(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-19
(45)【発行日】2025-08-27
(54)【発明の名称】レーザ直接描画による耐高温性ナノ銅、その製造方法、および使用
(51)【国際特許分類】
H01B 13/00 20060101AFI20250820BHJP
C23C 24/08 20060101ALI20250820BHJP
H05K 3/10 20060101ALI20250820BHJP
【FI】
H01B13/00 503D
C23C24/08 B
H05K3/10 D
(21)【出願番号】P 2025031712
(22)【出願日】2025-02-28
【審査請求日】2025-02-28
(31)【優先権主張番号】202410615775.3
(32)【優先日】2024-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】徐 ▲凱▼臣
(72)【発明者】
【氏名】蔡 子墨
(72)【発明者】
【氏名】楊 華勇
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-531694(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0032918(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第106928775(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107702829(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109270798(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111906312(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113923814(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第117757306(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/00
C23C 24/08
H05K 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ直接描画による耐高温性ナノ銅の製造方法であって、
アルコール系溶剤、有機分散剤、有機助剤、適量のギ酸塩を均一に加熱・撹拌し、前駆液を得るステップ(1)と、
適量のナノ酸化銅を前駆液に加え、十分に超音波分散させ、ナノ酸化銅43.0~50.4wt%、アルコール系溶剤37.1~50.4wt%、有機分散剤3.4~5.3wt%、有機助剤0.0~9.5wt%、ギ酸塩1.3~2.0wt%からなるナノ酸化銅インクを得るステップであって、前記ナノ酸化銅は、酸化銅ナノワイヤである、ステップ(2)と、
ナノ酸化銅インクを前処理された基板上に塗布し、加熱・乾燥し、ナノ酸化銅膜を得るステップ(3)と、
ナノ酸化銅膜についてレーザワンステップ直接描画誘導不動態化/光熱還元焼結を施し、耐高温性ナノ銅を得るステップであって、前記レーザは、532nm波長の連続緑色光であり、電力が100~400mW、速度が20~200mm/s、走査周期が20~40μmであり、前記不動態化の誘導は、ナノ銅の表面にあるギ酸塩の不動態化反応の誘導により、ナノ銅の表面の銅イオンとギ酸塩でギ酸銅二量体錯体を形成し、抗酸化配位不動態化層を形成することである、ステップ(4)と、を含む、ことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
ステップ(1)の前記アルコール系溶剤は、一価アルコール、多価アルコールから選択される少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ直接描画による耐高温性ナノ銅の製造方法。
【請求項3】
ステップ(1)の前記有機分散剤は、ポリアクリルアミド系有機高重合体、ポリエチレンオキシド系有機高重合体、タンニン、リグニンから選択される少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ直接描画による耐高温性ナノ銅の製造方法。
【請求項4】
ステップ(1)の前記有機助剤は、化学式がC
nH
2n+1NO(1≦n≦5)を満たすアルキルアミドから選択される少なくとも1種である有機アミドである、ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ直接描画による耐高温性ナノ銅の製造方法。
【請求項5】
ステップ(1)の前記ギ酸塩は、ギ酸リチウム、ギ酸ベリリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸マグネシウム、ギ酸カリウム、ギ酸カルシウム、ギ酸鉄、ギ酸マンガン、ギ酸コバルト、ギ酸ニッケル、ギ酸銅、ギ酸亜鉛、ギ酸バリウム、およびギ酸アンモニウムから選択される少なくとも1種である、ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ直接描画による耐高温性ナノ銅の製造方法。
【請求項6】
ステップ(3)の前記前処理は、酸素プラズマ表面処理であり、処理時間が60s~150sである、ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ直接描画による耐高温性ナノ銅の製造方法。
【請求項7】
ステップ(1)の前記加熱・撹拌は、温度50~70℃、回転数600~1500rpm、時間2~20hであり、ステップ(2)の前記超音波分散は、リアルタイム温度50~60℃、超音波パルス幅0.1s、超音波時間0.1~2hであり、ステップ(3)の前記加熱・乾燥は、温度50~80℃、時間2~12hである、ことを特徴とする請求項1に記載のレーザ直接描画による耐高温性ナノ銅の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ銅の製造分野に属し、特に、レーザ直接描画による耐高温性ナノ銅、その製造方法、および使用に関する。
