(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-18
(45)【発行日】2025-08-26
(54)【発明の名称】車両制御装置、それを備えた車両および車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
B60L 53/66 20190101AFI20250819BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20250819BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20250819BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20250819BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20250819BHJP
【FI】
B60L53/66
B60L50/60
B60L58/12
H02J7/00 P
B60L53/14
(21)【出願番号】P 2022158108
(22)【出願日】2022-09-30
【審査請求日】2024-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 友也
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-127296(JP,A)
【文献】特開2021-191033(JP,A)
【文献】国際公開第2014/162648(WO,A1)
【文献】特開2020-99184(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2022/0289062(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00- 3/12
B60L 7/00-13/00
B60L 15/00-58/40
H02J 7/00- 7/12
H02J 7/34- 7/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の外部に設けられた充電設備から供給される電力により前記車両に搭載された蓄電装置を充電するための制御を実行する車両制御装置であって、
充電規格に定められた通信シーケンスに従って前記充電設備との間での信号の送受信を制御するプロセッサを備え、
前記プロセッサは、前記充電設備から前記車両への電力供給の開始に先立ち、前記充電設備から充電許可を取得するための第1信号を前記充電設備に送信し、
前記第1信号は、前記充電設備から前記車両への充電条件を示す充電フレームを含み、
前記プロセッサは、
前記充電許可を取得した場合、前記充電設備からの電力供給による前記蓄電装置の充電制御を開始する一方で、
前記充電許可を取得しなかった場合、前記充電許可の取得を再び試行するために前記第1信号のうちの一部が修正された第2信号を前記充電設備に送信する、車両制御装置。
【請求項2】
前記第1信号は、前記車両から前記充電設備への放電条件を示す放電フレームを更に含み、
前記第1信号と前記第2信号との差異は、前記放電フレームである、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記第2信号は、前記充電フレームと、前記放電フレームとを含み、
前記第2信号における前記放電条件には無効値が設定されている、請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記第2信号は、前記充電フレームを含む一方で、前記放電フレームを含まない、請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記放電条件は、各々前記充電規格に定められた、放電電圧の下限値と、放電電流の上限値と、放電下限電池残容量と、放電シーケンス管理番号とのうちの少なくとも1つを含む、請求項2~4のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項6】
前記第1信号は、前記充電規格において必須ではないと定められた任意条件を示す任意フレームを更に含み、
前記第1信号と前記第2信号との差異は、前記任意フレームである、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項7】
前記第2信号は、前記充電フレームと、前記任意フレームとを含み、
前記第2信号における前記任意条件には無効値が設定されている、請求項6に記載の車両制御装置。
【請求項8】
前記第2信号は、前記充電フレームを含む一方で、前記任意フレームを含まない、請求項6に記載の車両制御装置。
【請求項9】
前記任意条件は、前記車両の識別番号およびサービスコードのうちの少なくとも一方を含む、請求項6~8のいずれか1項に記載の車両制御装置。
【請求項10】
前記第1信号は、前記車両から前記充電設備への放電条件を示す放電フレームを更に含み、
前記第1信号における前記充電条件および前記放電条件のうちの少なくとも一方は、前記充電規格において必須ではないと定められた任意項目を含み、
前記第1信号と前記第2信号との差異は、前記任意項目である、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項11】
前記第2信号は、前記充電フレームと、前記放電フレームとを含み、
前記第2信号における前記任意項目には無効値が設定されている、請求項10に記載の車両制御装置。
【請求項12】
前記任意項目は、充電上限電池残容量、放電終了目安時間および車両供給可能電力量のうちの少なくとも1つを含む、請求項10または11に記載の車両制御装置。
【請求項13】
