(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-18
(45)【発行日】2025-08-26
(54)【発明の名称】膝サポーター
(51)【国際特許分類】
A61F 5/02 20060101AFI20250819BHJP
A41D 13/06 20060101ALI20250819BHJP
【FI】
A61F5/02 N
A41D13/06
(21)【出願番号】P 2025092139
(22)【出願日】2025-06-02
【審査請求日】2025-06-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】525212663
【氏名又は名称】株式会社スポーツ装具研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】犬塚 俊裕
【審査官】白土 博之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2023/013120(WO,A1)
【文献】特許第7195658(JP,B1)
【文献】特開2016-47968(JP,A)
【文献】特許第4151925(JP,B2)
【文献】特開昭62-102756(JP,A)
【文献】特表2002-514105(JP,A)
【文献】実公平3-25773(JP,Y2)
【文献】実公昭56-37705(JP,Y2)
【文献】特開2008-245989(JP,A)
【文献】特開2001-25522(JP,A)
【文献】特開平7-194649(JP,A)
【文献】実公平4-8891(JP,Y2)
【文献】特許第6456772(JP,B2)
【文献】米国特許第5865777(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/01-5/02
A41D 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性を有するサポーター本体とストラップとによって構成され、
前記サポーター本体は、膝蓋を外方に露出させつつ利用者の膝の周囲に筒状に巻回された状態で装着され、
前記ストラップは、帯状で、前記サポーター本体の外周に螺旋状に巻回され、
前記サポーター本体の上下方向を、膝を伸ばした状態で起立する利用者の脚に当該サポーター本体を装着した際の鉛直上下方向として、
前記サポーター本体には、膝の周囲に巻回された際の膝の外側と内側とに対応する領域に上下方向に延長する平板帯状の補強部材が内蔵され、
前記ストラップは、一主面に、帯状に延長する長さ方向の少なくとも始端と終端の夫々に面ファスナーが取り付けられてなり、
前記サポーター本体は、膝の周囲に巻回された際の外面側に、前記始端と前記終端の夫々の前記面ファスナーが吸着される領域を有する、
膝サポーター。
【請求項2】
膝の周囲に巻回された状態にある前記サポーター本体の外面において、前記補強部材が内蔵されている領域の少なくとも上端側と下端側とが、前記ストラップの前記始端又は前記終端における前記面ファスナーの吸着領域として、他の領域と識別可能となっている、請求項1に記載の膝サポーター。
【請求項3】
膝の周囲に巻回された状態にある前記サポーター本体の外面において、前記補強部材が内蔵されている全領域が他の領域と識別可能になっており、
前記ストラップは、前記始端の前記面ファスナーを第1の面ファスナーとし、前記終端の前記面ファスナーを第4の面ファスナーとして、始端から終端に向かって、前記一主面に第1~第4の面ファスナーが間欠的に取り付けられてなり、
前記第1~第4の面ファスナーは、前記サポーター本体の外面に前記ストラップが螺旋状に巻回された際に、前記補強部材が内蔵されている領域に対応する位置に配置されている、
請求項2に記載の膝サポーター。
【請求項4】
前記補強部材は、平板帯状に形成されたコイルバネからなる請求項1~3のいずれかに記載の膝サポーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膝サポーターに関する。
【背景技術】
【0002】