【背景技術】
【0002】
銅は、人類社会で広く使用されている金属であり、その独特の特性と利点により、建設、電気、通信、エネルギー、医療などの分野で重要な役割を果たしている。中でも、ナノ銅は、その良好な電気的特性/熱的特性と経済的利点により、導電性電極、トランジスタ、センサ、および電気化学電池などの機能エレクトロニクス分野で有望な材料となっている。しかし、銅は、高温条件下では非常に酸化されやすく、その結果、金属特性が劣化して、導電性が低下するため、その用途は大きく制限されてしまう。ナノ銅は、バルク銅に比べて比表面積が大きく、酸素ガスとより反応しやすい。したがって、ナノ銅の酸化不良の問題は、バルク銅よりもはるかに深刻である。
【0003】
ナノ銅の耐高温酸化性および熱安定性を向上させるために、現在、さまざまな抗酸化処理方法が開発されてきた。
【0004】
(1)表面コーティング:ナノ銅の表面に不活性材料(例えば、グラフェン、酸化グラフェン、金/銀/プラチナなどの貴金属)の層をコーティングすることで、酸素ガスとナノ銅の直接接触を効果的に遮断できる。
【0005】
(2)表面修飾:ナノ銅の表面に一部の有機分子/ポリマーなどを吸着または化学結合することにより、これらがナノ銅と反応して安定した化合物を形成して、高温での酸化速度を遅くする。
【0006】
(3)合金化:ナノ銅を他の金属(例えば、ニッケル、スズ、アルミニウム、マンガン)と複合化して合金を形成することで、ナノ銅の融点を上昇させ、それによって、高温での抗酸化性を向上させる。
【0007】
(4)雰囲気制御:ナノ銅の焼結または高温処理中、処理雰囲気(例えば、不活性/還元ガス保護、真空条件)を制御することで、酸化を効果的に防止できる。
【0008】
上記の処理方法のうち、方法(1)と(2)は、耐高温酸化効果が比較的顕著であるが、コストが比較的高く、プロセスのフローが比較的複雑であり、ナノ銅の電気的特性および熱的特性にある程度影響を与える。方法(3)は、抗酸化性を向上させることができるが、ナノ銅の他の物理的および化学的特性も変化させ、結果として元の用途要件を満たさなくなる。方法(4)は、主に特定の処理環境に適用可能であり、実用化においては長期間の維持が困難であり、また高価な設備が必要となり、操作の複雑さとコストが増大する。
【0009】
従来技術では、方法(1)について、例えば、特許番号CN202111501706.2の「抗酸化性銅系表面増強ラマン散乱基板の製造方法」においては、メルトスピニングと脱合金化の方法により二重連続構造のナノ多孔質銅ストリップを製造し、次に、ナノ多孔質銅を酸洗して表面の酸化層を除去し、最後に、酸化グラフェン溶液をナノ多孔質銅の表面にスピンコートし、すぐに管状炉に移して水素ガスとアルゴンガスの雰囲気で熱還元し、極薄の還元酸化グラフェン層で被覆されたナノ多孔質銅を得ることによって、その酸化をさらに遅くし、ラマン検出における還元酸化グラフェン/ナノ多孔質銅複合基板の安定性を確保する。この発明は、安定性が良好で再現性も高いが、プロセスのステップが複雑であり、また、不活性ガス中で実施する必要があり、反応条件が比較的厳しい。
【0010】
従来技術では、方法(1)について、例えば、特許番号CN201710343566.8の「新規抗酸化性ナノ銅用はんだペースト、その製造方法、および使用」においては、マグネトロンスパッタリングプロセスを使用して、ナノ銅粉末の表面を金属膜(金または銀)で均一に被覆し、その後、従来のナノ銅用はんだペーストの組成を使用し、それに適切な量の成形助剤を加えて、最終的に、抗酸化性および耐クラック性のある新規抗酸化性ナノ銅用はんだペーストを製造する。この発明は、ナノ銅を不活性金属の金/銀層で被覆することで酸化を防ぎ、高温でも問題なく長期間使用することを可能にするが、材料コストが大幅に増加し、大規模な用途が制限されてしまう。
【0011】
従来技術では、方法(2)について、例えば、特許番号CN201710752263.1の「抗酸化性銅ナノワイヤの製造方法」においては、まず、銅ナノワイヤを分散剤に加え、極性有機溶剤および/または水を加えて混合し、銅ナノワイヤ分散液を得る。次に、銅ナノワイヤ分散液に抗酸化剤を加えて混合し、混合液を得る。さらに、混合液を加圧加熱密閉システムに入れて反応させる。最後に、混合液を冷却し、液固分離、洗浄した後、抗酸化表面処理が施された銅ナノワイヤ、すなわち抗酸化性銅ナノワイヤを得る。この発明は、操作が簡単で、コストが低いが、操作プロセスが比較的複雑で、反応時間が比較的長く、かつ、加圧および加熱を伴う密閉反応条件が必要であり、室温での効率的な処理には適していない。
【0012】
従来技術では、方法(2)について、例えば、特許番号CN202110912124.7の「抗酸化性銅膜/銅線、その製造方法、および使用」においては、抗酸化性銅粉末、アルコール系溶剤、アルコールアミン系溶剤、樹脂、助剤を粉砕混合し、脱気して抗酸化性銅ペーストを得る。抗酸化性銅ペーストを基板上に塗布し、不活性雰囲気下で乾燥し予備硬化させて、銅膜前駆体1/銅線前駆体1を得る。銅膜前駆体1/銅線前駆体1を不活性雰囲気下で硬化させて、銅膜前駆体2/銅線前駆体2を得る。チオール基またはジスルフィド結合を含む化合物中に銅膜前駆体2/銅線前駆体2を投入して処理し、抗酸化性銅膜/銅線を得る。この発明により得られる銅膜/銅線は、優れた抗酸化性を有するが、高い導電性を得るためには不活性雰囲気が必要であり、製造条件が比較的厳しい。
【0013】
従来技術では、方法(3)について、例えば、特許番号CN201410532942.4の「銅ニッケル合金ナノ粒子の製造方法」においては、硝酸銅三水和物と硝酸ニッケル六水和物の混合液を調製し、撹拌しながら錯化剤と分散剤を加える(硝酸銅と錯化剤のモル比は1:0.5~1:4、硝酸銅と分散剤のモル比は1:1~1:2)。上記の溶液を160~180℃のオーブンに入れて乾燥し、水分のない多孔質乾燥ゲルを形成する。アルゴン雰囲気中、500~700℃の条件で乾燥ゲルを2~5hか焼して、銅ニッケル合金ナノ粒子を得る。この発明は、原料の入手が容易で、収率が比較的高いという利点があるが、製造プロセスでは高温環境と不活性雰囲気が必要となるため、大規模な適用にはある程度制限がある。
