(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-18
(45)【発行日】2025-08-26
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
F01P 7/04 20060101AFI20250819BHJP
F01P 1/06 20060101ALI20250819BHJP
B60K 11/04 20060101ALN20250819BHJP
【FI】
F01P7/04 N
F01P1/06 A
F01P7/04 L
F01P7/04 Q
B60K11/04 L
(21)【出願番号】P 2022123421
(22)【出願日】2022-08-02
【審査請求日】2024-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】五十部 晋平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 卓弘
(72)【発明者】
【氏名】市川 晃次
(72)【発明者】
【氏名】岩本 勇志
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-175171(JP,A)
【文献】特開2015-105598(JP,A)
【文献】特開2001-317354(JP,A)
【文献】特開2015-190329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 11/00-15/10
F01N 3/00、3/02、 3/04- 3/38、
9/00-11/00
F01P 1/00-11/20
F02D 43/00-45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンコンパートメント内に外気を取り込む電動ファンを制御する車両制御装置であり、
エンジンの排気管に取り付けられた排気温度センサによって検出した排気温度、及び車速センサによって検出した車速を取得し、
前記排気温度と前記車速とに基づいて前記排気温度センサの特定の部位の推定温度を算出する温度推定処理と、
前記車速が判定車速未満になったときの前記推定温度が閾値以上である場合に前記電動ファンを稼働させる送風処理と、
を実行する処理回路を備えた車両制御装置。
【請求項2】
前記処理回路が、前記温度推定処理において、前記排気温度に基づいて算出した温度ベース値に対して前記車速が高いほど大きな値を減算する補正を施すことによって補正後ベース値を算出し、排気の流量が多いほど小さな時定数を用いる一次遅れ処理を前記補正後ベース値に対して施すことによって前記推定温度を算出する
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記処理回路が、前記温度推定処理において、前記排気管における取付ボスに締結される前記排気温度センサのネジ部の温度を、前記推定温度として算出する
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記処理回路は、前記送風処理において、前記電動ファンの稼働を開始してから時間の経過ともにカウンタをカウントアップさせ、前記カウンタが停止閾値に達したときに前記電動ファンを停止させる
請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記処理回路は、前記車速が前記判定車速未満になったときの前記推定温度が前記閾値以上であると判定したときの前記推定温度が高いほど、前記停止閾値を大きな値に設定する
請求項4に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両制御装置が開示されている。排気管には排気通路を流れる排気の温度を検出する排気温度センサが取り付けられている。特許文献1に開示されている車両制御装置には、排気温度センサが接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車両が走行しているときには、フロントグリルからエンジンコンパートメント内に走行風が流れ込む。そのため、排気温度センサにおける排気管の外に露出している部分は、エンジンコンパートメント内を流れる走行風によって冷却される。しかし、車両が停止している場合のように、走行風による冷却が十分に行われなくなると、排気管からの熱伝達によってこの部分の温度が過剰に高くなってしまうおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決するための車両制御装置はエンジンコンパートメント内に外気を取り込む電動ファンを制御する。この車両制御装置は、エンジンの排気管に取り付けられた排気温度センサによって検出した排気温度、及び車速センサによって検出した車速を取得し、前記排気温度と前記車速とに基づいて前記排気温度センサの特定の部位の推定温度を算出する温度推定処理と、前記車速が判定車速未満になったときの前記推定温度が閾値以上である場合に前記電動ファンを稼働させる送風処理と、を実行する処理回路を備えている。