変形性膝関節症(以下、OA)は、膝の関節が加齢や過度の負荷によってすり減り、痛みや動きの制限を引き起こす疾患であり、OAに罹患した患者は、軟骨がすり減ることで膝に痛みを感じる。そして、膝が痛まないように膝をかばうことで筋力が低下し、歩行時にぐらつく等、膝関節が不安定な状態となる。そこで、OAに対しては、膝関節を安定させたり、症状の進行を抑制させたりするために膝サポーターを用いることがある。
【0003】
OAに用いられる膝サポーターとしては、例えば、以下の特許文献1及び非特許文献1に記載されているものがある。この特許文献1と非特許文献1とに記載されたOA用の膝サポーターは、膝関節の周囲に膝蓋を露出させつつ筒状に巻回されるサポーター本体と、サポーター本体の外周面に巻回されて膝関節をより強固に固定するための複数の帯状のストラップとを備える。サポーター本体及びストラップは伸縮性素材からなる。ストラップは、一端がサポーター本体に固定されているとともに、他端側に向かって伸長されつつサポーター本体の周囲に巻回される。そして、ストラップの他端がサポーター本体の表面に面ファスナーによって固定されることで膝関節が支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【文献】川村義肢株式会社、” 膝サポーターOAGX”、[online]、[令和7年5月13日検索]、インターネット<URL:https://www.kawamura-gishi.co.jp/sougu_catalog/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の先行技術文献に記載の膝サポーターを含め、従来のOA用の膝サポーターは膝関節を確実に支持するために複数のストラップを備える。そのため、装着に手間取ったり、膝サポーター全体の自重が嵩んで利用者に不要な負荷を与えたりする可能性があった。装着性や重量を考慮してストラップの数を減らせば膝関節を支持する力が弱くなる。
【0007】
そこで本発明は、装着が容易で軽量であるとともに、確実に膝関節を支持することが可能な膝サポーターを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、伸縮性を有するサポーター本体とストラップとによって構成され、
前記サポーター本体は、膝蓋を外方に露出させつつ利用者の膝の周囲に筒状に巻回された状態で装着され、
前記ストラップは、帯状で、前記サポーター本体の外周に螺旋状に巻回され、
前記サポーター本体の上下方向を、膝を伸ばした状態で起立する利用者の脚に当該サポーター本体を装着した際の鉛直上下方向として、
前記サポーター本体には、膝の周囲に巻回された際の膝の外側と内側とに対応する領域に上下方向に延長する平板帯状の補強部材が内蔵され、
前記ストラップは、一主面に、帯状に延長する長さ方向の少なくとも始端と終端の夫々に面ファスナーが取り付けられてなり、
前記サポーター本体は、膝の周囲に巻回された際の外面側に、前記始端と前記終端の夫々の前記面ファスナーが吸着される領域を有する、
膝サポーターである。
【0009】
膝の周囲に巻回された状態にある前記サポーター本体の外面において、前記補強部材が内蔵されている領域の少なくとも上端側と下端側とが、前記ストラップの前記始端又は前記終端における前記面ファスナーの吸着領域として、他の領域と識別可能となっている、膝サポーターとすることもできる。
【0010】
さらに、膝の周囲に巻回された状態にある前記サポーター本体の外面において、前記補強部材が内蔵されている全領域が他の領域と識別可能になっており、
前記ストラップは、前記始端の前記面ファスナーを第1の面ファスナーとし、前記終端の前記面ファスナーを第4の面ファスナーとして、始端から終端に向かって、前記一主面に第1~第4の面ファスナーが間欠的に取り付けられてなり、
前記第1~第4の面ファスナーは、前記サポーター本体の外面に前記ストラップが螺旋状に巻回された際に、前記補強部材が内蔵されている領域に対応する位置に配置されている、膝サポーターとしてもよい。
【0011】
