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特許7730206循環型水処理システム、制御方法、及び制御プログラム
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  • 特許-循環型水処理システム、制御方法、及び制御プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-19
(45)【発行日】2025-08-27
(54)【発明の名称】循環型水処理システム、制御方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/00 20230101AFI20250820BHJP
【FI】
C02F1/00 J
C02F1/00 V
C02F1/00 S
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024194390
(22)【出願日】2024-11-06
【審査請求日】2024-11-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517039483
【氏名又は名称】WOTA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 雄太
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-047049(JP,A)
【文献】特表2002-525466(JP,A)
【文献】特開2017-225928(JP,A)
【文献】特開2018-054145(JP,A)
【文献】実開昭49-093144(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2021/0054604(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/00-11/20
A01K61/00-63/10
E03B7/10-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外の配管の温度、及び屋外へ送水する循環水の温度に基づいて、還り配管に流れる循環水の流量を制御する制御装置を備える、
循環型水処理システム。
【請求項2】
屋外の配管の温度に基づいて、還り配管に流れる循環水の流量を制御する制御装置と、
バルブを介して前記還り配管に流れる循環水を送水元の貯留槽へ戻す戻り配管と、を備え、
前記制御装置は、前記バルブを制御して前記還り配管に流れる循環水の流量を制御する、
循環型水処理システム。
【請求項3】
前記制御装置は、屋外の配管の温度が予め定めた温度範囲外の場合に、前記還り配管に流れる循環水の流量を増加させる、
請求項1又は2に記載の循環型水処理システム。
【請求項4】
前記貯留槽が設けられた室内の温度を調整する空調設備を更に備え、
前記制御装置は、少なくとも前記還り配管が屋外の温度により損傷するリスクと前記空調設備が消費するエネルギーのコストとを変数とした目的関数を最小化するように、前記還り配管に流れる循環水の流量を制御する、
請求項に記載の循環型水処理システム。
【請求項5】
コンピュータが、外の配管の温度、及び屋外へ送水する循環水の温度に基づいて、還り配管に流れる循環水の流量を制御することを有する、
制御方法。
【請求項6】
コンピュータに、外の配管の温度、及び屋外へ送水する循環水の温度に基づいて、還り配管に流れる循環水の流量を制御する処理を実行させる、
制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、循環型水処理システム、制御方法、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には「三方弁14、15は温水接続口6と機器本体1間の往き管、戻り管に設けてあり、三方弁14、15の切換により、機器本体1からの温水が浴槽2に設けた温水接続口6へと循環する温水回路と、往き管側の三方弁14から戻り管側三方弁15へと循環するバイパス温水回路16を形成する構成となっており、前記リモートコントローラ10の運転スイッチ10aと連動するように構成してある。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭60-240953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
処理水を循環水として循環させる循環型の水処理システムが知られている。ここで、循環水を流す還り配管を屋外に設ける場合がある。しかしながら、還り配管が屋外に設けられている場合、外気温の変化により配管が損傷するリスクがある。
【0005】
