されると、分散型エネルギー源から本来出力できるはずの電力を無駄にすることになる。このため、分散型エネルギー源からの余剰電力を有効活用するシステムが望まれる。
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。本開示の目的は、分散型エネルギー源からの余剰電力を有効活用することができる水素輸送システムの管理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る水素輸送システムの管理装置は、分散型エネルギー源の余剰電力を利用して水素を製造する水素製造装置と、複数の送電鉄塔に架設され、前記水素製造装置により製造された水素を輸送する基幹水素パイプラインと、前記基幹水素パイプラインで輸送された水素を貯蔵し、ローカル水素パイプラインを介して少なくとも1つの需要地に水素を輸送する水素貯蔵装置と、を備えた水素輸送システムを管理する管理装置であって、前記水素輸送システムにより水素の輸送を受けた水素ガスタービンによる発電量を検出する水素発電量検出部と、前記水素発電量検出部により検出された発電量と前記需要地に輸送された水素の量に基づいた発電量との合計を火力発電で発電したと仮定した際の二酸化炭素排出量を二酸化炭素排出削減量として計算する二酸化炭素排出削減量計算部と、を備えた。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、水素輸送システムの管理装置は、分散型エネルギー源の余剰電力を利用して水素を製造する水素製造装置と、複数の送電鉄塔に架設され、前記水素製造装置により製造された水素を輸送する基幹水素パイプラインと、前記基幹水素パイプラインで輸送された水素を貯蔵し、ローカル水素パイプラインを介して少なくとも1つの需要地に水素を輸送する水素貯蔵装置と、を備えた水素輸送システムを管理する管理装置であって、前記水素輸送システムにより水素の輸送を受けた水素ガスタービンによる発電量を検出する水素発電量検出部と、前記水素発電量検出部により検出された発電量と前記需要地に輸送された水素の量に基づいた発電量との合計を火力発電で発電したと仮定した際の二酸化炭素排出量を二酸化炭素排出削減量として計算する二酸化炭素排出削減量計算部と、を備えた。このため、分散型エネルギー源からの余剰電力を有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施の形態1における水素輸送システムを含むエネルギーシステムの構成図である。
【
図2】実施の形態1における水素輸送システムの要部の斜視図である。
【
図3】実施の形態1における水素輸送システムの要部の平面図である。
【
図4】実施の形態1における水素輸送システム3を含むエネルギーシステムの管理方法の例を説明するブロック図である。
【
図5】実施の形態1における水素輸送システムを含むエネルギーシステムの管理装置のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態について添付の図面に従って説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
実施の形態1.
図1は実施の形態1における水素輸送システムを含むエネルギーシステムの構成図である。
【0011】
図1に示されるように、エネルギーシステムは、電力系統1と分散型エネルギー源2と水素輸送システム3とを備える。これらは、電力および水素といったエネルギー資源の安定供給、効率的利用、ならびに再生可能エネルギーの導入拡大といった社会的要請に対応するために統合的に設計される。
【0012】
電力系統1は、発電設備1Aと変電設備1Bと送電設備1Cとを備える。これにより、発電された高圧電力を各需要地に安定して供給するための一連のエネルギー伝送インフラが構築される。電力系統1は、中央集約型の発電源と地域分散型の供給網を連携させることで、エネルギーの安定供給と効率的な運用を両立させる。
【0013】
例えば、発電設備1Aは、火力発電タービン、水力発電タービン等である。発電設備1Aは、水素ガスタービンHも含む。発電設備1Aは、高圧電力を生成する機能を備える。特に、水素ガスタービンHは、脱炭素化社会の実現に向けた新しい発電手段として注目され、水素エネルギーの有効利用を促進する。
【0014】