【0014】
従来技術では、方法(3)について、例えば、特許番号CN201110055004.6の「ナノ銅スズ合金導電性インク、その製造方法、および使用方法」においては、導電性インク中の導電性フィラーとしてナノ銅銀合金の代わりにナノ銅スズ合金が使用されることによって、導電性インクの焼結温度が低下するだけでなく、ナノ銅銀合金導電性インクと比較して、焼結中の抗酸化能力、および焼結により形成される導電回路の機械的特性およびはんだ付け性が向上し、また、銀イオンの移動の問題が回避される。さらに、ナノ銅スズ合金には希土類金属元素がドープされているため、その粒界の数が増え、電子の散乱率が増加し、ナノ銅合金に比べて電気伝導性が向上する。一方、導電性インクの原料コストも削減される。しかし、スズ元素を添加するとナノ銅スズ合金の融点が低下し、長期の高温環境での抗酸化性には不利である。
【0015】
従来技術では、方法(4)について、例えば、特許番号CN201910399914.2の「抗酸化性マイクロナノ銅材料の製造方法」においては、マイクロナノ銅製造装置を使用してマイクロナノ銅粉末を製造する。原位置被覆装置の真空チャンバー内に有機被覆剤を入れ、真空チャンバー内の有機被覆剤を加熱により昇華または気化させる。製造システム内に不活性ガスを導入し、不活性ガスとともにマイクロナノ銅粉末を原位置被覆装置の真空チャンバー内に導入し、昇華または気化した有機被覆剤をマイクロナノ銅粒子の表面に接触して被覆する。この発明における真空加熱と不活性雰囲気は、マイクロナノ銅イオンの表面に良好な有機被覆層を形成し、マイクロナノ銅粒子の抗酸化性と分散性を大幅に向上させ、表面活性を低下させるが、プロセス全体の特定の処理環境はコストを大幅に増加させ、実用化の要件を満たさない。
【0016】
従来技術では、方法(4)について、例えば、特許番号CN202111250495.Xの「抗酸化性超疎水性銅膜、およびその製造方法」においては、有機金属前駆体を分解して生成した銅ナノクラスターを触媒として、液体有機前駆体をグラファイトカーボンに分解することを触媒する。グラファイトカーボンが銅ナノクラスターの表面に濃縮され、銅-カーボンコアシェル構造の粒子が形成される。無数の銅-カーボン結晶粒が基板の表面に蓄積され、抗酸化性超疎水性銅膜が形成される。この発明は、主に化学蒸着を利用して基板の表面に抗酸化性銅カーボン膜を形成し、堆積によって形成された比較的粗いナノ構造表面を利用して超疎水性の特性を得る。全体的な制御は便利で、再現性は良好であるが、厳しい反応条件(水素ガスおよびアルゴンガスの不活性雰囲気の制御、400~600℃の反応温度、1000~9000Paの反応圧力が必要)は避けられず、必然的に費用対効果の問題につながる。
【0017】
したがって、製造が簡単で、処理が効率的で、適合性が高く、費用対効果に優れた耐高温性ナノ銅の抗酸化表面処理方法を開発することは、導電性電極、トランジスタ、センサ、および電気化学電池などの機能エレクトロニクス分野におけるナノ銅の応用を解決するための現在の技術的課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、従来技術の欠点に対して、レーザ直接描画誘導を用いて製造される、レーザ直接描画による耐高温性ナノ銅、その製造方法、および使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明では、レーザ直接描画による耐高温性ナノ銅の製造方法は、主に、
アルコール系溶剤、有機分散剤、有機助剤、適量のギ酸塩を均一に加熱して撹拌し、前駆液を得るステップ(1)と、
適量のナノ酸化銅を前駆液に加え、十分に超音波分散させ、ナノ酸化銅インクを得るステップ(2)と、
ナノ酸化銅インクを前処理された基板上に塗布し、加熱して乾燥し、ナノ酸化銅膜を得るステップ(3)と、
ナノ酸化銅膜についてレーザ直接描画誘導不動態化/光熱還元焼結を施し、耐高温性ナノ銅を得るステップ(4)と、を含む。
【0020】
ステップ(1)の前記アルコール系溶剤は、一価アルコール、二価アルコール、多価アルコールから選択される少なくとも1種であり、前記有機分散剤は、ポリアクリルアミド系有機高重合体、ポリエチレンオキシド系有機高重合体、タンニン、リグニンから選択される少なくとも1種であるが、これらに限定されず、前記有機助剤は、化学式がCnH2n+1NO(1≦n≦5)を満たすアルキルアミドから選択される少なくとも1種である有機アミドである。前記ギ酸塩は、ギ酸リチウム、ギ酸ベリリウム、ギ酸ナトリウム、ギ酸マグネシウム、ギ酸カリウム、ギ酸カルシウム、ギ酸鉄、ギ酸マンガン、ギ酸コバルト、ギ酸ニッケル、ギ酸銅、ギ酸亜鉛、ギ酸バリウム、およびギ酸アンモニウムから選択される少なくとも1種である。前記加熱撹拌は、温度50~70℃、回転数600~1500rpm、時間2~20hである。
【0021】
ステップ(2)の前記ナノ酸化銅は、酸化銅ナノ粒子、酸化銅ナノワイヤ、酸化銅ナノシート、酸化銅ナノロッド、酸化銅ナノシャトルから選択される少なくとも1種である。前記超音波分散は、リアルタイム温度50~60℃、超音波パルス幅0.1s、超音波時間0.1~2hである。さらに、前記超音波分散は、ナノ酸化銅を少量ずつ複数回添加することによって達成することができ、前駆体溶液にすべてのナノ酸化銅を加えて直接超音波処理を行うと、酸化銅ナノワイヤの深刻な凝集と分散不良を引き起こし、その後のレーザ誘導直接描画を良好に達成できないことを防ぐことができる。前記ナノ酸化銅インクは、ナノ酸化銅43.0~50.4wt%、アルコール系溶剤37.1~50.4wt%、有機分散剤3.4~5.3wt%、有機助剤0.0~9.5wt%、ギ酸塩1.3~2.0wt%を含み、前記ナノ酸化銅インクは、長時間保存することができ、酸化による影響を受けず、印刷法、塗装法、プリント法などのさまざまな製造プロセスに適している。
【0022】
