(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-15
(45)【発行日】2025-08-25
(54)【発明の名称】保冷保温具及びその製造方法並びに保冷保温用衣服
(51)【国際特許分類】
C09K 5/14 20060101AFI20250818BHJP
A61F 7/10 20060101ALI20250818BHJP
C09K 5/08 20060101ALI20250818BHJP
【FI】
C09K5/14 F
A61F7/10 300Q
C09K5/08 101
(21)【出願番号】P 2021104489
(22)【出願日】2021-06-23
【審査請求日】2024-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】518387996
【氏名又は名称】株式会社トラスタ
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】前定 達雄
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3178085(JP,U)
【文献】特開平8-229063(JP,A)
【文献】特開2019-172364(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K5/
A61F7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保冷保温材と、
保冷保温材における保冷保温対象が配される側を覆うウラ側被覆部と、保冷保温材におけるウラ側被覆部とは反対側を覆うオモテ側被覆部とを備えた被覆部材と
を備えた保冷保温具であって、
オモテ側被覆部及びウラ側被覆部が、
断熱層と、
断熱層の厚み方向一側に配された一側熱伝導層と、
断熱層の厚み方向他側に配された他側熱伝導層と
を備え
、
一側熱伝導層又は他側熱伝導層が、被覆部材の最外層に配されるようにした
ことを特徴とする保冷保温具。
【請求項2】
オモテ側被覆部は、一側熱伝導層と、断熱層と、他側熱伝導層とを含む被覆用積層単位が複数セット重なった構造を有する一方、
ウラ側被覆部は、被覆用積層単位を1セットだけ有する
請求項1記載の保冷保温具。
【請求項3】
オモテ側被覆部が備える複数セットの被覆用積層単位のうち少なくとも1セットと、ウラ側被覆部が備える1セットの被覆用積層単位とが、互いに連続して設けられた請求項2記載の保冷保温具。
【請求項4】
被覆部材は、一側熱伝導層と、断熱層と、他側熱伝導層とを備えた被覆用積層シートが折り畳まれて形成されたものである請求項1~3いずれか記載の保冷保温具。
【請求項5】
断熱層は、発泡樹脂層を含み、
一側熱伝導層及び他側熱伝導層は、金属層を含む
請求項1~4いずれか記載の保冷保温具。
【請求項6】
被覆部材の外側を覆う包装用シートをさらに備えた請求項1~5いずれか記載の保冷保温具。
【請求項7】
請求項
4記載の保冷保温具の製造方法
であって、
被覆用積層シートを長手方向に略4等分した各部分を、長手方向一側から順に第一部分、第二部分、第三部分及び第四部分とした場合に、
第一部分を、第一部分と第二部分との境界線を折り線として折り返して第二部分に重ねる第一折り返し工程と、
第一折り返し工程を経て重なった第一部分と第二部分とを、被覆用積層シートの幅方向両端で接着することにより、袋部を形成する袋部形成工程と、
袋部形成工程で形成された袋部内に保冷保温材を挿入する保冷保温材挿入工程と、
第四部分を、第三部分と第四部分との境界線を折り線として折り返して第三部分に重ねる第二折り返し工程と、
第二折り返し工程を経て重なった第三部分及び第四部分を、第二部分と第三部分との境界線を折り線として折り返して、袋部に重ねる第三折り返し工程と
を経ることを保温保冷具の製造方法。
【請求項8】
請求項1~6いずれか記載の保冷保温具を備えた保冷保温用衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保冷保温具とその製造方法とに関する。本発明はまた、この保冷保温具を備えた保冷保温用衣服にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化を背景として、身体を冷却するための製品が次々と提案されている。中でも、保冷具を取り付けることができるようにした保冷用衣服は、身体を直接的に冷却することができるため、その効果の高さに注目が集まっている。このような保冷用衣服としては、例えば、特許文献1の
