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  • 特許-中古部品活用システム 図1
  • 特許-中古部品活用システム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-18
(45)【発行日】2025-08-26
(54)【発明の名称】中古部品活用システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20250819BHJP
   G06Q 30/0283 20230101ALI20250819BHJP
【FI】
G06Q50/10
G06Q30/0283
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022080298
(22)【出願日】2022-05-16
(65)【公開番号】P2023168913
(43)【公開日】2023-11-29
【審査請求日】2024-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 恭介
(72)【発明者】
【氏名】平野 幹児
(72)【発明者】
【氏名】岡村 城史
(72)【発明者】
【氏名】安西 俊介
(72)【発明者】
【氏名】小池 泰路
【審査官】日比野 可奈子
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-184223(JP,A)
【文献】特開2022-068883(JP,A)
【文献】特開2006-350610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の使用年数を記憶する車載コンピュータ、及び、複数の利用者の通信端末との通信を行う通信装置と、
前記車載コンピュータ及び前記利用者の通信端末から取得される、前記車両の状態についての車両状態情報、前記使用年数を含む劣化情報、及び前記車両の中古部品を特定するコード情報を紐づけて記憶する記憶装置と、
前記通信装置及び前記記憶装置に接続されたサーバーと、を備え、
前記サーバーは、
前記車両状態情報及び前記劣化情報から前記中古部品の劣化度合いを算出し、
前記使用年数及び前記劣化度合いから前記中古部品の参考取引価格を算出し、
前記複数の利用者のうち中古部品の購入を希望する利用者の通信端末からの検索情報の受信を受けて、前記使用年数、前記劣化度合い、及び前記参考取引価格の少なくとも何れかが前記検索情報に近い中古部品に関する情報を前記記憶装置から取得し
取得した情報を前記中古部品の購入を希望する利用者の通信端末に出力し、
前記記憶装置は、
中古部品のn-1次利用者(「n」は整数)が、当該中古部品を売却する際に、前記n-1次利用者の通信端末からアップロードされた、前記車両状態情報、前記使用年数を含む劣化情報、及び当該中古部品を特定するコード情報を、紐づけて記憶し、
n次利用者が中古部品を購入する際に、前記n次利用者の通信端末からアップロードされた、購入した中古部品の情報と当該中古部品を使用する車両の情報とを、紐づけて記憶する、ように構成されている
ことを特徴とする中古部品活用システム。
【請求項2】
前記記憶装置は、中古部品ごとに、使用年数及び劣化度合いと、取引価格との対応関係を定めた相場価格近似線を記憶し、
前記サーバーは、前記相場価格近似線を用いて、前記中古部品の使用年数及び劣化度合いに応じた、当該中古部品の参考取引価格を算出する、
請求項1に記載の中古部品活用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の中古部品の2次利用者に対して有用な情報を提供する中古部品活用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流通される中古部品を、流通前後において特定できるようにした中古部品管理システムが開示されている。中古部品管理システムは、中古部品に設けられたコードを取得するコード取得手段と、中古部品についての情報を保持するデータベースと、データベースを検索して情報を出力する中古部品情報抽出手段を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-113000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された中古部品管理システムによれば、中古部品に設けられたコードと中古部品についての情報とが紐づけられる。このようにコードを読み込むことで紐づけられた情報を取得できれば中古部品の活用に役立てることができる。ただし、中古部品の劣化度合いについての情報として紐づけられる情報に目視から判断された情報のみしか含まれていない場合、正確な劣化度合いが判断できているとは限らない。情報が正確でなければ、その部品が良品か不良品か見分けることが難しくなり、中古部品の積極的な活用が促進されなくなってしまう。
