(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2025-08-19
(45)【発行日】2025-08-27
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/06 20060101AFI20250820BHJP
C08L 45/02 20060101ALI20250820BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20250820BHJP
C08K 13/02 20060101ALI20250820BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20250820BHJP
C08K 3/36 20060101ALN20250820BHJP
C08K 3/04 20060101ALN20250820BHJP
C08K 5/101 20060101ALN20250820BHJP
【FI】
C08L9/06
C08L45/02
C08L91/00
C08K13/02
B60C1/00 A
C08K3/36
C08K3/04
C08K5/101
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021081768
(22)【出願日】2021-05-13
【審査請求日】2024-04-15
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】ニハット・アリ・イシトマン
(72)【発明者】
【氏名】マリネ・ソフィー・フランコイセ・バッセン
(72)【発明者】
【氏名】ロンダ・ジェーン・ヒンターロング
【審査官】菅原 淳
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-123305(JP,A)
【文献】特開2018-016768(JP,A)
【文献】特開2017-214566(JP,A)
【文献】国際公開第2019/199840(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー100重量部(phr)を基準として、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム
30重量部~70重量部とポリブタジエン70重量部~30重量部とからなる100重量部のエラストマー;
式1
【化1】
[式中、R
1は、C1~C8の直鎖または分岐アルキル、C1~C8の直鎖または分岐アルケニル、および1~5個のヒドロキシル基で置換されたC2~C6の直鎖または分岐アルキルから選択され;R
2は、C11~C21アルキルまたはC11~C21アルケニルである]の脂肪酸モノエステル5~50phr;
-40℃~20℃の範囲のTgを有する
クマロン-インデン樹脂5~50phr;
石油由来のオイル10phr未満;および
シリカ50~130phr、
任意に、カーボンブラック1~50phr
を含む加硫性ゴム組成物を特徴とするトレッドを有する空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記スチレン-ブタジエンゴムが-85℃~
0℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有することを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記スチレン-ブタジエンゴムが-40℃~0℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有することを特徴とする、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
【背景技術】
【0002】
タイヤが良好な湿潤横滑り抵抗、低い転がり抵抗および良好な摩耗特性を有することは非常に望ましい。湿潤横滑り抵抗および牽引特性を犠牲にすることなく、タイヤの摩耗特性を改善するのは従来非常に困難であった。これらの性質は、タイヤを製造する際に用いられるゴムの動的粘弾性に大いに依存する。
【0003】
転がり抵抗を減少させてタイヤのトレッド摩耗特性を改善するために、高反発性のゴムが、従来からタイヤトレッドゴムコンパウンドを製造する際に用いられてきた。他方、タイヤの湿潤横滑り抵抗を増すために、大きいエネルギー損を受けるゴムが、一般にタイヤのトレッドに用いられてきた。これら2つの粘弾性的に一致しない性質のバランスを取るために、様々な種類の合成と天然ゴムの混合物が、通常、タイヤトレッドに用いられている。
【0004】
雪面上での牽引を増進するためのトレッドを有するタイヤが所望されることもある。タイヤトレッドについて、様々なゴム組成物を提案することができる。ここで、難題は、トレッドが低温の冬季条件に対して、特に乗り物の雪上運転に使用することが意図される場合、-20℃でより低い貯蔵弾性率G’を有することにより示されるようなトレッドゴム組成物の硬化した剛性を低減することである。
【0005】
低温(例えば冬季の)性能を増進する一方でそれらの両方の湿潤牽引を維持することについて、そのようなタイヤトレッドゴム組成物を提供するにはかなりの難題を呈すると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第7,342,070号
【文献】国際公開第2007/047943号
【文献】米国特許第5,504,135号
【文献】米国特許第6,103,808号
【文献】米国特許第6,399,697号
【文献】米国特許第6,410,816号
【文献】米国特許第6,248,929号
【文献】米国特許第6,146,520号
【文献】米国特許出願公開第2001/00023307号
【文献】米国特許出願公開第2002/0000280号
【文献】米国特許出願公開第2002/0045697号
【文献】米国特許出願公開第2001/0007049号
【文献】欧州特許出願公開第0839891号
【文献】特開2002097369号
【文献】スペイン特許第2122917号
【文献】米国特許第6,242,534号
【文献】米国特許第6,207,757号
【文献】米国特許第6,133,364号
【文献】米国特許第6,372,857号
【文献】米国特許第5,395,891号
【文献】米国特許第6,127,488号
【文献】米国特許第5,672,639号
【文献】米国特許第6,608,125号
【文献】米国特許出願公開第2006/0041063号
【文献】米国特許出願公開第2003/0130535号
【非特許文献】
【0007】
【文献】Standard Methods for Analysis&Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts、2003年、62版、the Institute of Petroleum,United Kingdom