前記第1信号と前記第2信号との差異は、前記充電規格に定められた情報と、前記充電規格よりも前に規格化された従来規格に定められた情報との差異である、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項14】
前記第1信号は、前記充電規格の充電シーケンス管理番号を含み、
前記第2信号は、前記従来規格の充電シーケンス管理番号を含む、請求項13に記載の車両制御装置。
【請求項15】
前記第1信号は、各々前記充電規格に定められた、充電電圧の上限値および充電電流の上限値うちの少なくとも一方を含み、
前記第2信号は、各々前記従来規格に定められた、充電電圧の上限値および充電電流の上限値のうちの少なくとも一方を含む、請求項13に記載の車両制御装置。
【請求項16】
前記プロセッサは、
前記第2信号を前記充電設備に送信しても前記充電許可を取得しなかった場合、第3信号を前記充電設備に送信し、
前記第3信号を前記充電設備に送信しても前記充電許可を取得しなかった場合、第4信号を前記充電設備に送信し、
前記第4信号を前記充電設備に送信しても前記充電許可を取得しなかった場合、第5信号を前記充電設備に送信し、
前記第1信号は、
前記車両から前記充電設備への放電条件を示す放電フレームと、
前記充電規格において必須ではないと定められた任意条件を示す任意フレームとを更に含み、
前記第1信号における前記充電条件および前記放電条件のうちの少なくとも一方は、前記充電規格において必須ではないと定められた任意項目を含み、
前記第1信号と前記第2信号との差異は、前記放電フレームであり、
前記第1信号と前記第3信号との差異は、前記任意フレームまたは前記任意項目であり、
前記第1信号と前記第4信号との差異は、前記充電規格に定められた情報と、前記充電規格よりも前に規格化された従来規格に定められた情報との差異である、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項17】
請求項1に記載の車両制御装置を備える、車両。
【請求項18】
車両の外部に設けられた充電設備から供給される電力により前記車両に搭載された蓄電装置を充電する、車両の制御方法であって、
充電規格に定められた通信シーケンスに従って前記車両と前記充電設備との間で信号を送受信するステップを含み、
前記送受信するステップは、
前記充電設備から前記車両への電力供給の開始に先立ち、前記充電設備から充電許可を取得するための第1信号を前記車両から前記充電設備に送信するステップと、
前記車両が前記充電許可を取得した場合、前記充電設備からの電力供給を開始するステップと、
前記車両が前記充電許可を取得しなかった場合、前記充電許可の取得を再び試行するために前記第1信号のうちの一部が修正された第2信号を前記車両から前記充電設備に送信するステップとを含む、車両の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両制御装置、それを備えた車両および車両の制御方法に関し、より特定的には、車両外部に設けられた充電設備から供給される電力により車載の蓄電装置を充電する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-127296号公報(特許文献1)に開示された車両制御装置は、車両と充電器との間で送受信される信号の入出力を行うように構成された入出力部と、蓄電装置を充電するための規定の通信シーケンスに従って入出力部を介した信号の送受信を制御する制御部とを備える。通信シーケンスでは、車両が充電器から受信した信号が表す内容に基づいて車両が通信シーケンスを進めることが規定されている。制御部は、充電器から受信した信号が予め定められた特定信号である場合には、特定信号が表す内容に拘わらず通信シーケンスを進める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-127296号公報
【文献】特開2020-108244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、電気自動車、プラグインハイブリッド車等の車両の充電は、充電規格に定められた一連の処理を車両と充電設備とが協働して実行することにより進められる。その際、充電規格に定められた通信シーケンスに従って車両と充電設備との間で各種信号が送受信される。車両と充電設備とは、当該通信シーケンスを実行することで、通信リンクを確立したり充電条件を決定したり充電準備の成否を相互に確認したりすることができる。
【0005】
市場には様々な充電設備が存在する。一部の充電設備では、車両と充電設備との相互接続性に起因して車両を充電できない場合がある。より特定的には、たとえ車両が充電規格に定められた通信シーケンスに従って信号を送受信していたとしても、充電設備側の要因で充電が許可されない場合がある。この場合の相互接続性低下の主要因は、一部の充電設備の製造業者が充電規格に独自の基準を導入したり充電規格を独自に解釈したりしているためと推測される。車両のユーザにとっての利便性の観点からは、できるだけ多くの充電設備で車両を充電可能にすることが望ましい。
【0006】
本開示は上記課題を解決するためになされたものであり、本開示の目的の1つは、多くの充電設備での車両の充電を可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本開示の一態様に係る車両制御装置は、車両の外部に設けられた充電設備から供給される電力により車両に搭載された蓄電装置を充電するための制御を実行する。車両制御装置は、充電規格に定められた通信シーケンスに従って充電設備との間での信号の送受信を制御するプロセッサを備える。プロセッサは、充電設備から車両への電力供給の開始に先立ち、充電設備から充電許可を取得するための第1信号を充電設備に送信する。第1信号は、充電設備から車両への充電条件を示す充電フレームを含む。プロセッサは、充電許可を取得した場合、充電設備からの電力供給による蓄電装置の充電制御を開始する一方で、充電許可を取得しなかった場合、充電許可の取得を再び試行するために第1信号のうちの一部が修正された第2信号を充電設備に送信する。