図2に記載の作業衣1等が挙げられる。この作業衣1は、その内面に複数個所のポケット2を備えており、凍らせた保冷バッグB(保冷具)をポケット2内に入れて着用することで、暑さ対策をすることができるものとされている。
【0003】
ポケット2内に入れる保冷具としては、従来、ジェル状の保冷剤を樹脂バッグに充填しただけのものが広く用いられていた。ところが、このような一般的な保冷具を用いた場合には、凍らせた保冷具がすぐに融けてしまい、保冷用衣服の冷却効果が長続きしないという問題があった。
【0004】
この点、特許文献2の
図2には、発泡材料からなるシート状材料4aと、防水層4bとを備えた袋1に、蓄冷材3を収容した蓄冷具が記載されている。この蓄冷具では、シート状材料4aの断熱効果により、従来の保冷材よりも冷却効果が長く持続するとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3225280号公報
【文献】特開平09-059607号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献2に記載の蓄冷具を凍らせて保冷に使用すると、時間の経過とともに、冷却効果が得られる範囲が狭くなるという問題があった。というのも、蓄冷材3は、融けるに従って、融けずに残っている固体部分(冷却作用を発揮する部分)が局在するようになるからである。同様の問題は、保温に用いる保温具でも生じ得る。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、時間が経過してもその全体から略均一に冷却効果又は保温効果を得ることができる保冷保温具を提供するものである。また、この保冷保温具の製造方法と、この保冷保温具を備えた保冷保温用衣服を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、
保冷保温材と、
保冷保温材における保冷保温対象が配される側を覆うウラ側被覆部と、保冷保温材におけるウラ側被覆部とは反対側を覆うオモテ側被覆部とを備えた被覆部材と
を備えた保冷保温具であって、
オモテ側被覆部及びウラ側被覆部が、
断熱層と、
断熱層の厚み方向一側に配された一側熱伝導層と、
断熱層の厚み方向他側に配された他側熱伝導層と
を備えた
ことを特徴とする保冷保温具
を提供することによって解決される。
【0009】
この保冷保温具では、保冷保温材を、断熱層を備えた被覆部材で覆っている。これにより、保冷保温材の保冷保温効果を長持ちさせることができる。加えて、断熱層の厚み方向一側と他側に、それぞれ、一側熱伝導層と他側熱伝導層を設けている。これにより、時間の経過とともに保冷保温材が部分的に冷たさ(温かさ)を失ったとしても、冷却作用(保温作用)を発揮している部分の冷熱(温熱)を一側熱伝導層又は他側熱伝導層を介して、保冷保温具の全体に伝えることが可能になる。このため、保冷保温具の表面においては広い範囲で冷たい(温かい)状態を維持しやすくなる。加えて、保冷保温対象や外気等、外部から保冷保温具に加えられる熱を、一側熱伝導層又は他側熱伝導層を介して保冷保温具の全体に分散させることもできる。このため、保冷保温具が部分的に冷たさ(温かさ)を失わないようにする(保冷保温具の全体が略均一に徐々に冷たさ(温かさ)を失うようにする)こともできる。したがって、保冷保温対象を長時間安定して保冷保温することができる。
【0010】
本発明に係る保冷保温具においては、オモテ側被覆部が、一側熱伝導層と、断熱層と、他側熱伝導層とを含む被覆用積層単位が複数セット重なった構造を有するようにすると好ましい。これにより、オモテ側被覆部の断熱力を高めて、保冷保温対象が配されるウラ側に保冷保温力を集中させることができ、保冷保温効果がより持続しやすくすることができる。オモテ側被覆部は、被覆用積層単位が3セット以上重なった構造を有することがより好ましい。一方、ウラ側被覆部は、被覆用積層単位を1セットだけ有するようにすると好ましい。これにより、ウラ側被覆部も適度な断熱力を有するようにして、保冷保温対象が保冷保温されすぎないようにすることができる。