【文献】Journal of the American Chemical Society、60巻、304頁(1930年)
【文献】The Vanderbilt Rubber Handbook(1978)、344~346頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、エラストマー100重量部(phr)を基準として、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム最大100phr:
式1
【0009】
【0010】
[式中、R1は、C1~C8の直鎖または分岐アルキル、C1~C8の直鎖または分岐アルケニル、および1~5個のヒドロキシル基で置換されたC2~C6の直鎖または分岐アルキルから選択され:R2は、C11~C21アルキルまたはC11~C21アルケニルである]の脂肪酸モノエステル5~50phr;
-40℃~20℃の範囲のTgを有する炭化水素樹脂5~50phr;
石油由来のオイル10phr未満;および
シリカ50~130phr、
場合によって、カーボンブラック約1~50phr
を含む加硫性ゴム組成物を含むトレッドを有する空気入りタイヤを対象とする。
【発明を実施するための形態】
【0011】
エラストマー100重量部(phr)を基準として、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム最大100phr;
式1
【0012】
【0013】
[式中、R1は、C1~C8の直鎖または分岐アルキル、C1~C8の直鎖または分岐アルケニル、および1~5個のヒドロキシル基で置換されたC2~C6の直鎖または分岐アルキルから選択され;R2は、C11~C21アルキルまたはC11~C21アルケニルである]の脂肪酸モノエステル5~50phr;
-40℃~20℃の範囲のTgを有する炭化水素樹脂5~50phr;
石油由来のオイル10phr未満;および
シリカ50~130phr、
場合によって、カーボンブラック約1~50phr
を含む加硫性ゴム組成物を含むトレッドを有する空気入りタイヤが開示される。
【0014】
一実施形態において、脂肪酸モノエステルは、オレイン酸アルキル、ステアリン酸アルキル、リノール酸アルキルおよびパルミチン酸アルキルからなる群から選択される少なくとも1種のモノエステルを含む。
【0015】
一実施形態において、脂肪酸モノエステルは、少なくとも80重量パーセントのオレイン酸アルキルを含む。
一実施形態において、オレイン酸アルキルは、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸2-エチルヘキシル、オレイン酸イソプロピルおよびオレイン酸オクチルからなる群から選択される。
【0016】
一実施形態において、脂肪酸モノエステルは、オレイン酸モノエステルを少なくとも80重量パーセント含む。
一実施形態において、R1はC1~C8の直鎖または分岐アルキルである。
【0017】
一実施形態において、R1は、メチル、エチル、2-エチルヘキシル、イソプロピルおよびオクチルからなる群から選択される。
一実施形態において、式1のモノエステルは、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール、ズルシトール、マンニトールおよびイノシトールのモノエステルからなる群から選択される。
【0018】
一実施形態において、ゴム組成物は、式1の脂肪酸モノエステルを40~55phr含む。
ゴム組成物は、-40℃から+20℃の間のガラス転移温度を有する炭化水素樹脂を5~50phr、代替として20~40phr含む。一実施形態において、炭化水素樹脂は、-40℃から0℃の間の範囲のTgを有する。一実施形態において、炭化水素樹脂は、-40℃から-10℃の間の範囲のTgを有する。樹脂についてTgの適切な測定は、ASTM D6604または等価物によるDSCである。炭化水素樹脂は、環球式軟化点と時には称され得るASTM E28によって求めて0℃から70℃の間の軟化点を有する。
【0019】
炭化水素樹脂は、クマロン-インデン樹脂、石油炭化水素樹脂、テルペンポリマー、スチレン-アルファメチルスチレン樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジン由来の樹脂およびコポリマー、ならびに/またはその混合物からなる群から選択される。
【0020】
一実施形態において、樹脂は、モノマー成分としてクマロンおよびインデンを含有し、樹脂骨格(主鎖)を構成するクマロン-インデン樹脂である。骨格に組み込むことができるクマロンおよびインデン以外のモノマー原料は、例えば、メチルクマロン、スチレン、アルファメチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエン、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン、ならびにイソプレンおよびピペリレンなどのジオレフィンである。適切なクマロン-インデン樹脂はRutgers Novares GmbHからのNovares(登録商標)Cシリーズのように市販されている。
【0021】
適切な石油樹脂は、芳香族および非芳香族タイプを含む。幾つかのタイプの石油樹脂が入手可能である。樹脂の幾つかは、低い不飽和度および高い芳香族含有率を有するが、しかし、幾つかは高い不飽和であるにもかかわらず、芳香族構造を全く含まないものもある。樹脂の違いは、主として樹脂が何に由来する供給原料のオレフィンかによる。そのような樹脂中の従来の誘導体は、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンなどのいずれかのC5化合物(平均5炭素原子を含むオレフィンおよびジオレフィン)イソプレンおよびピペリレンなどのジオレフィン、ならびにビニルトルエン、アルファメチルスチレンおよびインデンなどのいずれかのC9化合物(平均9炭素原子を含むオレフィンおよびジオレフィン)を含む。そのような樹脂は、上に言及したC5およびC9の化合物から形成されるいずれかの混合物によって製造される。
【0022】
一実施形態において、前記樹脂は、リモネン、アルファピネン、ベータピネンおよびデルタ-3-カレンの少なくとも1つのポリマーで構成されるテルペン樹脂であってもよい。
【0023】
スチレン/アルファメチルスチレン樹脂は、本明細書においてスチレンおよびアルファメチルスチレンの比較的短い鎖のコポリマーと考えられる。スチレン/アルファメチルスチレン樹脂は、例えば、約10~約90パーセントの範囲のスチレン含有率を有することができる。一態様において、そのような樹脂は、例えば炭化水素溶媒中で、スチレンおよびアルファメチルスチレンのカチオン共重合によって適切に調製することができる。このようにして、企図されたスチレン/アルファメチルスチレン樹脂は、例えばその化学構造、すなわちそのスチレンおよびアルファメチルスチレンの含有率、ならびにまたそのガラス転移温度、分子量および分子量分布を特徴とすることができる。適切なスチレン/アルファメチルスチレン樹脂はRutgers Novares GmbHからのPURE 20 ASのように市販されている。
