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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-18
(45)【発行日】2025-08-26
(54)【発明の名称】蒸発燃料処理装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02M 25/08 20060101AFI20250819BHJP
【FI】
F02M25/08 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022184953
(22)【出願日】2022-11-18
(65)【公開番号】P2024073952
(43)【公開日】2024-05-30
【審査請求日】2024-07-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 勇作
(72)【発明者】
【氏名】宮原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】福井 啓太
【審査官】家喜 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-027429(JP,A)
【文献】特開2001-182629(JP,A)
【文献】特開2001-012313(JP,A)
【文献】特開平06-331417(JP,A)
【文献】特開平05-125997(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0101072(US,A1)
【文献】特開2004-156468(JP,A)
【文献】特開2020-133409(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の燃料を貯留する燃料タンクと、
前記燃料タンクで発生する蒸発燃料を吸着するキャニスタと、
前記燃料タンク及び前記キャニスタを連通するベーパ通路と、
前記内燃機関の吸気通路及び前記キャニスタを連通させるパージ通路と、
前記ベーパ通路を開閉する封鎖弁と、
前記パージ通路を開閉するパージ弁と、
前記キャニスタ内に外気を導入する外気導入通路と、
前記外気導入通路を開閉する切換弁と、
前記燃料タンク内の圧力と、前記封鎖弁から前記パージ弁までの間の通路内の圧力と、の差圧を検出する差圧検出器と、
を有した蒸発燃料処理装置の制御装置であって、
前記パージ弁及び封鎖弁が閉弁し前記切換弁が開弁した状態で前記パージ弁を開弁することにより、パージ処理を実行するパージ制御部と、
前記パージ弁の開弁前と開弁後とでの前記差圧の変化量が第1閾値以上の場合に、前記パージ弁は閉弁状態で固着しておらず前記パージ通路につまりも生じていないと診断するパージ診断部と、を備え
前記パージ診断部は、前記パージ弁の開弁前と開弁後とでの前記差圧の変化量が前記第1閾値未満の場合には、更に前記パージ処理の実行中に前記切換弁を閉弁し、前記切換弁の閉弁前と閉弁後とでの前記差圧の変化量が第2閾値以上の場合に、前記パージ弁は閉弁状態で固着しておらず前記パージ通路につまりも生じていないと診断し、前記切換弁の閉弁前と閉弁後とでの前記差圧の変化量が前記第2閾値未満の場合に、前記パージ弁が閉弁状態で固着している又は前記パージ通路につまりが生じていると診断する、蒸発燃料処理装置の制御装置。
【請求項2】
前記差圧検出器は、ダイヤフラム、前記ダイヤフラムの歪を検出する歪ゲージ、前記ダイヤフラム及び歪ゲージを保持したハウジング、及び前記ハウジングに接続された連通路、を含み、
前記ハウジングは、前記ダイヤフラムを介してタンク室と背圧室とを区画し、
前記タンク室は、前記燃料タンクに連通し、
前記背圧室は、前記連通路に連通し、
前記連通路は、前記封鎖弁から前記パージ弁までの間の通路に連通している、請求項1の蒸発燃料処理装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発燃料処理装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸発燃料処理装置の燃料タンクとキャニスタとのリーク診断を、タンク内圧センサに基づいて行う技術が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-149592号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パージ処理が正常に行われているか否かを診断するパージ診断を行うことが考えられる。上述したタンク内圧センサに基づいてパージ診断を行うためには、封鎖弁を開弁してタンク内圧が大気圧となるのを待ってから、パージ処理を実行してパージ診断を行う必要がある。