前記補強部材が平板帯状に形成されたコイルバネからなる膝サポーターとすることもできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、本発明は、装着が容易で軽量であるとともに、確実に膝関節を支持することが可能な膝サポーターが提供される。なお、その他の効果については以下の記載で明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】実施例に係る膝サポーターの構成を示す図であり、膝サポーターの裏面側を示している。
【
図1B】上記膝サポーターの構成を示す図であり、膝サポーターの外面側を示している。
【
図2A】上記膝サポーターを構成する補強部材の外観を示す図である。
【
図2B】上記膝サポーターを構成するサポーター本体における上記補強部材の内蔵状態を示す図である。
【
図3A】上記サポーター本体を利用者の右脚に装着する手順を示す図である。
【
図3B】上記膝サポーターを構成するストラップを上記サポーター本体の外面に巻回させる手順を示す図であり、内反変形性膝関節症に対応する巻回手順を示している。
【
図4】利用者の左右双方の脚における膝サポーターの装着状態を示す図である。
【
図5】上記ストラップを外反変形性膝関節症に対応する手順で上記サポーター本体の外面に巻回した状態を示す図である。
【
図6A】上記膝サポーターの性能を示す図であり、上記膝サポーターを装着した被検者における最大膝内反モーメントを示す図である。
【
図6B】上記膝サポーターの性能を示す図であり、上記被検者における最大膝外旋モーメントを示す図である。
【
図7】二つの上記ストラップを上記サポーター本体の外面に巻回した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施例について、添付図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明に用いた図面において、同一又は類似の部分に同一の符号を付して重複する説明を省略することがある。ある図面において符号を付した部分について、不要であれば他の図面ではその部分に符号を付さない場合もある。
===実施例===
<膝サポーターの構成>
図1Aと
図1Bに実施例に係る膝サポーター1の構成を示した。なお、
図1A、
図1Bでは、表裏の関係や各部位が識別し易いように適所にハッチングが施されている。
図1A、
図1Bに示したように、膝サポーター1は、膝の周囲に筒状に巻回されるサポーター本体10と、帯状のストラップ20とで構成されている。また、サポーター本体10とストラップ20は、ライクラファイバー(「ライクラ」は登録商標)等の伸縮性素材を主体として構成されている。
【0015】
ここで、サポーター本体10において、膝の周囲に装着された際に外方に向く面を外面とし、利用者の脚に接触する側の面を裏面とする。そして、
図1Aはサポーター本体10とストラップ20の裏面を示しており、
図1Bは、サポーター本体10とストラップ20の外面を示している。また、膝を伸ばしている状態の利用者の脚の延長方向を上下方向とするとともに、上下の各方向を利用者が起立している状態における鉛直上下方向に従うものとして、サポーター本体10の上下方向を、利用者の膝の周囲に装着されているときの状態を基準にして規定することとする。サポーター本体10の左右方向については、
図1A、
図1Bに示したように、膝の周囲に巻回されていないときの展開状態を基準として、厚さ方向(紙面奥行き方向)と上下方向とに直交する方向とし、さらに、便宜的に、展開状態にあるサポーター本体10の左右の各方向を、
図1Aに示したように、上下方向を鉛直上下方向に一致させつつ裏面側から見たときの状態で規定することとする。
【0016】
サポーター本体10は、矩形の左右の縁辺が略半円状に切り欠かれてなる凹部11を有する。凹部11の上方と下方は左右外方向に翼状に突出するフラップ部12であり、凹部11の下方に形成されたフラップ部(121L,121R)は左右でほぼ同様の形状であるが、凹部11の上方のフラップ部12は、左右で数が異なっている。左方には上下に二つのフラップ部(122L,123L)が形成され、右方には一つのフラップ部122Rが形成されている。そして、