【発明の効果】
【0006】
上記の車両制御装置は、無駄に電動ファンを駆動してしまうことを抑止しつつ、排気温度センサにおける排気管の外に露出している部分の過熱を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、車両に搭載されたエンジンと車両制御装置とを示す模式図である。
【
図2】
図2は、排気温度センサと、車両制御装置の概略構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、ネジ部とブッシュ部と温度の推移を示すタイムチャートである。
【
図4】
図4は、温度推定処理にかかる処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、送風処理を開始する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、送風処理を終了させる処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、車両制御装置の一実施形態について、
図1~
図6を参照して説明する。
<車両100の構成>
図1に示すように、車両100のエンジンコンパートメント110内に、エンジン10が搭載されている。エンジン10に、排気管17が取り付けられている。エキゾーストマニホルド11は、エンジン10のシリンダヘッド内に設けられている。排気管17は、エキゾーストマニホルド11に接続されている。排気管17の途中に、排気浄化装置18が取り付けられている。排気管17は、車両100の床下を通って車両100の後方に向かって延びている。排気管17における排気浄化装置18よりも上流の部分に、排気温度センサ200が取り付けられている。
【0009】
図1に示すように、車両100は、前端部に、エンジンコンパートメント110内に外気を取り込むフロントグリル120を備えている。車両100が前進しているときには、走行風の一部がフロントグリル120を通じてエンジンコンパートメント110内に取り込まれる。そして、車両100は、エンジンコンパートメント110内に、ラジエータ42を備えている。ラジエータ42は、冷却水通路45を介してエンジン10と接続されている。そして、冷却水通路45の途中にはウォータポンプ44が設けられている。ラジエータ42は、フロントグリル120とエンジン10との間に配置されている。ラジエータ42は、外気との熱交換によってエンジン10の冷却水の熱を放熱させる。ラジエータ42は、電動ファン43と組み合わせてユニット化されている。電動ファン43は、フロントグリル120を通じて外気をエンジンコンパートメント110内に取り込む。電動ファン43は外気をラジエータ42に引き込んで冷却水からの放熱を促進させる。
【0010】
エンジン10は、車両制御装置130とワイヤーハーネスで電気的に接続されている。車両制御装置130は、エンジン10を制御する。車両制御装置130は、エンジン10だけでなく、車両100の各部を制御する。例えば、車両制御装置130は、電動ファン43に供給する電力を調整して電動ファン43の回転速度を制御する。
【0011】
<車両制御装置130の構成>
図2に示すように、車両制御装置130は、プログラムを記憶した記憶装置132と、処理回路131と、を備えている。処理回路131は、記憶装置132に記憶されているプログラムを実行して各種の制御を実行する。
【0012】
エンジン10の状態、及び車両100の状態を検出する各種のセンサが、車両制御装置130に接続されている。例えば、車両100の速度である車速SPDを検出する車速センサ140が、車両制御装置130に接続されている。電圧センサ141が、車両制御装置130に接続されている。電圧センサ141は、電動ファン43を含む電装部品に電力を供給するバッテリの電圧Vbを検出する。エアフロメータ142が、車両制御装置130に接続されている。エアフロメータ142は、吸気温THAと、吸入空気量Gaとを検出する。吸気温THAは、エンジン10の吸気通路を通じて気筒内に吸入される空気の温度である。吸入空気量Gaは、エンジン10の吸気通路を通じて気筒内に吸入される空気の質量である。クランクポジションセンサ143が、車両制御装置130に接続されている。クランクポジションセンサ143は、エンジン10の出力軸であるクランクシャフトの回転位相の変化に応じたクランク角信号を出力する。車両制御装置130は、クランク角信号に基づいて、機関回転速度NEを算出する。機関回転速度NEは、クランクシャフトの回転速度である。水温センサ144が、車両制御装置130に接続されている。車両制御装置130は、機関回転速度NE及び吸入空気量Gaに基づいて機関負荷率KLを算出する。機関負荷率KLは、エンジン10の燃焼室における空気充填率の指標値である。