【0024】
テルペンフェノール樹脂が使用されてもよい。テルペンフェノール樹脂は、リモネン、ピネンおよびデルタ-3-カレンなどのテルペンとフェノールモノマーの共重合に由来し得る。
【0025】
一実施形態において、樹脂は、ロジンおよび誘導体に由来する樹脂である。その代表は、例えば、ガムロジン、木材ロジンおよびトール油ロジンである。ガムロジン、木材ロジンおよびトール油ロジンは類似する組成を有するが、ロジンの成分の量は様々であってよい。そのような樹脂は二量化、重合または不均化されてもよい。そのような樹脂は、ロジン酸と、ペンタエリトリトールまたはグリコールなどのポリオールとのエステルの形態であってもよい。
【0026】
一実施形態において、前記樹脂は、部分的にまたは完全に水素化されてもよい。
ゴム組成物は溶液重合スチレン-ブタジエンゴムを含む。溶液重合で調製されるSBR(S-SBR)は、典型的には約5~約50、好ましくは約9~約26パーセントの範囲の結合スチレン含有率を有する。S-SBRは、好都合には、例えば、有機炭化水素溶媒の存在下でオルガノリチウムの触媒作用によって調製することができる。
【0027】
エラストマーまたはエラストマー組成物のガラス転移温度またはTgへの言及は、本明細書において言及される場合、エラストマー組成物の事例の未硬化状態またはことによると硬化状態におけるそれぞれのエラストマーもしくはエラストマー組成物のガラス転移温度を表す。Tgは、示差走査熱量計(DSC)によって、例えばASTM D7426または同等のものに従って毎分10℃の昇温速度でピーク中央値として適切に求めることができる。
【0028】
一実施形態において、溶液重合スチレン-ブタジエンゴムは、-85℃~0℃の範囲のガラス転移温度を有する。
一実施形態において、スチレン-ブタジエンゴムは、-85℃~-50℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する。
【0029】
一実施形態において、スチレン-ブタジエンゴムは、-40℃~0℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する。
一実施形態において、スチレン-ブタジエンゴムは、相異なるTgの2種以上のスチレン-ブタジエンゴムのブレンドを含む。スチレン-ブタジエンゴムのそのようなブレンドは、官能化されていてもいなくてもよく、または官能化、非官能化スチレン-ブタジエンゴムの組み合わせを含んでもよい。
【0030】
スチレン-ブタジエンゴムは様々な官能基で官能化されていてもよく、または、スチレン-ブタジエンゴムは官能化されていなくてもよい。
一実施形態において、スチレン-ブタジエンゴムは、官能化スチレン-ブタジエンゴムである。そのような官能化スチレン-ブタジエンゴムは、末端または鎖中のいずれかにポリマー鎖に付加した1個または複数の官能基であってもよい。官能基は、末端付加のための官能基開始剤もしくは官能基停止剤、または鎖内挿入のための官能性モノマーとして重合時に組み込むことができる。官能基は、ヒドロキシル、アミノ、アルコキシ、アルコキシアミン、チオール、シラン、アルコキシシラン、アルコキシアミノシランなどを含んでもよい。そのような官能基は、官能化スチレン-ブタジエンゴムがシリカ上のヒドロキシル基などの表面活性基と反応する能力を与えて、ゴムコンパウンド中で混合されたとき、シリカと官能化スチレン-ブタジエンゴムの間の分散および相互作用を容易にする。
【0031】
一実施形態において、スチレン-ブタジエンゴムは、アルコキシシラン基、ならびに第一級アミン基およびチオール基の少なくとも1つで官能化されている。一実施形態において、スチレン-ブタジエンゴムはスチレンおよびブタジエンの共重合により得られ、スチレン-ブタジエンゴムがポリマー鎖に結合した第一級アミノ基および/またはチオール基ならびにアルコキシシリル基を有することを特徴とする。一実施形態において、アルコキシシリル基はエトキシシリル基である。一実施形態において、スチレン-ブタジエンゴムは官能化されていない。
【0032】
第一級アミノ基および/またはチオール基は、それがスチレン-ブタジエンゴム鎖に結合している限り、スチレン-ブタジエンゴムの重合開始末端、重合停止末端、主鎖および側鎖のうちのいずれに結合されていてもよい。しかし、第一級アミノ基および/またはチオール基は、ポリマー末端でのエネルギーの消失が抑制されてヒステリシス損特性が改善されるので、好ましくは重合開始末端または重合停止末端に導入される。
【0033】
さらに、(コ)ポリマーゴムのポリマー鎖に結合したアルコキシシリル基の含有率は、好ましくはスチレン-ブタジエンゴムの0.5~200mmol/kgである。含有率は、より好ましくはスチレン-ブタジエンゴムの1~100mmol/kg、特に好ましくはスチレン-ブタジエンゴムの2~50mmol/kgである。
【0034】
アルコキシシリル基は、それが(コ)ポリマー鎖に結合している限り、(コ)ポリマーの重合開始末端、重合停止末端、主鎖および側鎖のうちのいずれに結合していてもよい。しかし、エネルギーの消失は(コ)ポリマー末端から抑制されてヒステリシス損特性を改善することができるので、アルコキシシリル基は、好ましくは重合開始末端または重合停止末端に導入される。
【0035】
スチレン-ブタジエンゴムは、炭化水素溶媒中でスチレンおよびブタジエンの重合によって、開始剤として有機アルカリ金属および/または有機アルカリ土類金属を使用し、保護基で保護された第一級アミノ基および/または保護基で保護されたチオール基ならびにアルコキシシリル基を有する停止剤化合物を加えて、重合が実質的に完了した時点でリビングポリマー鎖末端とそれを反応させ、次いで、例えば加水分解または他の好適な手順によるブロック解除を行うアニオン重合によって製造することができる。一実施形態において、米国特許第7,342,070号に開示されているようにスチレン-ブタジエンゴムを製造することができる。別の実施形態において、国際公開第2007/047943号に開示されているようにスチレン-ブタジエンゴムを製造することができる。
【0036】
一実施形態において、また、米国特許第7,342,070号に教示されるように、スチレン-ブタジエンゴムは式(I)または(II)のものである。
【0037】
【0038】
[式中、Pは、共役ジオレフィンまたは共役ジオレフィンと芳香族ビニル化合物の(コ)ポリマー鎖であり、R1は、1~12炭素原子を有するアルキレン基であり、R2およびR3はそれぞれ独立して、1~20炭素原子を有するアルキル基、アリル基またはアリール基であり、nは整数1または2であり、mは整数1または2であり、kは整数1または2であるが、ただしn+m+kは整数3または4である。]
【0039】
【0040】