ステップ(3)の前記塗布方法は、スピンコート、スプレーコート、ブレードコート、刷毛コート、液滴コート、スクリーン印刷から選択される少なくとも1種であるが、これらに限定されない。前記前処理は、酸素プラズマ表面処理であり、処理時間が60s~150sである。前記基板は、可撓性基板と剛性基板を含み、前記可撓性基板は、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)から選択される少なくとも1種であるが、これらに限定されず、前記剛性基板は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、液晶高分子(LCP)、ガラス、シリコンウエハー、セラミックから選択される少なくとも1種であるが、これらに限定されず、前記加熱乾燥は、温度50~80℃、時間2~12hである。
【0023】
ステップ(4)の前記レーザは、532nm波長の連続緑色光であり、前記レーザ直接描画誘導不動態化/光熱還元焼結では、電力が100~400mW、速度が20~200mm/s、走査周期が20~40μmである。
【0024】
前記耐高温性ナノ銅の表面では、レーザ直接描画によりギ酸塩の不動態化を誘導すると、良好な抗酸化性および熱安定性を有しながら、優れた導電性を有する。
【0025】
本発明はまた、特殊エンジニアリングプラスチック基板、耐高温性ナノ銅製相互接続回路、レーザ誘導グラフェン温度センサ、分圧器、アナログ-デジタルコンバータ(ADC)、マイクロコントローラ(MCU)、および低ドロップアウトリニアレギュレータ(LDO)を含む、完全レーザ原位置直接描画による統合センサシステムを提供する。前記耐高温性ナノ銅製相互接続回路を介して残りの各部分を接続して統合センサ機能を実現し、耐高温性ナノ銅製相互接続回路およびレーザ誘導グラフェン温度センサは、いずれも完全レーザ直接描画技術(レーザ直接描画誘導不動態化/光熱還元焼結、およびレーザ誘導炭化)により前記特殊エンジニアリングプラスチック基板上にそれぞれ原位置で形成され、前記耐高温性ナノ銅は、上記のいずれかの耐高温性ナノ銅の製造方法によって製造される。前記特殊エンジニアリングプラスチック基板は、通常、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、液晶高分子(LCP)のうちの1種または複数種であり、特に、航空宇宙、自動車、エレクトロニクス機器などの分野での幅広い応用に有利であることから、好ましくは、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)である。
【発明の効果】
【0026】
レーザ加工に基づくレーザ直接描画誘導不動態化とは、高エネルギーレーザの照射によってナノ銅の表面でギ酸塩の不動態化反応を誘導し、ナノ銅の表面の銅イオンとギ酸塩でギ酸銅二量体錯体を形成し、安定した有効な抗酸化配位不動態化層を形成し、それによってナノ銅の表面特性を改善し、その抗酸化性および熱安定性を大幅に向上させ、耐高温性ナノ銅を得ることを指す。本発明において、レーザ直接描画誘導不動態化は、以下の利点を有する。
【0027】
(1)効率的な加工:レーザ直接描画誘導不動態化のプロセスは、非常に迅速で、高強度エネルギーを短時間で集中させ、反応温度場を形成し、ナノ銅の表面のギ酸塩の不動態化を完了することができる。従来の化学的不動態化や物理的コーティングの方法と比較して、レーザ直接描画誘導不動態化は、生産周期を大幅に短縮し、処理効率を向上させる。
【0028】
(2)パターン化制御:レーザ直接描画誘導不動態化は、処理領域を正確に制御できる。その典型的なパターン化機能により、ナノ銅の表面の局所的な不動態化が可能になり、ナノ銅の特定領域の耐高温酸化性を的確に改善できる。
【0029】
(3)追加処理は不要:レーザ直接描画誘導不動態化は、前処理、後処理、および外添化学試薬に依存せず、大気環境で直接実行できる。真空や不活性雰囲気などの厳しい反応条件は必要ではないため、処理プロセスはシンプルで、製造コストを大幅に削減させ、環境に優しい抗酸化表面処理方法である。
【0030】
(4)多機能統合:レーザ直接描画誘導不動態化では、ワンステップ直接描画により、酸化銅ナノ粒子が還元・焼結されてナノ銅となりながら、ナノ銅の抗酸化性が向上し、高温環境でのその熱安定性が高まり、優れた導電性もナノ銅に付与する。
【0031】
(5)強力な互換性:レーザ直接描画誘導不動態化は、ナノ銅材料の形状や複雑さに制限されず、マルチスケールのナノ銅に適している。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】調製されたナノ酸化銅インクの光学写真である。
【
図3】製造された蛇行パターン付き耐高温性ナノ銅電極の光学写真である。
【
図4】さまざまなギ酸ナトリウムの濃度を有するナノ銅を乾燥空気雰囲気中、170℃でさまざまな時間だけ加熱したときの相対抵抗の変化である。
【
図5】さまざまな酸化銅ナノワイヤの濃度でのレーザ表面処理後のナノ銅の抵抗の変化である。
【
図6】レーザ電力250mWでのナノ銅の光学画像である。
【
図7】レーザ電力100mWでのナノ銅の光学画像である。
【
図8】レーザ電力400mWでのナノ銅の光学画像である。
【
図9】さまざまなレーザ電力で表面処理したナノ銅の抵抗の変化である。
【
図10】さまざまなレーザ電力で表面処理したナノ銅の80℃での時間に伴う相対抵抗の変化である。
【
図11】レーザ線走査周期が15μmである場合のナノ銅の光学画像である。
【
図12】レーザ線走査周期が45μmである場合のナノ銅の光学画像である。
【
図13】さまざまなレーザ線走査周期で表面処理したナノ銅の抵抗変化である。
【
図14】さまざまなレーザ線走査周期で処理したナノ銅の170℃での時間に伴う相対抵抗の変化である。
【
図15】ナノ銅(LIP-Cu)およびギ酸ナトリウムフリーナノ銅(Cu)の170℃での時間に伴う相対抵抗の変化である。
【
図16】ナノ銅(LIP-Cu)およびギ酸ナトリウムフリーナノ銅(Cu)の120℃での時間に伴う相対抵抗の変化である。
【