【0011】
この場合においては、オモテ側被覆部が備える複数セットの被覆用積層単位のうち少なくとも1セットと、ウラ側被覆部が備える1セットの被覆用積層単位とを、互いに連続して設けることが好ましい。これにより、オモテ側被覆部とウラ側被覆部との間から冷気又は温気が逃げることを防いで、保冷保温効果がより持続しやすくすることができる。
【0012】
本発明に係る保冷保温具においては、被覆部材を、一側熱伝導層と、断熱層と、他側熱伝導層とを備えた被覆用積層シートが折り畳まれて形成されたものとすることが好ましい。これにより、保冷保温具の製造工程をシンプルにすることができる。また、被覆部材の部品点数を減らすこともできる。したがって、製造コストを抑えることもできる。
【0013】
本発明に係る保冷保温具においては、断熱層を、発泡樹脂層を含むものとすることが好ましい。これにより、断熱効果だけでなく、クッション効果も得ることができ、保冷保温具の肌当たりを柔らかくすることができる。また、本発明に係る保冷保温具においては、一側熱伝導層及び他側熱伝導層を、金属層を含むものとすることが好ましい。これにより、一側熱伝導層及び他側熱伝導層による熱伝導をより効率的なものとすることができる。
【0014】
本発明に係る保冷保温具においては、被覆部材の外側を覆う包装用シートをさらに備えることが好ましい。これにより、被覆部材が破損しにくくすることができる。また、一側熱伝導層又は他側熱伝導層が直接保冷保温対象に触れないようにして、保冷保温対象をよりマイルドに保冷保温することもできる。さらに、例えば、包装用シートにプリント等を施すことにより、保冷保温具の美観を高めることもできる。
【0015】
本発明に係る保冷保温具を備えた保冷保温用衣服では、高い身体冷却効果が期待される。ただし、本発明に係る保冷保温具は、衣服用に限定されるものではなく、保冷保温対象を保冷保温するあらゆる用途に用いることができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によって、時間が経過してもその全体から略均一に冷却効果又は保温効果を得ることができる保冷保温具を提供することが可能になる。また、この保冷保温具の製造方法と、この保冷保温具を備えた保冷保温用衣服を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】第一実施形態の保冷保温具を、
図1におけるS-S平面で切断して示した断面図である。
【
図3】第一実施形態の保冷保温具の製造方法を説明するための図である。
【
図4】第二実施形態の保冷保温具を、
図2と同様の平面で切断して示した断面図である。
【
図5】第三実施形態の保冷保温具の構成及び製造方法を説明するための図である。
【
図6】第四実施形態の保冷保温具の構成及び製造方法を説明するための図である。
【
図7】比較例の保冷保温具を、厚み方向に略平行な平面で切断して示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.第一実施形態
本発明の好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。
図1は、第一実施形態の保冷保温具1の全体図である。
図1(a)は、保冷保温具1をオモテ面1a側から見た図であり、
図1(b)は、保冷保温具1をウラ面1b側から見た図である。
図2は、第一実施形態の保冷保温具1を、
図1におけるS-S平面で切断して示した断面図である。
【0019】
第一実施形態の保冷保温具1は、
図1に示すように、オモテ面1aとウラ面1bとを有している。使用時には、冷凍庫等の冷却手段で予め冷却、又は、電子レンジ等の加温手段で予め加温しておいた保冷保温具1を、
図2に示すように、ウラ面1bが保冷保温対象T側を向くようにして保冷保温対象Tの近くに配する。これにより、保冷保温対象Tを長時間安定して保冷保温することができる。以下、この理由について、保冷保温具1の構成と合わせて詳しく説明する。
【0020】
第一実施形態の保冷保温具1は、