【0008】
(2)第1信号は、車両から充電設備への放電条件を示す放電フレームを更に含む。第1信号と第2信号との差異は、放電フレームである。(3)第2信号は、充電フレームと、放電フレームとを含む。第2信号における放電条件には無効値が設定されている。(4)第2信号は、充電フレームを含む一方で、放電フレームを含まない。(5)放電条件は、各々充電規格に定められた、放電電圧の下限値と、放電電流の上限値と、放電下限電池残容量と、放電シーケンス管理番号とのうちの少なくとも1つを含む。
【0009】
(6)第1信号は、充電規格において必須ではないと定められた任意条件を示す任意フレームを更に含む。第1信号と第2信号との差異は、任意フレームである。(7)第2信号は、充電フレームと、任意フレームとを含む。第2信号における任意条件には無効値が設定されている。(8)第2信号は、充電フレームを含む一方で、任意フレームを含まない。(9)任意条件は、車両の識別番号およびサービスコードのうちの少なくとも一方を含む。
【0010】
(10)第1信号は、車両から充電設備への放電条件を示す放電フレームを更に含む。第1信号における充電条件および放電条件のうちの少なくとも一方は、充電規格において必須ではないと定められた任意項目を含む。第1信号と第2信号との差異は、任意項目である。(11)第2信号は、充電フレームと、放電フレームとを含む。第2信号における任意項目には無効値が設定されている。(12)任意項目は、充電上限電池残容量、放電終了目安時間および車両供給可能電力量のうちの少なくとも1つを含む。
【0011】
(13)第1信号と第2信号との差異は、充電規格に定められた情報と、充電規格よりも前に規格化された従来規格に定められた情報との差異である。(14)第1信号は、充電規格の充電シーケンス管理番号を含む。第2信号は、従来規格の充電シーケンス管理番号を含む。(15)第1信号は、各々充電規格に定められた、充電電圧の上限値および充電電流の上限値うちの少なくとも一方を含む。第2信号は、各々従来規格に定められた、充電電圧の上限値および充電電流の上限値のうちの少なくとも一方を含む。
【0012】
上記(1)の構成においては、充電許可を取得しなかった場合、第2信号が充電設備に送信され、充電許可の取得を再び試行される。第2信号は、上記(2)~(15)に記載されているように第1信号のうちの一部が修正された信号である。第2信号であれば充電設備が処理可能である場合、車両と充電設備との相互接続性が確保されて充電設備が車両に充電許可を与える可能性がある。よって、上記(1)の構成によれば、多くの充電設備で車両を充電できる。
【0013】
(16)プロセッサは、第2信号を充電設備に送信しても充電許可を取得しなかった場合、第3信号を充電設備に送信し、第3信号を充電設備に送信しても充電許可を取得しなかった場合、第4信号を充電設備に送信し、第4信号を充電設備に送信しても充電許可を取得しなかった場合、第5信号を充電設備に送信する。第1信号は、車両から充電設備への放電条件を示す放電フレームと、充電規格において必須ではないと定められた任意条件を示す任意フレームとを更に含む。第1信号における充電条件および放電条件のうちの少なくとも一方は、充電規格において必須ではないと定められた任意項目を含む。第1信号と第2信号との差異は、放電フレームである。第1信号と第3信号との差異は、任意フレームまたは任意項目である。第1信号と第4信号との差異は、充電規格に定められた情報と、充電規格よりも前に規格化された従来規格に定められた情報との差異である。
【0014】
上記(16)の構成においては、充電許可を取得しなかった場合、第2信号に限らず、第3信号および第4信号が送信される。後に詳細に説明するように、第2信号~第4信号は、充電設備が処理可能である可能性が高い順に送信される。よって、上記(16)の構成によれば、一層多くの充電設備で車両を充電できる。
【0015】
(17)本開示の他の一態様に係る車両は、上記(1)の車両制御装置を備える。
【0016】
上記(17)の構成によれば、多くの充電設備で充電可能な車両を提供できる。
【0017】
(18)本開示の更に他の一態様に係る車両の制御方法は、車両の外部に設けられた充電設備から供給される電力により車両に搭載された蓄電装置を充電する。車両の制御方法は、充電規格に定められた通信シーケンスに従って車両と充電設備との間で信号を送受信するステップを含む。送受信するステップは、第1~第3のステップを含む。第1のステップは、充電設備から車両への電力供給の開始に先立ち、充電設備から充電許可を取得するための第1信号を車両から充電設備に送信するステップである。第2のステップは、車両が充電許可を取得した場合、充電設備からの電力供給を開始するステップである。第3のステップは、車両が充電許可を取得しなかった場合、充電許可の取得を再び試行するために第1信号のうちの一部が修正された第2信号を車両から充電設備に送信するステップである。
【0018】
上記(18)の方法によれば、上記(1)の構成と同様に、多くの充電設備で車両を充電できる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、多くの充電設備で車両を充電できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の実施の形態に係る充電システムの全体構成を概略的に示す図である。
【
図2】車両および充電設備の構成を示すブロック図である。
【
図3】車両と充電設備との通信シーケンスの概要を示すシーケンス図である。
【
図4】本実施の形態における通信シーケンスの処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】5種類の再試行信号の特徴を説明するための図である。
【
図6】5種類の再試行信号に含まれるフレームの構造を概略的に示す図である。
【
図7】チャデモ方式におけるCANプロトコルに従う通信シーケンスの処理手順を示すフローチャートである。
