(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-19
(45)【発行日】2025-08-27
(54)【発明の名称】燃焼装置、及び、もみ殻くん炭の製造方法
(51)【国際特許分類】
F23B 60/00 20060101AFI20250820BHJP
F23B 80/00 20060101ALI20250820BHJP
F24B 1/02 20060101ALI20250820BHJP
【FI】
F23B60/00
F23B80/00
F24B1/02 Z
(21)【出願番号】P 2025035623
(22)【出願日】2025-03-06
【審査請求日】2025-03-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522390696
【氏名又は名称】株式会社ヤマナカ
(74)【代理人】
【識別番号】110003535
【氏名又は名称】スプリング弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山中 崇
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-77231(JP,A)
【文献】特開2016-88942(JP,A)
【文献】特開昭58-103587(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102533291(CN,A)
【文献】中国実用新案第221397786(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23B 60/00
F23B 80/00
F24B 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方端が開放された底板を備えた外筒と、
前記外筒内に収容された内筒と、
前記内筒の外周面から径方向に前記外筒の内周面まで延びて、前記内筒と前記外筒との間を塞ぐ天板と、
前記外筒において、高さ方向の中央位置よりも上方に設けられた開閉可能な第1の開口と、を備え、
前記内筒は、前記外筒との間で気体の流通が可能なよう構成された、燃焼装置。
【請求項2】
前記底板は、第2の開口を有する固定板と、
前記固定板に対してスライド移動し、第3の開口を有する可動板と、
前記可動板を動作させるための操作部と、を備え、
前記操作部の操作により、前記第3の開口が、前記第2の開口に対して位置決めされ、前記第2の開口、及び、前記第3の開口が連通して形成される貫通孔の調整が可能となるよう構成された、請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項3】
前記内筒は、前記気体の流通のための通気口を備え、前記通気口は、前記内筒の高さ方向における中央位置よりも下方に設けられた、請求項2に記載の燃焼装置。
【請求項4】
前記内筒は、下端部が前記底板から離間して配置され、前記下端部と前記底板の間に隙間が形成された、請求項3に記載の燃焼装置。
【請求項5】
前記第2の開口、及び、前記第3の開口は、前記外筒の中心近傍を起点として外周方向に放射状に広がる形状とされ、前記貫通孔も同様の形状となるよう構成された、請求項4に記載の燃焼装置。
【請求項6】
前記外筒を前記天板より上に延長して、上部に加熱容器を支持する支持部を備える、請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項7】
前記外筒、及び、前記内筒が平板を組み合わせて形成され、分解可能に構成された、請求項1に記載の燃焼装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の燃焼装置の内筒に固体燃料を投入することと、
前記固体燃料に着火することと、
前記内筒と前記外筒とにより区画される空間にもみ殻を収容することと、を含む、もみ殻くん炭の製造方法。