[式中、P、R1、R2およびR3は、上記に挙げた式Iについて示したのと同一の定義を有し、jは整数1~3であり、hは整数1~3であるが、ただし、j+hは整数2~4である。]。
【0041】
保護された第一級アミノ基およびアルコキシシリル基を有する停止剤化合物は、当業界で公知の様々な化合物のいずれであってもよい。一実施形態において、保護された第一級アミノ基およびアルコキシシリル基を有する化合物は、例えば、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、1-トリメチルシリル-2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)-アミノエチルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシランなどを含んでもよく、1-トリメチルシリル-2,2-ジメトキシ-1-アザ-2-シラシクロペンタン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシランおよびN,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランが好ましい。一実施形態において、保護された第一級アミノ基およびアルコキシシリル基を有する化合物は、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシランである。
【0042】
一実施形態において、保護された第一級アミノ基およびアルコキシシリル基を有する化合物は、式III
RN-(CH2)XSi(OR’)3、 III
[式中、Rは、窒素(N)原子と組み合わさって、好適な後処理時に第一級アミンを生じる、保護されたアミン基であり、R’は、アルキル、シクロアルキル、アリルまたはアリールから選択される、1~18炭素原子を有する基を表し;Xは整数1~20である]のいずれの化合物であってもよい。一実施形態において、少なくとも1個のR’基はエチルラジカルである。第一級アミンを生じる好適な後処理は、保護された第一級アミノ基およびアルコキシシリル基を有する化合物とのリビングポリマーの反応の後に続いて、保護基が除去されることを意味する。例えばN,N-ビス(トリメリルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン中のようなビス(トリアルキルシリル)保護基の場合には、加水分解は、トリアルキルシリル基を除去し、第一級アミンを残すために使用される。
【0043】
一実施形態において、ゴム組成物は、アルコキシシラン基および第一級アミン基またはチオール基で官能化されたスチレン-ブタジエンゴムを約40~約60phr含む。
Japan Synthetic Rubber(JSR)からHPR 340などの、アルコキシシラン基および第一級アミン基で官能化された適切なスチレン-ブタジエンゴムが市販されている。
【0044】
一実施形態において、溶液重合スチレン-ブタジエンゴムは、国際公開第2007/047943号に開示されている通りであり、アルコキシシラン基およびチオールで官能化され、リビングアニオンポリマーと、式IV
(R4O)xR4
ySi-R5-S-SiR4
3 IV
[式中、Siはシリコンであり;Sは硫黄であり;Oは酸素であり;xは、1、2および3から選択される整数であり;yは、0、1および2から選択される整数であり;x+y=3であり;R4は同一または異なり、(C1-C16)アルキルであり;R’は、アリールおよびアルキルアリールまたは(C1-C16)アルキルである。]によって表されるシランスルフィド改質剤との反応生成物を含む。一実施形態において、R5は(C1-C16)アルキルである。一実施形態において、各R4基は同一または異なり、それぞれは独立してC1-C5アルキルであり、R5はC1-C5アルキルである。
【0045】
TrinseoからのSprintan SLR 3402またはSprintan SLR 4602などのアルコキシシラン基およびチオール基を用いて官能化された適切なスチレン-ブタジエンゴムが市販されている。
【0046】
一実施形態において、ゴム組成物中のスチレン-ブタジエンゴムは、最大100phrの範囲の量で存在する。一実施形態において、少なくとも1種の追加のジエン系エラストマーの90~10phrと一緒に、スチレン-ブタジエンゴムは10~90phrの範囲の量で存在する。一実施形態において、少なくとも1種の追加のジエン系エラストマーの70~30phrと一緒に、スチレン-ブタジエンゴムは30~70phrの範囲の量で存在する。
【0047】
ゴム組成物は、任意に、オレフィン性不飽和を含む1種または複数の追加のゴムまたはエラストマーを含んでよい。語句「オレフィン性不飽和を含有するゴムまたはエラストマー」または「ジエン系エラストマー」は、天然ゴムならびにその様々な未加工形および再生形の両方、ならびに様々な合成ゴムを含むように意図される。本発明の記載では、他の方法で規定されない限り、「ゴム」および「エラストマー」という用語は交換して使用することができる。用語「ゴム組成物」、「配合ゴム」および「ゴムコンパウンド」は、様々な原料および材料とブレンドまたは混合されるゴムを指すように、交換して使用され、そのような用語は、ゴム混合またはゴム配合の分野の当業者によく知られている。合成ゴムの特定の例は、ポリブタジエン(cis-1,4ポリブタジエンを含む)、ポリイソプレン(cis-1,4ポリイソプレンを含む)、ブチルゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム、1,3ブタジエンまたはイソプレンのスチレンとのコポリマーを含む。使用されてもよいゴムの追加の例は、アルコキシシリル末端に官能化された溶液重合ポリマー(SBR、PBR、IBRおよびSIBR)、シリコンカップリングおよびスズカップリングした星形分岐ポリマーを含む。好ましいゴムまたはエラストマーは、ポリイソプレン(天然または合成の)、ポリブタジエンおよびSBRである。
【0048】
一態様において、少なくとも1種の追加のゴムは、好ましくはジエン系ゴムの少なくとも2種のものである。例えば、2種以上のゴムの組み合わせ、例えばcis-1,4-イソプレンゴム(天然または合成であるが、天然が好ましい)、3,4-イソプレンゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム、乳化重合および溶液重合由来のスチレン/ブタジエンゴム、cis-1,4-ポリブタジエンゴムおよび乳化重合で調製されたブタジエン/アクリロニトリルコポリマーが好ましい。
【0049】
本発明の一態様において、比較的旧来のスチレン含有率である、約20~約28パーセントの結合スチレンを有する、乳化重合由来のスチレン/ブタジエン(E-SBR)が使用されてもよい。
【0050】
