(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-18
(45)【発行日】2025-08-26
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 50/14 20200101AFI20250819BHJP
B60W 40/072 20120101ALI20250819BHJP
B60W 40/105 20120101ALI20250819BHJP
B60W 40/109 20120101ALI20250819BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20250819BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20250819BHJP
【FI】
B60W50/14
B60W40/072
B60W40/105
B60W40/109
B60W60/00
G08G1/16 D
(21)【出願番号】P 2023564761
(86)(22)【出願日】2022-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2022037235
(87)【国際公開番号】W WO2023100469
(87)【国際公開日】2023-06-08
【審査請求日】2024-05-21
(31)【優先権主張番号】P 2021193738
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大町 忠嗣
(72)【発明者】
【氏名】横井 真浩
(72)【発明者】
【氏名】諏訪部 光紀
(72)【発明者】
【氏名】手塚 雄貴
(72)【発明者】
【氏名】王 晨宇
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-104829(JP,A)
【文献】特開2021-160458(JP,A)
【文献】特開2018-24360(JP,A)
【文献】特開2020-128165(JP,A)
【文献】特開2018-136700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動運転および手動運転が可能な車両(10)が備える車両制御装置であって、
前記車両の目標走行経路を設定する走行経路設定部(111)と、
前記車両が走行する進行方向にあるカーブの曲率と前記車両の車速とに基づいて、前記車両に生じる将来の横加速度を算出する横加速度算出部(113)と、
前記自動運転の実行中において前記車両のドライバが操舵ハンドルを保持していない状態であるハンズオフ状態から、前記ドライバが前記操舵ハンドルを保持しているハンズオン状態への切り替えを要求するハンズオン要求を、報知装置(150)により報知する報知部(114)と、
前記横加速度算出部の算出結果に応じて前記車両の制御内容を決定する制御決定部(115)と、
を備え、
前記制御決定部は、
前記車両が前記ハンズオフ状態で前記カーブを走行するときに、
前記横加速度算出部により算出された前記横加速度が予め定められた閾値より大きい場合には、前記制御内容として前記報知部により前記ハンズオン要求を報知する制御を決定し、前記横加速度が前記閾値以下である場合には、前記制御内容として前記ハンズオフ状態を継続する制御を決定する、車両制御装置。
【請求項2】
前記横加速度算出部は、前記カーブを複数に分割した区間ごとに前記横加速度を算出し、
前記制御決定部は、前記制御内容として、前記横加速度が前記閾値より大きい前記区間に前記車両が進入する前に前記ハンズオン要求を報知する制御を決定する請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記横加速度算出部は、前記カーブの前記曲率として、地図情報の曲率を用いる請求項1または請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記横加速度算出部は、前記カーブの前記曲率として、前記進行方向の実走路情報から推定される曲率を用いる請求項1または請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項5】
前記横加速度算出部は、前記カーブの前記曲率として、前記走行経路設定部により設定された前記目標走行経路における曲率を用いる請求項1または請求項2に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2021年11月30日に出願された日本出願番号2021-193738号に基づくもので、ここにその記載内容を援用する。
【技術分野】