【0005】
本開示は、上述のような課題に鑑みてなされたものである。本開示は、車両の中古部品の2次利用者に対して中古部品の2次利用に役立つ情報を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、車両の中古部品の活用のための中古部品活用システムに関する。
中古部品活用システムは、
車両の使用年数を記憶する車載コンピュータ、車両の中古部品の1次利用者の通信端末、及び車両の中古部品の2次利用者の通信端末との通信を行う通信装置と、
車載コンピュータ及び1次利用者の通信端末から取得される、車両の状態についての車両状態情報、使用年数を含む劣化情報、及び中古部品を特定するコード情報を紐づけて記憶する記憶装置と、
通信装置及び記憶装置に接続されたサーバーと、を備える。
サーバーは、
車両状態情報及び劣化情報から車両の中古部品の劣化度合いを算出し、
使用年数及び劣化度合いから車両の中古部品の参考取引価格を算出し、
2次利用者の通信端末からの検索情報の受信を受けて、使用年数、劣化度合い、及び参考取引価格の少なくとも何れかが検索情報に近い中古部品に関する情報を記憶装置から取得し、
取得した情報を2次利用者の通信端末に出力する、
ように構成される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の技術によれば、車両の中古部品の2次利用者に対して中古部品の2次利用に役立つ情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の実施形態に係る中古部品活用システムの構成例を示す図である。
図2】中古部品活用システムの利用の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
添付図面を参照して、本開示の実施の形態を説明する。
【0010】
図1は本実施形態に係る中古部品活用システムの構成を示す。中古部品活用システムは、車両から取り出され、中古部品として活用される部品についての情報をサーバーによって管理するためのシステムである。中古部品活用システムは、中古部品を活用するためのサービスとして提供される中古部品活用サービスにおいて、少なくとも1次利用者2及び2次利用者6によって利用される。1次利用者2及び2次利用者6は、自身がそれぞれ所有する通信端末22及び通信端末62を介して中古部品活用サービスに登録することで、中古部品活用システムを利用することができるようになる。
【0011】
中古部品活用システムは、2次利用者6に対して情報を提供する機能を有している。2次利用者6は、中古部品の購入を検討する個人又は法人である。2次利用者6への情報の提供は、通信装置42を介して部品情報管理サーバー4が通信端末62に情報を出力することにより行われる。通信装置42は、通信端末22、及び通信端末62と通信を行うための装置である。また、通信装置42は、通信端末22を介して、又は直接に、車載コンピュータであるECU24と通信を行うこともできる。部品情報を管理する部品情報管理サーバー4は、通信装置42を介して通信端末22、通信端末62、及びECU24からの情報の取得及び情報の出力を行う。
【0012】
1次利用者2は部品の1次利用者であり、ドナー車両となる車両を解体して中古部品を売却することを希望する個人又は法人である。1次利用者2は、車両を解体して売却の対象となる部品を摘出したら、車両状態情報、劣化情報、及びコード情報を取得する。そして、通信端末22を通じて、対象となる部品の車両状態情報と劣化情報とを、当該部品のコード情報と紐づけた形で部品情報管理サーバー4に送信する(図1に示される通信A)。こうして、1次利用者2が売却を希望する中古部品が、部品情報管理サーバー4に登録される。
【0013】
車両状態情報は、中古部品が搭載されていた車両についての情報である。送信される車両状態情報には、例えば、メーカ名、車名、型式、年式、色、駆動方式、ミッションタイプ、ハンドル位置、排気量、燃料種、定員、ドア数、ボディタイプ、クレード名、個別装備、車両写真、車検有無、所有形態、整備記録、走行距離、事故履歴、ボディデータ、走行記録、車体番号、オーナー遍歴等が含まれる。