このため、パージ処理が開始されるまでに時間を要し、この結果パージ診断の開始にも時間を要するおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、パージ診断を早期に開始できる蒸発燃料処理装置の制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的は、内燃機関の燃料を貯留する燃料タンクと、前記燃料タンクで発生する蒸発燃料を吸着するキャニスタと、前記燃料タンク及び前記キャニスタを連通するベーパ通路と、前記内燃機関の吸気通路及び前記キャニスタを連通させるパージ通路と、前記ベーパ通路を開閉する封鎖弁と、前記パージ通路を開閉するパージ弁と、前記キャニスタ内に外気を導入する外気導入通路と、前記外気導入通路を開閉する切換弁と、前記燃料タンク内の圧力と、前記封鎖弁から前記パージ弁までの間の通路内の圧力と、の差圧を検出する差圧検出器と、を有した蒸発燃料処理装置の制御装置であって、前記パージ弁及び封鎖弁が閉弁し前記切換弁が開弁した状態で前記パージ弁を開弁することにより、パージ処理を実行するパージ制御部と、前記パージ弁の開弁前と開弁後とでの前記差圧の変化量に基づいて、前記パージ処理が正常か否かを診断するパージ診断部と、を備えた蒸発燃料処理装置の制御装置によって達成できる。
【0007】
前記パージ診断部は、更に前記パージ処理の実行中に前記切換弁を閉弁し、前記切換弁の閉弁前と閉弁後とでの前記差圧の変化量に基づいて、前記パージ処理が正常か否かを診断してもよい。
【0008】
前記パージ弁及び封鎖弁が閉弁し前記切換弁が開弁した状態で、前記差圧に基づいて前記燃料タンクのリーク診断を行う第1リーク診断部と、前記燃料タンク内の圧力が正常範囲内の場合に、前記差圧に基づいて前記キャニスタのリーク診断を行う第2リーク診断部と、を備え、前記第2リーク診断部は、前記切換弁を閉弁してから前記封鎖弁を開弁し、次に前記封鎖弁を閉弁してから前記切換弁を開弁した後の前記差圧に基づいて前記キャニスタのリーク診断を行ってもよい。
【0009】
前記第2リーク診断部は、前記差圧が略ゼロの場合には、前記キャニスタにリーク異常があると判定してもよい。
【0010】
前記差圧検出器は、ダイヤフラム、前記ダイヤフラムの歪を検出する歪ゲージ、前記ダイヤフラム及び歪ゲージを保持したハウジング、及び前記ハウジングに接続された連通路、を含み、前記ハウジングは、前記ダイヤフラムを介してタンク室と背圧室とを区画し、前記タンク室は、前記燃料タンクに連通し、前記背圧室は、前記連通路に連通し、前記連通路は、前記封鎖弁から前記パージ弁までの間の通路に連通していてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、パージ診断を早期に開始できる蒸発燃料処理装置の制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、エンジンに適用された蒸発燃料処理装置の概略構成図である。
図2図2は、差圧検出器の概略構成図である。
図3図3は、パージ診断制御を例示したフローチャートである。
図4図4は、パージ診断制御を例示したタイミングチャートである。
図5図5は、リーク診断制御を例示したフローチャートである。
図6図6は、第2リーク診断を例示したタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[蒸発燃料処理装置の概略構成]
図1は、エンジン1に適用された蒸発燃料処理装置3の概略構成図である。本実施例では、エンジン1や蒸発燃料処理装置3は車両に搭載されている。エンジン1には、燃焼室11に燃料を噴射供給する燃料噴射弁12、噴射された燃料と吸入空気と混合体である混合気に点火を行う点火プラグ13などが設けられている。燃焼室11には、吸気通路14及び排気通路15がそれぞれ接続されている。吸気通路14の途中には、同吸気通路14の一部を構成するサージタンク16が設けられている。このサージタンク16の吸気上流には、吸入空気量を調量するスロットルバルブ17が設けられている。
【0014】
蒸発燃料処理装置3は、燃料を貯留する燃料タンク30を備えている。燃料タンク30内の燃料は、燃料供給経路を介して燃料噴射弁12に供給される。燃料タンク30には、燃料タンク30内の圧力(以下、タンク内圧と称する)、詳しくは後述する封鎖弁42からパージ弁43までの間の通路内の圧力(以下、通路内圧と称する)の差を検出する差圧検出器50が設けられている。蒸発燃料処理装置3は、燃料タンク30内で発生した蒸発燃料が大気に放出されることを抑制する。
【0015】
蒸発燃料処理装置3には、燃料タンク30内で発生する蒸発燃料を吸着するキャニスタ31が設けられている。キャニスタ31及び燃料タンク30はベーパ通路32で連通されている。ベーパ通路32の途中には、ベーパ通路32を開閉する封鎖弁42が設けられている。封鎖弁42を開弁することにより、燃料タンク30内の蒸発燃料をキャニスタ31に設けられた吸着材に一旦捕集される。
【0016】