乳化重合で調製されたE-SBRによって、スチレンおよび1,3ブタジエンが水性乳剤として共重合されることを意味する。そのようなものは当業者によく知られている。結合スチレン含有率は、例えば、約5~約50パーセントと変動することができる。
【0051】
溶液重合で調製されたSBR(S-SBR)は、典型的には約5~約50、好ましくは約9~約26パーセントの範囲の結合スチレン含有率を有する。S-SBRは、好都合には、例えば、有機炭化水素溶媒の存在下でオルガノリチウム触媒によって調製することができる。
【0052】
一実施形態において、cis-1,4ブタジエンゴム(BR)が使用されてもよい。そのようなBRは、例えば1,3-ブタジエンの有機溶液重合によって調製することができる。BRは、好都合には、例えば少なくとも90パーセントのcis-1,4-含有率および約-95℃~約-110℃の範囲のガラス転移温度Tgを有することを特徴とすることができる。
【0053】
一実施形態において、天然ゴムまたは合成のcis-1,4ポリイソプレンが使用されてもよい。
ゴム組成物は、プロセス油を10phrまで含んでもよい。一実施形態において、プロセス油の量は1~5phrの範囲である。一実施形態において、ゴム組成物はプロセス油を含まない。通常、エラストマーを増量するために使用される増量油として、プロセス油がゴム組成物に含まれていてもよい。プロセス油はまた、ゴム配合時のオイルの直接添加によってゴム組成物に含まれていてもよい。使用されるプロセス油は、エラストマー中に存在する増量油、および配合時に加えられるプロセス油の両方に含まれていてもよい。適切なプロセス油は、芳香族、パラフィン、ナフテン、および低PCA油、例えば、MES、TDAEおよび重質ナフテン油、植物油、例えば、ヒマワリ、大豆およびサフラワー油を含む、当業界で公知である様々なオイルを含む。
【0054】
一実施形態において、ゴム組成物は低PCA油を含む。適切な低PCA油は、業界で公知である、軽度抽出溶媒和物(MES)、処理蒸留物芳香族系抽出物(TDAE)および重質ナフテン油を含むがこれらに限定されない:例えば、以下を参照すること:米国特許第5,504,135号;同6,103,808号;同6,399,697号;同6,410,816号;同6,248,929号;同6,146,520号;米国特許出願公開第2001/00023307号;同2002/0000280号;同2002/0045697号;同2001/0007049号;欧州特許出願公開第0839891号;特開2002097369号;スペイン特許第2122917号。一般に、適切な低PCA油は、約-40℃~約-80℃の範囲のガラス転移温度Tgを有するものを含む。MES油は、一般に約-57℃~約-63℃の範囲のTgを有する。TDAE油は、一般に約-44℃~約-50℃の範囲のTgを有する。重質ナフテン油は、一般に約-42℃~約-48℃の範囲のTgを有する。TDAE油のTgについて適している測定は、ASTM E1356または等価物によるDSCである。
【0055】
適切な低PCA油は、IP346法によって求めて3重量パーセント未満の多環式芳香族含有率を有するものを含む。IP346法の手順は、the Institute of Petroleum,United Kingdomによって発行された、Standard Methods for Analysis&Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts、2003年、62版に見いだすことができる。
【0056】
適切なTDAE油は、Klaus Dahleke KGからのTudalen SX500、H&R GroupからのVivaTec 400およびVivaTec 500、ならびにBPからのEnerthene 1849、ならびにRepsolからのExtensoil 1996として利用可能である。オイルは、オイルとして単独でまたは増量したエラストマーの形のエラストマーと一緒に利用可能であることがある。
【0057】
適切な植物油は、例えば一定の不飽和度を含有するエステルの形である大豆油、ヒマワリ油およびキャノーラ油を含む。
加硫性ゴム組成物は、シリカを約50~約130phr含んでもよい。
【0058】
ゴムコンパウンドに使用されてもよい一般に使用される珪質顔料は、従来の火成および沈降珪質顔料(シリカ)を含むが、沈降シリカが好ましい。本発明において好ましく用いられる従来からの珪質顔料は、例えば、可溶性ケイ酸塩、例えば、ケイ酸ナトリウムの酸性化によって得られたものなどの沈降シリカである。
【0059】
そのような従来のシリカは、例えば窒素ガスを使用して測定して、好ましくは1グラム当たり約40~約600平方メートルの範囲、より普通には約50~約300平方メートルの範囲のBET表面積を有することを特徴とすることができる。表面積を測定するBET法は、Journal of the American Chemical Society、60巻、304頁(1930年)に記載されている。
【0060】
また従来のシリカは、通常、約100~約400、より普通には約150~約300の範囲のフタル酸ジブチル(DBP)吸収値を有することを特徴としてもよい。
従来のシリカは、例えば電子顕微鏡によって求めて0.01~0.05ミクロンの範囲の平均究極粒子寸法を有すると期待できるが、シリカ粒子は、寸法がさらに小さくてよく、またはことによるとより大きくてもよい。
【0061】
様々な市販のシリカ、例えば本明細書において例示のみでありこれらに限定されないが、PPG Industriesから名称210、243、315などを有するHi-Sil商標の下で市販されているシリカ;Rhodiaからの、例えばZ1165MPおよびZ165GRの名称を有する入手可能なシリカ、およびDegussa AGから入手可能な、例えば名称VN2およびVN3を有するシリカなどが使用されてもよい。
【0062】
加硫性ゴム組成物は、任意に、カーボンブラックを約1~約50phr含んでもよい。
一般に使用されるカーボンブラックは、従来の充填剤として使用することができる。そのようなカーボンブラックの代表的な例は、N110、N121、N134、N220、N231、N234、N242、N293、N299、S315、N326、N330、M332、N339、N343、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N683、N754、N762、N765、N774、N787、N907、N908、N990およびN991を含む。これらのカーボンブラックは、9~145g/kgの範囲のヨウ素吸収および34~150cm3/100gの範囲のDBP数を有する。
【0063】
超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)、米国特許第6,242,534号;同6,207,757号;同6,133,364号;同6,372,857号;同5,395,891号;または同6,127,488号に開示されたものなどの粒状ポリマーゲルを含む粒状充填剤、および、米国特許第5,672,639号に開示されたものなどの可塑化デンプン複合充填剤を含むがこれらに限定されない他の充填剤が、ゴム組成物において使用されてもよい。