図1Aに示したように、左方の三つのフラップ部(121L~123L)の裏面先端側には、雄の面ファスナー124が縫い付けられている。また、帯状のストラップ20の裏面には、長さ方向の両端の2箇所と、中間領域の2箇所の合計4箇所に雄の面ファスナー21が縫い付けられている。なお、面ファスナー21には伸縮性がないことから、ストラップ20は、延長方向で隣接する面ファスナー21間の領域で伸縮することになる。
【0017】
図1Bに示したサポーター本体10の外面は、編み目のハッチングで示したドライメッシュ編みになっている中央部(以下、「背部13」と言うことがある。)を除き、ほぼ全面に起毛加工が施されて雄の面ファスナー(124,21)と吸着可能になっている。また、背部13の左右両側には、サポーター本体10の上端から下端まで延長しつつ、上端が開放し下端側が閉鎖する二つのスリーブ14が形成されている。なお、実施例に係る膝サポーター1では、図中で濃い網点のハッチングで示したスリーブ14の形成領域(以下、「スリーブ領域」と言うことがある。)も面ファスナーと吸着可能であるが、当該スリーブ領域は、サポーター本体10の外面において淡い網点のハッチングで示した領域とは素材や織り目の方向等を変える等して、スリーブ領域が一瞥して識別できるようになっている。なお、各スリーブ14の上端には半円状で、裏側が吸着面となる雄の面ファスナー(以下、「ストッパー15」と言うことがある。)が取り付けられており、ストッパー15は、半円の弦を基部としてフラップ状に開閉する。
【0018】
スリーブ14には平板帯状に形成された補強部材16が挿抜可能に収納されている。
図2Aに実施例に係る膝サポーター1における補強部材16の外観を示し、
図2Bに、補強部材16をスリーブ14に挿入するときの状態を示した。
図2Aに示したように、補強部材16は、コイルバネを平板帯状に形成した本体部16aと、コの字状の平面形状を有して本体部16aを厚さ方向で狭持した状態で本体部16aの先端が嵌め込まれる金属製の末端部16bとからなる。補強部材16は、サポーター本体10が膝の周囲に装着された際に膝の外側と内側とに配設されるとともに、若干の撓みを許容して膝回りの形状に沿いつつ膝関節を支持する機能を有する。
【0019】
図2Bに示したように、補強部材16は、上方からスリーブ14内に挿入される。なお、補強部材16は、末端部16bにより、スリーブ14へ円滑に挿入できるようになっている。そして補強部材16の全長がスリーブ14内に収納された状態では、補強部材16がスリーブ14外へ不用意に逸脱しないように、上記のストッパー15がスリーブ14上端側に吸着されて、上方に開放するスリーブ14の上端側を塞いでいる。
<膝サポーターの装着手順>
次に、膝サポーター1の装着手順について説明する。
図3A、
図3Bに膝サポーター1の装着手順を示した。
図3A、
図3Bは利用者の右脚30Rに膝サポーター1を装着する例を示している。まず、
図3Aに示したように、サポーター本体10を膝の裏側から膝の前方に向かって巻回し(s1)、サポーター本体10の左右のフラップ(121R-121L,122R-122Lと123L)同士を膝の前方で重ねつつ、互いのフラップ(121R-121L,122R-122Lと123L)を面ファスナー124によって固定する(s2)。それによってサポーター本体10が円筒状に巻回された状態で膝の周囲に装着される。また、凹部11によって円形の開口17が形成され、この開口17から膝蓋31が露出する。
【0020】
次いで、
図3Bに示したように、サポーター本体10の外面にストラップ20を螺旋状に巻回する(s3,s3o,s3i)。このとき、内反OAと外反OAとによって螺旋の巻回方向を変える。
図3Bでは、内反OAに対応するストラップ20の巻回状態が示されており、右脚30Rを前方から見たときのストラップ20の巻回状態(s3)、及び右脚30Rを側方から見たときのストラップ20の巻回状態(s3o,s3i)として、図中にて白抜き矢印で示した、膝の外側(利用者の右足の右方向)から見たときのストラップ20の巻回状態(s3o)と、