変電設備1Bは、発電設備1Aから離れた位置に設けられる。変電設備1Bは、入力された高圧電力を低圧電力に変換する機能を備える。変電設備1Bは、分散型エネルギー源2の付近の需要地に低圧電力を供給する機能を備える。変電設備1Bは、分散型エネルギー源2の余剰電力を検出する機能を備える。変電設備1Bは、分散型エネルギー源2の余剰電力を検出した際に、当該余剰電力を送電設備1Cに供給せずに、他の装置に供給する機能を備える。変電設備1Bは、電圧変換の他、電流制御、保護リレー、測定装置等を含み、電力系統1の安定運用にも寄与する。
【0015】
送電設備1Cは、複数の送電鉄塔1Dと複数の高圧送電線1Eと架空地線1Fとを備える。これにより、発電設備1Aで生成された高圧電力は、変電設備1Bまで効率的かつ安全に供給する。
【0016】
複数の送電鉄塔1Dは、発電設備1Aと変電設備1Bとの間において間隔をあけて設けられる。複数の高圧送電線1Eの上流側は、発電設備1Aに接続される。複数の高圧送電線1Eの下流側は、変電設備1Bに接続される。複数の高圧送電線1Eの中央部は、複数の送電鉄塔1Dに架設された状態で鉛直方向に並んで配置される。複数の高圧送電線1Eは、発電設備1Aから電力の供給を受ける機能を備える。複数の高圧送電線1Eは、高圧電力を変電設備1Bに供給する機能を備える。架空地線1Fは、複数の高圧送電線1Eよりも上方において複数の送電鉄塔1Dの上部に架設される。架空地線1Fは、雷撃から複数の高圧送電線1Eを保護する機能を備える。
【0017】
例えば、分散型エネルギー源2は、太陽光発電設備、風力発電設備、小水力発電設備、バイオマス発電設備等である。分散型エネルギー源2は、変電設備1Bと比較的近い位置に設けられる。分散型エネルギー源2は、直接的または間接的に変電設備1Bに接続される。分散型エネルギー源2は、電力を生成する機能を備える。分散型エネルギー源2は、生成した電力を近隣の需要地に供給する機能を備える。生成された電力が近隣の需要地の需要電力よりも大きい場合、分散型エネルギー源2は、生成された電力から需要電力を差し引いた余剰電力を変電設備1Bに供給する機能を備える。分散型エネルギー源2は、生成した電力の全量を余剰電力として変電設備1Bに供給することもある。
【0018】
水素輸送システム3は、水素製造装置3Aと基幹水素パイプライン3Bと水素貯蔵装置3Cと基幹用圧力調整装置3Dとローカル用圧力調整装置3Eとを備える。これらは、水素の製造から供給、貯蔵、圧力調整、最終需要地への輸送までを一貫して行うためのインフラである。その結果、再生可能エネルギーとの連携、カーボンニュートラル社会が実現され得る。
【0019】
水素製造装置3Aは、変電設備1Bに隣接して設けられる。水素製造装置3Aは、変電設備1Bから分散型エネルギー源2の余剰電力の供給を受ける機能を備える。水素製造装置3Aは、分散型エネルギー源2の余剰電力を利用して水素を製造する機能を備える。例えば、水素製造装置3Aは、水電解装置である。例えば、水素製造装置3Aは、当該水素を0.8MPaに加圧する機能を備える。
【0020】
基幹水素パイプライン3Bの上流側は、水素製造装置3Aに接続される。基幹水素パイプライン3Bの下流側は、水素ガスタービンHに接続される。基幹水素パイプライン3Bの中央部は、複数の送電鉄塔1Dに架設される。基幹水素パイプライン3Bは、水素製造装置3Aにより製造された水素を水素ガスタービンHに輸送する機能を備える。
【0021】
例えば、基幹水素パイプライン3Bは、SUS316L製の25Aフレキシブルチューブである。当該フレキシブルチューブの内径は、25.5mmである。当該フレキシブルチューブは、1MPa未満の水素を輸送し得る。例えば、高圧ガス保安法(第二条)の高圧ガスに当てはまらないように、15kmの基幹水素パイプライン3Bにおいて0.8MPaの水素が保持されている際、当該水素の量は、{(25.5/1000)/2}2×3.14×15000×8=61.3Nm2となる。
【0022】
水素貯蔵装置3Cは、送電鉄塔1Dの一部または送電鉄塔1Dの隣接部に設けられる。水素貯蔵装置3Cは、基幹水素パイプライン3Bで輸送された水素を貯蔵する機能を備える。水素貯蔵装置3Cは、ローカル水素パイプラインLを介して少なくとも1つの需要地に水素を輸送する機能を備える。
【0023】
例えば、水素貯蔵装置3Cの貯蔵空間は、50m3である。当該水素貯蔵装置3Cに0.8MPaの水素が保持されている際、当該水素の量は、50×8=400Nm2となる。