【請求項9】
前記着火後に、前記第1の開口から前記空間に前記もみ殻を投入することを含む、請求項8に記載のもみ殻くん炭の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃焼装置、及び、もみ殻くん炭の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、「燃焼器となる外筒と、この外筒内部に支持され、かつ当該外筒内周面との間に隙間を形成できる切欠き部を備えた中板と、この中板の孔に挿設される中筒と、この中筒に開設した複数の細孔と、前記中筒、及び/又は、前記外筒の何れかに載架される五徳、又は網体とでなる燃焼器具。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、燃焼器具の外筒と中筒との間にもみ殻を充填し、これを「燻し焼き態様」で燃焼させて炭化させる形態が開示されている。しかし、本発明者の検討によれば、特許文献1に記載の燃焼器具を用いた場合、もみ殻が燃焼して中筒内に燃焼炎を生じたり、中板の切り欠きから外筒に沿って鉛直情報に燃焼炎を生じたりして、くん炭が製造できないばかりか、使用者が突如上がる燃焼炎にさらされる等、安全上の問題もあることがわかった。また、特許文献1の燃焼器具は、もみ殻の追加投入が難しく、中板の切り欠き部分を介して内部に投入しようとすると、中板の上部に滞留してしまったもみ殻に着火して燃焼炎を生じたり、また、投入されたそばから、外筒に沿って燃焼炎を生じたりする問題もあった。本開示は、上記従来技術における課題の少なくとも1つを解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第1の燃焼装置は、一方端が開放された底板を備えた外筒と、
前記外筒内に収容された内筒と、前記内筒の外周面から径方向に前記外筒の内周面まで延びて、前記内筒と外筒との間を塞ぐ天板と、前記外筒において、高さ方向の中央位置よりも上方に設けられた開閉可能な第1の開口と、を備え、前記内筒は、前記外筒との間で気体の流通が可能なよう構成された、燃焼装置である。
【発明の効果】
【0006】
本開示は、上記従来技術における課題の少なくとも1つを解決する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の燃焼装置の一実施例の斜視図である。
【
図2】本開示の燃焼装置の一実施例の分解図である。
【
図3】上段を取り外した状態の燃焼装置の斜視図である。
【
図4】
図3の状態から更に天板を取り外した状態の燃焼装置の斜視図である。
【
図5】
図4の状態から中段の外筒を取り除いた状態の燃焼装置の斜視図である。
【
図10】従来例の燃焼器において、燃焼中に羽釜を取り除いた状態を表す画像である。
【
図11】燃焼装置を用いて燃焼中に羽釜を取り除いて、更に、第1の開口から燃料を追加投入している状態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の第1の燃焼装置は、一方端が開放された底板を備えた外筒と、前記外筒内に収容された内筒と、前記内筒の外周面から径方向に前記外筒の内周面まで延びて、前記内筒と前記外筒との間を塞ぐ天板と、前記外筒において、高さ方向の中央位置よりも上方に設けられた開閉可能な第1の開口と、を備え、前記内筒は、前記外筒との間で気体の流通が可能なよう構成された、燃焼装置である。
【0009】
第1の燃焼装置の使用方法は、一形態として、まず、外筒と内筒との間にもみ殻、木くず、又は、ぬか等の粉体・粒状の燃料を収容し、内筒の内部に当初、焚き付けとなる熱源(薪等)を収容する。すると熱源によって外筒と内筒の間の燃料が加熱され、可燃性ガスが発生する。発生した可燃性ガスは、内筒と外筒との間を塞ぐ天板により外筒の上方向への流出が抑えられ、内筒内に誘導される。その結果、燃料からの可燃性ガスにより、燃焼装置としての機能(加熱)は安定に進み、かつ、燃焼は内筒内のガスの燃焼であるから、外筒内の燃料には直接火がつかず、こちらは炭化プロセスを安全に進めることができる。すなわち、当初の少しの熱源の投入だけで、その後は燃料から連続的に熱を得つつ、燃料の炭化物(くん炭)も得られるという2つの優れた機能が両立され得る。