キャニスタ31及びサージタンク16はパージ通路33で連通されている。パージ通路33の途中には、パージ通路33を流れる蒸発燃料の流量を調整するパージ弁43が設けられている。キャニスタ31には、キャニスタ31内に外気を導入する外気導入通路36が接続されている。外気導入通路36の開放端にはエアフィルタ37が設けられている。
【0017】
外気導入通路36の途中には、外気導入通路36を開閉する切換弁46が設けられている。切換弁46は、詳しくは後述するが、非通電状態で外気導入通路36を開放し、通電状態で外気導入通路36を閉鎖する電磁弁である。機関運転中、切換弁46は外気導入通路36を開放するように、つまりキャニスタ31内に外気が導入できる状態に維持される。
【0018】
エンジン1や蒸発燃料処理装置3は、ECU(Electronic Control Unit)60によって制御される。ECU60は、車両の走行制御に係る各種演算処理を行う演算処理回路と、制御用のプログラムやデータが記憶されたメモリと、を備える電子制御ユニットである。ECU60には、エンジン1の運転状態等を検出する各種センサや、差圧検出器50、車両の運転者によって操作されるイグニッションスイッチ40等が接続されている。ECU60は、それらセンサやスイッチからの信号に基づいて蒸発燃料処理装置3やエンジン1の各種制御を実行する。また、ECU60は詳しくは後述するが、蒸発燃料処理装置の制御装置の一例であり、パージ制御部、パージ診断部、第1リーク診断部、及び第2リーク診断部を機能的に実現する。
【0019】
ECU60は、所定条件が成立すると機関運転中に、切換弁46が開弁し封鎖弁42が閉弁した状態でパージ弁43を開弁するパージ処理を行う。これにより、キャニスタ31から蒸発燃料が脱離して、脱離した蒸発燃料はパージ通路33を介してサージタンク16に導入され、燃焼室11で燃焼される。
【0020】
[差圧検出器の概略構成]
図2は、差圧検出器50の概略構成図である。差圧検出器50は、燃料タンク30の外壁面301から円筒状に突出した取付部302に取り付けられている。差圧検出器50は、ハウジング51、カバー52、連通路53、ダイヤフラム54a、歪ゲージ54b、台座55、接着剤56、及び端子57を含む。ハウジング51は、略筒状に形成されており、ハウジング51内にダイヤフラム54aが保持されている。ハウジング51の一端は、Oリング58を介して取付部302に取り付けられている。ハウジング51の他端には、カバー52が取り付けられている。カバー52には連通孔52aが形成されている。連通路53は、カバー52を介してハウジング51に接続されている。連通路53は、カバー52の連通孔52aを介してハウジング51内と連通している。
【0021】
ハウジング51内には、円筒状の台座55を介してダイヤフラム54aが保持されている。また、ダイヤフラム54a及び台座55は、その周辺が接着剤56によりハウジング51の内部に固定されている。これによりハウジング51の内部は、ダイヤフラム54aを介して燃料タンク30内に連通したタンク室TCと、連通路53に連通した背圧室BCとに区画される。ダイヤフラム54aには、ダイヤフラム54aの歪を検出する歪ゲージ54bが取り付けられている。歪ゲージ54bは、端子57を介してECU60に接続されている。タンク室TCの内圧と背圧室BCの内圧との差圧に応じてダイヤフラム54aが歪む。この歪量に応じた出力値を歪ケージ54bがECU60に出力することにより、ECU60はタンク内圧と通路内圧との差圧を検出できる。尚、ECU60は、歪ゲージ54bからの出力値に基づいてタンク室TCの内圧から背圧室BCの内圧を減算した値を、差圧として検出する。
【0022】
差圧検出器50において、連通路53をカバー52に接続せずに連通孔52aを大気に開放すると、差圧検出器50は大気圧を基準としたタンク内圧を検出することができる。換言すれば、大気圧を基準としたタンク内圧センサを僅かに変更することにより差圧検出器50を製造することができる。このため差圧検出器50の製造コストの増大が抑制されている。
【0023】
連通路53は、封鎖弁42とキャニスタ31との間のベーパ通路32に接続されているがこれに限定されない。連通路53は、封鎖弁42からパージ弁43までの間の通路に接続されていればよい。この通路は、封鎖弁42とキャニスタ31との間のベーパ通路32、キャニスタ31、及びキャニスタ31とパージ弁43との間のパージ通路33を含む。詳しくは後述するが、封鎖弁42が閉弁し切換弁46が開弁した状態では、封鎖弁42からパージ弁43までの間の通路は連通しており、この部分の圧力はどの位置でも同じだからである。
【0024】
[パージ診断制御]