そこで、本開示は、循環水を流す還り配管が屋外に設けられている場合であっても、外気温の変化により配管が損傷するリスクを低減することができる、システム、方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1態様に係る循環型水処理システムは、予め定めた屋外の配管の温度範囲に基づいて、還り配管に流れる循環水の流量を制御する制御装置を備える。
【0007】
本開示の第2態様に係る循環型水処理システムは、第1態様に係る循環型水処理システムにおいて、前記制御装置は、屋外の配管の温度が前記温度範囲外の場合に、前記還り配管に流れる循環水の流量を増加させる。
【0008】
本開示の第3態様に係る循環型水処理システムは、第1態様又は第2態様に係る循環型水処理システムにおいて、前記制御装置は、屋外へ送水する循環水の温度に更に基づいて、前記還り配管に流れる循環水の流量を制御する。
【0009】
本開示の第4態様に係る循環型水処理システムは、第1態様から第3態様のいずれか一つに係る循環型水処理システムにおいて、バルブを介して前記還り配管に流れる循環水を送水元の貯留槽へ戻す戻り配管を更に備え、前記制御装置は、前記バルブを制御して前記還り配管に流れる循環水の流量を制御する。
【0010】
本開示の第5態様に係る循環型水処理システムは、第4態様に係る循環型水処理システムにおいて、前記貯留槽が設けられた室内の温度を調整する空調設備を更に備え、前記制御装置は、少なくとも前記還り配管が屋外の温度により損傷するリスクと前記空調設備が消費するエネルギーのコストとを変数とした目的関数を最小化するように、前記還り配管に流れる循環水の流量を制御する。
【0011】
本開示の第6態様に係る制御方法は、コンピュータが、予め定めた屋外の配管の温度範囲に基づいて、還り配管に流れる循環水の流量を制御することを有する。
【0012】
本開示の第7態様に係る制御方法は、コンピュータに、予め定めた屋外の配管の温度範囲に基づいて、還り配管に流れる循環水の流量を制御する処理を実行させる。
【0013】
本開示に係る循環型水処理システム、制御方法、及び制御プログラムによれば、循環水を流す還り配管が屋外に設けられている場合であっても、外気温の変化により配管が損傷するリスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係る循環型水処理システム1の概略構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態に係る制御装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】本実施形態に係る制御装置100の機能構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されている場合があり、実際の比率とは異なる場合がある。
【0016】
図1は、本実施形態に係る循環型水処理システム1の概略構成の一例を示す図である。循環型水処理システム1は、如何なる液体を処理対象としてもよい。これより先、循環型水処理システム1が、住居等の建物から往き配管2を介して排出された排水を機械室内において液処理し、液処理した処理水を循環水として還り配管3を介して機械室から建物へ還す小型循環型の水処理システムである場合を一例として説明する。
【0017】
機械室には、第1の槽10と、第2の槽20と、第3の槽30と、空調設備40と、が設けられている。
【0018】
第1の槽10は、処理対象液を一時的に貯留する貯留槽である。ここでは、第1の槽10は、建物の水利用系から往き配管2を介して排出される排水を一時的に貯留する排水調整槽であるものとする。
【0019】
第1の槽10には、第1のポンプ11が設けられている。第1のポンプ11は、処理対象液を第1の槽10から第2の槽20へ移送するためのポンプである。
【0020】
第2の槽20は、処理対象液を液処理する液処理槽である。ここでは、第2の槽20は、微生物を利用して排水を浄化する生物処理槽であるものとする。
【0021】
第2の槽20には、第2のポンプ21が設けられている。第2のポンプ21は、第2の槽20内の液体を処理水として第2の槽20から第3の槽30へ移送するためのポンプである。ここでは、第2のポンプ21は、生物処理された液体をポンプにより吸引することでろ過する膜ろ過ポンプであるものとする。なお、第2の槽20には、更に、第2の槽20内の微生物を活性化させる曝気装置(図示せず)が設けられていてよい。
【0022】
第3の槽30は、処理水を一時的に貯留する処理水貯留槽である。ここで、第3の槽30に貯留される処理水が循環水として還り配管3を介して建物へ還ることとなる。したがって、第3の槽30は、循環水の送水元の貯留槽である。
【0023】