図17】ナノ銅(LIP-Cu)およびギ酸ナトリウムフリーナノ銅(Cu)の、30℃から170℃に徐々に昇温するまでの相対抵抗の変化である。
【
図18】完全レーザ原位置直接描画による統合センサシステムの光学写真である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下は実施例により図面を参照して本発明を具体的に説明する。以下の実施例は本発明の技術的解決手段をより明確に説明するためのものであり、したがって、例としてのみ挙げたものであり、本発明の保護範囲を制限することができない。
本発明の第1態様は、主に、
アルコール系溶剤、有機分散剤、有機助剤、適量のギ酸塩を均一に加熱して撹拌し、前駆液を得るステップ(1)と、
適量のナノ酸化銅を前駆液に加え、十分に超音波分散させ、ナノ酸化銅インクを得るステップ(2)と、
ナノ酸化銅インクを前処理された基板上に塗布し、加熱して乾燥し、ナノ酸化銅膜を得るステップ(3)と、
ナノ酸化銅膜についてレーザ直接描画誘導不動態化/光熱還元焼結を施し、耐熱性ナノ銅を得るステップ(4)と、を含むレーザ直接描画による耐熱性ナノ銅の製造方法を提案する。
【0034】
実施例1:
S1:ポリビニルピロリドン0.5gおよびギ酸ナトリウム0.15gを秤量して、エチレングリコール3.0mLに混合し、60℃、1200rpmの回転数で均一に加熱して6h撹拌し、前駆液を得た。
S2:酸化銅ナノワイヤ(40nm)1.5gを秤量して、前駆液に入れ、超音波リアルタイム温度55℃、超音波パルス幅0.1s、超音波時間2minで、超音波分散を十分に行い、ナノ酸化銅溶液1を得た。
S3:酸化銅ナノワイヤ(40nm)1.5gを秤量して、ナノ酸化銅溶液1に入れ、超音波リアルタイム温度55℃、超音波パルス幅0.1s、超音波時間2minで、超音波分散を十分に行い、ナノ酸化銅溶液2を得た。
S4:酸化銅ナノワイヤ(40nm)2.0gを秤量して、ナノ酸化銅溶液2に入れ、超音波リアルタイム温度55℃、超音波パルス幅0.1s、超音波時間3minで、超音波分散を十分に行い、ナノ酸化銅インクを得た。
S5:ナノ酸化銅インクを機械的に1min均一に振とうし、静置して使用に備えた。
S6:厚さ2mm、サイズ20×50mmのポリフェニレンサルファイドの特殊エンジニアリングプラスチック基板を1枚用意し、イソプロパノールを用いて5min超音波洗浄して表面の異物を除去し、乾燥して、使用に備えた。
S7:ポリフェニレンサルファイドの特殊エンジニアリングプラスチック基板に対して酸素プラズマ表面処理を120s施した。
S8:ポリフェニレンサルファイドの特殊エンジニアリングプラスチック基板をスピンコータのスピンコートチャックに真空吸着し、基板の中心位置にナノ酸化銅インク1.5mLを滴下し、1000rpmの回転数で20sスピンコートし、500rpmの回転数で10sスピンコートした。
S9:ナノ酸化銅インクをスピンコートしたポリフェニレンサルファイドの特殊エンジニアリングプラスチック基板を恒温送風乾燥オーブンまたは真空乾燥オーブンに入れ、60℃で2h加熱して乾燥し、ナノ酸化銅膜を得た。
S10:ナノ酸化銅膜が被覆されたポリフェニレンサルファイドの特殊エンジニアリングプラスチック基板を532nm波長の連続緑色光のレーザによる加工プラットフォーム上に置き、レーザの焦点を合わせるために加工プラットフォームの高さを調整した。
S11:サイズ18.0×15.3mmの蛇行電極パターンを描き、250mWの電力、40mm/sの速度、30μmの線走査周期に従って蛇形電極パターンの充填経路に沿ってパターン化直接描画(レーザ直接描画誘導不動態化/光熱還元焼結)をレーザで行い、走査経路での黒色ナノ酸化銅を赤色ナノ銅に転化し、耐高温性ナノ銅電極を得た。
図1は調製された前駆液の光学写真である。
図2は調製されたナノ酸化銅インクの光学写真である。
図3は製造された蛇行パターン付き耐高温性ナノ銅電極の光学写真である。
【0035】
実施例2:
S1:ポリビニルピロリドン0.5g、およびギ酸ナトリウム0.05g/0.10g/0.15g/0.20g/0.25gを順次秤量して、エチレングリコール3.0mLとN,N-ジメチルホルムアミド溶液1.0mLに混合し、60℃、1200rpmの回転数で均一に加熱しながら12h撹拌し、ギ酸ナトリウムの濃度の異なる5種類の前駆液を得た。
S2:酸化銅ナノワイヤ(40nm)2.0gをそれぞれ秤量して、5種類の前駆液に入れ、超音波リアルタイム温度55℃、超音波パルス幅0.1s、超音波時間3minで、超音波分散を十分に行い、5種類のナノ酸化銅溶液1を得た。
S3:酸化銅ナノワイヤ(40nm)2.0gをそれぞれ秤量して、5種類のナノ酸化銅溶液1に入れ、超音波リアルタイム温度55℃、超音波パルス幅0.1s、超音波時間3minで、超音波分散を十分に行い、5種類のナノ酸化銅溶液2を得た。
S4:酸化銅ナノワイヤ(40nm)1.0gを秤量して、5種類のナノ酸化銅溶液2に入れ、超音波リアルタイム温度55℃、超音波パルス幅0.1s、超音波時間2minで、超音波分散を十分に行い、5種類のナノ酸化銅インクを得た。
S5:ナノ酸化銅インクを機械的に2min均一に振とうし、静置して使用に備えた。
S6:厚さ2mm、サイズ20×50mmのポリフェニレンサルファイドの特殊エンジニアリングプラスチック基板を5枚用意し、イソプロパノールを用いて5min超音波洗浄して表面の異物を除去し、乾燥して、使用に備えた。
S7:ポリフェニレンサルファイドの特殊エンジニアリングプラスチック基板に対して酸素プラズマ表面処理を120s施した。
S8:ポリフェニレンサルファイドの特殊エンジニアリングプラスチック基板をスピンコータのスピンコートチャックに順次真空吸着し、基板の中心位置にギ酸ナトリウムの濃度の異なるナノ酸化銅インク1.5mLを滴下し、1000rpmの回転数で20sスピンコートし、500rpmの回転数で10sスピンコートした。
S9:ナノ酸化銅インクをスピンコートしたポリフェニレンサルファイドの特殊エンジニアリングプラスチック基板を恒温送風乾燥オーブンまたは真空乾燥オーブンに入れ、60℃で5h加熱して乾燥し、ナノ酸化銅膜を得た。