図2に示すように、保冷保温材10と、被覆部材20と、包装用シート30とを備えている。保冷保温材10は、ゲル状の保冷保温剤11と、保冷保温剤11を包む可撓性の樹脂バッグ12とを備えている。被覆部材20は、保冷保温材10を覆うための部材であり、保冷保温材10のオモテ側(保冷保温具1におけるオモテ面1a側に配される側)を覆うオモテ側被覆部21と、保冷保温材10のウラ側(保冷保温具1におけるウラ面1b側に配される側)を覆うウラ側被覆部22とを備えている。包装用シート30は、被覆部材20の外側を覆うための部材である。
【0021】
第一実施形態における被覆部材20は、1枚の被覆用積層シート100が折りたたまれて形成されている。この被覆用積層シート100は、
図2の拡大部分に示すように、一側熱伝導層110aと、断熱層120と、他側熱伝導層110bとが、この順に積層されて接着された構造を有している。断熱層120は、1層構造を有するものとしてもよいが、第一実施形態においては、一側断熱層120aと、他側断熱層120bとを積層して接着した2層構造となっている。したがって、1枚の被覆用積層シート100は、4層構造を有している。
【0022】
このように、断熱層120の両面に熱伝導層110a,110bを有する被覆用積層シート100で保冷保温材10のオモテ側及びウラ側を覆うことによって、保冷保温材10の冷たさや温かさが、被覆部材20内の面方向(断熱層120の厚み方向に略垂直な方向)に伝わりやすくすることができる。したがって、時間の経過とともに保冷保温材10が部分的に冷たさ(温かさ)を失った際にも、保冷保温具1の表面においては、広い範囲で冷たい(温かい)状態を維持しやすくすることができ、保冷保温具1の全体から略均一に冷却効果又は保温効果を得ることができる。第一実施形態においては、保冷保温材10と被覆部材20との間に他の部材を介在させておらず、他側熱伝導層110bが保冷保温材10の表面に直接的に接触する状態となっているため、上記の効果を一層強く得ることができる。
【0023】
オモテ側被覆部21は、保冷保温材10のオモテ側の一部のみを覆うものであってもよいが、第一実施形態においては、保冷保温材10のオモテ側の略全体を覆うものとしている。同様に、ウラ側被覆部22は、保冷保温材10のウラ側の一部のみを覆うものであってもよいが、第一実施形態においては、保冷保温材10のウラ側の略全体を覆うものとしている。これにより、上記の効果をより高めることができる。
【0024】
第一実施形態におけるオモテ側被覆部21は、4層構造を有する被覆用積層シート100が、厚み方向に3枚重なって形成されている。換言すると、オモテ側被覆部21は、一側熱伝導層110aと、断熱層120と、他側熱伝導層110bとを含む被覆用積層単位が、3セット重なった構造を有している。このため、オモテ側被覆部21は、12層構造となっている。これにより、保冷保温対象Tが配されないオモテ面1a側に冷たさや温かさが逃げにくくすることができ、保冷保温具1の保冷保温効果をより長持ちさせることができる。以下、オモテ側被覆部21を構成する3セットの被覆用積層単位を、保冷保温材10に近い側から順に、それぞれ、オモテ側第一積層単位21a、オモテ側第二積層単位21b、オモテ側第三積層単位21cと呼ぶことがある。
【0025】
一方、第一実施形態におけるウラ側被覆部22は、4層構造を有する被覆用積層シート100を1枚だけ配することで形成されている。換言すると、ウラ側被覆部22は、被覆用積層単位を1セットだけ有している。このため、ウラ側被覆部22は、4層のみで構成された状態となっている。これにより、保冷保温材10の冷たさや温かさが、保冷保温対象Tに程よい強さで伝わるようにすることができる。以下、ウラ側被覆部22を構成する1セットの被覆用積層単位を、ウラ側積層単位22aと呼ぶことがある。
【0026】
オモテ側被覆部21を構成する被覆用積層単位の数は、3セットに限定されない。ただし、被覆用積層単位の数が少なすぎると、保冷保温具1の保冷保温効果を長時間維持しにくくなるおそれがある。このため、オモテ側被覆部21を構成する被覆用積層単位の数は、2セット以上とすることが好ましく、3セット以上とすることがより好ましい。一方、被覆用積層単位の数が多すぎると、保冷保温具1が厚くなって嵩張るおそれがある。このため、オモテ側被覆部21を構成する被覆用積層単位の数は、6セット以下とすることが好ましく、5セット以下とすることがより好ましく、4セット以下とすることがさらに好ましい。
【0027】