【0024】
基幹用圧力調整装置3Dは、水素貯蔵装置3Cと基幹水素パイプライン3Bとの間に設けられる。例えば、基幹用圧力調整装置3Dは、水素貯蔵装置3Cに隣接して設けられる。
【0025】
例えば、基幹用圧力調整装置3Dは、水素貯蔵装置3Cにおける水素の圧力を基幹水素パイプライン3Bにおける水素の圧力よりも高くする機能を備える。例えば、基幹用圧力調整装置3Dは、水素貯蔵装置3Cの圧力を0.8MPa以上(例えば、10MPa)にすることで、水素貯蔵装置3Cの水素の貯蔵量を増加させる機能を備える。
【0026】
例えば、基幹用圧力調整装置3Dは、基幹水素パイプライン3Bにおける水素の圧力が損失により減少している際に基幹水素パイプライン3Bにおける水素の圧力を増加させることで水素を下流側(水素ガスタービンH側)まで輸送させる機能を備える。例えば、0.8MPaで輸送されてきた水素の圧力が0.5MPaまで減少している際、基幹用圧力調整装置3Dは、水素の圧力を0.8MPaまで増加させることで水素を下流側(水素ガスタービンH側)まで輸送させる機能を備える。
【0027】
例えば、基幹用圧力調整装置3Dは、水素貯蔵装置3Cに貯蔵されている水素を基幹水素パイプライン3B経由で下流側(水素ガスタービンH側)まで輸送させる際、基幹水素パイプライン3Bにおける水素の圧力を減少させる機能を備える。例えば、水素貯蔵装置3Cに貯蔵されている水素の圧力が10MPaである場合、基幹用圧力調整装置3Dは、基幹水素パイプライン3Bにおける水素の圧力を0.8MPaまで減少させる機能を備える。
【0028】
ローカル用圧力調整装置3Eは、水素貯蔵装置3Cとローカル水素パイプラインLとの間に設けられる。例えば、ローカル用圧力調整装置3Eは、水素貯蔵装置3Cに隣接して設けられる。例えば、ローカル用圧力調整装置3Eは、水素貯蔵装置3Cに貯蔵されている水素をローカル水素パイプラインL経由で人間が暮らす需要地まで輸送させる際、ローカル水素パイプラインLにおける水素の圧力を減少させる機能を備える。例えば、水素貯蔵装置3Cに貯蔵されている水素の圧力が10MPaである場合、ローカル用圧力調整装置3Eは、高圧ガス保安法に抵触しないよう、ローカル水素パイプラインLにおける水素の圧力を0.8MPaまで減少させる機能を備える。さらに、ローカル用圧力調整装置3Eは、需要地へ輸送した水素の量を外部へ通知する機能を備える。
【0029】
次に、水素輸送システム3の水素の貯蔵量の例が説明される。例えば、変電設備1Bから発電設備1Aまでの距離は15kmとする。例えば、30基の送電鉄塔1Dの数が500mから1kmの間隔で設けられているとする。例えば、1本の基幹水素パイプライン3Bと10台の水素貯蔵装置3Cが設けられているとする。
【0030】
この場合、1本の基幹水素パイプライン3Bにおいて、水素の貯蔵量は、61.3Nm2である。10台の水素貯蔵装置3Cにおいて、水素貯蔵装置3Cの貯蔵量の合計は、400×10=4000Nm2である。したがって、水素輸送システム3の水素の貯蔵量は、61.3+4000=4061.3Nm2となる。当該貯蔵量は、水素トレーラー2台分の貯蔵量に相当する。
【0031】
なお、基幹水素パイプライン3Bが段落0021に記述された条件で4本であれば、水素の貯蔵量の合計は、61.3×4+400×10=4245Nm2である。
【0032】
次に、
図2と
図3とを用いて、基幹水素パイプライン3Bの架設方法を説明する。
図2は実施の形態1における水素輸送システムの要部の斜視図である。
図3は実施の形態1における水素輸送システムの要部の平面図である。
【0033】
図2と
図3とにおいて、少なくとも2つのメッセンジャーワイヤー固定柱ステー4は、複数の高圧送電線1Eよりも下方において鉛直方向に並んで配置される。メッセンジャーワイヤー固定柱ステー4の各々は、送電鉄塔1Dの4カ所に固定される。
【0034】
メッセンジャーワイヤー固定柱5は、複数の高圧送電線1Eよりも下方において送電鉄塔1Dの中央の空間部に設けられる。メッセンジャーワイヤー固定柱5は、長手方向を鉛直方向にして配置される。メッセンジャーワイヤー固定柱5は、必ずしも地上から設けられることを要さない。メッセンジャーワイヤー固定柱5は、少なくとも2つのメッセンジャーワイヤー固定柱ステー4に固定される。
【0035】