【0010】
外筒には開閉可能な第1の開口が設けられており、この第1の開口を介して燃焼中に燃料を追加投入して、連続して燃焼状態を維持できる。この際、熱源の投入は最初だけで、一度可燃性ガスの燃焼が開始されれば、通常は、追加で熱源の投入は必要なく、燃料(後にくん炭となる)の投入だけで、燃焼は続いて進行する。
【0011】
特許文献1に記載されたような従来の燃焼器は、「ぬか竃(くど)」と呼ばれ、当初大量に投入した燃料を熱源により加熱して、可燃性ガスを取り出して燃焼させ、この熱を煮炊きに利用するものであった。しかし、構造上、燃焼中に順次燃料を追加することは難しかった。無理に追加しようとして燃焼中に鍋や釜を取り除くと、その瞬間に開口から炎が噴出し危険であった。一方、第1の燃焼装置は、第1の開口から安全に燃料の追加投入が可能である。第1の開口を開いて、可燃性ガスが一時的に第1の開口から外部に流出した場合でも、内筒と外筒の構造的な距離により、燃焼炎が第1の開口から噴出したり、燃料に着火するリスクがとても低く抑えられている。更に、第1の開口を速やかに閉じることで、燃焼の安定性と安全性が維持される。このように、第1の燃焼装置は、効率的かつ安全で、連続的な燃料の燃焼と、燃料の燻し焼きによるくん炭製造を両立可能にし、従来技術における課題を効果的に解決する。
【0012】
本開示の第2の燃焼装置は、第1の燃焼装置において、第2の開口を有する固定板と、前記固定板に対してスライド移動し、第3の開口を有する可動板と、前記可動板を動作させるための操作部と、を備え、前記操作部の操作により、前記第3の開口が、前記第2の開口に対して位置決めされ、前記第2の開口、及び、前記第3の開口が連通して形成される貫通孔の調整が可能となるよう構成された、燃焼装置である。
【0013】
第2の燃焼装置によれば、第2の燃焼装置によれば、貫通孔の調整が可能であるため、燃焼後に生成される灰化物やくん炭を効率的に排出することができる。この構造により、燃焼残留物が装置内に滞留して燃焼効率を低下させることを防ぎ、使用者が簡単に排出操作を行うことができる。また、可動板をスライドさせる操作部を備えることで、排出作業が容易であり、メンテナンス性が向上する。更に、貫通孔の開閉調整により、燃焼の進行や炭化プロセスの管理がしやすくなり、効率的なくん炭製造が可能となる。
【0014】
本開示の第3の燃焼装置は、第2の燃焼装置において、前記内筒は、前記気体の流通のための通気口を備え、前記通気口は、前記内筒の高さ方向における中央位置よりも下方に設けられた、燃焼装置である。
【0015】
第3の燃焼装置によれば、内筒の中央位置よりも下方に通気口を設けることで、燃焼炎を内筒内の下方に集中させ、燃焼の制御を安定化させるとともに、第1の開口からの燃焼炎の噴出を抑制し、炭化を下方から効率的に進行させることが可能となる。この構成によれば、燃料の追加投入、炭化物の排出がより効率化される。すなわち、上部に設けられた投入口から燃料を投入し、燃焼炎による熱と可燃性ガスを活用して段階的に炭化を進め、最終的に下方から排出する構造により、燃焼と炭化のプロセスを効率化することができる。第3の燃焼装置によれば、上から燃料を投入し、下から炭化・排出するシステムとすることが容易であり、安定的な連続燃焼とくん炭製造とを効率的かつ安定的に両立することが可能となる。
【0016】
本開示の第4の燃焼装置は、第3の燃焼装置において、前記内筒は、下端部が前記底板から離間して配置され、前記下端部と前記底板の間に隙間が形成された、燃焼装置である。
【0017】