S10:ナノ酸化銅膜が被覆されたポリフェニレンサルファイドの特殊エンジニアリングプラスチック基板を532nm波長の連続緑色光のレーザによる加工プラットフォーム上に置き、レーザの焦点を合わせるために加工プラットフォームの高さを調整した。
S11:サイズ36×6mmの矩形電極パターンを描き、250mWの電力、40mm/sの速度、35μmの線走査周期に従って矩形電極パターンの充填経路に沿ってパターン化直接描画(レーザ直接描画誘導不動態化/光熱還元焼結)をレーザで順に行い、走査経路での黒色ナノ酸化銅を赤色ナノ銅に転化し、ナノ銅電極を得た。
S12:各ナノ銅電極の両端に銀ペーストを薄く手動で塗布して電極を引き出し、真空乾燥オーブンに入れ、温度60℃で4h加熱して乾燥した。
S13:ナノ銅電極の抵抗値に応じて分圧回路基板を設計し、ワニ口クリップ線を介して各ナノ銅電極を順番に接続し、デュポンラインを介してデータ収集装置に接続した。
S14:ナノ銅電極を恒温送風乾燥オーブンに入れ、温度を170℃に設定して、データ収集装置を通じて分圧の変化をリアルタイムで記録した。
S15:分圧式によってデータ結果をナノ銅電極の相対抵抗の変化に換算した。
図4は、ギ酸ナトリウムの濃度の異なるナノ銅の170℃での時間に伴う相対抵抗の変化である。同図から分かるように、ギ酸ナトリウムの含有量が0.15gである場合、レーザ直接描画誘導不動態化を受けた後の耐高温性は最も良好であった。ギ酸ナトリウムの含有量が減少すると、ナノ銅の表面と配位して形成した錯体が酸素ガスの侵入への抵抗に不充分になり、耐高温酸化性が悪くなった。ギ酸ナトリウムの含有量が増加すると、ナノ銅の界面間の追加の反応が起こり、不動態化の効果および表面の特性に悪影響を与え、長期間ではナノ銅の耐高温酸化性がなくなった。
【0036】
実施例3:
S1:ポリビニルピロリドン0.5gおよびギ酸ナトリウム0.15gを秤量して、エチレングリコール3.0mLおよびイソプロパノール3.0mLに混合し、60℃、1200rpmの回転数で均一に加熱して6h撹拌し、前駆液を得た。
S2:酸化銅ナノワイヤ(40nm)2.0g/3.0g/4.0g/5.0g/6.0g/7.0gを順次秤量して、少量ずつ複数回に分けて前駆液に入れ、超音波リアルタイム温度55℃、超音波パルス幅0.1s、単回超音波時間2minで、超音波分散を十分に行い、酸化銅ナノワイヤの濃度の異なるナノ酸化銅インクを得た。
S3:ナノ酸化銅インクを機械的に1~3min均一に振とうし、静置して使用に備えた。
S4:厚さ2mm、サイズ20×50mmのポリフェニレンサルファイドの特殊エンジニアリングプラスチック基板を6枚用意し、イソプロパノールを用いて5min超音波洗浄して表面の異物を除去し、乾燥して、使用に備えた。
S5:実施例2のS7と同様であった。
S6:ポリフェニレンサルファイドの特殊エンジニアリングプラスチック基板をスピンコータのスピンコートチャックに順次真空吸着し、基板の中心位置に酸化銅ナノワイヤの濃度の異なるナノ酸化銅インク1.5mLを滴下し、1000rpmの回転数で20sスピンコートし、500rpmの回転数で10sスピンコートした。
S7:ナノ酸化銅インクをスピンコートしたポリフェニレンサルファイドの特殊エンジニアリングプラスチックを恒温送風乾燥オーブンまたは真空乾燥オーブンに入れ、60℃で6h加熱して乾燥し、ナノ酸化銅膜を得た。
S8~S9:実施例2のS10~S11と同様であった。
S10:各ナノ銅電極の両端に銀ペーストを薄く手動で塗布して電極を引き出し、真空乾燥オーブンに入れ、60℃で4.5h加熱して乾燥した。
S11:さまざまな酸化銅ナノワイヤの濃度でレーザにより表面処理したナノ銅の抵抗を卓上マルチメータで測定した。
図5は、さまざまな酸化銅ナノワイヤの濃度でのレーザ表面処理後のナノ銅の抵抗の変化である。酸化銅ナノワイヤの含有量が徐々に増加するにつれて、レーザ光熱還元焼結を受けたナノ銅の含有量が増加し、抵抗値が減少し、導電性が飽和になる傾向を示す(最小値は0.66Ω/sq)ことが分かった。
【0037】
実施例4:
S1:ポリビニルピロリドン0.5gおよびギ酸ナトリウム0.15gを秤量して、エチレングリコール3.0mLおよびN,N-ジメチルホルムアミド溶液1.0mLに混合し、60℃、1200rpmの回転数で均一に加熱しながら12h撹拌し、前駆液を得た。
S2~S5:実施例2と同様であった。
S6:厚さ2mm、サイズ20×50mmのポリフェニレンサルファイドの特殊エンジニアリングプラスチック基板を7枚用意し、イソプロパノールを用いて5min超音波洗浄して表面の異物を除去し、乾燥して、使用に備えた。
S7~S8:実施例1と同様であった。
S9:実施例3のS7と同様であった。
S10:実施例1と同様であった。
S11:サイズ36×6mmの矩形電極パターンを描き、100mW/150mW/200mW/250mW/300mW/350mW/400mWの順の電力で、40mm/sの速度および35μmの線走査周期を保持して、矩形電極パターンの充填経路に沿ってパターン化直接描画(レーザ直接描画誘導不動態化/光熱還元焼結)をレーザで行い、走査経路での黒色ナノ酸化銅を赤色ナノ銅に転化し、ナノ銅電極を得た。
S12:各ナノ銅電極の両端に銀ペーストを薄く手動で塗布して電極を引き出し、真空乾燥オーブンに入れ、60℃で6h加熱して乾燥した。
S13:さまざまなレーザ電力で表面処理したナノ銅の抵抗を卓上マルチメータで測定した。
S14:実施例2のS13と同様であった。
S15:ナノ銅電極を恒温送風乾燥オーブンに入れ、温度を80℃に設定して、データ収集装置を通じて分圧の変化をリアルタイムで記録した。
S16:実施例2のS15と同様であった。
図6はレーザ電力250mWでのナノ銅の光学画像である。
図7はレーザ電力100mWでのナノ銅の光学画像である。
図8はレーザ電力400mWでのナノ銅の光学画像である。レーザ電力が250mWである場合、還元焼結により得られたナノ銅の表面は、比較的緻密で滑らかになり、色も明るくなっていることが分かった。レーザ電力が比較的低い場合(100mW)、ナノ銅の還元閾値に達せず、ナノ銅の表面は暗赤色になり、銅酸化物がいくらか含まれており、レーザ電力が高い場合(400mW)、過剰なエネルギー注入によりナノ銅の表面領域に応力が集中し、亀裂が発生する。