ウラ側被覆部22を構成する被覆用積層単位の数(被覆用積層シート100の枚数)は、通常、オモテ側被覆部21よりも少ない数とされる。ウラ側被覆部22を構成する被覆用積層単位の数は、2セット以上であってもよいが、第一実施形態で採用しているように、1セットとすることが好ましい。
【0028】
図3は、第一実施形態の保冷保温具1の製造方法を説明するための図である。第一実施形態の保冷保温具1は、保冷保温材10を被覆部材20で被覆する被覆工程と、被覆工程を経た保冷保温材10及び被覆部材20の外側を包装用シート30(
図2)で覆う包装工程とを経て製造することができる。このうち、被覆工程では、
図3(a)に示すように、帯状に形成された1枚の被覆用積層シート100を用いて保冷保温材10を被覆する。以下、説明の便宜上、この被覆用積層シート100を長手方向に略4等分した各部分を、長手方向一側から順に第一部分100a、第二部分100b、第三部分100c、第四部分100dと呼ぶことがある。
【0029】
第一実施形態における被覆工程は、
図3(a)に示すように、第一部分100aを、線L
1を折り線として折り返して第二部分100bに重ねる第一折り返し工程と、
図3(b)において太破線で示すように、第一折り返し工程を経て重なった第一部分100aと第二部分100bとを、被覆用積層シート100の幅方向両端で接着することにより、袋部23を形成する袋部形成工程と、
図3(c)に示すように、袋部形成工程で形成された袋部23内に保冷保温材10を挿入する保冷保温材挿入工程と、
図3(d)に示すように、第四部分100dを、線L
2を折り線として折り返して第三部分100cに重ねる第二折り返し工程と、
図3(e)に示すように、第二折り返し工程を経て重なった第三部分100c及び第四部分100dを、線L
3を折り線として折り返して、袋部23(第一部分100a)に重ねる第三折り返し工程とを含んでいる。これにより、
図2に示すように、被覆用積層シート100が3枚重なったオモテ側被覆部21と、被覆用積層シート100を1枚だけ有するウラ側被覆部22とを形成することができる。なお袋部形成工程における接着方法は、特に限定されず、熱溶着や、接着剤を用いた接着や、テープ等を用いた接着等を採用することができる。
【0030】
このようにして製造された保冷保温具1においては、
図2に示すように、オモテ側第一積層単位21aとウラ側積層単位22aとが、互いに連続している。また、オモテ側第三積層単位21cとウラ側積層単位22aも、互いに連続している。これにより、保冷保温材10の冷たさや温かさが、被覆部材20内で面方向により伝わりやすくすることができる。また、被覆部材20による断熱効果を高めて、保冷保温具1の保冷保温効果をより長持ちさせることもできる。
【0031】
被覆部材20は、互いに分離した複数枚の被覆用積層シート100を組み合わせて形成してもよい。ただし、この場合には、例えば、複数枚の被覆用積層シート100の一部を紛失する等のミスが起こりやすくなるおそれがある。この点、先に説明したように、1枚の被覆用積層シート100で被覆部材20を形成するようにすると、保冷保温具1の製造時におけるミスを少なくすることができる。また、用意する被覆用積層シート100の枚数を少なくすることができるため、製造工程をシンプルにすることもできる。
【0032】
被覆用積層シート100(被覆用積層単位)に含まれる一側熱伝導層110aは、熱伝導効果を発揮できるものであれば、その具体的な態様を特に限定されない。一側熱伝導層110aは、例えば、金属で形成することができる。このような金属としては、例えば、アルミや、銅や、スズや、鉛や、これらを含む合金などが挙げられる。このような金属は、フィルム等の担体に保持させることで層状に形成してもよいし、箔状に形成することや、断熱層120に直接蒸着すること等によって、単独で一側熱伝導層110aを形成してもよい。他側熱伝導層110bについても、一側熱伝導層110aと同様の構成を採用することができる。一側熱伝導層110aと他側熱伝導層110bとは、同じ構成を採用してもよいし、異なる構成を採用してもよい。
【0033】
第一実施形態においては、一側熱伝導層110a及び他側熱伝導層110bとして、可撓性樹脂フィルムの表面にアルミを蒸着したものを採用している。これにより、熱伝導効率を維持しながら、金属の使用量を抑えることができる。また、被覆用積層シート100の強度を高めることもできる。
【0034】