第4の燃焼装置によれば、内筒の下端部が底板から離間し、隙間が形成されていることで、燃焼後に生成された灰化物や燻炭が効率的に隙間を通じて下方に移動し、排出が容易になる。この隙間は、燃焼炎の適切な制御を可能にし、内筒内の燃焼を安定化させるとともに、外筒内で炭化が進行中の燃料への不必要な火の接触を防ぐ役割も果たす。また、隙間を通じた排出プロセスにより、装置内に燃焼残留物が滞留することがなく、燃焼効率が向上する。更に、排出された灰化物や燻炭が分離されやすい構造により、燃焼とくん炭製造との両立における効率性と安全性を高めることができる。
【0018】
本開示の第5の燃焼装置は、第4の燃焼装置において、前記第2の開口、及び、前記第3の開口は、前記外筒の中心近傍を起点として外周方向に放射状に広がる形状とされ、前記貫通孔も同様の形状となるよう構成された燃焼装置である。
【0019】
第5の燃焼装置によれば、第2の開口及び第3の開口が放射状に広がる形状であることにより、貫通孔が外側に向かって広くなり、内筒で生成された熱源の灰化物が、外筒と内筒との間で生成し、貫通孔から排出される炭化物に混ざりにくい構造となる。この結果、炭化物の品質が向上するとともに、灰化物の分離が容易になるため、排出作業の効率化を図ることができる。また、貫通孔の形状によって排出物がスムーズに流れるため、装置内の滞留物が減少し、全体の燃焼プロセスが安定化する。更に、排出作業時のメンテナンス性が向上する点も利点として挙げられる。
【0020】
本開示の第6の燃焼装置は、第1の燃焼装置において、前記外筒を前記天板より上に延長して、上部に加熱容器を支持する支持部を備える、燃焼装置である。
【0021】
第6の燃焼装置によれば、外筒を天板より上に延長し、上部に加熱容器を支持する支持部を備えることで、燃焼装置を熱源として利用し、煮炊き等が可能となる。この構造により、燃焼装置が単なるくん炭製造装置としてだけでなく、熱エネルギーを活用した多用途な装置として機能する。更に、支持部が加熱容器を安定的に保持するため、煮炊き等の際の安全性が向上する。また、天板で外筒と内筒を仕切る構造により、可燃性ガスが加熱容器に直接触れることを防ぎ、清潔な熱供給が可能となる。
【0022】
本開示の第7の燃焼装置は、第1の燃焼装置において、前記外筒、及び、前記内筒が平板を組み合わせて形成され、分解可能に構成された、燃焼装置である。
【0023】
第7の燃焼装置によれば、外筒及び内筒が平板を組み合わせて形成され、分解可能な構造であるため、使用後の清掃やメンテナンスが容易となる。また、分解してコンパクトに収納できるため、輸送や保管にかかるスペースを削減することができる。更に、分解構造により、部品の交換や修理が簡便であるため、装置の耐用年数を延ばすことが可能となる。
【0024】
本開示の第1のもみ殻くん炭の製造方法は、第1乃至第7のいずれかの燃焼装置の内筒に固体燃料を投入することと、前記固体燃料に着火することと、前記内筒と前記外筒とにより区画される空間にもみ殻を収容することと、を含む、もみ殻くん炭の製造方法である。
【0025】
第1のもみ殻くん炭の製造方法によれば、内筒に投入された固体燃料に着火することで、安定した熱源が供給され、内筒と外筒の間にもみ殻を収容することで、外筒内の燃料が安全かつ効率的に炭化される。この方法により、可燃性ガスが天板によって内筒に誘導され、外筒内のもみ殻が直接燃焼することを防ぎながら、均一な炭化を実現することが可能となる。また、開閉可能な第1の開口から燃焼プロセス中にも燃料を追加投入することができ、連続的なくん炭製造を可能とする。
【0026】
本開示の第2のもみ殻くん炭の製造方法は、第1のもみ殻くん炭の製造方法において、前記着火後に、前記第1の開口から前記空間に前記もみ殻を投入することを含む、もみ殻くん炭の製造方法である。
【0027】
第2のもみ殻くん炭の製造方法によれば、着火後に第1の開口からもみ殻を追加投入する工程を有するため、燃焼プロセス中に燃料を補充しながら連続的に炭化を進めることが可能となる。この方法では、内筒内での安定した燃焼により、追加投入されたもみ殻も均一に炭化される。また、可燃性ガスが第1の開口から外部に一時的に流出する場合でも、内筒と外筒の間隔や構造によって燃焼中のもみ殻が着火するリスクが低減される。更に、燃焼装置の第1の開口が迅速に開閉可能であるため、安全性と操作性が向上する。