メッセンジャーワイヤー6は、少なくとも2つのメッセンジャーワイヤー固定柱ステー4の間において適切な位置でメッセンジャーワイヤー固定柱5に固定される。メッセンジャーワイヤー6は、送電鉄塔1Dの構成部品に決して当たらない空間に通される。
【0036】
スパイラルハンガー7は、メッセンジャーワイヤー6に吊るされる。スパイラルハンガー7は、送電鉄塔1Dの構成部品に決して当たらない空間に通される。
【0037】
基幹水素パイプライン3Bは、スパイラルハンガー7の内側に沿った状態で吊るされる。基幹水素パイプライン3Bは、送電鉄塔1Dの構成部品に決して当たらない空間に通される。基幹水素パイプライン3Bの高さ方向の位置は、高圧送電線1Eからの距離、地上の物体からの距離を十分考慮して設定される。
【0038】
基幹水素パイプライン3Bは、メッセンジャーワイヤー固定柱5の付近で地上に向けて立ち下げられる。基幹水素パイプライン3Bは、地上付近において、水素貯蔵装置3C、基幹用圧力調整装置3D、ローカル用圧力調整装置3E、近隣の需要地等に水素を供給し得るようになっている。基幹水素パイプライン3Bは、地上付近から再び立ち上げられる。基幹水素パイプライン3Bは、メッセンジャーワイヤー6に通されたスパイラルハンガー7に吊るされた状態で次の送電鉄塔1Dまで架設される。
【0039】
なお、水素の需要量に応じて基幹水素パイプライン3Bが増設される方法としては、複数の方法が考えられる。第1方法において、複数の基幹水素パイプライン3Bは、一つのスパイラルハンガー7に吊るされる。第2方法として、上述されたメッセンジャーワイヤー6とスパイラルハンガー7と基幹水素パイプライン3Bの組が同じメッセンジャーワイヤー固定柱5に対して鉛直方向に並んで設けられる。
【0040】
次に、
図4を用いて、水素輸送システム3を含むエネルギーシステムの管理方法の例を説明する。
図4は実施の形態1における水素輸送システム3を含むエネルギーシステムの管理方法の例を説明するブロック図である。
【0041】
図4に示されるように、管理装置8は、水素量情報取得部8Aと水素発電量検出部8Bと二酸化炭素排出削減量計算部8Cと通知部8Dを備える。
【0042】
水素量情報取得部8Aは、ローカル用圧力調整装置3Eから需要地へ輸送した水素の量の情報を取得する機能を備える。水素発電量検出部8Bは、水素ガスタービンHに設けられた電力量計等から水素ガスタービンHによる発電量を検出する機能を備える。二酸化炭素排出削減量計算部8Cは、水素発電量検出部8Bにより検出された発電量と需要地に輸送された水素の量に基づいた発電量との合計を火力発電で発電したと仮定した際の二酸化炭素排出量を水素ガスタービンHによる発電量に基づいた二酸化炭素排出削減量として計算する機能を備える。通知部8Dは、二酸化炭素排出削減量計算部8Cにより計算された二酸化炭素排出削減量を外部システムに通知する機能を備える。
【0043】
また、二酸化炭素排出削減量計算部8Cは、火力発電の種類に応じた単位発電量当たりの二酸化炭素排出量を選択する機能を備える。火力発電の種類として、例えば、石炭火力、天然ガス火力、石油火力等が挙げられる。
【0044】
また、二酸化炭素排出削減量計算部8Cは、は、火力発電の設備の過去の運転実績データに基づいて単位発電量当たりの二酸化炭素排出量を補正する機能を備える。例えば、設備の老朽化、運転条件の変更の変化に対応して、単位発電量当たりの二酸化炭素排出量が補正される。
【0045】
以上で説明した実施の形態1によれば、水素製造装置3Aと基幹水素パイプライン3Bとを備える。水素製造装置3Aは、分散型エネルギー源2の余剰電力を利用して水素を製造する。基幹水素パイプライン3Bは、複数の送電鉄塔1Dに架設され、水素製造装置3Aにより製造された水素を輸送する。このため、分散型エネルギー源2からの余剰電力を有効活用することができる。また、送電鉄塔1Dを利用することで新規パイプラインのコストを削減することができる。その結果、水素インフラを低コストで構築することができる。さらに、近隣において住居がない経路で水素を輸送することができる。
【0046】
この際の余剰電力は、再生可能エネルギーである。
【0047】
また、当該エネルギーシステムにおいて、分散型エネルギー源2の余剰電力が送電設備1Cに供給されることはない。このため、電力系統1の混雑を緩和することができる。
【0048】