断熱層120は、断熱効果を発揮できるものであれば、その具体的な態様を特に限定されない。断熱層120は、例えば、発泡樹脂や、発泡ゴム等の発泡体で形成することができる。断熱層120は、あるいは、エアーパッキン(可撓性の樹脂シートを複数枚重ねて、間に気泡を形成した気泡シート)や、繊維等で形成することもできる。断熱層120は、複数種類の材質を組み合わせて形成してもよい。第一実施形態においては、断熱層120を、一側断熱層120aと他側断熱層120bとを積層した2層構造としているところ、一側断熱層120aと他側断熱層120bとは、同じ構成を採用してもよいし、異なる構成を採用してもよい。第一実施形態においては、一側断熱層120aと他側断熱層120bとを、共に、熱可塑性樹脂を発泡させた発泡樹脂で形成している。
【0035】
断熱層120の厚みW
1(
図2)も特に限定されない。ただし、断熱層120が薄すぎると、所望の断熱効果が得にくくなるおそれがある。このため、断熱層120の厚みW
1は、1mm以上とすることが好ましく、1.5mm以上とすることがより好ましい。一方、断熱層120が厚すぎると、保冷保温対象Tに冷たさや温かさが伝わりにくくなるおそれがある。また、保冷保温具1が厚くなって嵩張るおそれもある。このため、断熱層120の厚みW
1は、4mm以下とすることが好ましく、3mm以下とすることがより好ましい。第一実施形態における断熱層120の厚みW
1は、2mm程度である。
【0036】
一側熱伝導層110a、一側断熱層120a、他側断熱層120b及び他側熱伝導層110bは、互いに接着されている必要はなく、独立していてもよい(別部材であってもよい)。また、これらの各層の間に、別の層が介在してもよい。ただし、第一実施形態で採用したように、一側熱伝導層110a、一側断熱層120a、他側断熱層120b及び他側熱伝導層110bを予め積層して接着した被覆用積層シート100を用いて被覆部材20を形成すると、保冷保温具1の製造に要する手間を大幅に削減することができる。
【0037】
一側熱伝導層110aと一側断熱層120aとの接着方法は、特に限定されない。接着方法としては、熱溶着や、接着剤を用いた接着等を採用することができる。第一実施形態においては、既に述べたように、一側熱伝導層110aとして、可撓性樹脂フィルムの表面にアルミを蒸着したものを採用している。一側熱伝導層110aと一側断熱層120aとの接着は、
図2の拡大図に示すように、一側熱伝導層110aにおけるアルミが蒸着されていない側の面と、一側断熱層120aとを、部分的に熱溶着することで行っている。これにより、一側熱伝導層110aと一側断熱層120aとの間に空間を確保して、被覆用積層シート100の断熱性をより高めることができる。他側熱伝導層110bと他側断熱層120bとの接着方法についても、同様とする。一側断熱層120aと他側断熱層120bとの接着方法も、特に限定されず、熱溶着や、接着剤を用いた接着等を採用することができる。
【0038】
保冷保温材10に充填される保冷保温剤11は、蓄冷機能又は蓄熱機能を発揮することができるものであれば、その具体的な構成を特に限定されず、ゲル状のものや、ゾル状のものや、液体のものや、固体のものを採用することができる。ゲル状のものとしては、常温で流動性を有する比較的柔らかいゲルや、ビーズ状に形成された比較的硬いゲル等を採用することができる。第一実施形態においては、常温で流動性を有するゲル状の保冷保温剤11を採用している。保冷保温剤11を包む部材は、樹脂バッグ12に限定されず、剛性の樹脂ケース等を採用してもよい。
【0039】
包装用シート30は、省略することもできるが、これを設けることによって、被覆部材20の破損を防ぐことができる。また、保冷保温具1の肌当たりをマイルドにすることもできる。包装用シート30は、被覆部材20を部分的に覆うものであってもよいが、全体を覆うものとすることが好ましい。第一実施形態においては、
図2に示すように、2枚の包装用シート30を重ねて周縁を熱溶着することで袋体を形成し、その内部に被覆部材20を封入している。これにより、使用者が包装用シート30から被覆部材20や保冷保温材10を取り出しにくくして、被覆部材20の構造が崩れることを防止することができる。包装用シート30は、その素材を特に限定されず、樹脂や、布や、ゴム等で形成することができる。第一実施形態においては、包装用シート30を熱可塑性樹脂で形成している。