図3Aにおいて黒塗り矢印で示した、膝の内側(利用者の右足の左方)から見たときのストラップ20の巻回状態(s3i)とが示されている。
【0021】
図3Bに示した例では、ストラップ20は、膝の下方外側から、膝の上方内側まで約540゜の回転角度で螺旋状に巻回されている。本実施例におけるストラップ20には、長さ方向の4箇所に面ファスナー21が配置されており、例えば、
図1A、
図1Bに示したように、長さ方向の一端側の面ファスナー21を第1面ファスナー211と称し、以降、他端に向かって第2~第4面ファスナー(212~214)と称することとすると、ストラップ20を巻回する際、まず第1面ファスナー211を膝の外側に配置されたスリーブ14の下端に吸着させ、次いで、膝蓋31の下方を通るように内側斜め上方に向けて巻回しつつ、第2面ファスナー212を膝の内側に配置されたスリーブ14に吸着させる。さらに、膝の裏側を経て膝蓋31の上方を通るように巻回する過程で、第3面ファスナー213を膝の外側のスリーブ14に吸着させる。そして、膝の内側のスリーブ14の上端に第4面ファスナー214を吸着させる。もちろん、内反OAに対するストラップ20の巻回手順は、
図3Bに示した巻回状態と同じになれば、最初に膝の内側のスリーブ14の上端に第4面ファスナー214を吸着させた後、上記の手順を逆に辿ってもよい。
【0022】
なお、実施例に係る膝サポーター1は左右兼用であり、左脚30Lに装着する場合も右足と同様にサポーター本体10を膝の周囲に装着した上で、ストラップ20を膝の下方外側から、膝の上方内側まで約540の回転角度で螺旋状に巻回すればよい。
図4に左右双方の脚(30L,30R)における膝サポーター1の装着状態を示した。
図4は利用者の脚(30L,30R)を前方から見たときの図であり、左右非対象の形状を有するサポーター本体10については、膝の周囲に左右同方向に巻回された状態となっているが、ストラップ20については左右対称となるようにサポーター本体10の外面に巻回されている。
【0023】
以上は内反OAに対する膝サポーター1の装着手順であったが、外反OAに対する膝サポーター1の装着手順については、ストラップ20の巻回経路が内反OAとは異なっていることを除けば、基本的には
図3A、
図3Bに示した手順と同様である。
図5に外反OAに対するストラップ20の巻回状態を示した。
図5は、利用者の右脚30Rを前方から見たときの図であり、この図に示したように、外反OAに対しては、ストラップ20を、膝の下方内側から、膝の上方外側まで約540゜の回転角度で螺旋状に巻回することになる。ストラップ20の巻回手順としては、まず第1面ファスナー211を膝の内側に配置されたスリーブ14iの下端に吸着させ、次いで、膝蓋31の下方を通るように外側斜め上方に向けて巻回しつつ、第2面ファスナー212を膝の外側に配置されたスリーブ14oに吸着させる。さらに、膝の裏側を経て膝蓋31の上方を通るように巻回する過程で、第3面ファスナー213を膝の内側のスリーブ14iに吸着させる。そして、膝の外側のスリーブ14oの上端に第4面ファスナー214を吸着させる。
<膝サポーターの特性>
次にOAに対する実施例に係る膝サポーター1の効果を確認するために、上記特許文献1及び非特許文献1に記載の従来の膝サポーターと実施例に係る膝サポーター1とにおける仕様や性能を比較した。
【0024】
以下の表1に実施例に係る膝サポーター1(実施例)と従来の膝サポーター(従来例)の仕様を示した。
【0025】
【表1】
表1に示したように、実施例に係る膝サポーター1は、基本的には、一つのサポーター本体10に対して1本のストラップ20を巻回させて使用するものであるのに対し、従来例では、実施例におけるサポーター本体10に相当する膝の周囲に巻回される本体部分に二つのストラップの一端が着脱不能に取り付けられており、その二つのストラップを個別に本体部分の外面に巻回したうえで、他端を本体部分の適所に吸着させる必要がある。また、重量やサイズについては、実施例は、従来例よりも軽量で膝窩部の丈(上下幅)が短い。このように、実施例に係る膝サポーター1は、従来の膝サポーターに対し、装着が容易で、利用者に対する負荷も少ない仕様となっている。