図9はさまざまなレーザ電力で表面処理したナノ銅の抵抗の変化である。レーザ電力が徐々に増加するにつれて、集光スポットの単位面積あたりのエネルギーが増加し、光熱効果がより顕著になり、還元焼結反応がより完全になり、レーザ電力が250~400mWの間である場合、表面処理されたナノ銅電極の導電性は飽和する傾向がある(最小値は0.36Ω/sq)ことが分かった。
図10はさまざまなレーザ電力で表面処理したナノ銅の80℃での時間に伴う相対抵抗の変化である。レーザ電力が250mWである場合、レーザ直接描画により誘導されるギ酸塩配位不動態化では、反応温度場および条件が最も合理的であることがわかった。レーザ電力が増加または減少すると、過度の焼結(ナノ銅の再酸化)と不十分な還元焼結(ナノ銅の表面に銅酸化物が比較的多く含まれる)により、ナノ銅の耐高温酸化性が低下し、同じ期間に相対抵抗がより大きく変化してしまう。
【0038】
実施例5:
S1~S10:実施例4と同様であった。
S11:サイズ36×6mmの矩形電極パターンを描き、250mWの電力および40mm/sの速度を維持して、15μm/20μm/25μm/30μm/35μm/40μm/45μmの順の線走査周期に従って矩形電極パターンの充填経路に沿ってパターン化直接描画(レーザ直接描画誘導不動態化/光熱還元焼結)をレーザで行い、走査経路での黒色ナノ酸化銅を赤色ナノ銅に転化し、ナノ銅電極を得た。
S12:実施例4と同様であった。
S13:さまざまなレーザ線走査周期で表面処理したナノ銅の抵抗を卓上マルチメータで測定した。
S14:実施例4と同様であった。
S15:ナノ銅電極を恒温送風乾燥オーブンに入れ、温度を170℃に設定して、データ収集装置を通じて分圧の変化をリアルタイムで記録した。
S16:実施例4と同様であった。
図16はレーザ線走査周期が35μmである場合のナノ銅の光学画像であり、
図11はレーザ線走査周期が15μmである場合のナノ銅の光学画像であり、
図12はレーザ線走査周期が45μmである場合のナノ銅の光学画像である。レーザ線走査周期が35μmである場合、周期がレーザスポットのサイズに近く、還元焼結により得られたナノ銅の表面が比較的緻密で滑らかになっていることがわかった。レーザ線走査周期が比較的短い場合(15μm)、走査経路の重複面積が増加し、その結果、繰り返し走査領域での熱蓄積と熱応力が増加し、ナノ銅の表面に亀裂が発生し、レーザ線走査周期が比較的長い場合(45μm)、走査経路間に熱障壁が発生し、微細なクラックが発生する可能性もある。
図13はさまざまなレーザ線走査周期で表面処理したナノ銅の抵抗の変化である。レーザ線走査周期が35μmである場合、還元焼結により得られたナノ銅の抵抗値が最も低くなる(0.36Ω/sq)ことがわかった。レーザ線走査周期が徐々に短くなるにつれて、繰り返し熱蓄積によって引き起こされる過度の焼結により、ナノ銅の導電性が低下し、レーザ線走査周期が徐々に長くなるにつれて、周期間の光熱還元焼結のエネルギー差によって引き起こされる表面欠陥も、ナノ銅の導電性に影響を与える。
図14はさまざまなレーザ線走査周期で処理したナノ銅の170℃での時間に伴う相対抵抗の変化である。レーザ線走査周期が35μmである場合、レーザ直接描画誘導不動態化を受けたナノ銅は、良好な高温熱安定性を示すことがわかった。レーザ線走査周期が短くなると、熱応力による亀裂により高温時の酸素ガスの浸入が加速され、ナノ銅の抗酸化性が低下し、レーザ線走査周期が長くなると、熱差による障壁がナノ銅の表面欠陥につながり、同様に、耐高温酸化性が悪く、同じ期間の相対抵抗の変化が大きくなる。
【0039】
実施例6:
S1~S5:実施例4と同様であった。
S6~S10:実施例1と同様であった。
S11:サイズ36×6mmの矩形電極パターンを描き、250mWの電力、40mm/sの速度、35μmの線走査周期に従って矩形電極パターンの充填経路に沿ってパターン化直接描画(レーザ直接描画誘導不動態化/光熱還元焼結)をレーザで行い、走査経路での黒色ナノ酸化銅を赤色ナノ銅に転化し、ナノ銅電極を得た。
S12:ナノ銅電極の両端に銀ペーストを薄く手動で塗布して電極を引き出し、真空乾燥オーブンに入れ、60℃で時間2h加熱して乾燥した。
S13:ナノ銅電極の抵抗値に応じて分圧回路基板を設計し、ワニ口クリップリード線を通じてナノ銅電極に接続し、デュポンラインを介してデータ収集装置に接続した。
S14:ポリビニルピロリドン0.5gを秤量して、エチレングリコール3.0mLおよびN,N-ジメチルホルムアミド溶液1.0mLに混合し、60℃、1200rpmの回転数で均一に加熱しながら12h撹拌し、ギ酸ナトリウムフリー前駆液を得た。
S15:酸化銅ナノワイヤ(40nm)2.0gを秤量して、ギ酸ナトリウムフリー前駆液に入れ、超音波リアルタイム温度55℃、超音波パルス幅0.1s、超音波時間3minで、超音波分散を十分に行い、ギ酸ナトリウムフリーナノ酸化銅溶液1を得た。
S16:酸化銅ナノワイヤ(40nm)2.0gを秤量して、ギ酸ナトリウムフリーナノ酸化銅溶液1に入れ、超音波リアルタイム温度55℃、超音波パルス幅0.1s、超音波時間3minで、超音波分散を十分に行い、ギ酸ナトリウムフリーナノ酸化銅溶液2を得た。
S17:酸化銅ナノワイヤ(40nm)1.0gを秤量して、ギ酸ナトリウムフリーナノ酸化銅溶液2に入れ、超音波リアルタイム温度55℃、超音波パルス幅0.1s、超音波時間2minで、超音波分散を十分に行い、ギ酸ナトリウムフリーナノ酸化銅インクを得た。
S18:ギ酸ナトリウムフリーナノ酸化銅インクを機械的に2min均一に振とうし、静置して使用に備えた。
S19~S20:実施例1のS6~S7と同様であった。
S21:ポリフェニレンサルファイドの特殊エンジニアリングプラスチック基板をスピンコータのスピンコートチャックに真空吸着し、基板の中心位置にギ酸ナトリウムフリーナノ酸化銅インク1.5mLを滴下し、1000rpmの回転数で20sスピンコートし、500rpmの回転数で10sスピンコートした。