【0002】
本開示は、車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば、特許文献1に記載されるように、自動運転および手動運転が可能な車両の情報処理装置が知られている。この情報処理装置では、自動運転から手動運転へ切り替えられた地点を、自動運転が不調となる不調地点として地図情報に予め記憶する。そして、不調地点に近づいたことをドライバに対して報知するようにしている。このような報知があった場合は、ドライバが操舵ハンドルを保持していないハンズオフ状態から、ドライバが操舵ハンドルを保持しているハンズオン状態への切り替えを要求するハンズオン要求を出す構成が想定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
しかし、上記構成では、予め記憶された地図情報に基づき一律にハンズオン要求を出すため、車両の実際の走行時の状況によっては不要なハンズオン要求を出す場合が生じ得る。例えば、予め不調地点として登録されたカーブを走行する際、渋滞低速走行時などで車両に生じる横加速度が小さいためにハンズオフ状態のままでもドライバの安全快適性が損なわれることがない場合でも、ハンズオン要求を出すことが起こり得る。この場合、運転者に無駄な操作を強いてしまう。そこで、カーブ走行時において、不要な場合にはハンズオン要求を出さないようにしつつ、必要な場合にはハンズオン要求を出すことが可能な車両制御装置が望まれる。
【0006】
本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
本開示の一形態によれば、車両制御装置が提供される。この車両制御装置は、自動運転および手動運転が可能な車両が備える車両制御装置であって、前記車両の目標走行経路を設定する走行経路設定部と、前記車両が走行する進行方向にあるカーブの曲率と前記車両の車速とに基づいて、前記車両に生じる将来の横加速度を算出する横加速度算出部と、前記自動運転の実行中において前記車両のドライバが操舵ハンドルを保持していない状態であるハンズオフ状態から、前記ドライバが前記操舵ハンドルを保持しているハンズオン状態への切り替えを要求するハンズオン要求を、報知装置により報知する報知部と、前記横加速度算出部の算出結果に応じて前記車両の制御内容を決定する制御決定部と、を備える。前記制御決定部は、前記車両が前記ハンズオフ状態で前記カーブを走行するときに、前記横加速度算出部により算出された前記横加速度が予め定められた閾値より大きい場合には、前記制御内容として前記報知部により前記ハンズオン要求を報知する制御を決定し、前記横加速度が前記閾値以下である場合には、前記制御内容として前記ハンズオフ状態を継続する制御を決定する。
【0008】
この構成によれば、車両がハンズオフ状態でカーブを走行するときに、制御決定部により、横加速度算出部により算出された横加速度が予め定められた閾値より大きい場合には、ハンズオン要求を報知する制御が決定され、横加速度が閾値以下である場合には、ハンズオフ状態を継続する制御が決定される。例えば、渋滞低速走行時などで車両に生じる横加速度が小さい場合には、ハンズオフ状態のままでもドライバの安全快適性が損なわれることがなく、ハンズオフ状態を継続しても問題がない。このような場合に、上記構成によれば、ハンズオン要求を出すことなくハンズオフ状態を継続できる。すなわち、カーブ走行時において、不要な場合にはハンズオン要求を出さないようにしつつ、必要な場合にはハンズオン要求を出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示についての上記目的およびその他の目的、特徴や利点は、添付の図面を参照しながら下記の詳細な記述により、より明確になる。その図面は、
【
図1】
図1は、本開示の第1実施形態における車両制御装置の概略構成を示すブロック図であり、
【
図2】
図2は、車両制御装置が実行するハンズオン要求を報知する処理を示すフローチャートであり、
【
図3】
図3は、横加速度の算出を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の複数の実施形態について
図1~
図3に基づいて説明する。
【0011】
A.第1実施形態:
A1.車両制御装置110の構成:
図1に示すように、車両10は、自動運転制御システム100を備える。車両10は、自動運転および手動運転が可能である。自動運転では、車両10の運転を操作するための操舵ハンドルがドライバによって操作されていなくても、自動的に車両10が操舵されて運転される。また、自動運転では、操舵はドライバにより行われ、加減速が自動的に制御される形態もある。手動運転では、ドライバによって操舵ハンドルが操作されることによって車両10が操舵されて運転される。