また、水素製造装置3Aは、変電設備1Bから余剰電力の供給を受ける。このため、変電設備1Bによる余剰電力の検出と当該余剰電力の供給先の切り替えで、分散型エネルギー源2からの余剰電力を容易に有効活用することができる。
【0049】
また、基幹水素パイプライン3Bは、水素ガスタービンHに水素を輸送する。このため、水素ガスタービンHに安定して水素を供給することができる。また、二酸化炭素の排出削減に貢献することができる。
【0050】
また、水素貯蔵装置3Cは、基幹水素パイプライン3Bで輸送された水素を貯蔵する。このため、水素輸送システム3において、より多くの水素を貯蔵することができる。
【0051】
また、水素貯蔵装置3Cは、送電鉄塔1Dの一部または送電鉄塔1Dの隣接部に設けられる。このため、近隣において住居が無い場所で水素を貯蔵することができる。
【0052】
また、基幹用圧力調整装置3Dは、水素貯蔵装置3Cと基幹パイプラインとの間に設けられる。このため、水素貯蔵装置3Cにより多くの水素を貯蔵する等、柔軟に対応することができる。
【0053】
また、水素貯蔵装置3Cは、ローカル水素パイプラインを介して少なくとも1つの水素需要装置に水素を輸送する。このため、水素ガスタービンH以外へも水素を輸送することができる。
【0054】
また、ローカル用圧力調整装置3Eは、水素貯蔵装置3Cとローカル水素パイプラインとの間に設けられる。このため、需要地の水素の需要量に応じて、柔軟に対応することができる。
【0055】
なお、今後の水素の需要拡大に備え、高圧ガス保安法(第二条)の高圧ガスの要件が緩和されれば、基幹水素パイプライン3Bの耐圧を2.6MPaまで引き上げることもできる。例えば、ブレード付きの25Aフレキシブルチューブであれば、26MPaの水素を輸送することができる。
【0056】
この場合、1本の基幹水素パイプライン3Bにおいて、水素の貯蔵量は、61.3×2.6/0.8=199.2Nm2である。水素貯蔵装置3Cの貯蔵量の合計は、50×26=1300Nm2である。基幹水素パイプライン3Bが4本の場合、水素輸送システム3の水素の貯蔵量は、61.3×2.6/0.8×4+1300×10=13796Nm2となる。当該貯蔵量は、水素トレーラー6台分の貯蔵量に相当する。
【0057】
このように、当該エネルギーシステムは、再生可能エネルギー由来の水素を効率的に製造・輸送・貯蔵する新しいインフラとなる。今後の水素社会の実現に向け、当該エネルギーシステムは、有望な技術である。
【0058】
また、水素は軽くて分子の大きさが小さい。このため、相当量を遠方まで輸送することができる。
【0059】
なお、水素貯蔵装置3Cと基幹用圧力調整装置3Dとローカル用圧力調整装置3Eとは、高圧での貯蔵、需要地での需要量等を考慮して、設備の規模を設定すればよい。
【0060】
また、水素の流れは、双方向で圧力の高い箇所から低い箇所に流れる。このため、特別な操作を要することなく、水素を輸送することができる。
【0061】
また、管理装置8は、水素ガスタービンHによる発電量と需要地に輸送された水素の量に基づいた発電量との合計を火力発電で発電したと仮定した際の二酸化炭素排出量を二酸化炭素排出削減量として計算する。このため、水素ガスタービンHの導入による二酸化炭素排出削減量を把握することができる。
【0062】
また、管理装置8は、火力発電の種類に応じた単位発電量当たりの二酸化炭素排出量に応じて、二酸化炭素排出削減量を計算する。このため、水素ガスタービンHの導入による二酸化炭素排出削減量をより正確に把握することができる。
【0063】
また、管理装置8は、火力発電の過去の運転実績データに基づいて、単位発電量当たりの二酸化炭素排出量を補正する。このため、水素ガスタービンHの導入による二酸化炭素排出削減量をより正確に把握することができる。
【0064】
また、管理装置8は、計算された二酸化炭素排出削減量を外部システムに通知する。このため、環境モニタリングシステム、企業のESGレポーティングシステム、カーボンクレジット管理システム等への連携を実現することができる。
【0065】
なお、管理装置8において、基幹水素パイプライン3Bに設けられた流量計から水素ガスタービンHへの水素の流入量を検出し、当該流入量に基づいた発電量を計算し、当該発電量を火力発電で発電したと仮定した際の二酸化炭素排出量を水素輸送システム3による二酸化炭素排出削減量として計算してもよい。
【0066】
次に、
図5を用いて、管理装置8の例を説明する。