第3の槽30には、第3のポンプ31が設けられている。第3のポンプ31は、処理水を循環水として第3の槽30から建物へ移送するためのポンプである。ここでは、第3のポンプ31は、処理水を生活用水として建物の水利用系へ還す還り用ポンプであるものとする。
【0024】
空調設備40は、機械室内の空気を調和する設備である。空調設備40は、少なくとも機械室内の温度を調節する冷暖房機能を備えてよい。
【0025】
循環型水処理システム1において、機械室が建物から離れた位置に設けられる場合、往き配管2及び還り配管3は、屋外に設けられることになる。なお、ここでいう「屋外」とは、建物及び機械室以外のエリア全体を示す用語であり、地上に限らず地中をも含む概念として解釈されてよい。
【0026】
このように配管が屋外に設けられる場合、配管は外気に晒されることになる。したがって、外気温により配管が損傷するリスクがある。例えば、冬場等において外気温が低下すると、還り配管3に流れる循環水が凍結し体積が膨張することにより、還り配管3が破裂する。また、夏場等において外気温が上昇すると、還り配管3に流れる循環水に菌が繁殖し腐食性の物質が生成されることにより、還り配管3が腐敗する。
【0027】
そこで、本実施形態に係る循環型水処理システム1においては、制御装置100が、予め定めた屋外の配管の温度範囲に基づいて、還り配管3に流れる循環水の流量を制御することで、還り配管3が損傷するリスクを低減する。これを実現するにあたり、循環型水処理システム1は、更に、戻り配管4と、バルブ5と、第1の温度計6と、第2の温度計7と、を備えてよい。
【0028】
戻り配管4は、還り配管3から分岐されて還り配管3に流れる循環水を送水元の貯留槽である第3の槽30へ戻すための配管である。戻り配管4には、バルブ5が設けられている。
【0029】
第1の温度計6は、屋外において還り配管3の外表面に設けられ、還り配管3の温度Tを計測する。第2の温度計7は、第3の槽30内に設けられ、第3の槽30内に貯留する処理水の温度、すなわち、屋外へ送水する循環水の温度Tを計測する。
【0030】
制御装置100は、このような循環型水処理システム1全体を制御する。制御装置100は、有線又は無線により第1のポンプ11、第2のポンプ21、第3のポンプ31、バルブ5、第1の温度計6、及び第2の温度計7、及び空調設備40と通信可能に接続されてよい。
【0031】
図2は、本実施形態に係る制御装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。制御装置100は、プロセッサ101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、ストレージ104と、通信インタフェース105と、ユーザインタフェース106と、を備える。これらの構成は、バス109を介して相互に通信可能に接続されている。
【0032】
プロセッサ101は、各種プログラムを実行し、各構成を制御する。ここでは、プロセッサ101がCPU(Central Processing Unit)であるものとする。ROM102は、各種プログラム及び各種データを格納する。RAM103は、作業領域として一時的にプログラム又はデータを記憶する。ストレージ104は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)により構成され、オペレーティングシステムを含む各種プログラム及び各種データを格納する。
【0033】
本実施形態に係る制御装置100においては、ROM102又はストレージ104に、制御プログラム107が格納されている。本図においては、制御プログラム107がストレージ104に格納されている場合を一例として示している。そして、プロセッサ101が、ROM102又はストレージ104から制御プログラム107を読み出し、RAM103を作業領域として実行することにより、制御プログラム107にしたがった各構成の制御及び各種の演算処理を実行する。
【0034】
通信インタフェース105は、制御装置100が他の装置と通信するためのインタフェースである。ユーザインタフェース106は、制御装置100がユーザと情報をやりとりするための入出力インタフェースである。ユーザインタフェース106は、入力装置としてマウス、キーボード、タッチパネル、マイク等を含み、出力装置としてモニタ、スピーカ等を含んでよい。
【0035】
図3は、本実施形態に係る制御装置100の機能構成の一例を示す図である。制御装置100は、モニタリング部110と、流量制御部120と、空調制御部130と、を備える。これらの機能構成は、プロセッサ101がROM102又はストレージ104から制御プログラム107を読み出し、RAM103に展開して実行することにより、プロセッサ101に実装されてよい。
【0036】