【0064】
好ましくは、タイヤ成分に使用されるゴム組成物は、従来の硫黄含有有機ケイ素化合物をさらに含んでもよい。適切な硫黄含有有機ケイ素化合物の例は、式2:
Z-Alk-Sn-Alk-Z
2
[式中、Zは、
【0065】
【0066】
からなる群から選択され、ここで、R3は、1~4炭素原子のアルキル基、シクロヘキシルまたはフェニルであり;R4は、1~8炭素原子のアルコキシまたは5~8炭素原子のシクロアルコキシであり;Alkは1~18炭素原子の二価炭化水素であり、nは整数2~8である。]のものである。
【0067】
本発明に従って使用されてもよい硫黄含有有機ケイ素化合物の特別の例としては、以下のものを含む:3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)オクタスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2’-ビス(トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)ヘキサスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリルプロピル)オクタスルフィド、3,3’-ビス(トリオクタオキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリヘキサオキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(トリ-2’’-エチルヘキサオキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリイソオクタオキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(トリ-t-ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、2,2’-ビス(メトキシジエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、2,2’-ビス(トリプロポキシシリルエチル)ペンタスルフィド、3,3’-ビス(トリシクロネクソキシシリルプロピル)テトラスルフィド(3,3’-bis(tricyclonexoxysilylpropyl)tetrasulfide)、3,3’-ビス(トリシクロペンタオキシシリルプロピル)トリスルフィド、2,2’-ビス(トリ-2’’-メチルシクロヘキサオキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(トリメトキシシリルメチル)テトラスルフィド、3-メトキシエトキシプロポキシシリル3’-ジエトキシブトキシ-シリルプロピルテトラスルフィド、2,2’-ビス(ジメチルメトキシシリルエチル)ジスルフィド、2,2’-ビス(ジメチルsec.ブトキシシリルエチル)トリスルフィド、3,3’-ビス(メチルブチルエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(ジt-ブチルメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2’-ビス(フェニルメチルメトキシシリルエチル)トリスルフィド、3,3’-ビス(ジフェニルイソプロポキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(ジフェニルシクロヘキサオキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(ジメチルエチルメルカプトシリルプロピル)テトラスルフィド、2,2’-ビス(メチルジメトキシシリルエチル)トリスルフィド、2,2’-ビス(メチルエトキシプロポキシシリルエチル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(ジエチルメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(エチルジ-sec.ブトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(プロピルジエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、3,3’-ビス(ブチルジメトキシシリルプロピル)トリスルフィド、3,3’-ビス(フェニルジメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-フェニルエトキシブトキシシリル3’-トリメトキシシリルプロピルテトラスルフィド、4,4’-ビス(トリメトキシシリルブチル)テトラスルフィド、6,6’-ビス(トリエトキシシリルヘキシル)テトラスルフィド、12,12’-ビス(トリイソプロポキシシリルドデシル)ジスルフィド、18,18’-ビス(トリメトキシシリルオクタデシル)テトラスルフィド、18,18’-ビス(トリプロポキシシリルオクタデセニル)テトラスルフィド、4,4’-ビス(トリメトキシシリル-ブテン-2-イル)テトラスルフィド、4,4’-ビス(トリメトキシシリルシクロヘキシルエン)テトラスルフィド、5,5’-ビス(ジメトキシメチルシリルペンチル)トリスルフィド、3,3’-ビス(トリメトキシシリル-2-メチルプロピル)テトラスルフィド、3,3’-ビス(ジメトキシフェニルシリル-2-メチルプロピル)ジスルフィド。
【0068】
好ましい硫黄含有有機ケイ素化合物は3,3’-ビス(トリメトキシまたはトリエトキシシリルプロピル)スルフィドである。最も好ましい化合物は3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドおよび3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドである。したがって、式2について、好ましくは、Zは、
【0069】
【0070】
である
[式中、R4は2~4炭素原子のアルコキシであり、2個の炭素原子が特に好ましく;alkは2~4炭素原子の二価炭化水素であり、3個の炭素原子が特に好ましく;nは整数2~5であり、2および4が特に好ましい。]。
【0071】
別の実施形態において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物は、米国特許第6,608,125号に開示される化合物を含む。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、3-(オクタノイルチオ)-1-プロピルトリエトキシシラン、CH3(CH2)6C(=O)-S-CH2CH2CH2Si(OCH2CH3)3を含み、Momentive Performance MaterialsからNXT(商標)として市販されている。