具体的には、機関負荷率KLは、基準流入空気量に対する1気筒の1燃焼サイクル当たりの流入空気量の割合である。なお、基準流入空気量は、機関回転速度NEに応じて可変設定される。水温センサ144が、車両制御装置130に接続されている。水温センサ144は、冷却水通路45を流れる冷却水の温度である水温THWを検出する。車両制御装置130は、水温THWに応じて電動ファン43の稼働を制御する。例えば、車両制御装置130は、水温THWが既定温度未満のときには、電動ファン43を稼働させない。そして、車両制御装置130は、水温THWが既定温度以上とのきには、水温THW高いほど電動ファン43の回転速度を高くする。アクセルポジションセンサ145が、車両制御装置130に接続されている。アクセルポジションセンサ145は、アクセル操作量を検出する。車両制御装置130にブレーキセンサ146が接続されている。ブレーキセンサ146は、ブレーキ操作量を検出する。排気温度センサ200が、車両制御装置130に接続されている。排気温度センサ200は、排気管17における排気浄化装置18よりも上流側の部分に設置されている。排気温度センサ200は、排気温度Thexを検出する。
【0013】
<排気温度センサ200の構成>
図2に示すように、排気温度センサ200は、センサ本体210と、ケース220と、ネジ部230と、ワイヤ240と、ブッシュ250を備えている。センサ本体210は、先端部に排気の温度を検出する感温部を備えている。センサ本体210は、末端部が筒状のケース220に収容されている。センサ本体210の末端部にはワイヤ240が接続されている。ワイヤ240は、車両制御装置130に接続されている。ケース220は、例えばステンレス製である。ケース220の先端は、ネジ部230に取り付けられている。ネジ部230は、例えばステンレス製である。ネジ部230は、センサ本体210が挿通する孔を備えている。センサ本体210は、この孔に差し込まれている。ネジ部230の外周面は、雄ネジになっている。ケース220の末端は、ブッシュ250によって覆われている。ブッシュ250は、例えばゴム製である。ブッシュ250は、ケース220の末端とワイヤ240とが接触することによってワイヤ240が傷つくことを抑制する。
【0014】
図2に示すように、排気管17は、取付ボス171を備えている。取付ボス171の内周面は、雌ネジになっている。排気温度センサ200は、ネジ部230の雄ネジと、取付ボス171の雌ネジとを螺合させて排気管17に取り付けられている。これにより、排気温度センサ200の感温部は、排気管17内に位置している。一方で、ネジ部230の一部、ケース220、ブッシュ250、及びワイヤ240は排気管17の外に露出している。また、ネジ部230は、排気管17と接している。
【0015】
<アイドリング状態での停車中のブッシュ250の過熱について>
車両100が走行しているときには、フロントグリル120からエンジンコンパートメント110内に走行風が流れ込む。そのため、排気温度センサ200における排気管17の外に露出している部分は、エンジンコンパートメント110内を流れる走行風によって冷却される。しかし、車両100が停止している場合のように、走行風による冷却が十分に行われなくなると、排気管17からの熱伝達によって排気温度センサ200における排気管17の外に露出している部分の温度が過剰に高くなってしまうおそれがある。
【0016】
図3における実線L1は、排気温度センサ200のネジ部230の温度の推移を示している。
図3における実線L2は、排気温度センサ200のブッシュ250の温度の推移を示している。
図3に示すデータは、ネジ部230と、ブッシュ250に温度センサを取り付けた状態で車両100を走行させて取得した実験データである。
図3に示す実験では、時刻T0から車両100が走行をはじめている。そして、この実験では、時刻T10において車両100が停車する。そして、車両100は、時刻T10以降は停車し続けている。なお、この実験における時刻T10以降は、停車中もエンジン10がアイドリング状態で稼働し続けている。また、この実験においては、時刻T10以降のアイドリング運転の間、電動ファン43は停止している。
【0017】
上述したように、ネジ部230は、排気管17と接している。ネジ部230は、走行中の排気の熱によって排気管17とともに温められる。そのため、実線L1で示すように、ネジ部230の温度は走行中に上昇し続けている。車両100が加速して車速SPDが高い状態が継続すると、ネジ部230の温度の上昇速度は高くなる。時刻T10におけるネジ部230の温度は「Th10」に達している。時刻T10以降は、アイドリング運転であるため、排気から受ける熱の量が少ない。そのため、時刻T10以降は、放熱によってネジ部230の温度は次第に低下している。
【0018】