モニタリング部110は、第1の温度計6が計測した温度Tをモニタリングする。また、モニタリング部110は、第2の温度計7が計測した温度Tをモニタリングする。また、モニタリング部110は、空調設備40の稼働状態をモニタリングする。また、モニタリング部110は、図示せぬ水位計が計測した各槽の水位をモニタリングする。
【0037】
流量制御部120は、第1のポンプ11を制御することにより、第1の槽10から第2の槽20へ移送する処理対象液の流量を制御する。また、流量制御部120は、第2のポンプ21を制御することにより、第2の槽20から第3の槽30へ移送する処理水の流量を制御する。また、流量制御部120は、第3のポンプ31を制御することにより、還り配管3を介して第3の槽30から建物へ還す循環水の流量を制御する。また、流量制御部120は、バルブ5を制御して還り配管3に流れる循環水を第3の槽30へ戻すことにより、還り配管3に流れる循環水の流量を制御する。
【0038】
空調制御部130は、空調設備40を制御することにより、機械室内の温度が適温(例えば、20℃~25℃)となるように制御する。このような制御装置100が循環型水処理システム1を制御する場合を、3つの実施形態に分けてそれぞれ説明する。しかしながら、3つの実施形態は必ずしも独立に実施される必要はなく、2つ又は3つの実施形態が互いに組み合わされて実施されてもよい。
【0039】
<第1の実施形態>
第1の実施形態では、還り配管3の温度Tに基づいて還り配管3に流れる循環水の流量を制御する。上述のとおり、外気温の低下に伴い、屋外に設けられた還り配管3の温度が低下する。ここで、還り配管3に流れる循環水が凍結してしまうと、体積が膨張して還り配管3が破裂してしまうリスクがある。
【0040】
そこで、制御装置100は、第1の温度計6が計測した還り配管3の温度Tをモニタリングし、温度Tが予め定めた閾値Tを下回った場合に、還り配管3に流れる循環水の流量を増加させる。なお、閾値Tは、循環水の性状、及び還り配管3の仕様の少なくともいずれかに基づいて制御装置100が自動的に設定してもよいし、経験則に基づいてユーザがマニュアルで設定してもよい。閾値Tは、例えば、5℃、好ましくは15℃であってよい。ここでは、閾値Tが15℃に設定されているものとする。これにより、凍結を防止しつつ、循環水を建物において再利用する場合にも冷たすぎることなく快適に利用することができる。
【0041】
したがって、制御装置100は、温度Tが15℃を下回った場合に、還り配管3に流れる循環水の流量を増加させてよい。この際、制御装置100は、温度Tが低いほど還り配管3に流れる循環水の流量が多くなるように連続的に又は段階的に制御してもよい。
【0042】
また、上述のとおり、外気温の上昇に伴い、屋外に設けられた還り配管3の温度が上昇する。ここで、還り配管3に流れる循環水に菌が繁殖してしまうと、腐食性の物質が生成されて還り配管3が腐敗してしまうリスクがある。
【0043】
そこで、制御装置100は、第1の温度計6が計測した還り配管3の温度Tをモニタリングし、温度Tが予め定めた閾値Tを上回った場合に、還り配管3に流れる循環水の流量を増加させる。なお、閾値Tもまた、循環水の性状、及び還り配管3の仕様の少なくともいずれかに基づいて制御装置100が自動的に設定してもよいし、経験則に基づいてユーザがマニュアルで設定してもよい。閾値Tは、例えば、80℃、好ましくは60℃、より好ましくは35℃であってよい。ここでは、閾値Tが35℃に設定されているものとする。これにより、菌の繁殖を防止しつつ、循環水を建物において再利用する場合にも熱すぎることなく快適に利用することができる。
【0044】
したがって、制御装置100は、温度Tが35℃を上回った場合に、還り配管3に流れる循環水の流量を増加させてよい。この際、制御装置100は、温度Tが高いほど還り配管3に流れる循環水の流量が多くなるように連続的に又は段階的に制御してもよい。
【0045】
なお、還り配管3に流れる循環水の流量を制御するにあたっては2つの方法を採ることができる。1つ目の方法は、バルブ5を制御する方法である。例えば、制御装置100は、第3のポンプ31を予め定めたパワー(例えば、フルパワー)で圧送するように制御してよい。この場合、還り配管3は満管状態となる。これにより、建物において循環水を利用する場合に、いつでも直ぐに利用することができる。
【0046】
このように還り配管3が満管状態である場合に、バルブ5を開くことにより循環水を還り配管3から戻り配管4を介して第3の槽30へ戻す流路が形成される。これにより、還り配管3に流れを生じさせることができるので還り配管3に流れる循環水の流量を増加させることができる。
【0047】
この際、制御装置100は、電動弁の絞りを調整することで循環水の流量を制御してもよいし、電磁弁で開閉頻度と間隔を調整することで循環水の流量を制御してもよい。制御装置100は、例えばこのようにしてバルブ5を制御して還り配管3に流れる循環水の流量を制御することができる。
【0048】