【0014】
劣化情報は、対象となる部品がどの程度劣化しているかを示す指標となる情報である。送信される劣化情報には、例えば、対象となる部品が車両に搭載されて使用された使用年数、対象となる部品が車両に搭載されて走行した距離、目視による劣化判定等が含まれる。また、劣化情報には、ECU24に記録されているECU情報が含まれる。ECU情報は、使用年数及び車両の走行記録を含む。ECU24から取得される情報が含まれることで、目視により得られる情報のみを取得する場合よりも正確な劣化情報とすることができる。
【0015】
コード情報は、部品を特定する識別コードを示す情報である。例えば、コード情報はバーコードに記録される。そして、それぞれの部品が車両に搭載される際に、コード情報を記録したバーコードが貼り付けられる。この場合、1次利用者2は、バーコードを読み取ることでコード情報を取得することができる。
【0016】
部品情報管理サーバー4は、1次利用者2から通信端末22を介して車両状態情報、劣化情報、及びコード情報が送信されたら、これらの情報を紐づけた形で記憶装置44に記憶させる。
【0017】
また、記憶装置44には、劣化推定ロジックが予め記憶されている。劣化推定ロジックは、車両状態情報及び劣化情報に基づいてそれぞれの部品の劣化度合いを算出するためのロジックであり、部品の種類毎に設定される。部品情報管理サーバー4は、劣化推定ロジックに基づき、車両状態情報及び劣化情報からそれぞれの部品の劣化度合いを算出する。部品情報管理サーバー4は、算出した劣化度合いを、対応する部品のコード情報と紐づけて記憶装置44に記憶させる。劣化度合いは、それぞれの部品の残りの寿命として算出されてもよい。
【0018】
また、記憶装置44には、相場価格近似線が記憶されている。相場価格近似線は、部品毎に、使用年数及び劣化度合いと、取引価格との対応関係を表したグラフである。相場価格近似線は、過去の同一部品の取引状況に基づいて中古部品活用サービスの運営者によって予め作成される。部品情報管理サーバー4は、相場価格近似線を用いて、各部品の使用年数及び劣化度合いから対応する相場価格を算出する。算出された価格は、対象となる部品の参考取引価格としてコード情報と紐づけられ、記憶装置44により記憶される。劣化度合いや参考取引価格は、2次利用者6が中古部品を購入するか否かを判断するための情報の1つとすることができる。
【0019】
ここで、相場価格近似線は、過去の同一部品の取引状況に基づいて作成されるものであるが、新規車種に搭載される部品など、過去に取引実績のない部品が部品情報管理サーバー4に登録されることもある。この場合は、部品情報管理サーバー4は、モデルチェンジ前の車両、又は同一ジャンルの車両における相場価格近似線に基づいて、その部品に対応した参考取引価格を算出する。ここで言う同一ジャンルとは、同一の車両サイズや、同一車両形状のことである。例えば、Cセグメントに分類される車両同士、或いはSUV(Sport Utility Vehicle)同士を同一ジャンルの車両として参考取引価格を算出する。
【0020】
こうして、個々の中古部品の情報は、部品情報管理サーバー4により管理される。そして、2次利用者6は、購入したい中古部品があるときは、部品情報管理サーバー4から中古部品を検索することができる。2次利用者6は、検索のために、購入を希望する中古部品に関する情報を部品情報管理サーバー4に送信する(図1に示される通信B)。2次利用者6が送信する情報は、例えば、中古部品の種類、中古部品の劣化度合い等を含む。中古部品の劣化度合いは、2次利用者6がその中古部品に対して求める寿命であってもよい。例えば、2次利用者6がその中古部品をある決まった期間や距離の間のみ使用する予定であれば、その期間や距離が求める寿命となる。例えば、中古部品を使用予定の車両の次の車検までの期間を求める寿命として部品情報管理サーバー4に送信してもよい。
【0021】
部品情報管理サーバー4は、登録された中古部品の中から、車両状態情報、劣化度合い情報、及び相場情報のうち少なくともいずれかが2次利用者6の希望に近い中古部品を選定し、その中古部品についての車両状態情報、劣化度合い情報、相場情報を選定結果として通信端末62に出力する(図1に示される通信C)。車両状態情報は、通信Aに含まれる車両状態情報と等しい。劣化度合い情報は、通信Aに含まれる劣化情報及び部品情報管理サーバー4が算出した劣化度合いを含む。相場情報は、部品情報管理サーバー4が算出した参考取引価格を含む。