【0028】
以下、添付図面を参照しながら実施形態について詳細に説明する。明細書には開示の技術的思想を具体化するための具体的な材料や方法が例示されている。本開示の技術的思想は、以下の具体例に特定されるものではない。本開示の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において、種々の変更を加えることができる。特に、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。
【0029】
図1は、本開示の燃焼装置の一実施例の斜視図である。また、
図2は分解図である。
【0030】
燃焼装置100は、もみ殻、木くず、及び、ぬか等の粉体又は粒状の有機物を燃料とし、燃料から発生する可燃性ガスを燃焼させつつ、燃料自体は炭化させて炭化物を得ることができる燃焼装置である。従来このような燃料を用いる燃焼器は、「ぬか竃(くど)」として知られていたが、燃焼装置100は、従来の類似の燃焼器と比較して、燃焼効率が高く、燃焼中における燃料の追加投入が可能で、更に、品質の高い炭化物(くん炭)を製造できる新たな装置である。燃焼装置100によれば、少量の薪や枯葉等の焚き付けを熱源とし、燃料を「燻し焼き態様」で加熱し、可燃性ガスを得てこれを燃焼させるとともに、燃料については炭化させて、例えば、もみ殻くん炭を製造できる。
【0031】
燃焼装置100の大きさは特に限定されないが、一例として、全体の高さが300mm~1500mmが好ましく、幅及び奥行きは150mm~1000mmが好ましい。具体的な一形態として、幅が400mm~600mm、奥行き400mm~600mm、高さ500mm~1000mm程度が好ましい。
【0032】
燃焼装置100は、複数の金属製の平板を組み合わせて組み立て可能に構成されている。大別して、燃焼装置100は、上下の高さに3段構成となっている。以下の説明では、これらを上から、上段10、中段20、下段40と称する。このうち、中段20は、外筒26と、内筒32とに分かれる二重筒構造とされる。すなわち、外筒26の内部に、内筒32が収容された構造とされている。
【0033】
上段10は、4枚の平板12A、12B、12C、12Dを組み合わせて形成される筒状部12から構成される。筒状部12は、中段20の上に載置される。上段10と中段20とは、かみ合わせ構造によって互いに固定される。上段10は、高さ方向の上下がそれぞれ解放されている。上段10は、二重筒構造である必要はなく、中段20の外筒26と同一径の筒状部12を備える。なお、本例では、筒状部12は、角筒状であるものの、円筒状や多角形の筒状であってもよい。平板の組み合わせで組み立て可能である点で、角筒状や、多角形の筒状であることが好ましい。上段10は、燃焼装置100の上部に鍋ややかん等の加熱容器を置いて使用するための支持部として機能する。詳細は後述するが、中段20の内筒32の内部には、薪などの焚き付けが熱源として投入される。焚き付けの大きさ、長さによっては、その一部が中段20から飛び出す場合がある。この際、上段10の筒状部12がこれを囲って更に高くまで延びることで、筒状部12の上に調理器具等を載置しやすくなる。なお、燃焼装置100は、上段10を有していなくてもよいし、取り外した状態で使用してもよい。
【0034】
次に、
図3は、上段10を取り外した状態の燃焼装置100の斜視図であり、
図4は、更に天板24を取り外した状態の燃焼装置100の斜視図である。
【0035】
中段20は外筒26と内筒32の二重筒構造とされ、更に、内筒32の外周面から径方向に外筒26の内周面まで延びる天板24を備える。外筒26は、筒状の本体、本体の側面に形成された開口28A、28B(第1の開口)、及び、この開口28A、28Bを開閉可能に塞ぐフラップハッチ30A、30Bを備える。