【0072】
別の実施形態において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物は、米国特許出願公開第2006/0041063号で開示された化合物を含む。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、炭化水素系ジオール(例えば、2-メチル-1,3-プロパンジオール)のS-[3-(トリエトキシシリル)プロピル]チオオクタノエートとの反応生成物を含む。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物はMomentive Performance MaterialsからのNXT-Z(商標)である。
【0073】
別の実施形態において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物は、米国特許出願公開第2003/0130535号に開示されているものを含む。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物はDegussaからのSi-363である。
【0074】
ゴム組成物中の式2の硫黄含有有機ケイ素化合物の量は、使用される他の添加剤のレベルに依存して様々であってもよい。概して言えば、式Iの化合物の量は0.5~20phrの範囲である。好ましくは、量は1~10phrの範囲である。
【0075】
ゴム組成物が、例えば、硫黄供与体、硬化助剤、例えば、活性剤および遅延剤、充填剤、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、抗酸化剤、オゾン劣化防止剤および釈解薬などの様々な一般に使用される添加材料との、様々な構成要素の硫黄加硫性ゴムの混合などのゴム配合技術において一般に公知の方法によって配合することができることは、当業者によって容易に理解される。当業者に知られているように、硫黄加硫性材料および硫黄加硫された材料(ゴム)の意図される使用に応じて、上記に挙げた添加剤が選択され、一般に従来の量で使用される。硫黄供与体の代表的な例は、元素の硫黄(遊離の硫黄)、アミンジスルフィド、ポリマーのポリスルフィドおよび硫黄オレフィン付加物を含む。一実施形態において、硫黄加硫剤は元素硫黄である。硫黄加硫剤は、0.5~8phrの範囲、代替として1.5~6phrの範囲の量で使用されてもよい。抗酸化剤の典型的な量は約1~約5phrを含む。代表的な抗酸化剤は、例えばジフェニル-p-フェニレンジアミン他、例えば、The Vanderbilt Rubber Handbook(1978)、344~346頁に開示されているものなどであってもよい。オゾン劣化防止剤の典型的な量は約1~5phrを含む。使用される場合、ステアリン酸を含むことができる脂肪酸の典型的な量は、約0.5~約3phrを含む。酸化亜鉛の典型的な量は約2~約5phrを含む。ワックスの典型的な量は1~5phrを含む。多くの場合、微晶質のワックスが使用される。釈解剤の典型的な量は0.1~1phrを含む。典型的な釈解剤は、例えばペンタクロロチオフェノールおよびジベンズアミドジフェニルジスルフィドであってもよい。
【0076】
促進剤は、加硫のために必要とされる時間および/または温度を制御し、加硫物の性質を改善するために使用される。一実施形態において、単一の促進剤系、すなわち一次促進剤が使用されてもよい。一次促進剤(複数可)は約0.5~約4、代替として約0.8~約1.5phrの範囲の合計量で使用されてもよい。別の実施形態において、一次および二次促進剤の組み合わせが使用されてもよく、二次促進剤は、活性化し加硫物の性質を改善するために約0.05~約3phrなどのより少ない量で使用される。これらの促進剤の組み合わせは、最終的な性質に相乗効果を生み出すと予想することができ、どちらかの促進剤の単独使用によって製造されたものより多少良好である。さらに、通常の加工温度に影響を受けないが、通常の加硫温度で満足すべき硬化を生ずる遅効性促進剤が使用されてもよい。加硫遅延剤もまた使用されてもよい。本発明において使用されてもよい適切な種類の促進剤は、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメートおよびザンセートである。一実施形態において、一次促進剤はスルフェンアミドである。第2の促進剤が使用される場合、二次促進剤はグアニジン、ジチオカルバメートまたはチウラム化合物であってもよい。
【0077】
ゴム組成物の混合は、ゴム混合技術における当業者に公知の方法によって達成することができる。例えば、原料は、通常、少なくとも2つの段階、すなわち、少なくとも1つの非生産的な段階、続いて生産的混合段階において混合される。硫黄加硫剤を含む最終硬化薬は、通常、従来は「生産的」混合段階と呼ばれる最終段階において混合され、ここで、通常、先行する非生産的混合段階(複数可)の混合温度(複数可)より低い、ある温度または最終温度で混合が行われる。「非生産的」および「生産的」混合段階という用語は、ゴム混合技術の当業者には周知されている。ゴム組成物は、熱力学的混合ステップにかけられてもよい。熱力学的混合ステップは、一般に、140℃から190℃の間のゴム温度を生ずるのに適切な期間、混合機または押出機での機械式作業を含む。熱力学的作業の好適な継続時間は、運転条件および成分の量および性質の関数として変動する。例えば、熱力学的作業は1~20分であってもよい。
【0078】
ゴム組成物は、タイヤの様々なゴム部品に組み込むことができる。例えば、ゴム部品は、トレッド(トレッドキャップおよびトレッドベースを含む)、サイドウォール、アペックス、チェーファー、サイドウォールインサート、ワイヤーコートまたはインナーライナーであってもよい。一実施形態において、部品はトレッドである。
【0079】
本発明の空気入りタイヤは、レース用タイヤ、乗用車用タイヤ、航空機用タイヤ、農耕用タイヤ、地ならし機、オフロード、トラック用タイヤなどであってもよい。一実施形態において、タイヤは、乗用車用またはトラック用タイヤである。タイヤはまたラジアルまたはバイアスであってよい。
【0080】
本発明の空気入りタイヤの加硫は、一般に100℃~200℃の範囲の従来の温度で実行される。一実施形態において、加硫は110℃~180℃の範囲の温度で行われる。プレスまたは型中での加熱、過熱蒸気または熱風を用いる加熱などの通常の加硫方法のうちのいずれを使用してもよい。そのようなタイヤは、当業者にとって公知で、容易に明白になる様々な方法によって組み立て、付形、成型および硬化することができる。
【0081】
本発明は、単に例証のためである以下の実施例によって説明され、本発明の範囲、または実施することができる方法を限定すると見なされるべきではない。特に他の方法で示さなければ、部および百分率は重量によって与えられる。
【実施例1】
【0082】