ブッシュ250は、排気管17の外に露出している。したがって、ネジ部230は、走行中はエンジンコンパートメント110内を流れる走行風によって冷却されている。そのため、ケース220を介したネジ部230からの伝熱はあるものの、走行中はブッシュ250の温度はネジ部230の温度よりも上昇しにくい。また、車両100が加速して車速SPDが高くなると、走行風による冷却が促進されるため、ブッシュ250の温度は低下する。時刻T10以降は、車両100が停車して走行風による冷却が行われなくなるため、ケース220を介したネジ部230からの伝熱によってブッシュ250の温度は上昇する。「Thx」は、ブッシュ250の耐熱限界温度である。
図3に示す例の場合、時刻T10以降にブッシュ250の温度が「Thx」を超えてしまっている。こうした過熱を抑制するために、車両制御装置130は、ネジ部230の温度を推定する推定処理を実行する。そして、車両制御装置130は、車両100が停車したときのネジ部230の推定温度Thestが閾値Thth以上である場合に、送風処理を実行する。送風処理は、水温THWが既定温度未満であったとしても電動ファン43を稼働させる処理である。
【0019】
<温度推定処理について>
図4は、温度推定処理にかかるルーチンにおける処理の流れを示すフローチャートである。
図4に示すルーチンは、車両制御装置130が稼働しているときに、処理回路131によって繰り返し実行される。
図4に示すように、処理回路131は、このルーチンを開始すると、まずステップS100の処理において、温度ベース値Thbsを算出する。具体的には、処理回路131は、排気温度センサ200が検出した排気の温度に、補正係数を乗じた積を算出する。そして、この積を温度ベース値Thbsとする。補正係数は、温度推定処理を通じて排気の温度に基づいて推定温度Thestを算出することができるように、予め行う実験を通じて設定されている「1.0」よりも小さな正の値である。
【0020】
次に、処理回路131は、ステップS110の処理において、補正値Thcorrを算出する。具体的には、処理回路131は、車速SPDと吸気温THAとを入力として演算を行って補正値Thcorrを算出する。処理回路131は、車速SPDが高いほど大きな値になるように補正値Thcorrを算出する。また、処理回路131は、吸気温THAが低いほど大きな値になるように補正値Thcorrを算出する。なお、処理回路131は、エアフロメータ142が故障している場合には、吸気温THAを40℃であるとみなして補正値Thcorrを算出する。
【0021】
次に、ステップS120の処理において、処理回路131は、補正後ベース値Thbscを算出する。具体的には、処理回路131は、温度ベース値Thbsから補正値Thcorrを減算する。そして、処理回路131は、得られた差を補正後ベース値Thbscとする。
【0022】
次に、ステップS130の処理において、処理回路131は、時定数τを算出する。具体的には、処理回路131は、吸入空気量Gaが多いほど排気の流量が多いとみなして、より小さな時定数τを算出する。そして、次のステップS140の処理において、処理回路131は、ネジ部230の温度の推定値である推定温度Thestを算出する。車両制御装置130は、補正後ベース値Thbscへと一次遅れ要素を有して変化していく値として補正値Thcorrを算出する。具体的には、処理回路131は、補正後ベース値Thbscから、前回ステップS140の処理を通じて算出した推定温度Thestを引いた差を時定数τで除算した商を算出する。そしは、処理回路131は、この商を前回ステップS140の処理を通じて算出した推定温度Thestに加算して算出した和を新たな推定温度Thestとする。すなわち、ステップS140の処理は、排気の流量が多いほど小さな時定数τを用いる一次遅れ処理を補正後ベース値Thbscに対して施すことによって推定温度Thestを算出する処理である。ステップS100~ステップS140の一連の処理は温度推定処理である。温度推定処理を実行して新たな推定温度Thestを算出すると、処理回路131は、このルーチンを一旦終了させる。
【0023】
<送風処理について>
次に、
図5及び
図6を参照して送風処理にかかるルーチンについて説明する。なお、
図5は、送風処理を開始するためのルーチンにおける処理の流れを示している。
図5に示すルーチンは、
図4に示した温度推定処理を通じて推定温度Thestが更新される度に、処理回路131によって実行される。なお、送風処理が開始された後の送風処理が実行されている間は、このルーチンは実行されない。
【0024】
このルーチンを開始すると、処理回路131は、まずステップS200の処理において、推定温度Thestが閾値Thth以上であるかを判定する。閾値Ththは、推定温度Thestが閾値Thth以上であることに基づいて、走行風による冷却が行われない場合に、ブッシュ250が過熱に陥る可能性があると判定できるようにその大きさが設定されている。処理回路131は、ステップS200の処理において推定温度Thestが閾値Thth未満であると判定した場合(ステップS200:NO)には、処理をステップS240へと進める。そして、処理回路131は、ステップS240の処理において、過熱条件フラグを「0」にする。なお、過熱条件フラグは、「1」である場合にブッシュ250が過熱する可能性があることを示すフラグである。処理回路131は、ステップS240の処理を実行すると、このルーチンを一旦終了させる。