【0012】
本実施形態において、自動運転制御システム100は、車両制御装置110と、周辺センサ120と、内部センサ130と、道路情報記憶部140と、自動運転制御部210と、駆動力制御ECU(Electronic Control Unit)220と、制動力制御ECU230と、操舵制御ECU240と、を備える。車両制御装置110と、自動運転制御部210と、駆動力制御ECU220と、制動力制御ECU230と、操舵制御ECU240とは、車載ネットワーク250を介して接続される。
【0013】
周辺センサ120は、自動運転に必要な車外の周辺情報を取得する。周辺センサ120は、カメラ121と物体センサ122とを備える。カメラ121は、自車両10の周囲を撮像して画像を取得する。物体センサ122は、自車両10の周囲の状況を検出する。物体センサ122として、例えば、レーザーレーダー、ミリ波レーダー、超音波センサ等の反射波を利用した物体センサが挙げられる。
【0014】
内部センサ130は、自車位置センサ131と、加速度センサ132と、車速センサ133と、ヨーレートセンサ134と、を備える。自車位置センサ131は、現在の車両10の位置を検出する。自車位置センサ131として、例えば、汎地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System(s)(GNSS))やジャイロセンサ等が挙げられる。
【0015】
加速度センサ132は、車両10の加速度を検出する検出器である。加速度センサ132は、例えば、車両10の前後方向の縦加速度を検出する縦加速度センサと、車両10の横加速度を検出する横加速度センサとを含む。車速センサ133は、車両10の現在の走行速度を計測する。ヨーレートセンサ134は、車両10の重心の鉛直軸周りのヨーレート(回転角速度)を検出する検出器である。ヨーレートセンサ134としては、例えばジャイロセンサを用いることができる。周辺センサ120および内部センサ130は、取得した各種データを車両制御装置110に送信する。
【0016】
道路情報記憶部140は、車両10が走行予定の道路に関する詳細な道路情報等を記憶する。道路情報は、例えば、車線数、車線幅、各車線の中心座標、停止線位置、信号機位置、ガードレール位置、道路勾配、カーブや直線部の道路種別、カーブの曲率半径、カーブ区間の長さ等の情報を含む。
【0017】
報知装置150は、車両10の乗員(主にドライバ)に対して、画像や音声を用いて各種の情報を報知する装置である。報知装置150は、表示装置およびスピーカを含む。表示装置としては、例えば、HUD(Head-Up Display)や、インストルメントパネルに設けられた表示装置を用いることができる。なお、「画像」には、動画や文字列も含まれる。
【0018】
車両制御装置110は、走行経路設定部111と、周辺情報認識部112と、横加速度算出部113と、報知部114と、制御決定部115と、通信部116と、を備える。車両制御装置110は、中央処理装置(CPU)や、RAM、ROMにより構成されたマイクロコンピュータ等からなり、予めインストールされたプログラムをマイクロコンピュータが実行することによって、これらの各部の機能を実現する。ただし、これらの各部の機能の一部又は全部をハードウェア回路で実現してもよい。
【0019】
走行経路設定部111は、車両10の走行する経路を設定する。より具体的には、走行経路設定部111は、道路情報記憶部140に記憶された道路情報を用いて、予め定められた目的地までの目標走行経路を設定する。本実施形態における「目標走行経路」とは、目的地までの単なる道順ではなく、走行車線や道路内における走行位置等の詳細な経路を示す。
【0020】
周辺情報認識部112は、周辺センサ120の検出信号を用いて車両10の周辺情報を認識する。より具体的には、周辺情報認識部112は、カメラ121が撮像した画像および物体センサ122の出力信号に基づき、走行している道路の左右の区画線(以下、「レーンマーカ」という)の存在とその位置や、信号機の存在とその位置や指示内容、他車両の存在、位置、大きさ、距離、進行方向、他車両のドライバの存在とその動作、他車両の周辺の人の存在、位置、等を周辺情報として認識する。なお、周辺情報認識部112は、信号機や、外部サーバ等との無線通信によってこれらの情報の一部または全部を取得し、認識してもよい。
【0021】
横加速度算出部113は、車両10の進行方向にあるカーブを走行するときに車両10に生じる将来の横加速度を算出する。具体的には、横加速度算出部113は、カーブ走行時の将来の横加速度を、カーブの曲率と、車両10の車速とに基づいて算出する。なお、横加速度算出の詳細については後述する。