ゴムコンパウンドは、標準量の添加剤および硬化剤を含むphrで与えられる量を有する、表1に示す調合に従って混合した。コンパウンドを硬化し、表2に示す物理的性質に関して試験した。コンパウンドC1およびC2は対照であり、コンパウンドE1-E4は本発明の代表であった。
【0083】
コンパウンド試料C1は、スズカップリングした溶液重合SBRおよび高シスポリブタジエンを含むシリカ補強した硬化ゴム組成物のゴム加工および雪グリップ性能を促進するためのナフテン油を含む。コンパウンド試料E1は、試料C1組成物の修飾により製造し、ナフテン油を、牽引を促進する炭化水素樹脂と高オレイン酸ヒマワリ油のモノエステルの組み合わせに置き換える。予測される雪グリップ性能が、-20℃で測定したG’の性質が13.8MPaから10.7MPaに減少することよって証明されるように改善することが注目される。さらに、予測される転がり抵抗が23℃で34から38に反発性の増加によって認められるように著しく改善する。予測されるトレッド摩耗性能が改善され、71から50mm3に摩耗率を低減する。これは、0℃での反発性が試料C1のそれと同様であるので、予測される湿潤牽引の著しい変化なしで達成される。コンパウンド試料E2は、試料C1組成物の修飾により製造し、ナフテン油を、牽引を促進する炭化水素樹脂および大豆油の組み合わせに置き換える。湿潤グリップで予測される性質を実質上損なうことなく、雪グリップ、トレッド摩耗および転がり抵抗の特性予測における類似する改善が得られることが注目される。
【0084】
コンパウンド試料C2は、官能化、スズカップリングした溶液重合SBRおよび高シスポリブタジエンを含む、シリカ補強した硬化ゴム組成物のゴム加工および雪グリップ性能を促進するためのナフテン油を含む。コンパウンド試料E3は、試料C2組成物の修飾により製造し、ナフテン油を、牽引を促進する炭化水素樹脂および高オレイン酸ヒマワリ油のモノエステルの組み合わせに置き換える。予測される雪グリップ性能は、-20℃で測定したG’の性質が13.9MPaから7.6MPaに減少することよって証明されるように改善することが注目される。さらに、予測される転がり抵抗が、23℃で35から39への反発性の増加によって認められるように著しく改善する。予測されるトレッド摩耗性能は改善され、摩耗率を63から48mm3に低減する。これは、0℃での反発性が試料C2のそれと同様であるので、予測される湿潤牽引の著しい変化なしで達成される。コンパウンド試料E4は、試料C2組成物の修飾により製造し、ナフテン油を、牽引を促進する炭化水素樹脂および大豆油の組み合わせに置き換える。湿潤グリップで予測される性質を実質上損なうことなく、雪グリップ、トレッド摩耗および転がり抵抗の特性予測における類似する改善が得られることが注目される。
【0085】
【0086】
【0087】
主題発明を説明する目的で特定の代表的な実施形態および詳細を示してきたが、主題発明の範囲から逸脱することなく様々な変更および修正を本明細書において行うことができることはこの技術の当業者には明白であろう。
【0088】
[発明の実施形態]
1.エラストマー100重量部(phr)を基準として、溶液重合スチレン-ブタジエンゴム最大100phr;
式1
【0089】
【0090】
[式中、R1は、C1~C8の直鎖または分岐アルキル、C1~C8の直鎖または分岐アルケニル、および1~5個のヒドロキシル基で置換されたC2~C6の直鎖または分岐アルキルから選択され;R2は、C11~C21アルキルまたはC11~C21アルケニルである]の脂肪酸モノエステル5~50phr;
-40℃~20℃の範囲のTgを有する炭化水素樹脂5~50phr;
石油由来のオイル10phr未満;および
シリカ50~130phr、
任意に、カーボンブラック約1~50phr
を含む加硫性ゴム組成物を含むトレッドを有する空気入りタイヤ。
2. -40℃~20℃の範囲のTgを有する前記炭化水素樹脂がクマロン-インデン樹脂である、1の空気入りタイヤ。
3.-40℃~20℃の範囲のTgを有する前記炭化水素樹脂がスチレンおよびアルファメチルスチレンに由来する、1の空気入りタイヤ。
4.前記スチレン-ブタジエンゴムが-85℃~-50℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する、1の空気入りタイヤ。
5.前記スチレン-ブタジエンゴムが-40℃~0℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する、1の空気入りタイヤ。
6. -40℃~20℃の範囲のTgを有する前記クマロン-インデン樹脂が、クマロン、インデンの残基、ならびにメチルクマロン、スチレン、α-メチルスチレン、メチルインデン、ビニルトルエン、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエン、ならびにイソプレンおよびピペリレンなどのジオレフィンからなる群から選択される少なくとも1つの残基を含む、1の空気入りタイヤ。
7.式1のモノエステルが、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、エリトリトール、キシリトール、ソルビトール、ズルシトール、マンニトールおよびイノシトールのモノエステルからなる群から選択される、1の空気入りタイヤ。
8. R1が、メチル、エチル、2-エチルヘキシル、イソプロピルおよびオクチルからなる群から選択される、1の空気入りタイヤ。
9. R1がC1~C8の直鎖または分岐アルキルである、1の空気入りタイヤ。
10.前記脂肪酸モノエステルが、オレイン酸アルキル、ステアリン酸アルキル、リノール酸アルキルおよびパルミチン酸アルキルからなる群から選択される少なくとも1種のモノエステルを含む、1の空気入りタイヤ。
11.前記脂肪酸モノエステルが、少なくとも80重量パーセントのオレイン酸アルキルを含む、1の空気入りタイヤ。
12.前記オレイン酸アルキルが、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸2-エチルヘキシル、オレイン酸イソプロピルおよびオレイン酸オクチルからなる群から選択される、6の空気入りタイヤ。
13.前記ジエン系エラストマーが、天然ゴム、ポリブタジエン、合成ポリイソプレン、溶液重合スチレン-ブタジエンゴムおよび乳化重合スチレン-ブタジエンゴムからなる群から選択される、1の空気入りタイヤ。
14.式1の脂肪酸モノエステルを40~55phr含む、1の空気入りタイヤ。
15.前記脂肪酸モノエステルが、少なくとも80重量パーセントのオレイン酸モノエステルを含む、1の空気入りタイヤ。
16.前記スチレン-ブタジエンゴムが官能化されている、1の空気入りタイヤ。
17.前記ゴム組成物が、スチレン-ブタジエンゴムを10~90phr、および少なくとも1種の追加のジエン系エラストマーを90~10phr含む、1の空気入りタイヤ。
18.前記ゴム組成物が、スチレン-ブタジエンゴムを30~70phr、および少なくとも1種の追加のジエン系エラストマーを70~30phr含む、1の空気入りタイヤ。