【0025】
一方で、処理回路131は、ステップS200の処理において推定温度Thestが閾値Thth以上であると判定した場合(ステップS200:YES)には、処理をステップS210へと進める。そして、処理回路131は、ステップS210の処理において、車速SPDが判定車速SPDth未満であるかを判定する。なお、判定車速SPDthは、車速SPDが判定車速SPDth未満であることに基づいて、エンジンコンパートメント110内の走行風の流れがほとんどなくなっていることを判定することができるようにその大きさが設定されている。例えば、判定車速SPDthは、時速10キロメートルである。なお、判定車速SPDthは、時速10キロメートルよりも小さな値であってもよい。例えば、時速1キロメートルであってもよい。
【0026】
処理回路131は、ステップS210の処理において車速SPDが判定車速SPDth以上であると判定した場合(ステップS210:NO)には、処理をステップS240へと進める。そして、処理回路131は、このルーチンを一旦終了させる。一方で、処理回路131は、ステップS210の処理において車速SPDが判定車速SPDth未満であると判定した場合(ステップS210:YES)には、処理をステップS220へと進める。そして、処理回路131は、ステップS220の処理において、排気温度センサ200に異常がないかを判定する。処理回路131は、排気温度センサ200から排気の温度の信号が出力されていないとき、又は排気の温度の信号が正常な範囲を超えているときに、排気温度センサ200に異常があると判定する。そして、処理回路131は、排気温度センサ200に異常があると判定していない場合には、排気温度センサ200に異常がないと判定する。処理回路131は、ステップS220の処理において排気温度センサ200に異常があると判定した場合には(ステップS220:NO)には、処理をステップS240へと進める。そして、処理回路131は、このルーチンを一旦終了させる。一方で、処理回路131は、ステップS220の処理において、排気温度センサ200に異常がないと判定した場合(ステップS220:YES)には、処理をステップS230へと進める。そして、処理回路131は、ステップS230の処理において、過熱条件フラグを「1」にする。
【0027】
次のステップS250の処理において、処理回路131は、電圧Vbが駆動下限値Vbth以上であるかを判定する。なお駆動下限値Vbthは、電圧Vbが駆動下限値Vbth以上であることに基づいて、電動ファン43の駆動を開始したとしても車両100の各部の機器を安定して駆動することができると判定できるようにその大きさが設定されている。処理回路131は、ステップS250の処理において電圧Vbが駆動下限値Vbth以上であると判定した場合(ステップS250:YES)には、処理をステップS260へと進める。そして、処理回路131は、ステップS260の処理において駆動要求フラグを「1」に設定する。なお、処理回路131は、駆動要求フラグが「1」である場合に、送風処理の実行が要求されていると判定して電動ファン43を駆動する。すなわち、送風処理を開始する。このときには、処理回路131は、水温THWに依らず、排気温度センサ200を十分に冷却することができる回転速度で電動ファン43を稼働させる。こうしてステップS260の処理を実行すると処理回路131は、このルーチンを一旦終了させる。一方で、処理回路131は、ステップS250の処理において電圧Vbが駆動下限値Vbth未満であると判定した場合(ステップS250:NO)には、ステップS260の処理を実行せずにそのままこのルーチンを一旦終了させる。すなわち、処理回路131は、この場合には、送風処理を実行しない。
【0028】
図6は、送風処理を終了させるためのルーチンにおける処理の流れを示している。このルーチンは、車両制御装置130が稼働しているときに、処理回路131によって繰り返し実行される。処理回路131は、このルーチンを開始すると、まずステップS300において、過熱条件フラグが「0」から「1」に変更されたタイミングであるかを判定する。具体的には、下記の2つの条件がともに成立しているときに、過熱条件フラグが「0」から「1」に変更されたタイミングであると判定する。
【0029】
・現在の過熱条件フラグが「1」である。
・前回S300を実行したときの過熱条件フラグが「0」である。