【0022】
報知部114は、画像表示および音声出力が可能な上記報知装置150を用いて、走行経路および車両位置情報等の種々の情報を乗員に報知する。報知部114は、ハンズオン要求の情報を、車両10の走行状況に応じて制御決定部115の処理に従って報知する。ハンズオン要求とは、自動運転の実行中においてドライバが操舵ハンドルを保持していない状態であるハンズオフ状態から、ドライバが操舵ハンドルを保持しているハンズオン状態への切り替えを要求するものである。
【0023】
制御決定部115は、横加速度算出部113の算出結果に応じて、車両10の制御内容を決定し、車載ネットワーク250を通じて自動運転制御部210に車両10の制御を行うよう出力する。通信部116は、例えば、図示しないアンテナを通じて図示しない情報センターから、交通情報、天気情報、事故情報、障害物情報、交通規制情報等を取得する。通信部116は、車車間通信により、他車両から種々の情報を取得してもよい。また、通信部116は、路車間通信により、道路の各所に設けられた路側機から種々の情報を取得してもよい。
【0024】
自動運転制御部210は、中央処理装置(CPU)や、RAM、ROMにより構成されたマイクロコンピュータ等からなり、予めインストールされたプログラムをマイクロコンピュータが実行することによって、自動運転機能を実現する。自動運転制御部210は、例えば、走行経路設定部111が定めた経路に沿って走行するように、駆動力制御ECU220および制動力制御ECU230、操舵制御ECU240を制御する。自動運転制御部210は、例えば、車両10が隣車線に車線変更を行う場合に、車両10が走行している車線の基準線から隣車線の基準線を走行するように合流支援を行ってもよい。
【0025】
駆動力制御ECU220は、エンジンなど車両10の駆動力を発生するアクチュエータを制御する電子制御装置である。ドライバが手動で運転を行う場合、駆動力制御ECU220は、アクセルペダルの操作量に応じてエンジンや電気モータである動力源を制御する。一方、自動運転を行う場合、駆動力制御ECU220は、自動運転制御部210で演算された要求駆動力に応じて動力源を制御する。
【0026】
制動力制御ECU230は、車両10の制動力を発生するブレーキアクチュエータを制御する電子制御装置である。ドライバが手動で運転を行う場合、制動力制御ECU230は、ブレーキペダルの操作量に応じてブレーキアクチュエータを制御する。一方、自動運転を行う場合、制動力制御ECU230は、自動運転制御部210で演算された要求制動力に応じてブレーキアクチュエータを制御する。
【0027】
操舵制御ECU240は、車両10の操舵トルクを発生するモータを制御する電子制御装置である。ドライバが手動で運転を行う場合、操舵制御ECU240は、ステアリングハンドルの操作に応じてモータを制御して、ステアリング操作に対するアシストトルクを発生させる。これにより、ドライバが少量の力でステアリングを操作でき、車両10の操舵を実現する。一方、自動運転を行う場合、操舵制御ECU240は、自動運転制御部210で演算された要求操舵角に応じてモータを制御することで操舵を行う。
【0028】
A2.車両制御装置110による処理:
自動運転では、走行経路設定部111は、自車位置センサ131によって検出された現在位置と、車両10の周囲の他車両等の位置や速度等とに基づいて、数秒後までの車両10の走行プランを作成する。この走行プランには、数秒後までの車両10の操舵プラン及び加減速プラン等が含まれる。
【0029】
図2に示される処理は、車両10の走行中に所定時間ごとに繰り返し実行される。
図2に示すように、ステップ11(以下、ステップを「S」と略す)において、現在の車両10の運転状態が、ハンズオフ状態であるか否かが判断される。例えば、自動運転制御部210からの制御信号に基づいて、自動運転実行中のハンズオフ状態であるか否かが判断される。
【0030】
ハンズオフ状態であると判断された場合には(S11:YES)、S12に進み、車両10がこのあとカーブ走行をするか否かが判断される。「このあとカーブ走行をする」とは、車両10がカーブにさしかかるカーブ手前およびカーブ走行中、を含む。また、以下、「カーブを走行するとき」とは、同様にカーブにさしかかるカーブ手前およびカーブ走行中、を含み、以下、単に「カーブ走行時」ともいう。
【0031】
車両10がカーブを走行すると判断された場合には(S12:YES)、S13に進み、横加速度算出部113により、横加速度Anが算出される。そして、S14において、横加速度Anが、予め定められた閾値A0よりも大きいか否かが判断される。閾値A0は、カーブ走行時において、ドライバが体感的に安心感のある程度の安全快適性を維持できると想定される横加速度の上限値に、予め実験等により検討され設定される。