【0036】
外筒26は、4枚の平板26A、26B、26C、26Dから構成されている。4枚の平板26A、26B、26C、26Dはそれぞれ、隣接する平板とかみ合わせ構造によって互いに固定され、筒状をなす。外筒26の上端から厚み方向に向かって、切り欠き状の開口28A、28Bが設けられる。開口28A、28Bには、これを塞ぐフラップハッチ30A、30Bが設けられる。フラップハッチ30A、30Bは、下辺を軸に回動して開口を開閉可能に構成される。
【0037】
開口28A、28Bは、外筒26と内筒32との間の空間に燃料を投入するための投入口として機能する。開口28A、28Bはフラップハッチ30A、30Bにより開閉可能に構成されているため、必要時にフラップハッチ30A、30Bを開き、開口28A、28Bから、外筒26と内筒32との間の空間SPに燃料が投入される。なお、開口28A、28Bの位置は、外筒26の最上部には限定されず、他の部分に設けられてもよい。一方で、後述するように、燃料の炭化が中段20の底部から進行することに鑑みると、より上側に配置されることが好ましい。具体的には、外筒26の中央位置よりも上方、より好ましくは、天板24の直下に配置されることが好ましい。なお、本例では、開口28A、28Bは対向する面に一対設けられているが、開口28A、28Bは、各面に設けられてもよいし、外筒26に1つだけ設けられてもよい。なお、開口28A、28Bの個数は限定されない。
【0038】
図5は、中段20の外筒26を取り除いた状態の燃焼装置100の斜視図である。また、
図6は、内筒32の側面図と平面図である。内筒32は、4枚の平板32A、32B、32C、32Dを組み合わせて構成される筒状の構造である。内筒32の上下は開口しており、側面の下部には、内筒32の内外における気体の流通のための通気口34が設けられている。平板32B、32Dには、下部に2つの突起が設けられており、この突起が内筒32の4本の脚となる。内筒32は、4本の脚で底板44の中央に立てて設置されている。この脚の分、底板44と内筒32の底部とは離間し、両者の間には隙間が設けられる。この隙間は、通気口34よりも幅が広くされており、炭化した燃料が通過可能な程度に調整されている。
【0039】
内筒32の内部には、薪等の焚き付けが投入される。一方、内筒32と外筒26のとの間の空間SPには、燃料が投入される。焚き付けは内筒32の内部で燃焼するが、燃料は内筒32により隔離されるため、直接燃焼することはない。焚き付けが内筒32の内部で燃焼すると、内筒32を介して熱が伝わり、燃料から可燃性ガスが発生する。可燃性ガスは内筒32の下部の通気口34から内筒32内に移動し、内筒32内で燃焼する。内筒32と外筒26とにより区画される空間SPは、その上部が天板24で閉塞されているため、可燃性ガスが空間SPの外へと散逸しにくく、内筒32内に効率的に誘導され燃焼する。後述するように、炭化した燃料は、下段40の底板44から排出され得ることから、燃料や可燃性ガスの流れを考慮すると、通気口34は、内筒32の高さ方向における中央位置よりも下方に設けられることが好ましい。このように構成されることで、上部の開口28A、28Bから投入された燃料は、高さ方向の下部より順次炭化され、底板44から排出されることになる。
【0040】
図7は、下段40の分解図であり、
図8は下段40の本体42の斜視図である。下段40は、トレイ54を除き、複数の平板42A、42B、42C、42D、44A、44B等を組み合わせて形成される。下段40の本体42は、盆の四方に脚が設けられたような形状とされている。本体42は、中段20の外筒26より若干大径の筒状とされ、中央には開口46が設けられた底板44がはめ込まれる。底板44の中央には、底板44の中心を起点として外周方向に放射状に広がる扇形の開口46(第2の開口)が複数設けられる。
【0041】