処理回路131は、ステップS300の処理において過熱条件フラグが「0」から「1」に変更されたタイミングであるかと判定した場合(ステップS300:YES)には、処理をステップS310へと進める。ステップS310の処理において、処理回路131は、カウンタCNTを「0」にリセットする。なお、カウンタCNTは送風処理によって電動ファン43を稼働させている時間を計時するためのカウンタである。次に処理回路131は、停止閾値CNTthを決定する。停止閾値CNTthは、送風処理によって電動ファン43を稼働させる期間の長さを決定する値である。処理回路131は、後述するステップS340の処理において、カウンタCNTが停止閾値CNTthに達したことに基づいて送風処理を停止させる。なお、処理回路131は、ステップS300の処理において肯定判定がなされたときの推定温度Thestが高いほど、ステップS320の処理において停止閾値CNTthをより大きな値に設定する。
【0030】
処理回路131は、次のステップS330の処理においてカウンタCNTをカウントアップさせる。そして、処理回路131は、処理をステップS340へと進める。処理回路131は、ステップS340の処理において、停止条件が成立しているかを判定する。停止条件は、下記の2つの条件の何れかが成立しているときに、停止条件が成立していると判定する。
【0031】
・カウンタCNTが停止閾値CNTth以上である。
・電圧Vbが継続下限値未満の状態が所定時間以上継続している。
なお、継続下限値は、駆動下限値Vbthよりも小さい値である。処理回路131は、ステップS340の処理において停止条件が成立していると判定した場合(ステップS340:YES)には、処理をステップS350へと進める。そして、処理回路131は、ステップS350の処理において駆動要求フラグを「0」に変更して電動ファン43の稼働を停止させる。すなわち、処理回路131は、ステップS350の処理において送風処理を停止させる。なお、処理回路131は、送風処理を停止させると、カウンタCNT及び停止閾値CNTthをリセットする。そして、処理回路131は、このルーチンを一旦終了させる。
【0032】
処理回路131は、ステップS300の処理において過熱条件フラグが「0」から「1」に変更されたタイミングではないと判定した場合(ステップS300:NO)には、ステップS310及びステップS320の処理を実行せずに、処理をステップS330へと進める。そして、処理回路131は、ステップS330の処理の処理を通じてカウンタCNTをカウントアップしてステップS340に処理を進める。処理回路131は、ステップS340の処理において停止条件が成立していないと判定した場合(ステップS340:NO)には、ステップS350の処理を実行せずにそのままこのルーチンを一旦終了させる。
【0033】
<本実施形態の作用>
車両制御装置130は、車速SPDが判定車速SPDth未満になったときの推定温度Thestが閾値Thth以上である場合に、送風処理を実行して電動ファン43を駆動する。これにより、エンジンコンパートメント110内に外気が取り込まれる。その結果、排気温度センサ200における排気管17の外に露出している部分が、エンジンコンパートメント110内に取り込まれた外気によって冷却される。なお、車速SPDが低くなって排気温度センサ200における排気管17の外に露出している部分の温度が上昇し始めた場合でも、そのときの排気管17及び排気温度センサ200の温度が低い場合には、熱伝達による温度上昇は小幅なものとなる。そのため、排気温度センサ200の温度が低い場合には、電動ファン43を駆動しなくてもブッシュ250の温度が過剰に高くなることはない。車両制御装置130は、車速SPDが判定車速SPDth未満になったときの推定温度Thestが閾値Thth以上である場合に送風処理を実行する。そのため、車両制御装置130は、無駄に電動ファン43を駆動してしまうことを抑止できる。
【0034】
<本実施形態の効果>
(1)車両制御装置130は、無駄に電動ファン43を駆動してしまうことを抑止しつつ、排気温度センサ200におけるブッシュ250の過熱を抑制することができる。
【0035】
(2)排気温度センサ200は排気管17内を流れる排気によって温められた排気管17からの伝熱によって温められる。そのため、排気温度センサ200の温度は、排気温度Thexに対して一次遅れの要素を有して変化する。また、排気の流量が多いほど、排気温度センサ200の温度は速やかに排気温度Thexに収束するようになる。車両制御装置130は、排気の流量が多いほど小さな時定数τを用いる一次遅れ処理を補正後ベース値Thbscに対して施すことによって推定温度Thestを算出する。車両制御装置130は、こうして排気の流量の変化の影響を反映させた推定温度Thestを算出することができる。
【0036】
(3)車速SPDが高いほど、走行風によって排気温度センサ200が冷却されやすい。車両制御装置130は、温度ベース値Thbsに対して車速SPDが高いほど大きな値を減算する補正を施すことによって補正後ベース値Thbscを算出する。車両制御装置130は、こうして走行風による冷却の影響を反映させた補正後ベース値Thbscを算出する。すなわち、車両制御装置130は、排気の流量の変化の影響及び走行風による冷却の影響を反映させて推定温度Thestを算出することができる。
【0037】