【
図8】
図7のフローチャートに示される処理手順の続きを示すフローチャートである。
【
図9】CANプロトコルにおけるフレーム構造の概要を示す図である。
【
図10】本実施例における第n再試行信号を説明するための第1図である。
【
図12】本実施例における第n再試行信号を説明するための第2図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は繰り返さない。
【0022】
[実施の形態]
<充電システムの全体構成>
図1は、本開示の実施の形態に係る充電システムの全体構成を概略的に示す図である。充電システム100は、車両1と、充電設備2と、充電ケーブル3とを備える。
図1には、車両1と充電設備2とが充電ケーブル3により電気的に接続された状態が示されている。この状態で充電設備2から車両1への電力供給が行われる(いわゆる外部充電制御)。
【0023】
車両1は、たとえば電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)である。車両1は、外部充電を行うように構成された車両であれば、たとえばプラグインハイブリッド車(PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle)であってもよいし、燃料電池車(FCEV:Fuel Cell Electric Vehicle)であってもよい。
【0024】
充電設備2は、たとえば公共の充電スタンドに設けられたEVPS(Electric Vehicle Power Station)である。充電設備2は、本実施の形態では急速充電に対応するDC(Direct Current)充電器である。充電設備2から車両1への供給電力の大きさは特に限定されない。
【0025】
図2は、車両1および充電設備2の構成を示すブロック図である。充電設備2は、系統電源4からの供給電力(交流電力)を、車両1に搭載されたバッテリ14の充電電力(直流電力)に変換する。充電設備2は、電力線ACLと、AC/DC変換器21と、電圧センサ22と、給電線PL0,NL0と、制御回路20とを含む。
【0026】
電力線ACLは、系統電源4からの交流電力をAC/DC変換器21へ伝送する。AC/DC変換器21は、電力線ACL上の交流電力を、車両1に搭載されたバッテリ14を充電するための直流電力に変換する。AC/DC変換器21から出力された直流電力は、正極側の給電線PL0および負極側の給電線NL0によって供給される。電圧センサ22は、給電線PL0と給電線NL0との間の電圧を検出し、その検出結果を制御回路20に出力する。
【0027】
制御回路20は、プロセッサと、メモリと、ストレージと、入出力インターフェイス(いずれも図示せず)とを含む。プロセッサは、電圧センサ22により検出された電圧、車両1からの信号、メモリに記憶されたデータおよびストレージに格納されたプログラム(マップ等を含み得る)に基づいて、車両1との通信を制御するとともに、AC/DC変換器21による電力変換動作を制御する。
【0028】
車両1は、インレット11と、充電線PL1,NL1と、電圧センサ121と、電流センサ122と、充電リレー(CHR:Charge Relay)131,132と、システムメインリレー(SMR:System Main Relay)133,134と、バッテリ14と、電力線PL2,NL2と、PCU(Power Control Unit)15と、モータジェネレータ(MG:Motor Generator)16と、動力伝達ギヤ171と、駆動輪172と、ECU(Electronic Control Unit)10とを備える。
【0029】
インレット11は、嵌合等の機械的な連結を伴って充電ケーブル3のコネクタ31を挿入可能に構成されている。コネクタ31の挿入に伴い、給電線PL0とインレット11の正極側の接点との間の電気的な接続が確保されるとともに、給電線NL0とインレット11の負極側の接点との間の電気的な接続が確保される。また、インレット11とコネクタ31とが充電ケーブル3により接続されることで、車両1のECU10と充電設備2の制御回路20とがCAN(Controller Area Network)等の通信プロトコルに従う通信により各種信号(要求、指令、メッセージ、フレームなど)を相互に送受信することが可能になる。
【0030】
電圧センサ121は、充電リレー131,132よりもインレット11側において、充電線PL1と充電線NL1との間に電気的に接続されている。電圧センサ121は、充電線PL1と充電線NL1との間の直流電圧を検出し、その検出結果をECU10に出力する。電流センサ122は、たとえば充電線PL1に設けられている。電流センサ122は、充電線PL1を流れる電流を検出し、その検出結果をECU10に出力する。ECU10は、電圧センサ121および電流センサ122による検出結果に基づき、充電設備2からの供給電力(バッテリ14の充電量)を算出できる。
【0031】
充電リレー131は充電線PL1に接続され、充電リレー132は充電線NL1に接続されている。充電リレー131,132の閉成/開放は、ECU10からの指令に応じて制御される。充電リレー131,132が閉成され、かつSMR133,134が閉成されると、インレット11とバッテリ14との間での電力伝送が可能な状態となる。
【0032】
バッテリ14は、車両1の駆動力を発生させるための電力を供給する。また、バッテリ14は、モータジェネレータ16により発電された電力を蓄える。バッテリ14は、複数のセル140を含む組電池である。各セル140は、リチウムイオン電池またはニッケル水素電池等の二次電池である。なお、バッテリ14は、本開示に係る「蓄電装置」に相当する。バッテリ14に代えて電気二重層キャパシタなどのキャパシタを「蓄電装置」として用いてもよい。
【0033】