【0040】
第一実施形態においては、
図1に示すように、包装用シート30における保冷保温具1のウラ面1bに配される箇所に、オモテ面1a(外側面)又はウラ面1b(冷却用面)のいずれであるかを表示するための識別用表示31を設けている。これにより、保冷保温具1のオモテ面1aとウラ面1bとを一目で見分けることができる。識別用表示31は、オモテ面1aに設けてもよい。包装用シート30には、また、装飾32を施してもよい。これにより、保冷保温具1の意匠性を高めることができる。あるいは、包装用シート30を透明な素材で形成し、包装用シート30の内側に識別用表示31や装飾32等を設けてもよい。
【0041】
2.第二実施形態
図4は、第二実施形態の保冷保温具1を、
図2と同様の平面で切断して示した断面図である。第二実施形態の保冷保温具1においては、
図4に示すように、4層構造を有する被覆用積層シート100が、厚み方向に2枚重なってオモテ側被覆部21を形成している。換言すると、第二実施形態におけるオモテ側被覆部21は、被覆用積層単位が2セット重なった構造を有しており、8層構造となっている。これにより、第一実施形態の保冷保温具1に比べて、保冷保温具1の厚みを抑えることができ、保冷保温具1をコンパクトなものとすることができる。
【0042】
第二実施形態の保冷保温具1は、
図3に示す第一実施形態の保冷保温具1用の被覆用積層シート100における第四部分100dを削除した被覆用積層シート100(被覆部材20)を用いて保冷保温材10を被覆することによって製造することができる。すなわち、第二実施形態の保冷保温具1の製造工程においては、
図3(d)に示す第二折り返し工程は行われない。これ以外の構成については、第一実施形態と同様のものを採用することができる。
【0043】
3.第三実施形態
図5は、第三実施形態の保冷保温具1の構成及び製造方法を説明するための図である。第三実施形態においては、
図5(a)に示すように、T字型に形成された1枚の被覆用積層シート100(被覆部材20)を用いて保冷保温材10を被覆する。この被覆用積層シート100は、略矩形状に形成された中心部分100eと、中心部分100eの4辺のうち1つの短辺を除いた3辺にそれぞれ連続して設けられた第一周辺部分100f、第二周辺部分100g及び第三周辺部分100hとを備えている。
図5(b)に示すように、中心部分100eの上に保冷保温材10を置き、第一周辺部分100f、第二周辺部分100g及び第三周辺部分100hをそれぞれ折り返して中心部分100eの上に重ねることによって、
図2に示す第一実施形態と同様に、被覆用積層シート100が3枚重なったオモテ側被覆部21と、被覆用積層シート100を1枚だけ有するウラ側被覆部22とを備えた被覆部材20を形成することができる。
【0044】
第三実施形態の保冷保温具1においては、オモテ側被覆部21を構成する3セットの被覆用積層単位の全てが、ウラ側被覆部22を構成する1セットの被覆用積層単位と連続している。これにより、保冷保温材10の冷たさや温かさが、被覆部材20内で面方向により伝わりやすくすることができる。また、被覆部材20による断熱効果を高めて、保冷保温具1の保冷保温効果をより長持ちさせることもできる。さらに、第三実施形態における被覆工程においては、接着等により袋部を形成する必要がない。このため、保冷保温具1の製造工程をシンプルなものとすることができる。これ以外の構成については、第一実施形態又は第二実施形態と同様のものを採用することができる。
【0045】
4.第四実施形態
図6は、第四実施形態の保冷保温具1の構成及び製造方法を説明するための図である。第四実施形態においては、
図6(a)に示すように、十字型に形成された1枚の被覆用積層シート100(被覆部材20)を用いて保冷保温材10を被覆する。この被覆用積層シート100は、略矩形状に形成された中心部分100eと、中心部分100eの4辺にそれぞれ連続して設けられた第一周辺部分100f、第二周辺部分100g、第三周辺部分100h及び第四周辺部分100iとを備えている。中心部分100eの上に保冷保温材10を置き、第一周辺部分100f、第二周辺部分100g、第三周辺部分100h及び第四周辺部分100iをそれぞれ折り返して中心部分100eの上に重ねることによって、被覆用積層シート100が4枚重なったオモテ側被覆部21(