開口46は、可動板48により開閉可能とされる。可動板48は、円盤状の本体48Aと、本体48Aの外周部から直径方向に延びるアーム48Bとから構成されている。円盤状の本体48Aには、中心から広がる複数の扇形状の開口50(第3の開口)が設けられている。底板44に設けられた開口46と、可動板48に設けられた開口50とは、互いに対応する形状とされている。可動板48は、底板44の中心に支点部材52によって回動可能に固定されている。このように構成されることで、アーム48Bを操作して可動板48をスライドさせると、開口46と開口50とが連通して貫通孔THが形成されたり、開口46が可動板48の本体48Aで閉塞されたりする。
【0042】
開口46と開口50とは、底板44の中央に配置される。この部分の面積は、底板44の中央を基準に載置された中段20の内筒32の開口とほぼ同程度か、それより大きく形成されている。中段20において、空間SP内で順次炭化した燃料は、内筒32と底板44との間に形成された隙間から、内筒32の中央方向に進入し、アーム48Bの操作により開かれた貫通孔THから、トレイ54へと落ちる。これにより、燃焼中であっても、炭化済みの燃料を順次回収することができ、連続処理が可能となる。また、可動板48が無段階のスライド式によって開閉量を調整可能に構成されるため、炭化済み燃料の排出の他、空気の導入量の調整も可能であり、焚き付けの燃焼具合も調整可能である。
【0043】
上記のように構成された燃焼装置100によれば、燃料から発生した可燃性ガスが閉鎖された空間SPから効率的に内筒32に移動して燃焼する。そのため、燃焼中に中段20のフラップハッチ30A、30Bを開いても、可燃性ガスが漏れ出して開口28A、28Bから炎が噴出することがほとんどない。つまり、燃料の処理中に更に燃料を追加投入することが可能となる。更に、炭化済みの燃料は、内筒32の下部の隙間を介して底板44に設けられた開口46から順次排出される。内筒32の通気口34は、高さ方向の下方に設けられているため、炭化は、中段20の下部から進むため、底板44からは、確実に炭化の終了した燃料が排出される。なお、下段40には覗き穴56が設けられており、炭化の進行状態を目視で確認できるよう構成されている。
【0044】
燃焼装置100は、複数の平板を組み合わせて形成される。
図9は、
図3における破線部の拡大図である。それぞれの平板には、フック60と、対応するスリット62が設けられており、これらを係合させて組み合わせることで、燃焼装置100は組み立てられる。組み立てられた下段40の上に、中段20の二重筒と天板24を載置すれば、燃焼装置100は使用可能である。更にこの上に、上段10を載置すると、煮炊き用としても使用しやすくなる。
【0045】
使用の際は、開口28A、28Bのフラップハッチ30A、30Bを開き、燃料を投入する。なお、組み立ての際に、予め外筒26と内筒32との間に、燃料を収容しておいてもよい。燃料を収容したら、薪や落ち葉等の焚き付けを、上段10又は中段20の上部の開口から内筒32内に投入して、着火する。この際、できる限り底板44に近い部分から燃焼するよう調整することが好ましい。具体的には、着火剤と焚き付けとを投入し、底板44の貫通孔THの開き具合を調整して着火することが好ましい。
【0046】
焚き付けに着火すると、燃料が加熱されるため、時間経過とともに可燃性ガスが内筒32内に進入し、燃焼が始まる。この状態では、焚き付け等を追加投入する必要はない。可燃性ガスの燃焼のみで更に燃料が加熱されて、燃焼が続く。可燃性ガスが発生すると、燃料は中段20の下部から炭化が進むので、覗き穴56から炭化の進行を確認し、十分に炭化が進行していれば、底板44の貫通孔THの開き具合を調整して、炭化物を排出する。更に、開口28A、28Bのフラップハッチ30A、30Bを開き、順次燃料を投入することで、処理が継続する。
【0047】