2つ目の方法は、第3のポンプ31を制御する方法である。制御装置100は、還り配管3に設けられた第3のポンプ31を制御して還り配管3に流れる循環水の流量を制御することもできる。
【0049】
制御装置100は、これら2つの方法を併用して循環水の流量を制御してもよい。これにより、制御装置100は、循環水の流量を幅広いレンジで高精度に制御することができる。
【0050】
また、制御装置100は、これら2つの方法を切り替えて循環水の流量を制御してもよい。この場合、例えば、建物において循環水を利用する頻度が高い白昼は1つ目の方法を採用し、建物において循環水を利用する頻度が低い深夜は2つ目の方法を採用してもよい。これにより、制御装置100は、循環水の流量を循環水の利用状況に応じた態様で制御することができる。
【0051】
このように、制御装置100は、予め定めた屋外の配管の温度範囲(例えば、5℃~80℃、好ましくは5℃~60℃、より好ましくは15℃~35℃)に基づいて、還り配管3に流れる循環水の流量を制御する。そして、制御装置100は、屋外の配管の温度が温度範囲外の場合に、還り配管3に流れる循環水の流量を増加させる。これにより、凍結及び菌の繁殖を防止することができるので、還り配管3が屋外に設けられている場合であっても、外気温の変化により配管が損傷するリスクを低減することができる。
【0052】
<第2の実施形態>
第1の実施形態では、還り配管3の温度Tのみに基づいて還り配管3に流れる循環水の流量を制御する場合について説明した。しかしながら、屋外へ送水する循環水の温度Tが高ければ、寒い屋外に設けられた還り配管3を経由したとしても凍結することはない。同様に、屋外へ送水する循環水の温度Tが送水する時点において低ければ、暑い屋外に設けられた還り配管3を経由したとしても菌が繁殖することはない。
【0053】
そこで、第2の実施形態では、還り配管3の温度Tに加えて屋外へ送水する循環水の温度Tに更に基づいて、還り配管3に流れる循環水の流量を制御する。より詳細には、制御装置100は、第1の温度計6が計測した還り配管3の温度Tに加えて、第2の温度計7が計測した屋外へ送水する循環水の温度Tをモニタリングしてよい。
【0054】
次に、制御装置100は、温度T及び温度Tを用いて、還り配管3を流れている循環水の温度を予測してよい。この際、制御装置100は、例えば、循環水の性状、還り配管3の仕様、温度T、及び温度Tを予測モデルに入力したことに応じて当該予測モデルが出力するモデル出力に基づいて、還り配管3を流れている循環水の温度を予測してよい。
【0055】
そして、制御装置100は、還り配管3を流れている循環水の温度が温度範囲外の場合に、還り配管3に流れる循環水の流量を増加させてよい。なお、第2の実施形態における温度範囲は、第1の実施形態における温度範囲と同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0056】
循環水の流量を制御する方法自体は、第1の実施形態と同様であってよいので、ここでは重複する説明を省略することとする。このように、制御装置100は、屋外へ送水する循環水の温度Tに更に基づいて、還り配管3に流れる循環水の流量を制御することもできる。
【0057】
<第3の実施形態>
第1の実施形態では、温度Tが予め定めた閾値Tを下回った場合、及び温度Tが予め定めた閾値Tを上回った場合に、循環水を還り配管3から戻り配管4を介して第3の槽30へ戻す場合について説明した。
【0058】
ここで、温度Tが予め定めた閾値Tを下回った場合には、機械室の室温よりも低い温度に冷やされた循環水が機械室内に戻ってくることとなる。そのため、機械室の室温が低下する。そうすると、機械室の室温を適温に保つべく、制御装置100は、空調設備40の暖房機能を強化する。その結果、空調設備40が消費するエネルギーのコストが上昇する。
【0059】
同様に、温度Tが予め定めた閾値Tを上回った場合には、機械室の室温よりも高い温度に温められた循環水が機械室内に戻ってくることとなる。そのため、機械室の室温が上昇する。そうすると、機械室の室温を適温に保つべく、制御装置100は、空調設備40の冷房機能を強化する。その結果、空調設備40が消費するエネルギーのコストが上昇する。
【0060】
このように、還り配管3が屋外の温度により損傷するリスクを低減しようとすると、空調設備40が消費するエネルギーのコストが上昇する。したがって、両者はトレードオフの関係にあるといえる。そこで、第3の実施形態では、還り配管3が損傷するリスク及び空調設備40が消費するエネルギーの両者に基づいて、還り配管3に流れる循環水の流量を制御する。
【0061】
より詳細には、制御装置100は、少なくとも第1の温度計6が計測した温度T1に基づいて、好ましくは、第2の温度計7が計測した温度Tに更に基づいて、還り配管3が屋外の温度により損傷するリスクを算出する。この際、制御装置100は、予め定めたテーブルを参照することで、温度T及び温度Tに応じたリスクの度合いを算出してよい。