図3は、パージ診断制御を例示したフローチャートである。図4は、パージ診断制御を例示したタイミングチャートである。図4には、パージ弁43、切換弁46、及び封鎖弁42の開閉状態の推移と、パージ処理が正常の場合と異常の場合とでの差圧検出器50が検出する差圧の推移とを示している。パージ診断制御はイグニッションがオンの間は継続して繰り返される。ECU60はパージ診断のための前提条件が成立したか否かを判定する(ステップS1)。前提条件は、例えばエンジン1が駆動中であって、パージ要求がある場合である。尚、この状態では封鎖弁42及びパージ弁43が閉弁し、切換弁46が開弁している状態である。ステップS1でNoの場合には本制御を終了する。
【0025】
ステップS1でYesの場合、ECU60はパージ弁43を開弁する(ステップS2、時刻t1)。これによりパージ処理が開始される。ステップS1及びS2は、パージ制御部が実行する処理の一例である。
【0026】
次にECU60は、パージ弁43の開弁前と開弁後とでの差圧の変化量が第1閾値以上か否かを判定する(ステップS3)。パージ処理が正常であれば、パージ弁43の開弁により封鎖弁42からパージ弁43までの間の通路内は大気圧よりも低い負圧となる。この結果、図4に示すように差圧が増大して差圧の変化量は第1閾値以上となる。一方、パージ弁43が閉弁状態で固着している場合やパージ通路33につまりが生じている場合等の何らかの異常がある場合には、差圧の変化量は第1閾値未満となる。ステップS3でYesの場合、ECU60はパージ処理について正常と判定する(ステップS4)。このようにパージ要求があってから直ちにパージ処理を開始して、パージ診断を開始できる。
【0027】
ステップS3でNoの場合には、上述したようにパージ弁43やパージ通路33に異常が生じている場合もあるが、これらが正常であって蒸発燃料の流量が少ないため差圧の変化量が第1閾値未満となったことも考えられる。このためECU60は切換弁46を閉弁して(ステップS5、時刻t2)、切換弁46の閉弁前と閉弁後とでの差圧の変化量が第2閾値以上になったか否かを判定する(ステップS6)。第2閾値は、第1閾値と同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0028】
パージ弁43が開弁した状態で切換弁46を閉弁することにより、パージ弁43やパージ通路33が正常であれば、通路内圧が大きく低下してサージタンク16内と同じ負圧となる。このため、差圧が増大して差圧の変化量は第2閾値以上となる。従ってステップS6でYesの場合には、ECU60はパージ処理について正常と判定する(ステップS4)。ステップS6でNoの場合には、ECU60はパージ処理について異常と判定する(ステップS7)。
【0029】
このように、ステップS3及びS6の双方でNoの場合にパージ処理は異常と判定されるため、異常判定の精度が向上している。ステップS3~S7は、パージ診断部が実行する処理の一例である。
【0030】
上記のようにパージ処理についての判定後、ECU60はパージ弁43を閉弁する(ステップS8、時刻t3)。これによりパージ処理が終了する。次にECU60は、切換弁46が閉弁しているか否かを判定する(ステップS9)。ステップS9でYesの場合には、ECU60は切換弁46を開弁し(ステップS10、時刻t4)、本制御は終了する。ステップS9でNoの場合には本制御は終了する。
【0031】
上記のパージ診断制御では、ステップS3でNoの場合にステップS5及びS6を実行することにより、異常判定の精度が確保されている。しかしながら、異常判定の精度よりも早期の診断を優先する場合には、ステップS5及びS6を実行せずにステップS3でNoの場合に直ちに異常判定を行ってもよい。
【0032】
[リーク診断制御]
図5は、リーク診断制御を例示したフローチャートである。リーク診断制御はイグニッションがオンの間は継続して繰り返される。ECU60はリーク診断のための前提条件が成立したか否かを判定する(ステップS11)。前提条件は、燃料タンク30内での蒸発燃料の発生が安定していることを判定する条件である。例えば次のような条件である。第1条件は、駐車などにより長時間のエンジン1の停止後にイグニッションオンとなった場合であって、イグニッションオンからパージ弁43を開弁して吸気通路14に最初にパージする直前までの期間である。第2条件は、イグニッションオフ後に数時間経過し、冷却水温又は吸気温が所定温度以下である状態である。このような第1条件又は第2条件が前提条件として設定されている。尚、第1条件と第2条件とを論理和条件とした前提条件であってもよい。尚、この状態では、封鎖弁42及びパージ弁43が閉弁し切換弁46が開弁している。ステップS11でNoの場合には本制御を終了する。
【0033】
ステップS11でYesの場合には、以下のように燃料タンク30のリークの有無を診断する第1リーク診断が行われる。ECU60は、差圧検出器50により検出された差圧に基づいてタンク内圧が正常範囲か否かを判定する(ステップS12)。具体的には差圧が略ゼロの場合には、タンク内圧は正常範囲外であると判定される。差圧が上述した略ゼロ以外の正値又は負値の場合には、タンク内圧は正常範囲内であると判定される。ここで、切換弁46が開弁しているため通路内圧は大気圧となっているが、燃料タンク30にリークがある場合には、タンク内圧も大気圧となっているため差圧は略ゼロとなる。燃料タンク30にリークがない場合にはタンク内圧は大気圧よりも高い又は低い圧力となり、差圧はゼロよりも大きい正値又は小さい負値を示す。尚、略ゼロとしたのは、差圧検出器50の公差を考慮して差圧がゼロとみなすことができる範囲を正常範囲外とするためである。