【0026】
なお、膝サポーター1のサイズについては、一般的に、利用者の膝の周囲の太さに応じて、種々のサイズから選択することができるようになっている。実施例におけるサポーター本体10の上下幅と従来例の本体部分における上下幅は、共に表1に示したサイズで一定であるが、膝の周囲に巻回する方向の幅(左右幅)については、従来例が5種類のサイズ(S/M/L/LL/3L)が用意されているのに対し、実施例に係る膝サポーター1は、「オーダーメイド」であり、利用者の膝周りの太さに応じ、サポーター本体10の左右幅とストラップ20の長さが適切に調整された上で利用者に提供される。さらに、実施例に係る膝サポーター1では、同じ長さのストラップ20であっても、幅を変えることで、張力の調整が可能となっている。すなわち、ストラップ20の幅を広くするほどサポーター本体20の周囲に巻回したときの張力、すなわち膝関節を支持するための拘束力が大きくなる。このように、サポーター本体10とストラップ20とが別体となっている実施例に係る膝サポーター1では、ストラップ20のみを交換するだけで、利用者の膝関節を支持する力を自由に変更することができる。
【0027】
次に、実施例に係る膝サポーター1の性能を評価するために、幅5cmのストラップ20を用い、利用者(以下、「被検者」)に内反OAに対応する手順で膝サポーター1を装着させて、被検者における最大膝内反モーメントと最大膝外旋モーメントとを測定した。具体的には、まず、被検者に実施例に係る膝サポーター1を装着させるとともに大腿骨外側上顆にモーションレコーダー(マイクロストーン株式会社製、MVP-RF8-GC-500)を取り付ける。次いで、各被検者に5mの距離を往復歩行させるとともに、その歩行状態を前額面より前背面をビデオ撮影する。そして、二次元解析ソフト(kinovea.0.9.1)を用いてビデオ映像における左右方向の膝の揺動状態と、モーションレコーダーによる三次元方向の加速度とを同期的に解析することで、最大膝内反モーメントと最大膝外旋モーメントとを測定した。また、従来の膝サポーターを被検者に装着させた状態、及びいずれの膝サポーターも装着しない状態で同様の試験を行って、最大膝内反モーメントと最大膝外旋モーメントとを測定し、その測定結果を実施例における測定結果と比較した。なお、測定結果に対する有意水準を5%とした。
【0028】
図6A、及び
図6Bに、実施例に係る膝サポーター1である「実施例」と、従来の膝サポーターである「従来例」、及びいずれの膝ポーターも装着しない「非装着」の夫々における最大膝内反モーメント、及び最大膝外旋モーメントの測定結果を示した。
図6A、
図6Bに示したように、実施例に係る膝サポーター1は、非装着及び従来例に対し、最大膝内反モーメントと最大膝外旋モーメントの双方が有意に減少していることが確認できた。
【0029】
上述したように、実施例に係る膝サポーター1は、従来の膝サポーターに対し、装着が容易で利用者の負荷を軽減させることができるとともに、より確実に膝関節を支持することができるものである。また、実施例に係る膝サポーター1は、ストラップ20に四つの面ファスナー(211~214)が間欠的に配置されているが、サポーター本体10において、膝を内外両側で支持する補強部材16を収納するスリーブ14の領域が識別し易くなっており、このスリーブ14の領域を面ファスナー(211~214)の吸着位置としている。そのため、利用者は、ストラップ20をサポーター本体10の下端から上端に向けて(あるいは上端から下端に向けて)螺旋状に巻回する際、各面ファスナー(211~214)を識別が容易なスリーブ14を吸着位置として認識することができ、専門的な知識がなくても、ストラップ20を正しく巻回することができる。
【0030】
なお、ストラップ20の面ファスナー21は、少なくとも長さ方向の両端の2箇所にあればよいが、本実施例では、ストラップ20に伸縮性がない面ファスナー(211~214)が間欠的に配置されているため、ストラップ20が長さ方向で隣接し合う二つの面ファスナー(211-212,212-213,213-214)間の短い距離でのみ伸長し、長さ方向の両端に面ファスナー21を設ける場合と比較してストラップ20の巻回経路にずれが生じ難い。