図2)と、被覆用積層シート100を1枚だけ有するウラ側被覆部22とを備えた被覆部材20を形成することができる。これ以外の構成については、第一実施形態、第二実施形態又は第三実施形態と同様のものを採用することができる。
【0046】
5.用途
本発明に係る保冷保温具1は、その用途を特に限定されない。本発明に係る保冷保温具1は、食品等の保冷保温に用いることもできるが、人間や動物の身体の保冷保温に用いると、特に好適である。保冷保温具1を保冷保温対象Tの近くに保持する方法も特に限定されない。保冷保温対象Tが人間や動物の身体である場合には、保冷保温具1を保持する方法として、例えば、保冷保温用衣服を採用することができる。すなわち、保冷保温具1を取り付けるための保冷保温具取付部を備えた保冷保温用衣服を用意し、予め冷却又は加温しておいた保冷保温具1を保冷保温具取付部に取り付けた状態で保冷保温対象T(人間や動物)に着用させることにより、保冷保温対象Tを長時間快適に保冷保温することができる。保冷保温具取付部は、その具体的態様を限定されない。保冷保温具取付部としては、保冷保温具1を内部に収容できるポケット状のものや、面テープ、ボタン、紐等を用いて保冷保温具1を取り付けることができるもの等を採用することができる。
【0047】
6.実験
本発明に係る保冷保温具1の保冷保温効果を評価するための実験を、下記の要領で行った。
【0048】
[実施例]
実施例の保冷保温具1としては、
図2に示す第一実施形態の保冷保温具1と同等のものを使用した。保冷保温材10としては、ゲル状保冷保温約200gを樹脂バッグに充填したものを使用した。被覆部材20を形成する被覆用積層シート100の一側熱伝導層110a及び他側熱伝導層110bとしては、可撓性樹脂フィルムの表面にアルミを蒸着したものを採用した。断熱層120としては、発泡樹脂で形成された一側断熱層120aと他側断熱層120bとを積層したものを採用した。一側断熱層120a及び他側断熱層120bの厚みは、共に1mm程度であった。
【0049】
この保冷保温具を、冷凍庫内に24時間静置した。冷凍庫から取り出した保冷保温具のウラ面に熱電対温度センサーを取り付け、室温35°C、湿度65%の恒温恒湿機内で、30秒毎に300分間温度を測定した。
【0050】
[比較例]
図7は、比較例の保冷保温具9を、厚み方向に略平行な平面で切断して示した断面図である。比較例の保冷保温具9としては、
図7に示すように、保冷保温材10と、被覆部材90と、包装用シート30とを備えたものを使用した。保冷保温材10及び包装用シート30は、実施例と同様のものを使用した。被覆部材90としては、断熱層920の片面だけに熱伝導層910を備えた被覆用シート900を、熱伝導層910を外側にして袋状に形成したものを使用した。断熱層920は、実施例の一側断熱層120aと同様のものを採用し、熱伝導層910は、実施例の一側熱伝導層110aと同様のものを採用した。この保冷保温具9を、実施例と同条件で評価した。
【0051】
[結果]
図8は、評価実験の結果を示すグラフである。
図8に示されるように、実施例の保冷保温具は、測定開始直後から終了に至るまで、比較例の保冷保温具よりも低い温度を示した。比較例の保冷保温具では、測定開始後120分頃から温度が上昇し始め、測定開始後210分頃には34°C付近に達したのに対し、実施例の保冷保温具では、測定開始から300分が経過した時点でも、29°C以下であった。このように、本発明に係る保冷保温具は、高温高湿下においても、長時間にわたり優れた保冷保温効果を発揮することができる。
【符号の説明】
【0052】
1 保冷保温具
1a オモテ面
1b ウラ面
10 保冷保温材
11 保冷保温剤
12 樹脂バッグ
20 被覆部材
21 オモテ側被覆部
21a オモテ側第一積層単位
21b オモテ側第二積層単位
21c オモテ側第三積層単位
22 ウラ側被覆部
22a ウラ側積層単位
23 袋部
30 包装用シート
31 識別用表示
32 装飾
100 被覆用積層シート
100a 第一部分
100b 第二部分
100c 第三部分
100d 第四部分
100e 中心部分
100f 第一周辺部分
100g 第二周辺部分
100h 第三周辺部分
100i 第四周辺部分
110a 一側熱伝導層
110b 他側熱伝導層
120 断熱層
120a 一側断熱層
120b 他側断熱層
T 保冷保温対象