【0032】
横加速度Anが、予め定められた閾値A0よりも大きいと判断された場合には(S14:YES)、S15に進み、報知装置150によりハンズオン要求が出される。具体的には、ディスプレイ上にハンズオン要求を表す画像を表示してもよいし、ハンズオン要求を知らせる音をスピーカから発してもよい。
【0033】
一方、横加速度Anが、予め定められた閾値Ao以下である場合には(S14:NO)、S16に進み、ハンズオフ状態が継続され、ハンズオン要求はなされない。S15およびS16の処理の後、本処理ルーチンは終了する。なお、S11においてハンズオフ状態ではないと判断された場合(S11: NO)、およびS12においてカーブ走行ではないと判断された場合(S12:NO)には、後の制御を行わず、
図2の処理を終了する。
【0034】
A3.横加速度算出(S13)およびハンズオン要求判定(S14)の詳細:
次に、上記S13、S14の処理の詳細について説明する。横加速度算出部113は、
図3に示すように、カーブ認識距離Dを複数に分割した区間ごとの横加速度An(nは正の整数)を算出する。カーブ認識距離Dは、車両10の前方においてカーブと認識される部分の全長である。区間は、カーブ認識距離Dを数m(例えば5m)ごとの等間隔に分割された部分であり、車両10に近い方から順に区間1、区間2、・・・~区間nとする。カーブ走行時の将来の横加速度Anは、カーブの曲率Rnと、車両10の現在の車速Vとに基づいて、以下の式(1)により、算出される。
横加速度An=(車速V)
2×曲率Rn ・・・(1)
【0035】
例えば、車両10が、
図3に示す区間1の始点である第1地点P1にいるとき、区間1の横加速度A1は、以下の式(2)により、算出される。
横加速度A1=(車速V1)
2×曲率R1 ・・・(2)
式(2)において、車速V1は、第1地点P1での車速であり、曲率R1は、第1地点P1での曲率である。車両10の現在の車速Vは、車速センサ133から取得できる。第1地点P1での曲率R1は、道路情報記憶部140から取得できる。区間2~区間nの横加速度A2~Anについても同様に求めることができ、車速Vは第1地点P1での車速V1を用い、曲率Rnについては各区間の始まりとなる地点P2~Pnでの曲率をそれぞれ用いることができる。曲率Rnは、道路情報記憶部140に記憶された地図情報のカーブの曲率を用いる。
【0036】
車両10が進み、車両10が第2地点P2以降にいるときに上記
図2に示す処理ルーチンが実行されるときにも、同様にしてその時点での車両10の進行方向のカーブ認識距離Dを等間隔に分割した区間毎の横加速度をそれぞれ算出する。算出した横加速度Anが閾値Aoより大きいか否かを判断するとき(S14)には、算出した各区間の横加速度Anのうち、いずれかでも閾値Aoより大きければハンズオン要求を出す(S15)。なお、ハンズオン要求の報知のタイミングは、閾値Aoを超えるカーブ区間にさしかかる数秒前であればよく、適宜設定され得る。
【0037】
[効果]
(1)上記第1実施形態の車両制御装置110によれば、ハンズオフ状態のカーブ走行時において、カーブ認識距離を将来走行するとき車両10に生じる横加速度Anが閾値Aoを超える場合にはハンズオン要求が出される(S15)。そして、横加速度Anが閾値Ao以下の場合にはハンズオフ状態が継続される(S16)。すなわち、カーブ走行時の車速という運転状況が加味されてハンズオン要求の採否が判断されるため、予め記憶された地図情報に基づき一律にハンズオン要求を出す構成と比較して、不要なハンズオン要求を抑制できる。
【0038】
例えば、通常速度の走行ではハンズオン要求を出すべきカーブであっても、渋滞低速走行時などで車両10に生じる横加速度Anが小さい場合には、ハンズオフ状態のままでもドライバの安全快適性が損なわれることがなく、ハンズオフ状態を継続しても問題がない。このような場合に、ハンズオン要求を出すことなくハンズオフ状態を継続できるため、カーブ走行時におけるハンズオン要求の的確性を向上させることができる。
【0039】
(2)上記第1実施形態の車両制御装置110によれば、横加速度算出部113は、カーブ認識距離Dを等間隔に分割した区間毎の横加速度Anをそれぞれ算出する。このため、カーブ認識距離D全体の代表値である曲率を用いて横加速度を算出する構成と比較して、より緻密な制御を実施でき、車両10の間近のカーブ走行をより安全にできる。
【0040】
(3)上記第1実施形態の車両制御装置110によれば、ハンズオン要求を報知するタイミングは、閾値Aoを超えるカーブ区間にさしかかる数秒前に設定されるため、ドライバが不安に思う前に報知でき、安全快適性が維持される。