バッテリ14の正極は、SMR133を経由してノードND1に電気的に接続されている。ノードND1は、充電線PL1および電力線PL2に電気的に接続されている。同様に、バッテリ14の負極は、SMR134を経由してノードND2に電気的に接続されている。ノードND2は、充電線NL1および電力線NL2に電気的に接続されている。SMR133,134の閉成/開放は、ECU10からの指令に応じて制御される。
【0034】
バッテリ14には、電圧センサ141と、電流センサ142と、電池温度センサ143とが設けられている。電圧センサ141は、バッテリ14の電圧を検出する。電流センサ142は、バッテリ14に入出力される電流を検出する。電池温度センサ143は、バッテリ14の温度を検出する。各センサは、その検出結果をECU10に出力する。ECU10は、電圧センサ141および/または電流センサ142による検出結果に基づいて、バッテリ14のSOC(State Of Charge)を算出できる。
【0035】
PCU15は、電力線PL2,NL2とモータジェネレータ16との間に電気的に接続されている。PCU15は、コンバータおよびインバータ(いずれも図示せず)を含み、ECU10からの指令に従ってモータジェネレータ16を駆動する。
【0036】
モータジェネレータ16は、交流回転電機であり、たとえば、永久磁石が埋設されたロータを備えた永久磁石型同期電動機である。モータジェネレータ16の出力トルクは、動力伝達ギヤ171を通じて駆動輪172に伝達され、車両1を走行させる。また、モータジェネレータ16は、車両1の制動動作時には、駆動輪172の回転力によって発電できる。モータジェネレータ16による発電電力は、PCU15によってバッテリ14の充電電力に変換される。
【0037】
ECU10は、制御回路20と同様に、プロセッサ101と、メモリ102と、ストレージ103と、入出力インターフェイス104とを含む。ストレージ103は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリなどの書き換え可能な不揮発性メモリである。ストレージ103には、OS(Operating System)を含むシステムプログラムと、制御演算に必要なコンピュータ読み取り可能なコードを含む制御プログラムとが格納されている。プロセッサ101は、たとえばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro-Processing Unit)である。プロセッサ101は、システムプログラムおよび制御プログラムを読み出してメモリ102に展開して実行することで、車両1の制御(本実施の形態では特に外部充電制御)に関する様々な演算処理を実現する。入出力インターフェイス104は、ECU10と他の機器(この例では充電設備2であるが、サーバ、ユーザ端末なども含まれ得る)との間の各種データを入出力する。なお、ECU10は、機能ごとに複数のECUに分割されていてもよい。
【0038】
<通信シーケンス概要>
外部充電制御において、ECU10のプロセッサ101は、充電規格に定められた通信シーケンスに従って充電設備2との間でのメッセージの送受信を制御する。以下、通信シーケンスの一例を説明する。
【0039】
図3は、車両1と充電設備2との通信シーケンスの概要を示すシーケンス図である。図中、左側に充電設備2の制御回路20により実行されるシーケンス処理が示され、右側に車両1のECU10により実行されるシーケンス処理が示されている。以下では簡単のため、ECU10により実行される処理の実行主体を車両1と記載し、制御回路20により実行される処理の実行主体を充電設備2と記載する。
【0040】
図3に示される通信シーケンスは、車両1と充電設備2とが充電ケーブル3により電気的に接続された上で、車両1と充電設備2との間の通信を実現するための低圧電源が投入された場合に開始される。
【0041】
まず、車両1と充電設備2とのハンドシェイクが行われる(SQ1,SQ2)。ハンドシェイクメッセージは、準拠する通信シーケンス(通信プロトコル)のバージョン番号に関する情報を含んでもよい。さらに、車両1と充電設備2との間で互いを識別するためのメッセージが送受信される(SQ3,SQ4)。互いの識別に成功すると、車両1と充電設備2との間の通信リンクが確立される。
【0042】
次に、車両1は、充電設備2から車両1への充電条件を示す「充電フレーム」を充電設備2に送信する(SQ5)。充電条件は、たとえば、充電上限電圧、充電下限電圧、充電上限電流、充電下限電流、充電指令電流値、充電シーケンス管理番号などの項目を含む。充電条件は、これらの項目のうちの一部のみを含んでもよい。充電設備2は、車両1からの充電フレームに応答して、充電設備2の充電条件(充電設備2から車両1への電力供給条件)を示す充電フレームを車両1に送信する(SQ6)。充電設備2の充電条件は、車両1の充電条件と同様の項目を含み得る。
【0043】
続いて、車両1は、車両1から充電設備2への放電条件を示す「放電フレーム」を充電設備2に送信する(SQ7)。放電フレームは、V2G(Vehicle to Grid)時またはV2H(Vehicle to Home)時に使用されるものであるが、車両1の充電に際しても放電フレームは送受信され得る。放電条件は、たとえば、放電上限電圧、放電下限電圧、放電上限電流、放電下限電流、放電下限容量、放電シーケンス管理番号などの項目を含む。放電条件は、これらの項目のうちの一部のみを含んでもよい。充電設備2は、車両1からの放電フレームに応答して、充電設備2の放電条件(車両1から充電設備2への電力供給条件)を示す放電フレームを車両1に送信する(SQ8)。充電設備2の放電条件は、車両1の放電条件と同様の項目を含み得る。
【0044】
さらに、車両1は、充電規格上、必須ではないと定められた「任意フレーム」を充電設備2に送信する(SQ9)。任意フレームは、典型的には車両1の充放電に関連する周辺情報であり、たとえば、車両1の識別コード(車両ID)、車両1のサービスコード、車両1の製造業者の識別コード(メーカコード)などの項目を含む。同様に、充電設備2は、充電設備2の任意フレームを車両1に送信する(SQ10)。充電設備2の任意フレームは、車両1の任意フレームと同様の項目を含み得る。