【0062】
これと並行して、制御装置100は、空調設備40の稼働状態をモニタリングする。次に、制御装置100は、稼働状態に基づいて、空調設備40が消費するエネルギーのコストを算出する。
【0063】
そして、制御装置100は、リスクとコストとを変数とした目的関数を解くことにより、還り配管3に流れる循環水の流量を制御する。より詳細には、制御装置100は、目的関数を解くことにより、リスクが予め定めた許容範囲内となる中でコストが最小となる流量を決定してよい。そして、制御装置100は、当該流量に従ってバルブ5を制御することにより、還り配管3に流れる循環水の流量を制御してよい。制御装置100は、例えばこのようにして、少なくとも還り配管3が屋外の温度により損傷するリスクと空調設備40が消費するエネルギーのコストとを変数とした目的関数を最小化するように、還り配管3に流れる循環水の流量を制御することもできる。
【0064】
以上、3つの実施形態を用いて説明したように、本実施形態に係る循環型水処理システム1は、制御装置100を備え、制御装置100は、予め定めた屋外の温度範囲に基づいて、還り配管3に流れる循環水の流量を制御する。これにより、本実施形態に係る循環型水処理システム1によれば、循環水を流す還り配管3が屋外に設けられている場合であっても、外気温の変化により配管が損傷するリスクを低減することができる。
【0065】
ここまで説明した上述の処理は、専用のハードウェア回路によっても実現することもできる。この場合には、1つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアで実行されてもよい。
【0066】
また、上述の説明において、プロセッサとは広義的なプロセッサを指し、汎用的なプロセッサ(例えばCPU: Central Processing Unit、等)や、専用のプロセッサ(例えばGPU: Graphics Processing Unit、ASIC: Application Specific Integrated Circuit、FPGA: Field Programmable Gate Array、プログラマブル論理デバイス、等)を含むものである。
【0067】
また、上述の説明におけるプロセッサの動作は、1つのプロセッサによって成すのみでなく、物理的に離れた位置に存在する複数のプロセッサが協働して成すものであってもよい。また、プロセッサの各動作の順序は上述の順序のみに限定されるものではなく、適宜変更してもよい。
【0068】
また、上述のプログラムは、USB(Universal Serial Bus)メモリ、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)等のコンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体によって提供されてもよいし、インターネット等のネットワークを介してオンラインで提供されてもよい。この場合、コンピュータ読み取り可能な非一時的記録媒体に記録されたプログラムは、通常、メモリ又はストレージ等に転送され記憶される。また、このプログラムは、たとえば、単独のアプリケーションソフトとして提供されてもよいし、装置の一機能としてその各装置のソフトウェアに組み込まれてもよい。
【0069】
また、上述のプログラムは、プログラム製品として提供可能である。プログラム製品とは、プログラムを提供するためのあらゆる態様の製品を含む。例えば、プログラム製品は、インターネット等のネットワークを通じて提供されるプログラム、及びプログラムを保存したCD-ROM、DVD等の非一時的コンピュータ可読記録媒体等を含む。
【0070】
本開示は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0071】
1 液処理システム
2 往き配管
3 還り配管
4 戻り配管
5 バルブ
6 第1の温度計
7 第2の温度計
10 第1の槽
11 第1のポンプ
20 第2の槽
21 第2のポンプ
30 第3の槽
31 第3のポンプ
100 制御装置
101 プロセッサ
102 ROM
103 RAM
104 ストレージ
105 通信インタフェース
106 ユーザインタフェース
110 モニタリング部
120 流量制御部
130 空調制御部
【要約】
【課題】循環水を流す還り配管が屋外に設けられている場合であっても、外気温の変化により配管が損傷するリスクを低減することを目的とする。
【解決手段】循環型水処理システムは、予め定めた屋外の配管の温度範囲に基づいて、還り配管に流れる循環水の流量を制御する制御装置を備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3