本開示の燃焼装置100は、外筒26と内筒32との間が天板24で閉塞されているため、炎が外まで上がらず、開口28A、28Bから燃料を追加投入する場合でも安全に実施可能である。また、燃料としてもみ殻を用いることで、底板44からもみ殻くん炭を排出することができるため、燃焼装置100は、もみ殻くん炭の製造装置としても使用可能である。
【0048】
(実証実験)
次に、燃焼装置100を用いた実証実験について説明する。従来例の燃焼器である「ぬかくど」と、燃焼装置100とを用いて、羽釜による炊飯を行い、燃焼効率の検討を行った。従来の「ぬかくど」は、簡単な二重筒構造であり、内筒、外筒共に上側が開口しており、外筒と内筒との間にもみ殻を投入し、内筒内に薪等の熱源を投入し、上部に羽釜を乗せて開口に蓋をするような状態で利用する。
【0049】
・燃焼状態の違い
まず、両者では燃焼状態が異なっていた。従来例では、内筒のみならず、外筒からも炎が上がり、結果として加熱箇所が分散し、羽釜に効率的に火力が伝わらないという問題があった。一方、燃焼装置100を用いた場合、燃焼炎は内筒内のみであがり、火力が集中しやすく、羽釜に効率的に火力が伝わりやすかった。
【0050】
・熱源の必要量の違い
上述のように、従来例では燃焼効率が悪く火力が分散してしまうため、内筒内に大量の熱源(薪)を投入しなければ、十分な火力が得られなかった。結果として、燃料としてもみ殻を利用しているにもかかわらず、満足な炊飯には、薪のみを燃料とした炊飯と大差ない量の薪が必要だった。一方、燃焼装置100を用いた場合、薪は当初の焚き付けとして必要な分のみであり、その後には、もみ殻のみで火力が維持された。更に、必要に応じて簡単にもみ殻を追加投入することで、火力の調整も容易であった。
【0051】
・可燃性ガスの排出状況の違い
従来例では、加熱されたもみ殻から発生するガスが、燃焼器の全体の多数の箇所から排出され、可燃性ガスの利用効率が低かった。一方、燃焼装置100を用いた場合には、可燃性ガスは、通気口から内筒内に導かれ確実に燃焼に用いられるため、効率が高かった。
【0052】
以上の実証実験の結果から、従来例には、以下の問題が明確に確認された。まず第1に、内筒以外からも炎が発生するため、羽釜への火力伝達が不十分であった。第2に、燃料、熱源の投入量を増加させても、結果として薪の火力のみで調理している状態と大差なく、効率が低かった。第3に、もみ殻からの可燃性ガスが無駄に排出され、燃焼効率が著しく低下していた。
【0053】
一方、燃焼装置100によれば、内筒と外筒との間に天板を渡し、密閉構造を採用したことで、燃焼が内筒内に効率的に限定され、火力不足が解消されるとともに、もみ殻から発生する可燃性ガスも有効に利用されるため、燃焼効率が大幅に向上したものである。
【0054】
なお、
図10は従来例の燃焼器において、燃焼中に羽釜を取り除いた状態を表す画像である。
図10に示されるように、羽釜を取り除くと、内筒、外筒から炎が噴出することがわかる。一方、
図11は、燃焼装置100を用いて同様に羽釜を取り除いて、更に、第1の開口から燃料を追加投入している状態を表す図である。
図11からは、燃焼装置100では羽釜を取り除いても、更には、第1の開口を開いても、燃焼炎は内筒内に限られ、外に大きく噴出したり、第1の開口から逆流したりするようなことはなかった。
【符号の説明】
【0055】
100 燃焼装置
10 上段
20 中段
24 天板
26 外筒
28A 開口
28B 開口
30A フラップハッチ
30B フラップハッチ
32 内筒
34 通気口
40 下段
44 底板
46 開口
48 可動板
50 開口
【要約】
【課題】 従来技術における課題の少なくとも1つを解決し得る燃焼装置の提供。
【解決手段】 一方端が開放された底板を備えた外筒と、前記外筒内に収容された内筒と、前記内筒の外周面から径方向に前記外筒の内周面まで延びて、前記内筒と前記外筒との間を塞ぐ天板と、前記外筒において、高さ方向の中央位置よりも上方に設けられた開閉可能な第1の開口と、を備え、前記内筒は、前記外筒との間で気体の流通が可能なよう構成された、燃焼装置。
【選択図】
図1