【0041】
B.第2実施形態:
次に、第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態および後述の第3の実施形態における車両制御装置の全体構成(
図2)および処理(
図3)は、上記第1実施形態と実質同様であるため、説明は省略する。上記第1実施形態では、横加速度Anの算出に際し、カーブの曲率Rnとして、道路情報記憶部140に記憶された地図情報のカーブの曲率を用いた。これに代えて、第2実施形態では、曲率Rnとして、周辺センサ120から読み取られた進行方向の実走路情報から推定される曲率を用いる。
【0042】
実走路情報とは、車両10が実際に走行中に得られる情報である。例えば具体的には、カメラ121が撮像した前方画像を基に、周辺情報認識部112により推定されるレーンマーカ21(
図3参照)に関する情報である。推定されるレーンマーカ21の形状等から曲率が推定される。横加速度算出部113は、上記第1実施形態と同様に、カーブ認識距離Dを等間隔に分割した区間1、2…n毎の横加速度Anをそれぞれ算出する。
【0043】
第2実施形態によれば、上記第1実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、実走路情報から推定される曲率を用いるため、地図情報を持たない場合でも横加速度Anを算出できるとともに、横加速度Anの算出精度を向上させることができる。
【0044】
C.第3実施形態:
次に、第3実施形態について説明する。第3実施形態では、曲率Rnとして、走行経路設定部111により設定された目標走行経路Tにおける曲率を用いる。
図3に示すように、カーブでの目標走行経路Tは、例えば、カーブの差し掛かりでは道路のアウト側から進入し、カーブの終わりでは道路のイン側を走行するようなラインを描く。目標走行経路Tは、スムーズにカーブを走行するためのラインを描くため、地図情報や実走路情報と完全には一致していない。このため、目標走行経路Tにおける曲率は、地図情報や実走路情報に基づく曲率よりも実際の走行に即した情報である。
【0045】
第3実施形態によれば、上記第2実施形態と同様の効果を奏することができるとともに、さらに、より実際の走行に即した正確な情報である目標走行経路Tにおける曲率を用いることで、横加速度Anの算出精度を向上させることができる。
【0046】
さらに、例えば先行車22によって遠方のレーンマーカ21が隠されて見えないためにカーブ曲率を読み取れない場合でも、横加速度Anを算出でき、的確にハンズオン要求を出すことができる。
【0047】
D.他の実施形態:
(D1)上記各実施形態では、上記式(1)に示すように、将来の横加速度Anの算出に際して、車両10の現在の車速Vを全ての区間に用いたが、先の区間を走行するときの車速を先読みして用いてもよい。この場合、横加速度Anは、以下の式(3)により算出される。
横加速度An=(先読み車速Vn)2×曲率Rn ・・・(3)
【0048】
ここで、先読み車速Vnは、以下の式(4)により算出される。
先読み車速Vn=現在車速V+目標縦加速度×先読み時間 ・・・(4)
目標縦加速度は、例えば、先行車22と自車両10との車間距離をセンサで計測し、車間距離が設定された間隔以下に縮まらないように速度を自動調整する車間距離自動制御システム(ACC:Adaptive Cruise Control)から取得できる。
【0049】
(D2)上記各実施形態では、横加速度Anが閾値Aoを超えるカーブ区間の手間でハンズオン要求を報知するようにしたが、カーブを曲がることが可能でありドライバの最低限の安全性が確保される場合には、該当カーブ区間にさしかかってから報知するようにしてもよい。
【0050】
(D3)上記各実施形態において、カーブ認識距離Dのうち、1区間のみが閾値Aoを超えている場合には、当該区間を走行後には、ハンズオン要求をリセットし、ハンズオフ状態が可能になったことを報知するようにしてもよい。
【0051】
(D4)上記各実施形態において、横加速度算出部113は、カーブ認識距離Dを等間隔に分割した区間ごとに横加速度Anを算出したが、区間は等間隔に分割されたものでなくてもよい。例えば、曲率がある程度一定である区間は分割しなくてもよい。
なお、本開示に記載の車両制御装置110及びそれら手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の車両制御装置110及びそれら手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の車両制御装置110及びそれら手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。