S22:ギ酸ナトリウムフリーナノ酸化銅インクをスピンコートしたポリフェニレンサルファイドの特殊エンジニアリングプラスチックを恒温送風乾燥オーブンまたは真空乾燥オーブンに入れ、60℃で2h加熱して乾燥し、ギ酸ナトリウムフリーナノ酸化銅膜を得た。
S23:ギ酸ナトリウムフリーナノ酸化銅膜が被覆されたポリフェニレンサルファイドの特殊エンジニアリングプラスチックを532nm波長の連続緑色光のレーザによる加工プラットフォーム上に置き、レーザの焦点を合わせるために加工プラットフォームの高さを調整した。
S24:サイズ36×6mmの矩形電極パターンを描き、250mWの電力、40mm/sの速度、35μmの線走査周期に従って矩形電極パターンの充填経路に沿ってパターン化直接描画(レーザ直接描画誘導不動態化/光熱還元焼結)をレーザで行い、走査経路での黒色ナノ酸化銅を赤色ナノ銅に転化し、ギ酸ナトリウムフリーナノ銅電極を得た。
S25:ギ酸ナトリウムフリーナノ銅電極の両端に銀ペーストを薄く手動で塗布して電極を引き出し、真空乾燥オーブンに入れ、60℃で2h加熱して乾燥した。
S26:ギ酸ナトリウムフリーナノ銅電極の抵抗値に応じて分圧回路基板を設計し、ワニ口クリップリード線を通じてギ酸ナトリウムフリーナノ銅電極に接続し、デュポンラインを介してデータ収集装置に接続した。
S27:ナノ銅電極およびギ酸ナトリウムフリーナノ銅電極を恒温送風乾燥オーブンに入れ、温度を170℃に設定して、データ収集装置を通じて分圧の変化をリアルタイムで記録した。
S28:分圧式によってデータ結果をナノ銅電極およびギ酸ナトリウムフリーナノ銅電極の相対抵抗の変化に換算した。
図15はナノ銅(LIP-Cu)およびギ酸ナトリウムフリーナノ銅(Cu)の170℃での時間に伴う相対抵抗の変化である。ギ酸ナトリウムフリーナノ銅の耐高温酸化性は、ナノ銅に比べてはるかに劣っていることがわかった。ナノ銅は、レーザ熱により誘導されるギ酸塩配位不動態化保護に基づき、170℃の高温でもより優れた熱安定性を備えている。
【0040】
実施例7:
S1~S26:実施例6と同様であった。
S27:ナノ銅電極およびギ酸ナトリウムフリーナノ銅電極を恒温送風乾燥オーブンに入れ、温度を120℃に設定して、データ収集装置を通じて分圧の変化をリアルタイムで記録した。
S28:実施例6と同様であった。
図16はナノ銅(LIP-Cu)およびギ酸ナトリウムフリーナノ銅(Cu)の120℃での時間に伴う相対抵抗の変化である。ギ酸ナトリウムフリーナノ銅の導電性は120℃で低下し続けたが、ナノ銅の導電性は105h以内に安定したままで、明らかな低下がないことが分かった。
【0041】
実施例8:
S1~S26:実施例6と同様であった。
S27:ナノ銅電極およびギ酸ナトリウムフリーナノ銅電極を恒温送風乾燥オーブンに入れ、30℃から190℃に徐々に昇温し、温度間隔を20℃として、温度ごとに10min持続し、データ収集装置を通じて分圧の変化をリアルタイムで記録した。
S28:実施例6と同様であった。
図17はナノ銅(LIP-Cu)およびギ酸ナトリウムフリーナノ銅(Cu)の、30℃から170℃に徐々に昇温するまでの相対抵抗の変化である。ギ酸ナトリウムフリーナノ銅の電気的特性は、段階的な上昇プロセス中に、低下の速度が徐々に速くなったが、ナノ銅の電気的特性は、温度が150℃に上昇するまでに安定しており、温度が170℃に上昇してもわずかに低下することがわかった。
本発明の第2態様は、特殊エンジニアリングプラスチック剛性基板、耐高温性ナノ銅製相互接続回路、レーザ誘導グラフェン温度センサ、分圧器、アナログ-デジタルコンバータ(ADC)、マイクロコントローラ(MCU)、および低ドロップアウトリニアレギュレータ(LDO)を含む完全レーザ原位置直接描画による統合センサシステムを提案する。
【0042】
実施例9:
S1:長60mm、幅60mm、厚さ4mmのポリフェニレンサルファイドの特殊エンジニアリングプラスチック基板の表面に幅50mmのPIテープを貼り付けた。
S2:外輪郭のサイズが45×27mmの回路を描き、355nm波長の紫外線ナノ秒パルスレーザを用いて回路の輪郭に沿って切断した。
S3:ポリフェニレンサルファイドの特殊エンジニアリングプラスチック基板から切断輪郭内のPIテープを剥がした。
S4:実施例1で調製されたナノ酸化銅インクを適量でポリフェニレンサルファイドの特殊エンジニアリングプラスチック基板上に塗布し、加熱して乾燥した。
S5:ポリフェニレンサルファイドの特殊エンジニアリングプラスチック基板から残りのPIテープを剥がし、回路輪郭を持つナノ酸化銅膜を得た。
S6:532nm連続波長のレーザを用いて回路パターンの充填経路に沿ってレーザ直接描画誘導不動態化/光熱還元焼結を行い、耐高温性ナノ銅製相互接続回路を得た。
S7:適切なサイズおよび形状を有する温度センサを設計し、10.6μm波長のCO
2レーザによってポリフェニレンサルファイドの特殊エンジニアリングプラスチック基板表面の対応する位置で原位置誘導炭化を行い、レーザ誘導グラフェン温度センサを形成した。
S8:回路設計に従って、各素子を銅ペーストで耐高温性ナノ銅製相互接続回路に接続し、銅ペーストを加熱して硬化させた。
S9:外付けデュポンラインを通じてビジュアルシリアルポートを接続し、この統合温度センサシステムをチップの許容範囲の上限と下限の温度範囲内に配置して、温度の検知と測定を行った。
図18は完全レーザ原位置直接描画による統合センサシステムの光学写真である。
【要約】 (修正有)
【課題】レーザ直接描画による耐高温性ナノ銅、その製造方法、および使用を提供する。
【解決手段】耐高温性ナノ銅は、アルコール系溶剤、有機分散剤、有機助剤、ギ酸塩を加熱して撹拌し、前駆液を得て、ナノ酸化銅を前駆液に加え、超音波分散させ、ナノ酸化銅インクを得て、前処理された基板上に塗布してナノ酸化銅膜を得た後、レーザ直接描画誘導不動態化/光熱還元焼結を行うことにより得られる。
【効果】本発明は、製造が簡単であり、ナノ酸化銅インクは、長時間保存することができ、酸化による影響を受けず、印刷法、塗装法、プリント法などのさまざまな製造プロセスに適している。また、レーザ直接描画に基づいて、加工効率が高く、また、耐高温性ナノ銅に多性能をワンステップで統合することも実現できる。
【選択図】
図17