【0034】
ステップS12でNoの場合には、ECU60はカウンタAをカウントアップする(ステップS13)。次にECU60は、カウンタAが所定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS14)。ステップS14でNoの場合には、ECU60はリーク診断を保留する(ステップS15)。ステップS14でYesの場合には、ECU60は燃料タンク30のリーク異常ありと判定する(ステップS16)。以上のようにして第1リーク診断が行われる。ステップS12~S14、S16は、第1診断部が実行する処理の一例である。
【0035】
ステップS12でYesの場合には、ECU60はキャニスタ31のリークの有無を診断する第2リーク診断を行う。図6は、第2リーク診断を例示したタイミングチャートである。図6には、パージ弁43、切換弁46、及び封鎖弁42の開閉状態の推移と、キャニスタ31が正常の場合と異常の場合とでの差圧の推移とを示している。図6では、差圧が正値を示した状態で第2リーク診断が実行される場合と、差圧が負値を示した状態で第2リーク診断が実行される場合とを示している。差圧が正値とは、タンク内圧が大気圧よりも高い状態を意味し、差圧が負値とは、タンク内圧が大気圧よりも低い状態を意味している。
【0036】
ECU60は、切換弁46を閉弁し(ステップS17、時刻t11)、その後に封鎖弁42を開弁する(ステップS18、時刻t12)。これにより、タンク内圧がキャニスタ31内や、外気導入通路36のキャニスタ31と切換弁46との間の通路、パージ通路33のキャニスタ31とパージ弁43との間の通路にまで伝わる。
【0037】
次にECU60は、封鎖弁42を開弁してから所定時間経過したか否かを判定する(ステップS19)。ステップS19でNoの場合には、再度ステップS19の処理が実行される。図6に示すように、封鎖弁42が開弁すると差圧は略ゼロとなる。即ち上記の所定時間は、封鎖弁42を開弁してから、タンク内圧と通路内圧とが同じになるのに必要な時間に設定されている。
【0038】
ステップS19でYesの場合、ECU60は封鎖弁42を閉弁し(ステップS20、時刻t13)、切換弁46を開弁する(ステップS21、時刻t14)。キャニスタ31にリークなどがない場合には、通路内圧は大気圧となる。このためタンク内圧と通路内圧との差が拡大し、差圧も正値又は負値となる。これに対して例えばキャニスタ31にリークがある場合には、切換弁46の閉弁後に時刻t12で封鎖弁42が開弁すると、タンク内圧及び通路内圧は共に大気圧となり差圧は略ゼロとなる。その後に封鎖弁42の閉弁後に時刻t14で切換弁46を開弁しても、差圧は略ゼロを示す。
【0039】
次にECU60は、差圧に基づいて通路内圧が正常範囲内か否かを判定する(ステップS22)。具体的には、差圧は略ゼロの場合には通路内圧は、正常範囲外であると判定される。差圧が上述した略ゼロ以外の正値又は負値の場合には、通路内圧は正常範囲内であると判定される。
【0040】
ステップS22でNoの場合には、ECU60はカウンタBをカウントアップする(ステップS23)。次にECU60は、カウンタBが所定値よりも大きいか否かを判定する(ステップS24)。ステップS24でNoの場合には、ECU60はリーク診断結果を保留する(ステップS15)。ステップS24でYesの場合には、ECU60はキャニスタ31のリーク異常ありと判定する(ステップS25)。
【0041】
ステップS22でYesの場合には、ECU60は燃料タンク30及びキャニスタ31はリーク正常と判定し(ステップS26)、カウンタA及びBをリセットする(ステップS27)。
【0042】
以上のように一つの差圧検出器50に基づいてリーク診断制御を実行することができる。このため、例えばタンク内圧及びキャニスタ内圧をそれぞれ検出する圧力センサを用いてリーク診断制御を実行する場合と比較して、コストの増大が抑制される。
【0043】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 エンジン
3 蒸発燃料処理装置
30 燃料タンク
31 キャニスタ
32 ベーパ通路
33 パージ通路
36 外気導入通路
37 エアフィルタ
42 封鎖弁
43 パージ弁
46 切換弁
50 差圧検出器
53 連通路
60 ECU(制御装置、パージ制御部、パージ診断部、第1リーク診断部、第2リーク診断部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6