図5は実施の形態1における水素輸送システムを含むエネルギーシステムの管理装置のハードウェア構成図である。
【0067】
管理装置8の各機能は、処理回路により実現し得る。例えば、処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ500aと少なくとも1つのメモリ500bとを備える。例えば、処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェア600を備える。
【0068】
処理回路が少なくとも1つのプロセッサ500aと少なくとも1つのメモリ500bとを備える場合、管理装置8の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、少なくとも1つのメモリ500bに格納される。少なくとも1つのプロセッサ500aは、少なくとも1つのメモリ500bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、管理装置8の各機能を実現する。少なくとも1つのプロセッサ500aは、中央処理装置、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。例えば、少なくとも1つのメモリ500bは、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROM等の、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク等である。
【0069】
処理回路が少なくとも1つの専用のハードウェア600を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。例えば、管理装置8の各機能は、それぞれ処理回路で実現される。例えば、管理装置8の各機能は、まとめて処理回路で実現される。
【0070】
管理装置8の各機能について、一部を専用のハードウェア600で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。例えば、水素発電量検出部8Bの機能については専用のハードウェア600としての処理回路で実現し、経路検索部100の機能以外の機能については少なくとも1つのプロセッサ500aが少なくとも1つのメモリ500bに格納されたプログラムを読み出して実行することにより実現してもよい。
【0071】
このように、処理回路は、ハードウェア600、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせで管理装置8の各機能を実現する。
【符号の説明】
【0072】
1 電力系統、 1A 発電設備、 1B 変電設備、 1C 送電設備、 1D 送電鉄塔、 1E 高圧送電線、 1F 架空地線、 2 分散型エネルギー源、 3 水素輸送システム、 3A 水素製造装置、 3B 基幹水素パイプライン、 3C 水素貯蔵装置、 3D 基幹用圧力調整装置、 3E ローカル用圧力調整装置、 4 メッセンジャーワイヤー固定柱ステー、 5 メッセンジャーワイヤー固定柱、 6 メッセンジャーワイヤー、 7 スパイラルハンガー、 8 管理装置、 8A 水素量情報取得部、 8B 水素発電量検出部、 8C 二酸化炭素排出削減量計算部、 8D 通知部、 500a プロセッサ、 500b メモリ、 600 ハードウェア
【要約】
【課題】分散型エネルギー源からの余剰電力を有効活用する水素輸送システムの管理装置を提供する。
【解決手段】水素輸送システムの管理装置は、分散型エネルギー源の余剰電力を利用して水素を製造する水素製造装置と、複数の送電鉄塔に架設され、水素製造装置により製造された水素を輸送する基幹水素パイプラインと、基幹水素パイプラインで輸送された水素を貯蔵し、ローカル水素パイプラインを介して少なくとも1つの需要地に水素を輸送する水素貯蔵装置と、を備えた水素輸送システムを管理する管理装置であって、水素輸送システムにより水素の輸送を受けた水素ガスタービンによる発電量を検出する水素発電量検出部と、水素発電量検出部により検出された発電量と前記需要地に輸送された水素の量に基づいた発電量との合計を火力発電で発電したと仮定した際の二酸化炭素排出量を二酸化炭素排出削減量として計算する二酸化炭素排出削減量計算部と、を備えた。
【選択図】
図1