【0045】
なお、
図3では、充電フレーム、放電フレーム、任意フレームの順に送信される例を説明した。しかし、放電フレームおよび任意フレームの送信は必須ではない。また、充電フレーム、放電フレームおよび任意フレームは他の順序で送信されてもよい。後述する例のように、充電フレーム、放電フレームおよび任意フレームは一括で送信されてもよい。また、車両1から充電設備2に各フレームを先に送信すると説明した。しかし、充電設備2から車両1に各フレームを先に送信してもよい。
【0046】
3種類のフレームの送受信が終了して車両1および充電設備2の両方の充電準備が完了すると、車両1は、充電要求メッセージを充電設備2に送信する(SQ11)。充電設備2は、充電要求メッセージに応答して充電許可メッセージを車両1に送信する(SQ12)。これにより、充電準備が完了し、車両1の充電(充電設備2から車両1への電力供給)が開始される。なお、充電許可メッセージは、充電設備2が充電開始を通知するメッセージを含み得る。
【0047】
その後、バッテリ14が満充電に至るなどして所定の充電中止条件が成立すると、車両1は、充電中止メッセージを充電設備2に送信する(SQ13)。充電設備2は、車両1からの充電中止メッセージに応答して、充電中止メッセージを車両1に送信する(SQ14)。
【0048】
<相互接続性の低下>
図3にて説明したように、充電規格に定められた通信シーケンスは、車両1と充電設備2との間で基本的に交互に信号(メッセージ、フレームなど)のやり取りを行いながら進められる。たとえ車両1が充電規格に定められた通信シーケンスに従って信号を送信していたとしても、充電設備2が受信した信号を適切に処理せず、充電が許可されない場合がある。このような相互接続性低下の主な要因は、市場に存在する様々な充電設備のうちの一部の充電設備が充電規格に正しく準拠していない(たとえば、充電設備の製造業者が充電規格に独自の基準を導入したり充電規格を独自に解釈したりしている)ためと推測される。車両1のユーザにとっての利便性の観点からは、できるだけ多くの充電設備2で車両1を充電可能であることが望ましい。
【0049】
そこで、本実施の形態において、車両1は、充電設備2から充電許可メッセージを取得しなかった場合、充電許可メッセージの取得を再び試行するための「再試行信号」を充電設備2に送信する。再試行信号とは、上記3種類のフレーム(充電フレーム、放電フレームおよび任意フレーム)のうちの一部が修正されたものである。なお、修正は変更および削除を含み得る。
【0050】
充電設備2が3種類のフレームを含む最初の信号は処理できないが再試行信号であれば適切に処理可能である場合、充電許可メッセージが生成されて充電設備2から車両1に送信され得る。そうすると、充電設備2を用いて車両1を充電することが可能になる。以下、再試行信号を送信する処理について、フローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0051】
<処理フロー>
図4は、本実施の形態における通信シーケンスの処理手順を示すフローチャートである。このフローチャートに示される一連の処理は、予め定められた条件成立時(たとえば車両1と充電設備2とが充電ケーブル3により接続された場合に制御周期ごと)に実行される。各ステップは、車両1のECU10によるソフトウェア処理により実現されるが、ECU10内に配置されたハードウェア(電気回路)により実現されてもよい。以下、ステップをSと略す。
【0052】
S1において、車両1は、車両1と充電設備2との間でハンドシェークおよび互いの識別を行い、車両1と充電設備2との通信リンクを確立する(
図3のSQ1~SQ4)。
【0053】
S2において、車両1は、充電規格に定められた通信シーケンスに従う正規信号を充電設備2との間でを送受信する。具体的には、車両1は、充電フレーム、放電フレームおよび任意フレームを含む信号(1つの信号にまとめられていてもよいし、複数の信号に分割されていてもよい)を充電設備2に送信する。正規信号は、本開示に係る「第1信号」に相当する。また、車両1は、充電フレーム、放電フレームおよび任意フレームを含む信号を充電設備2から受信する(
図3のSQ5~SQ10)。
【0054】
S3において、車両1は、充電設備2から充電許可メッセージを取得したかどうかを判定する。充電許可メッセージを取得した場合(S3においてYES)、車両1は、充電要求メッセージを充電設備2に送信することで車両1の充電を開始する(S4、
図3のSQ11,SQ12)。
【0055】
S5において、車両1は、所定の充電中止条件が成立したかどうかを判定する。充電中止条件が成立するまでは充電が継続され(S5においてNO)、充電中止条件が成立すると(S5においてYES)、車両1は、充電中止メッセージを充電設備2に送信することによって車両1の充電を中止する(S6、
図3のSQ13,SQ14)。
【0056】
ここで、S3にて充電設備2から充電許可メッセージが取得されなかった場合(S3においてNO)、車両1は、処理をS7に進め、後述する第n再試行信号(n=1~5、初期値n=1)を充電設備2に送信することによって、充電設備2からの充電許可メッセージの取得を再び試行する。第n再試行信号の各々は本開示に係る「第2信号」に相当する。
【0057】
S8において、車両1は、充電設備2から充電許可メッセージを取得したかどうかを判定する。充電許可メッセージを取得した場合(S8においてYES)、車両1は、処理をS4に進め、充電要求メッセージを充電設備2に送信することで車両1の充電を開始する。
【0058】