【0022】
2次利用者6は、選定結果として出力された中古部品が、自身の希望に合致するか否かを判断する。そして、希望に合う中古部品が見つかったら、1次利用者2から購入することができる。2次利用者6は、想定する中古部品の用途に合わせて検索情報を変えることができる。例えば、品質を重視する場合は、部品の使用年数や求める寿命を検索情報として送信する。或いは価格を重視する場合は、希望する価格を検索情報として送信する。部品情報管理サーバー4は、検索情報に対してできる限り条件の良い中古部品を選定することが望ましい。例えば、検索情報として価格が送信された場合は、部品情報管理サーバー4は、参考取引価格が2次利用者6の希望に近い部品の中から、使用年数ができる限り短く、劣化度合いができる限り低い部品を選択し、当該部品についての情報を通信端末62に出力する。2次利用者6は、こうして適切な部品を選定することができる。
【0023】
2次利用者6が購入した中古部品は、2次利用車両8に使用される。2次利用者6は、部品情報管理サーバー4から情報を得ることで、劣化度合いを考慮した上で中古部品を積極的に活用することができる。
【0024】
次に、1次利用者2、2次利用者6、及びそれ以降の利用者による中古部品活用システムの利用の流れについて図2のフローチャートを用いて説明する。
【0025】
1次利用者2は、部品単位での車両の売却の意思がある場合に中古部品活用システムを利用する。1次利用者2に部品単位での車両の売却の意思がない場合、ステップS01のNoルートが選択される。この場合、何も起こらない。1次利用者2に部品単位での車両の売却の意思がある場合、ステップS01のYesルートが選択されてステップS02に進む。
【0026】
ステップS02では、1次利用者2は、車両から取り外した部品のコード情報、車両状態情報、及び劣化情報を取得し、それらの情報を紐づける。
【0027】
ステップS03では、1次利用者2は、車両から取り外した中古部品の車両状態情報及び劣化情報を、コード情報と紐づけた状態で部品情報管理サーバー4へアップロードする。アップロードは、通信端末22を介して情報を送信することで行われる。
【0028】
ステップS04では、2次利用者6が、中古部品活用システムを使って、希望する用途に合った中古部品を検索する。これは、2次利用者6が部品情報管理サーバー4に検索情報を送信し、部品情報管理サーバー4が2次利用者6の希望に合った中古部品についての情報を出力することで行われる。こうして、2次利用者6は、部品情報管理サーバー4に登録された中古部品の中から、希望する用途に適した中古部品を探し出すことができる。
【0029】
ステップS05では、2次利用者6が、購入した中古部品の情報と、購入した中古部品を次に使用する車両の情報とを紐づけ、サーバーへアップロードする。アップロードされるサーバーは、部品情報管理サーバー4であってもよいし、部品情報管理サーバー4とは異なる第2のサーバーであってもよい。車両の情報は、車体番号などの車両を識別する情報である。2次利用者6により購入された部品がその後使用される車両の情報と紐づけられてサーバー上で管理されることで、中古部品の次の利用者も、その中古部品についての情報を知ることができる。例えば、中古部品が搭載された車両の利用者が、車体番号をサーバーに入力することで車体番号に対応した中古部品についての情報を取得することができるようになる。また、更にその車両が解体されて中古部品が3次利用のために売却される場合にも、中古部品を購入する3次利用者が部品の劣化度合いをサーバーに登録された情報から知ることができるようになり、更なる中古部品の活用にも繋がる。
【0030】
中古部品の利用が繰り返され、2次利用者以降に部品のN次利用者が存在する場合は、ステップSNに進む。ステップSNでは、ステップS02からステップS05と同じ流れがN-1次利用者、N次利用者、及び部品情報管理サーバー4との間で繰り返される。こうして、中古部品が繰り返し利用される場合、2次利用者以降の中古部品の利用者、或いは中古部品が搭載された車両の利用者も、自分が使用している中古部品についての情報を任意に取得することができるようになる。
【符号の説明】
【0031】
2 1次利用者
4 部品情報管理サーバー
6 2次利用者
8 2次利用車両
22 通信端末
24 ECU
42 通信装置
44 記憶装置
62 通信端末
図1
図2