【0031】
すなわち、面ファスナー21がストラップの両端にしかない場合、歩行時等の膝の屈伸動作に伴ってストラップ20が全長にわたって伸縮しようとする際、当初のストラップの巻回経路に対してずれが生じ、最も適切なストラップ20の巻回状態が維持できなくなる可能性がある。一方、本実施例では、ストラップ20が長さ方向の4箇所で固定されるため、互いに隣接する面ファスナー(211-212,212-213,213-214)間の距離が短くなり、巻回状態にずれが生じ難い。それによって膝関節の周囲が常時均等に拘束されて膝関節を安定的に支持することができる。
===その他の実施例===
以上、本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。また、上記の各実施例は本発明を分かりやすく説明するために構成を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また各実施形態の構成の一部について、他の構成に追加、削除、置換することが可能である。
【0032】
例えば、上記実施例において、補強部材16は、平板帯状に形成されたコイルバネで構成されて、形状の復元性、脚(30L,30R)の形状への追従性、及び耐久性に優れたものであるが、補強部材16は、金属板や樹脂素材等で構成することも可能である。補強部材16の材質や構造は、求められるコストや性能等に応じて適宜に変更することができる。
【0033】
ストラップ20は、幅が大きいほど膝関節をより強く固定することができることから、一つのサポーター本体10に対して幅が異なる複数本を備えていてもよい。そして、利用者は、症状の変化等に応じ、適宜な幅のストラップ20を用いればよい。
【0034】
膝関節をより強く支持するために、一つのサポーター本体10に対し、二つのストラップ20を用い、一方のストラップ20を内反OAに対応する手順で巻回し、他方のストラップ20を外反OAに対応する手順で巻回してもよい。
図7にストラップ20を二つ用いた膝サポーター1の装着状態を示した。なお、
図7では利用者の右脚30Rに膝サポーター1を装着している。
図7に示したように、一つのサポーター本体10に対し、二つのストラップ20が、螺旋の向きが互いに逆となるように巻回されている。
【0035】
上記実施例おいて、ストラップ20には、長さ方向の4箇所に面ファスナー(211~214)が配置され、サポーター本体10の外面には、ストラップ20を巻回する際に夫々の面ファスナー(211~214)を正しい位置に吸着させるために、スリーブ14の領域が容易に識別できるようになっていた。もちろん、医師等の指導により利用者が正しくストラップ20を巻回させることができるのであれば、面ファスナー(211~214)の吸着位置を敢えて識別し易くしておく必要はない。
【0036】
なお、当然のことながら、上記実施例に係る膝サポーター1は、膝関節を安定して支持することを目的として使用されるのであれば、適用はOAに限らない。
【符号の説明】
【0037】
1 膝サポーター、10 サポーター本体、11 凹部、12 フラップ部、
14 スリーブ、16 補強部材、21,124 面ファスナー、
30L,30R 脚、31 膝蓋
【要約】
【課題】装着が容易で軽量であるとともに、確実に膝関節を支持することが可能な膝サポーターを提供する。
【解決手段】伸縮性を有するサポーター本体10とストラップ20とによって構成され、サポーター本体は、膝蓋31を外方に露出させつつ利用者の膝の周囲に筒状に巻回された状態で装着され、ストラップは、帯状で、サポーター本体の外周に螺旋状に巻回され、サポーター本体には、膝の周囲に巻回された際の膝の外側と内側とに対応する領域に上下方向に延長する平板帯状の補強部材16が内蔵され、ストラップは、一主面に、帯状に延長する長さ方向の少なくとも始端と終端の夫々に面ファスナー21が取り付けられてなり、サポーター本体は、膝の周囲に巻回された際の外面側に面ファスナーが吸着される領域14を有する、膝サポーター1としている。
【選択図】
図1B