これに対し、充電設備2から充電許可メッセージを取得しなかった場合(S8においてNO)、車両1は、充電設備2から充電許可メッセージを取得するための全試行が終了したかどうかを判定する(S9)。未送信の再試行信号が残っている場合(S9においてNO)、車両1は、nを1だけインクリメントし(S10)、第n再試行信号を充電設備2に送信する(S7)。全ての再試行信号の送信が終了した場合、すなわち第5再試行信号を送信しても充電許可メッセージが取得されなかった場合(S9においてYES)、車両1は、一連の処理を終了する。
【0059】
<再試行信号>
図5は、5種類の再試行信号の特徴を説明するための図である。前述のように、第n再試行信号は、充電フレーム、放電フレームおよび任意フレームのうちの少なくとも1つのフレームが、正規信号に含まれる通常のフレーム(
図4のS2の処理で送信されるフレーム)と異なる。
図6は、第n再試行信号に含まれるフレームの構造を概略的に示す図である。
図5および
図6を参照して、再試行信号は、データの送信先などを制御するためのヘッダと、データ本体であるペイロードと、データの破損などを検査するためのトレーラとを含む。
【0060】
第1再試行信号とは、放電フレームのペイロードに無効値を設定したものである。無効値は、通常のフレームでは使用され得ない値であってもよいし、充電規格に定められた範囲外(正規の範囲外)の値であってもよい。無効値は適宜設定され得る。典型的には無効値が全てゼロ(後述する例では8ビットが全てゼロ=0x00)に設定されるが、無効値は他の値(たとえば8ビットが全て1=0xFF)であってもよい。無効値がゼロの場合、第1再試行信号は、通常の充電フレームと、ペイロードが全てゼロの放電フレームと、通常の任意フレームとを含む。
【0061】
第2再試行信号とは、放電フレームを送信しないものである。すなわち、第2再試行信号は、通常の充電フレームと、通常の任意フレームとを含む一方で、放電フレームを含まない。
【0062】
第3再試行信号とは、充電フレームおよび放電フレームのうちの少なくとも一方のフレームのペイロードに含まれる任意項目(充電規格上、必須ではない項目)に無効値を設定したものである。複数の任意項目が存在する場合、一部の任意項目のみに無効値が設定され、残りの任意項目には通常値が設定されてもよい。あるいは、任意フレームのペイロードに無効値が設定されてもよい。無効値は適宜設定され得る。典型的には無効値がゼロに設定されるが、無効値は他の値であってもよい。無効値がゼロの場合、第3再試行信号は、任意項目がゼロに設定されたいずれかのフレーム(1種類であってもよいし、2種類であってもよい)と、通常の他のフレームとを含む。
【0063】
第4再試行信号とは、任意フレームを送信しないものである。すなわち、第4再試行信号は、通常の充電フレームと、通常の放電フレームとを含む一方で、任意フレームを含まない。
【0064】
第5再試行信号とは、3種類のフレームのうちの少なくとも1つのフレームのペイロード(充電条件、放電条件などの項目)の一部に従来の充電規格(従来規格)に準拠する値を設定したものである。たとえば、充電フレームのペイロードにおいて、充電電圧の上限値および/または充電電流の上限値に、従来規格に準拠する上限値が設定される。複数の該当項目が存在する場合、一部の項目のみに従来規格の値が設定され、残りの項目には通常値(新たな充電規格に準拠した値)が設定されてもよい。第5再試行信号は、従来規格に準拠するように変更されたいずれかのフレーム(1種類であってもよいし、2種類であってもよいし、3種類であってもよい)と、通常の他のフレームとを含む。
【0065】
なお、再試行信号が放電フレームおよび任意フレームを含むことは必須ではない。たとえば、第1再試行信号、第3再試行信号および第5再試行信号は、充電フレームおよび放電フレームを含む一方で、任意フレームを含まなくてもよい。第2再試行信号は充電フレームのみを含んでもよい。第4再試行信号が充電フレームのみを含んでもよい。
【0066】
以上のように、本実施の形態においては、充電規格に定められた通信シーケンスに従って正規信号を充電設備2に送信しても充電設備2から充電許可メッセージが取得されなかった場合に、車両1は、正規信号の一部が変更された再試行信号を充電設備2に送信する。再試行信号は、正規信号のなかの充電に必ずしも必須ではない一部分、具体的には、充電フレームのなかの任意項目、放電フレームまたは任意フレームを変更または削除したものである。充電設備2が再試行信号であれば処理可能である場合、車両1と充電設備2との相互接続性が確保されて充電設備2が車両1に充電許可メッセージを送信し得る。よって、本実施の形態によれば、多くの充電設備2で車両1を充電することが可能になる。
【0067】
なお、
図4~
図6では5種類の再試行信号が送信される例について説明した。しかし、車両1は、必ずしも5種類の再試行信号の全てを充電設備2に送信しなくてもよい。車両1は、第1再試行信号のみを送信してもよいし、他のいずれか1種類の再試行信号のみを送信してもよい。車両1は、2~4種類の再試行信号のみを送信してもよい。つまり、車両1は、5種類の再試行信号のうちの少なくとも1つを充電設備2に送信すればよい。また、車両1から充電設備2への第n再試行信号の送信順序は適宜変更可能である。
【0068】
車両1は、第1再試行信号および/または第2再試行信号を第3再試行信号~第5再試行信号よりも先に送信することが望ましい。放電フレームの処理に対応していない古い充電設備2は、受信した放電フレームを、いわばノイズとして処理し得る。そのような充電設備2に関しては、第1再試行信号または第2再試行信号の送信により相互接続性が確保される可能性が高い。その結果、相互接続性が確保されれば第3~第5再試行信号を送信しなくて済むので、再試行信号のやり取りに要する時間を短縮できる。
【0069】
車両1は、第3再試行信号および/または第4再試行信号を第5再試行信号よりも先に送信することが望ましい。これは、古い充電設備2では、任意項目に無効値を設定するか任意フレームを送信しないことで相互接続性が確保される可能性の方が、従来規格値を設定することで相互接続性が確保される可能性よりも高いためである。
【0070】