(4)排気管17の取付ボス171と締結される排気温度センサ200のネジ部230は、排気管17に接しており、排気管17からの熱伝達の起点になる部分である。そして、ネジ部230の温度が高いほど、排気管17に蓄えられている熱量が多いと推定できる。そのため、ネジ部230の温度が高いほど排気温度センサ200における排気管17の外に露出している部分の温度が熱伝達によって上昇しやすい状態であると推定できる。車両制御装置130は、排気管17からの熱伝達の起点になるネジ部230の温度を推定温度Thestとして算出するようにしている。これにより、車両制御装置130は、推定温度Thestに基づいて電動ファン43を適切に制御することができる。
【0038】
(5)車速SPDが判定車速SPDth以上になったことが電動ファン43を停止させる条件になっている場合には、停車と発進を繰り返すような場合に、電動ファン43の稼働と停止が繰り返されることになる。この場合には、十分な冷却が行われず、排気管17からの熱伝達により排気温度センサ200における排気管17の外に露出している部分の温度が上昇し続けるおそれがある。また、稼働と停止を短い周期で繰り返すことは、バッテリを劣化させる原因にもなる。これに対して、車両制御装置130は、送風処理において、カウンタCNTが停止閾値CNTthに達したときに電動ファン43を停止させる。そのため、車両制御装置130は、電動ファン43の稼働と停止が短い周期で繰り返されることを抑制することができる。
【0039】
(6)車速SPDが判定車速SPDth未満になったときの推定温度Thestが閾値Thth以上であると判定したときの推定温度Thestが高いほど、排気管17に蓄えられている熱量が多いと推定できる。そこで、車両制御装置130は、車速SPDが判定車速SPDth未満になったときの推定温度Thestが閾値Thth以上であると判定したときの推定温度Thestが高いほど、停止閾値CNTthを大きな値に設定する。これにより、車両制御装置130は、排気管17に蓄えられている熱量が多く、十分な冷却のために電動ファン43の稼働を長く続ける必要があるときほど、電動ファン43を長く稼働させる。すなわち、車両制御装置130は、必要に応じた適切な稼働期間の制御を実現することができる。
【0040】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0041】
・推定温度Thestとしてネジ部230の温度を推定する例を示したが、車両制御装置130が、推定温度Thestとして排気温度センサ200におけるネジ部230以外の部分の温度を推定するようにしてもよい。
【0042】
・ブッシュ250が過熱に陥らないように送風処理を実行する例を示したが、車両制御装置130は、排気温度センサ200における排気管17の外に露出している他の部分の過熱を抑制するために送風処理を実行するものであってもよい。
【0043】
・S220の処理は省略してもよい。すなわち、排気温度センサ200に異常がないことが、送風処理を行うための条件に含まれていなくてもよい。
・送風処理を停止させる条件は適宜変更することができる。例えば、常に一定の期間が経過したときに送風処理を停止させるようにしてもよい。車両100が走行しはじめたと判定したときに送風処理を停止させるようにしてもよい。
【0044】
・上記実施形態では、車両制御装置130は、処理回路131と記憶装置132とを備えて、ソフトウェア処理を実行する。しかしながら、これは例示に過ぎない。例えば、車両制御装置130は、上記実施形態において実行されるソフトウェア処理の少なくとも一部を処理する専用のハードウェア回路(例えばASICなど)を備えてもよい。すなわち、車両制御装置130は、以下の(a)~(c)のいずれかの構成であればよい。(a)車両制御装置130は、プログラムに従って全ての処理を実行する実行装置と、プログラムを記憶する記憶装置とを備える。すなわち、車両制御装置130は、ソフトウェア実行装置を備える。(b)車両制御装置130は、プログラムに従って処理の一部を実行する実行装置と、記憶装置とを備える。さらに、車両制御装置130は、残りの処理を実行する専用のハードウェア回路を備える。(c)車両制御装置130は、全ての処理を実行する専用のハードウェア回路を備える。ここで、ソフトウェア実行装置、及び/又は、専用のハードウェア回路は複数であってもよい。すなわち、上記処理は、1つ又は複数のソフトウェア実行装置および1つ又は複数の専用のハードウェア回路の少なくとも一方を備えた処理回路(processing circuitry)によって実行され得る。プログラムを格納する記憶装置すなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【符号の説明】
【0045】
10…エンジン、17…排気管、100…車両、110…エンジンコンパートメント、120…フロントグリル、130…車両制御装置、131…処理回路、132…記憶装置、140…車速センサ、141…電圧センサ、171…取付ボス、200…排気温度センサ、230…ネジ部、250…ブッシュ