車両1は、たとえば、第1再試行信号、第3再試行信号、第5再試行信号を、この順に送信してもよい。言い換えれば、車両1は、第2再試行信号および第4再試行信号については送信を省略してもよい。この場合、ペイロードの一部分を他の値(無効値または従来規格値)に置き換える変更だけで済むため、フレーム全体を削除するのと比べて、車両1のECU10へのソフトウェア(プログラム)の実装を容易に実現できる。
【0071】
[実施例]
本実施例では、車両1と充電設備2とがチャデモ(CHAdeMO)方式でCANプロトコルに従って通信する構成例について説明する。
【0072】
図7は、チャデモ方式におけるCANプロトコルに従う通信シーケンスの処理手順を示すフローチャートである。
図8は、
図7のフローチャートに示される処理手順の続きを示すフローチャートである。チャデモでは充電開始前情報交換処理において上記3種類のフレームが送信される。
【0073】
図9は、CANプロトコルにおけるフレーム構造の概要を示す図である。3種類のフレームの各々は、SOF(Start Of Frame)と、データ内容、送信ノードの識別、通信調停の優先順位などを示す識別子IDと、フレームタイプ(データフレーム/リモートフレームの区別)を示すRTR(Remote Transmission Request)と、データフィールドのバイト数(DLC:Data Length Code)などを示すコントロールフィールドと、データフィールドと、CRC(Cyclic Redundancy Check)を用いたフレームチェックシーケンスと、受信ノードが応答を返すためのアクノリッジメントACKと、EOF(End Of Frame)とを含む。なお、SOF、ID、RTRおよびコントロールフィールドは、
図6に示したヘッダに相当する。データフィールドはペイロードに相当する。CRC、ACKおよびEOFは、トレーラに相当する。
【0074】
図10は、本実施例における第n再試行信号を説明するための第1図である。識別子IDが100番台(100~102)のフレームは充電フレームである。識別子IDが200番台(200,201)のフレームは放電フレームである。
図11は、放電フレームの詳細を示す図である。
【0075】
図10および
図11を参照して、車両1は、ID=102の充電フレームに含まれるデータフィールドの0バイト目に、充電シーケンス管理番号として従来規格の番号を代入してもよい。車両1は、当該データフィールドの1~3バイト目に、充電電圧上限値および充電電流上限値として従来規格の値を代入してもよい。具体例として、充電電流上限値を400Aから125Aに変更してもよい。これらは第5再試行信号の例である。
【0076】
車両1は、ID=200の放電フレームに含まれるデータフィールドの0~7バイト目に全てゼロなどの無効値を代入してもよい。これは第1再試行信号の一例である。車両1は、ID=200の放電フレームを送信しなくてもよい。これは第2再試行信号の一例である。車両1は、当該データフィールドの0バイト目の放電電流上限値および4,5バイト目の放電電圧下限値として従来規格の値を代入してもよい。これらは第5再試行信号の例である。車両1は、当該データフィールドの7バイト目の充電上限電池残容量にゼロなどの無効値を代入してもよい。これは第3再試行信号の一例である。
【0077】
同様に、車両1は、ID=201の放電フレームに含まれるデータフィールドの0~7バイト目に無効値を代入してもよい。これは第1再試行信号の他の一例である。車両1は、ID=201の放電フレームを送信しなくてもよい。これは第2再試行信号の他の一例である。車両1は、当該データフィールドの0バイト目に、V2H充放電シーケンス管理番号として従来規格の番号を代入してもよい。これは第5再試行信号の他の一例である。車両1は、当該データフィールドの1,2バイト目の放電終了目安時間および/または3,4バイト目の車両供給可能電力量に無効値を代入してもよい。これらは第3再試行信号の他の例である。
【0078】
図12は、本実施例における第n再試行信号を説明するための第2図である。識別子IDが700番台(710~712,718)のフレームは、車両IDまたはサービスコードを通知するための任意フレームである。車両1は、ID=710の任意フレームに含まれるデータフィールドの0バイト目~7バイト目に全てゼロなどの無効値を代入してもよい。他のID=711,712,718の任意フレームについても同様である。これらは第3再試行信号の他の例である。あるいは、車両1は、ID=710~712,718の任意フレームを送信しなくてもよい。これは第4再試行信号の一例である。
【0079】
なお、
図10~
図12にて説明した再試行信号は例示にすぎず、他の項目に関する修正による再試行信号も生成可能であることを確認的に記載する。
【0080】
本実施例ではチャデモ方式を例に説明したが、本開示を適用可能な充電規格はチャデモ方式に限定されない。本開示は、GB/T方式、コンボ方式(CCS1/CCS2)、テスラ方式などの他の急速充電規格にも適用可能である。当業者であれば、本開示に従って他の急速充電規格のどのフレームに修正(変更または削除)を加えればよいかを容易に理解できるであろう。
【0081】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0082】
100 充電システム、1 車両、10 ECU、101 プロセッサ、102 メモリ、103 ストレージ、104 入出力インターフェイス、11 インレット、121 電圧センサ、122 電流センサ、131,132 充電リレー、14 バッテリ、140 セル、141 電圧センサ、142 電流センサ、143 電池温度センサ、15 PCU、16 モータジェネレータ、171 動力伝達ギヤ、172 駆動輪、2 充電設備、20 制御回路、21 AC/DC変換器、22 電圧センサ、3 充電ケーブル、31 コネクタ、4 系統電源、ACL,NL2,PL2 電力線、ND1,ND2 ノード、NL0,PL0 給電線、NL1,PL1 充電線。